平成 20 年度財団法人JKA補助事業
平成 20 年度財団法人JKA補助事業
新たなアジア・中東経済関係構築に向けた基礎調査報告書
平成 21 年 3 月
財団法人 日本エネルギー経済研究所 中東研究センター
この事業は、競輪の補助金を受けて 実施したものです。
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財団法人日本エネルギー経済研究所中東研究センター平成
21年 3月平成 20年度財団法人JKA補助事
業
新たなアジア・中東経済関係構築に向けた基礎調査報告書
我が国の対中東輸出の現状と今後
我が国の対中東輸出の現状と今後
新たなアジア・中東経済関係構築に向けた基礎調査
報 告 書
は じ め に
本報告書は、財団法人 JKA(旧日本自転車振興会)の支援を受けて実施した「新たなア ジア・中東経済関係構築のための基礎調査等補助事業」の一環として、自由貿易協定とイ スラム金融を手段としたとき、我が国が対中東経済関係の強化をなしうるかどうかを分析 したものである。JKA 補助事業は発展著しいアジア諸国との連携によって対中東関係に新 たな地平を開く可能性に注目しており、分析に当たっては常にかかる点を念頭に置いた。
まず対中東経済関係強化に向けた自由貿易協定活用の可能性だが、すでに湾岸産油国の 関税が低率となっており、また輸送機械等の我が国輸出品の多くが価格というより品質や 高級感で選択されている現状では、当該協定の締結自体が我が国の対中東輸出を大きく増 加させることはない。ただアジア諸国をはじめ多くの国が、エネルギー資源の豊富な中東 諸国との自由貿易協定締結へと動いており、そうした動きに乗り遅れることが我が国の対 中東関係に打撃を与える可能性は無視できないであろう。それゆえ我が国の対中東諸国自 由貿易協定は、そうした観点から推進されるべきであるというのが結論である。
他方マレーシアの成功例があるイスラム金融を用いた対中東経済関係強化の試みも、我 が国にとっては必ずしもそのままの形で活用できる方策ではなかった。人口の 6 割をイス ラム教徒が占めるマレーシアは国内にイスラム金融の需要が存在するのに対し、我が国は そうした条件を欠いている。また原理原則的な中東湾岸地域と柔軟なマレーシアで、何を イスラム金融商品として許容すべきかという点に対立が存在し、その調整に時間が必要と 思われる点も、不透明な部分として残っている。とはいえ自由貿易協定と同様、対中東経 済関係強化を目的に今イスラム金融の活用可能性を国家の意思として追求しない場合、我 が国が被る打撃はやはり小さくないものになってしまうという結論が得られた。
本報告書の執筆者、執筆分担は以下の通りである。
■対中東・アジア自由貿易協定と我が国の対中東経済関係
中東研究センター外部研究員(拓殖大学准教授) 茂木 創
■イスラム金融と対中東経済関係の強化
中東研究センター研究理事(拓殖大学教授) 立花 亨 対中東経済関係の強化を考える上で、本報告書が参考に供しうれば幸甚である。
平成 21 年 3 月
財団法人日本エネルギー経済研究所
目 次
対中東・アジア自由貿易協定と我が国の対中東経済関係
1.自由貿易協定締結に向けての動きと中東・アジアの思惑… ……… 1
2.中東諸国の貿易構造… ……… 4
(1)輸出・輸入・経常収支……… 4
(2)中東にとってのアジアの重要性……… 7
(3)日本、中国との貿易……… 9
(4)中東諸国と日本、中国の貿易依存関係………12
3.貿易創出効果と貿易転換効果… ………15
(1)貿易創出効果………15
(2)貿易転換効果………16
4.自由貿易の効果… ………17
5.結語と課題… ………21
参考文献………21
イスラム金融と対中東経済関係の強化 1.イスラム金融市場の拡大とマレーシア… ………23
2.世界金融危機とイスラム金融… ………25
3.シャリア適格性をめぐる混乱… ………29
4.結論… ………32
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対中東・アジア自由貿易協定と我が国の対中東経済関係
対中東・アジア自由貿易協定と 我が国の対中東経済関係
1.自由貿易協定締結に向けての動きと中東・アジアの思惑
2004 年から 2008 年 7 月という長期な原油価格高騰によって、中東諸国が世界経済 の注目を集める様になった。第 3 オイル・ブームである。産油国では、オイル・マネー 潤沢に蓄えたソブリン・ウエルス・ファンド(Sovereign Wealth Fund; SWF)が中 心となって、国家的なプロジェクトを次々と発注し、産業基盤の整備がすすめられた。
原油価格の高騰は経済成長と所得上昇をもたらし、中東産油国では 970 年代から 80 年代に次ぐ消費ブームが再来した。
こうした消費意欲が高まる中、域外諸国との貿易関係強化が求められてきた。中東 諸国には、98 年に発効した湾岸協力会議2(Gulf Cooperation Council; GCC)とい う関税同盟が存在し、998 年にはより広い地域を含む自由貿易協定、汎アラブ自由 貿易地域3(Pan-Arab Free Trade Area; PAFTA)が結ばれるなど、すでに域内経 済連携の強化は行われていた。しかし、地縁的結びつきの強い地域であるため、地域 独特の風習、禁忌といった非関税障壁が山積しており、これら非関税障壁をどのよう に関税化していくのかといった踏み込んだ議論がされないまま今日に至っている。
さらに根本的な問題として、中東の地域的特性から、締結国間における貿易品目が 競合的関係となってしまうために、自由貿易を行ったとしてもそのメリット(貿易利 益)を享受しにくいという問題がある。こうした問題を解消し、マクロ経済全体から みた厚生の拡大を目指すために域外諸国と自由貿易協定を締結することは、いわば中 東諸国にとって喫緊の課題である。
中東諸国、とりわけ GCC 諸国は、産油国であるという優位性を背景に積極的に対 外との自由貿易協定締結に向けての交渉を行ってきた。989 年、GCC 諸国は欧州連 合(EU)との自由貿易協定交渉に入った。しかし、自由貿易締結によるメリットは、
国際競争力のない自国の生産者余剰を著しく低下させる危険性と絶えず背中合わせに ある。EU 側は GCC 諸国に対してサービス部門の自由化を求めてきたが、サービス 部門に比較劣位がある GCC 諸国は、逆に EU の比較劣位産業であるアルミ及び石油
過去 2 度にわたるオイル・ブームは 970 年代から 80 年代に生じた。
2 加盟国は、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの 6 か国。
3 加盟国は、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア(以上 GCC 加盟国)に加え、チュニジア、アルジェリア、ジプチ、ヨルダン、スーダン、シリア、ソマリア、イラク、
パレスチナ、レバノン、モロッコ、モーリシャス、イエメン人民共和国の 9 か国。
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関連財において関税撤廃を求めるなど、総論賛成、各論反対といった膠着状態が 20 年間にわたり続くこととなってしまった。結局、2008 年 2 月 23 日、GCC 諸国のア ティーヤ(Abdulrahman Bin Hamad Al-Attiyah)事務局長は、EU との自由貿易協 定交渉の中止を表明するに至った4。
EU との交渉が難航する中、2008 年 2 月 5 日、GCC 諸国はシンガポールと域外 諸国としては初となる自由貿易協定を締結した。これによって、GCC 諸国はシンガ ポールからの輸入品の約 99%について関税を撤廃することに合意し、また、シンガ ポールも GCC 諸国からのすべての輸入品に課せられていた関税を廃止することに合 意した。この協定には投資や経済協力などの幅広い分野での自由化も盛り込まれてお り、今後両国(地域)での貿易、投資の増加は確実である。
もっとも、シンガポールは香港と並び、世界最高水準の貿易開放度をもつ国であり、
生産、消費市場と考えるよりはむしろ「中継ぎ港」と考える方が良いかも知れない。
このため、日本がそうであったように、関税障壁のほとんどないシンガポールとの間 で自由貿易協定が締結されたこと自体、驚くべきことではないかもしれない。しかし、
GCC 諸国が初の自由貿易協定をアジア諸国と結んだという意義は決して小さくはな い。シンガポールの華僑資本は、中国、マレーシアとも密接に関係している。その中 国は GCC 諸国との自由貿易協定についてはすでに 2004 年から交渉を開始している。
協定締結以前に中国製品の中東市場占有率を高めることで、いわばデファクト(事実 上)の市場支配力を構築していく戦略がよみとれる。原産地規制の問題は未解決で あるが、中国にとって、シンガポール経由での中東輸出が増加することは疑いない。
2009 年 2 月 日、胡錦濤国家主席はアティーヤ事務局長と会談し、GCC 諸国と中 国との間で早期に自由貿易協定(FTA)を締結したいと明言した5。過去の例から考 えてみても、中国が自由貿易協定締結までに費やす交渉時間は日本などに比べて極め て短いのが特徴である。中東市場を(原油供給国としてだけではなく)新たな消費市 場として考えていることを示すものである。
また、マレーシアも GCC 諸国との自由貿易協定締結には積極的である。国営ベル ナマ通信によると、2009 年 月 2 日、マレーシアのアブドラ首相は GCC 諸国との 自由貿易協定締結に向けた交渉を早急に開始させたいとの意向を示していたが、それ を受けて 3 月 8 日には GCC 諸国も今年中に交渉開始する意向であることを表明し
4 時事通信社の報道(2008 年 2 月 23 日)によると、アティーヤ事務局長は「われわれは EU 側に、FTA 自由貿易協定交渉の中止を伝えた」と述べるとともに、「EU 側が最新の協定案の署名に同意するまで交渉を 中止する」と明言した。そのうえで「GCC 諸国はこれまで譲歩を重ね、EU の多くの要求に前向きに応えて きた」と付け加えた。
5 新華社通信(英語版)の報道(2009 年 2 月 2 日)による。
3
た6。マレーシアにおいては、イスラム金融が世界金融危機の影響をあまり受けずに 済んだこともあり7、今後、「イスラム」という共通の枠組みで中東諸国との経済関 係を強化していくことが予想される。イスラムという枠組みであれば、インドネシア、
ブルネイなどといった東南アジア諸国も以前にもまして中東との貿易関係を深化させ る可能性がある。
以上の経緯を踏まえると、今日、中東諸国がアジアとの間で自由貿易交渉に積極的 になっている背景には、①域内貿易の行き詰まりから、域外(とりわけアジア諸国)
と自由貿易協定を締結することで貿易利益を得たいと願う中東諸国(とりわけ GCC 諸国)の思惑と、②華僑資本、イスラム金融を用いて、国家の枠組みを超えた経済的 な結び付きを強めたいと願うアジア(とりわけシンガポール、中国、マレーシア、イ ンドネシアなど)の思惑が大筋で一致している状況があるといえよう。
中東諸国とアジアとの経済連携への取り組みが進展する中8、日本は 2006 年 5 月に GCC 諸国と自由貿易協定の事前会合を行い、本格的な自由貿易協定交渉を開始した。
交渉は、2006 年 9 月(第 回会合)、2007 年 月(第 2 回会合)に行われている。交 渉過程では、原産地規制(原産地証明)の問題、非関税障壁をどのように扱うか、例 外品目をどの程度認めるかなど、リクエスト・オファーの交換がなされている。
また GCC 諸国は以前から域内単一通貨についても積極的に取り組んできたが、
2008 年 2 月の GCC 首脳会議で 200 年に通貨統合を行うことが承認された。為替リ スクが軽減されることになるため、域内経済取引が今後一層活発化することは疑いな い。GCC 諸国は現在、GCC 内部での取り組み、アジア・日本との対外的取り組みと いう 2 つの取り組みに積極的である。本稿では日本、アジア、中東諸国との貿易状況 を踏まえ自由貿易協定の効果について言及したい。
6 ムヒディン・ヤシン(Muhyiddin bin Haji Mohd. Yassin)国際貿易・産業相の発表による。
7 マレーシア中央銀行総裁のゼティ・アクタル・アジズ(Dr. Zeti Akhtar Aziz)総裁は、2008 年 月 25 日、HSBC Amanah マレーシア社開設の記念式典のスピーチで、「イスラム金融の存在が、アジアのみならず 全世界における新たな金融市場の拡大の一翼を担っており、資本の国際移動の円滑化に貢献している。イス ラム金融の成長を指し示す指標として、マレーシアのイスラム金融の資産総額は、対前年比で 23%増、2349 億リンギ ( 約 6 兆 040 億円 ) に達した。この結果、金融部門におけるイスラム金融のシェアは 6.7%に達し た。イスラム金融における預金残高は 27.7%増の 804 億リンギ(5 兆 420 億円)に、融資残高は 24.5%増の 434 億リンギ (3 兆 7263 億円 ) となった。こうしたマレーシアにおけるイスラム金融の発展を支えたのが支店 の新オープンである。今年の 月から 9 月にかけて、イスラム金融の支店が新たに 93 店オープンしている。
マレーシアのスクーク(シャリーアに基づいたイスラム債券)市場の成長も堅調であり、200 年以降、平均 年率 22%の成長を続けている」と世界金融危機の被害は軽微であると述べた(2008 年 月 25 日、国営ベル ナマ通信)。
8 中東諸国と貿易依存関係が強い韓国は、すでに第 回交渉(2008 年 7 月)、第 2 回交渉(2009 年 3 月)を行っ ており 、2009 年 7 月に第 3 回交渉をソウルで行う予定であり、年内の協定締結を目指している。
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2.中東諸国の貿易構造
()輸出・輸入・経常収支
中東諸国9との貿易を考える場合、原油価格の変動は極めて大きな意味をもつ。産 油国の輸出は、原油、天然ガス、石化製品に特化した構造をもつことが多いからである。
たとえば、サウジアラビアでは、2007 年の輸出総額に占める原油の輸出額が 88.%
であったが0、これは原油供給量の増加に加えて、原油価格の上昇が輸出額を押し上 げている側面も無視できない。したがって、原油価格の推移を見ておく必要がある。
993 年の原油年平均価格を .00 としたときの、2007 年までの原油価格推移を示し たものが図 である。993 年から 2004 年までは緩やかに上昇していることが読み取 れる。997 年から 998 年にかけて .26 から 0.92 へと下落しているが、これは 997 年のアジア通貨危機の影響を受けたものである。990 年代に入り、アジア諸国が経 済成長するに伴って、原油需要が増加し、中東産油国は原油供給量を増加させていた。
しかし、タイ・バーツの暴落に伴う通貨危機が引き金となって、アジアにおける資本 流出が加速して生産力が低下し、それに伴ってアジアでの原油需要が急激に減少した ため、一時的に原油市場が超過供給状態となって原油価格が下落したのである。
その後、通貨危機の渦中にあった ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国経済が回復 し、加えて中国、インド、ベトナムといったエマージング諸国が高度経済成長期に入っ たことで再び原油需要が増加した。中東産油国も原油供給量を増加させたが、「原油 価格は上昇する」という期待が市場に形成されたため、投機的需要が原油価格の上昇 に拍車をかけることとなった。2004 年以降の原油価格の高騰(第 3 次オイル・ブーム)
である。図 を見てもわかるように、2007 年の原油価格は 993 年の 4. 倍の高値となっ た。
9 本稿における中東諸国は、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジ アラビア(以上 GCC 加盟国)に加え、ヨルダン、スーダン、シリア、イラク、レバノン、イエメン(以上 PAFTA 加盟国)、エジプト、イラン、イスラエル、リビアを指す。
0 サウジアラビア通貨庁(SAMA)による。
図1 原油価格の推移
資料)日本石油産業活性化センター統計データベースより作成。
1.00
0.85 0.86 1.12
1.26
0.92 0.98
1.55 1.55 1.56
1.72 1.99
2.84 3.77
4.10
0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00 3.50 4.00 4.50
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007 原油・粗油CIF価格の年平均値
(1993年平均値=1.00)
こうした原油価格の推移を考慮して、中東諸国の貿易取引量の変化を見てみよ う。図 2 には中東諸国の対世界向け輸出、輸入、そして(経常)収支が示されてい る。139 億ドル(1993 年)だった輸出総額は、7132 億ドル(2007 年)へと .2 倍増 加している。原油価格が 4.1 倍増加したことを考慮しても、輸出額が近年増加傾向に あることがわかる。対世界向け輸入総額を見ると、1347 億ドル(1993 年)だったが、
21 億ドル 4.1 倍となった。収支はアジア通危機の影響を受けた 1998 年を除いて常 に黒字である。
また、中東諸国のアジア向け輸出総額は 493 億ドル(1993 年)から 276 億ドル(2007 年)へと .6 倍となった。原油価格の上昇を考慮しても増加傾向にあることが読み取
図 1 原油価格の推移
対中東・アジア.indd 7 2009/04/24 9:18:38
れる。アジア向け輸入総額は 273 億ドル(993 年)から 53 億ドル(2007 年)へと 4.2 倍となった。
中東諸国の対世界、対アジア向け貿易の動向をみると、原油価格変動の影響を直接 受ける輸出に関しては年によって変動が激しいが、輸入に関しては原油価格変動に関 係なく増加していることがわかる。産油国の国民所得の源泉は、原油資源そのもので ある。したがって原油価格が下落した際には(仮にラグはあったとしても)、その影 響が国民所得の減少といった形で表れ、外国製品の消費(輸入)量の減少を引き起こ すはずである。しかし、中東諸国という一つのまとまりで考えた場合、この地域にお ける輸入は、原油価格の(とりわけ下落に)影響を受けにくいという性質を持っている。
図2 中東諸国の貿易取引量の変化(対世界)
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は10億ドル。
-800.0 -600.0 -400.0 -200.0 0.0 200.0 400.0 600.0 800.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
輸出 輸入 収支
図 2 中東諸国の貿易取引量の変化(対世界)
7
国民所得の減少に伴って一般的に消費も減少するが、国民所得の減少率に比べて消費の減少率は小さい。
このため、消費に歯止め(ラチェット)がかかる。こうした事態が発生するのは、今期の消費が今期の所得 にのみ依存するのではなく、過去の所得水準にも依存するためである。デューゼンベリーによって提唱され た時間的相対所得仮説に基づく効果である。詳しくは Duesenberry(949)を参照のこと。
図3 中東諸国の貿易取引量の変化(対アジア)
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は10億ドル。
-150.0 -100.0 -50.0 0.0 50.0 100.0 150.0 200.0 250.0 300.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
輸出 輸入 収支
これは中東諸国における輸入において、いわゆるラチェット効果が働いている可 能性を示唆するものと考えられる。
(2)中東にとってのアジアの重要性
前項では中東諸国の世界、アジアとの貿易取引を金額ベースで検討し、貿易取引が 増加していることが分析された。しかし、原油価格の変動を除去した上で、貿易取引
図 3 中東諸国の貿易取引量の変化(対アジア)
対中東・アジア.indd 9 2009/04/23 14:03:31
の実態に迫るためには、中東諸国の対世界貿易に占めるアジア貿易の割合(シェア)
を考えるのが適当である。図 4 には、中東諸国の対世界貿易に占めるアジア貿易のシェ アが示されている。中東貿易に占めるアジア向け輸出は、アジア通貨危機の影響(998 年)など多少の変動は見られるものの、ほぼ 40%で安定的に推移している。輸入に関 しても 20%程度で安定的に推移しており、完全な輸出超過の状況が続いていることが わかる。
990 年以降の世界市場では、中国をはじめとするアジアのエマージング諸国の台頭 が著しく、世界貿易の構造が様変わりした。しかし中東諸国はアジア諸国と貿易をす ることによって、これからも利益を得られる可能性がある。
図4 中東諸国の対世界貿易に占めるアジア貿易のシェア
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は%。
37.2 40.2
42.4
36.6
19.9 20.4
36.3
42.8
39.1 41.8 41.2
39.2 39.5
36.8
39.4 39.7 38.8
20.3 18.8 17.6
17.6 17.7 19.4
21.5
20.9 22.5
21.0 20.5
19.6 20.9
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
輸出 輸入
図 4 中東諸国の対世界貿易に占めるアジア貿易のシェア
9
(3)日本、中国との貿易
中東諸国の日本、中国との貿易取引についてみてみよう。図 5 に示してあるように、
日本への輸出額は 240 億ドル(993 年)から 02 億ドル(2007 年)へと 4.3 倍となっ た。この変動は原油価格とほぼ同じ動きを示している。他方、輸入額は 36 億ドル(993 年)から 300 億ドルへと 2.2 倍しか増加していないのが特徴的である。中東諸国にお ける日本ブランドへの評価はおおむね良好であるにもかかわらず、中東諸国では日本 からの輸入があまり増加していない。理由の一つとして、中東市場における中国の台 頭が挙げられる。
図5 中東諸国の貿易取引量の変化(対日本)
-40.0 -20.0 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
輸出 輸入 収支
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は10億ドル。
図 5 中東諸国の貿易取引量の変化(対日本)
対中東・アジア.indd 11 2009/04/23 14:03:31
図6 中東諸国の貿易取引量の変化(対中国)
-60.0 -40.0 -20.0 0.0 20.0 40.0 60.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
輸出 輸入 収支
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は10億ドル。
図 6 中東諸国の貿易取引量の変化(対中国)
図 6 には中東諸国の中国との貿易取引量の変化が示されているが、2000 年以降中国 からの輸入量は急増し、もともと輸入超過傾向ではあったが、2007 年には、00 億ド ルの経常収支赤字を記録した。
アジアのみならず、世界経済において重要な地位を占める中国経済は、中東諸国の 対アジア貿易においても顕著である。図 7 には、中東の対アジア輸出に占める日本お よび中国向け輸出のシェアが示されている。日本への輸出は 48.7%(993 年)から 36.9%(2007 年)へと減少しているのに対し、中国への輸出は、2.6%(993 年)か
図7 中東諸国の対アジア輸出に占める日本および中国向け輸出のシェア
48.7
46.9 43.6
41.3 41.2
41.4 39.9
40.0 39.3
39.1 39.7
38.3 38.1
38.9 36.9
2.6 1.7
2.9 3.1
4.1 3.9
5.3 8.2
8.0 9.1
11.4 13.2
13.8 15.0 15.7
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
対日本 対中国
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は%。
図 7 中東諸国の対アジア輸出に占める日本および中国向け輸出のシェア ら 5.7%へと増加している。また、図 8 には、中東の対アジア輸入に占める日本およ び中国からの輸入シェアが示されている。993 年にはアジアからの輸入の 49.8%が日 本からの輸入であったが、2007 年には 26.%まで減少し、かわって、993 年にはア ジアからの輸入のうち .0%しかなかった中国からの輸入量が、2007 年には 46.4%と なっており、この 5 年弱で中東諸国の輸入構造における日本と中国の立場は完全に 逆転してしまっていることが読み取れる。
対中東・アジア.indd 13 2009/04/23 14:03:32
(4)中東諸国と日本、中国の貿易依存関係
貿易を通じた地域間のつながりをみる指標として、輸出(輸入)結合度という概念 がある。輸出(輸入)結合度とは、世界全体の輸出(輸入)額に占める相手国の輸出(輸 入)総額と、自国の輸出(輸入)総額に占める相手国向けの輸出(輸入額)との比で 表わされるものである。これが 以上であれば、両国は輸出(輸入)を通じた経済的 相互依存関係が深いということができる。
中東諸国と日本の輸出結合度の推移をみると、2007 年で 2.66 となっており、極め て強いつながりがあることがわかる。他方、中国も増加傾向にはあるが、輸出額が日 図8 中東諸国の対アジア輸入に占める日本および中国からの輸入のシェア
49.8
44.4
35.7 35.7
36.6 37.3
32.4
28.0 28.8
26.4 28.1 25.8
26.3 24.8
26.1
11.0 12.6
15.3 15.4
17.2 17.2
16.7 15.6
20.6 22.5 29.2
31.7 37.9
39.8 46.4
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
対日本 対中国
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics 注) 縦軸の単位は%。
図 8 中東諸国の対アジア輸入に占める日本および中国からの輸入のシェア
3
図9 中東のアジア、日本、中国との輸出結合度
1.64
2.15
2.25 2.31
2.45 2.74
2.66
0.14
0.34 0.27
0.38 0.57 1.58
1.84 2.04 1.99
1.78
1.87 1.91 2.01
1.90 1.88 1.81
2.00 2.04 2.05
1.72 1.76
2.02 2.13
1.982.04 2.16
2.31
2.16
0.23 0.26 0.30
0.51 0.51
0.56 0.57 0.58 0.61 0.59
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
対アジア 対日本 対中国
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics
図 9 中東のアジア、日本、中国との輸出結合度
本よりも少ないため、2007 年で 0.59 にとどまっている(図 9)。他方、輸入結合度を 見ると、中国との結びつきが年々強くなっており、2004 年以降、日本よりも強い結び 付きがあることがわかる(図 0)。
このように考えてみると、中東とアジア(日本、中国)における貿易を通じた相互 依存関係について、以下のことが言えよう。
①中東諸国の対アジア(日本、中国)輸出額は 2004 年の第 3 次オイル・ブーム以降、
急増しているが、それは原油価格高騰の影響を受けたものと考えられる。
②中東諸国の対アジア(日本、中国)輸入額は、原油価格の影響をあまり受けず、
増加傾向にある。とりわけ中国からの輸入が増加している。
対中東・アジア.indd 15 2009/04/23 14:03:32
③中東諸国のアジア貿易の重要性(すなわち世界貿易に占めるアジア貿易の割合)
は、原油価格の変化に関係なく輸出 4 割、輸入 2 割程度である。
④中東諸国におけるアジアでの貿易相手国として、日本の相対的重要性は年々低下 し、中国の重要性が増している。とりわけ、中東諸国への中国製品の輸入は、アジア からの輸入の 5 割近くに達し、日本と中国の地位は 5 年前と完全に逆転している。
図10 中東のアジア、日本、中国との輸入結合度
1.34
1.01
1.14 1.12 1.07 1.13 1.24 1.18
1.13 1.10 1.10
1.15
0.84 0.83 0.86 0.94
1.03
1.15 1.14 1.18 1.28 1.25
1.17 1.12 1.32 1.57
1.18 1.12 1.30
1.66 1.82
1.51
1.37 1.31
1.20
1.11 1.19
1.15 1.19
1.02
0.92 0.93
0.83 0.77
0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
1993 94 95 96 97 98 99 2000 1 2 3 4 5 6 2007
対アジア 対日本 対中国
資料)IMF, Dierction of Trade Statistics
図 10 中東のアジア、日本、中国との輸入結合度
5
3.貿易創出効果と貿易転換効果
前節では中東諸国からみたアジアとの貿易取引の現況について説明した。実際、
GCC 諸国が域外地域と自由貿易協定を締結した場合、どのような効果が期待されるの であろうか。
自由貿易協定に関する理論的な先鞭をつけたのはヴァイナー2である。その後、彼 の示した「貿易創出効果」と「貿易転換効果」について実証分析がなされるようになっ た3。貿易創出効果とは、自由貿易協定によって国内消費が増加し経済厚生(総余剰)
が増加する効果である。これは関税によって失われた貿易利益の回復に他ならない。
他方、貿易転換効果とは、自由貿易協定締結によって貿易相手国が変化することに伴っ て生じる負の効果である。一般に、関税を賦課している貿易相手国は、当該財におい て比較優位を持っていることが多い。この貿易相手国との間において関税撤廃を行う のではなく、第三の国と自由貿易協定を締結した場合に、自国における経済厚生は(自 由貿易を締結したにもかかわらず)逆に低下してしまう可能性がある。いいかえれば、
貿易転換効果とは、輸入財に強い国際競争力を持っていた国との輸入をやめ、国際競 争力の弱い国と自由貿易協定を締結してしまった結果生じる負の効果と考えることが できる。ここでは、簡単なモデルを用いて説明を試みる。
()貿易創出効果
小国である A 国(自国)が B 国(外国)と自由貿易協定を結んだケースを考えよう。
A 国の消費者は準線形(quasi linear)の社会的無差別曲線をもっており、需要曲線(D)
は右下がりの直線となっている状況を考える。また、企業の限界費用は当該財の生産 水準に比例して増加するものと仮定する。その結果、供給曲線(S)は右上がりの直線 で示されている。これを示したものが図 (左図)である。この図を用いて説明しよう。
第一段階として、A 国が B 国からの輸入財に関税をかけているとする。当該財の 国際価格は Og が与えられており、A 国は輸入財 単位あたり tg の(従量)関税を 賦課している状況を考える。関税賦課後の当該財の国内価格は Ot の水準となる。こ の国内価格水準での国内消費点は b、国内生産点は a である。したがって、国内には ab の幅分の輸入量があると考えられる。また、消費者余剰は△ cbt、生産者余剰(生 産者利潤)は△ tad であり、政府の得る関税収入は□ abfe である。このとき、経済 には死重的損失が△ ahf と△ bei の分だけ発生していることになる。
第二段階として自由貿易協定が結ばれた状況を考えよう。自由貿易は関税率をゼロ
2 Viner (950)を参照のこと。
3 他にも、交易条件効果や市場拡大効果といった効果もあるが、本稿では取り上げない。
対中東・アジア.indd 17 2009/04/23 14:03:32
にすることなので、国内価格 Ot が国際価格 Og まで下落する。その結果、輸入量が ih の幅に拡大して消費者余剰は△ cig に拡大するが、生産者余剰は△ ghd に減少す ることになる。また、関税収入は言うまでもなくゼロとなる。しかし、消費者余剰が 拡大した結果、死重的損失がなくなる。これが貿易創出効果である。
図11 貿易創出効果と貿易転換効果
P
P S S
c c
B b T
t a
g h i PB g i j h
f e
PC f e
d d
O
O x x
D D
(1)貿易創出効果 (2)貿易転換効果
TC a b
図 11 貿易創出効果と貿易転換効果
(2)貿易転換効果
次に、貿易転換効果について図 (右図)を用いて説明してみよう。前項で述べた 貿易創出効果の議論は、いわば、関税を賦課することによって経済厚生が悪化すると いうロジックの逆を述べたに過ぎず、直感的に理解しやすい。しかし、実は、関税を 撤廃すれば経済厚生は常に改善すると言い切ることはできない。自由貿易協定を締結 する際には、貿易転換効果と呼ばれる(いわば自由貿易協定の負の)効果も考慮せね ばならない。
ふたたび図 (右図)を用いて考えてみよう。貿易転換効果を考える際には、A 国(自 国)のほかに、B 国と C 国という 2 つの国を想定すると理解しやすい。
第一段階として、A 国が当初、当該財について B よりも強い競争力を持っている C 国から輸入している状況を考えてみよう。当然、C 国の財が(無関税で)輸入され ることになれば、当該財の国内価格水準は OPC 水準となり、A 国の国内市場におけ
7
4 木村・小浜(995)を参照のこと。
る生産者余剰(利潤)が大幅に減少してしまうために、A 国の生産者は政府に関税を 賦課するよう請願する。その結果、図の OTC 水準で国内価格が決定されている。こ のとき消費点は b、生産点は a、輸入量は ba の幅で表わされており、消費者余剰は△
cbTC、生産者余剰は△ TCad、関税収入は□ afeb となっている。
第二段階として、何らかの理由で、A 国が B 国と当該財についての自由貿易協定を 結んだと仮定しよう。ここで、注意すべきは B 国の当該財に関する競争力は、C 国よ りも弱いという点である。このため、当該財に関して、C 国は OPC の価格水準で市 場に取引されているが、B 国では OPB と、C 国よりも高い価格水準で取引されてい るのである。
A 国が B 国と自由貿易協定を結んだ結果、A 国の直面する国内市場価格は OPB 水 準となる。この価格水準は当然、それまで関税をかけて輸入していた C 国産の財より も安価である(OTC>OPB)なので、消費点は b から h へと移り生産点は a から g へ と移る。その結果、消費者余剰は△ chPB に増加し、生産者余剰は△ PBgd へと減少 する。また、関税収入はゼロとなる。A 国が B 国と自由貿易をする前後での経済厚生 の変化をみると、当初存在していた死重的損失の一部(△ agi プラス△ bhj)が新た に改善されたものの、関税収入のうち消費者余剰に吸収されなかった分(□ ifej)が 失われていることがわかる。
つまり、それまで、国際市場で競争力のある財の生産をしていた国に対して関税を 賦課して貿易取引を行っていた国が、国競争力のない国と自由貿易協定を結んでしま うと、経済厚生が逆に損なわれてしまうことが理論的にあり得るのである。このよう に、自由貿易締結によって貿易構造が変化して経済厚生を損なわせる状況を貿易転換 効果と呼んでいる。
貿易転換効果が貿易創出効果を上回る場合、自由貿易協定締結後の方が経済厚生が 悪化する可能性もある。
4.自由貿易の効果
そうはいっても、通常は貿易創出効果の方が貿易転換効果を大きく上回り、自由貿 易協定を締結した方が経済厚生は改善することが多いといわれている4。自由貿易協 定についての実証分析はすでに多くの先行研究がある。たとえば、Naya(980) で は、価格弾力性アプローチを用いて特恵関税制度(Preferential Tariff Arrangement;
PTA)による厚生変化を分析している。この分析では、域内での関税率引き下げによ る貿易創出効果が確認されている。一方、Ooi(98)も同様の研究を行なっている
対中東・アジア.indd 19 2009/04/23 14:03:33
が、彼の研究では経済開発に伴う途上国の貿易創出効果は無視し得るほど小さく、ま た、貿易転換効果は、貿易創出効果よりは大きいという逆の帰結を導いている。しかし、
こうした自由貿易協定の分析においてはいくつかの強い仮定が設定されているのが一 般的である。たとえば、Imada(993)では、Armington(969a)、(969b)で用い られた()すべての財は同質ではないという不完全代替の仮定、(2)需要関数は線 形でゼロ次同次性を満たすという仮定を前提として分析を行っている。
これらの先行研究を援用して中東諸国における自由貿易協定の効果を実証的に分析 しようとすると、中東諸国に関する産業連関表が必要であるが、中東諸国で産業連関 表を作成している国はイランとクウェートだけであるため分析は不可能である。
そこで、中東諸国と日本について、もし、中東諸国からの輸入財について関税が撤 廃された場合、日本経済にどれだけの影響があるかについて考察してみたい。
すでに述べたように、中東諸国と日本における貿易取引は決して大きくない。加え て、原油およびその関連財を輸入して工業製品を輸出するという垂直的貿易であり、
すでに原油に関しては 2006 年 4 月に輸入原油に関わる関税が無税化されている。中 東諸国、とりわけ GCC では域内関税率はゼロ、域外関税率は 5%程度であるため、
自由貿易協定の効果は小さいことが予想される5。2005 年の『産業連関表(34 部門表)』
を基に試算した。試算結果は表 に示してある通りである。予想通り、関税撤廃効果 は極めて小さい。最も利益を受ける輸送機械産業に関しても、0.7%程度の生産増加 しか望めない。
それでは、自由貿易協定締結を推進することに意味はないのだろうか。議論を中東、
日本という 2 国(地域)だけに限定すれば、あまり効果はないといえるかもしれない。
しかし、今日、中東諸国(とりわけ GCC 諸国)を取り巻く自由貿易協定の機運は非 常に高まっている。図 2 に示したように、2008 年末に GCC 諸国と EU との交渉が決 裂したのを見計らうかのようにシンガポールが初の自由貿易協定締結を果たし、交渉 中の日本、韓国、中国、マレーシアが GCC 諸国との自由貿易協定締結に向けて動き 出している。またアメリカは、各国交渉によってヨルダン、バハレーン、オマーンと の自由貿易協定をいち早く締結したものの、これに対してはサウジアラビア、UAE の反感もあって実際に機能している状況ではなく、GCC との自由貿易協定締結は喫 緊の課題である。
このような状況に鑑みると、貿易取引が少なく、また自由貿易協定締結後の生産量 増加効果が小さいからといって自由貿易協定に消極的な姿勢で臨んではいけない。ア
5 加えて、中東地域では非関税障壁が大きく、その結果、自由貿易協定締結による貿易創出効果を低めてし まう可能性も指摘できよう。
9
メリカ、韓国は日本と競合する工業製品が多く、マレーシアはイスラム金融で中東と 繋がっている。韓国は 2009 年内の締結を目指しており、中国は交渉から協定締結ま での期間が短かいという特徴がある。日本の優位性(日本ブランドへの高評価、ハイ テク部門での比較優位など)をあまりに過信しすぎると、中東諸国との自由貿易にお いて遅れを取り、ひいては日本にとって貿易利益を失う結果となりかねない。
表 1 中東諸国との自由貿易締結後の産出水準の変化
農林水産業 鉱業 飲食料品 繊維製品 パルプ・紙・木製品 化学製品 石油・石炭製品
増加率(%) 0.00 0.00 0.00 0.022 0.006 0.020 0.006 窯業・土石
製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 一般機械 電気機械 情報・通信機器
増加率(%) 0.004 0.054 0.025 0.063 0.053 0.063 0.00
電子部品 輸送機械 精密機械 その他の製造工業製品 建設 電力・ガス・
熱供給 水道・廃棄
物処理 増加率(%) 0.02 0.68 0.06 0.045 0.004 0.0 0.002
商業 金融・保険 不動産 運輸 情報通信 公務 教育・研究
増加率(%) 0.034 0.05 0.003 0.08 0.02 0.00 0.09 医療・保健・
社会保障・
介護
その他の公
共サービス 対事業所
サービス 対個人サー
ビス 事務用品 分類不明
増加率(%) 0.000 0.00 0.032 0.000 0.00 0.002 資料)内閣府『2005 年版産業連関表(34 部門逆行列表)』より試算。
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EU
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図 12 GCC 諸国の自由貿易協定交渉
2
5.結語と課題
以上、対中東・アジア自由貿易協定の影響に関して現況を整理しつつ、その効果に ついて議論してきた。中東と日本の貿易取引は増加しているが、原油価格の上昇を考 慮すると、それほど大きいものではない。しかも、中東諸国はアジアのパートナーと して日本より中国にシフトしてきている。労働集約的な工業製品に関しては日本より も中国に比較優位がある。日本にとってこの劣位は動かしようのないものである。し かし、日本企業の技術力は世界市場において高い評価を得ている。自由貿易協定その ものの効果は小さくとも、協定締結競争に乗り遅れることによって、市場から締め出 されるようなことになれば、技術の評価、価値も目減りしてしまうだろう。
今回の調査では、中東諸国と日本という 2 つの国(地域)での分析にとどまったが、
より大事なのは、協定締結に遅れた場合に被る経済コストや協定締結に失敗したとき に被る長期的な経済厚生の損失であろう。これについては、より詳細な分析が要求さ れよう。
参考文献
Armington, P. S. (969a), “A Theory of Demand for Products Distinguished by Place of Production”, IMF Staff Papers, Vol.6, No. March.
Armington, P. S. (969b), “The Geographic Pattern of Trade and the Effects of Price Changes”, IMF Staff Papers, Vol.6, No.2 July.
Duesenberry, J. S. (949), Income, Saving, and the Theory of Consumer Behavior, Harvard University Press(大熊一郎訳 , 『所得・貯蓄・消費者行為の理論』, 松 堂出版 , 955.改訳 3 版 , 975).
Imada, P. (993), “Production and Trade Effects of An ASEAN Free Trade Area”, The Developing Economies, 3- pp.3-23.
Naya, S. (980), Trade and Development Cooperation: Preferential Treating Arrangements and Trade Liberalization, Geneva: U. N. Conference on Trade
and Development.
Ooi, G. T. (98), “The ASEAN Preferential Trading Arrangement (PTA): An Analysis of Potential Effects and Intra - ASEAN Trade”, Research Notes and Discussion Papers, No. 26, Singapore: Institute of Southeast Asian Studies.
Viner, J. (950), The Customs Union Issue, New York: Carnegie Endowment for International Peace.
木村福成・小浜裕久(995),『実証国際経済入門』, 日本評論社 .
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イスラム金融と対中東経済関係の強化
23
イスラム金融と対中東経済関係の強化
1.イスラム金融市場の拡大とマレーシア
2001 年に発生した米中枢同時テロを機に、とりわけキリスト教文化圏である欧米に おいて、イスラム世界への敵意が顕在化する傾向が強まった。一部の突出した過激派 の行動をイスラム教徒全体と結びつける見解には反発しつつも、イスラム世界におい てはイスラム教徒としての自己の存在を逆に強く意識することによって、傷ついた自 尊心の修復を図ろうとする動きが見られるようになっていく。それはキリスト教徒が テロ行為に及んでもキリスト教世界が批判されることはないにもかかわらず、イスラ ム世界はなぜそうした批判に晒されねばならないのかという反発から、イスラム教独 自の価値に優位性を見いだそうとする積極的な姿勢として観察することが可能であっ た。
そうした中 2004 年以降の原油価格上昇を受け、湾岸の産油国を中心として中東イ スラム世界は、余剰資金の運用や新規プロジェクト事業での資金調達等にイスラム的 価値に適合した金融方式(イスラム金融)の活用を図っていった。実際 2008 年 7 月 にはバレル当たり 150 ドルに迫った原油価格の勢いもあり、イスラム金融市場は急速 な拡大ぶりを示した。なお初期的段階の分野ということもあり、世界全体で同市場の 規模を正確に把握しうる状況にはないものの、それは潜在的には 4 兆ドル、そのうち すでに現実化しているのは 7000 億ドル前後と推測されている。
2008 年 9 月以降の原油価格下落を受け、油価は現在バレル当たり 50 ドルを前後す る水準にあるが、イスラム金融への国際的関心が一気に萎んでしまうことはなかった。
というのもイスラム金融への国際的関心は、中東の豊富な石油資源やそれに基づくオ イルマネーの中長期的な重要性に支えられている。例えば元々マレーシアは 1980 年 代から、人口の 60%を占めるイスラム教徒住民(マレー人)の経済状態改善を目的に、
イスラム金融の普及を図っていた1。利子を容認する通常の金融手段を否定するイス ラム的価値を背景に、マレー人の多くは保有資産の運用や必要資金の調達面で様々な 制約に直面しており、他の要因も含めた結果として彼らは国内における経済的立場を 弱いものとしていた。
そのため同国政府は、通常金融に代わる手段としてイスラム金融の活用を図り、
1983 年にイスラム銀行法を制定した。これに基づく最初のイスラム銀行がバンク・イ
1 マレーシアの事情について詳しくは、岩田佳也「マレーシアにおけるイスラム金融の現況と発展への課題」
『イスラム金融研究会』財団法人国際金融情報センター 平成 19 年 3 月。
イスラム金融.indd 3 2009/04/22 14:32:14
スラム(Bank Islam Malaysia Berhad)であり、その後 1993 年には通常の金融機関 がイスラム銀行業務に参入することも可能となった。また 1996 〜 97 年には中央銀行
(Bank Negara Malaysia)と証券委員会にシャリア委員会を設置し、国家として統一 的にイスラム金融の制度や実務がイスラム的価値と整合しているかどうかを判断しう る基盤を整えた。各イスラム金融機関が独自のシャリア委員会を抱え、それぞれの見 解が時として矛盾する中東型とは異なり、マレーシア型は国全体でシャリア解釈の統 一性を保つことが可能となり、イスラム金融の国際化に当たって透明性への評価を高 めていく。
イスラム金融制度の充実に続いてその国際化に動いたマレーシアは、2003 年にイ スラム金融部門への外資参入を認める一方、2005 年には外資による同国イスラム金 融機関への出資比率規制を緩め、これを 30%から 49%へと引き上げた。これを受け、
クウェート、サウジアラビア、カタールのイスラム金融機関の出資により、2005 年に クウェート・ファイナンス・ハウス(Kuwait Finance House Malaysia)、2006 年に アル・ラジ・バンキング&インベストメント・コーポレーション(Al-Rajhi Banking
& Investment Corporation Malaysia)が設立されたほか、バンク・イスラムはアラ ブ首長国連邦(UAE)のドバイ・インベストメント・グループ(Dubai Investment Group)から 40%の出資を受けるに至っている。当初はマレー系住民に対する経済的 活性化策から始まったマレーシアの試みは、次第にオイルマネーの引き寄せを目指す 対中東産油国経済関係強化策の一面を浮き彫りにしだしているといえよう。
ただ、オイルマネーや石油資源を有する中東産油国との経済関係強化の重要性は、
マレーシアのみならず他の石油消費国にとっても同様である。事実、その後はイギリ スやドイツ等の欧州諸国に加え、米国やシンガポールといった国が相次いでイスラム 金融分野への参入へと動いてきた。
日本も例外ではない。国際協力銀行はすでにプロジェクト・ファイナンス分野でイ スラム金融方式を採用した実績を有しているほか、世界金融危機の影響で延期されて いるとはいえ、イスラム債(スクーク:sukuk)の発行も計画している。またイスラ ム保険(タカフル:takaful)分野の開拓者としても有名な東京海上日動はマレーシア をはじめ、インドネシアとサウジアラビアにおいて保険の元受業務を行っている。
こうしたイスラム金融への世界的関心にとって、2008 年 9 月に発生した米国発の世 界金融危機は重要な試金石となった。
25
2.世界金融危機とイスラム金融
イスラム金融市場の拡大は急速なものであった。過去 10 年の間に世界で同金融資 産は年率 10%を超える成長を続け、イスラム金融方式を利用する金融機関も 75 か国 で 300 以上に達していた2。かかる急速な拡大を支えたのは、イスラム債(スクーク)
発行額の急増にほかならない。スタンダード&プアーズによれば、2005 年時点で 100 億ドル程度にとどまっていた世界のイスラム債発行残高は 2007 年には 600 億ドルに 達し、2008 年 7 月末の時点で 700 億ドルを突破した3。そのままの状態が続いた場合、
発行残高が 1,000 億ドルの大台に達するのに 2 年あれば十分な状況であった。
しかしながら 2008 年 9 月の米リーマン・ブラザーズ破綻を機とする世界金融危機 は、イスラム金融市場をも直撃した。利子とともに投機を禁じ、また実物資産に基づ かない金融取引を嫌うイスラム的価値との整合性を事前に審査される手続きを踏むこ とで、社会的責任投資(SRI: Socially Responsible Investment)の観点からも一定の 評価を得ていたイスラム金融に対しては、リーマン・ブラザーズの破綻をもたらした ようなサブプライム・ローンの可能性は低く、それゆえ今回のような金融危機とは無 縁との強弁も当初は聞かれた。だが現時点から振り返ったとき、イスラム金融分野に おいても世界金融危機の影響は明白であった。
表 1 2008 年のイスラム債発行状況
(単位:億ドル、%)
2008.I -III 平均 2008.IV I -III → IV 変化率
発行数 46 26 -43.9
発行額 48 8 -83.2
出所:Islamic Finance News, Vol.6, Issue 10 (27th February 2009).
確かに発行されたイスラム債の数のみに注目すれば、2008 年の 165 は前年の 129 を上回っているものの、より詳細に 2008 年のイスラム債発行状況をみた表 1 によれ ば、世界金融危機の全貌が浮き彫りとなる同年第Ⅳ四半期に至って、債券の発行数は
△ 43.9%(46 → 26)、平均発行額は△ 83.2%(48 億ドル→ 8 億ドル)の減少を余儀な くされている。前述した理由によりイスラム債自体はサブプライム・ローン的危険を 排して成立しているとはいえ、金融危機を受けた世界の流動性不足や投資家心理の冷 え込みは、イスラム金融市場をも否応なしに襲ったことが明らかであろう。
2 Global Investment House, “Sukuk Market – Down But Not Out (Final Part),” Islamic Finance News, Vol. 6, Issue 9 (6th March 2009).
3 Standard & Poor’s, “Sukuk Market Picks up Pace Despite Gloomy Conditions,” Islamic Finance News, Vol. 5, Issue 37(19th September 2008).
イスラム金融.indd 5 2009/04/22 14:32:14
2004 年以降の原油価格上昇を受け、イスラム債の発行額が急速な増加局面にあった 2005 年以降の状況にも、明らかな変化が訪れた(図 1)。実際 2005 〜 2007 年に 76 億 ドルから 332 億ドルへと 4.4 倍増を記録していた発行額は 2008 年、前年から 54.4%減 少して 151 億ドルとなった。これは 2 年前を下回る水準である。
図1 イスラム債発行額の推移(2005〜2008年)
0 50 100 150 200 250 300 350
出所:Islamic Finance News , Vol.6, Issue 10(27th February 2009).
発行額(単位:億ドル)
-100 -50 0 50 100 150 200
対前年変化率(単位:%)
イスラム債発行額 76 187 331 151
対前年変化率 146.1 77.0 -54.4
年 8 0 0 2 年
7 0 0 2 年
6 0 0 2 年
5 0 0 2
図 1 イスラム債発行額の推移(2005 〜 2008 年)
出所:Islamic Finance News, Vol.6, Issue 10 (27th February 2009).
27
表 2 国別イスラム債発行額(2007 〜 2008 年)
(単位:100 万ドル、%) 2007 発行額 2008 発行額 2007 構成比 2008 構成比 07 → 08 寄与度
バハレーン 1,065.0 700.4 3.2 4.6 -1.1
サウジサラビア 5,716.3 1,873.2 17.2 12.4 -11.6
クウェート 835.0 190.0 2.5 1.3 -1.9
カタール 300.0 300.9 0.9 2.0 0.0
マレーシア 13,412.9 5,470.4 40.4 36.3 -23.9
パキスタン 524.3 476.2 1.6 3.2 -0.1
ブルネイ 279.3 95.1 0.8 0.6 -0.6
UAE 10,807.5 5,300.2 32.6 35.1 -16.6
インドネシア 92.8 663.3 0.3 4.4 1.7
ガンビア 0.0 12.6 0.0 0.1 0.0
スダン 130.0 0.0 0.4 0.0 -0.4
世界計 33,163.1 15,082.3 100.0 100.0 -54.5
出所:Islamic Finance News, Vol.6, Issue 10 (27th February 2009).
表 2 は国別に世界のイスラム債発行額を比較したものだが、2007 〜 2008 年にはカ タール、インドネシア、ガンビアの 3 か国を例外として、他の国は全て発行額を減少 させたことが分かる。もっとも以下にまとめるように発行額を増加させた 3 か国は 元々の発行額が少なく、全体への影響力は小さかった。これを示すのが 3 か国の寄与 度であり、それらの合計は 1.7%にすぎない。
07 発行額 08 発行額 07 構成比 08 構成比 07 → 08 寄与度
カタール 300 300.9 0.9 2 0
インドネシア 92.8 663.3 0.3 4.4 1.7
ガンビア 0 12.6 0 0.1 0
世界全体 33,163.10 15,082.30 100 100 -54.5
出所:表 2
他方、世界全体の発行額減少に大きな影響を与えた国は、順にマレーシア、アラブ 首長国連邦(UAE)、サウジアラビアの 3 か国であった。ある意味で 2008 年のイスラ ム債発行額の急減は、かかる 3 か国の減少といっても過言ではない。以下の通り 2007 年には 90.3%に達していた 3 か国合計の構成比も、2008 年には 83.8%へと低下してし まっている。
イスラム金融.indd 7 2009/04/22 14:32:14
07 発行額 08 発行額 07 構成比 08 構成比 07 → 08 寄与度
サウジアラビア 5,716.3 1,873.2 17.2 12.4 -11.6
マレーシア 13,412.9 5,470.4 40.4 36.3 -23.9
UAE 10,807.5 5,300.2 32.6 35.1 -16.6
世界全体 33,163.1 15,082.3 100 100 -54.5
出所:表 2
結局のところ、資産の裏づけがなくともカネがカネを生む投機的構造、とは無縁で あるがゆえに、イスラム金融市場にとって世界金融危機は外部の出来事にすぎないと の楽観は否定されざるをえない。またであればこそイスラム債市場では現在、欧米を 中心とした外国資金を標的とするドル建て債券の割合が急速に低下する一方、発行さ れるイスラム債の規模縮小が顕著となっている。
まずイスラム債のドル離れについてみると、2007 年に全体の 41.2%、総額 139 億ド ルに達していたドル建てイスラム債は、2008 年には全体の 10.1%、総額 15 億ドルに 低下した。同じ期間に発行数も、27 から 5 へと 5 分の 1 以下になっている4。また発 行されるドル建てイスラム債の規模は、2007 年に 2 億 5,700 万ドルだった平均発行額 が 2008 年には 9,100 万ドルへと縮小した。
原油価格の上昇による巨額のオイルマネーを背景に、2006 年にアラブ首長国連邦
(UAE)で発行された 30 億ドルを超える複数のイスラム債は、イスラム金融分野に 国際的関心を高めるのに十分な意味をもった。こうしたイスラム債のシャリア適格性 審査を行ったドバイ在住のフセイン・ハミド・ハッサン師(Hussein Hamid Hassan)
は、イスラム金融の国際化を予想し、「2、3 年後には全ての湾岸諸国がイスラム金融 制度へと移行する5」との見通しさえ明らかにしていたが、そうした予想は少なくも 近い将来に実現することはありえない状況に陥っている。逆に UAE をはじめイスラ ム債の発行を主導した国々においても、債券規模の縮小は顕著となっている。UAE が 2008 年に発行したイスラム債は合計 10、発行総額は 53 億ドルで、平均発行額は 5 億 3000 万ドルであった。サウジアラビアの場合は同 4、18 億 7,300 万ドルの 4 億 6,800 万ドル、マレーシアの場合は同 54、54 億 7,000 万ドルの 1 億 100 ドルであった。
ただ、以上のようなイスラム債発行額の縮小は、世界金融危機のみの影響ではなかっ た。ここで同時に考慮されねばならないのは、新たな金融方式の成熟化に不可避的に 伴う混乱であった。
4 Global Investment House, “Sukuk Market - Down But Not Out (Part I), Islamic Finance News, Vol. 6, Issue 10 (27th February 2009).
5 “How to Be Islamic in Business,” The Economist (電子版), Jun 7th 2007.