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(2) ツメガエル初期胚における Wnt シグナリングの細胞生物学的研究

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(1)ツメガエル初期胚におけるWntシグナリングの細胞 生物学的研究 著者 ファイル(説明). 学位授与番号 URL. 本村 恵理子 博士論文全文 博士論文要旨 最終試験結果の要旨 論文審査の要旨 17701乙理工論第69号 http://hdl.handle.net/10232/24434.

(2) ツメガエル初期胚における Wnt シグナリングの細胞生物学的研究. Cell biological analysis of Wnt signaling in early Xenopus embryos. 2015 年 3 月 本村. 恵理子.

(3) 第1章 1-1. 序論 ....................................................................................... 5 オーガナイザーの発見 ..................................................................... 5. 1-2 オーガナイザーの形成 ........................................................................ 5 1-2-1 受精による卵の表層回転 ................................................................. 5 1-2-2 中胚葉誘導説を支持する実験的根拠 ................................................ 6 1-2-3 植物極側背側決定デターミナントによる自律的形成を支持する実験 的根拠 ...................................................................................................... 7 1-3 Wnt/-catenin 経路と Wnt 作用に関する一般的なモデル .................... 10 1-4 Wnt8 mRNA 注入によって形成される二次軸 ..................................... 10 1-5 PBE を用いた実験系 .......................................................................... 11 1-6 研究の目的 ........................................................................................ 11 1-6 本論文の概要 ................................................................................... 13. 第2章. 材料と方法 ........................................................................... 15. 2-1 卵の準備 .......................................................................................... 15 2-2 胚の培養液 ....................................................................................... 15 2-3 精子の準備 ....................................................................................... 15 2-4 人工授精とゼリー層の除去 ............................................................... 16 2-5 植物極側切除胚の作成 ...................................................................... 16 2-5 プラスミドと mRNA 合成 ................................................................. 17 2-6 マイクロインジェクション ............................................................... 17 2-7 RT-PCR ............................................................................................ 18 2-8 免疫組織化学的方法によるタンパク質の検出 ..................................... 19 2-9 組織化学的染色と whole mount in situ hybridization ........................ 19 2-10 割球解離実験 ................................................................................. 20 2-11 Wnt/Frzb 注入割球の組み合わせ胚作成 ............................................ 20. 2.

(4) 第3章. 様々な mRNA 注入による背側化と Wnt タンパク質の局在の結果. と考察. 21. 3-1 Wnt8 mRNA の注入による背側化と Wnt8 タンパク質の局在 .............. 21 3-2 Wnt8-KDEL mRNA の注入による背側化と Wnt8-KDEL タンパク質の局 在 .......................................................................................................... 22 3-3 SP-Wnt8 は胚を背側化しなかった ................................................... 22 3-4 免疫組織化学的染色の前のメタノール処理の有無による Wnt タンパク質 の局在 .................................................................................................... 23 3-5 Frzb mRNA の共注入による背側化と Wnt タンパク質の局在 .............. 24 3-6 ニワトリ Wnt3a mRNA の注入, および Frzb mRNA との共注入による背 側化とタンパク質の局在 ......................................................................... 25 3-7 Wnt8-KDEL mRNA と Frzb mRNA の共注入による阻害と Wnt8-KDEL タンパク質の局在 ................................................................................... 26 3-8 Wnt mRNA 注入胚の割球解離による背側遺伝子の発現と Wnt タンパク質 の局在 .................................................................................................... 26 3-9 Wnt8 mRNA と Frzb mRNA を個別に注入した割球による組み合わせ胚の 背側化 .................................................................................................... 28 3-10 組み合わせ胚を用いたレポーターアッセイ ...................................... 29. 第4章. Wnt8 により誘導される chordin の発現結果と考察 .............. 30. 4-1 中胚葉誘導と chordin の細胞自律的な発現 ........................................ 30 4-2 反転胚の植物極側細胞質デターミナントによる chordin の発現 .......... 30 4-4 Wnt タンパク質による chordin の発現と n-gal を用いた注入割球追跡 31. 第5章. 従来のモデルと本研究により新規に提案するモデル .............. 33. 参考文献 ................................................................................................ 34 謝辞 ....................................................................................................... 40. 3.

(5) 図表 ....................................................................................................... 41. 4.

(6) 第1章. 序論. 1-1 オーガナイザーの発見. オーガナイザー (形成体 ) の概念は , イモリを用いた移植実験により 提唱された (Spemann and Mangold, 1924). 色素の量が異なる 2 種のイ モリをもちいて, その初期原腸胚の原口背唇部を切り取り , 宿主となる別 の初期胚へ移植すると, もう一つの体軸が形成された. この二次胚の組織 は大部分が宿主由来であったことから, この原口背唇部は, 本来体軸を形 成する運命にない細胞群へ作用することによって, 正常な体軸と同等の体 軸形成を導くという意味を込めて「形成体:オーガナイザー」と命名され た. その後 90 年間にわたり, オーガナイザー研究は盛んに行われ, マウス, ニワトリやゼブラフィッシュなど他の脊椎動物にも, 二次軸を誘導する能 力 を 持 つ 領 域 が あ る こ と が 発 見 さ れ た (Lemaire and Kodjabachian, 1996; Shih and Fraser, 1996). オーガナイザー形成機序の形態学的, 分子 生物学的な知見の大半は, ツメガエル ( Xenopus laevis ) を実験材料に用 いた研究により報告されている.. 1-2 オーガナイザーの形成. 1-2-1 受精による卵の表層回転. ツメガエル卵には, 未受精卵の状態では卵黄顆粒が少ない動物極 側と大きな卵黄顆粒に富む植物極側との動植物軸がある . また, 卵は表層, 5.

(7) 滑り層と内部細胞質塊の 3 つに分けられる. 卵は精子の侵入により表層直 下の微小管の配列が形成され, 侵入点と動植物軸をとおる面を中心に , 表 層が精子侵入点側では植物極側へ, その反対側では動物極へ向かって上昇 する. この受精に伴い起こる現象によって, 将来の背腹が決定されること が分かっている (Gerhart et al. , 1989).. 1-2-2 中胚葉誘導説を支持する実験的根拠. ①. Nieuwkoop (1973) は初期胚の動物極側の予定外胚葉を植物. 極側の予定内胚葉と組み合わせて培養すると, 予定外胚葉が中胚葉へと分 化したことから, 植物極側内胚葉から動物極側内胚葉への何らかの誘導が 行われていると報告した. ②. Dale ら (1987) は, もっと早い卵割期の 32 細胞期の胚を用. いた組み合わせ実験を行っている. 32 細胞期の胚は, 理想的に動物極から 植物極へ A 段から D 段までの 4 段に分かれており, 最も背側の割球を 1, 最も腹側割球を 4 と呼びそれぞれの割球が識別できる. Dale らはこの動物 極側の A 段と, 植物極側 D 段の背側から腹側のそれぞれ一割球とを組み合 わせて培 養し たとこ ろ , 最も背側の 植物 極側割球 との 組み合 わせから は , 77% で背側中 胚葉 が形成され , 最も腹側の植物極側割球と の組み合わせ からは, 84% で中間から腹側の中胚葉が形成された. このことから, 腹側 の植物極側組織は腹側中胚葉を, 背側植物極側の組織は将来オーガナイザ ーとなる背側中胚葉を誘導すること, つまり, 中胚葉誘導の因子には背腹 の質的な差があることが示された. ③. 中村ら (1970) は, 卵割期の様々なステージで C1 割球または. C1 割球由来の領域を単離培養後 , どの組織へと分化したのかを報告して い る. 32 細胞期で 単離した場合 , 中胚葉組織 へ はほとんど 分化しない が 6.

(8) 128 細胞期以降の単離では, そのほとんどが脊索や筋節などに分化してい ることが報告されている.. これらの実験により, 外胚葉予定領域が内胚葉との接触によって, 実験 的な系において中胚葉になりうること, さらに, オーガナイザー領域の細 胞が自律的に中胚葉組織へ分化する能力を獲得するのは 128 細胞期以降で あることから, 正常発生でも, オーガナイザー形成は 卵割期の植物極内胚 葉からの連続的な細胞間相互作用, つまり, 誘導によってできると思われ た. ツメガエル胚におけるオーガナイザーの形成メカニズム において, こ の 「 中 胚 葉 誘 導 」 仮 説 は , 従 来 よ り , 主 流 を 占 め て き た (Gimlich and Gerhart, 1984; Slack, 2012; Smith, 1993). しかしながら, 次節に述べる 様に中胚葉誘導によってではなく, 卵細胞内に最初から存在する因子 (細 胞質デターミナント) によってオーガナイザーが形成されるというアイデ ィアもまた提出されている.. 1-2-3 植物極側背側決定デターミナントによる自律的形成を支持 する実験的根拠. ① 影浦 (1990) は, 32 細胞期の胚を用いて 1 個の割球を別の胚の同じ 段と 腹側割球と入れ 替えて発生させた と きの二次軸形成能を 確認 し て い る . 二 次 軸 形 成 能 は 植 物 極背 側 赤 道 に あ る 予 定オ ー ザ イ ザ ー領域 C1 割球で 96% と最も高く, 背側植物極側の割球 D1 からの 働きかけがなくても, すでに 32 細胞期にはオーガナイザー形成能 は確立されている事が示された. ② Lemaire ら (1994) は, 正常胚を 32 細胞期から継続して解離させ, 7.

(9) その後オーガナイザー関連遺伝子である goosecoid の発現を解析し たところ, 解離された細胞 (細胞間相互作用を無くした細胞つまり, 植物極側割球からの誘導を受けない場合 ) でも, goosecoid 発現す ることを報告している. ③ 長野ら (2000) は, 32 細胞期の割球を, D 段と ABC 段をそれぞれ背 腹 に 分 け て 培 養し , そ の 後 オ ー ガナ イ ザ ー で 発 現 す るこ と が 知 ら れている siamois と chordin の発現を解析したところ, 背側の割球 は単独でもそれら背側遺伝子が発現することを報告した. また, 植 物極側細胞の D 段細胞も背側遺伝子が発現している事から, 元々 この部分にもオーガ ナイザーの一部が含 まれているの ではな いか という事が示された. さらに, 32 細胞期の背側細胞 D1 割球を腹側 の割球を D4 の位置に移植し, その後様々な時期で移植部位の上部 のみを切り出し培養を行っている. この実験で, どの時期に切り出 し た 外 食 体 か らど の よ う な 組 織 が出 来 て い る か を 調 べ , 自 律 的 に 発現した背側遺伝子 に よ る 背側構造の誘 導が起こる時期を調 べて いる. その結果, 切り出し時期が移植後 5 時間から 5.5 時間以上の 時期 (MBT; Midblastula transition, 卵割期が終わり, 接合子由来 の 遺 伝 子 の転 写 が 開 始さ れ る 時期 に あ た る ) 以降 に 切り 出 し た外 植体では体節や胴尾 などの背側構造 が誘 導され ていることを 報告 している. このとこから, オーガナイザーとなる領域の細胞は MBT 以降に自律的に背側化することが示唆された. ④ 勝本ら (2004) は, オーガナイザーの形成, つまり背側構造・体軸 の形成には何が必要かを検討している. 1 細胞期の表層回転が起こ る前に植物極側を取り除き, 20-40% 取り除いた原腸陥入はするが 体 軸 を 持 た な い 卵 片 GNE (gastrulating nonaxial embryo) と , 60% 以上と大きく取り除いた原腸陥入を しない永久胞胚となる卵 8.

(10) 片 PBE (permanent blastula-type embryo) とを作製し実験を行っ ている. これらの卵片の母性由来中胚様因子である VegT mRNA の 発 現 を 解 析 し たと こ ろ , 正常 胚 で 植 物 極 か ら 動 物 極 にか け て 勾 配 をもって局在する VegT mRNA は, 植物極側を 60% 以上切除した PBE ではほぼ発現していないことが報告された. この PBE に, 1 細 胞期の背側デターミ ナントを含むと考え られる最も植物極に ある 細胞質と, オーガナイザーが出来る領域 (帯域) の細胞質を抜き取 り, 少し位置をずらして注入することで, 頭部に特徴する目やセメ ント線, 胴尾構造を持つ体軸が形成された. また同様に, 中胚葉因 子である VegT mRNA を PBE に注入し, 勾配を形成させ, さらに 背側デターミナントを代替すると考えられている Wnt8 mRNA と VegT mRNA を共注入すると, 体軸が形成されることを報告してい る.. これらの実験は, 次のようにまとめることができる. •. 予定オーガナイザー領域の細胞はその背側化に下方からのシグナル を必要としない (Kageura, 1990).. •. 割球解離によって細胞間相互作用をなくしてもオーガナイザー遺伝 子は発現する (Lemeire and Gurdon, 1994).. •. オーガナイザーとなる領域の細胞は MBT 以降に自律的に背側化し, オーガナイザーの細胞になる (Nagano et al , 2000).. •. 体軸の形成には細胞質デターミナントの帯域への移動が必要 である (Katsumoto et al , 2004).. そこで, 坂井らは, 受精卵の植物極にある背側デターミナントが表層回 転によって一方向に運ばれ, VegT mRNA (母性由来中胚葉因子) の適切な 濃度の領域 (帯域) と混ざり合ったところでオーガナイザーが形成される 9.

(11) と い う モ デ ル を 提 出 し て い る (Sakai, 1996; Katsumoto et al ., 2004; Sakai, 2008). ここで は, オーガナイザー領域の細胞が , 卵割期の終わり (MBT) 以降に背側の植物極側 割球が単独で背側遺伝子を発現し , オ ーガ ナイザーは細胞内の因子によって自律的に形成されると主張している.. 1-3 Wnt/-catenin 経路と Wnt 作用に関する一般的なモデル. 前述した細胞質デターミナントによる背側形成モデルは , 分子レ ベルでは次のように説明される. デターミナントによるオーガナイザー形 成 に は 分 子 レ ベ ル で Early Wnt 経 路 が 重 要 な 役 割 を 果 た す (Moon, 2005a; Moon, 2005b). 従来, Wnt は分泌性因子で, Wnt タンパク質はいっ たん細胞外へ放出され, 細胞表面にある Frizzled-LRP 複合体と結合して 機能すると考えられてきた. このモデルは, Wnt タンパク質が細胞表面に 局在することにより支持されてきたが, その観察は Wnt が背側化に働くと 考えられる時期より遅い時期 (原腸陥入の直前) に行われている (Yang-Snyder et al ., 1996). そこで, 本研究では Wnt が背側化に働く時期, つ ま り は 背 側 化 が 起 こ る と 予 想 さ れ る 卵 割 期 の 終 わ り , 4000 細 胞 期 (MBT) に Wnt タンパク質の細胞内の局在を観察することとした.. 1-4 Wnt8 mRNA 注入によって形成される二次軸. これまでに背側デターミナントの正体に迫る研究は多く行われ, その候補として-catenin (Rowning et al ., 1997; Larabell et al ., 1997), Wnt11 (Tao et al ., 2005), Dishevelled (Itoh et al ., 2005) などが挙げられ ているが, いずれにおいても決定的 な実験的根拠は示されておらず, その 正体はいまだわかっていない. ツメガエルの Wnt8 はその mRNA を胚の腹 10.

(12) 側 帯 域 に 注 入 す る と , ほ ぼ 完 全 な 二 次 軸 を 形 成 す る こ と や (Smith and Harland, 1992; Christian et al. , 1992), -catenin の上流で働くことから (Heasman et al. , 1994; Moon, 2005a; Moon, 2005b) 背側デターミナント を代替して働いていると考えられる. 正常胚において, Wnt8 はオーガナイ ザー領域を除く帯域 (つまり, 腹側および側方帯域) で発現しており (Christian et al. , 1991), また母性由来の発現ではないことから , これが 背側デターミナントであるとは考えにくい . しかし, これに似た何かの因 子が背側化のカスケードにおいて働く可能性はおおいにありそうなことで あり, その作用機序を知ることはゼノパスの初期発生メカニズムを解明す る上で有用であると考えられる.. 1-5 PBE を用いた実験系. 本研究では, ツメガエル 受精卵の植物極側を表面積比で 60% 以 上除去することにより得た, 体軸形成, 背側遺伝子の発現をしない卵片で あ る PBE (Permanent Blastula-type Embryo) を レ シ ピ エ ン ト と し て 様々な mRNA の注入実験を行った. この卵片はオリジナルな実験系であ り , PBE は そ れ 自 体 , 背 側 遺 伝 子 , 中 胚 葉 遺 伝 子 を 全 く 発 現 し な い の で (Katsumoto et al ., 2004; Fujii et al ., 2002; Fujii et al ., 2008), 正常胚や アニマルキャップを用いた実験系と比べて遺伝子発現を解析するときに , 検出された背側遺伝子発現が, 注入された因子由来であることが確実に示 される. また, PBE は, 大きな卵黄顆粒を含まないため, 共焦点レーザー 顕微鏡による細胞内のタンパク質の観察が容易である.. 1-6 研究の目的. 11.

(13) ツメガエルの Wnt8 を含む, Wnt ファミリーはシグナルペプチド を持つ分泌性のタンパク質で, 線虫からヒトの生物界全体で非常に広く存 在し, 胚発生, 器官再生, 幹細胞の増殖や発がんなど様々な生物学的な過 程において重要な役割を担うシグナル伝達のプレーヤーとして働く. 従来, Wnt タンパク質は細胞外に分泌され, 細胞表面の Frizzled-LRP 複合体と 結合し機能すると考えられてきた (Moon, 2005a; Moon, 2005b). ゼノパ ス胚においても Wnt8 タンパク質が細胞表面に局在することが報告されて いる (Yang-Snyder et al ., 1994). 一方で, オーガナイザー形成が細胞間相 互作用を必要としない報告 (Lemaire and Gurdon, 1994; Nagano et al ., 2000) があることから, 細胞表面 (細胞間) での Wnt シグナリングという アイディアには深刻な疑問が投げかけられる. 坂井らはこれまでに細胞質背側デターミナントによる細胞自律的 な オ ー ガ ナ イ ザ ー の 形 成 を ツ メ ガ エ ル Xenopus laevis (Sakai, 1996; Nagano et al ., 2000; Katsumoto et al ., 2004; Sakai, 2008)と イ モ リ. Cynops pyrrhogaster (Doi et al ., 2000) で報告しており, この背側デター ミナントを代替して働くと考えられる Wnt8 タンパク質が分泌されて細胞 間相互作用によって働く, つまりオーガナイザーが誘導により形成される という従来のモデルは, 坂井らが提出してきたモデルと大きく異なる. Wnt8 が背側デターミナントと同じような性質を持っていると仮定すると , これが存在する細胞の隣の細胞に誘導的作用を及ぼすと考えることは, こ れまでの Wnt について考えられてきた作用機序から考えると問題ないが , 背側デターミナントが細胞内で働くというアイディアとは矛盾する . そこで, 本研究では Wnt8 タンパク質が細胞のどこで働いている のかを調べた. これまでにも, いくつかの報告で Wnt タンパク質の局在は 調べられているが (Yang-Snyder et al. , 1996), その時期は後期胞胚期で あり, Wnt が働き始めると予想される時期 (MBT; 4000 細胞期) よりもか 12.

(14) なり遅いため, その局在が必ずしも Wnt タンパク質が働いている場所を示 してはいないのではないかと考えられる. そこで, 本研究では Wnt タンパ ク質の観察を MBT (4000 細胞期) におこなった. 更には, Wnt8 に小胞体 貯留シグナル KDEL を付加した mRNA コンストラクト作製し, 細胞外に 分泌できないフォームにした際の Wnt8 の背側化能力を確認した. また, Wnt の阻害因子である Frzb (Leyns et al ., 1997; Wang et al ., 1997) をも ちいて, 背側化を阻害した際の Wnt タンパク質と Frzb タンパク質の局在 も調べた.. 1-6 本論文の概要. 本論文では, ツメガエルの初期胚に様々な Wnt mRNA と注入割 球トレーサー(lineage tracer)を注入し, Wnt タンパク質の細胞内局在を 調べた. さらに, Wnt8 タンパク質による背側化が, mRNA 注入細胞でのみ 起こっているのかを調べる為にオーガナイザーから分泌される神経誘導因 子 chordin の発現を whole mount in situ hybridization により検出した. 本研究では, これらの実験により Wnt タンパク質が, 従来より考えられて いる細胞外ではなく, 細胞内で働いている実験的証拠を示した.. 第 1 章で は , 既に 報告 され た研 究 , ツ メガ エル 初期 胚の 背 側化 , canonical Wnt/-catenin 経路と本研究の内容について概説した . これま でに坂井らは, オーガナイザーは細胞質デターミナントによって細胞自律 的に形成されることを提唱したきた. Wnt8 は-catenin の上流で働くこと から細胞 質背 側決定 デターミ ナン トを代 替すると 考え られて いる . 一方 , 従来より Wnt タンパク質は細胞表面で働くと考えられてきた. しかしなが ら, Wnt8 が背側デターミナントの代替となるのならば, Wnt8 タンパク質 13.

(15) は 細胞 内 で 自律 的 に 働 いて い る とい う 仮 説 が正 し い ので は な い かと 考え た.. 第 2 章では, 方法と材料について詳細に記述した.. 第 3 章では, mRNA 注入胚の背側化, 遺伝子発現と Wnt タンパク 質の局在の結果について説明した. Wnt8 タンパク質は Wnt8 mRNA が注 入された細胞の小胞体に局在することが分かった. また, 小胞体貯留型 Wnt8(Wnt8-KDEL)でも背側化を誘導することが出来ることが分かった. 更には, 阻害因子 Frzb によって背側化を阻害されたとき, Wnt8 タンパク 質は細胞の周辺に局在していることが分かった. その他のコンストラクト 注入による結果を詳細に説明し、考察した.. 第 4 章では, Wnt8 mRNA 注入胚の chordin の発現について記述し た. 正常胚もしくは体軸を形成しない卵片に Wnt8 mRNA とトレーサーと して n-gal mRNA を共注入し, lacZ と chordin の発現を調べた. chordin は, ほとんどの細胞で mRNA 注入細胞を示す lacZ の発現細胞と一致して いたが, 完全に重なる場合と, 狭い範囲ではあるが注入領域の隣の領域 (細胞)にも発現する場合とがあった. この結果により, Wnt8 タンパク質 が mRNA が注入された細胞とその周囲の細胞でも背側化に働き chordin の発現を誘導していることが分かった. Wnt8 が細胞自律的に chordin の発 現を誘導しているかは更なる検証が必要であることが示唆された .. 第 5 章では, 上記の Wnt タンパク質の局在と chordin の発現結果 に基づき, 本論文で提案するモデルと従来のモデルとを比較した. Wnt8 タ ンパク質は小胞体でレセプターと結合することによって細胞内で背側化の 14.

(16) シグナルを核へ伝えるモデルを提案した.. 第2章. 材料と方法. 2-1 卵の準備. ツメガエル ( Xenopus levis ) は静岡県浜松市の浜松生物教材より 購入後, 18℃で飼育した. 産卵させる前日に, 動物用胎盤性性腺刺激ホル モンゴナトロピン (あすか製薬, 日本) を 250 単位皮下注射し, 卵を準備 した.. 2-2 胚の培養液. 本研究でのほぼ全ての培養は 10% Modified Steinberg’s solution (MS)で行った. 100% MS の組成は 58.2 mM NaCl, 0.67 mM KCl, 0.34 mM Ca (NO 3 ) 2, 0.83 mM MgSO 4, 3.0 mM Hepes-NaOH buffer , pH7.4.. 2-3 精子の準備. 雄のツメガエルをクラッシュアイスの中に 30 分ほど入れ仮眠さ せた. 十分に眠った事を確認してから氷上で解剖し, 精巣を切り出した. 摘出後は速やかに良く冷えた 190% MS (+ 50 mg/l gentamicin) に入れ, 顕微鏡下でピンセットを用いて精巣表面の血管からなるべく血液を抜き , その後 4℃で保存, 毎日培養液を交換し 2-3 週後までを目安に媒精に用い た.. 15.

(17) 2-4 人工授精とゼリー層の除去. ケースに少し卵がこぼれ始めたメスカエルの体を軽く拭いた後, 腹部を軽く押し, シャーレに適量を産卵させた. 精巣をクラフトナイフで 少量切り出し, 190% MS 中でピンセットを用いて手早く良くつぶし, 精子 懸濁液を準備した. 精子懸濁液に 10% MS を適量加え, それをピペットで 卵にかけながらシャーレの底に均一になるように丁寧にひろげ , その 2-5 分後 10%. MS でシャーレをすこしずつ満たし受精させた. 卵は精子懸濁. 液をかけた 20-25 分後, 1% チオグリコール酸ナトリウム (pH9-10) で卵 のゼリー層を除去し, 10% MS で 3 回洗った.. 2-5 植物極側切除胚の作成. 卵黄膜はピンセットで除去した. 剥皮した胚は, 垂直軸 (動植軸) に 90°傾け, ガラス棒 (直径 300-350 m, 長さ 2 cm) を動物極側と植物 極側とを分けるようにおいた. 胚はガラス棒の自重でゆっくりと分離され, 両卵片が完全に分離した後, それぞれの卵片の長短軸の長さを測り , その 表面積を計算した. PBE においては植物極側を 60% 以上切除したものを, 採用した. 除去率の計算式は以下の通りである.. 除去率 (%) =100 (Vl×Vs) / (Al×As) + (Vl×Vs). 植物極側組織の長径:Vl, 植物極側組織の短径:Vs, 動物極側組織の長径: Al, 動物極側組織の短径:As. 全ての操作は, 底を 2% 寒天 (10% MS で溶解) で覆ったプラス 16.

(18) ティックディッシュに 10% MS (+ 50 mg/l gentamycin) を満たした中で 行った. 卵片の作成は媒精時を 0 とし, 第一卵割を 1 としたタイムスケー ルで 0.2 から 0.5 の間に細胞質の除去を行った.. 2-5 プラスミドと mRNA 合成. プラスミドと mRNA 合成については, 成田知弘博士 (元川崎医科 大学) に下記の条件で合成を依頼し, これを実験に用いた. Xwnt8-HA. は ,. cDNA. (5'-tatccatacgatgtaccagattacgca-3';. HA. に. エ ピ ト ー プ タ グ 配 列. YPYDVPDYA). を ,. Christian. ら. (1993) に よ っ て 報 告 さ れ た myc エ ピ ト ー プ タ グ と 同 じ 位 置 に 挿 入 し , PCR を用いて合成した. cDNA は PCS2+にサブクローニングした. Xwnt8-HA-KDEL は, PCR を用いて合成した. cDNA は, C 末端に ス ペ ー サ ー 配 列. (5'-agatcgtacaag-3; RSYK) お よ び KDEL 配 列. (5'-aaggacgagctg-3') を付加し, pCS2+にサブクローニングした. シグナル ペプチド. (2nd-QNTTLFILATLLIFCPFFTASA-23th a.a.) を 欠 損 さ せ た. SP-Xwnt8-HA は, インバース PCR 法を用いて合成した. mRNA のキャ ッピングは mMessage mMachine SP6 kit (AM1340; Ambion, USA) を用 いて合成した.. 2-6 マイクロインジェクション. マイクロピペットはガラスキャピラリー管を一度手で引いたのち , 再度プーラーで引いた. インジェクション針は, マイクロマニュピレータ に固定した. マイクロインジェクションは, ポリエチレンチューブでツベ ルクリンシリンジにつなぎ, シリンジによる空気圧 を利用して行った. 免 17.

(19) 疫染色においては, 4-8 細胞期の PBE の一つの割球に, mRNA を注入した. 注入した mRNA は, Xwnt8-HA mRNA (250 pg), Xwnt8-HA-KDEL mRNA (250 pg), cWnt3a1-HA mRNA (250pg), cWnt3a2-HA mRNA (250pg) と VegT mRNA (15 pg) で あ る . 注 入 時 に , lineage tracer と し て 0.1% Dextran, Alexa Fluor® 647; 10,000 MW, Anionic, Fixable (Invitrogen, USA) を 共 注 入 し た . 組 織 化 学 的 染 色 と whole mount in situ hybridization においては, 16-32 細胞期の胚に Xwnt8 mRNA を 5 pg と, トレーサーとして核局在型-galactosidase (n-gal) mRNA を 100 pg 注入 した.. 2-7 RT-PCR. Stage 10.5 (室温 20℃において原腸陥入が始まってから 30 分後) の PBE3 個から, total RNA を SV total RNA Isolation System (Promega Corpolation, USA) を 用 い て 抽 出 し た . Ready-To-Go You-Prime First-Strand Beads (GE Healthcare UK Ltd., England) を用いて total RNA 3.1 g から cDNA を作製した. それぞれの PCR は, cDNA 1 l に対 して Takara Taq (TAKARA BIO, 日本) を 0.25 units 用い, primer をそ れぞれ 10 M, 2.5 mM dNTPs を PCR Buffer にくわえ全量 10 l にした. PCR primer は. ODC upstream : 5 ’ -GCAAAGCCATTGTGAAGACTCTCTCCATTC-3 ’ ODC downstream : 5 ’ -AAGCTTTGCATTCGGGTGATTCCTTGCCAC-3 ’ siamois upstream : 5 ’ -AGACATGACCTATGAGGCTG-3 ’ siamois downstream : 5 ’ -AGTCAGTTTGGGTAGGGTAGG-3 ’ Xnr3 upstream : 5 ’ -TAATCTGTTGTGCCGATCCA-3 ’ Xnr3 downstream : 5 ’ -ATCAATGTTGCCCTTTTTCA-3 ’ 18.

(20) 解離温度は 95℃, アニーリング温度は ODC は 65℃, siamois と. Xnr3 は 58℃とし, 伸長反応温度 72℃で各 30 秒行った. PCR 後, 6%. ア. クリルアミドゲルで泳動し, 撮影した.. 2-8 免疫組織化学的方法によるタンパク質の検出. 4000 細胞期 の間 期 と思わ れる 時期 に MEMPFA (0.1 M MOPS (pH7.4), 2.0 mM EGTA, 1.0 mM MgSO 4, 4% paraformaldehyde) で固定 後 100% メタノールで保存した. PBE は OTC compound (ファインテックジ ャパン, 日本) に包埋しクリオスタットを用いて厚さ 8 m に薄切後, ス ーパフロストスライドグラス (松浪硝子工業, 日本 ) に張りつけた . 切片 は 1% skim milk/ PBS で 1 時 間 処 理 し た 後 , 一 次 抗 体 Rat anti-HA antibody (11-867-423-001; Roche, Germany), Mouse anti-PDI antibody (ab12225; abcam, UK) を 4°C, 1 晩反応させた. 二次抗体 Anti-Rat IgG Alexa 448 antibody (A21208; Invitrogen, USA), Anti-Mouse IgG Alexsa 594 antibody (A11032; Invitrogen, USA) を室温, 2 時間で反応させた. 観 察は, 共焦点レーザー顕微鏡 (Leica, TCS SP2; Nikon, A1) で行った.. 2-9 組織化学的染色と whole mount in situ hybridization. 実験胚は stage 9 になったところで MEMPFA で室温, 30 分間固 定した. その後, PBS で 3 回洗い, staining solution (0.1M PO 42- buffer (pH 6.3), 20 mM K 3 Fe (CN) 6 , 20 mM K 4Fe (CN) 6 , 2 mM MaCl 2, 1 mg/ml X-gal, 0.02%. Nonidet P-40) 中で, 4℃, 一晩反応させた. 再度 MEMPFA. で室温, 2 時処理し酵素反応を止めて, whole mount in situ hybridization までに−20°C, 100% メタノール中で保存した. 19.

(21) whole mount in situ hybridization は Sive et al. (2000) を一部変更した 条件で行った.. 2-10 割球解離実験. 4細胞期にmRNAを注入したPBEを8細胞期または512細胞期以降 の様々なタイミングで解離液modified low Ca Stearn’s solution (74.6 mM NaCl, 2.4 mM KCl, 0.63 mM Na 2 HPO 4 , 0.14 mM KH 2PO 4 , 1.9 mM Na 2 SO 4, 0.5 mM CaCl 2, 0.5 mM MgCl 2 , 1 mM ethylenediamine tetraacetic acid (EDTA), 0.1%. bovine serum albumin (BSA), 0.1%. dimethyl sulfoxide, pH 8.3) に浸し, 解離させた. その後4000細胞期で免 疫染色を, stage 10.5でRT-PCRを行った.. 2-11 Wnt/Frzb 注入割球の組み合わせ胚作成. 4 細胞期の 2 つの PBE にそれぞれ Wnt8 mRNA と Frzb の mRNA を注入し, 解離液で割球を解離した. 別々のコンストラクトを注入した 2 種類の細胞を組み合わせた後, 10% MS の培養液に置換し, 細胞を結合さ せた. 培養液は水流が胚にあたらない様に少しずつ十分な時間をかけて置 換した.. 20.

(22) 第3章. 様々な mRNA 注入による背側化と Wnt タンパク質の局 在の結果と考察. 3-1 Wnt8 mRNA の注入による背側化と Wnt8 タンパク質の局在. Wnt8 による背側化を確認する為に 4-8 細胞期の PBE (permanent blastula type embryos; 受精後表層回転が起こる前に , 背側デターミナント と maternal 中胚葉因子の VegT を多く含む植物極側を切り取った胚) の一割 球へ, Wnt8-HA mRNA, VegT mRNA, linage tracer としての Alexa Fluor 647 dextran を注入した (図 1-A). この注入胚は神経胚期 (stage 17) において 突起 (proboscis) を形成しており (図 1-B), 原腸胚期 (stage 10.5) において 背側中胚葉遺伝子の siamois や Xnr3 を発現していた (図 1-C). PBE その もの, もしくは Wnt8 mRNA, VegT mRNA 単独の注入では突起の形成は 見られず, 背側中胚葉遺伝子の発現も無いため, PBE の背側化には中胚葉 因子の VegT mRNA と Wnt8 mRNA の共注入が必要であることが分かっ た (図 1-B, C). つぎに, Wnt タンパク質が背側化に働くと予想される 4000 細胞期 に固定し, 免疫染色後, 共焦点レーザー 顕微鏡で観察したところ , 観察胚 全てにおいて Wnt8-HA タンパク質は Alexa Flour647 dextran で示される mRNA の注入領域とよく一致し, 非注入領域の細胞にはまったく発現して いないなかった (図 1-D). このことは, 注入された Wnt8-HA mRNA 由来 の Wnt タンパク質が mRNA 注入細胞でのみ存在している事を示している. Wnt8-HA タンパク質の局在を示す蛍光は細胞内で核の周辺に強 く , 細 胞 内 で 網 目 状 に 分 布 し て お り , 小 胞 体 に 特 異 的 な タ ン パ ク 質 PDI (protein disulfide isomerase) の分布と良く一致していた (図 1-E). この 結果により Wnt8 タンパク質が背側化に働くのは, 細胞外ではなく細胞内 21.

(23) であることが示唆された . しかしながら, これらの結果は, これまでに報 告されいる細胞表面に Wnt タンパク質が局在しているというこれまでの 報告 (Yang-Snyder et al. , 1996) と大きく異なった. Yang-Snyder らによ る実験では, 正常胚のアニマルキャップを用いて stage 9 (後期胞胚) で観 察していることから, 内在性の Wnt 阻害因子 Frzb の影響, もしくは実際 に Wnt8 タンパク質が背側化に作用していない時期の局在を見ている可能 性がある.. 3-2 Wnt8-KDEL mRNA の注入による背側化と Wnt8-KDEL タンパク質の局 在. 小 胞 体 貯 留 シ グ ナ ル KDEL を 付 加 し た コ ン ス ト ラ ク ト (Wnt8-HA-KDEL) を作製し, 細胞内に留まるようにした Wnt8 の背側化 能 力 や タ ン パ ク 質 の 局 在 を 調 べ た . Wnt8-HA-KDEL mRNA と VegT mRNA の共注入により, 胚は Wnt8 mRNA を注入時と同様の突起を形成 し, siamois と Xnr3 を発現した (図 2-A, B). さらに, Wnt8-KDEL タンパ ク質の局在も, PDI タンパク質の局在と良く一致していた (図 2-C). KDEL によって小胞体に留められた Wnt8 タンパク質によって背側化が起こった ことは, Wnt8 タンパク質が細胞表面ではなく, 細胞内で働いていることを 強く示唆した.. 3-3 SP-Wnt8 は胚を背側化しなかった. さらに, 細胞外に分泌するためのシグナルペプチドを欠損させた Wnt8 mRNA (SP-Wnt8 mRNA) コンストラクトを作製し, PBE へ注入し た. この Wnt8 タンパク質は細胞外への分泌に必要なシグナルペプチドを 22.

(24) 持たないため, 合成後小胞体へと局在せず細胞質にとどまることから , 背 側化は起こらないと予想された. SP-Wnt8 mRNA を 注 入 し た と こ ろ , 胚 は 突 起 を 形 成 せ ず (図 3-A), 背側遺伝子の発現もない (図 3-B) ことから背側化能がないことが 分かった. また, SP-Wnt8 タンパク質は PDI タンパク質で示される小胞 体の局在とは一致せず, 注入細胞の細胞質に局在した (図 3-C). SP-Wnt8 タ ン パ ク質は水溶性 であるデキストラン (lineage tracer)と同様の局在を 示し, 核と細胞質に局在することが分か った. このことから, シグナルペ プチドが欠損していることで, 細胞内輸送の経路に乗れず, つまりは小胞 体に局在できないことから, 背側化が起こらなかったと考えられる . この 結果により, 胚の背側化には Wnt8 タンパク質の小胞体への局在が重要で あることが示唆された.. 3-4 免疫組織化学的染色の前のメタノール処理の有無による Wnt タンパク 質の局在. 本研究での実験サンプルは固定後一晩以上もしくは, 免疫染色を 行うまでの期間, 100% メタノール中, −20℃で保存した. Wnt タンパク質 が主に細胞膜に局在しているとする過去の報告では, 免疫染色を行う際に 固定後メタノールで処理しておらず (Yang-Snyder et al ., 1996), これは 本研究のプロトコルと異なる. このことから, 過去の報告では細胞膜の透 過処理 (permeabilization) が十分でなく, 小胞体に局在する Wnt タンパ ク質を特異的に検出できていなかったのではないかと考えられた. そこで, 固定後メタノールで処理をせずに免疫染色を行った結果, Wnt8 タンパク 質は主に細胞の表面 (細胞と細胞の境界) で検出された. これまでに得ら れた細胞内の強い染色はなく, その蛍光はかなり弱く検出された (図 4-A, 23.

(25) B). さらに, トレーサーによって示される mRNA が注入された細胞のみな らず, その隣の非注入細胞表面にも Wnt8 タンパク質が局在していること が分かった. 次に, Wnt8-KDEL タンパク質についても同様にメタノール 処理を行わず検出したところ, Wnt8-KDEL タンパク質は細胞内に局在し, 細胞の表面には検出されなかった (図 4-C, D). これらの透過処理の有無による免疫組織化学的実験の結果から, Wnt8 タンパク質は小胞体と細胞表面の両方に局在することが明らかとな った. しかしながら, 背側化能をもつ Wnt8-KDEL は細胞表面には検出さ れなかったことから, Wnt8-KDEL タンパク質は細胞外に分泌されず, 細 胞内とどまり, 背側化を引き起こしていること, つまりは細胞表面に局在 する Wnt8 タンパク質は背側化には働いていないことが強く示唆された.. 3-5 Frzb mRNA の共注入による背側化と Wnt タンパク質の局在. Wnt8 mRNA は Frzb mRNA との共注入によってその背側化が阻 害されることがわかっている (Lyns et al ., 1997; Wang et al ., 1997). そこ で Wnt8 の背側化が阻害されたときのタンパク質の局在を調べた . その結 果, 背側化は阻害され PBE に突起は形成されず (図 5-A), siamois , Xnr3 の発現もなかった (図 5-B). このとき, Wnt8 タンパク質の染色は非常に弱 く, PDI で示される小胞体とも局在が一致しないことから, 主に細胞の周 辺に局在していると考えられた (図 5-C). また, Alexa Fluor647 dextran で示される mRNA 注入領域外の細胞表面にも Wnt8 タンパク質は局在し ていた (図 5-D). そこで, Frzb タンパク質の局在を検出したところ, 同様 に mRNA 注入領域とその外にも広い範囲で局在していることが分かった (図 5-E). Frzb は Wnt に比べ拡散性が高く, Wnt の局在は Frzb の共局在に 24.

(26) よりその拡散領域を拡大すること (Mii and Taira, 2009; Mii and Taira, 2011), また Wnt と分泌型 Frizzled 関連タンパク質 (sFRPs) ファミリー である Frzb は結合特異性が高いことも報告されている (Shibata et al. , 2005). このことから, 分泌性のタンパク質である Frzb によって Wnt8 も また細胞外に輸送され, 連れ出されていることが考えられた. 即ち, Frzb は Wnt8 の小胞体での局在を阻害することによって, 背側化を阻害するも のと考えられる.. (注) この実験で用いるPBEは背側の遺伝子を発現せず, 注入mRNA由来 の発現とそれによって引き起こされるカスケードを確認する事ができる . そのため, 本実験で得られたタンパク質の局在や遺伝子発現は注入mRNA 由来のものであり, 内在性のWnt8やFrzbによるものということは否定さ れる.. 3-6 ニワトリ Wnt3a mRNA の注入, および Frzb mRNA との共注入による 背側化とタンパク質の局在. Wnt mRNA として, ゼノパスでよく知られた背側化因子の Wnt8 以 外 に , 二 つ の ス プ ラ イ シ ン グ バ リ ア ン ト が あ る ニ ワ ト リ Wnt3a (cWnt3a) を用いた. cWnt3a には C 末端にシグナルペプチドをもち背側化 能 の あ る cWnt3a2 と , シ グ ナ ル ペ プ チ ド を 持 た ず 胚 を 背 側 化 し な い cWnt3a1 がある (Narita et al. , 2007). これらについても同様に実験, 細 胞内局在からその働きかたについて検討した. cWnt3a2 mRNA の注入によっても PBE は背側化 (図 6-A,B) し, その時の cWnt3a2 タンパク質は, ゼノパス Wnt8 タンパク質と同様に小胞 25.

(27) 体に局在した (図 6-C). 一方で, cWnt3a2 mRNA は Frzb mRNA の共注入 によって背側化を阻害されず, このときの cWnt3a2 タンパク質は細胞内 の小胞体に局在しており, cWnt3a2 の局在は Frzb によって変更されない ことが分かった (図 6-E). 一方, cWnt3a1 タンパク質は小胞体にはなく, ゼノパスSP-Wnt8 と同様に細胞質と核に分布していた (図 6-D:ゼノパ スSP-Wnt8 については図 3-C を参照). cWnt3a を用いた実験からも小胞 体内に Wnt タンパク質があることが背側化に重要であることが示唆され た.. 3-7 Wnt8-KDEL mRNA と Frzb mRNA の共注入による阻害と Wnt8-KDEL タンパク質の局在. 小胞体に留まる Wnt8-HA-KDEL によっても背側化が起きたこと は, Wnt が細胞の外ではなく細胞内で働いていること強く示唆した. そこ で次に, Wnt8-HA-KDEL mRNA と Frzb mRNA を共注入した. この実験 では, Wnt8 は KDEL によって小胞体内に強制的にとどめられることから, Frzb によっても背側化は阻害されないと予想した. しかし結果は, 胚は突 起を形成せず, 背側遺伝子の発現も確認できなかった (図 7-A, B). しかし, この時の Wnt8-KDEL タンパク質は細胞内の小胞体に局在していた. そこ で, Frzb タンパク質の分布も見ると, Wnt8-KDEL タンパク質と共に小胞 体に局在していた (図 7-C). このことから, Frzb は Wnt8 と共局在するこ とでその背側化が阻害され, Wnt8 の局在を細胞の外へ変更させずとも, 細 胞内でその働きを阻害していることが分かった. このことからも, Wnt は 細胞内で背側化に働いていることが強く示された.. 3-8 Wnt mRNA 注入胚の割球解離による背側遺伝子の発現と Wnt タンパク 26.

(28) 質の局在. これまでに得られた結果より, Wnt8 が細胞内で自立的に背側化に 働いている事が強く示唆された. そこで, Wnt mRNA 注入胚の割球を解離 することにより細胞間相互作用をなくす実験を行った. その結果, Wnt8 による背側化 ( siamois , Xnr3 の発現) が, 正常胚 を解離した場合 (図 8-A レーン 2) と, -catenin 注入胚を解離した場合 (図 8-A 4 レーン) で発現しているものの, Wnt8 mRNA と VegT mRNA を 共注入した胚と cWnt3a2 mRNA と VegT mRNA を共注入した胚は割球解 離により, その発現が完全に阻害されることが分かった (図 8-A レーン 6 と 8). 正常胚や-catenin mRNA を注入した PBE を解離しても背側遺伝子 発現は全く阻害されなかったことから, Wnt 注入胚の細胞解離での背側遺 伝子発現の阻害は, 非特異的な阻害ではないと考えられた . また, 継続的 な解離胚と 1000 細胞期から一時間のみの解離した胚の Wnt8 タンパク質 の局在を調べたところ, 一時間解離した胚は Wnt8 タンパク質が細胞の中 にいくらか局在しているものの細胞周辺に大きい粒状に局在していること が分かった (図 9-C). また, このときの背側遺伝子も発現していないこと から, 短時間の解離でも背側化が阻害されていることが分かった (図 9-B). 8 細胞期から継続的に解離した胚 (細胞) の Wnt8 タンパク質は検出でき なかった (data not shown). しかしそれは, 免疫組織化学の手法的な問題 がある可能性があり, 再度実験検討する必要があるが, おそらく細胞内に はほとんど局在していないと予想される. 本来 Wnt は分泌性のタンパク質であり, 細胞外へと分泌される際 にタンパク質の小胞輸送の経路を移動する. 解離胚の Wnt タンパク質が細 胞のなかから外へと局在が変更していることから, Wnt タンパク質は細胞 内 (小胞体内) にあるときに胚を背側化し, 細胞外に分泌された Wnt は背 27.

(29) 側化には働かないのではないかと考えられた.. 3-9 Wnt8 mRNA と Frzb mRNA を個別に注入した割球による組み合わせ胚 の背側化. Wnt8 mRNA と隣り合う細胞に Frzb mRNA を注入することで Wnt の背側化が阻害されることが報告されており , これは , 細胞外に分 泌され背側化に働く Wnt を, 同様に細胞外に分泌された Frzb が阻害した と考えられてきた (Wang et al ., 1997). 一方, 本研究では, 細胞外に分 泌された Wnt は背側化に働かないと考えているが, 過去の研究の結果は cytoplasmic bridge を 介 し た 注 入 mRNA の リ ー ク に よ る も の (Landesman et al ., 2000) と 考 え る こ と も で き た . そ こ で , 我 々 は cytoplasmic bridge によるリークを起こさない方法で Frzb による Wnt8 の阻害が起こるかを調べた. まず, 先の卵割が起きた時を 0 とし次の卵割 が起きるまでを 1 としたタイムスケールで, 0.6 から 0.8 を Early, 0.9-1.0 を Late とし, それぞれ, 隣り合った細胞に Wnt8 mNRA と Frzb mRNA を注入した. その結果, Early のタイミングでは 53% の PBE が突起を形成 し背側化したのに対して, Late のタイミングでは 88% が背側化した (図 9-A). こ の こ と か ら , 早 い 段 階 で の イ ン ジ ェ ク シ ョ ン に は , cytoplasmic bridge によるリークがあることを考慮しなければならないことが示され た. 次に, 2 つの PBE にそれぞれ Wnt8 mRNA と Frzb mRNA を注入 し, 低 Ca 2+ Mg 2+ の解離液 (Iwao et al. , 2005) で割球を解離した. 2 種類 の 細 胞 を 組 み 合 わ せ た 後 , 普 通 の 培 養 液 に 移 し , 割 球 を 結 合 さ せ た (図 9-B). この方法により, Wnt8 mRNA と Frzb mRNA 注入割球を隣り合わせ で組み合わせた結果, 胚は突起を形成し背側化した (図 9-C). この結果も 28.

(30) また, Wnt が細胞内で働いていることを示した.. 3-10 組み合わせ胚を用いたレポーターアッセイ. Wnt 注入細胞の隣の細胞に背側で初期に発現する遺伝子 siamois promoter に reporter をいれた DNA コンストラクトを注入した. 背側化が 隣り合う細胞に及んでいなければ, reporter は発現しないことが予想され た. 前述の組み合わせ胚の実験系を用いて Wnt8 mRNA と siamois の reporter DNA (-833p Sia-Luc) を同じ割球に共注入, もしくは別々の割球 に注入し隣り合うように組み合わせ, これらの胚の Wnt8 によってアクチ ベートされる siamois の活性をルシフェラーゼ活性で検出した (Fan and Sokol, 1995). その結果, Wnt8 mRNA と reporter を共注入した Donor 割 球を Host 細胞と組み合わせた胚 (Type B) と, 組み合わせせず同一割球 に注入した胚 (Type D) に比べると, 別々の割球に注入し隣り合うように 組み合わせた胚 (Type A) はルシフェラーゼ活性が著しく低いことが分か った. このことから, Wnt8 は隣り合う細胞の-833p Sia-Luc を活性化しな いことが分かった (図 10). このことは, Wnt8 が mRNA 注入細胞内で自律 的に背側化を引き起こしている事を明確に示している.. 29.

(31) 第4章. Wnt8 により誘導される chordin の発現結果と考察. 4-1 中胚葉誘導と chordin の細胞自律的な発現. Wnt8 による背側化が, mRNA 注入細胞でのみ起こっているのか を調べる為にオーガナイザー領域から分泌される神経誘導因子 chordin の 発現と局在を調べた (Sasai et al ., 1994). ゼノパスの受精卵は, 植物半球 の内中胚葉デターミナントと植物極の背側デターミナントの 2 つのデター ミナントを持ち, それらは帯域で交差し, MBT 以降に細胞自律的にオーガ ナイザー形成を引き起こす (Nagano et al. , 2000; Katusmoto et al. , 2002; Sakai, 2008). chordin は MBT 以降の早い段階で, オーガナイザー領域 (帯域) で発現することが報告されている (Nagano et al. , 2000).. 4-2 反転胚の植物極側細胞質デターミナントによる chordin の発現. 植物極側細胞質デターミナントによる 自律的な chordin の発現を 確認する実験を行った. 表層回転が起こる前に受精膜を取り除き動植物極 の上下を反転させて 発生させた. 胞胚期の反転胚は, 動物極側の細胞は本 来の動 物極側の細胞より大き く, 植物極側 (上の方, 白い領域) から原腸 陥入が起こることが確認された (図 11-A). 正常胚と比較して反転胚の動 物極側細胞は割球のサイズが著しく大きいことから, 反転したことによっ て, 植物極側から動物極側にかけて卵黄顆粒が移動していると考えられた. 次に, 反転させた胚の chodin は, どこで発現しているのかを whole mount. in situ hybridizatio によって調べた. 様々な角度で反転した胚は, どの胚 も植物極側 (上の方で白い領域) で chordin の発現があり (top view), 下 半球と元々動物極側 (色素顆粒で茶に示される) での発現は確認できなか 30.

(32) った (bottom and inner view). その発現は反転していない胚と比べて発 現領域が広く発現量は増大していた (図 11-B).. chordin はオーガナイザー領域 (帯域) で発現することが知られ ている. 反転することによって, 卵内のない中胚葉細胞質デターミナント の分布が変わり, 植物極半球全体がオーガナイザー領域となり chordin の 発現領域が広がった ことが考えられる (図 11-C). この結果から, デター ミナントによる細胞自律的な背側化が chordin を発現している事が示唆さ れた.. 4-4 Wnt タンパク質による chordin の発現と n  -gal を用いた注入割球追跡. ツメガエル胚の GNE (gastrulating nonaxial embryos; 背側デタ ーミナントを含まず, VegT mRNA を含む帯域をもつ) を用いた. GNE は 原口を形成し, 内中胚葉関連遺伝子を発現するが背側構造を形成せず , ま た背側遺伝子の発現もない (Sakai, 1994; Fujii et al. , 2002; Fujii et al. , 2008). GNE の 16 細胞期の一割球に Wnt8 mRNA とトレーサーとして核 局在型-galactosidase (n-gal) mRNA を共注入, または隣り合う別々の 割球にそれぞれを注入し, stage9 (原腸陥入の 2 時間前) で固定し, lacZ の 組織化学的染色を行った後, whole mount in situ hybridization によって. chordin の発現をみた (図 12-A). 先に染色した lacZ の発現パターンを撮 影し, その後 chordin の発現パターンと比較した.. chordin の発現は概ね Wnt8 mRNA 注入領域を示す lacZ の発現領 域とよく一致していたが, 完全に重なる場合 (図 12-B) と, 注入領域に隣 接した部位にも検出される場合 (図 12-C) とがあった. 完全に重なる場合 は, mRNA 注入細胞を示す lacZ により赤染色で示される細胞と, whole mount in situ hybridization によって紫に染められた chordin の発現細胞 31.

(33) のパターンが良く一致する (図 12-B, 黒矢尻). しかし, 赤い領域で示され る mRNA の注入細胞とその細胞で発現する chordin の発現は良く一致し ているものの, 一部その周辺に弱い発現が見られる胚もあった (図 12-C, 白矢尻). このことは, Wnt8 mRNA が注入された細胞だけでなく, その周 囲の細胞でも背側化に働き chordin を発現していることを示している. こ れは, 細胞外に分泌された Wnt8 タンパク質が背側化に作用していること を否定できず, Wnt8 が細胞自律的に chordin を発現しているかは更なる検 証 が 必 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た . し か し な が ら , chordin 自 身 に よ る autoregulation により, Wnt mRNA 注入領域の外にその発現が広がってい る可能性があること. さらに, chordin の発現が始まるごく初期は現在の whole mount in situ hybridization の方法では検出が難しいと考えられる ことから, 本実験で得られた chordin の発現は, おそらく Wnt による細胞 の背側化によって発現した chordin のみを正確には捉えていない可能性が ある.. 32.

(34) 第5章. 従来のモデルと本研究により新規に提案するモデル. 従来, Wnt は分泌性因子であり, 細胞外へ放出され, 細胞表面にあ る Frizzled-LRP 複 合 体 と 結 合 し て 機 能 す る と 考 え ら れ て き た (Moon, 2005a; Moon, 2005b) (図 13-A). このモデルは, Wnt タンパク質が細胞表 面に局在することにより支持されてきたが , 本研究では, これを否定する 結果となった. そこで, 新規の Wnt シグナリングモデルを提案する (図 13-B). 提案するモデルは, 細胞内の小胞体内にある Wnt タンパク質は同 じく小胞体膜にあるレセプターと結合することにより, 細胞内で核にその シグナルを伝える (小胞体膜の内側は, 細胞膜の外側と同等である) とい うモデルであり, Wnt8 タンパク質はその mRNA が注入された細胞内の小 胞体に局在し, 隣り合う細胞には検出されなかったことを説明できる.. シグナルトランスダクションは多くの多細胞生物で見つかってお り, 細胞間の情報伝達の方法の一つである . また, 大きな研究分野である が, これまでに細胞内でシグナルトランスダクションが起こるというアイ ディアは考慮されてこなかった. 一方で, 単細胞の真核生物である酵母に おいて, 小胞体を介したシグナリングが報告されており (Pahl, 1999), 進 化の過程において保存された細胞内での細胞自律的なシグナリングは, 細 胞間相互作用を介した複雑なシグナル伝達同様に, 高次に形成される胚発 生の基礎を支える非常にシンプル且つ重要な伝達系であると考えられる.. 33.

(35) 参考文献. Christian, J.L., McMahon, J.A., McMahon, A.P. and Moon, R.T. (1991): Xwnt-8, a Xenopus Wnt-1/int-1-related gene responsive to mesoderm-inducing growth factors, may play a role in ventral mesodermal patterning during embryogenesis. Development 111, 1045-1055. Christian, J.L. and Moon, R.T. (1993): Interactions between Xwnt -8 and Spemann organizer signaling pathways generate dorsoventral pattern in the embryonic mesoderm of Xenopus. Genes & development 7, 13-28. Christian, J.L., Olson, D.J. and Moon, R.T. (1992): Xwnt-8 modifies the character of mesoderm induced by bFGF in isolated Xenopus ectoderm. The EMBO journal 11, 33-41. Dale, L. and Slack, J.M. (1987): Regional specification within the mesoderm of early embryos of Xenopus laevis. Development 100, 279-295. Doi, J.Y., Niigaki, H., Sone, K., Takabatake, T., Takeshima, K., Yasui, K., Tosuji, H., Tsukahara, J. and Sakai, M. (2000): Distribution of dorsal-forming activity in precleavage embryos of the Japanese newt, Cynops pyrrhogaster: effects of deletion of cytoplasm,. UV. irradiation,. and. lithium. vegetal. treatment.. Developmental biology 223, 154-168. Fan, M.J., Gruning, W., Walz, G. and Sokol, S.Y. (1998): Wnt signaling and transcriptional control of Siamois in Xenopus embryos. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United 34.

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(37) Iwao, Y., Uchida, Y., Ueno, S., Yoshizaki, N. and Masui, Y. (2005): Midblastula transition (MBT) of the cell cycles in the yolk and pigment granule-free translucent blastomeres obtained from centrifuged. Xenopus. embryos.. Development,. growth. &. differentiation 47, 283-294. Kageura, H. (1990): Spatial distribution of the capacity to initiate a secondary embryo in the 32-cell embryo of Xenopus laevis. Developmental biology 142, 432-438. Katsumoto, K., Arikawa, T., Doi, J.Y., Fujii, H., Nishimatsu, S. and Sakai, M. (2004): Cytoplasmic and molecular reconstruction of Xenopus. embryos:. endo-mesodermalizing. synergy. of. determinants. dorsalizing drives. early. and axial. patterning. Development 131, 1135-1144. Landesman, Y., Goodenough, D.A. and Paul, D.L. (2000): Gap junctional communication in the early Xenopus embryo. The Journal of cell biology 150, 929-936. Larabell, C.A., Torres, M., Rowning, B.A., Yost, C., Miller, J.R., Wu, M., Kimelman, D. and Moon, R.T. (1997): Establishment of the dorso-ventral axis in Xenopus embryos is presaged by early asymmetries in beta-catenin that are modulated by the Wnt signaling pathway. The Journal of cell biology 136, 1123-1136. Lemaire,. P.. and. determinants. Gurdon, in. J.B.. (1994):. mesoderm. A role. patterning:. activation of the goosecoid and Xwnt-8. for. cytoplasmic. cell-autonomous genes along the. dorsoventral axis of early Xenopus embryos. Development 120, 1191-1199. 36.

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(41) 謝辞. 本研究は, 著者が鹿児島大学大学院理工学研究科博士後期課程在 学 中 に, 同大学 理学 部 の坂井 雅夫 博士 の 指導のも とに 行った ものであ る . 研究を進めるにあたり, 共同研究により多くの実験を一緒に行ってくださ った元川崎医科大学の成田知弘博士, 本テーマに一緒に取り組んでくださ った奈須雄也さん, 沢山のご助言ご指導くださいました川崎医科大学の西 松伸一郎博士, 発生生物学会におきまして沢山のアイディアやアドバイス をくださいました先生方, 本学位申請にあたりご指導いただきました鹿児 島大学の内海俊樹博士 , 塔筋弘章博士, 笠井聖仙博士, 熊本高等専門学校 の元木純也博士に厚くお礼申し上げます.. 40.

(42) A. B. W8+V. C. no injection. D Lineage tracer. Wnt8-HA protein. 41. 切片の全体.

(43) E Alexa Fluor 647 dextran. PDI protein. Wnt8-HA protein. Marge. 図 1 Wnt8 mRNAの注入による背側化とWnt8タンパク質の局在 A) 4-8細胞期のPBE(permanent blastula type embryos; 背側デターミナントとmaternal内中胚葉因子のVegT を多く含む植物極側を切り取った胚)の一割球へ、Wnt8-HA mRNA(250 pg)、VegT mRNA(15 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextranを注入した。 B) stage 17における実験胚の形態。Wnt8 mRNA注入PBEが背側化した際に特徴的な突起を形成した。矢 尻;背側化により形成された突起 C) stage 10.5におけるRT-PCR結果。Wnt8 mRNA注入胚は背側遺伝子siamoisとXnr3を発現していた。 ODCは ローディングコンロトロール。 D) 4000細胞期にMEMPFAで固定し、免疫染色を行った。桃;Alexa Fluor 647 dextran、緑;Wnt8-HA protein、 白黒画像は組織切片全体を示す。Wnt8-HA proteinはAlexa Fluor 647 dextranが示す注入細胞でのみ局 在していた。 E) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Wnt8-HA protein(緑)、PDI protein(赤)、Marge; Wnt8-HA proteinとPDI proteinを重ねた。Wnt8-HA proteinとPDI proteinの局在は良く一致していた。. 42.

(44) A. C. B. Alexa Fluor 647 dextran Wnt8-HA-KDEL protein. PDI protein. Marge. 図 2 Wnt8-KDEL mRNAの注入による背側化とWnt8-KDELタンパ ク質の局在 A) stage 17における実験胚の形態。Wnt8-HA-KDEL mRNA注入PBEが背側化した際に特徴的な突起を形成 した。矢尻;背側化により形成された突起 B) stage 10.5におけるRT-PCR結果。注入胚は背側遺伝子siamoisとXnr3を発現していた。 ODCはローディン グコンロトロール。 C) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Wnt8-HA-KDEL protein(緑)、PDI protein(赤)、Marge; Wnt8-HA-KDEL proteinとPDI proteinを重ねた。Wnt8-HA-KDEL proteinとPDI proteinの局在は良く一致していた。. 注入量:Wnt8-HA-KDEL(250 pg)、VegT(15 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 43.

(45) A. C. B. Alexa Fluor 647 dextran DSPWnt8-HA protein. PDI protein. Marge. 図 3 DSPWnt8 mRANの注入による背側化とDSPWnt8タンパク質 の局在 A) stage 17における実験胚の形態はPBEが背側化した際に特徴的な突起を形成しなかった。 B) stage 10.5におけるRT-PCR結果。注入胚は背側遺伝子siamoisとXnr3を発現しなかった。 ODCはローディ ングコンロトロール。 C) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、DSPWnt8-HA protein(緑)、PDI protein(赤)、Marge; DSPWnt8-HA proteinと PDI proteinを重ねた。DSPWnt8-HA proteinはAlexa Fluor 647 dextranの局在と良く一致していた。 注入量:DSPWnt8-HA(250 pg)、VegT(15 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 44.

(46) C. D. 図 4 免疫組織化学的染色の前のメタノール処理の有無による Wntタンパク質の局在 注入胚は固定後、メタノールに保存せずPBS中に保存し、免疫組織化学的染色を行った。 A) Wnt8-HA protein B) Alexa Fluor 647 dextran C) Wnt8-HA-KDEL protein D) Alexa Fluor 647 dextran Wnt8-HA proteinは主に細胞の表面(細胞と細胞の境界)で検出された、Wnt8-HA-KDEL proteinは細胞内に 局在し、細胞の表面には検出されなかった。 注入量:Wnt8-HA(250 pg)、Wnt8-HA-KDEL(250 pg)、VegT(15 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 45.

(47) A. C. B. Alexa Fluor 647 dextran. Wnt8-HA protein. Wnt8-HA protein. + Frzb. D. E. - Frzb. Alexa Fluor 647 dextran. Wnt8-HA protein. Alexa Fluor 647 dextran. Frzb protein. 46.

(48) 図 5 Frzb mRNAの共注入による背側化とWntタンパク質の局在 A) stage 17における実験胚の形態。Wnt8 mRNAとFrzb mRNAを共注入したPBEが背側化した際に特徴的な 突起を形成しなかった。 B) stage 10.5におけるRT-PCR結果。Wnt8 mRNAとFrzb mRNA注入胚は背側遺伝子siamoisとXnr3を発現しな かった。 ODCはローディングコンロトロール。 C) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Wnt8-HA protein(緑)。Wnt8-HA proteinは主に細胞の境界で検出された。 D) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Wnt8-HA protein(緑)。矢尻:mRNA注入領域の外のWnt8-HA proteinを示 す。Wnt8-HA proteinはmRNA注入細胞の隣り合う細胞の境界でも検出された。 E) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Frzb protein(赤)。矢尻:mRNA注入領域の外のFrzb proteinを示す。Frzb proteinはWnt8-HA proteinと同様にmRNA注入細胞の隣り合う細胞の境界で検出され、その拡散領域は Wnt8-HA proteinより広かった。 注入量:Wnt8-HA(250 pg)、VegT(15 pg)、Frzb (1000 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 47.

(49) A. cW3a2+V. cW3a1+V. cW3a2+V+F. B. C. PDI protein. Marge. Alexa Fluor 647 dextran. PDI protein. Marge. Alexa Fluor 647 dextran. cWnta2-HA protein. D cWnta1-HA protein. 48.

(50) E. cWnta2-HA protein. Marge. Frzb protein. Alexa Fluor 647 dextran. 図 6 ニワトリWnt3a mRNAの注入、およびFrzb mRNAとの共注入 による背側化とタンパク質の局在 A) stage 17における実験胚の形態。cWnt3a2-HA mRNAを注入したPBEと、cWnt3a2-HA mRNAとFrzb mRNA を共注入したPBEは背側化した際に特徴的な突起を形成した。cWnt3a1-HA mRNA注入したPBEは突起を 形成しなかった。矢尻:背側化により形成された突起 B) stage 10.5におけるRT-PCR結果。cWnt3a2-HA mRNAを注入したPBEと、cWnt3a2-HA mRNAとFrzb mRNA を共注入したPBEは背側遺伝子siamoisとXnr3を発現しており、cWnt3a1-HA mRNA注入したPBEは発現し ていなかった。ODCはローディングコンロトロール。 C) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、cWnt3a2-HA protein(緑)、PDI protein(赤)、Marge; cWnt3a2-HA protein + PDI protein。cWnt3a2-HA proteinはPDI proteinの局在と良く一致していた。 D) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、cWnt3a1-HA protein(緑)、PDI protein(赤)、Marge; cWnt3a1-HA protein + PDI protein。cWnt3a1-HA proteinはAlexa Fluor 647 dextranの局在と良く一致していた。 E) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Frzb protein(赤)、Marge; cWnt3a2-HA protein + Frzb protein。Frzb protein は小胞体でcWnt3a2-HA protein共局在していた。 注入量:cWnt3a2-HA(250 pg)、cWnt3a1-HA(250 pg)、VegT(15 pg)、Frzb (1000 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 49.

(51) A. B. C Alexa Fluor 647 dextran Wnt8-HA-KDEL protein. Frzb protein. Marge. 図 7 Wnt8-KDEL mRNAとFrzb mRNAの共注入による阻害とWnt8KDELタンパク質の局在 A) stage 17における実験胚の形態。Wnt8—HA-KDEL mRNAとFrzb mRNAを注入PBEが背側化した際に特徴 的な突起を形成しなかった。 B) stage 10.5におけるRT-PCR結果。Wnt8-HA-KDEL mRNAとFrzb mRNAを注入したPBEは背側遺伝子siamois とXnr3を発現していなかった。 ODCはローディングコンロトロール。 C) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Wnt8-HA-KDEL protein(緑)、Frzb protein(赤)、Marge; Wnt8-HA-KDEL protein + Frzb protein。Frzb proteinは小胞体でWnt8-HA-KDEL protein共局在していた。. 注入量:Wnt8-HA-KDEL(250 pg)、VegT(15 pg)、Frzb (1000 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 50.

(52) A. Sia Xnr3 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. B. C. Alexa Fluor 647 dextran. Dissociated (1 h). Whole. Wnt8-HA protein. 51. Marge. 8.

(53) 図 8 Wnt mRNA注入胚の割球解離による背側遺伝子の発現と Wntタンパク質の局在 A) stage 10.5におけるRT-PCR結果。注入胚(Whole胚もしくは、8細胞期から継続して解離した胚: diss)の背 側遺伝子siamoisとXnr3の発現、 ODCはローディングコントロール。正常胚とb-catenin mRNA注入胚 は割球解離をおこなっても、siamoisとXnr3の発現していた(レーン2と4)。Wnt8 mRNAとcWnt3a2 mRNAを 注入したPBEは割球解離によって、背側の遺伝子は発現しなかった(レーン6と8)。注入量:b-catenin (100pg)、 Wnt8-HA(250 pg)、VegT(15 pg) B) stage 10.5におけるRT-PCR結果。注入胚(Whole胚もしくは、1024細胞期から短時間解離した胚)の背側 遺伝子siamoisとXnr3の発現。1024細胞期から短時間解離した胚でも背側の遺伝子は発現しなかった。 C) Alexa Fluor 647 dextran(桃)、Wnt8-HA protein(緑)、Marge; Wnt8-HA protein + Alexa Fluor 647 dextran。 Wnt8-HA proteinはmRNA注入された細胞に発現していたが、主に細胞の周辺に強い顆粒状の局在を示 した。 注入量:Wnt8-HA(250 pg)、VegT(15 pg)、0.1% Alexa Fluor 647 dextran. 52.

(54) A. B. C. 53.

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