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日本看護技術学会誌8巻3号

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Academic year: 2022

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研究報告

「個別性のある看護」に関する概念分析

Concept Analysis of Individualized Nursing Care

  漆

Satomi Urushihata

畑里美  

 本研究は日本の看護における「個別性のある看護」の概念的意味を明らかにし,展開と実態について 考察することを目的に行った.医中誌 Web を用いて日本語の「個別性のある看護」に関する 30 文献 を選出し Rodgers の概念分析法を用いて分析した.その結果,属性として【指導】【関わり】【支援・

援助】の 3 カテゴリー,先行要件として{患者の状況}である【日常生活行動】【能力】【感情】,{状況 を生み出している背景}である【自己認識】【生活】【パーソナリティ】【病歴】【経験・体験】【家族】,

{現行の看護ケア}である【看護ケアの場】【実践】【看護姿勢】の計 12 カテゴリー,帰結として【進歩】

【好転】【試み】【悪影響】の 4 カテゴリーが得られた.以上から「個別性のある看護」は「対象者の状態 を望ましい方向へ移行するために,対象の置かれている状況およびその背景を把握し,それをもとに 既存の看護を組み合わせる,調節・変更・改善することで創造される看護」と定義され,展開には適 切な患者把握能力とケアの調整能力が必要であることが示唆された.

キーワード:個別性のある看護,個別性,介入概念,概念分析

 This study was designed to identify concept of “Individualized nursing care” by analyzing literature of Japanese nursing care in accordance with Rodgers’ concept analysis methods. The purposes of this study are to define the concept of Japanese “Individualized nursing care”, and consider actual situation of Individualized nursing care. References analyzed in the present study were extracted from Japana Centra Revuo Medicina databases. The attributes were nursing practice: ①Guidance, ②Concerned, ③Supporting. Antecedents were: ①{Patient’s situation}:

Everyday life behavior, Ability, Feelings, ②{Background of the situation}: Self-knowledge, Life, Personality, Medical history, Experience, Family, ③{Current nursing care}: Field of nursing, Practice, Nursing posture. Primary consequences were: ①Progress, ②Improvement, ③Trial, ④ Bad influence. Based on these results, Individualized nursing care can be defined as follows:

Individualized nursing care results for shift to a desirable condition, when the nurse knows the patient’s situation and background, and put existing nursing practice together or regulate, change, improve existing nursing based on it.

Key words:individualized nursing care,individuality,intervention concept,concept analysis

受付日:2009 年 1 月 5 日 受理日:2009 年 7 月 3 日

青森県立保健大学大学院博士前期課程健康科学研究科 Master’s course, Aomori University of Health and Welfare Graduate School 連絡先:漆畑里美 青森県立保健大学大学院博士前期課程健康科学研究科 〒 030-8505 青森県青森市大字浜館字間瀬 58-1 E-mail:0884801@ym.auhw.ac.jp

(2)

Ⅰ.はじめに

 質の高い看護の提供を目指し,古くから「個別性の ある看護」の必要性は看護の教育や臨床の現場に定着 している.看護を提供する際,同様の健康レベルでも 対象の年齢や生活歴,価値観等によって必要なケアが 違い,既存の技術や知識では対応が不十分となる場合 がある(児玉・高崎 2000).よってその独自性に応じ た「個別性のある看護」を展開しようとし,これまでに も POS や看護診断,プライマリナーシング等さまざ まな理論や方法が開発・適用されている.しかし,そ のようにさまざまな試みがなされているにもかかわら ず,多くの看護師が「個別性のある看護」の実践に困難 を感じている現状がある(大室ら 2005).

 「個別性のある看護」に関連し,細田(2004)は患者の 個別性を理解することには「患者の反応と独自の状況 を知ること」「患者の置かれた状況との相互関係的な ケアを提供すること」という 2 つの意味が含まれると し,個別性に即した看護実践のための患者理解につい て示した.また,個別性のある看護を展開する看護師 の行動を明らかにすることを目的に行った研究の中で 櫻井は個別性のある看護を「看護目標の達成に向け,

看護師がクライエントの身体・心理・社会的側面を包 括的に理解・受容し,顕在・潜在するニードの充足を 目指して,援助を調整,選択した看護実践とする.こ の実現に向けては,クライエントの意思決定への参画 を重視する.また,その結果として,クライエントの ニードの充足を必須要件とする(櫻井ら 2008)」と定義 し,展開には「目標達成に向け基盤となる普遍的要素」

「個別状況を反映した援助の的確化に必要な方略とな る要素」「個別性のある看護の展開を表す特徴的な要 素」が必要だと述べた.これらの研究から,個別性の ある看護を展開するには患者の独自性を包括的に理解 すること,その内容を反映した援助の的確化を行う必 要があることが,共通項としてあげられた.

 日本で「個別性のある看護」の概念についてなされた 先行研究は少数であり,本概念の全容について考察し た研究は先の櫻井の研究のみであった.ただし櫻井の 定義は諸理論や海外論文でなされた既存の定義をまと めることで規定されており,今現在の日本の看護師が もっている「個別性のある看護」の概念を反映している とは言い難い.EBN 等により看護の標準化が進んで いる現在,これまで漠然と目指してきた「個別性のあ

る看護」について再考し,実践について見直すことは 両者の協調を考えるうえでも重要であるといえる.ま た多くの看護師が「個別性のある看護」の実践に困難を 感じている現状を受け,現在看護師が「個別性のある 看護」をどのように捉えて実践しているのかを明らか にすることは,看護師が感じる困難の要因を明らかに し,よりスムーズに多くの看護師が「個別性のある看 護」を行うことができるようにすることにつながると 考える.

 そこで現在の日本の看護師がどのようなものを「個 別性のある看護」と捉えているのか,すなわち概念的 意味を明らかにして定義し,その展開と実態について 考察することを目的として,本研究を行った.

Ⅱ.研究方法

 本研究方法論は,概念は時代とともに発展的に形 成されると捉える Rodgers の概念分析法(Rodgers &

Knafl 2000)を用いた.これは既存の文献を用いて概 念が現在どのように捉えられているのかを明らかにす ることで,概念の定義づけを最終目的とする手法であ る.概念は文脈や状況に依存するものであり,現象単 体で存在するのではなく,前後の流れを含めたダイナ ミックなものであるとして,概念を発現の前段階であ る先行要件,概念の発現である属性,発現の後段階で ある帰結の 3 段階にわたって分析することを特徴とし ている.

 日本の看護における「個別性のある看護」の現在の概 念的意味を明らかにすることを目的としたため,検索 ツールとして日本医学中央雑誌による医中誌 Web を 用いた.「個別性のある看護」は「個別性」と「看護」の 2 概念で構成されているため,2002 ~ 2007 年を検索 年代としてキーワード「看護」 and (「個別性(個性(人 格))」 or 「個別性(患者中心医療)」 or 「個別性(オー ダーメイド医療)」 or 「個別性(個体差)」)での日本語 原著論文・総論・研究報告に絞り込み検索を行った結 果,194 件が得られた.この中で看護と他の職種との 業務内容の個別化に関するものや,教育内容・教育効 果に関する文献,看護記録に関する文献といった直接 的な患者ケアに関わらない文献を除外し,残った 79 件から乱数表を用いて概念分析に必要な文献の最低数 である 30 件を選択した(Rodgers & Knafl 2000).

 分析手順は以下のとおりである(Rodgers & Knafl 2000).1)以下のデータを前後の文章ごと抽出し,表

(3)

計算ソフトに入力する.①「属性」;「個別性のある看 護」として表れている事象,その内容・特徴(「個別性」

または「個別性のある看護」と記されている部分をマー キングしそれが示す文章をこれとする),②「先行要 件」;「個別性のある看護」が起こる前に何が起きてい るのか,「個別性のある看護」を行う前の状況,③「帰 結」;「個別性のある看護」に引き続いて何が起こった か.2)得られたデータを文脈を踏まえてアイテム化 し,再度文献に戻りその整合性について検討する.3)

抽出したアイテムを共通性と特異性に配慮しながら分 類し,大カテゴリー名・カテゴリー名・サブカテゴ リー名をつける(以下大カテゴリー名を{ }内に,カ テゴリー名を【 】内に,サブカテゴリー名を[ ]内に 示す).4)概念の意味や定義,仮説,実践について考 察し明らかにする.

 本研究を行うにあたり,概念分析の見識のある方の スーパーバイズを受けて話し合いを重ね,信頼性を確 保した.倫理的配慮として,本研究は文献を用いた研 究のため,すべて公開後の文献を用いた.

Ⅲ.結果

1.文献の種別

 分析対象とした 30 件の種別は原著論文が 2 件,総 説が 2 件,学会抄録が 15 件,研究報告が 11 件であっ た.このうち「個別性のある看護」の分析を目的として いる文献はみられなかった.「個別性のある看護」につ いて定義したうえでこの概念を論じているものはみら れなかった.

2.「個別性のある看護」概念の属性(表 1)

 各文献中での「個別性のある看護」の記述は,何らか の看護介入として述べている文献が 25 件で,そのう ち個別性のある看護の実践であると明記されているも のは 11 件,行ったケアを振り返って個別性のある看 護であったとした文献は 5 件,考察やまとめで本概念 について触れているものが 9 件であった.このことか ら「個別性のある看護」はある状況への働きかけであ 表1 「個別性のある看護」の属性

*( )内はアイテムを得られた文献数を指す 

カテゴリ サブカテゴリ アイテム 文献

指導

(13)

指導内容

(7)

指導内容選択,指導用紙以外の説明,具体的行動レベル での指導,退院後の具体的な生活管理方法,日常生活技 術,服薬の頻度・目安,金銭管理の方法,環境整備方法,

状態に関する詳細,就労中の症状対処,実現可能な塩分・

水分制限,実際に計量しながらの食事指導,外食・飲酒,

副食の取り方を視野に入れた食事指導

纐纈ら 2005;板倉ら 2003;神尾ら 2005;

村上ら 2003;松島ら 2004;室尾ら 2005;

田中春ら 2003

指導方法

(8)

指導・面談の時期・回数・環境の選択,面接方法の工夫,

Q&A 方式,視覚効果を利用したオリエンテーション,

パンフレットの工夫,繰り返しの説明,スケジューリン グ,シミュレーション,インターンシップ制度の利用,

レクリエーション集団のサブリーダーに任命する,薬剤 師への服薬指導依頼

纐纈ら 2005;原田ら 2005;神尾ら 2005;

松本洋ら 2004;村上ら 2003;佐藤ら 2003;

田中春ら 2003;田中智ら 2003

目標設定(2)自立生活を目標に設定,スモールステップ 河越・松本 2005;田中春ら 2003 関わり

(10)

受容的態度

(5)

受け入れる,傾聴,患者の力を信じる 纐纈ら 2005;加藤秀ら 2005;室尾ら 2005;

田中智ら 2003;築地 2002 エンパワメン

(4)

患者の意思を確認する,自己効力感を高める,自発行動 を促す,些細なことでも褒める

河津ら 2003;加藤秀ら 2005;室尾ら 2005;

築地 2002 積極的

(5)

積極的な声かけ,スキンシップ,時間をかける,継続的 関わり

河津ら 2003;北原ら 2004;田中春ら 2003;

築地 2002;矢賀ら 2005 自己決定の促

(5)

自己決定の尊重,患者による自己目標,患者と相談しな がらの指導

加藤秀ら 2005;村上ら 2003;室尾ら 2005;

田中春ら 2003;築地 2002 支援・

援助

(14)

日常生活援助

(6)

体位変換の方法・回数・間隔,入浴時の温度,今までの 生活スタイルに近い形での基本的ケア,食事形態・量・

方法,病院規則の柔軟な変化,買い物方法の工夫,喫煙 場所の工夫,車の運転の可否・代替方法

甲斐 2004;加藤秀ら 2005;北原ら 2004;

松本眞ら 2002;村上ら 2003;大西・内井 2005

補助・支援

(7)

治療の選択の医師へのフィードバック,精神的支援,介 護者の支援体制の相談,家庭内役割の調節,面会の促し,

患児への関わりや説明を助ける,環境支援

纐纈ら 2005;原田ら 2005;加藤敦ら 2002;

松本由ら 2002;小野 2006;田中春ら 2003;

築地 2002 情報提供

(6)

社会資源の紹介,代替食品の紹介,医師の補足説明 纐纈ら 2005;久崎ら 2005;加藤敦ら 2002;

松本由ら 2002;宮川 2004;田中春ら 2003

(4)

り,介入概念であった.得られた 56 のアイテムを分 類し,カテゴリー名をつけた.「個別性のある看護」概 念の属性は【指導】【関わり】【支援・援助】の 3 カテゴ リーに分類された.またこれらの働きかけを行うにあ たり看護師は,先行要件に対して合わせる,尊重す る,配慮するという意図で看護ケアを組み合わせたり 選択や調整をしたり改善することで「個別性のある看 護」の的確化を図っていた.

1)【指導】

 患者の具体的な行動を引き出すための工夫であり,

[指導内容][指導方法][目標設定]の 3 サブカテゴ リーから形成された.具体的な内容は先行要件に合わ せる,配慮することで決定されていた.

2)【関わり】

 患者との双方向的な働きかけであり,[受容的態度]

[積極的][エンパワメント][自己決定の促し]という 4 サブカテゴリーから形成された.どのような関わり を行うかは先行要件を尊重,配慮することで決定され ていた.

3)【支援・援助】

 患者に必要な具体的な行動の手助けであり,[日常

生活援助][補助・支援][情報提供]の 3 サブカテゴ リーから形成された.具体的な内容は先行要件に合わ せる,配慮することで決定されていた.

3.「個別性のある看護」概念の先行要件

 「個別性のある看護」が介入概念であったため,先行 要件は介入を行う前段階であり,介入を行う前の状況 や介入の原因を指していた.30 件すべてで何らかの 記述がみられ,149 アイテムが得られた.先行要件は ケアの的確化の際に合わせる,尊重する,配慮する対 象であり,これらの意図でケアを適応させることで

「個別性のある看護」は実践されていた.先行要件は

{患者の状況}と{状況を生み出している背景}{現行の 看護ケア}という 3 つの大カテゴリーに分けられ,各 文献からそれぞれ複数の大カテゴリーに関する記述が みられた.

1)患者の状況(表 2 - 1)

 対象である患者自身のケアの際の状況そのものを 現す{患者の状況}について,【日常生活行動】【能力】

【感情】【自己認識】の 4 カテゴリーが得られた.

 (1)【日常生活行動】:ADL に関する状況のほか,

表2-1 「個別性のある看護」の先行要件{患者の状況}

*( )内はアイテムを得られた文献数を指す 

カテゴリ サブカテゴリ アイテム 文献

日常生活 行動

(13)

身体状況

(9)

ADL 自立度,運動障害,体力,食欲,睡眠,聴力,

年齢による変化

纐纈ら 2005;板倉ら 2003;甲斐 2004;加藤敦ら 2002;加藤秀ら 2005;松本眞ら 2002;松本由ら 2002;村上ら 2003;田中智ら 2003

セルフケアの 状況 (5)

要介護度,排泄,食事,清潔,金銭管理,掃除・

洗濯

甲斐 2004;加藤秀ら 2005;河津ら 2003;村上ら 2003;田中春ら 2003

能力

(14)

知識 (8)疾患・病態,治療行動,薬剤・副作用,育児 纐纈ら 2005;原田ら 2005;久崎ら 2005;板倉ら 2003;松本由ら 2002;村上ら 2003;室尾ら 2005;

上村ら 2004

理解 (5)理解力,疾患の理解度 纐纈ら 2005;原田ら 2005;松本由ら 2002;村上ら 2003;室尾ら 2005

受容 (4)疾患・障害,治療 内海ら 2004;宮崎・斎藤 2003;室尾ら 2005;上村 ら 2004

対処 (9)疾病の自己管理,疾患予防行動,服薬管理,健 康維持能力,ストレス対処,トラブル対処

纐纈ら 2005;原田ら 2005;河越・松本 2005;松本 由ら 2002;宮崎・斎藤 2003;松本洋ら 2004;室尾 ら 2005;田中春ら 2003;上村ら 2004

感情

(15)

患者の感情

(10)

満足,喜び,不安,戸惑い,苛立ち,不満 纐 纈 ら 2005; 久 崎 ら 2005; 板 倉 ら 2003; 甲 斐 2004; 加 藤 敦 ら 2002; 加 藤 秀 ら 2005; 室 尾 ら 2005;田中春ら 2003;田中智ら 2003;築地 2002 反応・感じ方

(4)

疾病に関して,副作用に関して,ケアに対して,

声かけに対して,指導に対して

河越・松本 2005;室尾ら 2005;田中智ら 2003;築 地 2002

意欲 (5)自己効力感,通所,セルフケア,生への執着 河津ら 2003;河越・松本 2005;室尾ら 2005;上村 ら 2004;内海 2004

自己認識

(11)

自己概念

(6)

自己概念,自己評価,自尊心,ボディイメージ 原田ら 2005;松本由ら 2002;室尾ら 2005;佐藤ら 2003;田中智ら 2003;上村ら 2004

自己表現(4)感情表現方法,コミュニケーション方法 河津ら 2003;松本眞ら 2002;小野 2006;築地 2002 希望・要望

(3)

退院指導に対して,治療に対して 松本由ら 2002;宮崎・斎藤 2003;田中智ら 2003

(5)

掃除・洗濯,金銭管理といった生活能力に関する状況 であり,[身体状況][セルフケアの状況]の 2 サブカ テゴリーから形成された.属性はこれに合わせること で的確化されていた.

 (2)【能力】:[知識][理解][受容][対処]の 4 サ ブカテゴリーから形成された.属性はこれに対して合 わせる,尊重することで的確化されていた.

 (3)【感情】:[患者の感情],自身の疾患やケアを行 う医療者に対する[反応・感じ方][意欲]の 3 サブカ テゴリーから形成された.属性はこれに対して合わせ る,尊重する,配慮することで的確化されていた.

 (4)【自己認識】:[自己概念][自己表現][希望・

要望]の 3 サブカテゴリーから形成され,これらに合 わせる,尊重する,配慮することで属性は的確化され ていた.

2)状況を生み出している背景(表 2 - 2)

 先行要件の大カテゴリー{患者の状況}に影響を与 えると考えられる因子として,{状況を生み出してい る背景}が 29 件から 74 アイテムが得られた.【生活】

【パーソナリティ】【経験・体験】【病歴】【社会的背 景】【家族】の 6 カテゴリーが得られ,直接介入の対象 ではなく,介入の際に尊重,配慮する対象であるとさ 表2-2 「個別性のある看護」の先行要件{状況を生み出している背景}

*( )内はアイテムを得られた文献数を指す 

カテゴリ サブカテゴリ アイテム 文献

生活

(22)

生活背景

(10)

年齢,性別,職業,経済状況 纐 纈 ら 2005; 東 ら 2005; 板 倉 ら 2003; 河 津 ら 2003;松本眞ら 2002;村上ら 2003;小野 2006;佐 藤ら 2003;田中春ら 2003;内海 2004

ライフスタイ (9)

生活暦,生活習慣,スケジュール,行動範囲,

労働条件

甲 斐 2004; 加 藤 秀 ら 2005; 松 島 ら 2004; 宮 川 2004;村上ら 2003;室尾ら 2005;田中春ら 2003;

築地 2002;上村ら 2004 退院後の生活

(3)

生活の変化,緊急連絡網,母子同時の退院か,

母親だけの退院か

加藤敦ら 2002;松本由ら 2002;田中智ら 2003 ニーズ (2)食事ニード,活動ニード 原田ら 2005;大西・内井 2005

パーソナ リティ

(11)

人生観・価値 (4)

価 値 観, 信 念, 生 き 方, 本 人 が 何 を も っ て QOL が高いとするのか

松島ら 2004;宮川 2004;内海 2004;上村ら 2004 性格 (5)性格,興味・関心,趣味・嗜好,自己形成 纐纈ら 2005;甲斐 2004;加藤秀ら 2005;河津ら

2003;築地 2002

認知 (2)認知レベル 加藤秀ら 2005;河津ら 2003

経験・体 験 (7)

人生経験(3)人生経験,妊娠・出産・育児 板倉ら 2003;築地 2002;内海 2004 病気体験(6)症状・発作,再発,知識外の問題,セルフケア

の成功体験,対処方法習得の経緯,自己決定

久崎ら 2005;板倉ら 2003;神尾ら 2005;河越・松 本 2005;田中春ら 2003;内海 2004

病歴

(20)

既往歴 (6)既往歴,基礎疾患,入院回数・期間 東ら 2005;加藤敦ら 2002;河津ら 2003;室尾ら 2005;田中春ら 2003;築地 2002

現病歴 (9)入院・治療の目的・経緯,合併症,治療の進行 状況,術前後の経過,出産状況,薬剤;種類・

数・頻度・副作用,リハビリ

東ら 2005;原田ら 2005;板倉ら 2003;加藤敦ら 2002;河越・松本 2005;北原ら 2004;宮崎・斎藤 2003;田中春ら 2003;田中智ら 2003

症状 (13)病態・症状,疼痛,機能障害,皮膚障害 纐纈ら 2005;東ら 2005;甲斐 2004;加瀬ら 2005;

加藤秀ら 2005;河越・松本 2005;河津ら 2003;松 本眞ら 2002;宮崎・斎藤 2003;大西・内井 2005;

田中智ら 2003;築地 2002;上村ら 2004 社会的背

景 (12)

情報 (6)専門機関から得る情報,患者の事前の情報収集,

間接的な情報,雑誌・テレビからの情報,同病 者からの情報

久崎ら 2005;板倉ら 2003;河越・松本 2005;松本 由ら 2002;室尾ら 2005;田中智ら 2003

社会環境(5)育児を取り巻く社会環境,利用し得る社会資源,

受診から入院までの期間短縮,情報の氾濫

板倉ら 2003;加藤敦ら 2002;河越・松本 2005;松 本由ら 2002;田中春ら 2003

人間関係(6)患者・家族-医療者間,患者-家族間,患者・

家族-親族間,患者-同病者間

板倉ら 2003;加藤敦ら 2002;河越・松本 2005;河 津ら 2003;村上ら 2003;田中春ら 2003

家族

(12)

家族背景(4)家族の歴史,家族構成,家族の日常生活 纐纈ら 2005;加藤秀ら 2005;松本由ら 2002;田中 春ら 2003

家族の能力

(6)

理解力,理解度,判断力,看病・介護力,家事 能力,介護者の年齢

纐纈ら 2005;板倉ら 2003;松本由ら 2002;松本洋 ら 2004;宮崎・斎藤 2003;田中春ら 2003 家族の感情

(8)

疾患・病態への感じ方,治療に対する意見・要 望,不安,負担感,患児の疾患に対する自責

纐纈ら 2005;板倉ら 2003;河越・松本 2005;加藤 敦ら 2002;松本洋ら 2004;松本由ら 2002;宮崎・

斎藤 2003;田中智ら 2003 態度・対応

(2)

協力度,生活態度 松本洋ら 2004;田中春ら 2003

(6)

れていた.ただし【家族】は,直接介入を行う対象にな る場合もあった.

 (1)【生活】:患者の医療機関外での生活に関して,

[生活背景][ライフスタイル][退院後の生活][ニー ズ]の 4 サブカテゴリーから形成され,アイテムには 食事,着替え,洗濯・掃除,喫煙,金銭管理といっ た,具体的生活習慣が含まれた.属性はこれらに合わ せる,尊重する,配慮することで的確化されていた.

 (2)【パーソナリティ】:[人生観・価値観][性格]

[認知]という 3 サブカテゴリーから形成され,尊重,

配慮することで属性は的確化されていた.

 (3)【経験・体験】:[人生経験][病気体験]の 2 サ ブカテゴリーから形成され,尊重,配慮することで属 性は的確化されていた.

 (4)【病歴】:[既往歴][現病歴][症状]の 3 サブカ テゴリーから形成された.また,[症状]に関しては直 接介入する対象でもあり,{患者の状況}に影響を与え る因子であると同時に,状況そのものとしても表され ていた.

 (5)【社会的背景】:患者に与えられる[情報],社会 の風潮を含む[社会環境],患者と直接関わる人間の

[人間関係]という 3 サブカテゴリーから形成された.

属性はこれらに合わせる,配慮することで的確化され ていた.

 (6)【家族】:患者を取り巻く背景の一部であり,

【日常生活行動】や【感情】に影響を与える因子としてあ げられ,[家族背景][家族の能力][家族の感情][態 度・対応]の 4 サブカテゴリーから形成された.また,

家族の状態・状況,能力に合わせる,家族の感情を尊

重,配慮するといったように,家族は看護者がケアを 的確化しながら直接介入を行う対象ともなると記され ていた.

3)現行の看護ケア(表 2 - 3)

 患者の状況にかかわらず,すべての患者に現在行わ れている看護として{現行の看護ケア}が,19 件から 24 アイテム得られ,【看護ケアの場】【実践】【看護姿 勢】の 3 カテゴリーが得られた.属性は{現行の看護ケ ア}を,{患者の状況}{状況を生み出している背景}に 対して合わせる,尊重する,配慮することで的確化し て行われていた.その的確化は{現行の看護ケア}を組 み合わせたり,変更を加えたり,調整したりして行わ れていた.また,属性となる介入のもととなって選択 や認識に影響を与える要素としても述べられた.

 (1)【看護ケアの場】:病棟の規則を含む[治療環境]

と[人的体制]の 2 サブカテゴリーから形成された.

 (2)【実践】:個別性のある看護を提供する基盤と なる,現行の看護実践について,[看護過程][患者 理解][ツール][看護師の能力]という 4 サブカテゴ リーから形成された.

 (3)【看護姿勢】:[看護態度][看護観]の 2 サブカ テゴリーから形成された.

4.「個別性のある看護」の帰結(表 3)

 属性が介入概念のため,帰結は介入のアウトカム を含み,20 件で 45 のアイテムについて述べられてい た.それらの事象は先行要件の変化として記述される ことが多かった.20 件すべてで望ましい状況への移 行が述べられたが,1 件でのみ否定的変化も述べられ 表2-3 「個別性のある看護」の先行要件{現行の看護ケア}

*( )内はアイテムを得られた文献数を指す 

カテゴリ サブカテゴリ アイテム 文献

看護ケア の場(5)

治療環境(3)入院生活時の生活空間,病棟の規則 加藤秀ら 2005;大西・内井 2005;松本洋ら 2004 人的体制(2)看護方式,担当患者の絶対数,医師による説明 北原ら 2004;宮崎・斎藤 2003

実践

(15)

看護過程(12)看護計画,統一されたケア,病棟での指導,明 確な指導目標,家族指導

加藤敦ら 2002;加藤秀ら 2005;北原ら 2004;松本 眞ら 2002;松本洋ら 2004;松本由ら 2002;松島ら 2004;村上ら 2003;室尾ら 2005;田中智ら 2003;

築地 2002;矢賀ら 2005

患者理解(5)全人的な理解,ルティンワーク的な情報収集 松島ら 2004;村上ら 2003;宮川 2004;築地 2002;

上村ら 2004 ツール (3)介護者の支援体制,指導用パンフレット,患者

教育方法論

加藤敦ら 2002;松本洋ら 2004;上村ら 2004 看護師の能力

(2)

ケアに対する自己評価能力,包括的な患者理解

松島ら 2004;上村ら 2004 看護姿勢

(7)

看護態度(3)過剰な介入,来院した家族への対応態度 村上ら 2003;田中春ら 2003;築地 2002 看護観 (4)看護師の価値観,看護師の感情,患者の意思決

定に関して,患者の人権擁護・エンパワメント に関して,患者のプライバシーに関して

甲斐 2004;加藤秀ら 2005;松島ら 2004;佐藤ら 2003

(7)

た.文献中では主に結果や考察,結論で述べられてい た.得られた事象は変化の種類ごとに分類してカテゴ リーを形成した.また,それらの事象がどの先行要件 に対応しているのかも分析した.帰結として【進歩】

【好転】【試み】【悪影響】の 4 カテゴリーが得られた.

1)【進歩】

 先行要件の肯定的変化として【進歩】が述べられ,

[補強される][可能になる][実施される]の 3 サブカ テゴリーから形成された.それぞれ[補強される]は疾 患・薬剤・自己管理に関する知識・理解,家族能力の 変化として,[可能になる]は自己管理・介護予防行動 という対処,環境整備・金銭管理というセルフケア状 況,その人らしく生きることや居場所ができるという 自己実現の変化として,[実施される]は看護側の患者 把握・問題の明確化・認識の共有という患者理解,患 者主体の看護や人権尊重という看護態度の変化とし て,先行要件に対応していた.

2)【好転】

 先行要件の肯定的変化として【好転】が述べられ,

[増強する][向上する]の 2 サブカテゴリーから形成 された.それぞれ[増強する]は患者・家族周辺の人間 関係,自己効力感・自信という意欲,QOL という自 己実現の変化として,[向上する]は家族の満足感,家 族の見舞いや指導の受け入れの状態,患者の肯定的・

否定的感情,看護師の感情という看護観の変化とし て,先行要件に対応していた.

3)【試み】

 肯定的変化として【試み】が述べられ,[図られる]

[整備・開発する]の 2 サブカテゴリーで形成された.

それぞれ[図られる]はケアの統一・維持・連携という 看護過程,[整備・開発する]はクリティカルパスや チェックリストというツールについて先行要件と対応 し,「個別性のある看護」を実施したことでそれらに変 化を起こそうという試みがなされるきっかけとなった ことを示していた.

4)【悪影響】

 唯一の否定的変化である【悪影響】として[負担の増 加]について述べられた.加藤は,多くの看護師は患 者の希望に沿うようなケアを行うとき,事故に対する 不安や業務の煩雑化という負担を抱えながらケアをし ていると述べていた(加藤秀ら 2005).

5.「個別性のある看護」の定義

 本概念の属性は現在起きている状況を前提とする働 きかけ,すなわち介入概念であった.また先行要件で ある現在の状況を複数の観点から包括的に把握するこ とが必要条件であった.介入方法は既存の看護に限ら ず,{患者の状況}や{状況を生み出している背景}とい う対象について把握した内容に合わせる,配慮する,

尊重するという意図で{現行の看護ケア}に変更や調 整,改善をしたり,いくつかのケアを組み合わせて行 われていた.ただしどのように変化させているのかは それぞれの臨床現場がそれまで行っていた看護ケアに 表3 「個別性のある看護」の帰結

*( )内はアイテムを得られた文献数を指す。【 】内はカテゴリ名を,[ ]内はサブカテゴリ名をそれぞれ指す 

カテゴリ サブカテゴリ 対応する先行要件 文献

進歩

(14)

補強される

(6)

【能力】[知識][理解],

【家族】[家族の能力]

原田ら 2005;松本眞ら 2002;松本由ら 2002;松島 ら 2004;村上ら 2002;田中春ら 2003

可能になる

(7)

【能力】[対処],

【日常生活】[セルフケア状況]

【自己認識】[自己実現]

加藤秀ら 2005;甲斐 2004;河津ら 2003;松本由ら 2002;村上ら 2002;室尾ら 2005;田中春ら 2003 実施される

(5)

【実践】[患者理解]

【看護姿勢】[看護態度]

加藤秀ら 2005;北原ら 2004;松本眞ら 2002;築地 2002;矢賀ら 2005

好転

(13)

増強する(8)【感情】[意欲],

【社会的背景】[人間関係]

【自己認識】[自己実現]

加藤秀ら 2005;河津ら 2003;河越・松本 2005;松 本眞ら 2002;宮川 2004;室尾ら 2005;田中春ら 2003;築地 2002

向上する(8)【感情】[患者の感情],

【家族】[家族の感情][家族の状態]

【看護姿勢】[看護観]

纐纈ら 2005;東ら 2005;板倉ら 2003;甲斐 2004;

加藤秀ら 2005;松本眞ら 2002;松島ら 2003;田中 春ら 2003

試み(7)図られる(4)【実践】[看護過程] 纐纈ら 2005;加藤敦ら 2002;河越・松本 2005;松 本眞ら 2002

整備・開発す (3)

【実践】[ツール] 東ら 2005;上村ら 2004;矢賀ら 2005 悪影響

(1)

負担の増加

(1)

【ケアの場】[人的体制] 加藤秀ら 2005

(8)

左右されており,属性のアイテムが同様のものでも変 化は調整であったり組み合わせであったりした.介入 の結果である帰結は【進歩】【好転】と,介入前の状況 の肯定的な変化が主であり,【試み】として新たに図ら れる内容も望ましい方向を目指すものであった.

 以上の属性,先行要件,帰結に関する分析と得られ た内容から概念の定義を試みると,次のようになる.

「個別性のある看護」とは「対象者の状態を望ましい方 向へ移行するために,対象の置かれている状況および その背景を把握し,それをもとに既存の看護を組み合 わせる,調節・変更・改善することで創造される看 」である.ただし本研究の対象はあくまで日本国内 の文献に限ったものであり,この定義は日本における

「個別性のある看護」の概念を示すものである.

Ⅳ.考察

1.「個別性のある看護」の定義

 結果より,本研究の対象文献すべてから先行要件が 抽出されたことからも,「個別性のある看護」の展開に おいて起点となるのが対象理解であるといえる.また 内容が患者個人に関することだけでなく,家族や社会 にまで及んでいたことから,広く包括的に患者の状況 を把握し,取り巻く環境にまで目を向けることも必要 と考えた.Radwin. L.E. は質的研究 2 件を統合し個別 性のある看護を「独自性をもつ個人として対象を理解 し,対象の経験(病気・家族・社会的環境・趣味・余 暇およびそれらに付随した問題),行動(身体的症状・

意思決定),感情,知覚(経験の解釈)に対応した看護 を創造すること」(Radwin & Alster 2002)と定義し ている.また細田(2004)によれば,患者の個別性を理 解することには対象の独自の反応を知ることだけでは なく,それと相互関係的な看護ケアを提供することも 含まれている.これらの定義と本研究で得られた定義 は,対象の置かれている状況を包括的に把握する必要 性を示した点で一致している.しかし上記 2 つの定義 は患者把握後どのように看護を展開していくかについ て「看護を創造する」「相互関係的なケアを提供する」

といった表現にとどまっている.そこで,患者把握後 の看護を「既存の看護を組み合わせる,調節・変更・

改善する」として示した点に本定義の独自性があると いえる.

2.「個別性のある看護」の展開と実態

 個別性のある看護介入は,既存の方法では対応が不 十分または安楽ではないと判断された際,既存のケア を組み合わせる,調整・変更・改善することで行われ ていた.しかし具体的方法の選択は,行われている看 護ケアの状況や看護師個人の経験や個人的知識に左右 されることが多い.そのため経験が不足し知識や技術 の応用が不十分な新人看護師をはじめ,看護師が個別 性のある看護の展開を困難と知覚している現状がある

(大室ら 2005).また「個別性のある看護」として患者 の希望に沿うような対応ばかりしては,看護師の業 務負担が増加し,事故の心配や不安も増加する(加藤 ら 2005)」という悪影響の要素も抽出された.対象を 把握しそれをもとに適切で安楽な看護ケアを提供する ことは重要であるが,どの程度の要求まで飲み,どの ような方法をとるか,それは適切で安楽な方法である か,という具体的な判断・実践については,個々の看 護師の能力や臨床の人的体制,患者の状況に大きく左 右されるといえる.資源に限界のある臨床現場でより 効率的に,対応の優先度が高い患者の状況を把握・選 択し,それに適応した看護を創造するためには,看護 師の知識や技術が適切に活用される必要がある.つま り効率的に個別性のある看護の展開をするためには,

個人の能力のみに頼るのではなく,臨床知や暗黙知と いった,形式知化されていない知識を引き出して共有 し,臨床現場全体で提供する,看護の質の均一化を図 る必要があると考える.

 そのため,現在は個人の暗黙知や臨床知に頼ってい る,どのように対象理解が進められ,どのような調整 がされることで対象の独自性に対応した看護が創造さ れているのかという点を明らかにしていくことで,的 確化された「個別性のある看護」の展開が実現可能に なっていくと考える.

3.研究の限界

 Rodgers の概念分析法(Rodgers & Knafl 2000)は既 存の文献を用いて分析を行うため,対象となる文献 に分析結果の妥当性や一般性が少なからず影響を受け る.本研究の対象文献のうち半数が学会抄録であった 点に加えて,データ源が文献であるため,臨床現場で どのように概念が捉えられているのかが正確に反映さ れているか否かわからない点で,本研究結果の妥当 性・一般性に限界があった.

(9)

Ⅴ.結論

 1.属性として【指導】【関わり】【支援・援助】の 3 カテゴリー,先行要件として{患者の状況}である【日 常生活行動】【能力】【感情】,{状況を生み出してい る背景}である【自己認識】【生活】【パーソナリティ】

【病歴】【経験・体験】【家族】,{現行の看護ケア}であ る【看護ケアの場】【実践】【看護姿勢】の計 12 カテゴ リー,帰結として【進歩】【好転】【試み】【悪影響】の 4 カテゴリーが得られた.

 2.「個別性のある看護」は「対象者の状態を望ましい 方向へ移行するために,対象の置かれている状況およ びその背景を把握し,それをもとに既存の看護を組み 合わせる,調節・変更・改善することで創造される看 護」と定義された.

 謝辞:本稿は日本看護技術学会第 7 回学術集会の座長推薦 演題に,加筆・修正を加えたものです.本研究を行うにあた り,大変熱心にご指導くださった青森県立保健大学看護学科 角濱春美准教授に深く感謝申し上げます.

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参照

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