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日本内科学会雑誌第108巻第3号

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Academic year: 2022

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(1)

はじめに

 皮膚科領域における生物学的製剤の歴史は,

2010 年に尋常性乾癬を対象に発売されたイン フリキシマブに始まる.現在,尋常性乾癬に対 しては,既に 7 つの抗体製剤が出揃い,また,

phosphodiesterase(PDE)4阻害薬アプレミラス トも発売された.尋常性乾癬の治療選択肢は大 幅に増え,10 年前とは隔世の感がある.そし て,2018年,アトピー性皮膚炎に対する初の生 物学的製剤であるIL(interleukin)-4 受容体抗体

(デュピルマブ)が発売された.今後も続々と新 薬の登場が見込まれており,アトピー性皮膚炎 の治療は大きなパラダイムシフトを迎えようと している.本稿では,アトピー性皮膚炎及び尋 常性乾癬,それぞれの病態及び疾患に対する免 疫療法の現況と展望について概説する.

1.アトピー性皮膚炎の病態

 アトピー性皮膚炎は,①表皮バリア機能の異 常,②免疫の異常,③痒みの異常の 3 つの異常 をベースとして(アトピー性皮膚炎の三位一体 論),多くの免疫細胞やサイトカインが絡まり 合って形成される(図 1)1).表皮角化細胞は外 来抗原の侵入を認識すると,TSLP(thymic stro- mal lymphopoietin)やIL-33を産生する.これら のサイトカインはTh2 細胞の分化,遊走を誘導 する.Th2細胞はIL-4,IL-13,IL-5ならびにIL-31 といったサイトカイン(Th2 サイトカインと呼 ばれる)を産生し,皮膚の炎症や痒みを引き起 こすほか,B細胞の活性化を介してIgE(immuno- globulin E)抗体の産生を誘導する.Th2 細胞以 外にもTh1 細胞,Th17 細胞ならびにTh22 細胞 といったT細胞サブセットが病態形成へ関与 し,それぞれIFN(interferon)-

γ

,IL-17ならびに IL-22 といったサイトカインが産生される.

京都大学大学院医学研究科皮膚科

The 46th Scientific Meeting:Perspectives of Internal Medicine;Updates of immunology and inflammation for general physicians;2. Anti-cyto- kine therapy for allergy and autoimmune diseases;1)Anti-cytokine therapies for atopic dermatitis and psoriasis - from the view of a dermatol- ogist.

Kenji Kabashima and Gyohei Egawa:Department of Dermatology, Graduate School of Medicine, Kyoto University, Japan.

アレルギーと自己免疫での抗サイトカイン療法

1)‌‌アトピーと乾癬における免疫療法‌

~皮膚科の視点から~

椛島 健治 江川 形平 Key words アトピー性皮膚炎,尋常性乾癬,生物学的製剤,デュピルマブ

(2)

 このように,各サイトカインの病態形成にお ける役割の解明が進んでおり,これらサイトカ インまたはその受容体が新しい治療標的となる ことが期待されている.そのようななか,2018 年に抗サイトカイン療法の第一陣として,抗 IL-4 受容体

α

抗体であるデュピルマブが承認さ れた.

2. アトピー性皮膚炎における 免疫関連の治療の現状

 2018 年 12 月現在,我々がアトピー性皮膚炎 に対して使用可能な免疫に関する治療法は,① 副腎皮質ステロイド(外用/内服),②タクロリ ムス軟膏(外用),③シクロスポリン(内服)な らびに④デュピルマブ(注射)の4つである(表 1).副腎皮質ステロイド薬の歴史は古く,その

使用法及び副作用は熟知されている.ステロイ ド薬は,アトピー性皮膚炎の治療において中心 となる薬剤であるが,局所的また全身的な副作 用が生じ得ることから,忌避患者を生む等の社 会的混乱もみられた.タクロリムス,シクロス ポリンは,共にカルシニューリン阻害薬であ る.タクロリムス軟膏の外用は,ステロイド製 剤でみられる皮膚の菲薄化等局所の副作用が生 じないため,顔面等に好んで用いられる.一方,

シクロスポリン内服は,外用でコントロール不 良な重症アトピー性皮膚炎患者のセカンドライ ンとして用いられる.

 初の生物学的製剤であるデュピルマブは,

IL-4 受容体の

α

サブユニットに結合する.

α

サブ ユニットはIL-4受容体,IL-13受容体に共通であ るため,IL-4/IL-13という2つの中心的なTh2サ イトカインの働きが特異的に阻害されることに 図1 アトピー性皮膚炎の病態に関与する細胞とサイトカイン

表皮角化細胞から産生されたTSLP,IL-33により,Th2細胞が誘導され る.IL-4,IL-13ならびにIL-31といったTh2サイトカインがアトピー性皮 膚炎の病態形成の中心となる.赤字は,それぞれのサイトカインをブロッ クする生物学的製剤の名称である.

バリア機能の異常

アレルゲン

B細胞

Th22

Th1 Th17 テゼペルマブ

メポリズマブ

ウステキヌマブ

セクキヌマブ

フェザキヌマブ オマリズマブ

デュピルマブ

ネモリズマブ トラロキヌマブ

レブリキズマブ IL-33 TSLP

IL-4

IL-13

IL-5

IL-22

IL-12 IL-23

IgE

IL-17 IFNγ

Th2 IL-31

(3)

なる.国内外で行われた臨床試験では,投与開 始16週の時点において,37%の患者で皮疹が消 失もしくはほぼ消失したと報告されており,従 来の治療法とは一線を画する強い薬効を有する.

3. アトピー性皮膚炎における 免疫関連の治療の展望

 デュピルマブ以外にもさまざまな生物学的製 剤のアトピー性皮膚炎を対象とした治験が進ん でいる.IL-13をターゲットとするトラロキヌマ ブとレブリキズマブ,既に喘息治療で用いられ ている抗IL-5 抗体メポリズマブや抗IgE抗体オ マリズマブ,乾癬治療に用いられる抗p40 抗体 ウステキヌマブ及び抗IL-17 抗体セクキヌマブ,

抗IL-22 抗体フェザキヌマブ,抗TSLP抗体テゼ ペルマブならびに抗IL-31 受容体抗体ネモリズ マブ等がある(図1).IL-31はTh2サイトカイン の 1 つであるが,痒みの神経に直接作用し,痒 みを引き起こすことが知られている.ネモリズ マブを用いた臨床試験では,投与12週目の時点 で痒みスコアが半分以下となり,睡眠の質が上 がったと報告されている2).近い将来に臨床の 場に登場することが期待されている.

 その他の免疫療法として,JAK阻害薬とPDE4 阻害薬が挙げられる.JAK(Janus kinase)阻害

薬は,本邦では関節リウマチの治療薬として,

経口のトファシチニブが既に承認されている が,皮膚科領域では,乾癬,円形脱毛症,白斑 ならびにアトピー性皮膚炎での治験が始まって いる.JAK阻害薬はフィラグリン等のバリア関 連タンパクの発現を直接高めることも報告され ており,アトピー性皮膚炎においては,炎症の 抑制とバリア機能改善の両側面から効果を発揮 することが期待されている3)

 PDE は,cAMP(cyclic adenosine monophos- phate)をAMPへと加水分解する酵素である.こ のうち,PDE4は免疫系細胞と中枢神経系に強く 発現する.以前からアトピー性皮膚炎患者の末 梢血白血球のPDE4 活性が高値であることが知 られており,細胞内のcAMP濃度が低下するこ とが想定される.既に尋常性乾癬において,

2016 年に内服薬アプレミラストが承認されて いる.また,米国では,PDE4の外用薬クリサボ ロールがアトピー性皮膚炎に対して認可されて おり,国内での登場が待たれる.

4.尋常性乾癬の病態

 尋常性乾癬は 2000 年以降,その病態解明が 大きく進んだ疾患である(図 2).当初は,Th1 細胞が中心となって引き起こされる疾患である 表1 アトピー性皮膚炎で発売済または治験中の生物学的製剤一覧

薬剤名 商品名 標的分子 製薬会社 状態

デュピルマブ デュプレックス IL-4Rα サノフィ 発売済

ネモリズマブ IL-31R 中外製薬 治験中

ウステキヌマブ ステラーラ IL-12/23p40 ヤンセン 治験中

トラロキヌマブ IL-13 レオファーマ 治験中

レブリキズマブ IL-13 ロシュ 治験中

フェザキヌマブ IL-22 ファイザー 治験中

テゼペルマブ TSLP アストラゼネカ 治験中

オマリズマブ ゾレア IgE ノバルティス 治験中

メポリズマブ ヌーカラ IL-5 グラクソ・スミスクライン 治験中 セクキヌマブ コセンティクス IL-17 ノバルティス 治験中

(4)

と 考 え ら れ て い た が, 現 在 は,TNF(tumor necrosis factor)-

α

及びIL-23/IL-17 が病態の中心 をなすサイトカインであることが判明してい る4).擦れる等の何らかの刺激によって,まず 皮膚に形質細胞様樹状細胞が集まってくること が皮疹形成の始まりとなる.形質細胞様樹状細 胞はIFN-

α

を産生し,皮膚の樹状細胞を活性化,

樹状細胞はリンパ節においてIL-23を産生し,ナ イーブT細胞のTh17 への分化を誘導する.皮膚 に浸潤したTh17 細胞はIL-17 の産生を介して皮 膚への好中球を遊走させる.TNF-

α

は,乾癬病 変部において,表皮角化細胞,樹状細胞ならび にT細胞等から産生され,炎症を引き起こす中 心となるサイトカインである.

5. 尋常性乾癬における 免疫関連の治療の現状

 尋常性乾癬に対して現在用いられる免疫療法

は,①副腎皮質ステロイド(外用),②活性化ビ タミンD3(外用),③活性化ビタミンA(内服),

④シクロスポリン(内服),⑤PDE4 阻害薬(内 服)ならびに⑥ 7 種類の生物学的製剤がある.

 アトピー性皮膚炎と同様,尋常性乾癬の治療 においても,ステロイド外用薬は依然治療の中 心をなす薬剤である.ただし,膿疱化の原因と なることから,内服では通常用いない.一方で,

シクロスポリンは,アトピー性皮膚炎と同様,

重症症例でよく用いられる.乾癬は表皮角化細 胞の分化異常を呈する病気であるため,分化に 影響を与える活性化ビタミンD3 外用薬及び活 性化ビタミンAの内服も使用される.活性化ビ タミンAは催奇性を有することから,その使用 には細心の注意が必要である.2016年に発売さ れたPDE4阻害薬アプレミラスト(内服)は,副 作用が比較的少ない免疫調整薬として中等症以 上の症状を呈する患者に用いられている.ま た,これらの治療薬は光線療法と併用されるこ 図2 尋常性乾癬の病態に関与する細胞とサイトカイン

IFN-α,IL-23ならびにIL-17のカスケードの下流で,表皮角化細胞の増殖・活性化,

炎症細胞浸潤という炎症のサイクルが回る.炎症サイクルの中心にTNF-αがある.

赤字は,それぞれのサイトカインをブロックする生物学的製剤の名称である.

形質細胞様 樹状細胞

樹状細胞 好中球

セクキヌマブ イクキセキズマブ ブロダルマブ ウステキヌマブ

グセルクマブ チルドラキズマブ リサンキズマブ

インフリキシマブ アダリムマブ

セルトリズマブ ペゴル IFN-α

TNF-α

IL-22

IL-23 IL-17

Th17 ケラチノサイト

の増殖/活性化

炎症細胞浸潤

(5)

とも多い.

 これらの治療法でコントロールがつかない場 合,生物学製剤を用いた抗サイトカイン療法が 検討される.2018年現在,乾癬に適応のある生 物学的製剤は,抗TNF-

α

抗体であるインフリキ シマブ及びアダリムマブ,IL-23 のp40 サブユ ニットを標的とするウステキヌマブ,p19 サブ ユニットを標的とするグセルクマブ,抗IL-17抗 体であるセクキヌマブ,イキセキズマブならび にIL-17 受容体Aを標的とするブロダルマブの 7 つである(表 2).それぞれに特徴があるが,大 きくまとめると,病態を上流から抑えるもの

(IL-23 を標的とするもの)では,効き始めるま でに少し時間がかかるが,効果が現れ始める と, 頻 回 の 投 与 は 必 要 と し な い(8~12 週 間 隔).一方で,病態の下流で働くサイトカインを 抑えるもの(IL-17,TNF-

α

を標的とするもの)

は,効果発現が早い一方で,持続が短い(2~4 週間隔)という特徴がある.関節症状に対して は,IL-17,TNF-

α

を標的とするものが優れると 考えられている.

6. 尋常性乾癬における 免疫関連の治療の展望

 尋常性乾癬に対する免疫療法はここ 10 年で

の進歩が著しく,役者はおよそ出揃った感があ る.病態の鍵となるサイトカインはほぼ同定さ れており,今後は抗体製剤のアフィニティー(抗 原への親和性)や安全性の改善,投与方法・併 用療法の最適化が進んでいくものと考えられ る.今後発売が見込まれる生物学的製剤として は,IL-23のp19サブユニットを標的とするチル ドラキズマブとリサンキズマブが挙げられる.

基本的には,既に発売されているグセルクマブ と同じ使い方になろう.他に,関節リウマチで 用 い ら れ て い る セ ル ト リ ズ マ ブ ペ ゴ ル(抗 TNF-

α

抗体をPEG(polyethylene glycol)化して 血中半減期を延長させたもの)も,乾癬への適 応拡大を目指した治験が行われている.

おわりに

 生物学的製剤による抗サイトカイン療法の特 徴として,従来の免疫療法(ステロイドやシク ロスポリン)に比較して,副作用としての免疫 抑制作用が限定的であることが挙げられる.例 えば,デュピルマブの場合,Th2 応答は著明に 抑制されるが,感染防御に重要なTh1やTh17の 応答は影響を受けないため,易感染性は来たし にくい.また,Th2 サイトカインは,フィラグ リンをはじめとする皮膚のバリア機能に重要な 表2 尋常性乾癬で発売済または治験中の生物学的製剤一覧

薬剤名 商品名 標的分子 製薬会社 状態

インフリキシマブ レミケード TNF-α 田辺三菱 発売済 アダリムマブ ヒュミラ TNF-α アッヴィ 発売済 ウステキヌマブ ステラーラ IL-23p40 ヤンセン 発売済 ブロダルマブ ルミセフ IL-17RA 協和発酵キリン 発売済 セクキヌマブ コセンティクス IL-17 ノバルティス 発売済 イキセキズマブ トルツ IL-17 イーライリリー 発売済 グセルクマブ トレムフィア IL-23p19 ヤンセン 発売済

チルドラキズマブ IL-23p19 メルク 治験中

リサンキズマブ IL-23p19 アッヴィ 治験中

セルトリズマブ ペゴル シムジア TNF-α アステラス 治験中

(6)

タンパクの産生を低下させることが知られてお り,デュピルマブの使用によって皮膚のバリア 機能が高まり,皮膚の易感染性を改善させる方 向に働くとも考えられている.

 強い薬効を持ち,副作用も比較的少ない生物 学的製剤の登場は,アトピー性皮膚炎患者及び 尋常性乾癬患者のQOL(quality of life)に大きな 変化をもたらし得るものであるが,同時にその 費用についても考慮しなければならない.生物

学的製剤が医療経済に与える影響は年々増大し ており,国民医療費は40兆を超え,GDP(gross domestic product)の約 10%を占めるまでに膨 れ上がっている.保険診療が全ての患者に継続 的に提供されるためには,生物学的製剤の適正 使用が今後ますます重要になると考えられる.

著者のCOI(conflicts of interest)開示:本論文発表内容 に関連して特に申告なし

文 献

1) Kabashima K : New concept of the pathogenesis of atopic dermatitis : interplay among the barrier, allergy, and pruritus as a trinity. J Dermatol Sci 70 : 3―11, 2013.

2) Ruzicka T, et al : Anti-interleukin-31 receptor A antibody for atopic dermatitis. N Engl J Med 376 : 826―835, 2017.

3) Amano W, et al : The Janus kinase inhibitor JTE-052 improves skin barrier function through suppressing signal transducer and activator of transcription 3 signaling. J Allergy Clin Immunol 136 : 667―677. e7, 2015.

4) Hawkes JE, et al : Psoriasis pathogenesis and the development of novel targeted immune therapies. J Allergy Clin Immunol 140 : 645―653, 2017.

 

参照

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4) American Diabetes Association : Diabetes Care 43(Suppl. 1):

10) Takaya Y, et al : Impact of cardiac rehabilitation on renal function in patients with and without chronic kidney disease after acute myocardial infarction. Circ J 78 :

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38) Comi G, et al : European/Canadian multicenter, double-blind, randomized, placebo-controlled study of the effects of glatiramer acetate on magnetic resonance imaging-measured

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