(千葉 章代)論文内容の要旨
主 論 文
(Usefulness of an artificial neural network for a beginner to achieve similar interpretations to an expert when examining myocardial perfusion images)
(心筋血流画像を読影する際に、初心者が熟練者と同様の解釈を得るための 人工知能の有用性)
(著者名〔千葉章代、工藤崇、井手口怜子、Myssayev Altay、古賀聖士、米倉剛、恒 任章、森川実、池田聡司、河野浩章、小出優史、上谷雅孝、前村浩二〕)
(The International Journal of Cardiovascular Imaging, in press)
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻
(主任指導教員:前村浩二教授)
緒 言 この研究の目的は、負荷心筋血流イメージングを解釈する際に初心者の 読影結果が熟練者の読影結果に近づくために人工知能の使用が有効であるかどうか を調べることである。
対象と方法 2014年5月から2015年6月に長崎大学病院においてTc(テクネシウム) を用いた負荷心筋血流イメージングを施行された138名の患者に対して心筋画像読影 の初心者と熟練者で人工知能(artificial neural network; ANN)を用いたときと用い ない時で、安静時と負荷時の心筋血流画像を読影した。心筋血流画像を読影する際、
通常であればAmerican Heart Associationの17分画を用いる。しかし今回の研究で は、初心者によるスコアリングを簡単にするために、心筋は心尖部、中隔、前壁、側 壁、下壁の5領域に分割し、心筋血流の欠損スコアは0から4の5段階で評価し、5 領域でスコアを合計して、ストレス時の合計であるSummed Stress Score(SSS)、安静 時の合計であるSummed Rest Score(SRS)、SSSとSRSの差であるSummed Difference Score(SDS)をそれぞれ計算した。さらにANNによる読影としてはcardioREPO,version 1.1を使用した。このソフトウェアは約1000名の患者の心筋血流画像を機械学習させ たものであり、学習に基づきANNがPolar map像上に負荷血流の異常範囲と虚血範囲 を表示する。ANN を使用しない場合には通常の心臓核医学読影時に長崎大学病院で使 用している画像表示ソフトウェア(Picture Archiving And Communication System)を 使用した。心臓のPolar map像は使用せずに、断層像のみを画像読影に使用した。ANN
effectはANNを用いた時と用いなかった時のSSS、SRS、SDSの差と定義し、熟練者と 初 心 者 間 で そ れ ぞ れ を 比 較 し た 。 さ ら に 患 者 を 有 意 な 血 流 低 下 の な い 群 (insignificant perfusion group)、 有 意 な 血 流 低 下 の あ っ た 群(significant perfusion group)に分けて熟練者と初心者間で ANN effect を比較した。同様に有意 な 虚 血 の な い 群(insignificant ischemia group)、 有 意 な 虚 血 の あ っ た 群 (significant ischemia group)、75%以上の有意狭窄の冠動脈を持たない群(normal vessels group)、75%以上の有意狭窄の冠動脈を2本以上持つ群(multi-vessels group) に分けて熟練者と初心者間でANN effectを比較した。
結 果 全ての患者を対象にした際の ANN effect は、熟練者が初心者よりも小 さくなった(SSS: -0.49 vs. -1.23, p<0.0001; SRS: -0.34 vs. -0.88, p=0.0003; SDS:
-0.15 vs. -0.36, p=0.0128、それぞれ熟練者vs 初心者) 。更に患者をサブグループ に分けて解析すると、有意な血流低下のない群、有意な虚血のない群、75%以上の有 意狭窄の冠動脈を2本以上持つ群において、ANN effectは熟練者が初心者よりも小 さくなった。その内訳は、有意な血流低下のない群では(SSS: -0.27 vs. -1.28, p<0.0001; SRS: -0.09 vs. -0.88, p=<0.0001; SDS: -0.18 vs. -0.40, p=0.0185、
それぞれ熟練者 vs 初心者)、有意な虚血のない群では(SSS: -0.30 vs. -1.28, p<0.0001; SRS: -0.30 vs. -0.97, p=<0.0001; SDS: 0 vs. -0.30, p=0.0003、それ ぞれ熟練者 vs 初心者)、75%以上の有意狭窄の冠動脈を 2 本以上持つ群では(SSS:
-0.49 vs. -1.47, p<0.0001; SRS: -0.39 vs. -1.00, p=0.0031; SDS: -0.11 vs. -0.47,
p=0.0028、それぞれ熟練者 vs 初心者)であった。一方で有意な血流低下のあった群
や有意な虚血のあった群、75%以上の有意狭窄の冠動脈を持たない群では、熟練者と 初心者の間のANN effectの差は有意ではなかった。
考 察 心筋血流画像を読影する時にANNを使用することで初心者の画像読影結 果を熟練者の画像読影結果に近づけることが出来ると思われる。初心者の読影時に ANN による読影支援を用いることは、読影におけるセカンドオピニオンとして有用で ある可能性がある。特に有意な血流低下のない群、有意な虚血のない群、75%以上の 有意狭窄の冠動脈を2本以上持つ群で効果が高かったことは、微妙な判断が要求され る症例において、人工知能の利用の有用性が特に高いことが示唆される。
(備考)※2000字以内で記述。A4版。