氏名・(本籍)
学位の種類 学位記番号 学位授与の口付 学位授与の要件
学位論文題目
論文審査委員
木 村 冗 彦(静岡県)
学 術 博 士
学博甲第 2 号 昭和62年3月2 0日 学位規則第5条第1項該当
電子科学研究科 電子応用工学専攻
心拍数および体温による制御機構を有する横隔膜ペース メーカの開発に関する研究
(委員長)
教 授 水 品 静 夫
教 授 吉 村 敬 三 教 授 森 田 之 大 教 授 宇 野 正 美 助教授 原 田 幸 雄 助教授 杉 浦 敏 文
論 文 内 容 の 要 旨
本論文は,患者の代謝変化に即応して自動的に呼吸数を制御する事のできる横隔膜ペースメーカの 開発および,その有効性の評価について述べたものである。
現在,臨床で一般に使用されている人工呼吸器は陽圧式人工呼吸器である。陽圧式人工呼吸法を行 うと,肺内圧および胸腔内圧の上昇に起因して肺動脈圧上昇および大動脈圧下降等の循環系への悪影 軌肺感染症および肺線維症等の肺への悪影響を生じる。さらに,陽圧式人工呼吸器を使用している 患者はベットに固定されたままで,声による会話を行なう事も困難である。
これらの患者の中には,中枢性肺胞低換気あるいは換気不全を伴った四肢麻樺の様に,横隔膜およ び横隔神経の機能が残存している例が少なくない。この様な患者に対しては,横隔膜ペースメーカを 用いて横隔神経を電気刺激する事によって,横隔膜を運動させて正常な呼吸に近い陰圧式人工呼吸を 行なわせる事ができる。
しかしながら,現fL臨床で使用されている横隔膜ペースメーカは.患者の代謝変化とは無関係に 一定のレートでペーシングを行なうものであり,換気量の自動的な調節機能はない。この様な横隔膜 ペースメーカにおいては一患者の代謝変化によって低換気あるいは過換気を生じ,体液の恒常性を保
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つ卜で好まし−くない0そこで本研究では,患者の代謝に必要な換気を制御するために,代謝変化を示 すパラメータとして心拍数および体温に着目し,これらによってペーシングレートを制御できる横隔 膜ペースメーカを開発する事を巨朋勺とした。
試作した横隔膜ペースメーカは,体外に置かれる1台のトランスミックと,体内に埋込み可能な2 台のレシーバから構成される。トランスミックは電池を内蔵し,2MHzのRF波を用いて,横隔神 経への刺激情報およびレシーバを作動させるための電力を送信するものである。2台のレシーバは,
受信した刺激情報に基づいてそれぞれ左右の横隔神経を電気刺激するものである。
心拍数は,トランスミックに接続した脈波センサを川いて体表から検知した。体温は,レシーバに 内蔵したサーミスタセンサを用いて体内における温度を検出し,その温度情報を体外のトランスミッ
クへ伝送する事によって測定した。トランスミックに内蔵されている小型ワンボードマイクロコンビュ
 ̄夕によって,測定した心拍数および体温に対して予め設定しておいた関係に従ってペーシングレー トを算出し′システム全体を制御した0本研究ではペーシングレートを制御する指標として,(1)心拍 数′(2)体軋および(3)心拍数と体温の両者,を使用する方法について検討した。
試作した横隔膜ペースメーカの有効性を評価するために,雑種成犬を使用して動物実験を行った。
4頭の雑種成犬を使川して′対照実験を行った。動物に,発熱物質である2,4−dinitrophenolを経
[」投与して代謝を元進させたときの心拍数,体温(右房血液温)および換気機能の関係を調べた。代 謝変化に対して心拍数の変化は体温の変化よりも速い応答を示した。実験結果から,最適と考えられ
るペーシングレートと各パラメータとの関係を決定した0心拍数に対するペーシングレートの関係と しては′心拍数の逆数とペーシングレートの逆数が直線関係になる様に設定した。体温に対するペー シングレートの関係としては一体温とペーシングレートとが点線関係になる様に設定した。心拍数と 体温の両者によってペーシングレートを制御する方法としては,体温の低い範囲(38℃以下)では心 拍数のみによってペーシングレートを決定し一この範岡よりも体温の高い範囲においては,心拍数に よって算出されたレートに対して体温による捕仁を行い,ペーシングレートを増加させる方法を設定
した。
対照実験における血液ガスの分析結果から一代謝元進時におけるLL常な換気を判断する主な基準と して′(1働脈血中酸素分圧が60mmrIg以上であること一(2働脈血中二酸化炭素分圧が40mmHg以下で あること′を設定した0また,本研究では対照実験の結果から,体温(右房血液温)が38℃よりも低 い範囲を軽度な代謝元胤38℃以上かつ39・50C以下の範囲を中程度な代謝元進,39.5℃よりも高い範 囲を高度な代謝元進と考えた。
3頭の雑種成犬に対して心拍数によってペーシングレートを制御し,代謝を元進させた。この場合 には軽度〜中程度の代謝元進の範囲において一自発呼吸の生じない状態でペーシングの制御が可能で あり一正常な換気を′Jけ脚隼を満足した。高度な代謝元進の範囲においては,自発呼吸が起こり,血 液ガスの値も悪化した。
2頑の雑種成犬に対して体温によってペーシングレートを制御し,代謝を元進させた。この場合に は′中程度〜高度の代謝元進の範囲において百効な換気が得られた。
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2頑の雑種成犬に対して心拍数と体温の両者によってペーシングレートを制御し,代謝を元進させ た0この場合には一軽度〜高度の全範岡の代謝元進に対して有効な換気が得られた。
以上の結果から′心泊数と体温の両者によってペーシングレトを制御する方法は,広範朗の代謝 元進において」に謝変化に対する応答の速い制御が可能であり一本研究で検討した方法の【−11では,最
も有効な換気が得られるものと考えられる。
本研究において開発した横隔膜ペースメーカは患者の代謝変化に応答できる横隔膜ペースメーカと して今後の医療に貢献できる可能作は人きいと考えられる。
論文題Liの欧文名は
Developmentofaheartrateandbodytemperaturesensitivediaphragmpacemaker.
である。
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