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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 山 内 英 智

     学位 論 文題 名

  Effects of Free Latissimus Dorsi Dynamic Cardiomyoplasty on Left Ventricular Function    ( 遊離広 背筋による 代用心筋法 の左室機能 に対する効 果)

学位論文内容の要旨

   緒 言:  DynamlccardiomyopIasty (以下DCMP )は、重症心不全治療のーつで、有 茎広背筋を数週間電気刺激し耐疲労性を獲得した上で不全心に纏絡し、心拍に同期させ て電気刺激することで心補助をはかる Carpentier らの方法が用いられてきた。しかし この方法では筋組織の菲薄な広背筋の末梢側を心臓に纏絡するという欠点があり、心補 助効果を疑問視する報告もある。本研究で我々は広背筋中枢側の筋組織の豊富な部位を 用いて心臓を纏絡する事で、より有効な心補助効果が得られると考え、胸背動静脈を切 離、再建した遊離広背筋で心臓を纏絡する方法を考案し、左室の収縮能、拡張能を従来 法と比較した。左心機能の評価には前負荷、後負荷の影響をほとんど受けない正確な指 標 を 用 い る こ と が 重 要 で あ り 、 収 縮 能 の 評 価 に は lInearpreIoadrecruitabIe strokework ( PRSW ) 関 係の 傾き Mw と、その輝 由切片V0 を用 い、拡張能 の評価には COnStantofpreSSuredeCay ( Tau ) と peakf 川 ingrate ( PFR 冫 を 用 い た 。

  対 象 と 方法 : 6‑ 20kgの 雑 種 成 犬12頭 を 用 い 広 背 筋纏絡 によ って2群 に分 けた .1群

( 対 照 群 、n=6) :Carpentierら に よ る従 来 法 で 、 胸 背 動 静 脈 、 神 経 を 温 存 し 広 背筋 の遠 位部 の外 側部 を用い て時 計方 向に 心臓 を纏 絡し た, 広背 筋は 心臓 の短 軸方向に平行 に逢 着し 、胸 背神 経周囲 の近 位筋 肉に 刺激 電極 を植 え込 み、 右室 に感 知電 極を植え込ん だ .2群 ( 遊 離 広 背 筋 群 、n=6) : 広 背 筋 を 剥 離 し 胸 背動静 脈、 神経 を切 断し たの ち胸 骨正 中切 開を 行い 、右内 胸動 脈と 遊離 広背 筋の 胸背 動脈 を端 々吻 合、 右心 耳と胸背静脈 を端 側吻 合し た. こうして作成した遊離広背筋を用い、厚く血行が豊富な広背筋の近位、

中 央 部 で 左 室 を 、 遠 位 部 で 右 室 を 心 室 中 隔 に 垂 直 に な る よ う に 纏 絡 し た .   1群 、 2群 と も 同 一 プ ロ ト コ ー ル に よ る 刺 激 を 行 い 、 広 背 筋 刺 激 に は cardi omyosti mul at orを 用 い 、 バ ― ス ト 刺 激 頻 度50 Hz、 バ ― ス 卜 時 間120‑

200ms、myostimulation delay 23.4‑ 40ms、 出 力5V、 バ ル ス 幅0.4ms、 心 臓 と は1:1同 期 と し た . 広 背 筋 纏 絡15分 後 か ら5回 測 定 し 、1回 の 測 定 時 間 は15秒 と し た , 左 室 圧 ‐ 容 量 曲 線(P‑Vloop)か ら 左 室 拡 張 末 期 容 量 (LV EDV) と 左 室 仕 事 量

( LVSW)を 計 算 し 、 こ の 両 者 の 関 係 (preload recruitable st roke work relat ionship:PRSWR)と そ の 式 :SW=Mw(LVEDV‑ Vo) よ り 求 め た 傾 きMwとVoを 左 室収 縮カ の指 標と した.また、拡張能評価にはconst ant  of  pr essure decay(tau:り とpeak filli ng rate(PFR)を 用い た.tauは左 室圧P,dP/ dt,PB(baseli neP) から 以下の式により表される:  dP/ dt〓(‐1/で).(P‑ PB).  peak filli ng rate(PFR)はあ る時間tの左室容量をV(t)としたときの関係式:dV/dt =200.(―3.V(t‑3)‑2.V(t‐

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2)‑V(t‑l)+V(t+1)+2.V(t+2)+3.V(t+3))/28より得られたもののうち最大とな るpeak dV/dtとした ,圧‐容 量曲線はmi crosonomet erを用いて 測定した左室短軸(a) お よび長軸 (b)と、Millerカテーテ ルにて測 定した左室 圧にて描 いた.左室内容積(V) の 計算はellipsoidal shell model( 楕円モデ ル)を用 い、V=71ニ/6.a゜b−LVFWV(左 室 自 由 壁体 積 )として 計算した .両群に ついて、 広背筋纏 絡前、広 背筋纏絡後 刺激時と 非 刺 激 時に つ いて デ ー タを 取 り 、群 間 の検 定に はpairedt‐testを用 い、連続 データの 検 定にはANOVAを 用いた,

  結 果 : Mwは 両 群 と も 広 背 筋 刺 激 に よ り 上 昇 し た (Mw; 1群 : 非 刺 激 時 、 59 .1+6.3;刺激時、98 .6*9.7 erg.cm‥.10 ;pく0.01、2群:非刺激時、66.0ニヒ6.7; 刺 激 時 、155+15.7erg.cm‥ ・10゜ ;pく0.0 01) .ま た2群 は1群に 比 較 し有 意 にMw を 上 昇 さ せ た(p=0.011) .VOは 両 群 と も 刺 激 に よ っ て 変 化 せず 、 両 群間 に も差 は 無 か った .Tauは広 背 筋纏 絡 に より 両 群と も 上 昇し た が 、広背筋 刺激で変 化せず、 両群間 にも差はなかった,(1群:纏絡前、45 .8+6.0;纏絡後非刺激時、69.3土10.3;刺激時、

72 .3+13.9 msec;pく0.05、2群:纏 絡前、50.0士6.0;纏絡 後非刺激 時、61.8+5.0; 刺 激時 、64.3+4.7  ms ec;pく0.05) .PFRは 両 群と も 刺激によ って変化 せず、両群 間 にも差は無かった,

  考 察 :Carpentierら に よ る 従 来 のDCMPに は 、1) 筋 収 縮 の 弱 い 速 位 部 の 広 背 筋 を 使 用 す る ,2) 拡大 し た 心臓 を 完全 に 纏 絡す る には 広 背 筋の 長 さが 不 十 分で あ る .3) 筋 収縮 の 方 向が 心 臓の 収 縮 方向 と ―致 し ない などの欠 点が有る とされて きた,広背 筋中 枢 側の 血 流 は胸 背 動脈 よ り 栄養 さ れる が 、中 央より末 梢側は主 に胸壁か らの側副血 行に よ って 栄 養 され て おり 、 広 背筋 剥 離中 に 側副 血行が遮 断され血 流が不十 分になる, 臨床 上 側副 血 行 の発 達 と電 気 刺 激に 対 する 耐 疲 労性 獲 得 のた め に剥 離 後6‑8週 間の準備期 間 が 必要 と さ れて い るが 、 そ の後 、 末梢 側 では 筋線維量 が減少し 、コラー ゲンが増加 する 事 が明 ら か にな っ てお り 収 縮カ は 急性 期 より さらに滅 少してい ると考え られる.広 背筋 が その 最 大 張カ を 発揮 す る のは 自 然長 の5% 超 まで と され て お り、 肥 大 した心筋を 纏絡 す る際 に 、 広背 筋 に過 剰 な 張カ を 加え る こと は内因性 の収縮カ を減少さ せてしまう ,ま た 、著 明 な 拡張 を 来し た 心 臓に 対 して は 広背 筋の自然 長自体が 足りない ことも知ら れて いる. 著者らの 方法では 広背筋の 筋肉の厚 い中枢側部 分が左室 を、末梢 側が右室を包み、

さ らに そ の 方向 も 心室 中 隔 に垂 直 にな る よう に調節で きた.し かし、従 来法では纏 絡の 方 向の 調 節 性に 乏 しく 、 左 室に 纏 絡さ れ る部 分は中央 部以下の 末梢側で ある.以上 の点 よ りCarpentierら の従 来 法 では 、 広背 筋 の 収縮 カ は直 接 心 臓の 収 縮を 補 助 する よ り む し ろ、 中 枢 側は 収 縮カ の 伝 達部 と して 作 用し 、末梢側 は心臓を 纏絡する だけの部位 と考 え られ る . それ に 対し 著 者 らの 方 法は 、 広背 筋の収縮 カを直接 的かつ有 効に心筋収 縮補 助 に 用 い ら れ る . こ のこ と が収 縮 カ の指 標 であ るMwが よ り 大き い こと の 理 由と 考 えら れ た , 収 縮 能 の 指 標 と し てPRSWRを 用 い た 利 点 は前 負 荷 の影 響 を最 小 に でき る だ けで な く、 左 室 拡張 末 期圧 を 用 いな か った こ とで 虚血、心 膜、周囲 の広背筋 による影響 を防 く゛こ とができ 、さらに心拍数や心臓の形態の変化を無視することができるためであった.

著 者ら の 方 法で は 、よ り 厚 い筋 肉 で心 臓 を纏 絡する事 になり、 心臓の拡 張障害を来 す恐 れ があ っ た ,実 際 広背 筋 纏 絡に よ りtauの 上 昇を 示 し 拡張 能 の低 下 を 認め たが、従来 法 と 比 較 し て 差 は な か った . 本研 究 の 目的 はCarpentierら に よる 従 来法 の 欠 点を カ バ ー す る広 背 筋 纏絡 法 を確 立 す るこ と であ り 、神 経切断遊 離広背筋 を用いる ことで収縮 能の 増 強効 果 を 確認 し 得た . 今 回の 実 験は 急 性実 験で、不 全心を用 いた実験 でなく、ま た訓 練 され た 広 背筋 を 用い て い ない こ とも あ り、 種々の限 界がある ,神経が 切断された 筋肉

(3)

は萎縮、線維化をきたす―方、持続電気刺激を行うことによって筋肉の萎縮が防止出来 るとする報告もある.遠隔期に起こることが予想される、神経切断による筋萎縮と線維 化を防止するための方策を確立し、臨床応用をはかることが本研究の今後の課題である.

   結 諭: 遊離 広背筋 によ る新 しい DCMP 法 を開 発し 、こ れとCarpentier らによる従

来の方法との左室収縮能、拡張能に及ぼす効果を比較検討した.心臓の纏絡に、血行が

良好で筋肉の厚い広背筋が使用できる遊離広背筋によるDCMP は従来法よりも優れた収

縮能改善効果を示し、拡張能障害は従来法と同様であることが正確な指標を用いた検索

で明らかになった.

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

    Effects of Free Latisslmus Dorsi Dynamic Cardiomyoplasty on Left Ventricular Function    (遊離広背筋による代用心筋法の左室機能に対する効果)

  Dynamic cardiomyoplasty( 以 下DCMP)は 、 心 不 全 治 療 の ー つ で 、有 茎 広 背筋 を 不 全心 に 纏 絡し 、 心 拍に 同 期さ せ て 電気 刺 激す る こ とで 心 補助 をは かるCarpe ntierらの 方法 が 用 いら れ て きた 。 しか し この方 法では筋 組織の菲薄 な広背筋 の末梢側 を心臓に 纏 絡す る と いう 欠 点 があ る 。本 研 究では 広背筋中 枢側を用い て心臓を 纏絡する 事で、よ り 有効 な 心 補助 効 果 が得 ら れる と 考え、 胸背動静 脈を再建し た遊離広 背筋で心 臓を纏絡 す る方 法 を 考案 し 、 左室 の 収縮 能 、拡張 能を前負 荷、後負荷 の影響を ほとんど 受けない 正 確な指標を用いて従来法と比較した。

  雑 種 成犬12頭を2群 に 分け た 。1群 (n 6) :Carpe ntierらによ る従来法で 、胸背動 静脈 神 経 を温 存 し ,広 背 筋は 心 臓 の短 軸 方向 に 平 行に 逢 着し た。2群(遊離 広背筋群 、 n=6):胸 背 動 静脈 、 神経 を 切 断し た のち 右 内 胸動 脈 と 胸背 動 脈、 右 心 耳と 胸 背静 脈 を 吻合 し た 。遊 離 広 背筋 の 近位 、 中央部 で左室を 、遠位部で 右室を心 室中隔に 垂直にな る ように纏絡した。

  両 群 とも 同 一 プ口 ト コー ル に よる 刺 激を 行 い 、パ ー スト 刺 激 頻度50Hz、 バー ス 卜 時 間120―200ms、myostimulation delay 23.4−40ms、 出 力5V、 パ ル ス 幅0.4ms、 心 臓 と は1:1同 期 と し た . 左 室 拡 張 末 期 容 量(LV EDV) と 左 室 仕 事 量(SW)か ら 得 ら れ る 両 者 の 関 係 式 :SW =Mw (LVE DVーVo) よ り 求 め た 傾 きMwとVoを 左室 収 縮 カの 指 標とした 。拡張能 評価にはconstant of pressure decay (tau:で)とpe ak filling rate (PFR)を 用 い た .tauは 以 下 の 式 に よ り 表 さ れ る :dP/dt〓 卜1/r) . (P―PB). peak filling rate (PFR)はある時間tの左室容量をv(t)としたときの関係式:dV /dt =200.(ー 3・ V(tー3)―2・V(tー2)−V(tー1)十v(t十1)+2.V(t十2)十3・v(t十3))/28より得られたも の の う ち 最大 と なるpe ak dV /dtと し た。 圧 一容 量 曲 線はmicrosonometerを 用 い て測

顕明 秀       秀慶 畠口 田 北川 安 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

定した左室短軸(a) および長軸(b )と、Miller カテーテルにて測定した左室圧にて描 い た。 左室 内容 積(V ) の計 算は 楕円モ デル を用 い、 V=TC/6 .a2b ― LVFWV (左室 自 由壁体積)として計算した。両群について、広背筋纏絡前、広背筋纏絡後刺激時と非刺 激時についてデータを取り、群間の検定にはpairedt ーtest を用い、連続データの検定 にはAN OVA を用いた。

  Mw は両群とも広背筋刺激により上昇した(Mw ; 1 群:非刺激時、59 .1+6.3 ;刺激時、

98.6+9.7 erg .cm ― 3 .l03 ; p く0.01 、 2 群:非刺激時、66.0+6.7; 刺激時、15 5+15 . 7 erg . cm ‥ . l03;p く O.O Ol ) 。 ま た 2 群 は 1 群 に 比 較 し 有 意 に Mw を 上 昇 さ せ た

(p −―0.011 ).VO は両群とも刺激によって変化せず、両群間に差は無かった。Tau は 広背筋纏絡により両群とも上昇したが、広背筋刺激で変化せず、両群問にも差はなかっ た。(1 群:纏絡前、45.8+6.0 ;纏絡後非刺激時、 69.3+10 . 3 ;刺激時、72.3+13 . 9 msec;p く 0.05 、 2 群 :纏 絡 前 、 50.0+6.0; 纏 絡 後 非刺 激 時 、 61.8+5.0 ; 刺激時 、 64.3+4.7 ms ec;p く 0.05 )。 PFR は両群とも刺激によって変化せず、両群間にも差は無 かった。

  Carpe ntier らによる従来法には、筋収縮の弱い末梢部の広背筋を使用する。拡大し た心臓を完全に纏絡するには広背筋の長さが不十分などの欠点が有るとされてきた。広 背筋末梢側は主に胸壁からの側副血行によって栄養されており、広背筋剥離中に側副血 行が遮断され血流が不十分になる。また耐疲労性獲得のための6 ―8 週間の準備期間の後、

末梢側では筋線維量の減少とコラーゲンの増加が知られており、収縮カは急性期よりさ らに減少していると考えられる。広背筋が最大張カを発揮するのは自然長の5 %超まで とされており、肥大した心筋を纏絡する際に、広背筋に過剰な張カを加えることは内因 性の収縮カを減少させてしまう。これらの点より従来法における、広背筋の中枢側を収 縮カの伝達部用いるよりも、遊離広背筋の収縮カを直接的かつ有効に心筋収縮補助に 用 いる ことが Mw を より増加させたことの理由と考えられた。遊離広背筋では厚い筋 肉で心臓を纏絡する事になり、実際tau の上昇を示し拡張能の低下を認めたが、従来法 と比較して差はなかった。本研究の目的は従来法の欠点をカパーする広背筋纏絡法を確 立することであり、収縮能の増強効果を確認し得た。今回の実験は急性実験で、不全心 を用いた実験でなく、また訓練された広背筋を用いていないなどの限界がある。遠隔期 に起こることが予想される、神経切断による筋萎縮と線維化を防止するための方策を確 立し、臨床応用をはかることが本研究の今後の課題である。

   遊離広背筋による新しい DCMP 法を開発し、Carpe ntier らによる従来の方法との左 室収縮能、拡張能に及ぼす効果を比較検討した。心臓の纏絡に、血行が良好で筋肉の厚 い 広背 筋が使 用で きる遊離広背筋によるDCMP は従来法よりも優れた収縮能改善効果 を示し、拡張能障害は従来法と同様であることが正確な指標を用いた検索で明らかにな った。

     ―・167 一

参照

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