16 4.シミュレーション結果 本節では、前節までに説明したモデルとデータセットを用いて、採用行動や給与プ ロファイルの想定の違いが、公務員の人件費(給与総額、退職金総額)の推移にどの ような影響を与えるかを試算する。 (1) 採用行動の違いが公務員人件費に与える影響 イ)シナリオ 2008 年度を基準年として、国家公務員及び地方公務員の都道府県計、全市区町村、 47 都道府県の合計 50 の区分についてシミュレーションを行った。 国家公務員、地方公務員の都道府県計、全市区町村それぞれの年齢別退職率は現状(過 去3年の平均)と同じと想定した。都道府県ごとの年齢別退職率のデータはないので、都 道府県計と同じとした。一方、採用者数については、以下の3つのシナリオを置いた。 (a) 職員数一定ケース:職員数が変化しない(退職者数と同数の職員を採用する)と 想定。 (b) 採用行動継続ケース:これまでの職員数の変化率(過去3年平均)が今後も続く と想定。 (c) 人口比維持ケース:職員数の変化率が人口変化率と同じになる(住民一人当たり 公務員数が一定となる)と想定。 前述の通り、採用する職員の年齢構成は、国家公務員については、(7)式から求められる 年齢別採用者数から、採用者の年齢構成比(年齢別採用者数÷採用者数)の過去3ヵ年平 均値を算出して用いた。また、地方公務員については、図表 11 の団体区分別の全職種の 採用者の年齢構成比を用いた。いずれも上記の3つのシナリオ全てに共通とした。 なお、以下では、10 年後の 2018 年度までのシミュレーション結果を主として分析する こととし、参考として20 年後の 2028 年度までのシミュレーション結果を掲載する。 ロ)給与総額 (職員数一定ケース) 職員総数が2008年度の水準で一定となるよう、毎年、退職者と同数の新規採用を行うと 仮定した。このケースでは、職員数は変化しないため、職員の年齢構成の変化が人件費に 影響を与えることになる(図表12、13、参考図表1、2、3、6)。 2018年度までの今後10年間の給与総額の変化をみると、国家公務員の給与総額は▲
17 0.3%とほとんど変化しない。これは、職員の年齢構成が30歳代後半から40歳代前半をピー クとするなだらかな山型のまま変化しないためである。 地方公務員の給与総額は、都道府県計、全市区町村はいずれも▲7%前後の減少となる。 これは、初期時点(2008年度)において、高齢の職員の構成比が高いためである。今後10 年の間に給料の高い50歳代以上の高齢職員が退職し、20歳代を中心とした給料の低い若い 新規採用職員に置き換わる。職員数は一定でも、年齢構成が若返るため、給与総額が減少 するのである。 職種別に見ると、都道府県計では、技能労務職の減少率が▲17.6%と高い。これは、初 期時点において50歳代後半の高齢職員の構成比が高いことと、退職率が全体的に高く職員 構成の若返りが進みやすいことによるものである。一方、警察職の減少率は▲1.0%と小さ い。警察職は、初期時点において30歳前後と50歳代に年齢構成のピークがある。そのため、 給料水準の高い50歳代の職員が退職していくことによって給与総額が減少する一方で、30 歳前後の職員がより給料の高い30歳代、40歳代に移行していくため、給与総額を削減する 効果が減殺されるのである。 また、全市区町村では、教育公務員の減少率が▲12.6%と高い。全市区町村の教育公務 員は、都道府県の初期時点において40歳代後半をピークとして高齢の職員ほど構成比が高 い傾向があり、退職率が全体的に高いため、職員構成の若返りが進みやすい。 都道府県計の教育公務員や全市区町村の技能労務職も高齢職員の構成比が高いが、退職 率が全体的に低いため、給与総額の削減率は全職員の平均をやや上回る程度にとどまって いる。 図表 12 職員数の変化(職員数一定ケース) イ)国家公務員 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 200,000 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度
18 ロ)地方公務員 都道府県計 合計 一般行政職 技能労務職 その他一般職 教育公務員 警察職 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 160,000 180,000 19 歳 以 下 20 ∼ 24 25 ∼ 29 30 ∼ 34 35 ∼ 39 40 ∼ 44 45 ∼ 49 50 ∼ 54 55 ∼ 59 60 歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 全市区町村 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 19 歳以下 20∼ 24 25 ∼ 29 30 ∼ 34 35 ∼ 39 40 ∼ 44 45 ∼ 49 50 ∼ 54 55 ∼ 59 60 歳以上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 19 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60 歳以上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 19歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60歳 以 上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度
19 図表 13 給与総額の変化(対 2008 年度比、職員数一定ケース) イ)国家公務員・地方公務員(都道府県計、全市区町村) -8% -7% -6% -5% -4% -3% -2% -1% 0% 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (年度) 国家公務員 都道府県計 全市区町村 ロ)地方公務員(都道府県計) -18% -16% -14% -12% -10% -8% -6% -4% -2% 0% 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (年度) 警察職 一般行政職 都道府県計 教育公務員 その他一般 職 技能労務職 ハ)地方公務員(全市区町村) -18% -16% -14% -12% -10% -8% -6% -4% -2% 0% 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (年度) 一般行政職 全市区町村 技能労務職 その他一般 職 教育公務員
20 ニ)総括表 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度 国家公務員 -0.2% -0.3% -0.5% -1.1% 地方公務員 都道府県計 合計 -4.6% -6.9% -7.8% -7.4% 一般行政職 -4.5% -6.4% -7.5% -8.1% 技能労務職 -14.4% -17.6% -19.2% -19.4% その他一般職 -7.0% -10.4% -12.3% -13.3% 教育公務員 -4.8% -7.8% -9.1% -8.9% 警察職 -1.5% -1.0% 1.0% 3.9% 全市区町村 合計 -5.5% -7.4% -7.1% -6.8% 一般行政職 -4.8% -5.9% -4.9% -4.1% 技能労務職 -6.6% -8.5% -10.0% -10.9% その他一般職 -6.0% -8.5% -8.5% -8.3% 教育公務員 -8.0% -12.6% -15.2% -15.6% (採用行動継続ケース) 近年、国と地方公共団体は厳しい採用抑制を続けてきた。こうした採用行動を継続し、 職員の削減率を過去3年間(2005∼2008年度)の平均で維持すると仮定して職員数と給与 総額の変化をみた(図表14、参考図表1、2、4、7)。 図表 14 職員数と給与総額の変化(対 2008 年度比、採用行動継続ケース) 職員数 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度 国家公務員 -4.4% -8.5% -12.5% -16.3% 地方公務員 都道府県計 合計 -3.3% -6.2% -8.9% -11.2% 一般行政職 -4.7% -9.1% -13.3% -17.4% 技能労務職 -9.4% -17.9% -25.7% -32.7% その他一般職 -13.8% -25.6% -35.9% -44.7% 教育公務員 -3.1% -6.1% -9.1% -11.9% 警察職 5.2% 10.6% 16.3% 22.4% 全市区町村 合計 -7.7% -14.1% -19.5% -24.1% 一般行政職 -0.9% -1.8% -2.6% -3.5% 技能労務職 -0.4% -0.8% -1.2% -1.6% その他一般職 -17.6% -32.0% -44.0% -53.8% 教育公務員 -12.6% -23.6% -33.2% -41.6% 給与 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度 国家公務員 -3.2% -6.7% -10.6% -15.1% 地方公務員 都道府県計 合計 -6.8% -11.5% -14.7% -16.5% 一般行政職 -7.6% -12.9% -17.6% -22.1% 技能労務職 -20.9% -30.7% -38.6% -44.7% その他一般職 -16.1% -28.6% -39.3% -48.6% 教育公務員 -7.0% -12.6% -16.5% -19.0% 警察職 2.4% 7.5% 14.9% 23.9% 全市区町村 合計 -11.0% -18.1% -22.8% -27.0% 一般行政職 -5.4% -7.2% -7.0% -7.0% 技能労務職 -6.8% -9.1% -11.0% -12.2% その他一般職 -18.4% -32.6% -43.4% -53.1% 教育公務員 -17.0% -30.3% -41.1% -48.9%
21 2018年度までの今後10年間に職員数は、国家公務員で▲8.5%、地方公務員のうち都道 府県計で▲6.2%、全市区町村で▲14.1%の減少となる。都道府県計ではその他一般職(▲ 25.6%)や技能労務職(▲17.9%)の削減率が大きく、逆に警察職では10.6%増加する。 全市区町村ではその他一般職(▲32.0%)や教育公務員(▲23.6%)の削減率が大きい。 こうした地方公務員の職種別の職員数の削減率のばらつきは、最近の職種別の採用動向の 違いを反映している。技能労務職は業務のアウトソーシングなどによって採用が抑制され てきた。また、教育公務員も少子化を反映して採用が少なくなってきている。警察職は治 安の悪化などを背景に採用が増加してきている。 採用行動継続ケースでは、職員数一定ケースに比べて、職員数が減少(増加)する分だ け採用が減少(増加)するため、給与総額が少なく(多く)なる。ただし、採用者は相対 的に給与の低い若い職員が多いので、職員数の減少(増加)率ほどには給与総額は変化し ない。その結果、2018年度までの今後10年間の給与総額は、国家公務員で▲6.7%(職員数 一定ケースでは▲0.3%)、地方公務員では都道府県計で▲11.5%(同▲7.4%)、全市区 町村で▲18.1%(同▲6.9%)の減少にとどまる。 (人口比維持ケース) 今後、日本の人口は減少し、今後10年間で約2.5%減少すると予想されている。そこで、 人口一人当りの公務員数が変化しないよう、人口の減少にあわせて採用者数を抑えること によって職員数を削減し、職員数を人口比で維持するケースを試算した(図表15、参考図 表1、2、5、8)。 図表 15 給与総額の変化(対 2008 年度比、人口比維持ケース) 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度 国家公務員 -0.9% -2.4% -4.6% -7.8% 地方公務員 都道府県計 合計 -5.2% -8.8% -11.5% -13.7% 一般行政職 -5.1% -8.1% -11.0% -14.0% 技能労務職 -15.0% -19.4% -22.7% -25.2% その他一般職 -7.5% -12.1% -15.8% -19.1% 教育公務員 -5.3% -9.6% -12.9% -15.2% 警察職 -2.1% -3.0% -3.0% -2.7% 全市区町村 合計 -6.1% -9.2% -10.8% -12.9% 一般行政職 -5.3% -7.7% -8.6% -10.3% 技能労務職 -7.1% -10.3% -13.6% -16.9% その他一般職 -6.6% -10.3% -12.2% -14.4% 教育公務員 -8.6% -14.4% -18.9% -21.6% 職員数 -0.8% -2.5% -4.9% -7.8% 人口比維持ケースでは、職員数一定ケースに比べて、職員数は今後10年間で人口の減少 率と同じ▲2.5%だけ減少する。職員数が減少する分だけ採用が減少するため、給与総額は
22 少なくなる。ただし、採用者は相対的に給与の低い若い職員が多いので、職員数の減少率 ほどには給与総額は変化しない。その結果、2018年度までの今後10年間の給与総額は、職 員数一定ケースよりも2%程度減少幅が大きくなる。国家公務員では▲2.4%(職員数一定 ケースでは▲0.3%)、地方公務員のうち都道府県計で▲8.8%(同▲6.9%)、全市区町村 で▲9.2%(同▲7.4%)の減少となる。なお、後述するように、このケースでは、都道府 県別の給与総額の増減に大きな差が生じる。 ハ)地方公務員の退職金総額 いわゆる団塊世代の大量退職が社会・経済に与える影響は「2007年問題」と呼ばれてき た。団塊世代の退職がピークを越えたため、今後、退職手当の支給総額は減少していくと 試算される。 図表 16 退職金総額の変化(対 2008 年度比、職員数一定ケース) 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度 地方公務員 都道府県計 合計 -10.1% -16.0% -24.0% -32.9% 一般行政職 -27.6% -35.9% -35.3% -33.9% 技能労務職 -47.1% -56.5% -61.5% -69.6% その他一般職 -21.5% -33.7% -36.1% -38.9% 教育公務員 3.6% 1.6% -10.6% -25.7% 警察職 -18.9% -29.5% -40.0% -46.6% 全市区町村 合計 -23.8% -40.5% -44.4% -38.6% 一般行政職 -25.7% -43.5% -46.9% -37.2% 技能労務職 -34.7% -37.8% -37.7% -45.1% その他一般職 -18.8% -38.1% -43.5% -38.1% 教育公務員 -17.7% -25.7% -33.1% -49.5% 例えば、職員数一定ケースの退職金総額は(図表16)、2018年までの10年間で、都道府 県計では▲16.0%、全市区町村では▲40.5%減少する。都道府県計の減少率が全市区町村 のそれに比べて低いのは、都道府県において大きなシェアを占める教育公務員の退職金が 2018年度にかけて若干ながら増加することなどによるものである。初期時点(2008年度) において、都道府県の教育公務員の年齢構成は40代後半から50代前半にピークがある。こ の年齢層の職員が2018年度に退職期を迎えるため、退職手当の支給総額が増加するのであ る(前掲図表12ロ))。 都道府県の教育公務員に典型的に見られるように、退職金総額は、給与総額に比べて、 職種間のばらつきが大きい。後述するように、都道府県別に見ても、退職金総額の増減に は大きな差が生じる。各年度の退職金支給総額に対しては、退職比率が最も高く、退職金 支給額の大きい50歳代後半の年代の職員数の動きが大きな影響を与える。この年代の職員 数は、初期時点の職員の年齢構成に依存する度合いが大きいため、退職金支給総額の変動
23 も大きくなりがちである。 なお、退職金の支給は、今後の採用行動からはあまり大きな影響を受けないので、採用 行動の異なる他のシナリオとの差は小さい。退職金総額の減少率は、職員数の採用抑制傾 向の強い順に、採用行動継続ケースが最も大きく、次いで人口比維持ケース、職員数一定 ケースの順となっている(参考図表3、6)。 ニ)地方公務員の人件費総額 地方公務員について、2008 年度の退職金以外の人件費総額(給与、共済組合負担金、そ の他)と退職金総額をベンチマークとして、前者を給与総額の伸びで、後者を退職金総額 の伸びでそれぞれ延伸して合計することによって、人件費総額の推移を試算した。 都道府県計の人件費は、『平成20 年度都道府県決算状況調』によると 90.1%が退職金以 外の人件費、残りの9.9%が退職金となっている。また、全市区町村の人件費は、『地方財 政白書』と『平成20 年度東京都特別区普通会計決算の概要』によると 87.2%が退職金以 外の人件費、残りの12.8%が退職金となっている。したがって、上記のようにして計算し た都道府県計あるいは全市区町村の人件費総額の推計値は、約9割が退職金以外の人件費 の伸びに、残りの約1割が退職金の伸びに連動して決定されることになる。 2018 年度までの 10 年間の人件費総額の変化を見ると(図表 17)、都道府県計、全市区 町村とも、いずれのケースでも、給与総額の減少率よりも退職金総額の減少率のほうが大 きいことから、人件費総額は、給与総額の減少率を若干上回って減少する。例えば、職員 数一定ケースを見ると、都道府県計では、給与が▲6.9%、退職金が▲16.0%減少するため、 人件費総額では▲7.8%減少する。同様に、全市区町村では、給与が▲7.4%、退職金が▲ 40.5%減少するため、人件費総額では▲11.6%減少する。 図表 17 人件費総額の変化(対 2008 年度比、職員数一定ケース) 2013年度 2018年度 2023年度 2028年度 地方公務員 都道府県計 職員数一定 -5.2% -7.8% -9.4% -10.0% 採用行動継続 -7.2% -12.1% -15.8% -18.5% 人口比維持 -5.7% -9.5% -12.9% -15.8% 全市区町村 職員数一定 -7.9% -11.6% -11.9% -10.9% 採用行動継続 -12.8% -21.3% -26.1% -29.2% 人口比維持 -8.4% -13.3% -15.2% -16.4%
24 ホ)都道府県別の人件費 (給与総額) 都道府県別に2018年度までの給与総額の推移を比較した(参考図表9)6。 職員数一定ケースを見ると(図表18)、都道府県計では▲7.1%の減少となる。これを 都道府県別にみると、職員の年齢構成の違いを反映して、減少率の差は最大で8.3%に達す る。減少率が大きいのは奈良、石川、和歌山、埼玉であり10%前後の減少率となっている。 逆に減少率が低いのは鹿児島、鳥取、北海道、沖縄であり減少率は4%前後にとどまって いる。 図表 18 都道府県別の給与総額(対 2008 年度比、職員数一定ケース) ‐14.0% ‐12.0% ‐10.0% ‐8.0% ‐6.0% ‐4.0% ‐2.0% 0.0% 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (年度) 鹿児島県 鳥取県 北海道 沖縄県 全国 埼玉県 和歌山県 石川県 奈良県 職員数一定ケースについて、都道府県別に職員構成の変化を見ると(図表19)、減少率 が大きい県は初期時点の職員構成が高齢化している。2018年度にかけて高齢職員が若年職 員に置き換わるため、給与総額の減少が大きなものとなる。一方、減少率の小さい道県は 初期時点の職員の年齢構成のピークが40歳前後の世代にある。2018年度にかけて高齢職員 が若年職員に置き換わり給与総額の減少要因となるものの、構成比の高い40歳代の世代が 高齢化し給与総額の増加要因となるため、給与総額の減少率が小さなものとなるのである。 6 職種別に推計して集計した都道府県計の推計結果(参考図表1)との間には誤差が生じる。
25 図表19 都道府県別の職員構成(職員数一定ケース) イ)給与総額の減少率が大きい県 奈良 石川 和歌山 埼玉 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 1 9 歳以下 20 ∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 6 0 歳以上 (人) 2008年度 2013年度 2018年度 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 19 歳 以 下 20 ∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 60 歳 以 上 (人) 2008 2013 2018 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 ロ)給与総額の減少率が小さい道県 鹿児島 鳥取 北海道 沖縄 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 5,000 1 9 歳以下 20∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 1 9 歳以下 20∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1 9 歳以下 20 ∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018
26 次に、採用行動継続ケースでは、給与総額の減少率は都道府県計で▲10.7%となってお り、職員数一定ケースの▲7.1%よりも減少率が▲3.6%大きい。これは、2018年度にかけ て都道府県計の職員数が▲5.1%減少するためである。このことは、これまで、都道府県が 全体として見ると厳しい採用抑制をしてきたことを反映している。しかし、都道府県間で は職員数の削減率に差がみられており(図表20)、過去の採用抑制行動に違いがあること を示唆している7。採用行動継続ケースの給与総額の削減率の大きさが職員数一定ケースの それを最も大きく上回っているのは奈良県でありその差は17.1%となっている。一方、後 者が前者を最も大きく上回っているのは大阪府でありその差は7.5%となっている。 図表 20 2018 年度の給与総額(採用行動継続ケース、対 2008 年度比) ‐35.0% ‐30.0% ‐25.0% ‐20.0% ‐15.0% ‐10.0% ‐5.0% 0.0% 5.0% 10.0% 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木 県 群馬 県 埼玉 県 千葉 県 東京 都 神奈 川県 新潟 県 富山 県 石川 県 福井 県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知 県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山 県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿児 島県 沖縄 県 全国 計 採用行動の影響 職員数一定 採用行動継続 最後に、人口比維持ケースでは、給与総額の減少率は都道府県計で▲9.1%となってお り、職員数一定ケースの▲7.1%よりも減少率が▲2.0%大きい。これは、2018年度にかけ て全国の人口が▲2.5%減少し職員数も同率だけ減少するためである。都道府県別に見ると (図表21)、人口動態の違いを反映して、給与総額は、職員数一定ケースに比べて、沖縄、 東京、神奈川、愛知、滋賀では1∼3%程度増加するのに対して、秋田、和歌山、青森で は6∼7%程度減少する。 7 ただし、過去の採用行動の違いは、過去の退職者数の差を反映している可能性があることに 留意が必要である。
27 図表 21 2018 年度の給与総額(人口比維持ケース、対 2008 年度比) イ)人口変動の影響(職員数一定ケースとの差) ‐20.0% ‐15.0% ‐10.0% ‐5.0% 0.0% 5.0% 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木 県 群馬 県 埼玉 県 千葉 県 東京 都 神奈 川県 新潟 県 富山 県 石川 県 福井 県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知 県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山 県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿児 島県 沖縄 県 全国 計 人口変動の影響 職員数一定 人口比維持 ロ)人口減少を上回る採用抑制(採用行動継続ケースとの差) ‐35.0% ‐30.0% ‐25.0% ‐20.0% ‐15.0% ‐10.0% ‐5.0% 0.0% 5.0% 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木 県 群馬 県 埼玉 県 千葉 県 東京 都 神奈 川県 新潟 県 富山 県 石川 県 福井 県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知 県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌 山県 鳥取 県 島根 県 岡山 県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿児 島県 沖縄 県 全国 計 人口減少を上回る採用抑制 採用行動継続 人口比維持
28 なお、人口比維持ケースを採用行動継続ケースと比較してみると8、両者の間には緩やか な相関が見受けられる。また、採用行動継続ケースの減少率のほうが人口比維持ケースの それに比べて大きい傾向が見られる。このことは、各都道府県が、人口の減少傾向を反映 しつつ、人口の減少傾向を上回る厳しい採用抑制を行ってきたことを示唆している。 (退職手当) 都道府県別に2018年度までの退職金総額の推移を比較した(参考図表10)。 職員数一定ケースを見ると(図表22)、都道府県計では▲16.7%の減少であるが、都道 府県別にみると、高齢職員の年齢構成の違いを反映して、4割以上減少する県から2割以 上増加する県まで大きな差が生じる。減少率が3割を超えているのは、沖縄、東京、大阪、 愛知の都府県である。逆に鳥取が20.9%、香川が14.9%の増加となっており、次いで山形、 広島の増加率が高い。 シナリオ間の差は小さい。都道府県別の減少率を見ると、職員数一定ケースに比べて、 採用行動継続ケースでは▲5.6∼1.5%、人口比維持ケースでは▲2.2∼0.7%の差があるに 過ぎない。 増減率の大きい都府県について、職員構成の変化を見た(図表23)。減少率の大きい都 府県では、初期時点において50歳代以上の年齢層の職員の構成比率が高い。50歳代後半の 職員はその多くが退職期に当たるため、初期時点の退職金総額を押し上げる要因となる。 しかし、初期時点において50歳代の職員の大部分は、2018年度までにはすでに退職してい るため、2018年度における退職者の数は少なくなり、退職金総額も大幅に減少する。一方、 増加率の大きい県では、初期時点において40歳代後半の年齢層の職員の構成比率が高い。 そのため、初期時点の退職者は少なく退職金総額は大きくない。しかし、初期時点におい て40歳代後半の職員は2018年度にちょうど退職期を迎えるため、2018年度における退職者 の数は多くなり、退職金総額も大幅に増加する。 8 ただし、人口比維持ケースは将来の人口動向を、採用行動継続ケースは過去3年間の採用抑 制傾向を反映している。
29 図表22 退職金総額(職員数一定ケース) イ)2018 年度の対 2008 年度比 ‐50.0% ‐40.0% ‐30.0% ‐20.0% ‐10.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木 県 群馬 県 埼玉 県 千葉 県 東京 都 神 奈川県 新潟 県 富山 県 石川 県 福井 県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知 県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和 歌山県 鳥取 県 島根 県 岡山 県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿 児島県 沖縄 県 全国 計 ロ)増減率の大きい都府県の推移 ‐50.0% ‐40.0% ‐30.0% ‐20.0% ‐10.0% 0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 (年度) 鳥取県 香川県 山形県 広島県 全国 神奈川県 愛知県 大阪府 東京都 沖縄県
30 図表 23 職員構成の変化(職員数一定ケース) イ)退職金の減少率が大きい都府県 沖縄 東京 大阪 愛知 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 19 歳 以 下 20 ∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 60 歳 以 上 (人) 2008 2013 2018 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 19 歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60 歳 以 上 (人) 2008 2013 2018 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 19 歳 以 下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 60 歳 以 上 (人) 2008 2013 2018 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 ロ)退職金の増加率が大きい県 鳥取 香川 山形 広島 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 1 9 歳以下 20 ∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 1 9 歳以下 20 ∼ 2 4 25 ∼ 2 9 30 ∼ 3 4 35 ∼ 3 9 40 ∼ 4 4 45 ∼ 4 9 50 ∼ 5 4 55 ∼ 5 9 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 1 9 歳以下 20∼ 24 25∼ 29 30∼ 34 35∼ 39 40∼ 44 45∼ 49 50∼ 54 55∼ 59 6 0 歳以上 (人) 2008 2013 2018
31 (人件費総額) 前述の通り、人件費総額の増減率は、給与総額の増減率と退職金総額の増減率を加重平 均したものになっている。加重平均のウェイトは、2018 年度における退職金以外の人件費 (給与、共済組合負担金、その他)と退職金の比率である。この比率は、『平成20 年度都 道府県決算状況調』によると、都道府県ごとに若干の違いはあるものの、概ね9:1程度 である。したがって、人件費総額の増減率は給与総額の増減率と大きく異なることはない。 2018 年度までの 10 年間の人件費総額の変化を見ると(参考図表 11)、いずれのケース でも、都道府県計では、給与総額の減少率よりも退職金総額の減少率が大きいことから、 人件費総額は、給与総額の減少率を若干上回って減少する。しかし、各都道府県別に見る と、例えば、職員数一定ケースでは(図表 24)、退職金総額が増加する県や給与総額の減 少率が退職金総額の減少率よりも大きい府県も相当数見られている。 図表 24 2018 年度の人件費総額(職員数一定ケース、対 2008 年度比) ‐14.0% ‐12.0% ‐10.0% ‐8.0% ‐6.0% ‐4.0% ‐2.0% 0.0% 2.0% 4.0% 北海 道 青森 県 岩手 県 宮城 県 秋田 県 山形 県 福島 県 茨城 県 栃木 県 群馬 県 埼玉 県 千葉 県 東京 都 神奈川 県 新潟 県 富山 県 石川 県 福井 県 山梨 県 長野 県 岐阜 県 静岡 県 愛知 県 三重 県 滋賀 県 京都 府 大阪 府 兵庫 県 奈良 県 和歌山 県 鳥取 県 島根 県 岡山 県 広島 県 山口 県 徳島 県 香川 県 愛媛 県 高知 県 福岡 県 佐賀 県 長崎 県 熊本 県 大分 県 宮崎 県 鹿児島 県 沖縄 県 全国 計 人件費の伸び−給与の伸び 人件費総額 給与総額
32 (2)給料のフラット化が地方公務員人件費に与える影響 給料プロファイルの想定の変更が公務員人件費に及ぼす影響を試算するため、都道府県 計における人口比維持ケースをベースラインとし、都道府県の合計および職種別内訳につ いて、年齢別に以下の給料引き下げ目標を課した上で、(a)1年で引き下げるケース、(b) 5年間かけて段階的に引き下げるケース、(c)10年間かけて段階的に引き下げるケース (それぞれ前年比を定率で引き下げ)を想定して、給料総額に与える影響を職種別に試算 した。 図表 25 給料カーブのフラット化の想定 年齢区分 引下げ目標 35歳以下 変更なし 36∼39歳 2%減 40∼43歳 4%減 44∼47歳 6%減 48∼55歳 8%減 56歳以上 10%減 以下は、各ケースにおける人件費総額の増減率の変化(乗数)を見たものである。職員 の年齢構成の違いによって、職種別にみた人件費減少率の変化に若干の違いが見られる。 引き下げの初年度である 2009 年度においては、技能労務職や教育公務員の給料総額への 影響が大きい。これは、給料カーブのフラット化によって高齢者を中心に給料が減少する ため、初期時点において高齢者の比率が高い技能労務職や教育公務員の人件費の減少率が 大きくなるためである。一方、高齢者の比率が低い警察職は、給料カーブのフラット化に よる影響が小さい。ただし、技能労務職では、徐々に若年の職員の比率が高まるが、それ らの年齢層の職員の給料はあまり低下しないため、2018 年度に近づくにつれて、人件費の 減少率は当初に比べて小さくなっていく。
33 図表 26 給料引下げの影響(1年で引き下げたケース) 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 '09年度から'18年 度までの人件費総 額 合計 0.00 -5.40 -5.34 -5.29 -5.26 -5.19 -5.12 -5.07 -5.01 -4.95 -4.90 -5.16 一般行政職 0.00 -5.44 -5.38 -5.34 -5.31 -5.27 -5.24 -5.21 -5.19 -5.17 -5.16 -5.27 技能労務職 0.00 -6.42 -6.06 -5.71 -5.41 -5.19 -4.99 -4.83 -4.68 -4.54 -4.41 -5.25 その他一般職 0.00 -5.06 -4.98 -4.90 -4.84 -4.80 -4.75 -4.71 -4.66 -4.63 -4.61 -4.80 教育公務員 0.00 -5.61 -5.58 -5.56 -5.56 -5.47 -5.40 -5.34 -5.28 -5.18 -5.09 -5.41 警察職 0.00 -4.74 -4.63 -4.54 -4.46 -4.39 -4.32 -4.25 -4.20 -4.20 -4.20 -4.39 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 2 008 年 度 2 009 年 度 2 010 年 度 2 011 年 度 2 012 年 度 2 013 年 度 2 014 年 度 2 015 年 度 2 016 年 度 2 017 年 度 2 018 年 度 (%) 合計 一般行政職 技能労務職 その他一般職 教育公務員 警察職 図表 27 給料引下げの影響(5年間かけて段階的に引き下げたケース) 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度度までの人件費総'09年度から'18年 合計 0.00 -1.11 -2.19 -3.23 -4.24 -5.19 -5.12 -5.07 -5.01 -4.95 -4.90 -4.07 一般行政職 0.00 -1.12 -2.20 -3.25 -4.28 -5.27 -5.24 -5.21 -5.19 -5.17 -5.16 -4.18 技能労務職 0.00 -1.33 -2.49 -3.48 -4.37 -5.19 -4.99 -4.83 -4.68 -4.54 -4.41 -3.98 その他一般職 0.00 -1.05 -2.04 -2.99 -3.90 -4.80 -4.75 -4.71 -4.66 -4.63 -4.61 -3.78 教育公務員 0.00 -1.16 -2.29 -3.39 -4.48 -5.47 -5.40 -5.34 -5.28 -5.18 -5.09 -4.28 警察職 0.00 -0.98 -1.90 -2.77 -3.60 -4.39 -4.32 -4.25 -4.20 -4.20 -4.20 -3.47 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 2008年 度 2009年 度 2010年 度 2011年 度 2012年 度 2013年 度 2014年 度 2015年 度 2016年 度 2017年 度 2018年 度 (%) 合計 一般行政職 技能労務職 その他一般職 教育公務員 警察職
34 図表 28 給料引下げの影響(10 年間かけて段階的に引き下げたケース) 2008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度度までの人件費総'09年度から'18年 合計 0.00 -0.56 -1.10 -1.63 -2.16 -2.65 -3.12 -3.59 -4.04 -4.47 -4.90 -2.79 一般行政職 0.00 -0.56 -1.11 -1.65 -2.17 -2.69 -3.19 -3.69 -4.18 -4.67 -5.16 -2.88 技能労務職 0.00 -0.67 -1.25 -1.76 -2.22 -2.65 -3.05 -3.42 -3.77 -4.10 -4.41 -2.68 その他一般職 0.00 -0.52 -1.03 -1.51 -1.98 -2.45 -2.90 -3.33 -3.76 -4.19 -4.61 -2.59 教育公務員 0.00 -0.58 -1.15 -1.72 -2.28 -2.79 -3.29 -3.78 -4.26 -4.68 -5.09 -2.92 警察職 0.00 -0.49 -0.96 -1.40 -1.83 -2.24 -2.63 -3.01 -3.39 -3.79 -4.20 -2.39 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 2 008年度 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 013年度2 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度 (%) 合計 一般行政職 技能労務職 その他一般職 教育公務員 警察職 5.まとめ 本研究では、公務員について、初期時点(2008年度)における年齢別の職員数、一人当 たり平均給与、退職率を所与として、採用行動に一定の仮定を置き、職員の総数と年齢構 成、人件費の推移を試算した。そして、今後の採用行動や給料プロファイルの変化が公務 員人件費に与える影響を定量的に評価した。その結果、初期時点の職員の年齢構成が今後 の公務員人件費の推移に大きな影響を与えることが明らかになった。 退職者数と同数の新規採用を行って職員数を一定に保った場合(職員数一定ケース)、 国家公務員については、職員の年齢構成が山型で安定しているため、給与総額(実質値) に大きな変化はない。一方、地方公務員については、これまでの厳しい新規採用抑制によ って職員の年齢構成が高齢化しているため、職員数が一定でも年齢構成が若返ることによ って給与総額が今後10年間で▲7%程度減少する。特に、都道府県の技能労務職や市区町 村の教育職の減少率が大きく、逆に警察職の減少率は小さい。 過去3年間の平均的な職員数の純減(率)が続く場合(採用行動継続ケース)、職員数 一定ケースと比較して、給与総額の減少率は大幅なものとなる。ただし、これまでの職員 数の動向の違いを反映して、国家公務員と地方公務員の別、地方公務員の職種の別によっ
35 て給与総額の減少率は大きく異なる。国よりは地方の方が、また地方の中では市区町村の 職員数削減による影響が大幅となっている。職種別にはその他一般職、都道府県の技能労 務職の減少率が大きく、警察職は逆に増加する。 職員数を人口比で一定に保った場合(人口比維持ケース)、人口が減少することから、 職員数は今後10年間で▲2.5%減少し、給与総額も職員数一定ケースに比べてさらに▲2% 程度減少する。 地方公務員の退職金は、2008年度の人件費総額の1割程度を占めているが、団塊世代の 退職がピークを越えたため、今後は大幅に減少していく。ただし、職種間や都道府県間の ばらつきは大きい。 都道府県間では、初期時点の高齢化の度合いが異なるため、今後10年間の給与総額の減 少率に8%ポイント強の開きが生じる(職員数一定ケース)。これに加えて、都道府県間 の採用抑制努力や人口動態の違いが、給与総額の増減率のばらつきを拡大する。また、都 道府県ごとの退職金総額の増減率にも初期時点の職員の年齢構成の違いが大きな影響を与 える。 賃金カーブのフラット化は、初期時点の職員の年齢構成が高齢化している場合や今後高 齢化が進む場合に大きな人件費削減効果を持つ。 本試算は、退職率、採用者数やその年齢構成、給料プロファイルなどに関する仮定に基 づいた機械的な試算である。また利用できるデータが非常に限られていることからさまざ まな想定に基づく試算となっている。例えば、国家公務員については、2008年12月の国家 公務員法改正により再就職規制が導入されており、勧奨退職者の出現率が低下していくと 見られる。また、平成22年度の人事院勧告では、65歳定年制の実現に向けて、公務におけ る高齢期雇用の基本的な方向と定年延長に向けた制度見直しの骨格が示されている。一方、 平成23年度の国家公務員の新規採用を厳しく抑制する方針が決まっている。こうした動き は公務員人件費の推移に大きな影響を与えるが、本試算には反映されていない。したがっ て、本試算の限界には十分に留意する必要があるが、本試算を通じて、公務員人件費と言 っても、国家公務員と地方公務員の別、給与と退職金の別、職種の別によって、その動向 には大きな差が生じうることが明らかになった。 公務員人件費の改革は、財政構造改革を進める上で避けて通ることのできない課題であ る。しかし、改革が画一的な歳出削減に矮小化されてはならない。社会経済情勢や行政ニ ーズの変化に的確に対応し、必要な行政サービスが効率的に提供できる制度設計が求めら
36 れている。そのためには、個別の地域や分野の行政需要、公務員の職員構成や給与プロフ ァイルの現状などを十分に考慮しつつ、改革の効果に関する定量的な分析に基づいて改革 を進めていく必要がある。できるだけ正確な評価ができるよう、分析手法の改善や利用し やすい形での一層のデータの開示が望まれる。 【参考文献】 稲継裕明(2006)、『自治体の人事システム改革−ひとは「自学」で育つ』ぎょうせい 小川亮・北浦義朗(2007a)、「公務員人件費はどこまで減らせるのか∼コーホート要因法に 基づくシミュレーション分析∼」、関西社会経済研究所 Discussion Paper Series No.5 小川亮・北浦義朗(2007b)、「地方公務員人件費はどこまで減らせるのか∼コーホート要 因法に基づく定員管理シミュレーション分析∼」、関西社会経済研究所 Discussion Paper Series No.9
山本正憲(2008)、『日本の地方公務員の人件費研究−地方分権時代における給与と福利厚生 費の公民均衡のあり方を焦点に−』ブイツーソリューション