温度応答性高分子を凝集剤として用いた
微粒子の固液分離に関する研究
2019 年
秋田大学大学院理工学研究科
中村 彩乃
i <目次> 第 1 章 序論 ……….. 1 1.1 排水処理の現状 ………... 1 1.2 凝集剤による土壌粒子の凝集 ………. 1 1.2.1 無機凝集剤を用いた既往の研究 ……….. 1 1.2.2 高分子凝集剤を用いた既往の研究 ……….. 2 1.3 凝集物の濾過 ………. 3 1.4 吸着材の回収 ………. 4 1.5 温度応答性高分子 ………. 4 1.5.1 温度応答性高分子の凝集剤としての利用に関する 既往の研究 ……….. 5 1.5.2 温度応答性高分子を修飾した吸着材の既往の研究 ……….. 6 1.6 本研究の目的 ………. 6 1.7 本論文の構成 ………. 7 【第 1 部】温度応答性高分子を凝集剤として用いた場合の 凝集効果および濾過への適用性の検討 ……….. 13 第 2 章 PNIPAM を凝集剤として用いたベントナイトの凝集効果と 凝集メカニズムの検討 ……….. 14 2.1 緒言 ………. 14 2.1.1 ベントナイト ……….. 14 2.1.2 ベントナイトの凝集に関する既往の研究 ……….. 15 2.1.3 本章の目的 ……….. 16 2.2 実験方法 ………. 17 2.2.1 試料および試薬 ……….. 17 2.2.2 ベントナイトのキャラクタリゼーション ……….. 17 2.2.3 PNIPAM の合成 ……….. 18 2.2.4 PNIPAM のキャラクタリゼーション ……….. 18 2.2.5 PNIPAM を凝集剤として用いた沈降試験 ……….. 18 2.2.6 凝集状態の評価 ……….. 19 2.2.7 凝集物の構造評価 ……….. 19 2.3 結果と考察 ………. 20 2.3.1 ベントナイトのキャラクタリゼーション ……….. 20 2.3.2 PNIPAM のキャラクタリゼーション ……….. 20
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ii 2.3.3 PNIPAM の凝集効果の検討 ……….. 22 2.3.3.1 分子量の影響 ………... 22 (1) 沈降体積および沈降速度 ………... 22 (2) ベントナイト上の PNIPAM 存在状態 ……….. 26 (3) 凝集メカニズム ………... 27 2.3.3.2 pH の影響 ………. 29 (1) 沈降速度 ………... 29 (2) ベントナイト上の PNIPAM 存在状態 ……….. 31 (3) 凝集メカニズム ………... 32 2.4 本章のまとめ ………. 33 第 3 章 PDMA を凝集剤として用いたベントナイトの凝集効果と 凝集メカニズムの検討 ……….. 37 3.1 緒言 ………. 37 3.1.1 カチオン性高分子凝集剤を用いたベントナイトの凝集に 関する既往の研究 ………. 37 3.1.2 本章の目的 ………. 37 3.2 実験方法 ……… 38 3.2.1 試料および試薬 ………. 38 3.2.2 PDMA の合成 ……… 38 3.2.3 PDMA のキャラクタリゼーション ……… 38 3.2.4 PDMA を凝集剤として用いた沈降試験 ……… 39 3.2.5 PDMA および CaCl2凝集剤を用いた凝集試験 ………. 39 3.2.6 凝集状態の評価 ………. 39 3.2.7 凝集の構造評価 ………. 39 3.3 結果と考察 ………. 40 3.3.1 PDMA のキャラクタリゼーション ……….. 40 3.3.2 凝集試験 ……….. 41 3.3.3 種々の pH および温度における PDMA の凝集効果の検討 .. 44 3.3.3.1 沈降体積および沈降速度 ………... 44 3.3.3.2 凝集物中 PDMA の存在状態 ………. 50 3.3.3.3 凝集メカニズム ………... 52 3.4 本章のまとめ ………. 54
iii 第 4 章 ベントナイト懸濁液の濾過速度に及ぼす温度応答性高分子の 影響 ……….. 57 4.1 緒言 ………. 57 4.1.1 ポリアクリルアミド凝集剤を用いた懸濁液の濾過に関する 既往の研究 ……….. 57 4.1.2 ベントナイトの濾過に関する既往の研究 ……….. 58 4.1.3 本章の目的 ……….. 58 4.2 実験方法 ………. 59 4.2.1 試料および試薬 ……….. 59 4.2.2 PDMA の合成およびキャラクタリゼーション ………. 59 4.2.3 濾過試験 ……….. 59 4.2.4 濾過の基礎理論 ……….. 60 4.3 結果と考察 ………. 62 4.3.1 濾過試験 ……….. 62 4.3.1.1 pH の影響 ………. 62 4.3.1.2 PDMA 濃度の影響 ………... 63 4.3.1.3 CaCl2濃度の影響 ………. 64 4.3.1.4 濾過温度の影響 ………... 65 4.3.1.5 濾過の濁度 ………... 66 4.3.2 Ruth の濾過方程式による凝集状態の評価 ……….. 67 4.3.3 ケークの状態と含水量 ……….. 71 4.4 本章のまとめ ………. 72 【第 2 部】温度応答性高分子を修飾した新規複合吸着材の凝集と 磁気分離法への応用 ……….. 75 第 5 章 PNIPAM 修飾ゼオライト複合吸着材の合成と 高勾配磁気分離法への適用性の検討 ……….. 76 5.1 緒言 ………. 76 5.1.1 高勾配磁気分離法による固液分離処理 ……….. 76 5.1.2 温度応答性高分子を修飾した複合体に関する既往の研究 .. 77 5.1.3 本章の目的 ……….. 78 5.2 実験方法 ………. 78 5.2.1 試料および試薬 ……….. 78 5.2.2 PMZ の合成方法 ………. 78
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iv 5.2.2.1 マグネタイト-ゼオライト複合体(MZC)の調製 ….. 78 5.2.2.2 PNIPAM-MZC 複合体の合成(PMZ) ……….. 79 5.2.3 試料の構造評価 ……….. 80 5.2.4 吸着試験 ……….. 81 5.2.5 HGMS を用いた吸着材除去試験 ……….. 81 5.3 結果と考察 ………. 83 5.3.1 試料のキャラクタリゼーション ……….. 83 5.3.1.1 鉄担持量 ………... 83 5.3.1.2 XRD 測定 ……….. 83 5.3.1.3 FT-IR スペクトル ……… 85 5.3.1.4 SEM 測定による表面状態の観察 ……….. 85 5.3.1.5 TG 測定による重量減少率 ………. 87 5.3.1.6 窒素吸脱着法による BET 表面積測定 ……….. 88 5.3.2 Cs+吸着特性 ……… 88 5.3.3 HGMS を用いた吸着材の除去 ………. 89 5.3.4 PMZ を用いた Cs+吸着および凝集メカニズム ……….. 90 5.3.5 PMZ の再利用性の検討 ………. 91 5.4 本章のまとめ ………. 92 第 6 章 PNIPAM 修飾メソポーラスシリカ複合吸着材の合成と 磁気分離への適用性の検討 ……….. 95 6.1 緒言 ………. 95 6.1.1 PNIPAM をメソポーラスシリカに修飾させた複合体に 関する既往の研究 ……….. 95 6.1.2 本章の目的 ……….. 96 6.2 実験方法 ………. 96 6.2.1 試薬 ……….. 96 6.2.2 Amino-PMMS の合成 ………. 97 6.2.2.1 マグネタイト担持メソポーラスシリカ(MMS)の合成 97 6.2.2.2 アミノ基および PNIPAM 修飾マグネタイト担持 メソポーラスシリカ(Amino-PMMS)の合成 ……… 98 6.2.3 試料の構造評価 ……….. 98 6.2.4 メチルオレンジ(MO)の吸着試験 ……… 99 6.2.4.1 MO 吸着等温線 ……… 99 6.2.4.2 吸着速度解析 ………... 100 6.2.5 Amino-PMMS の凝集および磁気回収試験 ………. 101
v 6.3 結果と考察 ………. 102 6.3.1 吸着材のキャラクタリゼーション ……….. 102 6.3.1.1 鉄担持量 ………... 102 6.3.1.2 XRD 測定 ……….. 102 6.3.1.3 各試料の比表面積および細孔構造 ………... 104 6.3.1.4 MPS、APTES、PNIPAM 修飾量 ……… 105 6.3.1.5 SEM 測定による表面状態の観察 ……….. 106 6.3.2 MO の吸着特性 ………... 108 6.3.2.1 吸着等温線 ………... 108 6.3.2.2 吸着速度解析 ………... 108 6.3.3 Amino-PMMS の凝集挙動 ………. 113 6.4 本章のまとめ ………. 116 第 7 章 総括 ………... 119 7.1 本研究の結論 ………. 119 7.2 温度応答性高分子を利用した水処理に関する将来の展望 ……. 120 7.2.1 温度応答性高分子の凝集剤としての利用 ……….. 120 7.2.2 温度応答性高分子を修飾した複合吸着材を用いた水処理 への応用 ……….. 121 <謝辞> ……….. 123
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i
学位論文を構成する公表論文
1. Nakamura, A., Murakami, K. : The effect of cationic polymer as flocculant on bentonite aggregation under different pH and the study of aggregation mechanism,
Clay Science, 23 (2019) 7-14.
2. Nakamura, A., Murakami, K. : The aggregation of bentonite using poly(N-isopropylacrylamide) as a flocculant, Journal of Materials Science and Chemical
Engineering, 6 (2018) 94-108.
3. Nakamura, A., Sugawara, K., Nakajima, S., Murakami, K. : Adsorption of Cs ions using a temperature-responsive polymer / magnetite / zeolite composite adsorbent and separation of the adsorbent from water using high-gradient magnetic separation,
Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 527 (2017)
1 第1 章 序論 1.1 排水処理の現状 工場や土木工事現場などで発生する排水の中には、金属イオンや染料、有機物 質、土壌粒子など様々な物質が含まれている。その多くは環境に悪影響を及ぼす 物質である。そのため、排水中の有害物質を除去する必要があり、有害物質の種 類によって処理方法が異なる。 金属イオンや染料、有機物質などの物質を除去する場合、ゼオライト[1,2]やベ ントナイト[3,4]などの土壌粒子、活性炭[5,6]などを吸着材として用いて吸着除去 する方法が一般的である。しかし、これらの吸着材は、効率的に吸着させるため に微粒子で用いられており、これらを水から除去するために更なる処理工程が 必要となる。また、ベントナイトは土木工事現場などで潤滑剤として使用される ことが多く、世界で毎年1000 万トン以上の使用済み懸濁液が発生している[7,8]。 ベントナイトなどの土壌粒子は微細な粒子であり、水中で高い分散性を示すた め、使用済み懸濁液の処理方法は非常に難しいという問題があった。現在は、吸 着材や土壌粒子のような微粒子の処理方法として凝集沈殿法が用いられており、 低コストで簡便にできることから幅広い分野で利用されている[9,10]。凝集沈殿 法は、凝集剤を用いて粗大な凝集物を形成させ、それらを重力によって沈殿させ、 固液分離するという方法である。凝集沈殿法に使用されている凝集剤には、主に 無機凝集剤と高分子凝集剤の2 種類がある。 1.2 凝集剤による土壌粒子の凝集 1.2.1 無機凝集剤を用いた既往の研究 水処理に使用される無機凝集剤には、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニ ウムのようなアルミニウム系凝集剤や、塩化鉄やポリ硫酸鉄のような鉄系凝集 剤がある。 Yu ら[11]は、塩化アルミニウム(0.1 mM)とポリ塩化アルミニウム(0.02 mM) を凝集剤として用いた場合のカオリン懸濁液(pH7、50 ppm)に対する凝集効果 を調査し、塩化アルミニウムの方がポリ塩化アルミニウムよりも形成された凝 集物は大きく、約300 μm になることを報告している。さらに、塩化アルミニウ ムを凝集剤としてカオリン懸濁液およびシリカ懸濁液(pH7、6-10 ppm)の凝集 試験を行ったところ、懸濁液の濃度や粒子の種類に関係なく凝集物サイズは約 170 μm となったことも記述している。He[12]らは硫酸アルミニウムやポリ塩化 アルミニウム凝集剤の凝集効果を船舶のバランスを保つためのバラスト水(プ ランクトンや、菌類、泥などが含まれる海水)で検討している。バラスト水のモ デルとして 0.21 %のアニオン性ポリアクリルアミドと 0.25%のマイクロサンド
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2 (75-106 μm)を懸濁させた溶液(96 NTU)を用意し、0-100 ppm の濃度になる ように硫酸アルミニウム、またはポリ塩化アルミニウムを添加した。40 ppm の 硫酸アルミニウム凝集剤を加えたところ凝集物は133-156 μm まで大きくなった が、40 ppm の濃度を超えると小さくなった。また、彼らは、ポリ塩化アルミニ ウムを凝集剤として用いた場合も同様の傾向があったが、硫酸アルミニウムよ りも凝集物が小さくなることを報告している。 Moussas ら[13]は、ポリ硫酸鉄を用いて 50 ppm のカオリンと 5 ppm のフミン 酸(植物が微生物によって分解されることで生成する物質)を含む懸濁液の凝集 試験を行っている。この懸濁液の濁度は、87 NTU であるが、12 ppm のポリ硫酸 鉄を加えると 3.5 NTU まで低下することを報告している。また、Sun ら[14]は、 濁度 15 NTU のカオリンとフミン酸を含む懸濁液にポリ塩化鉄を凝集剤として 使用し、固体の除去率や凝集物サイズを調査している。彼らは15 ppm のポリ塩 化鉄濃度の時、固体の除去率は86.5%に達し、この時の凝集物サイズは約 92-377 μm まで大きくなることを報告している。 このように無機凝集剤に関する報告は多いが、これらの殆どは懸濁液濃度が 非常に低い条件で凝集試験が行われている。そのため、より高い濃度の懸濁液の 凝集を行う際には、多量の無機凝集剤を添加する必要がある。 1.2.2 高分子凝集剤を用いた既往の研究 無機凝集剤では凝集効果を得るために多量の凝集剤が必要になるという問題 から、より少ない添加量でも凝集効果が高い高分子凝集剤が排水処理に使用さ れることが多い。中でも、ポリアクリルアミド(PAM)系の高分子凝集剤が最も よく用いられている[15]。 Besra ら[16]は、カチオン性、およびアニオン性 PAM を使用して 5 wt%のカオ リン懸濁液への凝集効果を検討しており、カチオン性PAM を用いた場合、アニ オン性 PAM よりもカオリンの沈降速度が非常に速くなることを報告している。 彼らは、カオリンにアニオン性PAM が殆ど吸着していないことから、アニオン 性PAM はカオリンに対して凝集効果が低いとしている。Ma ら[17, 18]は、カチ オン性 PAM を凝集剤として、土壌粒子のカオリン懸濁液(0.1 %)やフミン酸 (粒子状)懸濁液(0.1 wt%)、それらの混合懸濁液に対する凝集効果を検討して いる。カオリン懸濁液やフミン酸懸濁液の場合、pH3-4 では、2 ppm 未満のカチ オン性 PAM で上澄み液中の透過率が 0 %から 90 %まで向上したことを報告し ている。一方、pH9-10 で同濃度のカチオン性 PAM を用いた場合、上澄み液中の 透過率は70 %までしか改善せず、pH によって凝集効果が異なることを示してい る。また、カチオン性PAM の電荷密度が高いほど凝集効果が向上することも報 告している。加えて、フミン酸とカオリンを混合させた懸濁液でも、pH3、2 ppm
3 のカチオン性 PAM 濃度の条件で高い凝集効果があることを明らかにしている。 さらに、近年ではPAM と他の高分子を共重合させた凝集剤の凝集効果を検討 している報告例が多い。Ghosh ら[19]は、タマリンド種子由来の多糖類と PAM を 共重合させたTKP-g-PAM を凝集剤として濁度が 58 NTU の 0.25 wt%カオリン懸 濁液の凝集を行い、わずか9 ppm の TKP-g-PAM 濃度で 6 NTU まで濁度が低下 したことを報告している。Yang ら[20]は、凝集剤としてキトサンと PAM を共重 合したCMC-g-PAM を用い、0.1 wt%のカオリン懸濁液の凝集試験を行い、pH4、 7、11 において、それぞれ 2、5、16 ppm の CMC-g-PAM 濃度で濁度が最も低く なったことを報告している。彼らは、キトサンのアミノ基部分が低いpH で正に 帯電し、負電荷を有するカオリンと静電的に引き合ったため、凝集剤濃度が低く ても凝集効果が向上したと考察している。 1.3 凝集物の濾過 1.2 に示したように、PAM 系凝集剤に関する報告は多数ある。しかし、PAM 系 凝集剤によって形成された凝集物は多くの水を含有するという問題がある[21]。 Li ら[22]は、アクリルアミドとカチオン性を有する methacrylamide propyl trimethyl ammonium chloride (MAPTAC)を重合した凝集剤(PAMA)を用いてゼー
タ電位-17 mV、濁度 120 NTU、pH6 である 1.7 wt%の汚泥懸濁液の濾過を行って おり、処理水の濁度や懸濁液を濾過したときのケーク抵抗やケークの含水量か ら脱水効果を検討している。40 ppm の PAMA 濃度で濾過を行った場合、処理水 の濁度は4.7 NTU、ケーク抵抗は 3.94×1012 m/kg、ケーク中の含水量はウェット ベース(W.B.)で 71 wt% (W.B.)まで減少したことを明らかにしている。しかし、 100 ppm の PAMA 濃度を加えるとケーク中の含水量は 79 wt% (W.B.)に増加した ことも示している。Luo ら[23]は、分子量 5 百万、電荷密度 20-30 %のカチオン 性PAM(CAPAM)を 0.8 wt%の汚泥に 0.1 wt%になるように加えた懸濁液を用意 し、0.6 または 6 MPa で濾過を行った時のケーク中の含水量を調査している。
CPAM 無添加の場合、ケーク中の含水量は 0.6 MPa で 10.5 g-water/g-sludge、6 MPa
で2 water/sludge であるのに対し、CPAM を使用したところ、0.6MPa で 10
g-water/g-sludge、6 MPa で 1 g-water/g-sludge となり、CPAM の添加によりわずかに 含水量が減少した。 上記の報告例のように PAM 系凝集剤の場合、ケークの含水量が非常に高く、 ケーク抵抗も濾過が容易に進行するとされる1.0×1011 m/kg よりも高かった。こ のような状態で凝集沈殿させても、多量の水を含んだ凝集物は更なる脱水処理 を行う必要がある。さらに、濾過を行う際、含水量の多い凝集物は濾紙の上でゲ ル状となって目詰まりするため、濾過速度が非常に遅くなるという問題も生じ、 高い圧力条件や脱水工程が必要となる。そのため、凝集する際に水を含まず、且
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4 つ少ない添加量でも凝集効果があり、更に濾過の目詰まりを軽減するため、より 大きな凝集物を形成可能な凝集剤を検討する必要がある。 1.4 吸着材の回収 ゼオライトや活性炭などを吸着材として使用した後、処理水から分離、または 回収するが、これは一般的に凝集沈殿法や濾過法によって行われる[24,25]。 Nakazawa ら[26]も、粒径の異なる活性炭(14 μm)をポリ塩化アルミニウム凝集 剤により凝集させ、形成された凝集物の大きさを調査しており、形成された凝集 物は1 mm 程まで大きくなって沈殿することを報告している。 近年では磁気分離法が着目されており、磁性物質及び磁性物質を担持した材 料を磁場により回収し、処理水と固体を分離する方法である。この方法は、懸濁 液を流しながら処理水と固体の分離が可能であるため、濾過法と比較して短時 間で多量の排水を処理することが可能となる。このため、磁気分離法へ応用可能 な磁性を有する吸着材の開発が行われている。 Kheshti ら[27]は、マグネタイトを核としてメソポーラスシリカを修飾後、吸着 サイトであるアミノ基を固定化した吸着材を合成し、高勾配磁気分離(HGMS) 装置を用いた磁気分離を検討している。彼らは、磁束密度 3.49 mT の磁場内に 0.5 wt%の合成吸着材を含む懸濁液(1 L)を流通させ、流速を変化させた場合の 吸着剤の回収率を調査しており、4.5 mL/s の時、89 wt%まで回収できたが、22.5 mL/s では 74 wt%まで減少したことを報告している。Huang ら[28]は、メチレン ブルーの吸着材として銅担持ゼオライトに酸化グラフェンと磁性粒子を修飾し たCu-Z-GO-M 複合吸着材を合成し、0.03 wt%の Cu-Z-GO-M を含む懸濁液に磁 石を近づけると90 wt%まで回収できたことを報告している。 1.5 温度応答性高分子 本研究では、上記の問題点を解決するための凝集剤として温度応答性高分子 に注目した。温度応答性高分子は、水中である温度を境に水和することで体積膨 潤する一方、脱水和すると体積収縮する特性がある。この時の水溶液は、体積膨 潤時には無色透明であり、体積収縮時は白濁する。温度応答性高分子には相転移 挙動の異なる2 種類のタイプがあり、下限臨界溶液温度(LCST)を有する LCST 型と上限臨界溶液温度(UCST)を有する UCST 型がある。LCST 型の高分子は、 LCST 以下では体積膨潤し、LCST 以上では体積収縮する [29]。UCST 型では、 LCST 型とは逆の相転移挙動を示す[30]。ここで、LCST 型の代表的な温度応答 性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)を例に体積 膨潤および体積収縮の原理を説明する。PNIPAM は、側鎖に親水性であるアミド 基と疎水性であるイソプロピル基を有しており、LCST 以下ではアミド基に水分
5 子が水素結合する際に協同性によって周囲の水分子が集まり、イソプロピル基 周辺を疎水性水和するため、PNIPAM は水中に膨潤した状態で存在している[31]。 一方、温度の上昇に伴い、水分子の運動が促進されて疎水性水和を崩壊(協同脱 水和)し、イソプロピル基同士が疎水性相互作用によって集まるため、PNIPAM は体積収縮する[31]。従って、LCST 型の温度応答性高分子を用いることで、昇 温により脱水和しながら体積収縮するため、密で大きな凝集物を形成し、形成さ れる凝集物中の含水量を減少させることが可能であると考えられ、微粒子に対 する凝集剤として期待できる。 1.5.1 温度応答性高分子の凝集剤としての利用に関する既往の研究
O’shea ら[32]は、PNIPAM と PNIPAM にアクリル酸を共重合させたアニオン性 PNIPAM、dimethylaminoethyl methacrylate を共重合させたカチオン性 PNIPAM を
凝集剤とし、シリカ粒子またはアルミナ粒子を 5 wt%含む懸濁液を用いて 25ºC および50ºC における凝集試験を行い、凝集物の沈降速度を調査している。彼ら は、25ºC の場合、シリカ粒子(粒子は負に帯電)を含む懸濁液にはカチオン性 PNIPAM が、アルミナ粒子(粒子は正に帯電)を含む懸濁液にはアニオン性 PNIPAM が最も凝集効果があり、この時の沈降速度は、それぞれ 8 m/s および 4 m/s であることを報告している。一方、50ºC では、PNIPAM を使用した時、シリ カ粒子の場合は11 m/s、アルミナ粒子の場合は 7 m/s と粒子の種類に関わらず、 最も沈降速度が速くなり、PNIPAM の体積収縮が凝集効果を向上させたことを 明らかにしている。Sung Ng ら[33]は、凝集剤として PNIPAM を用い、鉄鉱石や シリカ粒子、アルミナ粒子などを含む0.2 wt%の懸濁液(38 wt%:75 μm 以上、 62 wt%:75 μm 以下)の凝集試験を行い、凝集物の大きさを集束ビーム反射測定 法により調査している。PNIPAM を 25ºC で用いた場合、凝集物は約 50 μm のコ ード長であったが、50ºC 付近では約 100 μm のコード長まで増加し、LCST 以上 にすることで凝集物が大きくなったことを報告している。Gumfekar ら[34]は、分 子量の異なるPNIPAM を用いて 50ºC での 2 wt%のカオリン懸濁液の凝集効果を 調査しており、分子量が大きい程、カオリン凝集物の沈降速度が速く、濁度が低 下したことを報告している。また、彼らは、凝集試験後(50ºC)の凝集物中の水 が濾紙に浸み込む速度を毛細管吸引測定装置を用いて測定しており、PNIPAM の 分子量が大きくなる程、浸み込む速度が速くなることから脱水効果が向上した ことを明らかにしている。 上記のように種々の温度でのシリカやカオリンなどの微粒子に対する温度応 答性高分子の凝集効果が調査されており、凝集物の状態や脱水効果なども報告 されている。しかし、1.1.1 で示したような排水中には、純粋なシリカ粒子やア ルミナ粒子ではなく、より複雑な組成や構造を有し、且つ分散性が非常に高い微
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6 粒子(ゼオライトやベントナイトなどの土壌粒子)が多く存在する[35,36]。従っ て、ベントナイトなどの分散性が非常に高い微粒子をモデルとして凝集効果を 検討する必要がある。また、LCST 以上で PNIPAM を用いた場合、凝集物中の水 分を脱水する事実はGumfekar らの報告から既に分かっているが、濾過法などの 固液分離処理を検討した報告例はないため、形成された凝集物の濾過法への適 用性は不明である。 1.5.2 温度応答性高分子を修飾した吸着材の既往の研究 吸着材などの微粒子表面に温度応答性高分子を修飾することで、LCST 以下で は吸着材として使用し、LCST 以上では温度応答性高分子が収縮して凝集物を形 成するため、濾過法などの固液分離処理への適用も期待される。また、凝集した 吸着材を回収し、吸着質を脱着できれば、再度、使用できると考えられる。さら に、1.4 でも示したように、近年は磁気分離法が注目されていることから、磁性 物質を吸着材に修飾することで磁気分離法へも適用できると推測される。また、 磁気分離法で分離する際も、粒子が大きい程、磁場に引きつけられやすいことが 分かっているため、凝集物を形成することは非常に重要である。 Chang ら[37]や Murakami ら[38]は、吸着サイトとしてアミノ基を固定化させた メソポーラスシリカ表面に PNIPAM を修飾させた複合吸着材を合成し、Cr(IV) やメチルオレンジの温度変化における吸着特性を調査している。また、Peralta ら [39]や Yu ら[40]は、磁性物質であるマグネタイト粒子を核としてメソポーラス シリカを修飾後、温度応答性高分子を修飾した複合体を合成し、薬剤モデルであ るイブプロフェンやリゾチームの温度変化における放出挙動を調査し、さらに 磁化率の強さから複合体を回収可能であることを示唆している。また、Zhu ら [41]は、γ-Fe2O3 を含むメソポーラスシリカ上に温度応答性高分子を修飾した複 合物を合成し、ゲンタマイシンの放出挙動ならびに複合物の磁気回収率を調査 している。 このように磁性や温度応答性高分子を付与した複合体に関する研究が報告さ れており、磁気分離できることも既に証明しているが、凝集効果について議論し ている報告はない。さらに、温度応答性高分子は一般的に使用されているポリア クリルアミド系凝集剤と比較して高価であるため、再利用することが望ましい。 しかし、合成した複合物の再利用性を検討している報告も見当たらない。 1.6 本研究の目的 本研究では、代表的な温度応答性高分子である PNIPAM とカチオン性温度応 答性高分子であるpoly(N,N-dimethylaminoethyl methacrylate)(PDMA)を凝集剤と して用い、高分散性で知られる土壌粒子のベントナイト微粒子の凝集効果を検
7 討し、その凝集メカニズムを考察した。さらに、温度応答性高分子によって形成 された凝集物の濾過法への応用を検討した。次に、吸着材を磁気分離法に適用す るため、吸着材表面に温度応答性高分子と磁性物質を修飾させた複合体の開発 を行い、凝集挙動や磁気分離効果、再利用性を調査し、固液分離の新しい処理方 法を検討した。 1.7 本論文の構成 本論文の構成と概要を以下に示す。 第1 章 序論(本章) 固液分離処理に利用される凝集剤の既往の研究と問題点を述べ、土壌粒子や 吸着材を水から分離するために温度応答性高分子を用いた本研究の目的を述べ ている。 <第 1 部 温度応答性高分子を凝集剤として用いた場合の凝集効果および濾過 への適用性の検討> 第 2 章 PNIPAM を凝集剤として用いたベントナイトの凝集効果と凝集メカニ ズムの検討 温度応答性高分子であるPNIPAM を凝集剤として用い、pH や凝集剤濃度、温 度条件を変えてモデル微粒子であるベントナイトに対する凝集効果を調査した。 また、凝集物中の温度応答性高分子量や凝集物の状態から凝集メカニズムを考 察した。 第 3 章 PDMA を凝集剤として用いたベントナイトの凝集効果と凝集メカニズ ムの検討 カチオン性温度応答性高分子であるPDMA を凝集剤として使用し、第 2 章と 同様にベントナイトの凝集効果および凝集メカニズムを考察した。また、凝集効 果についてPNIPAM と比較した。 第4 章 ベントナイト懸濁液の濾過速度に及ぼす温度応答性高分子の影響 第2、3 章の結果から、ベントナイトの凝集効果が高かった PDMA を凝集剤と して用い、凝集剤濃度、pH、濾過温度の濾過条件を変化させた場合の濾過時間 の変化を調査した。濾過時間の結果からケークの抵抗値を求め、更にケークの状 態から脱水効果を調査することで温度応答性高分子を用いた場合の濾過への適 用性を検討した。
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8 <第 2 部 温度応答性高分子を修飾した新規複合吸着材の凝集と磁気分離法へ の応用> 第 5 章 PNIPAM 修飾ゼオライト複合吸着材の合成と高勾配磁気分離法への適 用性の検討 吸着材であるゼオライトに磁性物質であるマグネタイトおよび PNIPAM を修 飾した複合吸着材を合成し、LCST 以下での吸着特性、ならびに LCST 前後の高 勾配磁気分離法による複合吸着材の除去率を調査し、凝集効果を検討している。 さらに、再利用性も調査した。 第 6 章 PNIPAM 修飾メソポーラスシリカ複合吸着材の合成と磁気分離への適 用性の検討 吸着サイトとしてアミノ基を修飾したメソポーラスシリカにマグネタイトお よび PNIPAM を修飾した複合吸着材を合成し、LCST 前後の吸着特性と吸着に おける種々の解析、ならびに凝集効果や磁石を用いた分離特性を調査し、再利用 性を検討した。 第7 章 総括 上述した調査および検討結果から、温度応答性高分子を凝集剤として有効活 用するためのプロセスを考察する。
9
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13
【第
1 部】
温度応答性高分子を凝集剤として用いた場合の
凝集効果および濾過への適用性の検討
14 第 2 章 PNIPAM を凝集剤として用いたベントナイトの凝集効果と凝集メカニ ズムの検討 2.1 緒言 序論で述べたように、様々な微粒子の凝集剤としてポリアクリルアミド系凝 集剤が使用されているが、凝集物中に多量の水を含むため、凝集後の固液分離法 の一つである濾過に適用することが難しかった。そこで、LCST 以下では粒子に 吸着し、LCST 以上で脱水しながら凝集が期待できる温度応答性高分子を凝集剤 として注目した。本章では、微粒子の中でも凝集しにくいことで知られている土 壌 粒 子 の ベ ン ト ナ イ ト を モ デ ル 粒 子 と し て 、poly(N-isopropylacrylamide) (PNIPAM)を温度応答性高分子として用い、ベントナイトの凝集効果を評価した。 2.1.1 ベントナイト ベントナイトは、掘削液や塗料、製薬、接着剤など、世界中で年間1000 万ト ンも使用されている[1-3]。中でも、工事現場などで利用される掘削液には、ベン トナイト懸濁液がよく使用され、掘削孔から削りくずを除去したり、ドリルの刃 を冷却したり、掘り管(drill pipe)を潤滑させたりするために多量に必要とされる [4,5]。このように、ベントナイト懸濁液が掘削液として使用されるのは膨潤性や 分散性に優れているためである[6,7]。 ベントナイトはアルミナ八面体層をシリカ四面体層で挟んだ層状粘土鉱物で あるモンモリロナイトを主成分とする岩石である[8,9]。このシリカ四面体層中の Si4+の一部がAl3+に、アルミナ八面体層中のAl3+の一部がFe2+,Mg2+などに置換 されており、ベントナイト粒子全体は負に帯電している[1,9]。このようにベント ナイト粒子は負電荷を持つため、アルカリ金属やアルカリ土類金属のような陽 イオン(Na+、Ca2+、Mg2+)を層間に挟み込み電気的にバランスを保っている [1,6,10]。通常、天然ベントナイトの層間には Na+が入っていることが多く、Na 型ベントナイトと呼ばれている。ベントナイトを水中に入れると、水が層間に浸 透してベントナイトは膨潤する性質がある。特にNa 型ベントナイトの場合、Na+ がベントナイト層を引き付ける力が弱いため、水を吸着した際、膨潤度は非常に 大きくなる[1,11]。また、ベントナイト粒子には面(face)と端(edge)があり、face の 部分は通常負に帯電しているが、edge の部分は pH によって正や負に帯電する [1,2]。Tombácz らや Durán らは、ベントナイト懸濁液の pH を変化させたときの、 水溶液中でのベントナイト存在形態の変化を観察している。pH4 では、edge-to-face や egde-to-egde 構造を形成して粒子同士が凝集したカードハウス構造(Card-house)、pH8.5 以上では face-to-face の構造が支配的な密集したバンド構造(Band) を形成すると報告している[10,12]。また、Gray らや Kelessidis らは pH9 以上で
15 はface および edge は負に帯電しており、ベントナイト同士が反発するため分散 すると報告している[13,14]。通常、掘削液として使用されるベントナイト懸濁液 は pH9-12 であるため、ベントナイトは水中で分散状態にある[13]。従って、ベ ントナイト懸濁液からベントナイトと水を分離することは非常に困難である[6]。 2.1.2 ベントナイトの凝集に関する既往の研究 Barbot ら[15]は、濁度が 300 NTU である 1.0 g/L のベントナイト懸濁液に、無 機 凝集 剤として FeCl3、 カチオ ン 性高分 子 凝集剤と して polydiallyldimethyl ammonium chloride をそれぞれ使用して凝集試験を行い、上澄み液の濁度や凝集 物の大きさを比較している。彼らは、5.2 ppm の FeCl3濃度では、上澄み液濁度 が 11 NTU であるのに対し、カチオン性高分子ではわずか 0.78 ppm の濃度で 3 NTU まで濁度が減少したため、カチオン性高分子凝集剤がベントナイト懸濁液 に効果的であることを報告している。また、ベントナイト凝集物サイズを検討す るため、30 μm のベントナイト粒子を含む 1.0 g/L の懸濁液を用いて、0.15 ppm のカチオン性高分子濃度で凝集物サイズを測定したところ、時間の経過と共に 凝集物が大きくなり 10 min 後には 400-500 μm まで大きくなることを示した。 Roussy ら[16]は、アミノ基を有する天然高分子であるキトサン(分子量: 10-20 万) を凝集剤として用い、pH5 と pH7 に調整された 2 wt%のベントナイト懸濁液の 凝集効果を調査し、pH5 の懸濁液の方が pH7 よりも濁度が低くなったことを報 告している。これはキトサンがpKa を 6.2-6.4 に持ち、pH5 ではキトサン中のア ミノ基が正に帯電するため、負に帯電したベントナイトと吸着したことで凝集 効果が高くなったと考察している。さらに、彼らは、様々なイオン種を含む水道 水(Ca2+: 40 ppm, Mg2+: 20 ppm, Na+: 24 ppm, etc.)を用いた場合、イオン種が入 っていない水よりもキトサンでの凝集効果がより高くなることも報告している。 これは、種々のイオン種がベントナイト層間に入り、層を凝集したためであると 考察している。Shaikh ら[1]は、分子量や電荷密度の異なるカチオン性、ノニオ ン性、アニオン性のポリアクリルアミド(PAM)を用いて懸濁液中のベントナイ ト凝集への影響を調査している。0.001 M の電解質を含む pH9、0.15%のベント ナイト懸濁液(373 NTU)にアニオン性 PAM(35 ppm)を凝集剤として用いた 場合、濁度は340 NTU と殆ど変化しなかったことから、表面が負に帯電したベ ントナイト粒子にアニオン性PAM は凝集効果を示さないことを示している。一 方、おおよそ同じ分子量のカチオン性PAM(40 ppm)を凝集剤として用い、同 条件のベントナイト懸濁液の凝集試験を行ったところ、濁度は4 NTU 未満に減 少し、カチオン性PAM がベントナイトの凝集に非常に高い効果があることを報 告している。また、分子量が大きく、電荷密度が高いカチオン性PAM ほど、低 濃度でも濁度が低くなることを示している。
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しかし、PNIPAM や poly(N,N-(dimethylamino)ethyl methacrylate) (PDMA)のよう な温度応答性高分子を凝集剤として用い、種々の条件下でのベントナイトの凝 集挙動を系統的に検討した報告例はなく、また、温度応答性高分子によるベント ナイト粒子の凝集メカニズムも明らかにされていない。 2.1.3 本章の目的 本章では、代表的な温度応答性高分子の一つであるPNIPAM(Fig.2-1)を凝集 剤として用い、ベントナイトに対する凝集効果を検討するため、種々の条件 (PNIPAM 分子量、懸濁液の温度や pH)下での沈降試験における沈降速度や濁 度の測定、ならびにそこで生じた凝集物の顕微鏡観察を行った。加えて、凝集物 中で温度応答性高分子がどのように存在しているのかを凝集物中の高分子量や ベントナイト層間距離(d(001))、凝集物の表面状態から評価し、これらの結果か ら、PNIPAM によるベントナイトの凝集メカニズムを検討することを目的とし た。
17 2.2 実験方法 2.2.1 試料および試薬 実験には 75 μm 以下に粉砕した群馬県産の天然ベントナイトを使用した。 PNIPAM を合成するためのモノマーとして和光純薬 (株)で購入した N-isopropylacrylamide(NIPAM)を使用した。PNIPAM を合成するための重合開始 剤 と し て 過 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム (APS ) を 、 重 合 促 進 剤 と し て N,N,N’,N’-tetramethylethlenediamine(TMEDA)をそれぞれ和光純薬(株)とナカライテスク (株)から購入した。 2.2.2 ベントナイトのキャラクタリゼーション 2.2.2.1 化学組成 ベントナイトの化学組成はX 線蛍光分析(XRF)(Shimadzu、XRF-1700(4kW)) で測定された。前処理として、ベントナイトを100ºC で 1 時間乾燥させ、30 t で プレスして成形した。 2.2.2.2 粒度分布 ベントナイトの粒度分布は、適量のベントナイトをエタノールに分散させ、レ
ーザー回折・散乱法(Microtrac BEL、MT3300EX II)によって測定された。
2.2.2.3 構造特性および面間隔 ベントナイト層間距離(d(001))を調査するため、40 kV、40 mA、Cu-Kα 線(λ =0.154 nm)の条件で X 線回折(XRD)(Rigaku、Ultima IV)によって測定され た。ベントナイトは2º/min、0.02º 間隔で 2-25º まで走査された。ベントナイトの d(001)は以下に示す Bragg の式によって算出された。 𝑛𝜆 = 2𝑑(001)sin𝜃 (2-1) ここでn は正の整数(n=1)であり、θ は入射角である。 2.2.2.4 ゼータ電位測定 ベントナイトのゼータ電位は、50 mL の蒸留水にベントナイト 0.2 g を加えた 懸濁液を用い、25ºC で ELSZ-1000ZS(Ohtsuka)によって測定された。このとき のベントナイト懸濁液はpH9.3 であった。また、pH2-9 のベントナイト懸濁液の ゼータ電位も測定するために、5 wt%の HCl 水溶液をベントナイト懸濁液に加 え、12 h 撹拌したものも調製した。なお、懸濁液の pH は pH メーター(HORIBA、 D-53)で測定された。
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2.2.3 PNIPAM の合成
PNIPAM はラジカル重合法を用いて合成された [17-19]。二口セパラブルフラ
スコ内に2 g の NIPAM モノマーと 100 mL の蒸留水を入れ、溶存酸素を除去す
るため、0.3 L/min で N2バブリングを30 min 行った。30 min 後、10 min 超音波
処理によって溶存酸素を除去した10 mL の APS 水溶液(5、10、30 mg/mL)を 開始剤として加えて10 min、N2バブリングしながら撹拌した。更に10 min 後、 同様の方法で溶存酸素を除去した0.02 g/mL の TMEDA 水溶液 10 mL を促進剤 として加え4 h 撹拌した。4 h 撹拌後、この水溶液をセルロース透析膜(孔径: 50Å)に入れ、12 h ずつ 4 回透析を行った。透析後、PNIPAM 水溶液は 60ºC の 乾燥機で2 日間乾燥された。 2.2.4 PNIPAM のキャラクタリゼーション 2.2.4.1 FT-IR スペクトル測定 合成した PNIPAM の IR スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) (Shimadzu、IRAffinity-1)を用いて透過法によって測定した。測定条件は、波長 範囲4000-600 cm-1、分解能2 cm-1、積算回数 32 回とした。このとき、99.5 mg の KBr に 10 g/L の PNIPAM 水溶液を 20 μL 滴下し、60ºC の乾燥機で一晩乾燥させ た試料を用いてサンプルペレットを作製した。 2.2.4.2 GPC による分子量測定 N,N-ジメチルホルムアミドを溶媒として 0.3 wt%の PNIPAM 溶液を調製し、0.2 μm のフィルターで濾過後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(Wyatt, Optilab T-rEX)により PNIPAM の分子量を測定した。 2.2.4.3 応答温度の測定 10 g/L の PNIPAM 水溶液を調製し、1 mL をスクリュー管瓶に入れ、乾燥機を 用いて15 min ごとに 1ºC ずつ昇温させ、水溶液が白濁した温度を下限臨界溶液 温度(LCST)とした。 2.2.5 PNIPAM を凝集剤として用いた沈降試験 ベントナイト0.25 g と蒸留水 40 mL を 50 mL のメスシリンダーに入れ、ベン トナイト粒子が蒸留水中に完全に分散するまで激しく振盪した。振盪後、5 wt% のHCl 水溶液を用いて pH を 8、5、3 に調整し、手で上下逆さまにして 15 回振 盪した。なお、pH 調整をしない場合のベントナイト懸濁液は pH11 であった。 このpH 調整懸濁液に 100-800 ppm の濃度になるよう PNIPAM を加えた後、蒸留 水で50 mL の標線までメスアップし、上記と同様の方法で 15 回振盪した。その
19 後、ベントナイト懸濁液をメスシリンダーごと 25ºC または 50ºC に設定した恒 温槽に入れ、懸濁液が任意の温度になるまで15 min 保持した。15 min 後、再び 上記と同様の方法で振盪し、25ºC または 50ºC で 30 min 沈降体積の変化を観察 した。ここで、ベントナイト凝集物が沈降する際、上澄み液と沈降物の境界面が 明確に観察でき、沈降体積が減少していく状態を「沈降」とした。一方、上澄み 液と沈降物の境界面が観察できず、且つメスシリンダーの底にベントナイト粒 子が積もり、沈降体積が増加する状態を「堆積」と定義し、沈降とは区別した。 沈降試験30 min 後、メスシリンダーの上部 20 mL の位置から 10 mL の上澄み 液を採取し、上澄み液の濁度を濁度計(Thermo Scientific、TN-100)で、少なく とも 3 回測定し、その平均値を求めた。この濁度計は散乱光測定方式を用いて
いるため、測定結果は散乱比濁度法濁度単位(Nephelometric Turbidity Unit:NTU)
で与えられる。この時に測定された濁度から、上澄み液中の浮遊ベントナイト量 (mg/L)を求めるために、100、500、1000、2000 mg-bentonite /L の懸濁液を調製 して検量線を作成した。上澄み液中の浮遊ベントナイト量からベントナイト浮 遊率を算出した。 2.2.6 凝集状態の評価 PNIPAM の添加によって形成された凝集物の形態を調査するため、沈降試験 と同濃度の懸濁液を調製し、生成したフロックを光学顕微鏡(3R-MSBTVTY、3R
Solution Corp.)を用いて観察した。また、熱重量分析(TG)(Shimadzu、TGA-50)
を用いて、ベントナイト凝集物に吸着しているPNIPAM 量を測定した。TG は、
空気雰囲気下、10ºC/min、150ºC まで昇温後、10 min 間保持し、10ºC/min で 900ºC
までの昇温条件で測定した。凝集物中の温度応答性高分子量は、150ºC で保持後 の重量を100 wt%とし、凝集物の重量減少率からベントナイトのみの重量減少率 を引いて算出された。 2.2.7 凝集物の構造評価 2.2.5 で上澄み液を採取した後、全ての上澄み液を除去し、残った凝集物を孔 径1 μm の濾紙(Φ90 mm)を用いて濾過し、濾紙上に残った凝集物を室温で 24 h 乾燥することで回収した。この乾燥した凝集物の XRD(Rigaku、UltimaIV)や 走査型電子顕微鏡(SEM)(Hitachi、S-4500)測定を行うことで、凝集物のベン トナイト層間距離(d(001))の算出および凝集物の表面状態の観察を行った。な お、XRD は 2.2.2.3 と同じ条件で測定され、SEM は加速電圧 20 kV で測定され た。
Akita University
20
2.3 結果と考察
2.3.1 ベントナイトのキャラクタリゼーション
ベントナイトの化学分析を行った結果、代表的な酸化物(wt%)は SiO2 (73.45)、
Al2O3 (13.91) 、 Na2O (3.45) 、
MgO (2.81)、CaO (2.58)、Fe2O3
(2.41)、K2O (1.12)、TiO2 (0.22)、 MnO (0.05)であった。また、ベ ントナイトの粒度分布を測定 した結果、粒径は1 から 60 μm の範囲にあり、約 10 μm が最 頻 値 で あ る こ と が 分 か っ た (Fig. 2-2)。 pH に対するベントナイトの ゼータ電位変化をFig.2-3 に示 す。pH 調整をしなかった場合 (pH9.3)、ベントナイトのゼ ータ電位は、約-33 mV であっ た。Fig.2-3 からは、pH の低下 に伴い、ゼータ電位が単調に 増加していることも分かる。 これは、2.1.1 でも述べたよう にpH が低い場合、ベントナイ トの edge 部分に H+が吸着す るためである[2,9]。しかし、 pH2 という低 pH 条件でもベ ントナイトのゼータ電位が-15 mV であるということは、 ベントナイトは依然として負 に帯電していることを示して いる。 2.3.2 PNIPAM のキャラクタリゼーション
PNIPAM の FT-IR 結果を Fig.2-4 に示す。Fig.2-4 から、6 本の注目すべきピー
クが確認された。C-H 伸縮振動が 2970、2938、2875 cm−1、アミド基由来のC=O
伸縮振動が1640 cm−1、アミド基由来のN-H 変角振動が 1540 cm−1、C-H の変角
Fig.2-2 Particle size distribution of a natural bentonite.
Fig.2-3 Change in zeta potential of bentonite suspension with pH.
21
振動が1425 cm−1のピークに帰属した[20, 21]。これらのピークが現れたことは、
PNIPAM が合成されていることを示している。
また、GPC で測定した PNIPAM の分子量および LCST を Table 2-1 に示す。 Table 2-1 Molecular weight and LCST of PNIPAM.
Polymer APS concentration (mg/mL) Mn*1 (g/mol) Mw*2 (g/mol) LCST (ºC) No.1 PNIPAM (PN230) 5 230000 1420000 32 No.2 PNIPAM (PN190) 10 190000 960000 32 No.3 PNIPAM (PN95) 30 95000 430000 32 No.4 PNIPAM (PN100) 30 100000 450000 32
*1 Mn : Number average molecular weight
*2 Mw : Weight average molecular weight
Fig.2-4 FT-IR spectra of PNIPAM prepared
with (a) 5 mg/mL, (b) 10 mg/mL, (c) 30 mg/mL of APS aqueous solution.
22 APS 水溶液濃度を増加させると、PNIPAM の分子量が小さくなることが分かっ た。以降、No.1-4 の PNIPAM を PN230、PN190、PN95、PN100 と記載する。ま た、PNIPAM の LCST は、分子量に関係なく 32ºC であった。 2.3.3 PNIPAM の凝集効果の検討 2.3.3.1 分子量の影響 (1) 沈降体積および沈降速度 Fig.2-5 に PN230 と PN95 の濃度を 600 ppm にした場合の 25ºC と 50ºC におけ
る沈降試験の様子を示す。Fig.2-5 の上部の写真(a)-(d)は振盪直後(0 min)の写真
であり、下部の写真(e)-(h)は沈降試験 30 min 後の写真である。Fig.2-5 (a-d)を見
ると、いずれの場合もベントナイト粒子が良く分散していることが分かる。 Fig.2-5 (e,f)から、2Fig.2-5ºC で沈降試験を行った場合、一部のベントナイト粒子はメスシリ ンダー底部に堆積していたが[22]、大部分のベントナイト粒子は懸濁液中に分散 していることが分かった。また、25ºC では、PN230、PN190、PN95 を 800 ppm になるように加えても沈降を確認できなかった。このことからPNIPAM は、LCST 以下でベントナイトを凝集しないことが分かった。一方、Fig.2-5 (g, h)から 50ºC では、フロックの形成による沈降物が確認され、沈降物と上澄み液との境界面も
Fig.2-5 Photographs of sedimentation test with 600 ppm of (a, e) PN230 and (b, f) PN95 at 25ºC, (c, g) PN230 and (d, h) PN95 at 50ºC.
23 見られた。従って、PNIPAM は LCST 以上でベントナイトを凝集することが分か った。 Fig.2-6 に 50ºC での沈降体積の経時変化を示す。PNIPAM の分子量が増加する と、低濃度でもベントナイトは沈降し、その濃度はPN95、PN190、PN230 でそ れぞれ500、400、100 ppm であった。 Fig.2-7 に 50ºC で各濃度の PNIPAM を使用した場合のベントナイトの沈降速 度の結果を示す。なお、沈降速度は、Fig.2-6 の沈降体積が 40 mL に到達した時 点の接線の傾きから算出した。 Fig.2-7 より、PNIPAM 濃度を 600-800 ppm にした場合、最も 分子量の大きい PN230 の沈降 速度が最も速いことが分かっ た。また、PN230 と PN190 で は、PNIPAM 濃度が 600 ppm 以 上の場合、濃度の増加に伴い、 沈降速度も増加傾向を示した 一方、200-500 ppm の濃度の場 合 で は 、 沈 降 速 度 は 約 5-6 mL/min であり、大きな変化は なかった。また、PN95 を用い た場合、前述のように500 ppm 以上の濃度にすると、ベントナ イ ト は 沈 降 し た が 、500-800 ppm にしても、沈降速度は約 2 mL/min であり、殆ど同じであ った。このような沈降速度の変 化が生じた理由を調べるため、 顕微鏡によりベントナイト凝 集物の状態を調べ、その結果を Fig.2-8 に示す。Fig.2-8 から、 PN230 を用いた場合、PN100 よ りも凝集物が大きくなったこ とが分かった。また、PN230 の 場合、濃度の増加に伴い、凝集 物は約1.5 mm まで大きくなっ た。Fig.2-7 に示した沈降速度
Fig.2-6 Change in sedimentation volume at 50ºC for 100 - 800 ppm of (a) PN230, (b) PN190 and (c) PN95.
24 は、上澄み液と沈降物の境界の速度(終端速度)を示しており、この速度は、ス トークスの法則より凝集物の大きさと密度に比例することが知られている[23]。 そのため、上澄み液と沈降物の境界の凝集物は、沈降している凝集物の中で最も 小さいと考えられ、Fig.2-8 に示した凝集物よりも小さいことが予想される。し かし、凝集物の密度が殆ど同じだと仮定すると、Fig.2-7 のように PNIPAM 濃度 の増加と共に沈降速度が速くなっていることから、境界面の凝集物も大きくな っていると考えられる。
Fig.2-9 に 50ºC、30 min 後の種々の PNIPAM を用いた場合における上澄み液中
のベントナイト浮遊率を示す。PN230 の濃度を 100 ppm にした時、ベントナイ ト浮遊率は7 wt%であったが、400 ppm 以上の濃度にすると 1 wt%以下まで減少 した。一方、PN95 を使用した場合、800 ppm の濃度にしてもベントナイト浮遊 率は3 wt%よりも低くなることはなかった。これらの結果から、分子量が大きい ほど、または濃度が増加するほど沈降速度が速くなり、ベントナイト浮遊率も減 少することが分かった。
Fig.2-7 Sedimentation rate of bentonite suspensions containing PNIPAM with various molecular weights at 50ºC.
25
Fig.2-8 Photographs of bentonite suspension with (a) 100 ppm, (b) 500 ppm, (c) 800 ppm of PN230 and with (d) 100 ppm, (e) 500 ppm, (f) 800 ppm of PN100
at 50ºC. The scale bars in the photographs are 1 mm.
Fig.2-9 Ratio of floating bentonite in supernatant solution for the suspensions containing PNIPAM with various molecular weights at 50ºC.
26
(2) ベントナイト上の PNIPAM 存在状態
沈降試験(50ºC)30 min 後のベントナイト濾過物の SEM 画像を Fig.2-10 に示
す。Fig.2-10 (a)のベントナイトのみの表面構造と比較すると、Fig.2-10 (b-d)の PNIPAM を使用した場合、ベントナイト表面は、滑らかになっていることが確認 できる。また、PN230 を用いた場合の Fig.2-10 (g, h)を比較すると濃度が高いほ ど薄い膜が明瞭に見える。一方、分子量が異なる場合、同じ800 ppm でも PN95 (Fig.2-10 (f))では薄い膜が見られなかった。この結果から、PNIPAM はベント ナイト表面を覆うように存在しており、分子量が大きいほど被覆量は多いこと が分かった。 Fig.2-11 に沈降試験後のベントナイト濾過物の XRD パターン、Fig.2-12 にベ ントナイト層間距離(d(001))と PNIPAM 濃度の関係を示す。ベントナイトの (001)面の回折線は、PNIPAM 無添加の場合、2θ = 6.9º(d(001) = 1.27 nm)に現れ たが、PNIPAM 濃度の増加に伴い、2θ = 5.5º から 4.4º(d(001) = 1.6 nm から 2.0 nm)へとシフトしていることが分かった。この傾向は、PNIPAM の分子量に関 係なく殆ど同じであった。このことから、分子量によらず PNIPAM 鎖の一部は ベントナイト層間に入り込んでベントナイトに吸着していると考えられる[22, 24]。また、PNIPAM 濃度の増加に伴い、回折線強度が高くなっており、これら の結果から、ベントナイトは剥離することなく、積層構造を維持していると考え られる。
Fig.2-10 SEM photographs of bentonite (a,e) without PNIPAM, (b,f) with 800 ppm of PN95, (c,g) with 100 ppm of PN230 and (d,h) with 800 ppm of PN230 at 50ºC. The scale bars in the photographs (a), (b)-(d), (e)-(h) are 6, 10, 3 μm, respectively.
27
(3) 凝集メカニズム
上記の結果から、凝集剤として PNIPAM を用いた場合のベントナイトの凝集
メカニズムをFig.2-13 に示すように考察した。Fig.2-10 の SEM 画像や Fig.2-11、
Fig.2-12 の XRD パターンの結果から、PNIPAM はベントナイト表面および層間 に吸着していることが確認された。これは、PNIPAM がベントナイトとの間で水 素結合を形成したためであると考えられる。この水素結合は、PNIPAM 側鎖にあ るアミド基の水素原子とベントナイト表面上の Si-O の酸素原子、および PNIPAM 側鎖のアミド基の酸素原子と、ベントナイト層の端部にある水酸基の 水素原子との間で形成されると考えられる[25-27]。一方、PNIPAM は LCST 以上 で収縮して疎水性を示すため、ベントナイト粒子に吸着した PNIPAM の疎水性 相互作用により、粒子同士が集まり大きな凝集物を形成すると推測される[28]。 また、分子量の大きい PNIPAM を用いた場合、PNIPAM 一分子当たりの架橋し たベントナイト数は増加すると考えられる。その結果、分子量の小さいPNIPAM を用いた場合よりも凝集物は粗大化し、沈降速度が速くなったと考えられる。こ Fig.2-11 XRD patterns of bentonite, and bentonite residues after sedimentation test
with 100 – 800 ppm of (a) PN230, (b) PN190 and (c) PN95 at 50ºC.
28 れはFig.2-7、Fig.2-8 の結果と 一致する。一方、分子量が小さ い場合、ベントナイト同士を 架橋することが困難であった た め 、Fig.2-6 に 示す ように 100-400 ppm の濃度では沈降 しなかったと考えられる。し かし、Fig.2-8、Fig.2-9 に示すよ う に 、 分 子 量 が 小 さ く て も PNIPAM 濃度を増加させると、 凝集物が大きくなり、且つ濁 度が低下した。このことから、 高濃度の場合には分子量の小 さい PNIPAM 同士が分子間力 などの架橋により、分子量の 大きい PNIPAM と同じ役割を したと考えられる。その結果、Fig.2-6 に示すように、PN95 でも 500 ppm 以上の 濃度にすることで沈降が観察されたと考えられる。 Fig.2-12 Change in d(001) with PNIPAM concentration.
29 2.3.3.2 pH の影響 (1) 沈降速度 Fig.2-14 に種々の pH で PN100 を用いた場合のベントナイトの沈降速度(終端 速度)を示す。沈降速度はFig.2-7 と同様に沈降体積が 40 mL に到達した時点の 接線の傾きから算出した。50ºC の場合、pH が低くなるに伴い、沈降速度は速く なった。しかし、PN100 の濃度を 100 ppm 以上にしても沈降速度はあまり変わ らなかった。これは Fig.2-7 の場合と比較して PNIPAM の分子量が小さいため、 凝集物サイズが変化しなかったと考えられる。一方、25ºC の場合、pH8 では沈 降が確認されなかったが、pH3 および 5 では、PN100 の濃度が 50 および 100 ppm 以上で沈降が確認された。 pH を変化させた場合のベントナイト凝集物の顕微鏡観察結果を Fig.2-15 に示 す。50ºC で PN100 を添加しなかった場合、pH5 以上では凝集物は確認されなか った(Fig.2-15 (a)-(c))が、pH3 ではベントナイトは約 0.3 mm の大きさに凝集し た(Fig.2-15 (d))。また、100 ppm の濃度になるように PN100 を加えた場合、50ºC の時、pH5 ではベントナイト凝集物は大きくなり(Fig.2-15 (k))、pH3 では約 0.8 mm までベントナイト凝集物は大きくなった(Fig.2-15 (l))。この観察結果から、 pH を低くすることでベントナイトが凝集し、更に PN100 を加えることでより大 きな凝集物が形成できることが分かった。一方、25ºC では、PN100 を添加しな
い場合(Fig.2-15 (a)-(d))と比較して pH5 以下の条件(Fig.2-15 (g)-(h))で凝集物
がわずかに大きくなったが、pH8 以上では殆ど変わらなかった(Fig.2-15 (e)-(f))。
このため、Fig.2-14 に示すように、pH5 以下では一部の PN100 の濃度条件でベン
Fig.2-14 Relationship between sedimentation rate and concentration of PN100 at 25ºC and 50ºC.