第 7 章 総括
7.2 温度応答性高分子を利用した水処理に関する将来の展望
第 2 から 6 章までの結果から、温度応答性高分子を凝集剤として用いること で高分散性のベントナイトに凝集効果があること、吸着材に修飾することで吸 着材自身が凝集する効果を有すること、磁性を持たせることで磁気分離が容易 になり、再利用も可能であることが分かった。本研究では、得られた知見から温 度応答性高分子を凝集剤として活かした水処理への利用法を探索した。
7.2.1 温度応答性高分子の凝集剤としての利用
本研究の実験結果から、温度応答性高分子であるPNIPAMやPDMAを凝集剤
121
としてベントナイトなどの高い分散性を有する粒子にも使用できることが分か った。また、温度や分子量、pHの調整によって凝集効果が向上すること、形成 された凝集物中の含水量は少ないことが分かった。そのため、凝集沈殿により形 成された凝集物は、脱水の処理工程を無くす、または脱水にかかる消費エネルギ ーを抑制することが出来ると考えられる。
しかし、PNIPAMやPDMA の温度応答性高分子を凝集剤として用いた場合、
これらの高分子は自然では分解されないため、廃棄処理する必要がある。そこで、
天然高分子などの環境へ負荷を与えない温度応答性高分子に替えることで廃棄 処理の工程を減らすことも可能となる。このような温度応答性天然高分子には ヒドロキシプロピルセルロースなどがあるが、本研究では温度応答性天然高分 子を用いた凝集効果への議論をしていないため、今後の検討課題となる。しかし、
脱水工程や廃棄処理工程を減らすことが可能であるため、コストを抑えること ができ、環境にも優しい処理方法になると考えられる。
7.2.2 温度応答性高分子を修飾した新規複合吸着材の利用
第2部に示した新規複合吸着材の吸着、凝集、磁気分離の結果から、目的の 吸着質を吸着後、昇温によって凝集させ、磁気分離によって除去できることが 分かった。今回の研究では検討していないが、吸着した吸着質を吸着材から脱 着することができれば、吸着材は何度も使用することができ、回収した吸着質 も再利用することが可能となるため、吸着材を交換する工程を減らすことが出 来る。さらに、種々の吸着材にマグネタイトや温度応答性高分子を修飾するこ とが出来れば、様々な吸着質の吸着ができるため、幅広い用途への応用が期待 される。
このことから次のような一連の水処理プロセスが考えられる(Fig.7-1)。排水 中の目的吸着質を複合吸着材によって除去した後、昇温して吸着材同士を凝集 させる。その後、凝集物を含んだ廃水は、磁場内を通過することで分離除去さ れ、処理された水はそのまま排水される。この分離された複合吸着材は強酸や 強アルカリ水溶液で脱着処理が行われ、その後、磁気分離により回収し、再び 吸着材として使用できると考えられる。このように何度も吸着材を再利用する ことができ、処理水をそのまま排水することが出来るため、低コストで環境に 負荷のかからない水処理プロセスとなる。
Akita University
122
Fig.7-1 Schematic of new water treatment process using temperature-responsive composite adsorbent.