Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
パミドロネートが奏功した瀰漫性硬化性下顎骨骨髄炎の
1例
Author(s)
角屋, 貴則; 金, 亨俊; 大平, 貴士; 吉田, 秀児; 齊藤,
シオン; 八木澤, 潤子; 野本, 俊太郎; 市川, 秀樹; 伊
藤, 亜希; 田中, 潤一
Journal
歯科学報, 112(2): 169-169
URL
http://hdl.handle.net/10130/2723
Right
目的:瀰漫性硬化性下顎骨骨髄炎は骨髄の硬化性変 化を特徴とし,時に急性転化しながら慢性経過をた どる難治性疾患で,最近では滑膜炎,痤瘡,膿疱 症,骨肥厚症,骨炎を特徴とする SAPHO 症候群 の1症状として扱われることもある。今回我々は, SAPHO 症候群を伴う本疾患患者に対し,パミドロ ネートを応用して良好な結果を得たので,その概要 を報告する。 症例:患者は64歳の男性で,近歯科医院で右下3の 根管治療中に右側下顎部の腫脹および疼痛を自覚 し,某歯科大学口腔外科を受診。慢性化膿性骨髄炎 の診断の下,原因歯の抜歯とともに骨髄の掻爬を施 行され,抗菌薬の投与を受けた。しかし,腫脹と疼 痛を繰り返すため NSAIDs に次いでステロイドを 投与されていたが,その後の加療を依頼され都立大 塚病院口腔科紹介受診となった。初診時の顔貌所見 として,右側下顎部の腫脹および疼痛がみられ,画 像所見では CT で下顎骨の腫大や骨髄硬化像が,ま た Tc 骨シンチグラフィーでは右側下顎部と胸鎖関 節に異常集積を認めた。さらに,足底部に膿疱を認 めたためリウマチ膠原病科に対診したところ,SA-PHO 症候群と診断された。下顎骨骨髄炎に対し, 病態確定の目的で骨髄の生検と細菌培養および抜歯 術を施行し,最終診断として SAPHO 症候群に伴 う瀰漫性硬化性下顎骨骨髄炎と診断した。本疾患に 対し,当初は抗菌薬投与および徹底的な Decortica-tion を計画していたが,リウマチ膠原病科でステロ イドの減量中に激烈な疼痛と腫脹が再燃したためパ ミドロネートを使用したところ,疼痛は速やかに消 失した。 考察:瀰漫性硬化性下顎骨骨髄炎は線維骨の増加に よる硬化性変化を特徴とする疾患で,これまで様々 な治療が行われてきたものの難治性とされている。 し か し,2001年 Soubrier ら が 本 疾 患 に パ ミ ド ロ ネートを使用し症状の緩解を認めたと報告して以 来,有効な治療法として注目されている。パミドロ ネートはビスホスフォネート製剤のひとつで,強い 骨吸収抑制作用により悪性腫瘍による高カルシウム 血症の治療薬として知られているが,破骨細胞のア ポトーシスを誘導することにより骨代謝を抑え線維 性の骨変化を抑制し,本疾患の症状が緩解すると考 えられている。しかし,パミドロネートの使用後38 ヶ月で症状が再燃したとの報告もあるため,副作用 としての BRONJ を含め,長期間の経過観察が必要 であると考えられた。 目的:出血は本邦の麻酔関連偶発症例報告でも危機 的偶発症発生の最大の原因である。それらを回避 し,適切な管理を行なうためには連続的に循環動態 や貧血度を評価する必要がある。Masimo 社製 Rain-bowⓇ SET パルスオキ シ メ ー タ(Radical-7Ⓡ )は, 現在リアルタイムに非侵襲的に貧血度(全ヘモグロ ビン値:SpHbⓇ )をモニタリング可能な唯一の機器 である。今回,出血が予想される症例に対し,SpHb を参考にして術中の出血量を評価し迅速な輸血管理 が行えた1例を報告する。 症例:70歳の女性。身長147cm,体重46kg。右腋窩 の悪性黒色腫の第四腰椎転移性骨腫瘍に対し,腫瘍 切除術と後方固定術を予定した。術中大量出血が予 想されたため,Radical-7Ⓡ,動脈圧心拍出量測定モ ニタで循環動態をモニタリングし,全身麻酔で行っ た。執刀前の SpHb は8.9g/dL で動脈血ガス分析に よるヘモグロビン(Hb)値は9.5g/dL であった。 手 術 操 作 に 伴 い 出 血 量 が1200g を 超 え た 時 点 の SpHb は7.4g/dL で Hb は6.6g/dL であったため輸 血を開始した。術中は,迅速な輸液と輸血投与に よってカテコラミンなどの昇圧剤を投与しなくても バイタルサインは安定していた。最終的に,出血量 は3,160g で総輸血量は照射濃厚赤血球製剤 LR8単 位と新鮮凍結血漿 LR6 単位,総輸液量は2,100ml で手術終了時の SpHb は9.1g/dL で Hb は9.3g/dL であった。 考察:SpHb の精度として,Hb と2.0g/dL 前後の 差があると報告されているが,本症例では SpHb と Hb との最大差は0.8g/dL であった。また,出血前 は SpHb の方が低値であったが,出血量が増加して からは Hb の方が低値を示し,輸血開始して SpHb が8.0g/dL 以上に回復した後は,SpHb の方が再び 低値を示したことから,SpHb と Hb の差に一定の 傾向がなかった。しかし,循環動態を評価する上で Hb 値は不可欠であり,Hb 値を非侵襲的連続モニ タリングできる Radical-7Ⓡ は理想的なモニタと言え る。本症例では,術中出血量の増加とともに SpHb トレンドも低下し,SpHb が8.0g/dL 以下になった 時点を輸血開始の指標と考え循環管理を行った。 SpHb トレンドは輸血開始を考慮する上で有用な情 報と考える。