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『鈴鹿本今昔物語』巻29の研究 (1) : 第1話~第7話

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(1)

『鈴鹿本今昔物語集』巻 2

9の 研 究 (1

)

一第1話 第 7話一

伊 賀 北 斗

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一一 Thefirst storγthrough the seventh story一一

Hokuto Iga 本論文は、田口和夫教授を中心とした自主ゼミである、 説話ゼミ(旧今昔ゼミ)の活動の報告である。『鈴鹿本今 昔物語集』の影印を読みながら、従来の諸説を確認しつ つ、鈴鹿本の字形・墨色・虫損などから、新たな問題点 を発見・考察し、また解釈においても従来の説をすすめ たところがある。 なお、本論は目録編を含め、『鈴鹿本今昔物語集』の第 1話から第7話までを範囲としている。 This article is a report on the activity of the “Setsuwa"

seminar led by Professor Kazuo Taguchi. The seminar

investigated the “Suzukabon Konjaku Monogatari Shu". closely examining and reconsidering current theories pertaining to this manuscript. The seminar carried out research into the form of the characters. the color of the ink. and parts destroyed by insects. Also we looked into the current scholarly interpretations of the text itself. The article includes the contents and covers the first story through the seventh story of“Suzukabon Konjaku Monogatari Shu". -160一 (1)

(2)

はじめに 説話ゼミ(旧今昔ゼミ)は毎週木曜日の放課後に おこなう、田口和夫教授を中心とした自主ゼミであ る。活動内容は、﹃鈴鹿本今昔物語集﹄の影印を読み ながら、従来の諸説を確認しつつ、鈴鹿本の字形・ 墨色・虫損などから新たな問題点を発見・考察し、 併せて解釈においても従来の説をすすめることを目 的としている。 本論文では、日本古典文学大系﹃今昔物語集五﹄ (以下、旧大系と略す)以下、日本古典文学全集﹃今 昔物語集四﹄(以下、旧全集と略す)、新潮日本古典 集 成 ﹃ 今 昔 物 語 集 本 朝 世 俗 部 四 ﹄ ( 以 下 、 新 潮 と 略 す ) 、 新日本古典文学大系﹃今昔物語集五﹄(以下、新大系 と略す)、新編日本古典文学全集﹃今昔物語集四﹄(以 下、新全集と略す)の注を参照した。なお、巻二十 九を研究していた当時、新全集は出版以前であった が、今回の稿では問題点のみ参照している。 まず﹁目録編﹂として、﹁目録﹂のうち問題点が あるものを取り上げ、次に﹁本文編﹂として、本文 の問題点を考察する。記述の手順は、問題部分につ いての鈴鹿本の所在(丁と表裏)と問題箇所

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1

1

を 付す)を含む文を挙げ、鈴鹿本と表記の形式を同じ くする旧大系の所在を()の中に記す。次に︹各 説︺として参照資料の注のうち注目すべきものを挙 げ、︹考説︺として考えたことを記す。なお、本文編 は問題を含む説話の標題と要約をはじめに載せた。 目録編 QdlJ F b つ 臼 平貞盛朝臣於法師家刺制調第 鈴鹿本巻目・ 2 丁表 五(問頁上段 5 行 ) ︹ 各 説 ︺

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旧大系・・﹁平貞盛朝臣於法師家射取語第 五 ﹂ 注 記 な し 。 ︹考説︺本文の標題では﹁平貞盛朝臣於法師家射取 盗人語第五﹂とあり、目録は﹁盗人﹂の表 記を欠く。詳細は本文編第五話の部分で論 ず る 。

(3)

撮津園樹園剖盗鐘語第十七 鈴鹿本巻却・ 2 丁裏 (印頁上段口行) ︹ 各 説 ︺

O

旧大系・:﹁撮津園来小屋寺盗鐘語第十 七﹂*を付し、来と屋の聞に﹁小﹂を補う。 注記は特になし。

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旧 全 集 : ・ ﹁ 掻 津 園 来 屋 寺盗鐘語第十七﹂注記なし。

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新 潮 : ・ 目 録 部分はなく、特に注記もなし。

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新 大 系 ・ : ﹁掻津園来︹小︺屋寺盗鐙語第十七﹂注記な し 。

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新全集・:﹁婿津園来屋寺盗鐘語第 十七﹂注記なし。 ︹考説︺本文の標題では撮津園来小屋寺盗鑓語第十 七とあり、目録は﹁小﹂の表記を欠く。詳 細は本文編第十七話の部分で論ずる。 鈴鹿本巻

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・ 3 丁表住清水南謹乞食以女謀入人殺 語第八(悶頁中段凶行) ︹ 各 説 ︺

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旧大系・・*を付し、﹁住清水南謹乞食以女 謀入人殺語第廿八﹂注記なし。

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旧 全 集 ・ : ﹁住清水南港乞食以女謀入人殺語第八﹂注 記 な し 。 ︹考説︺鈴鹿本目録には﹁廿﹂の表記を欠く。詳細 は本文編第二十八話の部分で論ずる。 鈴鹿本巻目・ 3 丁裏 (問頁下段 3 行 ) ︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 : ・ * を 付 し 、 ﹁ 蛇 見 女 陰 殺 欲 出 穴 嘗 刀 死 語 第 品 川 九 ﹂ 注 記 は 特 に な し 。

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旧全集 ・﹁蛇見女陰発欲出穴当刀死語第三十九﹂ ﹁(ただし、目録中、第三十九話・第四十話 は底本になし。本文の題により補うごと目 録 末 部 に 記 す 。

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新 大 系 ・ : ﹁ ︹ 蛇 見 女 陰 発 欲 出穴当刀死語第門

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﹂ 注 記 な し 。 ︹考説︺鈴鹿本目録には、三十九話部分の記載がな ぃ。詳細は本文編第三十九話の部分で論ず る 。

。 。 、

l ノ 5 3 唱 EA ( 鈴鹿本巻却・ 3 丁裏 (悶頁下段 4 行 )

(4)

︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 ・ : * を 付 し 、 ﹁ 蛇 見 僧 童 寝 間 呑 受 姪 死語第四十﹂注記は特になし。

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旧 全 集 : ・ ﹁ 蛇 見 僧 昼 寝 間 呑 女 姪 死 語 第 四 十 ﹂ ﹁ ( た だ し 、 目録中、第三十九話・第四十話は底本にな し。本文の題により補う)﹂と目録末部に記 す 。

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新大系・:﹁蛇見僧昼寝間呑女姪死語 第 門 ︺ ︺ ﹂ 注 記 な し 。 ︹考説︺三十九話同様、鈴鹿本目録には四十話部分 の記載がない。詳細は本文編第四十話の部 分 で 論 ず る 。 以上、﹁目録﹂においては、目録標題と本文標題 との聞に阻輔があることが問題となる。これは宮田 尚氏﹃今昔物語集震旦部考﹄(平

4

・勉誠社)が巻十 を中心として論じられていることと関わる。次に本 文について考える。 本文編 西市蔵入盗人語第 酉の市の蔵に侵入し、包囲された盗人が、上の判官を呼び密 談した。判官は急遜天皇に事の次第を奏上し、その結果、宣旨 によって盗人の逮捕はとり止めとなった。 鈴鹿本巻却・ 4 丁裏盗人ハ蔵ヨリ出テ行列川刈方 ヲ不知ズ(﹁ケリ﹂と﹁ム﹂は双行表記。)(即頁 4 行 ) ク ラ イ デ ユ キ ︹ 各 説 ︺

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旧大系:・本文﹁盗人ハ蔵ヨリ出テ行ケリ カ タ シ ラ ム方ヲ不知ズ。﹂注一九﹁底本かく作るは、 ﹁行ケリ﹂と﹁行ケム方ヲ不知ズ﹂との混態 ゆ き か た し ら か 。 ﹂

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旧 全 集 : ・ 本 文 ﹁ 行 ケ ム 方 ヲ 不 知 ズ 。 ﹂ 注 一 三 ﹁ 底 本 ﹁ 行 ケ リ ム ﹂ 。 ﹁ 行 ケ リ ﹂ と ﹁ 行 の 混 態 か 。 ﹁ リ ﹂ を 街 と み る 。 ﹂ -157一 (4 ) ケ ム ﹂ ︹考説︺虫損のため﹁リ﹂と考えられている文字の 右側の画は確認できるが、左側の画は一部 しか確認できない。巻二十九 4 丁裏の他の の例から比較すると、﹁リ﹂ではない ﹁ リ ﹂

(5)

文字の可能性があり、虫損の状況から見て ﹁ケ﹂とも考えられる。しかも、この字は次 の﹁ム﹂と同時に書かれたと見られる肉厚 の字である。はじめ﹁行ケ﹂と書いて、次 に﹁ケム﹂を追記したのであろう。恐らく、 巻 目 第 お 話 ( 鈴 鹿 本 幻 丁 裏 3 行)の﹁行 (﹁ニケ﹂と﹁ム﹂は双行表記ごの が 空 文 ヰ 想 、 格 「 テ 定 を 多 士 ア さ 欠 表 二 ル れ く 丸

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の 紙 注 旧 よ 分 八 全 み の 「 集 を 脱 底 、 落 本 本 か。なお、入品(とも)諦﹁仮﹂の変と見る のも案であろう。もしまた、﹁以﹂との通 例もしくは増画と見れば、トモニシタリ 一 ケ ム 如く、﹁行ニケム﹂とするつもりで を追記し、﹁ケ﹂の訂正を忘れたものと見た ﹁ ケ ム ﹂ ﹁トモガラタリ﹂﹁トモニシタリ﹂等に想定 しているのに従い、多衰丸も彼と組んで荒 らし回っていたの意ととれば、この部分だ けの文意は通じないこともないが、やは り以下の文との接続関係に問題が残る。﹂

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新潮・:本文﹁多衰丸も似たり﹂注一

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﹁﹁似﹂を﹁大系﹂はトモガラタリあるいは ょ トモニシタリと訓む。一味であった、共働 a u

I J F b F D l ( 多衰丸調伏丸二人盗人語第 蔵破りの盗人多衰丸は度々逮捕されたが、調伏丸は神出鬼没 の盗人で、その正体も不明であった。 鈴鹿本巻

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・ 5 丁表誰トモ不被知ヌ盗人ニテナム 有ケル割引割刈剖似タリ(川頁 9 行 ) ︹ 各 説

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旧大系:・本文﹁誰トモ不被知ヌ盗人ニテ ナム有ケル。多表丸モ似タリ。﹂注七﹁或 は、名義抄によりトモガラタリとよむべき きをしたの意になるが、むしろ﹁全集﹂の ように、﹁似﹂字の上に欠字(それが当話 の中心をなうような長い長文)を想定する 方が自然であろう。その欠字の中で、二人

(6)

の盗賊の共働きのことが語られていたの であり、それを﹃今昔﹄編者の言葉で整理 要約したのが次項三行目﹁多表丸と具して 盗 し 行 き け む に ﹂ で あ る 。 ﹂ ︹考説︺鈴鹿本では﹁多﹂と﹁衰﹂の聞で改行して いる。したがって、鈴鹿本の表記だけから 誤写であると断定することはできない。し かし、﹁多﹂字の直前にある﹁ケリ﹂が右側 に大きくずれて書かれていることから考え ると、書写中にこの前後の箇所で何らかの 不都合があった可能性がある。 よって、本文の内容の短さや分量の少な さを含めて考えると、旧全集の説と同様に、 脱落を考えた方がょいと思われる。 不被知人女盗人語第 女に誘われ情夫となった男は、女の色香に翻弄され、肉体訓 練と精神的忍耐力を培われる。男は女に言われるまま盗賊の 員となり強盗を働くようになる。一、二年後、男が外出から帰 ると、女の姿はなく、家も跡形もなく綴されていた。女は盗賊 の 顕 で あ っ た ら し い 。 物食スル事ナドモ女ノ云ヒ倒

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頁 9 行 ) ︹ 各 説 ︺

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旧大系・:本文﹁物食スル事ナドモ女ノ云 オ キ ヒ俸ツル事元ケレドモ、﹂注二八﹁何せよ彼 にせよと特別差図がましいことは言わなか を む な い お き っ た が 。 ﹂

O

旧全集:・本文﹁女ノ云ヒ俸ツ ル事無ケレドモ﹂注三四﹁指図したりした ことはなかったけれど。女の部下掌握のし かたの完壁さの表われ。類﹁俸オキナ(テ の 誤 ) ﹂ 。 ﹂ ︹考説︺全てのテキストが﹁おきつる﹂とよんでい る 。 し か し 、 ﹃ 類 衆 名 義 抄 ﹄ ( 以 下 ﹃ 名 義 抄 ﹄ と略す)に﹁オキナ(テの誤ごとあること からすると、﹁俸ツル﹂は﹁おきつる﹂では なく、﹁おきてつる﹂とよみ、﹁提﹂と閉じ 意 と 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 ﹁ 云 ヒ 俸 ツ ル ﹂ は﹁言い定めておく﹂と解釈する。 鈴鹿本巻却・ 6 丁裏 刈川事元ケレドモ -155一 (6)

(7)

第 鈴鹿本巻

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・ 8 丁裏女割元キ世ノ中ハ然ノミコソ ハ有レト云ケレパ(凶頁ロ行) ハ カ サ ︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 ・ : 本 文 ﹁ 女 、 ﹁ 暮 元 キ 世 ノ 中 ハ 然 ノ ミコソハ有レ﹂ト云ケレパ、﹂注七

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﹁ 底 本 の み か く 作 る は ﹁ 墓 ﹂ の 通 字 か 。 諸 本 ﹁ 墓 ﹂ 。 会者定離を踏まえての発想。﹂

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旧 全 集 : ・ 本 を む な は か な よ な か 文 ﹁ 女 、 ﹁ 墓 無 キ 世 ノ 中 ハ ﹂ 注 二 底 本 ﹁ 暮 ﹂ 。 誤 写 と み る 。 ﹂ ︹考説︺内容から考えて、諸注の言うように、鈴鹿 本における誤写であろう。 言語と文化 文教大学 亦盗刈外川間モ来リ曾フ者共 は双行表記。)(四頁 7 行 ) [ 各 説 ︺

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旧大系・:本文﹁亦盗シケリ間モ、来リ舎 フ 者 共 、 ﹂ 注 八

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﹁諸本かく作るは﹁亦盗シ ケリ﹂と、﹁亦盗シケル間モ﹂との混態か。 或は亦終止形の連体法とみるべきか。﹂

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旧 ま た ぬ す み あ ひ だ 全集・:本文﹁亦盗シケリ間モ、﹂注一五 鈴鹿本巻却・9丁表 ( ﹁ シ ケ ﹂ と ﹁ リ ﹂ ﹁ ﹁ リ ﹂ の 誤 写 で 、 ﹁ 盗 シ ケ ル 間 モ ﹂ lま ﹁ ル ﹂ か 。 ﹂ ︹考説︺これも諸説の言うように、鈴鹿本における 誤 写 で あ ろ う 。 問 題 点 な し 。 平貞盛朝臣、於法師家射取盗人語第五 ある法師が陰陽師に盗賊の難で命を失うと占われ、重い物忌 154 (7) みをしていた。偶然、親交のあった平貞盛が上京し、訪ねてき たので宿泊させた。その夜、盗賊に襲われたが、貞盛のおかげ で 難 を 逃 れ た 。 鈴鹿本巻

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・ロ丁表平貞感朝臣於法師家射取到 刈詞剣耳(附頁 2 行 ) ︹考説︺本文標題では、目録編に記したように目録 標題には﹁盗人﹂が欠落している。前半の ﹁平貞盛朝臣於法師家射取﹂と後半の﹁盗人 語第五﹂では、墨色・字体共に異なり、後 半を後から追記した痕跡がある。

(8)

両者を関連させてみると、 して、本来の標題は﹁目録﹂のように﹁平 貞盛朝臣於法師家射取語﹂であったものを、 ﹃今昔物語集﹄(以下﹃今昔﹄と略す)編者 が﹁盗人﹂を挿入した方が内容からも適当 であると考え、追記時に﹁語第五﹂と共に 加えたと考えることである。もう一つは、 目録は編集作業のために記述されたもので あり、内容が分かればよいとして、完全が 求められなかったために不備が残ったと見 る こ と で あ る 。 一 つ の 考 え と 別に、書写時における本文標題の表記の 仕方に問題があるとする見方もできる。す なわち、これ以後の説話でも、﹁語第

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﹂ の 部分だけ墨色の異なる例がしばしば見受け られる。それらの例とも併せて考える必要 が あ る 。 鈴鹿本巻

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・ロ丁表 今昔下遁ニ封倒有ル法師有 ケリ(附頁 4 行 ) シ ぞ ワ タ " ナ マ ト ク ︹ 各 説 ︺

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旧大系:・本文﹁今昔、下溢ニ生徳有ル法 ア リ 師有ケリ。﹂本文の﹁生﹂字に注一を付し、 ﹁ 徳 ﹂ 字 に 注 二 を 付 す 。 注 一 ﹁ こ の ﹁ 生 ﹂ は 、 ﹁生手書ク者﹂(←巻二十七回凶二六)と共 に副調であることが最も明瞭な例である。 ←巻三十一頭注補記三

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八頁﹁高扇ヲ仕 テ﹂。﹂注二﹁経済力のある。裕福な。←巻 二十八回国四・回出二

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。 ﹂

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旧 全 集 : ・ 本 文 し も わ た り な ま と ︿ あ ほ ふ し ﹁下辺ニ生徳有ル法師﹂注一八﹁いくらか 財 産 の あ る 。 ﹁ 徳 ﹂ は 富 ・ 財 産 ﹁ 生 ﹂ は 未 熟 、 不 十 分 を 意 味 す る 接 頭 語 。 ﹂ ︹考説︺﹃今昔物語集自立語索引﹄によれば、﹁生徳 (なまとくごはこの一例のみである。直後 の本文に﹁家豊ニシテ万ヅ柴シクテ過ケ ル程ニ﹂とあることから、法師の暮らしは 豊かであり、中途半端ではない。したがっ て 、 ︹ 各 説 ︺ の ﹁ い く ら か 財 産 の あ る ﹂ や ﹁ 少 し ば か り 財 産 の あ る ﹂ と い っ た 、 ﹁ 生 ﹂ を ﹁ 未 -153一 (8 )

(9)

熟・不十分を意味する接頭語﹂とするのは 適 当 で な い 。 そ こ で 、 ﹁ 生 ﹂ の 字 を ﹁ せ い ﹂ と よ み 、 ﹁ せ いとく﹂だと考える。同じく﹃今昔物語集 自立語索引﹄によれば、﹁勢徳(せいとくご は八例あり、﹁権勢と財産﹂という意味から もこの場合に適合する。よって、本話の﹁生 徳﹂は﹁なまとく﹂ではなく、﹁勢徳﹂の字 の当て違いだと解釈し、﹁せいとく﹂とよむ 方 が 適 当 で あ る 。 鈴鹿本巻却・ロ丁裏其ノ日ニ成ニケレパ門ヲ閉 テ人モ不通ハサズシテ極ク物忌固クシテ有ケル 瑚斗阿パ物忌度々ニ成テ(附頁 7 行 ) ナ リ カ ド ︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 : ・ 本 文 ﹁ 其 ノ 日 ニ 成 ニ ケ レ パ 、 門 ヲ ト ヂ カ ヨ イ ミ リ モ ノ イ 閉テ人モ不通ハサズシテ、極ク物忌固クシ ア リ モ ノ イ ミ ド ド ナ リ テ有ケル程ニ、此ノ物忌度々ニ成テ、﹂ ﹁度々﹂に注を付す。注一

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﹁ 巻 十 九 四 六 ﹁七日許ニ成ヌレパ﹂と同趣の事情を の 叙 し た も の か 。 ﹂

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旧 全 集 ・ : 後 の ﹁ 物 忌 ﹂ に 注を付す。注一﹁忠行は物忌みすべき日を 幾度も指定したのであろう。﹂ ︹考説︺︹各説︺に引いた諸注では何も触れていない ナ リ イ ミ ジ モ ノ イ ミ が、﹁其ノ日ニ成ニケレパ、

1

極ク物忌固 ア リ モ ノ イ ミ ド ド ナ リ クシテ有ケル程ニ、﹂と﹁此ノ物忌度々ニ成 テ、﹂以降には、大きい時間的な差が読みと ア リ れる。つまり、﹁有ケル程ニ、﹂までが﹁其 ノ日﹂の事柄であり、﹁此ノ物忌﹂以降は ﹁ 度 々 ニ ﹂ と い う よ う に 、 別 の 日 の 事 と な る 。 し た が っ て 、 ﹁ 有 ケ ル 程 一 ご の 後 で ﹁ 其 ノ 日 ﹂ の出来事を完結させる必要があるだろう。 ア リ よって、問題箇所として挙げた﹁有ケル モ ノ イ ミ ド ド 程 ニ 、 ﹂ と ﹁ 此 ノ 物 忌 度 々 ニ 成 テ 、 ﹂ の 聞 に 、 ﹁何事も無かりけり﹂のような意の脱文が想 定 さ れ る 。 -152-( 9) 鈴鹿本巻

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丁裏然レパ間引貞盛朝臣ノ来リ 曾テ命ヲ存シタル法師ニナム有ケル(叩頁げ行)

(10)

︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 : ・ 本 文 ﹁ 然 レ パ 、 賢 キ 、 貞 盛 朝 臣 ノ キ タ ア ヒ ア リ 来リ曾テ命ヲ存シタル法師ニナム有ケル。﹂ 注四一﹁うまいことをした、幸運であった、 の意で、﹁命ヲ存シタル法師﹂に係る連体修 飾 語 。 ﹂

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旧 全 集 ・ : 本 文 ﹁ 賢 キ 、 ﹂ 注 二

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﹁ ﹁ 法 師﹂にかかる連体修飾語で、運のよかった の意。読点を付さず下の﹁貞盛ノ朝臣﹂に かかるとみれば、知略にすぐれたの意。﹂

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新 潟 ・ : 本 文 ﹁ 賢 き 、 ﹂ 注 五 ﹁ ﹁ 賢 き ﹂ は ﹁ 法 師﹂にかかる。﹁貞盛朝臣の・:命を存した る﹂事実を、運がよかったと批評した語。﹂

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新大系:・本文﹁賢キ、﹂注七﹁うまい具合 に。貞盛を形容するのではなく、全体を概 括して叙述する用法。←一四二頁注九、三 一

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頁 注 一 。 ﹂ ︹考説︺貞盛を﹁賢キ﹂(運がよかった)と形容する ことは、諸注がそうしていないように不適 当である。また、﹁賢キ﹂が連体修飾語とし て ﹁ 法 師 ﹂ に か か る の も 、 ﹁ 賢 キ ﹂ と ﹁ 法 師 ﹂ の位置が離れており無理がある。 次の第六話の用例﹁門

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ハ賢キ男ノ徳ニ 命ヲ存シタリケルトナム語リ伝ヘタルト ャ。﹂から見れば、﹁賢キ貞盛﹂とし、旧全 集のように﹁知略にすぐれた﹂とする可能 性も無いわけではないが、落ち着かない。 こ こ は 、 ﹁ 賢 ク ﹂ の 誤 写 で あ り 、 ﹁ 偶 然 に も ・ 都合よく﹂の意で以下の﹁貞盛朝臣ノ来リ 曾テ﹂にかかると考える方が適当であろう。 -151ー (10) 放免共為強盗入人家被捕語第六 放免たちに強盗の手引きをするように言われた下衆は、協力 したように見せかけ、密かに主人に報告した。予定通り家に押 し入った放免共は、全員逮捕、射殺された。 放免共為強盗入人家樹欄詞 鈴鹿本巻

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丁表 第六(国頁 4 行 ) ガウダウセムトシテ ︹ 各 説 ︺

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旧大系・:*を付し、﹁放免共、為強盗 ヒ ト ノ イ へ ニ イ リ ト ラ 一 士 フ レ タ ル ヨ ト 入人家被捕語第六﹂注はなし。

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新大 ほうめんどもがうだ-ヲしとなりひとのいえにいりて k ら A ら る る こ k 系:・﹁放免共、為強盗入人家被捕語第

(11)

六 ﹂ 注 一

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﹁底本かく作るが で あ ろ う 。 ﹂ ﹁ 捕 ﹂ の 誤 り ︹考説︺旧大系・新大系と同様に、﹁捕﹂の誤りと考 え る 。 第 藤大夫門︺家入強盗被捕語第七 藤大夫は多くの財物と共に帰京し、それに目を付けた盗賊が 襲撃する。燥大夫に仕える小男は賊の一人を殺し隠し置いて、 言語と文化 翌日検非違使に報告したところ、苧づる式に盗賊全員が逮捕、 投獄された。 ヨ ノ イ 鈴鹿本巻

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-M

丁裏板敷ノ下ニ道入ヌ(山頁 1 行 ) ウアプン 小 男 ノ 但 臥 セ ル 有 ケ リ ( 則 頁 3 行 ) い た じ さ は ひ い り ︹ 各 説 ︺

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新大系・:﹁板敷ノ下一一這入ヌ﹂注三二底 三おのこ 本﹁ヨハイ﹂と傍訓するが採らない。﹂﹁小男 ﹄ ヲ つ ふ し ノ低臥セル﹂注一六﹁底本﹁ウツフシ﹂ い た じ き し た ヨ パ イ い り と 傍 訓 。 ﹂

O

新全集:・﹁板敷ノ下ニ這入ヌ﹂ ニ お の こ ウ ツ フ ン ふ ﹁小男ノ低臥セル﹂注二ニ﹁底本﹁這﹂字 の右につけた片仮名。ここでは﹁ヨ﹂は不 用。二行後の﹁低﹂字につけた﹁ウツフシ﹂ 文教大学 も 底 本 に あ る 。 ﹂ ︹考説︺﹁這﹂字のふりがなとして﹁ヨハイ﹂とつけ たのであろうが、﹁よはいいりぬ﹂という表 現には無理がある。よって、新全集と同様 に考える。また、﹁ウツフシ﹂については、 新大系・新全集が述べるように、右側に傍 記されている。したがって、ふりがなと考 えるべきであろう。 なお、﹁ヨハイ﹂﹁ウツフシ﹂共に、朱書 きではなく、墨書である。 150 (11) 藤判官門

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鈴鹿本巻

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・日丁裏 (山頁日行) ケ ン ヒ ヰ ン ︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 ・ : * を 付 し 、 ﹁ 検 非 違 使 ﹂ 注 な し 。 け む び ゐ し

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旧 全 集 : ・ ﹁ 検 非 違 使 ﹂ 注 な し 。

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新大系 け ん び ゐ し .﹁検︹非︺違使﹂注三四﹁底本﹁検違使﹂ に作る。諸本により﹁非﹂字を補う。﹂ ︹考説︺新大系と同じく、﹁非﹂を補うものと考え る 。

(12)

鈴鹿本巻却・口丁表彼丸ハ詣来テ私語仕リシカ (﹁リシ﹂と﹁カ﹂は双行表記)(回頁 1 行 ) ︹ 各 説 ︺

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旧 大 系 : ・ ﹁ 私 語 仕 リ シ ガ 、 ﹂ 注 な し 。

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旧 全 集 ・ : ﹁ 私 語 仕 り し か 。 ﹂ 注 二 四 ﹁ 前 行 ﹁ コ ソ ﹂ の 結 び 。 ﹂ ︹考説︺旧全集と同じく、前行﹁こそ﹂の結びと考 え る 。 鈴鹿本巻却・げ丁表側叶ベ人ノ家ニハ(問頁 6 行 ) ︹ 各 説 ︺

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新 大 系 : ・ ﹁ 然 レ パ 、 ﹂ 注 九 ﹁ 底 本 は ﹁ テ ﹂ を見せ消ちにして﹁レハ﹂と傍書。﹂ ︹考説︺新大系のみこの問題に触れる。﹁テ﹂字に虫 損があるが、新大系の通りと考える。 おわりに 紙数の関係で、今回の報告は﹁目録﹂を含めて第 一話から第七話までとなった。 現在、説話ゼミでは巻二十九の範囲を終わり、巻 二十七を読んでいる。本稿の続編としての巻二十九 の第八話以降や巻二十七に関しても、引き続き報告 し て い き た い 。 説話ゼミ参加者氏名 浦部誠 塩崎隆洋 銚偉麗 田口和夫教授 川上由香理 成田太一 渡遁麻衣子 近藤敏之 山田麻美 ( 敬 称 略 ) -149一 (12)

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