レール側摩耗経時変化の実態調査
鉄道総合技術研究所 正会員 ○桶谷 栄一 鉄道総合技術研究所 正会員 古川 敦 1.はじめに
車輪とレールの幾何学的な形状によって決まる両者の接触角は、車両の走行安全性を評価する重要な指標で ある限界脱線係数の計算に用いられる。車輪フランジとレールがいずれも新品形状であれば、フランジ角度が 接触角となる。しかし、車輪ではフランジ摩耗の進展によりフランジ角度が大きくなり、レールでは側摩耗の 進展によりレール側面の車輪との接触位置の角度が小さくなり、その組合せによる接触角については明らかに されていない。そこで本研究では、71 箇所のレール断面実測値からレール摩耗および接触角の変化を推定し、
車両の走行安全性を評価した。
2.レール側摩耗とレール摩耗角度
(1)実測データ
累積通トンとレール摩耗の形状の関係を確認するために、実際に営業列車が走行する 12 線区 71 箇所のレー ル断面形状をミニプルーフにて測定した。測定対象とした箇所のレール種別は 60kg:42 箇所,50kgN:29 箇 所である。測定箇所の曲線半径の内訳を図1に示す。当該区間を走行する車両のフランジ角度の設計値はいず れも 65°である。
(2)レール摩耗量とレール摩耗角度の計算
ミニプルーフによる測定データによるレール摩耗量とレ ール摩耗角度の計算概要を図2に示す。新品レール断面上の 点を A、摩耗レール断面上の点を B とする線分 AB をレール 摩耗量、レール頭頂面から鉛直下方 12,18 ㎜の箇所の2点 間の直線の傾きをレール摩耗角度として計算した。
(3)レール摩耗角度の経時変化
レール摩耗角度の経時変化を図3に示す。同図より、レー ル摩耗量や累積通トンの大きさに関わらず、レール摩耗角度 は約 68~72°の範囲内にあり、平均値は約 70°であること がわかる。今回用いたデータは、環境条件が異なる 12 線区 の様々な曲線半径の箇所での測定結果であるが、ほぼ同一の 傾向にあることが確認できた。新品形状ではレール側面の 角度が約 89°であることを考慮すると、レール摩耗角度は、
通トンに従って穏やかになり、70°近傍に収束すると考え られる。さらにその変化は、少なくとも累積通トンが 1 億 トンに達するまでに終了している。
(4)レール摩耗量の経時変化
レール摩耗量の経時変化を図4に示す。同図より、レー ル摩耗角度が 70°近傍に収束する累積通トンが約 1 億トン の付近では、レール摩耗量は 5~10 ㎜の範囲にあるといえ る。また、文献 1)では、累積通トン 1.5 億トンくらいまで の傾向として曲線半径が大きいとレール摩耗量進みは小さ
キーワード レール側摩耗,接触角,レール摩耗角度,限界脱線係数,走行安全性
連絡先 〒185-8540 東京都国分寺市光町 2-8-38(財)鉄道総合技術研究所 軌道技術研究部 TEL 042-573-7278
-45 -40 -35 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
測点1 測点3 測点5 標準
点(0,-35)と点Bを通る直線 点A
点B レール摩耗量(計算値)
新品レール断面
ミニプルーフ測定データ レール摩耗角度
レール頭頂面から下12~18㎜の傾き
図2 レール摩耗量と摩耗角度の定義 図1 レール摩耗箇所の曲線半径の内訳
0 5 10 15 20
300m 以 下 301~ 400m 401~ 600m 601~ 700m 701~ 800m 801~ 1000m 1001~ 1200m 1201m 以 上
曲線半径
箇所 数 60kg
50kgN
4-062 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
-123-
くなる傾向が確認されているが、
図4より通トンによるレール交 換基準である 6~8 億トンくら いまでの範囲でも同様の傾向が 確認できた。
3.車輪フランジ角と接触角 文献 2)ではレールの断面形 状は当該線区を走行する車輪形 状に一致すること示されている。
従 っ て 、 レ ー ル 摩 耗 角 度 が 70°近傍へ収束するということ から、通常走行している車両の 多くの車輪形状はフランジ角度 が 65°から 70°近傍へ収束し ていると推測される。
4.走行安全性についての考察 急曲線走行時の車両の走行安
全性は、限界脱線係数と推定脱線係数から求められる推定脱線係数比(=限界脱線係数/推定脱線係数)を用 いて評価する。今回検討に用いた実測データでの最大摩耗箇所における新品車輪と摩耗レールの接触状態を図 5に示す。同図より、最大摩耗箇所においてもレールと車輪の接触点は車輪の角点の上にある。レールとフラ ンジの接触角は、接触点における傾きのうち小さい側となることから、接触点が角点より上であれば、接触角 はフランジ角度の設計値である 65°を下回ることない。前章までの調査から、車輪・レールの摩耗断面の角 度は共に 70°付近に収束することから、軌間が通常の保守の範囲内にあれば、限界脱線係数は設計断面での 計算値よりも大きくなり、推定脱線係数比が新品のレール・車輪の組み合わせよりも小さくなることはない。
したがって、レール側摩耗の進展が、車両の走行安全性に悪影響を及ぼす可能性は小さい。
5.まとめ
今回の実態調査から得られた結果をまとめると以 下のとおりである。
(1) レール摩耗角度及び車両フランジ角度は 70°近 傍へ収束し、そのときのレール摩耗量は 5~10 ㎜ の範囲にある。
(2) 累積通トンが 6~8 億トン付近までの範囲では、曲 線半径が小さいほどレール摩耗は大きい。
(3) レールと車輪の接触点は、軌間が通常の保守の範 囲内にあればフランジの角点の上にあり、直ちに 走行安全性に悪影響を及ぼすことはないと考えら れる。
参考文献
1) 石田誠,金鷹,青木宣頼:レール側摩耗の要因とその影響,日本鉄道施設協会誌 第 42 巻 8 号,2004.8 2)青木宣頼,石田誠:車輪踏面形状変更によるレール摩耗形状の変化,土木学会第 60 回年次学術講演概要集
4-102,2005.9
図5 車輪(新品)とレール(摩耗)の接触状態
-60 -40 -20 0 20 40 60
-40 -20 0 20 40 60 80 100
レール種別 : 50N レール摩耗量 : 15.0㎜
レール摩耗角 : 68.3 車輪断面(新品)
レール断面(新品)
レール断面(摩耗)
角点 継目板接触限界
60 65 70 75
0 200 400 600 800
累積通トン[百万トン]
レール摩耗角度[°]
60kg 50kgN
図3 レール摩耗角度の経時変化
60 65 70 75
0 5 10 15 20
レール摩耗量[㎜]
レール摩耗角度[°]
60kg 50kgN
図4 レール側摩耗量の経時変化(左:熱処理レール,右:普通レール)
0 5 10 15 20
0 200 400 600 800
累積通トン[百万トン]
レール摩耗量[㎜]
R<400 400≦R<600 600≦R≦800 線形近似曲線
(400≦R<600)
線形近似曲線
(600≦R≦800)
初期レール摩耗進み
0 5 10 15 20
0 200 400 600 800
累積通トン[百万トン]
レール摩耗量[㎜]
R>800
線形近似曲線
(R>800)
初期レール摩耗進み