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***・友納 敏 ****・辰巳 浩 *****・梶田佳孝******

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(1)

北部九州圏におけるWebを活用したPT調査の取り組み * Person Trip Survey utilized Web in Northern Kyushu Area*

遠藤俊宏**・田畑浩規

***・友納 敏 ****・辰巳 浩 *****・梶田佳孝******

By Toshihiro ENDO**

Hiroki TABATA***

Satoshi TOMONO****

・Hiroshi TATSUMI*****・

Yoshitaka KAJITA******

1.はじめに

都市圏を対象に実施されるパーソントリップ調査(以 下、PT調査)は、高い抽出率が必要で、相当の調査費 用を要するため、できるだけ調査の効率化を図り、費用 を縮減する方策について検討することが望まれている1)。 PT調査は、1日の交通行動(トリップ)を把握する 調査であることから必然的に調査項目や注意事項が多く なるため、被験者にとっては調査票が煩雑となり、回答 における負荷が高くなってしまうことが課題とされてき た。また、そのような特殊な調査であるため、自宅を訪 問して配布・回収する「家庭訪問調査」という調査方法 が一般的に採用されてきたが、調査員との対面が必要と なることや訪問時間に制限があることなど、制約条件が 多く、被験者の多様なライフスタイルや個人情報保護・

セキュリティなどに対するニーズに必ずしも適応してい ないこと(即ち、回収率の低下)も問題となっていた。

これまで、調査の効率化を図る手法としては、山口都 市圏における郵送調査の例1)などがあるが、Web(イ ンターネット)を都市圏におけるPT調査に本格的に活 用した事例はみあたらなかった。しかしながら、近年に おけるWeb環境の改善や、Webアンケート調査の実 績の蓄積などの動向を踏まえると、PT調査においても Webを活用する社会的条件は整ってきたと考えられる。

以上を踏まえ、平成17年に実施した第4回北部九州 圏PT調査(母集団人口約480万人)において、調査の 効率化や回収率の改善を目的として、従来の訪問調査と 併用して「Web回答システム」を組み込んだ調査手法 が採用されたところである。

*キーワーズ:総合交通計画、PT調査、Web調査

**正員、修(工)、㈱福山コンサルタント(福岡市博多区博 多駅東3-6-18、TEL092-471-1417、FAX092-477-2570)

***国土交通省九州地方整備局企画部(福岡市博多区博多 駅東2-10-7、TEL092-471-6331、FAX092-476-3466)

****福岡県建築都市部都市計画課(福岡市博多区東公園7- 7、TEL092-643-3712、FAX092-643-3716)

*****正員、博(工)、九州産業大学(福岡市東区松香台2- 3-1、TEL092-673-5692、FAX092-673-5699)

******正員、博(工)、九州大学(福岡市東区箱崎6-10-1、

Tel/Fax092-642-3278)

本稿は、そのシステム概要を紹介し、調査結果や有 効性を整理するとともに、Webを活用した実態調査の あり方や課題について検討した結果を示すものである。

2.Webを活用したPT調査システムの設計

都市圏PT調査にWebを本格的に適用することは 初めてであったことから、プロトタイプとなるシステム を試作し、プレ調査(サンプル数500人)を平成17 年夏に実施した。その結果を踏まえ、効果と問題点を検 証しながら本調査に向けたシステムを作成した。以下、

その概要・特長を示す。

(1)紙回答とWeb回答の併用システム

Webで回答できる被験者は限定されるため、従来の 用紙による回答も可能とすることが必要である。そのた め、紙回答とWeb回答が選択できるような調査体系と して、図―1に示すような3タイプの配布・回収方法を 組み合わせたシステムを構築した。

(2)Webの特長を活かした回答フォーム Webの特長を活かして次のような工夫を行い、被 験者が回答しやすいシステムを目指した。

a)記入例の充実:Flashを用いた動く記入例など b)記入漏れや回答の不整合に対する、わかりやすい

警告の表示

c)選択肢の選びやすさ向上:プルダウンメニュー、

複数の検索画面、選択肢分類表へのリンクなど 図-1 紙回答とWeb回答を併用した調査方法

(2)

d)選択肢の自動表示・連動機能:入力の簡略化 e)回答ページ間の移動機能:前トリップなどの修正

が容易にできる

f)確認画面の表示によるチェック機能 など

(3)セキュリティ対策

被験者が安心してWebによる回答ができるように するためには、情報管理などのセキュリティ対策をはっ きりと明示することが必要条件となる。

具体的には、個人情報保護を図るための管理体制を 明示するとともに、対象者以外の不正アクセスを防止す るための整理番号(11桁)とパスワード(6桁)を世帯 別に発行し、調査依頼ハガキに記載(密封)して各世帯 に郵送した。同ハガキについては、特にタイプ1(図―

1)の場合は調査員との対面がないことから、図表を多 用しながら調査に関する情報(実施主体や回答方法、調 査目的など)をできるだけわかりやすい内容とするなど、

表現・デザインの充実を図った。

また、送受信データは暗号化(SSL)し、通信中 の情報漏洩防止を図った。

(4)Web上での広報強化

Webでの回答画面へのアクセス性を高めるため、自 治体ホームページ(トップページ)にリンクを貼るなど、

Webを活用した広報の強化を図った。これにより、調

査の周知といった意味でも効果を得ることができた。

3.調査結果

(1)回収結果とWeb回答率

回収結果を表―1に示す。当初、回答者の5%以上が Webを選択すればコスト削減効果が発揮されると見込 んでいたが、それを大きく上回る13%のWeb回答を確 保することができた。

また、属性別にみると、単身世帯や若年層においてW ebの回答率が高く、特に職業や産業によって差が大き くなる結果となった。(表―2)

表-2 Web調査回答率

性 別 年 齢

(レンジ:

1.4

世 帯 人 員

(レンジ:

9.6

産 業

(レンジ:7.2)

職 業

(レンジ:17.8)

(レンジ:25.4)

注)ここで、Web回答率+紙回答率=100%

図-2 Web回答画面の例

12.4%

13.8%

0% 20% 40%

男性 女性

14.6%

15.1%

18.0%

19.3%

15.9%

9.9%

5.0%

5.0%

6.0%

0% 20% 40%

5~14歳 15~24歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳 55~64歳 65~74歳 75~84歳 85以上歳 17.7%

12.1%

12.8%

13.9%

10.5%

0% 20% 40%

1人世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯 5人以上世帯

20.7%

19.6%

18.4%

14.1%

12.1%

10.4%

9.8%

7.3%

2.9%

17.3%

14.9%

12.3%

7.7%

0% 20% 40%

管理 事務 専門・技術 運輸通信 保安 生産労務 販売 農林漁業 サービス 学生 生徒 主婦・主夫 無職

28.5%

24.4%

20.7%

17.2%

16.9%

15.6%

15.5%

15.4%

15.4%

13.7%

12.2%

11.9%

11.2%

8.8%

6.1%

3.1%

0% 20% 40%

情報通信業 公務 教育 不動産業 金融保険業 卸売業 医療福祉 電気ガス等 製造業 建設業 小売業 サービス 運輸業 飲食宿泊業 鉱業 農林漁業

表-1 調査概要と回収結果 調査圏域 北部九州圏域

(26

50

1

)

調査対象者 圏域内居住者

(5歳以上,約

480

万人)

調査実施期間 平成

17

10

月~

18

1

月 目標サンプル率

3.80%

目標サンプル数

182,701

サンプル(人) 有効回収サンプル数

187,885

サンプル

(

)

うち、Web 回収

24,526

サンプル(人)[13.1%]

回答ページ間 の移動機能

確認画面の表示など によるチェック機能

選択肢の選びや すさの向上(直 接入力も可能)

Flash などを 活用した記 入例の充実

(3)

Webの回答率を地域別にみると、福岡都市圏におけ る回答率は高いものの、それ以外の地域では低くなる結 果となった。このように地域差が生じた要因としては、

ブロードバンドの整備状況2)や世帯収入・世帯構成など の影響が考えられる。(図―3)

(2)回答者の属性構成比較

紙回答とWeb回答の回答者属性を比較した結果を 図―4に示す。

年齢別にみると、Web回答は母集団に比べて紙回答 の割合が低い25~54歳で割合が高くなっており、紙回答 での回答率が相対的に低い属性の回答率を向上させる効 果があると考えられる。世帯人員別にみても同様の傾向 がうかがえ、紙回答で回答率の低い単身世帯の回収率を 向上させる効果を確認することができる。

また、職業別にみるとWebの回答率に差があること から属性構成に偏りを及ぼす影響が懸念されたところで あるが、割合が13%と小さいこともあり、そのような影 響は認められない結果となっている。

(3)回答者のトリップ特性比較

紙回答とWeb回答のトリップ特性(生成原単位)

を比較した結果を表―3に示す。

職業別に生成原単位(トリップ回数の平均値)の差を 検定したところ、サンプル数の多少の影響もあり、回答 形態による生成原単位に有意な差はほとんどみられない 結果となった。ただし、世帯主が無職の世帯については、

活動形態が多様であることが想定されるため、Web回 答の原単位が紙回答よりも小さい結果となっている。

〈性別〉〈年齢〉〈職業〉〈世帯人員〉

図-4 属性構成の比較 図-3 居住地別Web調査回答率

表-3 属性別生成原単位の比較

属性 サンプル数 生成原単位 原単位の差の検定

職業 その他 用紙 Web 用紙 Web t値 判定

(α=0.01) 専門職 鉱業・建設 2,231 400 2.56 2.47 1.389 ◎

・技術職 製造業 796 217 2.49 2.48 0.099 ◎ 情報・運輸 1,449 575 2.43 2.31 2.458 ○ 商業・金融 526 94 2.52 2.36 1.160 ◎ 医療・福祉 4,458 864 2.54 2.45 2.080 ○ 教育 2,348 598 2.47 2.37 2.134 ○ サービス 1,936 538 2.57 2.56 0.061 ◎

管理職 15~34 431 89 2.54 2.36 1.116 ◎

35~44 1,096 324 2.69 2.60 0.933 ◎ 45~54 2,008 533 2.65 2.51 2.261 ○ 55~64 2,174 418 2.67 2.55 1.691 ◎

65~ 701 62 2.85 2.56 1.678 ◎

事務職 合計 10,686 2,726 2.50 2.44 2.303 ○ 販売職 合計 8,302 1,144 2.72 2.69 0.464 ◎ サービス職 合計 9,943 1,000 2.51 2.41 2.327 ○

保安職 合計 1,122 173 2.29 2.21 0.785 ◎

農林漁業 合計 1,834 48 3.10 2.54 2.377 ○

運輸通信 合計 2,906 331 2.61 2.46 1.689 ◎ 生産労務 合計 7,909 609 2.37 2.33 0.834 ◎ その他職業 合計 3,334 404 2.66 2.68 -0.140 ◎ 生徒 合計 17,725 2,881 2.34 2.38 -2.170 ○ 学生 合計 8,463 1,653 2.21 2.25 -1.929 ◎ 主婦・主夫 生産運輸関係 ※ 1,019 90 2.56 2.22 2.584 ○ 販売サービス関係 ※ 5,616 780 2.61 2.57 0.817 ◎ 管理事務関係 ※ 3,494 456 2.85 2.88 -0.363 ◎ 無職 ※ 4,850 543 3.16 2.82 4.988 × 無職 生産運輸関係 ※ 453 24 2.45 2.63 -0.574 ◎ 販売サービス関係 ※ 895 118 2.46 2.40 0.580 ◎ 管理事務関係 ※ 1,154 262 2.48 2.45 0.405 ◎ 無職 ※ 14,977 975 2.57 2.39 4.406 ×

※:(世帯主) ◎:有意水準1%及び5%で有意差が認められない

×:有意水準1%で有意差が認められる

○:有意水準1%で有意差が認められない    (有意水準5%で有意差が認められる)

46.7%

49.8%

47.1%

47.4%

53.3%

50.2%

52.9%

52.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

用紙 Web 合計

母集団

男性 女性

10.5%

12.0%

10.7%

10.1%

10.0%

11.9%

10.3%

12.5%

12.1%

17.8%

12.8%

15.1%

12.4%

19.9%

13.4%

13.0%

13.9%

17.6%

14.4%

14.1%

16.5%

12.1%

15.9%

15.0%

13.9%

4.9%

12.7%

11.0%

8.4%

7.7%

6.9%

2.9%

2.3%

0.9%2.1%

2.2%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

用紙

Web

合計

母集団

5~14歳 15~24歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳

55~64歳 65~74歳 75~84歳 85以上歳

5.3%

2.8%

5.0%

13.7%

14.8%

12.0%

14.5%

12.3%

22.4%

36.3%

24.2%

17.4%

16.8%

21.0%

17.4%

16.2%

36.6%

25.8%

35.2%

38.3%

1.5%

1.6%

0.3%

1.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

用紙

Web

合計

母集団

農林漁業関係 生産運輸関係 販売・サービス関係

管理事務関係 学生・生徒 主婦・その他

11.9%

27.5%

25.4%

27.2%

19.6%

21.5%

21.2%

21.5%

21.2%

22.0%

23.7%

22.2%

25.3%

18.5%

14.5%

18.0%

22.0%

10.5%

15.1%

11.1%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

用紙

Web

合計

母集団

1人世帯 2人世帯 3人世帯 4人世帯 5人以上世帯

Web回答率が高い

Web回答率が高い 福岡市を中心

とした地域で のWeb回答 率が高い

注)ネット原単位

(外出なしは含まず)

(4)

(4)Web回答システムに対する評価

Web回答システムにおいては、logの解析により回 答時間などの時間特性の把握が容易である。

回答所要時間の平均値は4トリップ記入の場合で14 分(図―5)となり、想定したような回答負荷の軽減に 一定の効果が得られたものと考えられる。また、回答開 始時刻は深夜から早朝まで多岐にわたっており、多様な ライフスタイルをもつ被験者が回答しやすいシステムで あると評価できる。

一方、トリップ回数や世帯人数が多い場合は、回答 時間が長くなる傾向がみられたことから、そのような場 合における時間短縮が課題である。また、設問によって は手入力割合が3割を超えていたことから、居住地や目 的地の住所など、入力方法を改善することも課題である。

なお、被験者からのWebを含めた回答方法に関す る苦情や問い合わせの件数は、表―4に示すように103 件であった。約4ヶ月間という調査期間、母集団人口約 480万人という調査規模を考慮すると、件数としては少 ないと評価され、被験者からシステムに対する大きな問 題点は指摘されなかったものと判断される。

表-4 回答方法に関する苦情・問い合わせ件数 回答数 構成比 紙回答に関するもの

36 4%

Web回答に関するもの

57 6%

上記以外の問い合わせ

836 90%

合 計

929 100%

注)電話とWebによる件数の合計値

4.まとめ

本稿では、大規模都市圏を対象としたPT調査におい て、従来の訪問調査と併用して「Web回答システム」

を組み込んだ北部九州圏の取り組みを紹介した。システ ムの効果と問題点を整理すると以下のようになり、多少 改善の余地はあるものの、家庭訪問調査を補完する手法 としてWeb回答システムの有効性は高いと評価される。

a)Web回答システムの効果

○紙回答では回収率が低い若年層(25~44歳など)や

単身世帯における高い回答率の確保

○属性別に比較すると、紙回答とほぼ同じトリップ回 数の確保が可能(有意な差はほどんどない)

○深夜や早朝における回答が可能であり、被験者の多 様なライフスタイルに適応

b)Web回答システムの課題

○Web利用環境が整っていない地域や属性における 回答率の向上(システム汎用性の拡大など)

○入力のしやすさのさらなる向上(デジタルマップの 活用、複数トリップや複数人員への配慮など)

今後、Webに対するニーズはさらに高まるものと想 定されることから、実態調査において積極的にWebを 活用していく必要がある。活用においては、特に、以下 のような点に留意することが必要であると考えられる。

①Web回答を選択しやすくするための工夫 Webの効果を高めるためには、Web回答の選択 率向上を図ることが課題である。Web環境が整ってい る地域を重点的に、被験者がWebで回答したくなるよ うな仕組みづくり(Webを選択した場合のメリットの 明示など)が重要である。

②Web上での途中断念を減らすための工夫 訪問調査のメリットとしては、調査員による記入漏 れのチェックがある程度可能であることがあげられるが、

調査員との対面がないWeb調査においてはそのチェッ クが困難となる。今回、記入漏れに対する警告の表示や、

回答途中者に対するハガキによる再調査依頼などの対策 を講じたが、そのような対策の他に、被験者が心地よく 回答できるようなシステムづくりが重要である。

本稿は、国土交通省九州地方整備局の他、福岡県・佐 賀県・北九州市・福岡市からなる北部九州圏都市交通計 画協議会3)(会長:宮田年耕九州地方整備局長)が実施 した実態調査の結果、及び「同協議会・総合都市交通調 査委員会(委員長:樗木武九州大学名誉教授)」や

「同・技術検討部会(部会長:辰巳浩九州産業大学助教 授)」などでご議論いただいた結果をもとにしている。

関係各位に深く感謝の意を表します。

参考文献

1)国土交通省都市・地域整備局監修、計量計画研究所 編:総合都市交通体系調査の手引き 解説書,2005 2)総務省九州総合通信局編:平成17度 九州におけ

る情報通信の現状,2005.

3)北部九州圏都市交通計画協議会ホームページ:

http://www.hokubukyushu-pt.jp

0:07 0:08

0:13 0:14

0:21 0:22

0:29 0:32

0:00 0:10 0:20 0:30 0:40

1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回

以上

(分)

図-5 トリップ回数別平均所要時間

参照

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