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早稲田大学大学院  創造理工学研究科

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(1)

二輪車用アルミ合金製薄肉軽量ピストン およびオールアルミ合金製シリンダの開発

Development of Aluminum-made Light Weight Piston and All-aluminum-made Cylinder Block for Motorcycles

2009 年2月

早稲田大学大学院  創造理工学研究科

栗田  洋敬

(2)

目 次

第1章   本研究の社会的背景

        1

1.1

社会的背景

      1

1.1.1 地球温暖化と CO2 削減に向けた動き         1

1.1.2 CO2削減に向けた自動車業界の動き       3

1.2

二輪車エンジンの燃費性能向上に向けた課題

      6

1

章  参考文献 

      9

2

章   従来の研究と本研究の目的

      13

2.1

ピストンおよびシリンダに関する一般的事項

13

2.1.1 ガソリンエンジンの動作機構 14

2.1.2 ピストンおよびシリンダの使用環境と機能 17

2.1.3 ピストンおよびシリンダの材料と工法 32

2.1.4 ピストン,シリンダ系の摩擦と摩耗 59

2.2

従来のピストン,シリンダ技術

    79

2.2.1 従来のピストン技術とその課題 79

2.2.2 従来のシリンダ技術とその課題 85

2.3

ピストン,シリンダの課題領域における従来研究 

    92

2.3.1 ピストン用アルミ合金の陽極酸化 92

2.3.2 ピストン用アルミ合金のフレッチング摩耗 95

2.3.3 Al−Si 合金の摩擦摩耗特性 102

2.3.4 Al−Si 合金のホーニング加工 104

2.3.5 実動時のオールアルミシリンダのしゅう動メカニズム 110

(3)

2.4

本研究の目的       

  117

2.4.1 高 Cu 含有アルミ合金製ピストンのピストンリング溝への高硬度陽 極酸化処理       118

2.4.2 ピストン用アルミ合金のフレッチング摩耗特性         119

2.4.3 過共晶Al−Si合金の摩擦摩耗特性に及ぼす表面形態の影響    120

2.4.4 過共晶Al−Si合金のSi浮き出し構造の形成         121

2.4.5 過共晶Al−Si合金製オールアルミシリンダのしゅう動特性   121

2.5

本研究の波及効果

122

2.6

本論文の構成

126

2

章  参考文献

    129

第3章 高

Cu

含有アルミ合金製ピストンのピストンリング溝への高 硬度陽極酸化処理       

141

3.1

緒言

141

3.2

実験方法               

  143

3.2.1 試験用ピストン 143

3.2.2 電解液組成毎の皮膜硬さ 145

3.2.3 電解液組成毎の皮膜生成速度測定 148

3.2.4 皮膜厚さ毎の皮膜表面粗さ測定 151

3.2.5 皮膜生成時の表面温度計測 151

3.3

実験結果および考察

152

3.3.1 電解液組成が皮膜硬さに及ぼす影響 152

3.3.2 電解液組成が皮膜生成速度に及ぼす影響 156

3.3.3 皮膜厚さが皮膜表面粗さに及ぼす影響 160

3.3.4 電流波形が皮膜生成時の表面温度に及ぼす影響 163

3.4

まとめ

166

(4)

3

章  参考文献

168

第4章 ピストン用アルミ合金のフレッチング摩耗特性

  169

4.1

緒言       

      169

4.2

実験方法

      171

4.2.1 実験装置および実験条件 171

4.2.2 試験片 175

4.2.3 耐摩耗性の評価 177

4.3

実験結果および考察

181

4.3.1 試験片接触状態の検討 181

4.3.2 MMC および AC8A のフレッチング摩耗特性 182

4.3.3 実用ピストン合金のフレッチング摩耗特性 194

4.3.4 耐フレッチング摩耗性向上のための材料設計指針 202

4.4

まとめ

204

4

章  参考文献

205

5

章 過共晶

Al

Si

合金の摩擦摩耗特性に及ぼす表面形態の影響

207 5.1

緒言

207

5.2

実験方法

      209

5.2.1 実験装置 209

5.2.2 試験片 209

5.2.3 摩耗量の評価 216

5.2.4 試験荷重の設定 216

5.2.5 実験手順 216

(5)

5.3

実験結果および考察

218

5.3.1 摩擦摩耗試験結果 218

5.3.2 摩耗痕の観察 221

5.3.3 摩耗挙動に及ぼす初晶 Si 粒子浮き出し高さの影響 227

5.3.4 摩耗挙動に及ぼす潤滑油粘度の影響 230

5.4

まとめ

233

5

章  参考文献

    234

第6章 過共晶

Al-Si

合金の

Si

浮き出し構造の形成プロセスの検討

      235

6.1

緒言

235

6.2

実験方法

237

6.2.1 実験装置および試験片 237

6.2.2 接触圧力解析 240

6.3

実験結果および考察

244

6.3.1 ピンオンディスク摩耗試験機による初晶 Si 浮き出し試験 244

6.3.2 初晶 Si およびアルミマトリックスに作用するピン接触圧力 247

6.3.3 初晶 Si の臨界浮き出し高さに及ぼすピンのヤング率の影響 255

6.4

まとめ

257

6

章  参考文献

259

7

章 過共晶

Al-Si

合金製オールアルミシリンダのしゅう動特性

261

7.1

緒言

261

(6)

7.2

実験方法

262

7.2.1 評価用シリンダ試作 262

7.2.2 エンジン評価 273

7.2.3 弾性流体潤滑シミュレーション 275

7.3

実験結果および考察

280

7.3.1 エンジン評価結果 280

7.3.2 エンジン運転時の表面形状変化 284

7.3.3 表面形状変化に伴う接触部潤滑状態の変化 290

7.4

まとめ

296

7

章  参考文献

298

第8章 総 括

299

8.1  本論文の総括 299

8.2  今後の課題と展望 308

研究業績

313

1.

論文

313

2.

その他の論文および解説 

314

3.

講演

315

4.

受賞歴

317

5.

特許(出願)

318

6.

その他の特許(登録)

319

(7)

7.

その他の特許(出願)

320

謝  辞

321

(8)

第1章  本研究の社会的背景

1.1  社会的背景

1.1.1  地球温暖化と CO2

削減に向けた動き

近年,地球規模での環境変化として旱魃,大雨,洪水,ハリケーンの多発等 の異常気象が世界各地で報告されている.異常気象による世界の経済的損失は 1990 年代で年間約400 億ドルであり,これは1950 年代の約 10 倍と言われて おり,今後もさらに増加する見通し(1)である.

こうした異常気象の原因のひとつとされているのが地球温暖化である.気候 変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change; 以

下 IPCC)の第3次評価報告書によると,地球の平均気温は 400 から 500 年周

期で上下1.5 ℃の範囲で温暖化と寒冷化を繰り返してきたが,Fig.1.1に示すよ うに,現在の地球の平均気温は,19世紀後半に比べ0.6±0.2 ℃上昇(2)しており,

今後も更なる気温上昇が予想(3)されている.

上述した地球温暖化は地球環境に著しい影響を及ぼすことが懸念される.す なわち,平均降水量の変動幅増大による豪雨や旱魃の増加,陸上の氷床や氷河 の減少および海水の膨張による海面上昇等が考えられ,その結果高齢者や都市 貧困者の死亡,穀物被害リスクの増加,病害虫や媒介動物の活動活性化,土壌 浸食や洪水流量の増加などが危惧される.

地球温暖化の主たる要因としては人類の排出した温室効果ガスによるとされ ている.もともと地球の表面付近の気温は,太陽からの日射エネルギーの流入

(9)

F ig . 1 .1 N o rt h er n h e m is p h e re t e m p er a tu re c h a n g e fr o m A D 1 0 0 0 t o 1 9 9 9

(2)

. G re y s h a d ed p o rt io n s h o w s st a n d a rd e rr o r li m it s.

No rth er n h em isp her e a no ma ly

rel ati ve to 1 96 1 t o 1 99 0,

t/ -1

.0 -0 .5

0 .0

0 .5

1 .0 1 0 0 0 1 2 0 0 1 4 0 0 1 6 0 0 1 8 0 0 2 0 0 0 T im e, T / Y ea r

Instrumental data (AD1902 to 1999) Reconstruction (AD1000 to 1980) Reconstruction (40 year smoothed) Linear trend (AD1000 to 1990)

1998 Instrumental value

No rth er n h em isp her e a no ma ly

rel ati ve to 1 96 1 t o 1 99 0,

t/ -1

.0 -0 .5

0 .0

0 .5

1 .0 1 0 0 0 1 2 0 0 1 4 0 0 1 6 0 0 1 8 0 0 2 0 0 0 T im e, T / Y ea r

Instrumental data (AD1902 to 1999) Reconstruction (AD1000 to 1980) Reconstruction (40 year smoothed) Linear trend (AD1000 to 1990)

1998 Instrumental value

(10)

と,地表からの熱放射のバランスにより平均15 ℃程度に保たれている.日射エ ネルギーはほとんど大気に吸収されずに地表に到達するが,地表が温められて 放出する赤外線は大気に吸収され大気を温める.大気は宇宙空間に熱を放射し てエネルギーのバランスを保っている(4).しかしながら大気中に含まれる二酸化 炭素は赤外線の吸収率が高く,わずかな増量が大気の温度に影響を及ぼす.こ のようなガスを温室効果ガスと呼ぶ.IPCCによる第3次評価報告書(5)において は,最近50年間に観測された温暖化のほとんどは,人間活動に起因するもので あり,温暖化の大部分は温室効果ガス濃度の増加によるものであった可能性が 高いと結論付けられている.

温室効果ガスには二酸化炭素,メタン,水蒸気,パーフルオロカーボン,六 フッ化硫黄等がある.代表的な温室効果ガスである二酸化炭素(以下 CO2)の 濃度は1800年の280 ppmから1958年には315 ppm,2000年には367 ppm と大幅な増加を示している.今後も更に増加すると予想され,2100 年には540

から970 ppmに達すると見積もられている(6)

このような背景の中,温室効果ガスの排出量削減を全世界的に推進するため,

先進国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある数値目標を各国毎に設 定した京都議定書(7)が,1997年採択,2005年2月より発効され,世界的な地球 温暖化対策が開始されている.日本は1990 年に対し6 %のCO2排出量の低減 を目指すことになっているが,2010年の温室効果ガス排出量推計(8)ではCO2排 出量は13億1100万トンとなり,基準年(1990年)に対し6 %の増加となる.

京都議定書における 6 %削減目標を達成するためには合計 12 %の排出量削減 が必要となり,各方面での対策の立案と遂行が必要となる.

1.1.2  CO2

削減に向けた自動車業界の動き

(11)

このような動きを受け,自動車業界としても CO2削減に向けた取り組みが開 始されている.環境省の2004年度温室効果ガス排出量速報値(9)によると,我が 国の CO2総排出量に占める運輸部門の割合は約2 割であり,その 90 %が自動 車からの排出である(Fig.1.2).運輸部門の対策は,自動車単体対策と交通・物 流対策に大別される.

自動車単体での対策としては,触媒性能の向上(10, 11)はもとより,燃費性能の 向上および低公害車の普及がある.低公害車としては既にハイブリッド電気自 動車が実用化され,また次世代に向けて燃料電池自動車の開発も盛んに行われ

ている(12, 13).これら対策の中で燃費性能の向上は現在大多数を占めるガソリン

エンジンの CO2削減に必要不可欠であり,Fig.1.3に示すように,2010 年時点

CO2 emission 1,252,000,000 ton

(2004)

Electric power plant 6.8%

Industrial plant 37.7%

Transportation 20.9%

Office building 15.6%

Household 13.4%

Industrial process 13.4%

Waste disposal 13.4%

Fig. 1.2 CO

2

emission ratio in Japan

(9)

.

(12)

で1650万トンのCO2削減が燃費対策により見込まれている(14)

自動車の内,二輪車に着目してみると,2003 年には全世界で 3120 万台が生 産されているが,このうちの約80 %がアジア諸国(中国,インド,インドネシ ア等)で占められている(15).アジア諸国は世界人口の6割を占める地域であり,

今後も人口の増加が見込まれている.二輪車にとっても現在成長しつつある市 場であり,年6から15 %程度の成長が見込まれている.これら地域で製造販売 されている二輪車は,排気量 100 から 150 cc の中小型機種が主流で全体の約 70 %程度を占めている.公共交通機関のインフラストラクチャー整備が十分と いえないこれらの地域では,二輪車は重要な交通機関としての役割を担ってお り,個人の移動手段のみならず,家族単位での移動手段,物品の輸送,タクシ ーとしての用途などその役割は多岐にわたっている.

Fig. 1.3 Estimated reduction of CO

2

emission in transportation industry

(14)

.

1

Spread of clean energy automobile 2.2million ton

Countermeasure for commercial vehicle 1.9million ton

Aviation 1.5millon ton Improvement of

fuel consumption 16.5millon ton

Countermeasure for traffic

14.1millon ton

Efficient logistics 14.1million ton

Total amount of reduction 45.3millon ton

1

Spread of clean energy automobile 2.2million ton

Countermeasure for commercial vehicle 1.9million ton

Aviation 1.5millon ton Improvement of

fuel consumption 16.5millon ton

Countermeasure for traffic

14.1millon ton

Efficient logistics 14.1million ton

Total amount of reduction 45.3millon ton

(13)

  現在,京都議定書では途上国に対しては数値目標などの CO2削減義務は課し ていないが,地球規模でのCO2削減を考える上で,これら二輪車からのCO2排 出量低減を推進することは重要であり,これらの国々で生産を行っている我が 国の二輪車事業者にとっての責務である.

このような環境において使用される二輪車からの CO2発生の削減を考えると き,一部四輪車において実用化あるいは開発が行われているハイブリッド電気 自動車や燃料電池車等の対策は現実的ではない.ハイブリッド電気自動車は既 存のエンジンに加えてバッテリーとモーターが必要になる.排気量100から150 cc の中小型機種にこれらのデバイスを付加することは,二輪車のもつ機動性を 損なうことになる.また燃料電池については高価格であることと燃料である水 素供給が問題であり,実現には未だ相当の時間を要する(16, 17)

二輪車の構造,特性,使用される環境を鑑みると,CO2 削減に対して実現可 能で効果を発揮できる方法は,やはり現在のガソリンエンジンの燃費性能を向 上させ,効率の良いエンジンを実現することである.

1.2  二輪車エンジンの燃費性能向上に向けた課題

  ガソリンエンジンの燃費性能向上と高効率化のためには,燃料と空気の混合 気を効率よく燃焼室内に導入すること,運動部品の重量を軽減すること,エン ジン内のしゅう動部分の摩擦損失を低減することが必要である.

混合気の吸入効率を高めるためには,混合気の燃焼時に発生する熱を効率良 く放散させ,燃焼室温度を低く保つ必要がある.燃焼室温度を低く保つことに より,混合気の密度が高くなり,吸入効率を高くすることができる.

運動部品の重量軽減は,エンジン出力の向上に直結している.すなわち,エ

(14)

ンジン出力はエンジン回転数に比例して増加し,二輪車はエンジン回転数を高 くして出力を確保するため,運動部品の軽量化が重要となる.特にピストンは 往復運動部品として強く軽量化が求められる.

しゅう動部分の摩擦損失低減はエンジンの高効率化に対して重要である.エ ンジン内部では様々な部分で損失が発生しているが,Fig.1.4に示すように摩擦 損失については種々の部品の中でシリンダとピストンおよびピストンリングの 摩擦損失が最も大きく35から38 %を占める(18)と言われている.耐摩耗性に優 れ,摩擦係数の小さな表面をシリンダおよびピストンしゅう動面に形成させ,

しゅう動特性を向上させることが強く求められている.尚,本論におけるしゅ う動特性とは,しゅう動部分の摩擦特性および摩耗特性を指すものとする.

上述の要求に対し材料技術的には,燃焼室を形成するピストンおよびシリン ダの冷却性能を高め,さらにピストンでは軽量高強度化,シリンダではシリン ダボアのしゅう動特性の向上を図っていくことにより達成することができる.

具体的には,熱伝導率が高く,比重の小さいアルミ合金を用い,強度としゅう 動特性を両立させた二輪車用アルミ合金製薄肉軽量ピストンおよび二輪車用オ ールアルミ合金製シリンダを量産ベースで実用化することである.これらが実 現できれば燃費性能の向上とエンジンの高効率化が実現でき,CO2 削減へとつ なげることができる.

しかしながら現状単純な材料置換と設計変更ではアルミ合金製薄肉軽量ピス トンおよびオールアルミ合金製シリンダを実現することはできない.それはエ ンジン内部のような高温下ではアルミ合金が軟化し摩耗あるいは焼付きといっ たトライボロジー問題を容易に引き起こすためであるが,残念ながら現状では それに対する有効な設計指針が存在しない.

ピストンではエンジン運転時の熱や爆発圧力によってピストンリング溝や

(15)

F ig . 1 .4 M ec h a n ic a l lo ss r a ti o o f ea ch f ri ct io n a l p a rt o f a u to m o ti v e en g in e m ea su re d b y m o to ri n g m et h o d

(18)

.

0 2 0

4 0

6 0

8 0

1 0 0 0 1 2 3 4 5 6 E n g in e re v o lu ri o n , r / r p m

× 1 0

3

C ra n k b e a r in g

C o n r o d b e a r in g

P is to n & p is to n r in g

V a lv e s y st e m

P u m p in g l o ss A u x il ia r y m a c h in a r y

Me ch an ic al lo ss ra tio (%

)

(16)

ピストンピン孔部分に発生する摩耗(19)に対する有効な材料および表面処理に関 する設計指針の確立,シリンダではピストンやピストンリングとのしゅう動に よってシリンダボアに発生する摩耗や焼付きを防ぎ適正なしゅう動状態を維持 できる材料,表面形態および潤滑状態に関する設計指針の確立こそが,二輪車 用アルミ合金製薄肉軽量ピストンおよび二輪車用オールアルミ合金製シリンダ の実用化に必要不可欠なのである.

1

章  参考文献

(1)「日本の論点」編集部編:10年後の日本,文芸春秋(2005)181.

(2)J.T. Houghton, Y. Ding, D.J. Griggs, M. Noguer, P.J. van der Linden, X.

Dai, K. Maskell, C.A. Johnson: Climate Change: The Scientific Basis, Contribution of Working Group I to the Third Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, Published for the Intergovernmental Panel on Climate Change, Cambridge University Press

(2001)11.

(3)J.T. Houghton, Y. Ding, D.J. Griggs, M. Noguer, P.J. van der Linden, X.

Dai, K. Maskell, C.A. Johnson: Climate Change: The Scientific Basis, Contribution of Working Group I to the Third Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, Published for the Intergovernmental Panel on Climate Change, Cambridge University Press

(2001)14.

(17)

(4)松井孝典:宇宙誌,徳間書店(1993)236.

(5)J.T. Houghton, Y. Ding, D.J. Griggs, M. Noguer, P.J. van der Linden, X.

Dai, K. Maskell, C.A. Johnson: Climate Change: The Scientific Basis, Contribution of Working Group I to the Third Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, Published for the Intergovernmental Panel on Climate Change, Cambridge University Press

(2001)10.

(6)J.T. Houghton, Y. Ding, D.J. Griggs, M. Noguer, P.J. van der Linden, X.

Dai, K. Maskell, C.A. Johnson: Climate Change: The Scientific Basis, Contribution of Working Group I to the Third Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change, Published for the Intergovernmental Panel on Climate Change, Cambridge University Press

(2001)70.

(7)気候変動に関する枠組み条約の京都議定書(1997).

(8)京都議定書目標達成計画:環境省,閣議決定(2005).

(9)2004年度温室効果ガス速報値:環境省(2004).

(10)H.Yamagata: The science and technology of materials in automotive engines, Woodhead Publishing in Materials(2005)228.

(11)鈴木孝:トライボロジスト,49, 10(2004)750.

(12)佐藤登:表面技術,54, 12(2003)858.

(13)佐野充:表面技術,54, 8(2003)498.

(14)地球温暖化対策推進大綱:環境省(2003).

(15)http://jama.or.jp/world/world/world_t3.html(2006).

(18)

(16)太田健一郎,鈴木裕一:表面技術,54,12(2003)921.

(17)野城清,福井武久:表面技術,54,12(2003)927.

(18)鈴木秀和:トライボロジスト,49,10(2004)763.

(19)三宅紀明:日本機会学会誌,90, 826(1987)1167.

(19)
(20)

第2章  従来の研究と本研究の目的

  第 1 章で述べたように,二輪車エンジンの燃費性能向上と高効率化に対し,

二輪車用アルミ合金製薄肉軽量ピストンおよび二輪車用オールアルミ合金製シ リンダは材料技術で達成できる有効な方策である.しかしながらこれらは単純 な材料置換や設計変更だけでは,エンジン実動時に容易に摩耗,焼付きといっ たトライボロジー問題を引き起こすため実用化することは困難である.問題を 解決し,実用化を達成するためには,従来四輪車,二輪車に使用されてきたピ ストンおよびシリンダの機能を理解し,これらの技術的到達レベルと課題を明 確にし,その上で検討の必要な技術領域を明確にすることが必要不可欠である.

そこで本章では,まず従来四輪車,二輪車に使用されてきたピストンおよび シリンダの機能および材質,構造,工法についての基本的な知識を導入し,次 いで従来技術を調査しその課題を抽出した上で本研究の目的を明確化する.

2.1  ピストンおよびシリンダに関する一般的事項

ピストンおよびシリンダに関する基本的知識の導入として,最初にガソリン エンジンの動作機構について述べた上で,ピストンおよびシリンダの使用され る環境とその中でこれら部品が果たすべき機能について述べる.次いでピスト ンおよびシリンダに使用される材料と製造方法について調べる.最後にピスト ンおよびシリンダのトライボロジー問題を議論するために必要な摩擦,摩耗に 関する基本的知識の導入を行う.

(21)

2.1.1  ガソリンエンジンの動作機構

自動車を原動機の種類により分類すると,大きくはモーターなどの電動機,

ガソリンを燃料とするガソリンエンジン,軽油を燃料とするディーゼルエンジ ンに大別される.現在,大部分の四輪車および二輪車には,ガソリンを燃焼さ せてその燃焼圧力によりピストンを往復運動させるレシプロエンジンが搭載さ れている.代表的な二輪車用レシプロエンジンの構造をFig.2.1に示す.ピスト ンの上下方向の繰り返し動作をサイクルといい,ピストンの動く距離を行程(ス トローク)という.ガソリンと空気を混合した混合気を吸入し,これをピスト ンで圧縮し,火花により点火爆発させて,その圧力によりピストンを上下動さ せ,燃焼後のガスを排出する.レシプロエンジンには,上記動作をピストン 2 往復で行う4サイクルエンジンと,1往復で行う2サイクルエンジンがある.現 在自動車用エンジンとして用いられているのは 4 サイクルエンジンである.以 下本論では4サイクルエンジンを扱う.

Fig.2.2に4サイクルエンジンの行程を示す.吸入(Intake)行程では,ガソ

リンと空気の混合気が吸気マニホールドから吸気バルブを介して燃焼室内に導 入される.燃焼室はピストン,シリンダ,シリンダヘッドおよび吸気バルブか ら形成される空隙部分である.次いで圧縮(Compression)行程では,燃焼室 内に導入された混合気がピストンの上昇により圧縮される.その後スパークプ ラグにより混合気に火花着火され燃焼が始まる.これを爆発(Explosion)行程 という.この時の燃焼圧力がピストンを押し下げ,コネクティングロッドおよ びクランクを介して回転運動に変換される.燃焼ガスの膨張と共にピストンは 下降し,その後ピストンは上昇に転じ,上昇途中で排気バルブが開き燃焼ガス が燃焼室から排出(Exhaust)される.ピストンが上昇端(上死点という)に達 すると燃焼ガス排出は完了し,新たな混合気の吸入を開始する.エンジンは

(22)

P is to n C o n r o d

In ta k e v a lv e

C a m sh a ft P is to n p in C y li n d e r

E x h a u st v a lv e F ig . 2 .1 C u t v ie w o f re ci p ro ca te d g a so li n e en g in e fo r m o to rc y cl e.

(23)

F ig . 2 .2 S eq u en ce o f fo u r st ro k e en g in e o p er a ti o n .

V a lv e s y st e m P is to n & r in g sy st e m C r a n k s y st e m In ta k e C o m p r e ss io n E x p lo si o n E x h a u st

intake valve

(24)

上記工程の繰り返しにより動力を発生する.

以上より,二輪車エンジンに使用される 4 サイクルガソリンエンジンの動作 機構の基本知識を導入することができた.

2.1.2

ピストンおよびシリンダの使用環境と機能

 

次に上述のような動作機構の中で,ピストンおよびシリンダが置かれている 使用環境,すなわち運動状態,しゅう動状態,熱的環境について述べ,その上 で要求される機能および品質特性について述べる.はじめにピストンについて,

次にシリンダについて述べる.

2.1.2.1  ピストンの使用環境と機能

エンジンの出力は,ピストンに作用する圧力の平均値である指示平均有効圧 力(Mean effective pressure)とシリンダ数,ピストン頂部面積,ピストン行 程およびエンジン回転数から計算される.指示平均有効圧力はピストンの行程 とシリンダ内のガス圧力の関係(指示線図,Indicator diagramという)より求

められる(1).Fig.2.3 (a)に4サイクルエンジンの指示線図を示す.吸入行程(曲

線上A点からB点)においては圧力が大気圧以下に下がるが,圧縮されるにし たがって(B点からC点)その圧力は上昇し,さらにC点において点火される とその圧力は急激に上昇し,D 点においてその圧力は最大となる.次にピスト ンの下降により圧力は低下し,E 点において排気バルブが開き排気行程に移る とさらに圧力が低下し,1サイクルを終了する.このようにシリンダ内では圧力 が刻々と変化するが,実際に動力として作用する部分は Fig.2.3 (b)の曲線内部 で示される部分となる.これを 1 サイクルの間に一様な圧力が作用して仕事が 行われたものと考えると,図中斜線を施した長方形の面積となる.この高さす

(25)

Piston stroke

Ga s p re ssu re

P1

P2

P3 AB

C

D F

E

A-B Suction B-C Compression C Ignition C-E Explosion E-F Exhaust Top dead center Exhaust valve close

Bottom dead center Intake valve close Exhaust valve open

IgnitionIntake valve close

Ga s p re ssu re

Piston stroke

Mean effective pressure (a) Indicator diagram.(b) Mean effective pressure.

F ig . 2 .3 In d ic a to r d ia g ra m a n d i n d ic a te d m ea n e ff ec ti v e p re ss u re

(1, 2)

.

(26)

なわち圧力を指示平均有効圧力と呼ぶ.これより指示馬力Pi (W)は式(2.1)の ように求められる(2)

60 2

ASNn

Pi Pmi         (2.1)

但し,Pmi:指示平均有効圧力(Nm-2N :シリンダ数

A :ピストン頂部面積(m2n :エンジン回転数(rpm)

S :ピストン行程(m)

尚,式(2.1)の分母の2×60は次の意味である.4サイクルエンジンの場合 はエンジン2回転に1回の爆発があるためエンジン回転数nを2で除している.

またエンジン回転数(rpm)を 1s 当りの回転数とするため更に 60 で除してい る.

次にピストンがエンジン運転時に受ける力について述べる.ピストンはエン ジン運転時に燃焼圧力による力と自身の運動による慣性力により,繰り返し圧 縮と引張りの力を受ける.Fig.2.4(3)にピストンクランク機構の模式図を示す.

Fig.2.4においてAをピストンピン中心,Bをクランクピン中心,Oをクランク

軸中心とすると,ピストンの変位xは次式で求められる.

cos 1 cos

1 r

x       (2.2)

但し,rはクランク軸中心からクランクピン中心までの長さ, はrとコネクテ ィングロッドの長さLとの比, は上死点位置をゼロとするクランク回転角度,

はコネクティングロッドがピストンの運動方向に対してなす角である.

一方,

sin sin r

L ,sin2 cos2 1

(27)

の関係から式(2.2)は次式のように書き換えることができる.

2

2 /

sin 1 1 cos

1 r

x         (2.3)

上式を級数展開して1/ の一次の項のみとると,次の近似式が得られる.

sin2

2 cos 1 1 r

x       (2.4)

ピストンの速度は,式(2.4)を時間tについて微分することにより求めること ができ,クランクの角速度を とすると次式によりあらわすことができる.

2 2 sin sin 1

d r dx dt

u dx       (2.5)

Pg Pg

Fg

ω θ Fs A

θ+

Fr Fg + Fi = F

F1 Fr Fc

B

O

C

Fig. 2.4 Applied forces on a piston during

an engine operation

(3)

.

(28)

すなわちピストンの速度はクランク回転角度の関数となり,上死点( =0°)

および下死点( =180°)においてゼロとなる.また =74°において最大と なることがわかる.

  ピストンに作用する加速度は,式(2.4)を時間tについて 2 回微分すること により求めることができる.

2 1cos

2 cos

2 2

dt r du dt

x

a d       (2.6)

またピストンおよびピストンピン,ピストンリングの総質量をmpとすると,

ピストンに作用する慣性力Fpは次式により表すことができる.但し燃焼圧力に よって発生する力の方向,すなわち上死点から下死点に向かう方向を正とする.

2 1cos

2 cos r m

Fp p       (2.7)

ピストンに作用する爆発力をFg,往復部分の慣性力による力をFiとすると,ピ ストンに加えられる力は次式により表される.

2 cos cos

4

2

2 m r

d P F F

F g i g e         (2.8)

但し,dはピストンの直径,Peは燃焼圧力,meはピストン,ピストンピン,ピ ストンリングおよびコンロッドよりなるすべての往復質量とする.

ピストンに加えられる力が,クランク角度に対し変化する様子を Fig.2.5(4)に 示す.ピストンに加えられる力は,圧縮行程から燃焼行程に移行した直後(ク ランク角度 10 から 15°)において最大の圧縮を受け,排気行程から吸気行程 に移行する点(クランク角度360°)において最大の引張りを受けることが分か る.

次いでエンジン運転時におけるピストンの熱的環境について述べる.燃焼室 内において発生した熱の大部分は,ピストン頂部を通りピストンリング,シリ

(29)

ンダボアを経て冷却水中に放散される.エンジン運転時の燃焼ガス温度は1800

から2600 ℃に達するとされ,燃焼後,燃焼室の温度は急速に低下するものの,

排気ガスはなお500から800 ℃を保っており,この燃焼ガスから対流および熱 輻射によりピストン頂部に熱が流入する.この熱の伝導経路をFig.2.6(5)に示す.

流入した熱の 67 %はピストンリング溝からピストンリングを介してシリンダ ボアへ伝わる.24 %はピストンスカートからシリンダボアへ伝わり,残り9 % はピストン裏面からクランク室へ放熱するとされている(6)

このためピストン頂部側の温度はスカート側に比べて著しく高くなる.エン 0

-1000 -2000

-100 100 200 300 400 500 600

-200

7000 6000 5000 4000

1000 2000 3000

Crank angle, θ /degree

A p p li ed f o rc e, F /k g

Fg: Applied force caused by combustion pressure Fi: Inertial force

Fg+Fi

Fig. 2.5 Applied forces on a piston as the

function of crank angle

(4)

.

(30)

Combustion gas Piston head Piston crown

Piston pin

Radiation from undercrown Top land

Second land

Third land Top ring

Second ring

Oil ring Cylinder

Coolant Radiator Open air

Skirt Oil and air in crankcase

Fig. 2.6 Flow of thermal conduction around

piston and cylinder

(5, 6)

.

(31)

ジン運転時のピストン温度を Fig.2.7(7)に示す.アルミ合金製ピストンの場合,

ピストン頂部で 300から 350 ℃,ピストンリング溝部で200から250 ℃に達 する.

上述のような使用環境において,ピストンに要求される品質特性を Table 2.1(8)に示す.要求品質は,外径,コンプレッションハイトのように排気量や重 量から決定される部分と,リング溝幅,溝底径のようなリング溝形状に関係す る部分,またピン孔オフセット,ピン孔円筒度のようにピン孔の形状に関係す る部分に大別されている.これら各々についてエンジン性能などに基づいて公 差範囲が設定される.このようにして品質特性を規定されたピストンは,燃焼 圧力を受けシリンダ内を往復運動することにより出力を発生させている.

上述の運転環境下で要求される機能を満たすために,ピストン用材料には軽 量であることと,燃焼時の熱や燃焼圧力,慣性力に耐えることができる強度と 耐摩耗性が必要不可欠であることが分かった.このようなエンジンの動作の中 でピストンが担う機能は,

(1) 燃焼ガスをピストンリングとともにシールし,シリンダヘッドとの間 で燃焼室を形成すること

(2) 燃焼圧力を受け,ピストンピン,コネクティングロッドを介してクラ ンクシャフトに伝え,回転運動に変換すること

であることが分かった.

2.1.2.2  シリンダの使用環境と機能

一方,シリンダはそれ自体運動する部品ではないため慣性力を受けることは ないものの,Fig.2.3に示されるような燃焼圧力を受けピストンと共に燃焼室を 形成する.前述の通り,燃焼室内において発生した熱の大部分は,ピストン頂 部を通りピストンリング,シリンダボアを経て冷却水中に放散される.そのた

(32)

100200300400100200400300

200

300

400

500 200

300

400

500 Temperature, T/Temperature, T/

Tem per atu re , T

/

Tem per atu re , T

/

Gasoline engineDiesel engine

F ig . 2 .7 P is to n t em p er a tu re d is tr ib u ti o n u n d er f u ll l o a d e n g in e o p er a ti o n

(7)

.

(33)

P er p en d ic u la ri ty o f p in b o ss

C y li n d ri ci ty o f p in b o ss

O ff se t o f p in b o ss D im en si o n s re la te d t o t h e sh ap e o f p is to n p in b o ss

W a v in es s o f p is to n r in g g ro o v e

C o n ce n tr ic it y o f th e b o tt o m o f ri n g g ro o v e

D ia m et er o f th e b o tt o m p ar t o f ri n g g ro o v e

S la n t o f p is to n r in g g ro o v e

W id th o f p is to n r in g g ro o v e D im en si o n s re la te d t o t h e sh ap e o f p is to n r in g g ro o v e

C o m p re ss io n h ei g h t

D ia m et er D im en si o n s d et er m in ed f ro m d is p la ce m en t o f en g in e an d p is to n w ei g h t

Q u al it y r eq u ir em en t C la ss if ic at io n P er p en d ic u la ri ty o f p in b o ss

C y li n d ri ci ty o f p in b o ss

O ff se t o f p in b o ss D im en si o n s re la te d t o t h e sh ap e o f p is to n p in b o ss

W a v in es s o f p is to n r in g g ro o v e

C o n ce n tr ic it y o f th e b o tt o m o f ri n g g ro o v e

D ia m et er o f th e b o tt o m p ar t o f ri n g g ro o v e

S la n t o f p is to n r in g g ro o v e

W id th o f p is to n r in g g ro o v e D im en si o n s re la te d t o t h e sh ap e o f p is to n r in g g ro o v e

C o m p re ss io n h ei g h t

D ia m et er D im en si o n s d et er m in ed f ro m d is p la ce m en t o f en g in e an d p is to n w ei g h t

Q u al it y r eq u ir em en t C la ss if ic at io n

T a b le 2 .1 Q u a li ty r eq u ir e m en t fo r p is to n

(8)

.

(34)

めエンジン実動時にはシリンダボアの上死点近傍は230 ℃程度に達する.

またエンジン実動時にはピストンおよびピストンリングは式(2.5)に示され る速度でシリンダボア上を往復運動する.またこのとき,Fig.2.4中Fsで表され る力を受ける.これはピストンが最大の燃焼圧力を受けるクランク角度が10か

ら15°であり,コンロッドが傾いているためである.

上述のシリンダの使用環境を踏まえてシリンダに要求される機能を整理する

とFig.2.8 (9)に示すようになる.すなわち燃焼圧力を負荷できる高温強度を有す

ること,シリンダボアから流入する燃焼時の熱を速やかに放散できる良好な熱 伝導性を有すること, ピストンおよびピストンリングの往復運動を妨げること なく支持できる良好なしゅう動特性(しゅう動部分の摩擦特性および摩耗特性)

を有することが要求される.

これらの要求特性に対しシリンダボアの材質,寸法精度,表面形状がシリン ダの品質,性能を決定する重要な因子となる.以下にシリンダボアの寸法精度 および表面形状について,これらを規定するパラメータについて述べる.

シリンダボアの寸法は,真円度,真直度,円筒度により規定される.真円度 は円であるべき部分の幾何学的円からのずれの大きさと定義され,シリンダボ アのある円筒断面を二つの同心の幾何学的円で挟んだときの二円の半径差で表 される(10).真直度は直線でなければならない部分の幾何学的直線からのずれの 大きさと定義され,シリンダボアの軸方向の断面を同じ平面内にある二つの平 行な直線で挟んだとき,これら直線の間隔が最小となるときの値で表される(10). 円筒度は円筒であるべき部分の幾何学的円筒からのずれの大きさと定義され,

シリンダボアを二つの同軸円筒で挟んだときの二つの円筒の半径方向の間隔で 表される(10).シリンダボアの寸法はこれらパラメータのいずれかまたは組み合 わせにより管理される.この中で真円度は特に重要なパラメータであり,エン

(35)

Cylinder for high output power

Guiding piston Receiving combustion pressure Discharging combustion heat

High roundness & cylindricity Oil retention property & durability Suitable rigidity & strength High cooling rate

Good machinability Wear & scuff resistant Light weight & high strength High heat conductivity

Cast iron monolithic type Press-fit liner type Honing High P gray cast iron Aluminum alloys T6 heat treatment Composite cast type Ni-SiC composite plating Hyper-eutectic Al-Si monolithic type

PurposeRequired functionMeansRequired functions for materials

Chosen materials and technology

F ig . 2 .8 F u n ct io n s o f en g in e cy li n d er f o r h ig h p o w er

(9)

.

(36)

ジン運転時のオイル消費量に大きな影響を及ぼす.

実使用時においては,シリンダはシリンダヘッドボルトによりシリンダヘッ ドおよびクランクケースに締め付け,固定される.このときにかかる力により シリンダボアの円筒形状に変形が生じる.変形の仕方はシリンダブロックの肉 厚,構造,シリンダヘッドボルトの配置により異なる.変形量はフーリエ解析 を用いた次数解析により,Fig.2.9に示すような2次(Second order distortion)

から4次の変形(Fourth order distortion)に分類される.このうち4次変形は ピストンリングが変形に追従できないため,ピストンリングとシリンダボア間 に隙間が生じシール性が低下する.そのため 4 次変形量の増大と共にオイル消 費量も増加することになる(11)

シリンダボアの表面粗さはしゅう動特性を決定する重要な要素であり,様々 なパラメータ(12)を用いた管理がなされている.ここで代表的な粗さパラメータ と近年表面形態の管理に使用されることの多い負荷曲線(アボットカーブ,

Abbott curve)について基本的知識の導入を行う(13).なお,粗さパラメータは

JISの規格改定に伴って定義の変更が頻繁に行われているため,現在のパラメー タの定義と過去の文献,教科書で使用されている定義が異なる場合がある.そ こで,ここでは各パラメータが準拠するJISの規格番号と制定年を併記する.

Ry (JIS B0601;’94)またはRt (JIS 0601:’01):最大高さ.粗さ曲線の山頂線と 谷底線の間隔.

Rp (JIS 0601:’01):最大断面高さ.粗さ曲線の最も高い山頂から中心線までの

間隔.

Rz (JIS0601:’82):十点平均粗さ.粗さ曲線において最も高い山頂から5番目

までの山頂の平均値と,最も低い谷底から5番目までの谷底の平均値との和.

Ra (JIS B0601:’94):算術平均粗さ.粗さ曲線をz f(x)で表し,基準長さを

(37)

Lとしたとき次式により定義される.

L

a f x dx

R L

0

1   (2.9)

Rrms (JIS B0601:’82):自乗平均粗さ.表面粗さの標準偏差に相当し, とも

表示される.次式により定義される.

L

rms f x dx

R L

0 2( )

1     (2.10)

tp (JIS B0671-2:’02):負荷長さ率.粗さ曲線からその平均線の方向に基準長

(b) Second order distortion

(c) Third order distortion (d) Fourth order distortion (a) Actual distortion

Fig. 2.9 Cylinder bore distortion.

(38)

さだけを切り取り,この抜き取り部分の粗さ曲線を山頂線に平行な切断レベル で切断したときに得られる切断長さの和(負荷長さηp)の基準長さに対する比 を百分率で表したものである.ここで粗さ曲線z f(x)において,基準長さLの 範囲で高さzz dzの間にある粗さ曲線のx方向の長さと基準長さの比は確率 密度関数 z となる.平均線からcの距離での負荷長さ率は

p c c x dz

t     (2.11)

で表される.このtpの分布が表面粗さ分布の累積分布関数であり,これを負荷 曲線(アボット曲線)という.負荷曲線の例を Fig.2.10に示す.縦軸は前述の 粗さ曲線z f(x)の高さzを百分率で示したものであり,横軸は式(2.11)で示さ れる負荷長さ率tpである.通常負荷曲線は左上(tp=0 %,Depth=100 %)から

0 100

tp(%)

100 Rk

Rvk Rpk

Mr1 Mr2

D e p th (% )

Fig. 2.10 Abbott curve.

参照

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