2018年1月31日
2017年度聖路加国際大学大学院修士課程課題研究
父親役割の獲得に向けた介入方法の 有用性に関する文献レビュー
Usefulness of Intervention Method to Acquire Father's Role: A Review of the Literature.
16 MW 007
髙橋 玲央菜
目次
第1章 序論 ... 1
Ⅰ 研究背景 ... 1
Ⅱ 研究目的 ... 3
Ⅲ 研究意義 ... 3
Ⅳ 用語の定義 ... 3
第2章 方法 ... 7
Ⅰ 研究デザイン ... 7
Ⅱ 文献検索の方法 ... 7
Ⅲ データの抽出と分析方法 ... 9
第3章 結果 ... 10
Ⅰ 文献検索の過程と結果 ... 10
Ⅱ エビデンスの質の評価 ... 16
Ⅲ 採用文献の概要 ... 18
Ⅳ 介入の内容 ... 19
第4章 考察 ... 31
Ⅰ 対象の選択 ... 31
Ⅱ 介入の実施内容 ... 31
Ⅲ 日本の現状と適応 ... 37
Ⅳ エビデンスの質 ... 41
Ⅴ 研究の限界と今後の課題 ... 43
第5章 結論 ... 45
Ⅰ 採用文献の概要 ... 45
Ⅱ 父親役割意識を獲得するための具体的な介入方法 ... 45
Ⅲ 介入のアウトカムの効果 ... 46
Ⅳ バイアスリスクの評価・有用性のある介入 ... 46
引用文献 ... 48
図目次
図1 医学中央雑誌WEB(VER.5)の検索過程 ... 15
図2 THE COCHRANE LIBRARY、MEDLINE/PUBMED、CINAHLの検索過程 ... 15
図3 バイアスのリスク:各文献のサマリー ... 17
図4 バイアスのリスク:全体のグラフ ... 18
表目次 表1 医学中央雑誌WEB(VER.5)検索式 ... 11
表2 医学中央雑誌WEB(VER.5)検索式2 ... 12
表3 THE COCHRANE LIBRARYの検索式 ... 12
表4 MEDLINE/PUBMEDの検索式 ... 13
表5 CINAHLの検索式 ... 14
資料目次
資料1 採用文献の概要 ... ⅰ
1
第1章 序論
Ⅰ 研究背景
現代の日本は核家族化や女性の社会進出に伴い共働きの夫婦が増加している(厚生労働 省,2016)。家族を取り巻く環境が変わった結果、父親も子育てへの参加が求められ「育 メン」や「パパニティ」といった言葉がメディアやSNSを通して発信されている。中央調 査社の行った平成23年の父親の育児参加に関する世論調査(中央調査社,2011)によると、
平成11年の初回調査より「父親も育児を分担して積極的に参加すべき」という積極参加 派が30.2%から39.1%と増加傾向にあり、年代別に見ても積極参加派は増加傾向で、父 親の育児参加に関する認識が上昇傾向にあるといえる。しかし平成24年の父親の育児参 加に関する世論調査(中央調査社,2012)によると、積極的に育児に参加している割合は、
46.1%と半数を下回っている現状にある。また平成20年の今後の仕事と家庭の両立支援 に関する調査結果(厚生労働省,2000)では育児休業制度や短時間勤務制度を利用したいと いう男性は3割を超えているが、その後の平成27年度の雇用均等基本調査(厚生労働省,2 015)によると男性の有期契約労働者の育児休業取得率は4.05%で、前回調査より上昇傾 向にあるが未だに低い値であり、男性の育児参加は進んでいないと考えられる。これには
「男は仕事、女は家庭」という固定的性別役割意識が根強く残っていることや男性は主に 家計を担う親となることが多いことから、仕事と家事・育児の2つの立場での父親として の役割・負担の両立が行いにくいこと(手柴ら,1998)、また男性は女性のように体内に児 を宿すことができず、田中,布施,高野(2011)は「男性は視覚・聴覚・触覚などの五感で 子どもを認識して初めて父性が芽生える」と述べており、父親としてのアイデンティティ を獲得するのに時間を要することなどが考えられる。父親役割意識を高めることで父親と しての役割を見出し、父親の育児参加を高められると述べている先行研究は多い。それら
2
の先行研究から考察した父親役割の獲得に関係のある要因は用語の定義の「研究者の尺 度」にてまとめる。
社会で共同生活を行う人々は、「役割」というものを少なからず持つことである種の規 則性を持ちつつ生活をしている。G.H.ミードは役割の系譜となる「象徴的相互作用論」
を提唱し、役割には正しい、もしくはふさわしい行動に関する社会的期待(社会規範)が 伴い、これは生まれつき備わっているものではなく、社会の中で学習しながら身に付けて いくとし、この過程を役割取得の過程であると洞察している。それゆえ役割は常に個人と 社会の相互作用の中の社会的期待によって修正・再構築され、取得し遂行される。父親の 役割について川井は(川井ら,2007)、父親の役割には子どもと楽しく、仲良く、一緒にと 相互関係を有する「情緒的交流優位型」と子どもや家族を守る、支えることを中心とした
「保護機能優位型」の2つがあると述べている。また子どもが生まれることで、父親自身 の生き方や自己・男性像(男性性)がポジティブに認識されることも述べ、2つの型の父 親役割はこの男性性から生じることを示唆している。そこから、「父親役割は父親自身の 親子関係と男性性を基軸に家族全体を保護し、保障することにある」とまとめている。
産前・産後の生活支援として何かしらの支援教室を開講している施設は多く、父親の育 児参加を求める現代の日本では対象を母親のみではなく両親としている施設もある。先行 研究では父親役割獲得に向けた両親学級について、2000年代から具体的な介入の検討が 行われるようになってきており、父親学級や両親学級などの教育プログラムを行うもの や、立ち会い分娩自体を介入としていたもの両親学級への参加と立ち会い分娩を合わせた ものなど介入の種類も多種多様であった。しかし日本の父親役割獲得に向けた介入研究は 対象人数が少ないものが多く、一般化するには更なる研究が必要である。そこで本研究で は、リサーチクエスチョンを「男性が父親役割意識を獲得するための効果的な介入方法は 何か」とし、父親役割獲得に向け、現状行われている父親としてのアイデンティティ獲得 をサポートする介入について書かれたRCTを整理し、有用性を評価、考察することを目的 とした文献検討を行うこととする。
3
Ⅱ 研究目的
父親役割を獲得するための具体的な介入方法を明らかにし、その有用性を評価・考察す ること。
Ⅲ 研究意義
本研究で父親役割獲得に向けた介入を整理することや各時期に沿った具体的なケアの構 築をすることで、国内の産科領域で、父親役割獲得に向けた両親学級や妊婦健診を導入す る際の基礎的資料と成り得る。
Ⅳ 用語の定義
1.父親の役割
川井らの研究(川井ら,2007)を元に、子どもを養育すること、子どもや妻(家族)を守 る、支える(経済的・精神的に)こととする。
2.父親役割獲得過程
妻の妊娠・出産を通して男性が父親としての意識や役割を獲得していく過程のこととす る。
3.父親役割獲得を促す介入方法
男性が父親としてのアイデンティティを形成し、父親役割に関する知識・技術を得ら れ、父親としての準備を行えるような介入とする。時期の指定は行わない。
4 4.有用性がある介入
採用文献におけるバイアスリスク評価を通して論文の質を明らかにし、介入に有意差 が見られたもの有用性のある介入とする。
5.研究者の尺度
本研究では先行研究から得られた父親役割獲得と密接な関係のある要因を「具体的な父 親像の想起」、「対児感情・児との接触」、「良好な夫婦関係」、「妊娠の受け入れ」の 4つにまとめる。また同じく先行研究より日本で行われている現在の日本の父親役割獲得 に向けた介入を整理し、「父親学級・両親学級」、「児の認識を促す介入」、「立ち会い 分娩」、「出生後の児との接触」の4つにまとめる。
1)父親役割獲得と密接な関係のある要因 (1)具体的な母親像・父親像
小林(小林,2002)の研究によると、父親となる男性も、母親になる女性同様親となるた めの準備行動をしていることが述べられており、森田,森,石井(森田ら,2010)の研究でも 妻が妊娠期にある男性が、様々な体験を通じて父親としての自己像を形成していることが 述べられている。しかし日本には父親モデルがなく、具体的な父親像を想起することが難 しいということも述べられている。具体的な母親モデルとしてラモナT.マーサーの母親 役割移行過程理論が存在する。これは女性が妊娠期あるいはそれ以前に妊娠の可能性に気 付いたときから母親としてのアイデンティティを獲得しながら、子どもの成長発達に応じ て役割移行の経験を通して母親としての成長へと進む(筒井,2015)というもので、マーサ ーはその過程には特徴的な「アタッチメント・コミットメント・準備(妊娠)」、「知る こと/知り合うこと・学習・身体の回復」、「新しい正常への移行」、「母親としてのア イデンティティの達成」の4つの段階があると述べている。
5 (2)対児感情・児との接触
先行研究より、胎児をひとりの人として、また意識の有る存在として認識することによ り「父親としての現実的な意識」が高まり、「我が子を育てたい」という具体的で実際的 な父親意識として発達するということが述べられている。また、愛着の度合いと親性の発 達は密接な関係があり、対児感情を肯定的にする因子として、親としての発達的変化が多 く、適応的な性格について、元々子ども好きであること、妊娠について積極的に喜びを感 じていること、育児や家事への思いが関係していることが述べられている。(角森,山口, 2012;神崎,2005;榊原2000)
(3)良好な夫婦関係
先行研究では親となる男性がパートナーの妊娠を機にパートナーへの愛情を再確認する ことで、夫・父親として協力する気持ちが芽生え、産後も継続してパートナーの為に役割 を担っていく必要性を感じ、自分なりの父親像を形成していくと述べている(古田ら,199 9;池尻ら,1998; 神崎,2005;榊原2000;菊池ら,2005;森田ら2010)。これには結婚期間や不 妊治療後、年齢、育ってきた環境などの要因も関わってくるため、個別が高く、アセスメ ントを行った上で支援を行う必要がある。
さらに夫の対児感情にも夫婦関係が関わってくると述べている研究もあり(池尻ら,199 8;古田ら,1999)、パートナーの胎児に関する頻繁な情報提供が男性の父親としての意識 を刺激し、親としての生きがいを発達させるということも述べられている。
(4)妊娠の受け入れ
妊娠の受け入れとは、パートナーとの子どもを望んでいながらも「ちゃんと育てられる か不安である」といった、喜びと不安のアンビバレンスな父親としての責任を感じるとい うものである。渡邉や角森ら(角森,山口,2012;渡邉,1999)は、妊娠が進むにつれ胎動を 自身の手で感じ、胎児の存在を確認することやパートナーの身体の変化を実際に見ること で不安が父親としての責任に変わっていったと述べている。また山本ら(山本ら,1995) は、パートナーの妊娠初期に夫がうまく適応できるか否かは夫がパートナーの妊娠を望ん でいたか否かによるという事が述べられており、男性が胎児を認識し、不安を父親として
6
の責任に転換していけるよう、男性がパートナーの妊娠をどの様に受け止めているのかを 確認していく事が必要なのではないか。
2)日本の父親役割獲得に向けた介入 (1)父親学級・両親学級
川口ら(川口ら,2016)は、産前に行われた1回のみの教育プログラムでは、育児・家事 に関する意識を高めること、父親としての役割を見出すことができたとしても産後の育 児・家事行動を増加させるまでには至らなかったが、クラスの回数を増やし、プログラム 参加者との対話を重ねることや体験談を聞くこと、妻との相互作用を重ねることで父親も 妊娠・出産に積極的に関わることができるようになり、夫婦で臨むことができるようにな ったと述べている。
(2)児の認識を促す介入
菊池ら(菊池ら,2005)は「まだ見ぬ児にメッセージカードを書くことや、胎児画像を見 ること、胎動を感じてもらうことは、回数を重ねる毎に胎児への関心を高めることがで き、徐々に父親としての思いや気持ちを表現することができるようになった」と述べられ ている。
(3)立ち会い分娩
武市らは(武市ら,2004)立ち会い群の方が育児参加に対する気持ちが高まっており、非 立ち会い群に比べ有意に高値であり、さらに立ち会い群で児との早期接触場面において、
花沢の対児感情評定尺度により表情、目線、行動、全てにおいてプラスの項目が多く見ら れ、児への愛着が示されたと述べている。
(4)「出生後の児との接触」
沐浴体験後、抱っこ、カンガルーケア、スキンシップのいずれも、花沢の対児感情評定 尺度により体験後に児との接近得点が上昇し、児に対する父親の肯定感情が高まり、抱っ こに関しては妊娠期と抱っこ後で有意差も認められた。ベビーマッサージ後も日本版MAI 尺度により児への愛着が上昇していることが示されたことが述べられている(舛舘ら,200 5;室岡ら,2007)。
7
第2章 方法
Ⅰ 研究デザイン
本研究は、現在行われている父親役割意識を獲得するための具体的な介入方法を検討し その有用性を評価・考察することを目的とした文献レビューとした。
Ⅱ 文献検索の方法
1.検索語と検索式の設定
文献検索は、国内・諸外国の状況を把握するために、医学中央雑誌Web(Ver.5)並び に、Medline/PubMed、The Cochrane Library、CINAHLを用いて検索した。
検索したキーワードは、2017年11月の時点で、和文献は「親らしさ」「父性行動」
「アイデンティティ」「意識過程」「出産前教育」「産後ケア」「妊婦健康診査」「立ち 合い出産」「立ち合い分娩」をORで組み合わせ、研究対象である「父親」「男親」をOR で組み合わせたものとのAND検索を行った。また「親役割」、「親意識」の2つのキーワ ードは「親らしさ」というキーワードに統制されるため用いなかった。英文献は「Pater nal Behavior」、「Parenting」、「Role」、「Identification (Psychology)」「Ment al Processes」「Work-Life Balance」「Housekeeping」「Prenatal Education」「Pos tnatal Care」をORで組み合わせ、「fathers」とのAND検索を行った。
8 2.文献の選択
文献の選択基準は以下の通りとし、この基準に沿ってタイトルレビュー、アブストラク トレビュー、アーティクルレビューを行った。なお、疾患や障害を持つ児、早産児や低出 生体重児の親を対象とした論文、不妊治療や遺伝が主体となっている論文は除外した。
研究テーマの変遷を年代別に追っていくと、1990年代は父親役割意識がパートナーの 妊娠中にどのように変化していくのかを研究した文献や、父親役割意識を高める関連要因 を明らかにした文献に始まり、そこで明らかになった関連要因に対して医療者がどのよう に関わっていく必要があるかを述べていた。2000年代に入ると父親役割獲得に向けた具 体的な介入の検討が行われるようになっていた。今回は父親役割に関する研究の変遷を整 理する意味も含め、検索する文献の年数は敢えて限定しなかった。
1)内容
リサーチクエスチョンに基づき、男性の父親に関する意識、行動、役割について明確に 記載されているもの。エビデンス評価が可能なもの。
2)対象者
初産婦及び経産婦のパートナーの男性 3)文献の種類
原著論文。研究デザインはランダム化比較試験とした。
4)セッティング
国や地域の設定は限定しない。
5)介入の種類
効果的な介入方法を検討するため限定しない。また出産前教育に限らず、妊婦健診への 参加、立ち合い出産、産後サポート等も含む。
6)言語
英語もしくは日本語。
9 7)対象資料
日本国内で入手可能なもの。
Ⅲ データの抽出と分析方法
1. 文献の選択
検索結果より、本研究の目的と異なるものを除外し、採用された文献から研究者によっ て情報(著者、発行年度、研究デザイン、対象者、研究目的、メインアウトカム、使用尺 度・資料・スケール、父親役割獲得に向けたプログラムの介入内容・方法、介入の効果、
標準ケアの内容、介入が働きかけている父親役割獲得の要因、プログラムの介入時期・回 数・所要時間、介入実施者)を抽出しMatrix分類を行った。
2. バイアスリスク評価
Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Intervention(Higgins,2011)を用い てエビデンスの質を評価する。ランダム割り付け表の作成(選択バイアス)、割り付けの 隠蔽化(選択バイアス)、研究参加者・研究者の盲検化(実行バイアス)、アウトカム評価 者の盲検化(検出バイアス)、不完全なアウトカムデータ(症例減少バイアス)、選択的報 告(報告バイアス)、その他のバイアスの各項目について吟味した。
10
第3章 結果
Ⅰ 文献検索の過程と結果
2017年9-12月に文献検索を行った。
和文献は医学中央雑誌Web(ver.5)より検索し、表1のような検索結果となった。得られ た668文献に「NICU」「不妊治療」「早産児」「がん」「ダウン症候群」「性教育」「D V」「ドメスティックバイオレンス」「障害」「死産」の10個のキーワードをそれぞれNO Tで組み合わせ489文献が抽出され(表2)、タイトルレビュー、アブストラクトレビュー、
アーティクルレビューを行い1件が採用された。検索の過程を図1に示す。
英文献はThe Cochrane Library、Medline/PubMed、CINAHLより検索し表3~5のような 検索結果となった。The Cochrane Library126件、Medline/PubMed40件、CINAHL28件が 抽出され、重複を除き、タイトルレビュー、アブストラクトレビューを行い合わせて12 文献が抽出され、タイトルレビュー、アブストラクトレビュー、アーティクルレビューを 行い6件が採用された。検索の過程を図2に示す。
上記の結果から、採用文献は和文献、英文献合わせて7件となった。
11 表1 医学中央雑誌Web(ver.5)検索式
文献数
#1 父親 6162
#2 男親 2613
#3 親らしさ 1057
#4 父性行動 1319
#5 アイデンティティ 4470
#6 意識過程 131333
#7 出産前教育 453
#8 妊婦健康診査 2866
#9 立ち合い分娩 34
#10 立ち合い出産 2
#11 #1 or #2 6164
#12 #3 or #4 or #5 or #6 or #7 or #8 or # 9 or #10
142363
#13 #11 and #12 1304
#14 (#13) and (PT=原著論文) 668
12 表2 医学中央雑誌Web(ver.5)検索式2
#15 #14 not NICU 641
#16 #15 not 不妊治療 633
#17 #16 not 早産児 630
#18 #17 not がん 615
#19 #18 not ダウン症候群 609
#20 #19 not 性教育 600
#21 DV or 配偶者虐待 or 家庭内暴力 or デー トDV
43769
#22 #20 not #21 573
#23 #22 not 障害 493
#24 #23 not 死産 489
表3 The Cochrane Libraryの検索式
文献数
#1 fathers 616
#2 Paternal Behavior[MeSH] 28
#3 Parenting[MeSH] 1045
#4 Role[MeSH] 1211
#5 Identification (Psychology)[MeSH] 277
#6 Mental Processes[MeSH] 38952
#7 Work-Life Balance 25
#8 Housekeeping[MeSH] 57
#9 Prenatal Education[MeSH] 24
#10 Postnatal Care[MeSH] 401
#11 #2 or #3 or #4 or #5 or #6 or #7 or # 8 or #9 or #10
41562
#12 #1 and #11 126
13 表4 Medline/PubMedの検索式
文献数
#1 fathers[MeSH Terms] 7679
#2 paternal behavior[MeSH Terms] 1588
#3 Parenting[MeSH Terms] 13534
#4 Role[MeSH Terms] 100622
#5 Identification(Psychology) 43165
#6 Mental Processes[MeSH Terms] 909615
#7 Work-Life Balance[MeSH Terms] 130
#8 Prenatal Education[MeSH Terms] 136
#9 Postnatal Care[MeSH Terms] 4845
#10 #2 or #3 or #4 or #5 or #6 or #7 or #8 or #9
914049
#11 #1 and #10 1667
#12 (#11) Filters: Randomized Controlled Trial and Clinical Controlled Trial
40
14 表5 CINAHLの検索式
文献数
#1 fathers 9280
#2 (MH "Paternal Behavior") 262
#3 (MH "Parenting") 12935
#4 (MH "Role") 5576
#5 Identification (Psychology) 0
#6 (MH "Mental Processes") 5372
#7 (MH "Work-Life Balance") 575
#8 Housekeeping 1151
#9 Prenatal Education 233
#10 (MH "Postnatal Care") 3865
#11 #2 or #3 or #4 or #5 or #6 or #7 or # 8 or #9 or #10
29739
#12 #1 and #11 1443
#13 (#12) Filters:Dissertations 28
15 図1 医学中央雑誌Web(ver.5)の検索過程
図2 The Cochrane LibraryとMedline/PubMed検索過程
16
Ⅱ エビデンスの質の評価
1. バイアスリスク評価(図3)
1)ランダム割り付け表の作成
採用文献7件中6件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008; Doherty,W.J.,Erick son,M.F. et al.,2006;Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Cent er,B.,2002;Shapiro Alyson et al.,2011山口,佐藤ら,2015)はRCTで、1件(Bryan AA.,2 000)は準RCTであった。
7件中6件(Benzies et al.,2008;Doherty et al.,2006;Frank et al.,2015;Gjerdinge n et al.,2002;Shapiro et al.,2011,山口ら,2015)がランダム割り付けを行っており、
そのうち5件(Benzies et al.,2008; Doherty et al.,2006;Frank et al.,2015;Gjerdin gen et al.,2002;Shapiro et al.,2011)がコンピューターを用いた割り付け表を作成し ていた。Doherty et al.(2006)は、乱数表によってランダムに割り付けていたが、介入 による大きな脱落を予想し、介入群:対照群=5:4の比率で割り付けていた。山口ら(201 5)は割り付け方法の詳細は記載されていなかった。
2)割り付けの隠蔽化
Gjerdingen,D.K., & Center,B.,(2002)はブロックランダム化によって、Doherty,W.
J., Erickson,M.F. et al.(2006),Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,(2015)の2件は単純 ランダム化によって、Benzies, K., Magill‐Evans, J. et al.(2008)は教育水準毎に 層別ランダム化によって、割り付けの隠蔽化を行っていた。その他の2件(Shapiro Alyso n et al.,2011;山口,佐藤ら,2015)は割り付けの隠蔽化について明確な記載がなかった。
3)研究参加者・研究者の盲検化
7件全てにおいて研究参加者・研究者共に盲検化についての記載がなかった。
4)アウトカム評価者の盲検化
7件全てにおいてアウトカム評価者の盲検化についての記載がなかった。
17 5)不完全なアウトカムデータ
(1)ITT解析の有無
7件中3件(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Shapiro Alyson et al.,2011;
山口,佐藤ら,2015)は、intention-to-treat(ITT)解析が行われていた。Shapiro Alyson et al.(2011)は有意でない傾向が有意性に近づいた場合(p≦10)の非準拠参加者を除く フォローアップ分析を実施した。また4件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;
Bryan AA.,2000;Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Center,B., 2002)はITT解析に関する明確な記載がなかった。
(2)脱落率
ITT解析に関する明確な記載が行われ なかった4件(Benzies,K.,Magill‐Evan s,J. et al.,2008;Bryan AA.,2000;Fra nk,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjer dingen,D.K., & Center,B.,2002)の脱 落率は次のようであった。Benzies, K., Magill‐Evans, J. et al.(2008)は介 入群の脱落率は13%、対照群の脱落率は 8%とほぼ均等であった。Bryan AA.(200 0)は介入群の脱落率22%、対照群の脱落 率25%とほぼ均等であった。Frank,T.
J.,Keown,L.J. et al.,(2015)は介入群 の脱落率は父親13%、母親8%、対照群の
脱落率は父親10%、母親5%とほぼ均等であった。Gjerdingen,D.K., & Center,B.,(2002) は脱落率14%、介入群と対照群での脱落者の人数は介入群は8人、対照群は12人とほぼ均 等であった。
図3 バイアスのリスク:各文献のサマリー
18 6)選択的報告
7件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Bryan AA.,2000;Doherty,W.
J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Frank, T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerding en,D.K., & Center,B.,2002;Shapiro Al yson et al.,2011山口,佐藤ら,2015)と も論文中に介入の手順、アウトカムが詳 細に記載されていたが、別立てのプロト
コールは示されていなかった。しかし7件とも事前に設定された調査対象のアウトカムは 明確に報告されていた。
7)その他のバイアス
7件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Bryan AA.,2000;Doherty,W.J.,Eric kson,M.F. et al.,2006;Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Cen ter,B.,2002;Shapiro Alyson et al.,2011山口,佐藤ら,2015)ともアウトカムに影響を 与える可能性のあるバイアス(早期試験中止、研究デザイン特有の問題、ベースラインの 不均衡、非ブラインド化、鑑別診断活動)はなかった。しかしサンプルサイズにおいて、
Bryan AA.,2000はサンプルサイズを計算してはいたが、対象者の人数がそれを下回って いた。また山口,佐藤ら(2015)はサンプルサイズの計算をしておらず、対象としている人 数も5-6人ととても少なかった。
Ⅲ 採用文献の概要
1.発表年度
採用文献は2000-2015年に発表された論文であった。内訳は2000年(Bryan AA.,2000)、
2002年(Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002)、2006年(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. e t al.,2006)、2008年(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008)、2011年(Shapiro A
図4 バイアスのリスク:全体のグラフ
19
lyson et al.,2011)の研究が各1件、2015年(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;山 口,佐藤ら,2015)の研究が2件であった。
2.対象者
介入の対象者はカップルを対象とした文献が4件(Bryan AA.,2000;Doherty,W.J.,Erick son,M.F. et al.,2006;Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002;Shapiro Alyson et al.,2 011)、父親のみの文献が2件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;山口,佐藤ら, 2015)、夫婦(婚姻関係にある)を対象にした文献が1件(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2 015)であった。
Ⅳ 介入の内容
採用文献7件を、父親役割獲得に向けた介入の内容を明らかにし、資料1に要約した。
1.介入の方法
採用文献7件のうち6件(Bryan AA.,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;F rank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002;Shapiro Aly son et al.,2011;山口,佐藤ら,2015)は、両親学級やワークショップ等の教育プログラム を行っていた。また1件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008)は父親と児が遊ぶ 様子をビデオに撮り、撮影後にフィードバックを行うという方法であった。
2.介入の時期・回数・所要時間・実施者 1)介入の時期
産前のみに行われた文献が2件(Bryan AA,2000;Gjerdingen,D.K., & Center,B.,200 2)、産後のみに行われた文献が2件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Frank, T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)、妊娠期間中から産後にかけて行われた文献が2件(Doher
20
ty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Shapiro Alyson et al.,2011)、産前介入群・産 後介入群・非介入群の3つに分けて行われた文献が1件(山口,佐藤ら,2015)であった。
2)介入の回数
採用文献7件の介入の実施回数は、最少が1回で、最多が8回だった。内訳は1回のみ行 った文献(Bryan AA.,2000;Shapiro Alyson et al.,2011;山口,佐藤ら,2015)が3件、8回 行った文献(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006)、3回行った文献(Benzies,K.,M agill‐Evans,J. et al.,2008)と2回行った文献(Gjerdingen,D.K., & Center,B.,200 2;)、また記載がなかった文献(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)が1件ずつであっ た。
3)介入の所要時間
採用文献7件のうち、6件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Bryan AA.,200 0;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006; Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gj erdingen,D.K., & Center,B.,2002;山口,佐藤ら,2015)は所要時間についての記載があっ たが、1件(Shapiro Alyson et al.,2011)は詳細な記載がなかった。
介入の合計時間は、最短が1時間で、最長が16時間であった。内訳は16時間(Doherty, W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006)、5時間半(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)が それぞれ1件、2時間が2件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Bryan AA.,200 0)、1時間が2件(Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002;山口,佐藤ら,2015)であった。介 入の合計時間の平均は4.6時間であった。
採用文献7件の介入の1回あたりの時間は、最短が30分で、最長2時間であった。内訳 は、2時間(Bryan AA.,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006)と1時間(Benzie s,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;山口,佐藤ら,2015)がそれぞれ2件、30分が1件(Gj erdingen,D.K., & Center,B.,2002)、また1回あたりの時間についての記載がなかった文 献も1件(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)あった。介入の1回あたりの平均は1.3時 間であった。
21 4)介入の実施者の概要及び人数
採用文献7件のうち、介入の実施者について記載されている文献は4件(Doherty,W.J.,E rickson,M.F. et al.,2006;Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015Gjerdingen,D.K., & C enter,B.,2002; Shapiro Alyson et al.,2011)で、記載のなかった文献は3件(Bryan A A.,2000;Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;山口,佐藤ら,2015)であった。実 施者の概要は平均15年以上の経験を持つ教育者、インストラクター、訓練し認定を受け たファシリテーター、開業医、訓練を受けた産前教育に関する教育者、認可された心理療 法士、研究者と統一されていなかった。また実施者の性別について記載があったのは、D oherty,W.J., Erickson,M.F. et al.(2006)のみで、男女ペアのインストラクターを1人 ずつ採用していた。
実施者の人数は、採用文献7件とも記載がなかった。
3.介入が働きかけている父親役割獲得の要因
序論で述べた4つの父親役割獲得と密接な関係のある要因(「具体的な父親像の想 起」、「胎児感情・児との接触」、「夫婦関係」、「妊娠の受け入れ」)毎に文献を分類 すると(重複あり)、「対児感情・児との接触」について働きかけている文献が5件(Benzi es,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Bryan AA.,2000; Frank,T.J.,Keown,L.J. et a l.,2015;Shapiro Alyson et al.,2011;山口,佐藤ら,2015)、「夫婦関係」について働き かけている文献が5件(Bryan AA.,2000; Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Fra nk,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002; Shapiro Alys on et al.,2011)、「具体的な父親像の想起」について働きかけているものが3件(Bryan AA.,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;山口,佐藤ら,2015)、「妊娠の受 け入れ」について働きかけている文献は見当たらなかった。
22 4.介入の詳細・効果
採用文献7件を介入の種類ごとに詳細と効果についてまとめていく。
1)教育プログラム (1)プログラムの詳細
教育プログラムで採用されていた方法は全部で4つあり、内訳は「参加者同士の交流 を促すプログラム」、「演習プログラム」、「講義型プログラム」、「カップルでのみ行 うプログラム」であった。
(a)参加者同士の交流を促すプログラム
参加者同士の交流を促すプログラムはグループディスカッションやコミュニケーション 演習であり、7件中5件(Bryan AA,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Fran k,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002; Shapiro Alyso n et al.,2011)が取り入れていた。内容は5件全ての文献が夫婦関係・夫婦協同につい て、次いで児の発達と特徴・父親の児への関わりの強化についてが4件(Bryan AA,2000;D oherty et al.,2006;Frank et al.,2015;Shapiro et al.,2011)、父親の役割(Bryan A A,2000;Shapiro et al.,2011)、親子関係(Doherty et al.,2006;Frank et al.,2015)、
育児技術向上支援(Doherty et al.,2006;Shapiro et al.,2011)、育児における父親の 積極的な態度(Doherty et al.,2006;Shapiro et al.,2011)、仕事と家庭のバランス(Fr ank et al.,2015;Gjerdingen et al.,2002)が各2件ずつ、親とはなにか(Doherty et a l.,2006)、親への移行に伴う困難(Shapiro et al.,2011)、親としての関わり方(Doherty et al.,2006)、が各1件ずつであった。
(b)講義型のプログラム
講義型のプログラムは、7件中5件(Bryan AA,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et a l.,2006; Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Shapiro Alyson et al.,2011;山口,佐 藤ら,2015)が取り入れていた。内容は7件中3件(Bryan AA,2000;Frank et al.,2015;Sha piro et al.,2011)が児の発達と特徴、7件2件(Bryan AA,2000;Frank et al.,2015)が夫
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婦関係・夫婦の協同、父親の役割(Bryan AA,2000)、児とのコミュニケーション方法(Doh erty et al.,2006)、父親が育児をする意義(山口ら,2015)、育児に関する知識の提供(山 口ら,2015)は1件ずつであった。また講義型を取り入れた5件のうち4件(Bryan AA,2000;D oherty et al.,2006;Frank et al.,2015;Shapiro et al.,2011)は参加者同士の交流を 促すプログラムを併用していた。山口ら(2015)の文献は個々の対象者の都合に合わせて 開講したため1-2人の個別指導であった。
(c)演習プログラム
演習プログラムは、育児技術の取得を目的としたビデオ鑑賞、デモンストレーション、
ロールプレイングであり、7件中4件(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Frank, T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Shapiro Alyson et al.,2011;山口,佐藤ら,2015)が取り 入れていた。
(d)カップルのみで行うプログラム
カップルのみで行うプログラムはカップルで育児や仕事、各種家事(料理、清掃、洗 濯、芝生の手入れ、除雪、修理、買い物、支払いなど)の週ごとの計画表を作るもので、
7件中1件(Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002)でのみ取り入られていた。
(2)教育プログラムにおけるアウトカム
父親役割獲得も目的とした教育プログラムのアウトカムは全部で12個あり、それを
「父親の児への関わりの変化」、「父親の思いの変化」、「父親の行動の変化」、「夫婦 関係の変化・満足度」、「育児を行う上での身体的・精神的健康の状態」の5種類に分類 した。アウトカム毎にその文献数と測定尺度を述べる。
(a)父親の児への関わりの変化
父親の児への関わりの変化は「父子相互作用の変化」と「父親の関わり方の変化」の2 つのアウトカムで構成されている。それぞれの文献数は父子相互作用の変化をアウトカム にしている文献は採用文献7件中3件(Bryan AA,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et a
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l.,2006;Shapiro Alyson et al.,2011)で、父親の関わり方の変化をアウトカムにしてい る文献は採用文献7件中1件(Doherty et al.,2006)であった。
「父子相互作用の変化」の測定尺度は3件の文献において、Nursing Child Assessment Teaching Scale(NCATS; Sumner & Spietz, 1994) が1件(Bryan AA,2000)、Parent Beha vior Rating Scale(Mahoney, Powell,1986)が1件(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et a l.,2006)、LTP(FivazDepeursinge&Corboz-Warnery,1999)が1件(Shapiro Alyson et a l.,2011)と全て異なっていた。「父親の関わり方の変化」の尺度ではなく、父親の関与 の中心的要素として特定された3つの変数(Pleck, Lamb, and Levine,1985)によって評価 されていた。
(b)父親の思いの変化
父親の思いの変化は「父親としての責任感の変化(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et a l.,2006)」、「子ども観の変化(山口,佐藤ら,2015)」、「平等主義的性役割態度の変化 (山口,佐藤ら,2015)」の3つのアウトカムで構成され、文献数は各1件ずつであった。
「父親としての責任感の変化」の測定尺度はThe Interaction/ Accessibility Time C hart(McBride, 1990, 1991; McBride & Mills, 1993)と、Parental Responsibility Sc ale (PRS; McBride,1990)の2つの測定尺度が使われていた。「子ども観の変化」の測定 尺度は、子ども観尺度(福丸ら,1999)、「平等主義的性役割態度の変化」は平等主義的性 役割態度スケール短縮版(鈴木ら,1994)であった。
(c)父親の行動の変化
父親の行動の変化は「父親の行動の変化(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)」、
「母親と父親の育児報告(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)」、「育児・家事時間の 変化(山口,佐藤ら,2015)」の3つのアウトカムで構成され、文献数は各1件ずつであっ た。
「父親の行動の変化」の測定尺度は、The Parenting Task Checklist (PTC;Sanders
& Woolley, 2005)、「母親と父親の育児報告」の測定尺度はThe Authoritative Parent
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ing Style (APS;Robinson, Mandleco, Olsen & Hart, 2001)、「育児・家事時間の変 化」には尺度は用いられず、介入前後の育児と家事時間を比較していた。
(d)夫婦関係の変化・満足度
夫婦関係の変化・満足度は「夫婦関係の変化(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,201 5)」、「夫婦の満足度(Frank et al.,2015;Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002)」、
「夫婦の仕事状況の変化(Gjerdingen et al.,2002)」の3つのアウトカムで構成された。
文献数は各1件ずつであった。
「夫婦関係の変化」の測定尺度には、The Parent Problem Checklist (PPC;Dadds & Po well, 1991)とThe Relationship Quality Index (RQI;Norton, 1983)の2つの測定尺度 が使われていた。「夫婦の満足度」の測定尺度はMarital Satisfaction Scale(Kansas,1 986)、「夫婦の仕事状況の変化」の測定尺度はDeterminants of family task sharing:
a study of husbands and wives.(Bird GW, Bird GA, Scruggs M,1984)であった。
(e)育児を行う上での身体的・精神的健康の状態
育児を行う上での身体的・精神的健康の状態は「身体的健康(Gjerdingen,D.K., & Cen ter,B.,2002)」と「精神的健康(Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002)」の2つのアウト カムで構成され、文献数は各1件ずつであった。
「身体的健康」の測定尺度は、SF-36 survey(McHorney CA, Ware JE, Rachel JF,199 4)、「精神的健康」の測定尺度はThe quality of life measure(Hyland & Sodergren,1 996)であった。
(3)教育プログラムの効果
教育プログラムの効果をアウトカム毎に論述する。
(a)父親の児への関わりの変化
父子相互作用の変化についてBryan AA.(2000)はコミュニティで利用可能な出産準備ク ラスに、父・母親の役割、幼児の相互作用能力、産後の3ヵ月についての3つの内容をく わえたGCF(Growing as a Couple and Family)クラスという介入を行い、対照群と比較し
26
た。その結果、介入群は親子相互作用について、対照群より高いスコアを有し、児とより 強い交流を示すことが判明した。父親におけるNCATSの基準は確立されてはいないが、母 親のNCATSのカットオフ値が10%であることを用いると、介入群と対照群の男性の違いは 大きく、11人の対照群男性(26.2%)および3人の介入群男性(8.6%)がカットオフ値 を下回った(p = 0.04)。また介入群の方が児の泣きなどの負の反応に対するカップル の反応が対照群に比べて有意に高かった。(介入群平均= 10.13、対照群平均= 9.73、p =
<0.05)さらに介入群の父親は社会的で感情的な成長(撫でる、抱きしめる、キスをす る、笑顔、褒める、児の成長に興奮する)が促進され、叫ぶことや否定的で批判的な発言 をすることを避けるようになったことからも児への反応性、児の成長の理解が高まると予 想された。
父子相互作用の変化についてDoherty,W.J., Erickson,M.F. et al.(2006)は父親役割 獲得中の父親の関与とカップルの協力に関する8回の教育的介入プログラムのうち第6-8 回の結果を対照群と比較した。その結果、父子相互作用の質については、思いやり・感情 的支援[F (1, 125) = 3.85, p< .05]、攻撃性[F (1, 125) = 4.87, p< .05]、肯定的影 響[F (1, 125) = 6.51, p< .01]、双方の同調性[F (1, 124) = 10.60, p< .001]につい て介入群に有利な有意差があった。子どもとの関わりや否定的な影響については有意差が なかった。全体的なスコアの質は介入群で有意に高く、効果量は出産後6ヶ月では0.47、
12ヶ月で0.31であった。
父子相互作用の変化についてShapiro Alyson et al.(2011)は、自宅訪問を行い、対象 者のベースラインを確認した後、産前教育クラス(ワークショップ)に参加、その後3ヵ月 後に自宅を訪問し研究者が設定した4場面についてビデオ撮影を行うという介入のうち、
ビデオ撮影の結果を対照群と比較した。TICSを用いてコーディングされた結果を主成分 分析すると、介入群の方が父親と児が積極的に関わりを持っており、父親は児を注意深く 観察していた。しかし母親と児、父親と児の様に2人で遊んでいる時のもう一方の親が関 わる頻度は、介入群と対照群で有意差がなかった。また妊娠前にBBH(Bringing Baby Hom e)ワークショップを受けた父親は[M = 2.17、F(1,67)= 6.56、p = 0.012、n2p=.07
27
0]、赤ちゃんの出産後にワークショップを受けた人よりも、母と児が遊んでいる時に参 加する事が少ない傾向があった(M = 5.17、p = .012、d = 3.64)。
父親の関わり方の変化をアウトカムにしているDoherty,W.J., Erickson,M.F. et al.
(2006)は、父親役割獲得中の父親の関与とカップルの協力に関する8回の教育的介入プロ
グラムのうち第3-4回の結果を対照群と比較した。その結果、就業日に介入群の父親は、
対照群の父親よりも多く児の相手ができるようになった。効果量は、6ヶ月評価では0.4 2、12ヶ月間では0.30であった。
(b)父親の思いの変化
父親としての責任感の変化をアウトカムにしているDoherty,W.J., Erickson,M.F. et
al.(2006)は、父親役割獲得中の父親の関与とカップルの協力に関する8回の教育的介入
プログラムのうち第2回の結果を対照群と比較した。その結果父親の責任に関しては介入 群と対照群で有意差はなかった。
子ども観の変化をアウトカムにしている山口,佐藤ら(2015)は、対象者個々の都合に合 わせた父親学級(オリエンテーション、父親が育児をする意義の解説、育児に関する知識 の提供、育児技術の演習)を行い、介入の時期を産前、産後に分け対照群と3群で比較し た。その結果、3群間の産前から退院1ヵ月までの時間経過による2要因反復分散分析で交 互作用があり(p=0.02)、被験者内因子の多重比較では、産後介入群の得点が産前よりも 退院1ヵ月後の方が有意に増加していた(p=0.00)。そのため介入を産後に行うことによっ て育児による関心が高まっていたといえる。
また山口,佐藤ら(2015)は平等主義的性役割態度の変化もアウトカムにしており、3群 間の産前から退院1ヵ月後までの時間経過による2要因反復測定分散分析では、得点に有 意差はなかった。
(c)父親の行動の変化
父親の行動の変化をアウトカムにしているFrank,T.J.,Keown,L.J. et al.,(2015)は、
トリプルP(Positive Parenting Program)という前向き子育てプログラムという親子相互 作用に焦点を当てた幅広い焦点育成プログラムを8週間行い、対照群と比較した。その結
28
果、介入後にネガティブな育児行動が対照群に比べF(1,39)= 10.77、p = .002、d = .
61で、有意に少なかった。また6ヵ月後でも介入後の結果が維持され、さらに時間の経過
とともに(介入前から6カ月間のフォローアップまで)、父親と母親の両方の児の行動およ び様々な育児に中程度から大きな効果が見出された。また父親のネガティブな育児習慣の 低下に対する効果の大きさと育児に対する自己効力感の有用性の増加は中程度であった。
またFrank,T.J.,Keown,L.J. et al.,(2015)は母親・父親の育児報告もアウトカムにし ており、介入後では、介入群の父親が報告した子どもの行動・情緒問題は、対照群よりも 有意に少なかった。効果量も問題スコアF(1,38)= 21.85、p < .001、d = 1.76、およ び強度スコアF(1,38)= 5.19、p = 0.029、d = 0.60で、中程度から大きな効果が得ら れた。子育てにおける争いも介入群では対照群に比べて有意に[F(1,38)= 4.47、p = .04 4、d = 0.64]少なかった。
育児・家事時間の変化をアウトカムにしている山口,佐藤ら(2015)は、対象者個々の都 合に合わせた父親学級を行い、3群を比較した。その結果、家事時間、および育児・家事 時間の変化には有意差がなかったが、退院から1ヵ月後の時点で、産前介入30分、産後介 入群48分、非介入群26分と産後介入群の平日の家事時間が多い傾向が見られた(p=0.0 9)。また産後介入群の平日の育児・家事時間は、退院1週間後よりも退院1ヵ月後の方が1 41分から264分と有意に増加していた(p=0.03)。
(d)夫婦関係の変化・満足度
夫婦関係変化をアウトカムにしているFrank,T.J.,Keown,L.J. et al.,(2015)は、トリ プルP(Positive Parenting Program)プログラムを8週間行い、対照群と比較した。その 結果、父親の育児の信頼性と、父親と母親の夫婦関係に関する評価については有意差がな かった。両親の喧嘩や協力の報告について、父親は最初の2回のセッション(Z = -2.00、
p = .046)で比較的低かったが、母親と父親共に最初の2回のセッションよりも最後の2回 のセッションで有意に多くの育児の協力を報告した(Z = -2.23、p = .026)。
夫婦の満足度をアウトカムにしているGjerdingen,D.K., & Center,B.,(2002)は介入群 に通常の産前クラスの第4,5セッションを別室で異なる形・内容(夫婦関係向上に向け
29
たディスカッション、育児・家事の分担計画)で受けてもらい、対照群と比較した。しか し夫婦の満足度には有意差はなかった。
またGjerdingen,D.K., & Center,B.,(2002)は夫婦の仕事状況の変化もアウトカムにし ていた。結果は、介入群の家事分担の減少率が介入群の父親の減少率は0.2ポイントであ ったのに対し対照群0.4ポイントと対照群に比べて低かった。また、カップルが産後の家 事や育児を計画するのに役立つツールが特定されたが、このツールはカップルの仕事状況 には変化を及ぼさなかった。
(e)育児を行う上での身体的・精神的健康の状態
身体的健康と精神的健康をアウトカムにしているGjerdingen,D.K., & Center,B.,(200
2)は介入群に通常の産前クラスの第4,5セッションを別室で異なる形・内容で受けても
らい、対照群と比較した。しかしいずれの測定値も有意差は見られず、分娩後の健康には 有意な群差は見られなかった。
2)ビデオ撮影とフィードバック (1)介入の詳細
採用文献7件中ビデオ撮影とフィードバックという介入方法を用いていたのは1件(Benz ies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008)であった。児が生後5ヵ月、6ヵ月の時に、父子 相互作用尺度であるNCATのプロトコールに従って自宅訪問者が提供したおもちゃで対象 の父親が児と遊ぶ様子をビデオ録画(約10分)した直後、父親と自宅訪問者で録画した父 親の行動を一緒に見直すというものであった。フィードバック(10-15分)は録画の映像と 父子相互作用について書かれた資料を用いつつ行われ、内容は、対象の父親の行動と児の 反応相互作用について、おもちゃで遊ぶことに関する提案の様子についてであった。フィ ードバックは全てポジティブフィードバックであった。その後児が生後8ヵ月になる時に 再度訪問し、NCATSのプロトコールを用いて父子相互作用について測定し、父親に「児は 何が好きで、何が気に入らなかったか」、「また自分自身にどの様な変化があったのか」
について半構造化インタビューを行った。
30 (2)介入のアウトカム
父親役割獲得も目的としたビデオ撮影とフィードバックのアウトカムは、「父子相互作 用の変化」の1個であり、測定尺度にはNursing Child Assessment Teaching Scale (NC ATS; Sumner & Spietz, 1994)が用いられていた。
(3)介入の効果
介入群の父親のNCATSの平均得点は40.6点から41.7点に増加し、対照群の父親のスコア は40.0点から38.4点[F(1,160)= 12.60、p = .001]に低下した。対照群の父親は、介入 群の父親とは異なり、時間の経過とともに児の反応に対する感受性が低くなった[F(1, 1 60) = 5.21, p = .024, partial eta squared = 0.03, power =. 62]。幼児の社会-情 緒的発達を促進する父親の行動には有意差はなかった。(power = .26)また児が生後5ヵ月 の時点で32点以下(73点満点中)のスコアを得た4人の介入群の父親は、プログラムを受け ることで得点を13ポイント上げるという著しい効果が見られた。しかしこの4人の特徴は 他の対象者と明確に区別することができなかった。
介入群の父親のすべてが肯定的な利益を得たわけではなかった。父親の中には、行動の 変化が起こるために2回以上の介入が必要な場合があり、介入の最適なタイミングおよび 用量は、父親の生活の他の要因に応じて変化し得る事が分かった。
以上のことから介入群の父親は、児の認知発達を促し育てるスキルが上達し、子どもと のやりとりにおけるコミュニケーション行動を有意に増加させた。また児が生後8ヵ月に なっても児のCueに対する感受性を維持できていた。対象者はビデオ録画された父子相互 作用に関する個別のフィードバックが、幼児と遊ぶときにできることに対する意識を高め たと報告した。
31
第4章 考察
本研究の目的は「父親役割を獲得するための具体的な介入方法を明らかにし、その有用 性を評価・考察すること」であった。結果で述べた介入方法を考察し、日本の現状と照ら し合わせつつ具体的なケアの内容を考察する。
Ⅰ 対象の選択
「父子相互作用の変化」というアウトカムにおいて、アウトカムが同じであるが対象が 異なる文献(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Bryan AA.,2000;Doherty,W.
J.,Erickson,M.F. et al.,2006;Shapiro Alyson et al.,2011)を比較すると、対象に関 わらず介入の効果に有意差が見られていた。このことから父親と児との関係を構築してい くことを目標とした介入を行う際の対象者は、父親のみでも、カップルまたは夫婦を対象 としても良いと考えられる。今回採用した文献の中で他にアウトカムは同じであるが対象 が異なる文献は無く、アウトカム毎の対象の選択を考えていくためにはより多くのデータ ベースから比較していくことや、アウトカムを同じくし対象者を変えて比較していく必要 がある。
Ⅱ 介入の実施内容
1.教育プログラムの形態
1)参加者が主体の教育プログラム
教育の方法は「sage on stage」という教育者(指導者)が前に立ち講義を行い、学生 (追随者,大衆)がそれを一方的に聞くといった「教育者主体」の方法から、「Guide on t
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he Side」という学生が自ら考え、自分の力で問題を解決する力を養うために教育者が学 生の横でガイドしていく「学習者主体」の教育方法へ変化し、その有用性も明らかになっ てきている。産前・産後の生活支援として支援教室では対象となる夫婦の生活や育児の多 様さから個別性が高く、一般的な知識に加えて夫婦自身の力で問題を解決する力を養うこ とが大切であると考えられる。検討した教育プログラムで採用されていた4つの方法を見 ると、「参加者同士の交流を促すプログラム」、「演習プログラム」、「カップルでのみ 行うプログラム」の3つは参加者主体のプログラム、「講義型のプログラム」は実施者主 体のプログラムに分けられると考える。
「参加者同士の交流を促すプログラム」について序論で述べた通り、参加者同士の交流 を促すプログラムであるディスカッションは日本でも行われており、父親も妊娠・出産に 積極的に関わることができ、夫婦で臨むことができるようになったと述べられている。ラ モナT.マーサーの母親役割移行過程理論のような具体的な父親モデルのない日本で、経 産婦の父親と初産婦の父親、もしくは初産婦の父親同士でも情報交換をすることは父親と して自分はどの様に行動すれば良いのかを考えるきっかけとなるのではないかと考える。
「演習プログラム」であるデモンストレーションやロールプレイング、「カップルのみ で行うプログラム」である育児・家事の分担計画表作りは、アクティブラーニングを元に 考察していく。アクティブラーニングは学習者の能動的な学習への参加を取り入れた授業 デザインの1つである。あくまでアクティブラーニングは手段であり、行うことが目的と はならない。検討した文献の中で「夫婦関係の変化・満足度」をアウトカムにした介入の 効果に唯一有意差が見られていなかったGjerdingen,D.K., & Center,B.,(2002)は、「介 入後に介入内容についてのフォローアップを行わなかったことが有意差がなかったことの 原因ではないか」と述べており、育児・家事の分担計画表を作るという手段を行ったこと で満足し、夫婦で育児・家事を分担して行うという根本的な目的が達成されなかったので はないかと考えられる。同じく「夫婦関係の変化・満足度」をアウトカムにしている他の 2文献は、妊娠中に介入を受けた介入群が産後の介入群に比べてMAT尺度において夫婦関 係に高い効果を示し(Shapiro Alyson et al.,2011)、有意差はなかったものの介入回数
33
を重ねるごとに介入群の夫婦の両方から育児を協力して行っているという報告が増えた (Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)という結果が出ていた。Shapiro Alyson et al.
(2011)において、用いられているトリプルPという介入は、オーストラリアで開発され、
世界25ヵ国で実施されている親向けの子育て支援プログラムであり、日本ではファシリ テーターの養成講座が開かれ、セミナーや研修会が行われている教育プログラムである。
今回実施した実施者も訓練し認定を受けたファシリテーターであったことから、目的達成 に向けた教育プログラムの構成が整っており、その結果効果に反映されたのではないかと 考えられる。以上のことから参加者主体のプログラムを行う際には、目的目標を明確に定 め、それがプログラムによって達成されているかを評価し補足していく必要があると考え る。
妊娠・出産・育児という専門的な分野において「講義型のプログラム」は、最低限伝え なければいけない知識がある以上教育プログラムに必須となってくる方法となる可能性が ある。検討した文献の中でも「講義型」を取り入れた5件で「参加者交流型」のプログラ ムも併用していたのが4件(Bryan AA,2000;Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,2006;F rank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015;Shapiro Alyson et al.,2011)であったことから も、実施者が主体となって知識を提供するのではなく、参加者が主体となってその知識を 身に付けることができるように、「講義型」と「参加者交流型」のプログラムを併用して いくことが望ましいと考える。
2)個別性が高く、モチベーションを高めるフィードバック
教育の方法として、教育者は学習者の学ぶ力を養うために授業のデザインを考え、いか に学習者のモチベーションを向上させるかを考えていく必要がある。Ambrose,D.P.,Naga rajan,K.(2010)はモチベーションには価値、期待、環境が関わっており、これを向上さ せるために適格なフィードバックや授業内容を具体的に説明することなどを行っていく必 要があることを述べている。Benzies, K., Magill‐Evans, J. et al.(2008)の介入 は、訪問者と対象者が1対1の状況で行われ、実施後すぐに適格で対象者の個別性を考慮
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し、モチベーションを上げるようなポジティブフィードバックを行っていたという特徴が あった。介入の効果もアウトカムである「父子相互作用の変化」について有意差が見られ ており、介入を行う際には対象者のモチベーションを向上させるような関わりや個別性を 意識していく必要があると考えられる。
3)実施者
介入の実施者について、検討した7件では統一されていなかったが、父親役割意識を獲 得することを目的としている介入であるため、今回検討した文献の講義型のプログラムの 内容として組み込まれていた夫婦関係・夫婦の協同、児の発達と特徴、児とのコミュニケ ーション方法、父親の役割、、育児に関する知識、父親が育児をする意義などの知識を持 つ人が必要となってくると考える。また今回実施者の性別を記載していたのはDoherty, W.J., Erickson,M.F. et al.(2006)のみであり、インストラクターに男性と女性の両方 を含めたことは、男性がより積極的に介入に参加することができる1つの要因となり得る かもしれない。
4)実施時期・時間・回数 (1)アウトカム毎の実施時期
介入の実施時期についてアウトカム毎に考察していく。
「父親の児への関わりの変化」をアウトカムとした文献は産前(Bryan AA,2000)、産後 (Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008)、産前~産後(Doherty,W.J.,Erickson,M.
F. et al.,2006;Shapiro Alyson et al.,2011)と全ての時期で介入されており、全ての 時期の効果において有意差が見られていた。この結果から、父親と児の関係性を良好なも のにするための介入を行う時期には関連がないのではないかと考えられる。
「父親の行動の変化」をアウトカムにした文献は、産後に介入した文献(Frank,T.J.,K eown,L.J. et al.,2015)で有意差が見られており、産前と産後を比較した文献(山口,佐 藤ら,2015)でも産後介入群有意な増加が見られていた。男性は女性のように体内に児を
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宿すことができず、「男性は視覚・聴覚・触覚などの五感で子どもを認識して初めて父性 が芽生える」と述べている研究(田中,布施,高野,2011)や、産まれてくるまで父親とし ての実感が持てなかったことや、「児を抱いた時」に父性を強く感じたという結果から児 出生後の父親への働きかけが父親意識を高めると述べている先行研究(菊池ら,2005)もあ ることから、「父親の行動の変化」をアウトカムにする場合は産後に介入することが望ま しいという事が考えられる。
「夫婦関係の変化・満足度」をアウトカムにした文献は、産前に介入した文献(Gjerdi ngen,D.K., & Center,B.,2002)、介入全体の時期は産前~産後であるが、夫婦関係につ いてのアウトカムは産前介入によるものであった文献(Shapiro Alyson et al.,2011)、
産後に介入した文献(Frank,T.J.,Keown,L.J. et al.,2015)があった。産前に介入した文 献では結果が分かれ、Gjerdingen et al.(2002)は有意差見られなかったのに対し、Shap iro et al.(2011)は具体的な数値は示されていないもののMAT尺度で夫婦関係に高い効果 が見られていた。これはGjerdingen et al.(2002)の介入が、教育プログラムにおける根 本的な目的達成まで至らなかったのではないかということと、Shapiro et al.(2011)の 介入が参加者主体の教育プログラムを多く取り入れていたことが要因となっているのでは ないかと考えられる。また産後のみでは有意差は無いが介入の回数を重ねる毎に夫婦共同 に関する報告が増えていた。「夫婦関係の変化・満足度」の介入時期については更なる検 討が必要である。
「父親の思いの変化」をアウトカムにした場合、子ども観の変化において産後に介入が 行われた文献(山口,佐藤ら,2015)で有意差が見られていたが、平等主義的性役割態度の 変化においては有意差が見られなかった。このことから育児に関する関心は産後に介入を 行うことで高まることが予想された。平等主義的性役割態度について山口ら(2015)は
「性役割に対する認知は青年期初期に形成されており、本研究のような1回のプログラム では、性役割の認識を変化させるまでには至らなかったことが考えられる」とまとめてお り、今後も介入時期に関して検討が必要であると考える。父親としての責任感について
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も、産前から産後にかけて介入が行われたが(Doherty,W.J.,Erickson,M.F. et al.,200 6)有意差が見られなかったため介入時期に関して検討していく。
「育児を行う上での身体的・精神的健康の状態」については、産前のみ介入が行われて おり(Gjerdingen,D.K., & Center,B.,2002)、また介入の効果に有意差が見られなかっ た。昨今は父親の産後うつについての研究も行われており、夫婦が2人で身体的にも精神 的にも健康で育児を行っていくためにも今後介入時期の検討を行っていく。
(2)介入の所要時間・実施回数
検討した7件において、文献の中で所要時間の合計とアウトカム、介入回数とアウトカ ムが同じ文献はなかった。1回あたりの所要時間とアウトカムが同じ文献は、父子相互作 用の変化をアウトカムとするBryan AA.(2000)とDoherty,W.J., Erickson,M.F. et al.
(2006)のみであり、どちらの文献も介入の効果には有意差が見られていた。他の文献と 比較はできないが、1回あたりの介入の所要時間が30分であるGjerdingen,D.K., & Cente r,B.,(2002)は全てのアウトカムにおいて有意差が見られていなかったこと、有意差が見 られた1回あたりの所要時間は最短1時間、最長2時間と大きなばらつきはなかったことか ら、1回あたりの介入の所要時間は30分では短く、1時間以上~2時間未満が良いのではな いかと考える。しかし介入の回数は、父子相互作用の変化を同じアウトカムとするBryan AA.(2000)とDoherty et al.(2006)において、Bryan AA.(2000)が1回、Doherty et al.
(2006)が8回の介入のうち父子相互作用を目標としていた回のみとしても3回と異なって いた。このことから各アウトカムで効果がある介入回数があるわけではなく、介入内容を 不備なく行い目標を達成できる介入の回数を計画の段階で検討することが必要であるとい うことが考えられる。また序論で述べた日本の父親学級から介入の回数が少なすぎるのも 効果が出ないと考えられ、目的と目標の達成状況を見つつ、回数を補足する必要性もある と考える。
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Ⅲ 日本の現状と適応
1.父親役割獲得に影響を及ぼす因子と介入の関係性
採用文献を父親役割獲得と密接な関係のある4つの要因に分けた結果、「夫婦関係」に 働きかけている文献は7件中5件と多かった。Bryan AA.(2000)とDoherty,W.J., Erickso n,M.F. et al.(2006)は「夫婦関係の変化・満足度」をアウトカムにしてはいないが、Br yan AA.(2000)はGCF(Growing as a Couple and Family)クラスの内容で生後3ヵ月まで の児の成長は目まぐるしく大変ではあるが、カップルで休暇を取りこのユニークな時間を 楽しむことを伝えており、Doherty et al.(2006)は4回分の目標に「カップルの関係の強 化」を含めていた。良好な夫婦関係が対児感情に関わってくることから(池尻ら,1998;古 田ら,1999)、アウトカムに有意差があった背景には良好な夫婦関係が築けたということ が隠されていると考えられる。
「対児感情・児との接触」に働きかけている文献も7件中5件と多かった。各文献の介 入方法は(重複あり)、3件(Benzies,K.,Magill‐Evans,J. et al.,2008;Frank,T.J.,Keo wn,L.J. et al.,2015山口,佐藤ら,2015)が実際に自分の児と直接の触れ合う方法、2件(B ryan AA,2000;Shapiro Alyson et al.,2011)が児の特徴や成長発達についての知識をビ デオ鑑賞や講義型プログラムで学ぶ方法、1件(Benzies et al.,2008)が児の反応を録画 した映像から振り返り理解する方法の3つであった。これらの介入は児についての知識を 付け、児への認識や理解を深めるということ、また直接的に児と触れ合う機会が増えるこ とで児との愛着形成が促される可能性がある。先行研究より、胎児をひとりの人として、
また意識の有る存在として認識することにより「父親としての現実的な意識」が高まり、
「我が子を育てたい」という具体的で実際的な父親意識として発達するということが述べ られていること、愛着の度合いと親性の発達は密接な関係があることからこの3つの介入 は親役割獲得に向けて効果があるのではないかと考えられる。
「具体的な父親像の想起」に働きかけている文献は7件中3件あり、各文献の介入方法 は、父親の役割についてビデオ鑑賞やディスカッションを行う方法(Bryan AA.,2000)、
父親への移行に対する現実的な期待や子育てスキルの支援、親としての関わり方、育児に