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免疫組織化学によるヒト稀少腫瘍の特性解明と

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 山 田 洋 介

学 位 論 文 題 名

免疫組織化学によるヒト稀少腫瘍の特性解明と      病理診断への寄与

学位論文内容の要旨

【緒 言 】

  病 理 診断 の基 本 はHE染色標本 での形態観察だが, 今日では,免疫組 織化学染色による 検討も重要な役 割を 担 う。 その 結 果か ら,腫瘍 の本態解明にっなが る情報が得られる ことも経験される 。その具体例と して , 本研 究で は ,比 較的 発 症頻 度が 低 く, その本態が未 だ完全には明らかに なっていない2つの腫瘍

( 群 ) に 対 し , 免 疫 組 織 化 学 的 解 析 が , 腫 瘍 の 特 性 解 明 や正 確 な診 断に 寄 与し た例 を 提示 する 。   第 一 章で は, 胸 腺上 皮性腫瘍 における,プロテア ソームサプュニッ トロ5tの発現を解 析した研究を提 示す る 。こ のサ プ ユニ ットは, 胸腺皮質上皮細胞に 特異的に発現する 機能分子として, 胸腺の基礎研究 分野 で 注目 され て いる が,これ を診断に応用すべく ,その腫瘍マーカ ーとしての価値を 検証した研究で ある 。 第二 章で は ,濾 胞樹 状 細胞 肉腫follicular dendritic cell sarcomaくFDC sarcoma)における,

免疫 組 織化 学的 検 討を 提示する 。本例の免疫組織学 的形質は,既知の 例とは異なり,本 腫瘍の形質的多 様性 の 一端 を明 ら かに した と 考え る。

  く 第 一 章 胸 腺 上 皮 性 腫 瘍 に お け る 胸 腺 プ ロ テ ア ソ ー ム サ プュ ニ ット ロ5tの 発現 に関 す る検 討>

【背景】

  胸 腺上 皮 性腫 瘍は , 胸腺 ヒ皮細胞を由来と する(あるいは胸 腺上皮細胞への形態 ・機能分化を示す ) 腫瘍であり,大別 して胸腺腫と胸腺 癌がある。これらは,現在,国際的に広く用いられているWorld Health Organization (WHO)分 類上 ,A型 ,AB型 ,Bl型,B2型,B3型の 各胸腺腫,および胸 腺癌に分類される 。 胸腺 上皮 性 腫瘍 は, 発 症頻 度が低い,病理組 織像が多彩である 等の理由から,採取 量が少ない生検検 体 や, 異所 性 発生 例な ど で診 断に苦慮する例が ある。このため, 長きにわたり,胸腺 皮質あるいは髄質 上 皮細 胞に 特 異的 なマ ー カー を探す努カがをさ れてきたが,日常 の病理診断に応用し 得るマーカーは, 未 だ報告されていな い。

  近 年, マ ウス とヒ ト にお いて,胸腺皮質上 皮細胞のみが発現 する新規のプロテア ソーム口サプュニ ツ ト, ロ5tが 発見 され た 。ロ5tは ,T細 胞 のpositive selectionに関 与す る 胸腺 プロ テ アソ ームのサ プ ユニ ット の ーつ であ る 。そ の皮質上皮細胞局 在性から,この機 能分子が,胸腺上皮 性腫瘍の診断マー カ ーとなる可能性を 秘めていると考え られる。

【対象と方法】

  北海道大学病院 および北海道大学 医学部医学研究科 分子病理学講座関連 施設におしゝて,胸腺腫あるい は胸 腺癌 と 診断 され た ,生 検・手術材料,54例を用いた。HE染 色標本による形態観 察にて,これらを , WHO分 類 に 基 づ き ,A型 胸 腺 腫3例 ,AB型胸 腺 腫17例,B型胸 腺 腫(Bl,B2,B3を 含む )21例 ,そ の他 の胸 腺腫2例, 胸 腺癌14例 に 分類 した 。 この 亜型 毎 に, ロ5tの 発現 を免 疫 組織 化学 染 色に より検討 し た。39例の非胸腺 上皮性腫瘍につい ても,同様の検討 を行った。

【結果】

  ロ5tは , ほ と んど のB型 胸 腺腫 症例 に 陽性 を示 し た(20/21)。AB型 胸腺 種で は ,ロ5tの 染 色性 は症 例に より 様 々で あっ た(6/17)。 一 方,A型胸 腺腫 症例,胸腺癌 症例は全例陰性であ った。統計学的に , ロ5t陽性症例は, 他の亜型に比しB型胸腺腫で 有意に多く認めら れた。

  次 に, 生 命予 後の 違 いか ら明確に鑑別すべ きであるが,形態 像が比較的類似し, ときに鑑別に難渋 す るB3型胸 腺 腫と 胸腺 癌 にお いて,s5tと,胸腺癌の診断 に有用なマーカー とされるCD5,c‑kit,GLUTー1

―53―

(2)

の 発 現 を 比 較し た 。 結 果 ,B3型 胸 腺 腫は ロ5tに 陽性を 示すっ 亨, ほぽ全 ての症 例で, 他の3抗体 には 陰 陸 で あ っ た。 胸 腺 癌で は,13例中12例 がCD5,c一kit,GLUT―1の うち2つ以 上に陽 性を示 し, 残る1 例 はGLUT―1に 陽性で あった 。即 ち,ロ5tの発現 はCD5,cーkit,GLUT―1の発現と相反していた。非胸腺 上 皮性 腫瘍39例 は,全 例ロ5t陰性で あった 。

【 考察 】

  本研究 では, 世界に 先駆 けて胸 腺ヒ皮 性腫瘍 におけ るロ5tの発現 を免疫 組織 化学的 手法で 検討し ,B 型 胸 腺 腫 と ,AB型 胸 腺腫の 一部 でロ5tの 発現が 認め られる ことを 明らか にし た。非 胸腺上 皮性腫 瘍に お い て は ロ5tの 発 現 が認め られ なかっ たこと から, ロ5tは 腫瘍特 異的な マー カーと して病 理診断 に寄 与 する と考え られた 。また ,胸腺 癌で はロ5tの 発現が 認め られな かった ことか ら,胸腺腫と胸腺癌の鑑 別 にお いても ,ロ5tの 検討 が有用 である ことが 示され た。

く 第 二 章T細 胞 性 形 質 の 異 常 発 現 を 伴 っ た , 小 腸follicular dendritic cell sarcomaの 一例 >

【背景 】

  Follicular dendritic cell sarcoma (FDC sarcoma)は ,形態 形質学 的にFDCの 特徴を 示す腫 瘍であ り,卵 円形あ るいは 紡錘 形核を 有する ,比較 的異型 性に 乏しい 腫瘍細 胞の束 状増 殖から なる。免疫組織 化学 に お いては ,腫瘍 細胞 は複数 のFDCマーカ ーに陽 性を 示す一 方,CD45RB,B細胞性 マーカ ー,T細胞 性マー カーに は陰性 とさ れる。 但し, この腫 瘍に関 する 文献報 告は,現在まで約240例と比較的少なく,

本腫瘍 の形態 形質の 全貌 が明ら かにな ったと は言い 難い 。

【対象 と方法 】

  82歳・ 男性の 空腸部 分切除 術によ り摘 出され た小腸 腫瘍に 対し ,HE染色 標本に よる 形態観察に加え,

免 疫 組 織 化 学 染 色 を 主 体 と し た 多 面 的 な 検 討 を 行 い , 診 断 の 確 定 を 試 み た 。

【結果 】

  摘 出 さ れ た空 腸 に は , 潰瘍 形 成 性 の10x10 cm大 の 腫 瘍が 見 ら れ , 組織 学 的に は,同 部に, 大型の 腫瘍細 胞が主 にシー ト状 に増殖 する像 が観察 された 。散 在性に 凝固壊 死を伴 って いた。 腫瘍細胞は明瞭 な核小 体,粗 いクロ マチ ンパタ ーンを 示す多 形核, 豊か な淡好 酸性胞 体を有 し, 多数の 核分裂像を伴っ ていた 。腫瘍 細胞間 には ,一部 は血管 周囲に 集簇す る小 型ルン パ球が 散在し ,腫 瘍巣内 や転移リンパ節 内に は , 既存の りンパ 濾胞 の残存 が認め られた (こ れらの 所見は ,FDC sarcomaで 認めら れやす いとさ れる) 。

  免 疫 組織 化学 染色に おいて ,腫瘍 細胞はFDCマーカ ーであ るCD23,CD35,CNA 42にびま ん性に 陽性で あっ た が ,T細胞 性 マ ー カ ーで あ るCD45ROお よびCD4にも, びまん 性に 陽性を 示した 。他のT細 胞性マ ーカ ー に は 陰 性で あ っ た 。Polymerase chain reaction法に て , 腫 瘍 巣 内に 存在す る細 胞のT―cell receptorの 再 構 成 パ タ ー ン を 検 討 し た と こ ろ , ポ リ ク 口 ー ナ ル パ タ ー ン で あ っ た 。   こ れ ら の 形 態 形 質 を 総 合 し ,T細 胞 性 マ ー カー の 異 常 発 現 を伴 っ た ,FDC sarcomaと診 断 し た 。

【考察 】

  本 症 例は 年齢 ,部位 ,細胞 学的異 型性, 免疫 組織化 学所見 等がFDC sarcomaとして は典型 ではな く,

特に,CD45ROに陽 性を示 した 症例は ,これ までに 報告が ない 。病理 診断に 苦慮す る症 例では,多種類の マーカ ーを用 いた免 疫組 織化学 的検索 が,正 確な診 断に 寄与す る一方 ,既知 の免 疫組織 化学的形質とは 異なっ た結果 を得た 場合 には, 分子生 物学的 手法も 含め た多面 的な検 討カ泌 要で あるこ とが示された。

本例の ような ,非典 型的 な免疫 組織化 学的プ 口ファ イル を示す 症例を 集積す るこ とは, 診断のピットフ オール を回避 する上 でも 重要に 思われ る。

【総 括】

  免疫 組織化 学が腫 瘍の 特性解 明,病 理診断 に果 たす役 割を,2つ の研究 で例示 した。 分子 標的療 法の 発達 も相ま って, 診断病 理学 分野に おいて 免疫組 織化学 的検 討が果 たす役 割は, 今後ますます増加し,

多様 化する と思わ れる。 この 要請に 応える ために は,染 色結 果の判 定に際 し注意 すべき点への十分な認 識, 診断に 有用な 抗体の 探索 ,分子 標的療 法の適 応に関 わる 機能分 子に関 する理 解,再現性・正確性の 高 い 免 疫 染 色 を 得 る た め の 精 度 管 理 , 標 準 化 等 の , 多 方 面 か ら の 努 カ が 必 要 で あ ろ う 。

―54―

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査 副査

教授 教授 准教授 教授 教授

田中 秋田 濱田 佐邊 松野

学 位 論 文 題 名

伸哉 弘俊 淳一 壽孝 吉宏

免疫組織化学によるヒト稀少腫瘍の特性解明と      病理診断への寄与

   本研究は、発症頻度が低いことが一因となって解析が進まず、本態が未だ十分には明らかにな っていない2 つの腫瘍(群)に対し、免疫組織化学的解析が、その特性解明や病理診断に寄与す ることを実証したものである。第一章では、胸腺上皮性腫瘍の特性解明と病理診断に対して、胸 腺プロテアソームサブュニットロ 5t の発現解析が果たす役割を明らかにした研究が提示された。

第二章では、高齢者の小腸腫瘍に対して、網羅的な免疫形質の発現解析と分子生物学的手法を用 い、T 細胞性マーカーを異常発現したfollicular dendritic cell sarcoma (濾胞樹状細胞肉腫。

FDC sarcoma) との診断を下し、本腫瘍ではこれまでに未報告であった形質発現を見出し、本腫瘍 や鑑別診断となる腫瘍に対するピットフオールとしての意義を果たした症例報告研究が提示され た。

   学位審査 は5 名の審査員により非公開 で行われ、申請者の発表後、質疑応答が行われた。

   第一章の胸腺上皮性腫瘍に関する研究に関し、まず、副査の濱田准教授より、胸腺皮質上皮細 胞および B 型胸腺腫の腫瘍細胞にheterogeneity が存在する可能性についての質問がなされた(同 様の質問は、後に副査の秋田教授からもなされた)。申請者は、その可能性が十分にあること、非 胸腺皮質上皮細胞における heter09eneitY の可能性が、基礎研究者の間で盛んに議論されている 最中である(それ故に十分には解明されていなしゝ)と回答した。次に、ロ5t の発現解析を通じて 鑑別されるB3 型胸腺腫と胸腺癌の治療方針の違いについて質問がなされ、申請者は、胸腺上皮性 腫瘍の治療方針は基本的には病期に基づくが、生物学的悪性度と患者の生命予後が厳然と異なる 二群を鑑別することの意義は大きいことを説明した。

   続いて、゛副査の佐邊教授より、ロ5t の発現が予後予測因子になり得るか否かについての質問が あり、申請者は、現時点ではデータがないと回答した。ロ 5t 陽性細胞の分布と未熟リンパ球の分 布の相関についての質問に対しては、申請者は、両者の分布は一致する傾向にあると回答した。

―55―

(4)

  秋 田 教 授 よ り 、 ロ5tの 発 現 が 腫 瘍 細 胞 の 由 来 の 推 定 に 果 た す 役 割 に つ い て 質 問 が あ り 、 申 請 者 は 、B5t陽 性 と 判 断 さ れ るB型 胸 腺 腫 が 胸 腺 皮 質 上 皮 に 由 来 す る 可 能 性 に 言 及 し た 。 ま た 、 各 亜 型 の 生 物 学 的 悪 性 度 に ロ5tが 果 た す 役 割 と そ の メ カ ニ ズ ム に 関 す る 質 問 が あ り 、 申 請 者 は 、 現 時 点 で は 、 回 答 に 足 る 十 分 な デ ー タ を 持 ち 合 わ せ て い な い と 述 べ た 。 更 に 、 非 胸 腺 上 皮 性 腫 瘍 の ロ 5tの 発 現 に つ い て 、 質 問 が な さ れ た ( 同 様 の 質 問 は 、 後 に 主 査 の 田 中 教 授 か ら も な さ れ た ) 。 申 請 者 は 、 胸 腺 近 傍 の 臓 器 を 由 来 と す る 癌 腫 、 発 生 頻 度 の 高 い 癌 腫 を 中 心 に 、 多 種 類 の 腫 瘍 を 網 羅 的 に 検 討 し た こ と 、 ロ5tの 発 現 は 、 こ れ ら の 腫 瘍 に は 認 め ら れ な か っ た こ と を 報 告 し た 。   田 中 教 授 よ り 、 酵 素 抗 体 法 の 判 定 基 準 ( 腫 瘍 細 胞 の 陽 性 率 に 関 す る 判 定 基 準 ) に 関 す る 質 問 が な さ れ た 。 申 請 者 は 、 実 際 に は 、 個 々 の 症 例 の 陽 性 率 は ほ ば10%毎 に 評 価 し て い る こ と 、 明 ら か に 陽 性 細 胞 が 認 識 で き る 症 例 を 陽 性 と す る 目 的 で 、20%と い う 陽 性 細 胞 率 を カ ッ ト オ フ と し た 旨 を 説 明 し た 。 田 中 教 授 か ら は 、 陽 性 率 を 数 段 階 に 分 け て 評 価 す る 方 法 も 考 慮 す ぺ き と の 指 摘 が あ っ た 。

  副 査 で あ り 指 導 教 官 で あ る 松 野 教 授 か ら は 、 今 後 ど の よ う な ア プ ロ ー チ で 胸 腺 上 皮 性 腫 瘍 の さ ら な る 本 態 解 明 を 試 み る か に つ い て の 質 問 が あ り 、 申 請 者 は 、 髄 質 上 皮 の マ ー カ ー を 用 い た 検 討 が 有 用 で あ る 可 能 性 、 分 子 生 物 学 的 手 法 を 用 い た 検 討 の 必 要 性 に 言 及 し た 。   最 後 に 総 合 討 論 が な さ れ 、 秋 田 教 授 よ り 、t hymomaとtliyLuic carcinomaがseiuenceを な し て い る 可 能 性 に 関 す る 質 問 が あ り 、 申 請 者 は 、B3型 胸 腺 腫 と 胸 腺 癌 の 間 に そ の 可 能 性 が あ る こ と を 指 摘 し た 。

    I

  本 研 究 は 、 従 来 解 析 的 ア プ ロ ー チ の 難 し か っ た こ れ ら ヒ ト 稀 少 腫 瘍 に 対 し て 、 機 能 的 分 子 や 形 質 発 現 を 免 疫 組 織 化 学 的 に 解 析 す る こ と に よ り 疾 患 本 態 の 理 解 を 深 め る た め に 大 き く 貢 献 し た と 認 め ら れ る 。 特 に 第 ー 章 の 胸 腺 上 皮 性 腫 瘍 に 関 す る 研 究 は 、 世 界 に 先 駆 け て 、 胸 腺 皮 質 上 皮 特 異 的 分 子 を 用 い て 胸 腺 上 皮 性 腫 瘍 の 特 性 に 迫 っ た も の で あ り 、 胸 腺 上 皮 性 腫 瘍 の 枠 組 み を 再 検 討 す る 契 機 に も な り う る 、 価 値 あ る 研 究 で あ る 。

  審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 過 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

―56 ‑

参照

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