2015年 9 月 10 日茨城県常総市にて鬼怒川堤防が決壊し,周辺住民へ甚大な被害をもたらした.新潟大 学を中心とした循環器検診チームが,開設された避難所での検診活動をする際に同行する機会を得たので, その検診の様子を報告する. 〔検診の実際〕チームは医師・臨床検査技師・看護師で構成されている.各避難所で検査の呼びかけを行い, 希望された方へ問診,血圧・AVI・酸素飽和度・簡易心電図などの測定,下肢血管エコー,採血(必要時), 弾性ストッキング説明ならびに配付を行った.比較的大きな避難所では場所を決め,希望の方に集まって もらい,小さな避難所ではそれぞれの方の生活スペースで行った.被災から 3 週間の時点では避難所では インフラの乱れはなく,エコーそのほかの機器の電源確保は可能であった.血管エコー検査は坐位で,ひ らめ筋静脈の拡張・血栓の有無を確認した.血栓を認めた場合は採血し,D ダイマー上昇の有無を確認の上, 必要時近隣病院への紹介等を行った.数度の検診の間に避難所の統合,二次避難所への移動があり,今後 は全被災者に向けた検診を検討中である. 〔課題と展望〕保健師が居る避難所では要注意症状の有無の確認,弾性ストッキング着脱の補助を依頼で きる場合もあり,保健師との連携も重要である.避難所 DVT 検診は,被災関連 DVT の早期発見のために 行うが,避難所での静脈血栓塞栓症を減らすためには,検診のみならず,段ボールベッドの導入等の避難 所生活環境の改善,疾患の重大性ならびに検診・弾性ストッキングの必要性の啓蒙なども重要であると考 える.今回の水害では被災されても,不自由ながら自宅で過ごされている方等もあり,被災地域全域の検診・ 啓蒙活動をスムーズに行える方法を構築していくことも必要である. 【略歴】 学歴: 1991年 4 月 筑波大学医学専門学群 入学 1997年 3 月 同上 卒業 2003年 4 月 筑波大学大学院人間総合科学研究科機能制御医学専攻 入学 2009年 3 月 同上 終了 職歴: 1997年 5 月 30 日∼1998 年 11 月 30 日 筑波大学附属病院医員(研修医) 1998年 12 月 1 日∼1999 年 3 月 31 日 高萩協同病院外科医員 1999年 4 月 1 日∼2000 年 3 月 31 日 茨城県立こども病院心臓血管外科医員 2000年 4 月 1 日∼2001 年 3 月 31 日 筑波メディカルセンター病院心臓血管外科医員 2001年 4 月 1 日∼2002 年 3 月 30 日 筑波大学附属病院心臓血管外科医員 2002年 4 月 1 日∼2003 年 3 月 31 日 日立総合病院心臓血管外科医員 2003年 4 月 1 日∼2003 年 9 月 30 日 茨城県立こども病院心臓血管外科医員 2003年 10 月 1 日∼2004 年 3 月 31 日 筑波記念病院心臓血管外科医員 2009年 4 月 1 日∼2010 年 3 月 31 日 筑波大学附属病院心臓血管外科医員 2010年 4 月 1 日∼現在 筑波大学附属病院心臓血管外科病院講師
特別企画 災害と VTE
1. 茨城県常総市鬼怒川水害における避難所 DVT 検
診の経験
相川 志都
1,榛沢 和彦
2,石井 知子
1,米山 文弥
1,工藤 洋平
1,
三富 樹郷
1,松原 宗明
1,坂本 裕昭
1,徳永 千穂
1,榎本 佳治
1,
佐藤 藤夫
1,平松 祐司
1 (1 筑波大学附属病院心臓血管外科,2 新潟大学大学院呼吸循環外科)【はじめに】災害時における医療派遣は非常に重要であり,迅速性の点から組織された中で行動すること が重要である.その点,DMAT,JMAT,RMAT などは優れた行動を震災初期に起こし,素晴らしい結果を 残していた.一方,大学病院のなかでも救急医以外の部署が災害時に医療班を派遣することはいくつかの 問題点がある.福島県立医科大学は,先の東日本大震災で被災した側で医療協力を要請する立場を経験し た.また,広島土砂災害,その後の自然災害において医療協力を要請された立場も経験した.それぞれの 状況において大学病院内部にどのような問題が生じ,どのように対応したかを明らかにして,今後の対策 の一助になれば幸いである. 【略歴】 学歴:昭和 57 年 3 月 福島県立安積高等学校卒業 平成元年 3 月 福島県立医科大学医学部卒業 職歴:平成元年 5 月 6 日∼平成元年 9 月 30 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 副手 平成元年 10 月 1 日∼平成 2 年 3 月 31 日 公立岩瀬病院外科 平成 2 年 4 月 1 日∼平成 3 年 1 月 31 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 副手 平成 3 年 2 月 1 日∼平成 3 年 4 月 30 日 福島第一病院心臓血管外科 平成 3 年 5 月 1 日∼平成 3 年 9 月 30 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 副手 平成 3 年 10 月 1 日∼平成 4 年 3 月 31 日 福島県立医科大学第一外科学講座 平成 4 年 4 月 1 日∼平成 4 年 7 月 30 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 副手 平成 4 年 8 月 1 日∼平成 5 年 1 月 31 日 福島第一病院心臓血管外科 平成 5 年 2 月 1 日∼平成 6 年 1 月 31 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 副手 平成 6 年 2 月 1 日∼平成 7 年 1 月 31 日 福島第一病院心臓血管外科 平成 7 年 2 月 1 日∼平成 8 年 3 月 31 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 副手 平成 8 年 4 月 1 日∼平成 8 年 9 月 30 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 診療医 平成 8 年 10 月 1 日∼平成 8 年 10 月 23 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 助手 平成 8 年 10 月 24 日∼平成 11 年 3 月 31 日 米国カルフォルニア大学生体工学科留学 平成 11 年 4 月 1 日∼平成 14 年 7 月 31 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 診療医 平成 14 年 8 月 1 日∼平成 19 年 3 月 31 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 助手 平成 19 年 4 月 1 日∼平成 22 年 9 月 30 日 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 助教 平成 22 年 10 月 1 日∼ 福島県立医科大学心臓血管外科学講座 講師
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2. 災害時に医療派遣を受けること・送ること
大学病院の場合
高瀬 信弥,佐戸川弘之,若松 大樹,佐藤 善之,黒沢 博之
瀬戸 夕輝,籠島 彰人,高野 智弘,藤宮 剛,横山 斉
(福島県立医科大学医学部心臓血管外科)2015年 9 月 11 日の東日本豪雨災害で多くの被災者が長期避難を余儀なくされた.この避難所のアメリカ 合衆国 CDC 災害避難所環境スコアが低かったこと,広島土砂災害避難所で多数の DVT を認めたこと,茨 城県災害リハビリチームから下肢腫脹が多く見つかったという連絡等から調査を行うことにし,9 月 15 日 に PE 予防のため弾性ストッキングの配布着用指導と避難所環境改善に段ボール製ベッド導入のため避難所 巡回し,その際に下肢腫脹を多数認めエコーで DVT を 2 人に見つけたことで検診を決定した.まず医師会 と調整し(茨城県医師会から検診要請書受諾),石巻赤十字病院,盛岡市立病院,防衛医科大学病院,国立 新潟病院,水戸済生会総合病院の医師,技師などに協力要請しボランティア保険に加入してもらい,茨城 県と常総市,つくば市,つくばみらい市の保健所長,保健師と会議を行い,治療の受け入れを筑波大学心 臓血管外科,筑波メディカルセンター病院にお願いした.9 月 19,20 日に 10 箇所の避難所で 102 人に検 査を行い 6 人(5.9%)に下腿 DVT を認め,5 人は D ダイマー高値などあり病院受診とした.また 1 人に簡 易心電図で完全房室ブロック認め紹介入院とした.10 月 6 日の検診では筑波大学心臓血管外科医師,沼田 脳神経外科循環器病院技師・看護師の参加あり国立循環器病研究センター医師も同行した.10 月 6 日では 41人に検査し 6 人(14.6%)に下腿 DVT を認め 2 人は病院受診とした.11 月 8 日では 33 人中 5 人(15.1%) に DVT 認め,DVT が多い避難所は体育館の雑魚寝であった.12 月 13 日は昭和大学技師も参加し 20 人に 検査し 2 人に DVT を認めたが以前に指摘されていた.1 人に簡易心電図で心房細動性頻脈が疑われ病院紹 介とした.現在 DVT 検診を行うためには多数の調整が必要であり早急な対応をするためのシステム作りが 必要である.また DVT 検診は循環器検診としての役割も可能である. 【略歴】 平成元年 3 月 新潟大学医学部卒業 平成元年 5 月 新潟大学医学部外科入局 平成 2 年 4 月 三条済生会病院外科 平成 3 年 4 月 新潟大学医学部第二外科入局 平成 3 年 10 月 水戸済生会総合病院外科 平成 4 年 4 月 新潟大学大学院医学研究科入学 平成 8 年 10 月 県立中央病院胸部外科 平成 9 年 3 月 医学博士号取得 平成 9 年 4 月 新潟市民病院心臓血管,呼吸器外科 平成 9 年 10 月 県立新発田病院胸部外科 平成 10 年 4 月 新潟大学医学部第二外科助手 平成 11 年 4 月 新潟大学医学部付属病院集中治療部助手 平成 14 年 4 月 東日本循環器病院心臓血管センター心臓血管外科医長 平成 16 年 4 月 新潟大学医歯学総合病院呼吸循環外科医員 平成 16 年 9 月 新潟大学教育研究院医歯学系助手 平成 18 年 4 月 聖マリアンナ医科大学内科非常勤講師 平成 19 年 4 月 獨協医科大学内科非常勤講師 平成 23 年 4 月 新潟大学災害・復興科学研究所兼任 平成 25 年 2 月 新潟大学大学院呼吸循環外科講師 平成 26 年 4 月 聖マリアンナ医科大学内科講師兼任 【学会,研究会】 日本外科学会,日本胸部外科学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本血管外科学会,日本脈管学会, 日本循環器学会,American Heart Association,Fellow of American Society of Angiology,日本脳神経超音波 学会理事,日本栓子の検出と治療研究会理事,関東甲信越神経・脈管超音波研究会代表幹事,神奈川神 経超音波研究会顧問,血管ドック研究会代表幹事,関東甲信越早期動脈硬化研究会幹事,日本心臓血管 内視鏡学会評議員,第 7 回日本栓子検出と治療学会会長,厚生労働省班研究難治疾患研究:肺・静脈血 栓塞栓症班,NEDO ナノバブル水応用開発委員
外科専門医,脈管専門医,脳卒中専門医,血管内治療認定医
Excluder指導医,Zenith 指導医,PowerLinl 指導医,TAG 指導医,TALENT 指導医
専門:補助循環,心臓大血管手術中の脳保護,大動脈ステントグラフト,神経超音波検査,脳卒中,血管
特別企画 災害と VTE
3.東日本豪雨災害の DVT 検診結果
榛沢 和彦
1,伊倉真衣子
2,植田 信策
3,山村 修
4,福田 幾夫
5高田 彰
6,平松 祐司
7,相川 志都
7,青木 伸行
8,生沢 義輔
9渡邊 恵美
10,宮澤 晴美
1,後藤 淳一
9,佐藤美恵子
10,小泉 幸恵
10 (1 新潟大学大学院呼吸循環外科,2 国立病院機構新潟病院, 3石巻市赤十字病院胸部外科,4福井大学大学院地域連携学教室, 5 弘前大学大学院心臓血管外科,6 国立循環器病研究センター, 7 筑波大学大学院心臓血管外科,8 沼田脳神経外科循環器病院検査科, 9水戸済生会総合病院整形外科,10盛岡市立病院検査科)私が初めて静脈疾患に出会ったのは,筑波大学外科研修医 2 年目である.堀 原一先生が主催しておられ た心臓血管外科研修の一環として井島宏先生,伊藤翼先生から手ほどきをうけた.当時,腸骨静脈閉塞に よる慢性静脈血行不全に対する静脈バイパス手術の患者さんを受け持った.井島先生は,一時的動静脈シ ャントを付加することで静脈間 ePTFE 人工血管の開存率が向上することを犬の実験で証明し,慢性静脈血 行不全の患者さんで行っていた.5 例の腸骨静脈閉塞の患者に,ePTFE による大腿静脈̶大腿静脈バイパ ス+動静脈シャントを行い,4 例でグラフトの長期開存と静脈高血圧の症状の緩和が得られた[1].この報告 は,Haimovici’s Vascular Surgery に引用された.1984 年に,国立循環器病センターに心臓血管外科研修に出 て,中島伸之先生がはじめられた慢性肺塞栓症や肺動脈腫瘍栓外科治療のお手伝いをした.肺動脈腫瘍栓 手術の第一例目は,膝の軟骨肉腫の肺動脈内転移で,肺動脈内は肉腫で充満しており,肺動脈主幹部から 左右肺動脈を人工血管で再建した.1985 年に,つくば科学博の救急病院として開設された筑波メディカル センター病院で心臓血管外科を立ち上げた.ある日,脳神経外科の目黒琴生先生に呼ばれ,外傷性くも膜 下出血+頚椎形成術後の患者さんが急変し,急性肺塞栓症に間違いがないから手術してくれと言われた. 目黒先生はカナダでの臨床生活が長く,多くの術後肺塞栓症を経験していた.緊急肺動脈造影では,肺動 脈は左肺上葉枝がわずかに造影されるのみ,造影後心停止となった.心臓マッサージを行いながら手術室 に搬入し,緊急肺塞栓除去術を行った.患者は容易に体外循環から離脱することができたが,術後のヘパ リン投与でくも膜下出血が再発し,ヘパリンを中止し,下大静脈を結紮した[2].当時,広範型肺塞栓症に 対する本邦からの外科治療報告例はほとんどなかった.脳外科の入院患者を調べると,約 30%に深部静脈 血栓を合併し,肺塞栓症の合併も少なくないことがわかった.下大静脈フィルターが手に入らなかったた め,Adams-DeWeese クリップを個人輸入し,下大静脈形成術を行った. 2001年以降弘前大学で経験した VTE は 300 例におよび,そのうち肺塞栓症は 179 例である.抗凝固療法 を標準治療とし,重症例では出血リスクに応じて血栓溶解療法,肺塞栓除去術を使い分けた.循環維持困 難症例には経皮的体外循環補助装置を導入し,中枢性 DVT 合併例に下大静脈フィルターを留置した.非広 範型肺塞栓症では死亡例はなく,亜広範型肺塞栓 29 例では血栓溶解療法・下大静脈フィルター・肺塞栓除 去術を出血リスクに応じて選択して死亡例を認めなかった.広範型肺塞栓症では,心停止での発症例は救 命困難であるが,PCPS・肺塞栓除去術・血栓溶解療法を使い分けることで,9.7%の死亡率にとどめること ができた. 2011年に発生した東日本大震災では,岩井武尚理事長・故平井正文副理事長の指導のもと,日本静脈学 会が避難所の VTE 予防に注意を呼びかけた.私も八戸市・陸前高田市の静脈血栓検診に参加した.東北地 域では新潟大学の榛沢和彦先生はじめ,日本全国の医師・臨床検査技師が被災地に赴いて VTE 予防検診を 行ったことは特記すべきである. VTEに対する治療体系は過去 10 年間に大きく変化し,血栓溶解療法の限界が明らかとなり,下大静脈フ ィルターの問題点も指摘されている.経口抗凝固薬の登場で出血リスクが少ない外来治療が可能となった. 入院例では VTE 予防が重要であるが,脳血管障害例では弾性ストッキングの副作用も指摘されており,検 討すべき課題は多い.慢性静脈血行不全に対してはさまざまな治療法が提唱されているが,適応を明らか にしてゆく必要がある.南海東南海地震や首都圏直下型地震発生のリスクが高まっており,避難所の VTE 予防については,行政との連携を検討すべきである.この 35 年間,静脈学会で診療科を越えて多くの先生 方と一緒に,さまざまな仕事をさせていただいたことに感謝申し上げたい. 文献 ,MLPD+HWDO7HPSRUDU\DUWHULRYHQRXVÀVWXODIRUYHQRXVUHFRQVWUXFWLRQXVLQJV\QWKHWLFJUDIW$FOLQLFDODQGH[SHUL-mental investigation. J Cardiovasc Surg 1985;26:131-6
2. 重田治,福田幾夫 他.2 回の緊急手術により救命し得た広範囲肺塞栓症の 1 例.日胸外会誌 1988; 36: 2305-9
会長講演
静脈とつきあって 35 年:多くの出会いに支えられて
動脈硬化症による頸動脈の狭窄あるいは脳動脈瘤は,脳血管障害を引き起こす血管病変である.特に重 度な狭窄や破裂の危険性の高いと考えられる瘤の場合には手術を施す必要があり,近年では低侵襲である ステント留置手術やコイリングなどの血管内治療が増加している.そこで,本研究では,MRA,CT ある いは SPECT などの患者個別の医用画像や医療計測データと血流シミュレーションを融合することにより, 血管内治療が脳内の血流に与える影響を予測し,患者個別に対応した予測医療のための支援システムの開 発を進めている. 医用画像と血流シミュレーションを組み合わせることにより,どのような情報が得られるのか? また, 術後の予測のために,現在どのような研究が進められているのか? 血流シミュレーションの動向ととも に,実際の症例に取り組んだ例を紹介する. 講演においては,脳動脈瘤に血流シミュレーションを適用した例,および頸動脈ステント留置手術にお ける術前・術後の脳内の血流変化をシミュレーションによって再現した 2 例を取り上げる予定である.特に, 後者の例については,手術の変化を再現するためには,全身の循環網をシミュレーションに含めて考慮す る必要がある.その影響をさらに,マルチモダリティな医用画像データを組み合わせることで,どのよう な情報が得られるのか,解説する. 【略歴】 学歴:1980 年 4 月 筑波大学第 3 学群基礎工学類 入学 1984年 3 月 同上 卒業 1984年 4 月 東京大学大学院工学系研究科修士課程原子力工学専攻 入学 1986年 3 月 同上 修了 1986年 4 月 東京大学大学院工学系研究科博士課程原子力工学専攻 入学 1987年 3 月 マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院 留学 1990年 1 月 マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院 Engineer' Degree 取得 1992年 3 月 東京大学大学院工学系研究科博士課程原子力工学専攻 修了,博士 職歴:1992 年 4 月∼1998 年 5 月 東京大学生産技術研究所 助手 1995年 4 月∼1996 年 3 月 文部省在外研究員:スタンフォード大学 留学 1998年 6 月∼1999 年 3 月 東京大学生産技術研究所 講師 1999年 4 月∼2000 年 3 月 筑波大学機能工学系/東京大学生産技術研究所 助教授 2000年 4 月∼2005 年 6 月 東京大学生産技術研究所 助教授 2005年 7 月∼2006 年 3 月 東京大学生産技術研究所 教授 2006年 4 月∼ 東京大学大学院情報学環/東京大学生産技術研究所 教授 学会:日本機械学会,日本バイオレオロジー学会,日本計算工学会,日本生体医工学会,日本流体力学会, 可視化情報学会,日本応用数理学会,IACM(International Association of Computational Mechanics) 研究:バイオ・マイクロ流体工学
特別講演
血流シミュレーションの最前線
−シミュレーションは何ができるのか?−
静脈血栓塞栓症(VTE)の治療の第一選択は抗凝固療法である.わが国では長く未分画へパリンとワルフ ァリンが使用され,一定の有用性が認められていた.しかし,モニタリングが不要な低分子量ヘパリンに 比して未分画ヘパリン / ワルファリン治療では有意に再発率が高いとされ,特に発症早期ではその差は顕 著と報告される.一方,日本人を対象にした JAVA 研究では,ワルファリン投与中の VTE 再発は 2.8/100 人・ 年だが,ワルファリン終了後には 8.1/100 人・年もの再発が認められる.ただし,ワルファリンを投与して いる限り一定頻度で出血が発生するため,安易なワルファリン長期投与は勧められない.VTE 発症 3ヶ月 後以降のワルファリン治療は,個々の患者の血栓リスクと出血リスクを十分に勘案する必要がある. このような背景から,簡便で安全な抗凝固薬として非経口 Xa 阻害薬フォンダパリヌクスや非ビタミン K 阻害経口抗凝固薬(NOAC)が日本でも使用できるようになり,VTE 治療の選択肢が広がっている.特に, ワルファリンよりも安全性で勝る NOAC は,再発率が高い unprovoked VTE の二次予防でより長期に使用 され得る.また,投与後直ちに効果を発揮する NOAC により急性期の入院期間が短縮される.さらに, VTE発症時から NOAC のみで治療することも可能である.一方,欧米ではがん合併 VTE 患者に低分子量 ヘパリンの長期投与が行われるが,わが国ではワルファリンないしは未分画ヘパリンしか使用できなかっ た.NOAC が低分子量ヘパリンと同等にがん患者の生命予後に有用であるかは不明だが,少なくとも調節 しやすいことは確かであり,今後,その効果に関して検討されていくだろう.しかし,NOAC の脆弱な患 者への投薬など,実臨床において多くの経験を重ねる必要がある. 抗血栓療法は効果の延長線上に必ず出血のリスクがあるが,NOAC を中心とした新しい抗凝固薬は効果 と安全性のバランスが非常に優れている.私たちは VTE 治療において改めて抗凝固療法の有用性を評価し, 安全性も重視した適切な治療法を考えていかねばならない.
ランチョンセミナー 1
共催:ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社/ファイザー株式会社
進化する静脈血栓塞栓症の治療
We shall return to anticoagulation in VTE
ランチョンセミナー 2
共催:日本コヴィディエン株式会社
静脈治療の Up to Date ∼“静脈治療”をトータルで考える∼
1. 血管内焼灼術(Up to Date) 慣れてきた頃が一番危ない !?
今だから気をつけたい あんなこと こんなこと
岩田 博英
(いわた血管外科クリニック 院長) 下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術は 2011 年に認可されてから 5 年が過ぎ,デバイスにも選択肢が増え, 各都道府県に必ず 1 か所は血管内焼灼術を行える施設が存在するまでになりました.年間の治療件数も 4 万件を超えましたが,罹患患者数は,まだ非常に多いと推定されています. 一方で,症例数が増加するに伴い,ある一定の割合でヒヤリとする症例を経験,どのように治療すべき か?などに迷うことも出てきています.今後,高周波(ラジオ波)治療はさらに使い勝手が向上するデバイ スの登場も期待されますが,今回は,高周波(ラジオ波)を含めた使い方のちょっとしたコツを紹介し,さ らに最新の治療成績の比較と,血管内焼灼術における EHIT,DVT/PE などの合併症を取り上げ,その対策に ついて提案したいと思います.2. Post-thrombotic Syndrome
-Up to date in therapeutic option and future
【はじめに】悪性腫瘍を伴った院内発症 Venous Throm-bo EmThrom-bolism(以下 VTE)症例の検討を行ったので報告す る.【対象と方法】2006 年 1 月以降報告された院内発症 VTE 61例中,悪性腫瘍を伴っていた 15 例で,2006:2 例, 2008:1例,2010:3 例,2013:2 例,2014:3 例,2015:4 例 であった.発症の契機,部位,PE 合併の有無,凝固系 変動,治療法と予後ついて検討した.また悪性腫瘍以 外の VTE 症例検討および 2007 年 から 2015 年の各 10 月における新規入院患者 4944 名を対象にした予防対策 実施結果を報告する.【結果】15 例の悪性腫瘍背景は肺 癌 :4 例,子宮癌 :2 例,卵巣癌 :2 例,乳癌 :1 例(婦人 科系としては 5 例),大腸癌:2 例,胃癌,膵癌,腎盂癌, 膀胱癌がそれぞれ 1 例ずつであった.プロテイン C,S の 欠 損 症 も 合 併 し て い た 2 例 を 除 き 13 例 は 広 義 の Trousseau症候群と診断したが,同時に脳梗塞を合併し た症例は認められなかった.男性 6 名,年齢 66.3±8.7 歳であった.契機は下肢腫脹,呼吸苦,D ダイマー上 昇で,発症時 D ダイマー値は 30.6±31.4μg/ml(院内発症 全 体 で は 25 前 後 )で あ っ た.WBC は 6827.9±3511.2, 血 小 板 18.2±6.6 万,FDP53.3±52.2μg/ml で あ っ た. 測 定 さ れ た 症 例 で は CA19-9,CA125 の 高 値 を 認 め た. DVTは左下肢 9 例,右 6 例で PE 合併は 11(78.6%)例 であった.治療はヘパリン,ウロキナーゼ,ワーファ リンなどの組み合わせで,IVC フィルターを 8 例で必 要とした.血栓溶解療法開始後さらに血栓症が増悪し た症例を 2 例認めた.8 例が死亡したが,VTE が直接 死因と考えられた症例は認められなかった.2015 年度 922名の予防ではストッキング 427 例,IPC 260 例,薬 物 療 法 39 例, 未 指 示 374 例 で( 重 複 あ り )院 内 発 症 VTEは 11 例であった.【まとめと考察】広義の Trous-seau症候群と考えられた症例を 12 例経験した.女性に 多く,呼吸器,婦人科系癌に多い傾向が認められた. 発症時の D ダイマーがその他の VTE 症例より高く, 治療抵抗性で予後不良であった.
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院内発症 VTE 症例の検討−悪性腫瘍症例 を中心に− 国際医療福祉大学病院 循環器センター 血管外科 村上 厚文,洞口 哲,加藤 盛人 病理解剖における VTE 例では悪性腫瘍関連症例が多 くを占める.一方,突然死を扱う行政解剖では悪性腫 瘍関連 VTE の症例は少なく,その特徴も異なる.東京 都監察医務院における悪性腫瘍関連 VTE の疫学と自験 例の特徴を紹介する.【疫学】平成 25 年から 10 年間の 行政解剖例で直接死因が VTE による急性肺血栓塞栓症 (PTE)であった 217 例のうち,既往歴に悪性腫瘍があ ったのは 16 例(7%)であり,精神疾患 80 例(37%)に比 し少なかった.また PTE の先行性病変が記載された 11 例(5%)のうち,外傷先行例は 4 例,悪性腫瘍先行例は 3例(大腸癌,子宮癌,悪性リンパ腫)であった.【自験 例の特徴】平成 9 年以降発表者が経験した悪性腫瘍関連 VTE症例の特徴は,(1)剖検で PTE と悪性腫瘍が同時 に確認され,直接的な関与は不明だが悪性腫瘍による 血栓性亢進の関与が考えられる例,(2)腫瘍摘除術後の 急性発症例,(3)腫瘍の静脈浸潤塞栓に関連した例,(4) 腫瘍による静脈圧迫が静脈血栓形成に関与したと考え られる例,に大別された.それぞれの血栓発生源は,(1) (2)の場合血流うっ滞による下腿深部静脈が基盤となる が,(3)(4)の場合腫瘍の存在部位によって静脈血栓の 存在部位が異なっていた.行政解剖例の経験から,悪 性腫瘍関連 VTE による突然死は数は少ないものの存在 すること,症例によって発症様式が異なることが臨床 的に重要である.P1-1
行政解剖における悪性腫瘍関連 VTE 症例 の特徴 東京都監察医務院 呂 彩子,景山 則正【目的】静脈塞栓症(Venous thromboembolism; VTE)は 周術期における致死性合併症の一つである.その予防 が重要であり,抗凝固薬を用いた周術期管理が有用で ある一方で,抗凝固薬による出血性合併症の問題も内 在している.今回,フォンダパリヌクス(Fondaparinux; FPX)を用いた大腸癌手術後 VTE 予防における出血性 合併症の危険因子に関する検討を行った.【方法】2009 年 1 月から 2014 年 5 月の間に,当院で周術期に下肢間 欠的空気圧迫法と FPX を併用した VTE 予防を行った 大腸癌切除症例(n=546)を対象とし,単変量解析を用 いて出血性合併症の危険因子に関して検討を行った. 【成績】患者背景 : 性別(男性 / 女性),平均年齢,平均 BMIはそれぞれ,324/222,67.2,22.8 であり,170 例(31.1 %)が直腸癌であった.手術因子 : 術式(開腹 / 腹腔鏡), 手術時間(分,中央値),出血量(ml,中央値)はそれぞれ, 180/366,188.5,20 であった.出血性合併症を 29 例(5.3 %)で認め,その内 1 例で大出血を認めた.患者背景, 手術因子,周術期の血液生化学検査値を単変量解析に て検討したところ,手術因子や周術期の血液生化学検 査値と出血性合併症との関連を認めず,高血圧症を有 する患者で統計学的有意差((p=0.0183)を認めた.【結 論】FPX を用いた大腸癌手術後 VTE 予防における出血 性合併症の危険因子は,高血圧症を有する患者であっ た.諸家との報告が異なるが,今後さらに症例を増や して検討する必要がある.
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フォンダパリヌクスを用いた大腸癌手術 後静脈塞栓症予防における出血性合併症 の危険因子に関する検討 国立病院機構 大阪医療センター 外科 朴 正勝,池田 正孝,植村 守 三宅 正和,濱 直樹,西川 和宏 宮本 敦史,平尾 素弘,中森 正二 関本 貢嗣 悪性腫瘍に関わる VTE には多様な問題がつきまと う.腫瘍の物理的な静脈圧迫,Trousseau 症候群に代表 される凝固能の亢進状態など VTE のリスクは高い.ま た,化学療法中や手術時の VTE の管理,術式の選択な ども議論されるところである.悪性腫瘍に関連する VTEの実情とその対策の議論の礎となるべく,当科の 過去の症例の検討を行った.【方法】2010 年から 2015 年まで当科に紹介された VTE 症例 364 例中,悪性腫瘍 を合併した 64 例を対象とし,診療記録をもとに原疾患, VTEの状態,治療および転帰について検討を行った. 【結果】64 例の診療科別内訳は,婦人科 42 例,泌尿器 科 6 例,皮膚科 5 例,呼吸器科 5 例,消化器外科 5 例, 血液内科 1 例であった.全症例の平均年齢は 65 歳(24-89歳),男 / 女は 11/53 であった.癌の術前に D-dimer 高値のため下肢静脈エコーを施行し診断された無症候 性の VTE が 17 例あった.そのうち中枢型は 1 例のみ で他はすべて末梢型であった.多くは術前,周術期に ヘパリンまたはワーファリンの管理を行い術後は抗凝 固を中止した.これらのスクリーニングで発見された VTEは周術期や術後に中枢側へ進展または肺塞栓を発 症した例は見られなかった.全身の血栓症を合併する Trousseau症候群様の VTE は進行肺癌 1 例と悪性リン パ腫の 1 例に見られヘパリン管理においても対応は困 難であった.骨盤および IVC 近傍の腫瘍による圧迫, 進展によって発症したと考えられる中枢型 VTE が 7 例 あり抗凝固を基本とし手術または化学療法を行った. 付属器切除後に腎静脈血栓および卵巣静脈血栓を発症 した例が 5 例あったが,抗凝固を行い全例半年から 1 年で血栓は退縮または消失した.【考察】悪性腫瘍と VTEを一概に論じることは難しいが全体の傾向とし て,通常よりも抗凝固を強めに行う傾向があった.ま た,今後の課題として化学療法中の抗凝固,IVC や腸 骨静脈血栓例の術式の検討,そして末期の多発血栓症 への対応などが考えられた.P1-3
悪性腫瘍に関連する VTE の傾向と対応 東北大学 移植再建内視鏡外科 後藤 均,橋本 宗敬,赤松大二朗 清水 拓也,土田 憲,河村圭一郎 田島 悠太,梅津 道久【はじめに】悪性腫瘍(癌)の存在は血栓傾向の原因の 一つと考えられ,静脈血栓塞栓症(venous thromboembo-lism:VTE)の発症頻度が高くなるとされている.悪性 疾患が原因の VTE の治療に関しても抗凝固療法が ÀUVW choiceであるが悪性疾患に対する IVC フィルター留置 の意義に関しては,はっきりしたコンセンサスは得ら れていない.【対象】2002 年 4 月から 2014 年 3 月まで に当院で VTE 症例に対し IVC フィルターを留置した 症例は 210 例であった.今回我々は,悪性疾患におけ る IVC フィルター留置が VTE の予防により有用であ ったかについて,良性疾患(B 群=119 例)と悪性疾患(M 群=91 例)の 2 群間で比較検討した.【結果】B 群 vs. M 群で平均年齢 57±16 vs. 57±15,80 歳以上 10.1%vs. 12.1 %,女性 84.9% vs. 84.6%と有意差はなかった.フィル ターを留置し手術を行った症例 47.1% vs. 73.6%,婦人 科疾患 42%vs. 59.3%が有意に M 群で高率であった. また,肺塞栓症はなく深部静脈血栓症(deep vein throm-bosis:DVT)のみで挿入した症例は 71.4%vs. 90.1%と悪 性群で有意に多かった.フィルター内血栓症例は 6.7% vs. 14.3%で永久式に移行した症例が 10.9%vs. 19.8%と 悪性群での頻度がいずれも高かったが統計学的有意差 はなかった.VTE 関連を含めた合併症は 12.6%vs 14.3 %と有意差はなかった.【考察】進行癌に関しては, VTE関連合併症よりも癌死の可能性が高く,フィルタ ーの有益性が限定的と報告されている.今回は,良性 疾患のフィルター留置症例との比較を行った.悪性群 の中で永久式移行した症例の多くは,多量のフィルタ ー内血栓で抜去できなかった症例や生命予後を考え抜 去しなかった症例が多かった.予てより骨盤内巨大腫 瘍切除時の IVC フィルターの有用性は唱えてきたが, 悪性群が良性群と比較して肺塞栓症の予防に有用なわ けではなかった.【結語】今回悪性疾患の VTE の予防で IVCフィルターは特別に有用であるとは考えられなか った.
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悪性腫瘍患者に対する IVC フィルター留 置症例の検討 久留米大学 外科 廣松 伸一,福田 勇人,吉田 尚平 今井 伸一,金本 亮,桜井日直子 大塚 裕之,高瀬谷 徹,飛永 覚 鬼塚 誠二,田中 啓之 【背景】悪性腫瘍に対する手術・化学療法・緩和治療 など様々な状況で静脈血栓塞栓症(VTE)は発症する. 当科で診療した悪性腫瘍合併 VTE 症例において血栓症 症状や FDP-DD などが予後予測因子となるか検討した. 【対象と方法】2005 年∼2015 年 9 月に経験した VTE 症 例 530 例のうち悪性腫瘍を合併していた 236 例を対象 とした.VTE 発症後の生存期間を Kaplan Meier 法・ロ グランク検定で,発症時の性別・血栓部位(中枢:膝窩 静脈より中枢・末梢)・血栓症症状の有無,白血球数・ FDP-DD値・血小板・Fibrinogen 値・CRP・年齢(中央 値で高値群と低値群に分けた)を単変量で解析し,有意 な項目で多変量解析(Cox’s proportional hazards analysis) にかけた.【結果】観察期間は 0∼3599 日(平均 678 日・ 中央値 402 日).観察期間中の死亡は 105 例.男性 119 例・女性 117 例.年齢 8ヶ月∼89 歳(中央値 67 歳).血 栓は中枢 147 例・末梢 89 例.悪性腫瘍の領域は,消化 器 108 例・婦人科 46 例・尿路 24 例・骨軟部組織 16 例・ 頭頚部 13 例など.VTE 発症時の悪性腫瘍治療時期は 術前 51 例・術後 81 例・化学療法中 35 例・進行再発 69例.有症状 VTE90 例(DVT69 例有症状 PTE21 例), 無症状 VTE146 例.単変量では年齢(p = 0.009),FDP-DD( 中 央 値 10.8μg/ml,p < 0.0001), 血 栓 部 位(p = 0.001)が有意.多変量解析では,FDP-DD 高値(Odds 比 2.058 95%CI 1.387-3.049 p < 0.0001),中枢血栓(Odds 比 1.848 95%CI 1.186-2.874),低年齢(Odds 比 1.511 95 %CI 1.018-2.244 p =0.041)が独立した危険因子であっ た.【考察】悪性腫瘍は炎症や凝固を活性化することで 浸潤・転移の好条件を作る.今回悪性腫瘍の様々な時 相での検討であるが,VTE を発症した症例において FDP-DD高値や中枢血栓は腫瘍の悪性度に応じた凝固 系活性化の程度を反映し,予後と有意な相関があった と考えられる.VTE を発症した悪性腫瘍の予後は不良 であり,悪性腫瘍治療では VTE の予防や管理も重要で ある.P1-5
悪性腫瘍を合併した静脈血栓塞栓症患者 における予後と血栓症因子の関連 浜松医科大学 第二外科 山本 尚人,海野 直樹,犬塚 和徳 佐野 真規,斉藤 貴明,杉澤 良太 片橋 一人,矢田 達朗,嘉山 貴文急性肺血栓塞栓症(PE)に対する血栓溶解療法につい ては,抗凝固療法単独による治療と比較すれば肺動脈 内血栓の早期溶解効果や血行動態改善効果は明らかに 優れるものの,出血性合併症の発生頻度を増加し,死 亡率改善効果についても明確には示されていない. 1000例 を 超 え る 亜 広 範 型 PE を 対 象 に 行 わ れ た PEITHO試験でも死亡と血行動態悪化イベントの複合 イベント発生率は低減したものの,重篤な出血の発生 が増加することが示された.こうした結果より 2014 年 ESCガイドラインや 2016 年 ACCP ガイドラインにお いても亜広範型 PE に対しての血栓溶解療法は推奨さ れておらず,適応は広範型に限定している.日本にお ける 2011 年の静脈血栓塞栓症に関するアンケート調査 では,778 例の急性 PE のうち,発症時心停止例 39 例(5.0 %),広範型 64 例(8.2%),亜広範型 243 例(31.2%), 非広範型 367 例(47.2%)であり,各重症度別に各種治 療法が行われたのは,血栓溶解療法が 13 例(33.3%), 15例(23.4%),43 例(17.7%),30 例(8.2%),カテーテ ル治療が 3 例(7.7%),8 例(12.5%),5 例(2.0%),0 例, 下大静脈フィルター留置が 3 例(7.7%),17 例(26.6%), 77例(31.7%),118 例(32.2%),外科的血栓摘除術は亜 広範型の 1 例のみであった.また,血栓溶解療法施行 群と非施行群での死亡率は,広範型で 6.7%(1/15)vs 28.6%(14/49),亜広範型で 2.3%(1/43)vs 4.5%(9/199) と広範型でより死亡率の差が大きい傾向がみられた. 重症 PE に対する血栓溶解療法を中心に,日本の現状 も含めて,議論したい.
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重症急性肺血栓塞栓症に対する血栓溶解 療法の現状 三重大学 大学院 循環器・腎臓内科学 山田 典一,松田 明正,荻原 義人 伊藤 正明 【背景】肺血栓塞栓症においては迅速かつ効果的な初 期治療が必要と考えられる.近年,肺血栓塞栓症(PTE) の 領 域 に お い て pulmonary embolism response teams (PERT)の概念が形成されつつあり,当センターでも肺 循環科,CCU,血管外科,放射線科などと連携して PERTを形成し迅速かつ効果的な治療を行っている. 一方で,近年 Submassive PTE に対して全量 tPA 投与は 有効であるものの major bleeding を増やすことが報告さ れている.今回当センターでの重症 PTE に対する加療 を検討し,当センターでの PERT の役割および Sub-massive PTEにおける tPA 投与について検討した.【方 法】2013 年 1 月から 2015 年 12 月までの 3 年間で当院 に入院した PTE 106 例につき後ろ向きに検討した.【結 果 】Collapse PTE 3 例,Massive PTE 8 例,Submassive PTE 54例,Non massive PTE 41 例であった.106 例中, 院内死亡は 2 例(1 例は来院時 CPA,1 例は絞扼性イレ ウス)であった.特に重症例では PERT で治療方針を決 定し,Collapse PTE は全例 PCPS 挿入後,1 例で肺動脈 血栓摘除術を行い,2 例はカテーテル的血栓破砕術を 施行した.Massive PTE においては,全例 tPA 投与で 治療し,血行動態の改善を認めた.Submassive PTE で は 症 例 に 応 じ て tPA を 半 量 で 使 用 し た.Submassive PTE 54例中 tPA 使用したのは 10 例であった.44 例は 抗凝固療法のみであった.tPA 使用群 10 例のうち ma-jor bleedingは 0 例であった.一方,抗凝固療法群は major bleedingを 1 例に認めた.入院時 RV/LV 比は tPA 群で 1.62±0.35,抗凝固療法群で 1.23±0.28(P=0.003)と 有意に tPA 群で高く,tPA をより重症例で使用していた. 退院時の RV/LV 比は tPA 群で 0.94±0.19,抗凝固療法 群で 0.91±0.17(P=0.28)であり,tPA 群と抗凝固療法群 で差はなかった.【結語】重症 PTE の初期治療において, 当センターでの PERT は迅速かつ効果的な役割を果た した.Submassive PTE においては半量 tPA の使用が安 全かつ有効な可能性があると示唆された.SS-1
当センターにおける重症肺血栓塞栓症に 対する治療戦略 1国立循環器病研究センター 2 国立循環器病研究センター 血管外科 古賀 将史1 ,辻 明宏1 ,上田 仁1 福井 重文1,大郷 剛1,湊谷 謙司2 安田 聡1,小川 久雄1,中西 宜文1重症急性肺血栓塞栓症に対する IVR(画像下治療)は, 大きくカテーテル的血栓溶解療法とカテーテル的血栓 破砕・吸引術に分類される.後者は更に血栓吸引術, 血栓破砕術,流体力学的血栓除去術に分けられる.本 治療法の歴史は比較的浅い為,いくつかの問題点が挙 げられている.まず,外科的治療と比較して手技の標 準化が未熟であることがある.重症例においては血栓 量が極めて多量で,血栓溶解・血栓破砕・血栓吸引そ れぞれ単独では十分な治療効果はあげられないことが 多い.我々は血栓溶解・破砕・吸引を組み合わせたハ イブリッド治療法を考案・実施してきたが,現在では それが標準治療として受け入れられるようになってき ている.次に,エビデンス・レベルの高い研究の不足 がある.しかしながら,IVR 594 例のメタアナリシス が発表され,臨床上の成功は 86.5%,重症合併症は 2.4 %と報告されるに至っている.また連続 101 例の前向 き多施設研究では,95 例に臨床上の成功が得られたと いう.長期成績でも,我々はハイブリッド治療の 10 年 生存率が 74.5%であることを明らかにしている.重症 例に絞った成績に関しても,PCPS 装着例を対象とし た我々の成績では,30 日死亡率 30%という比較的良好 な結果であった.他の内科的治療法や外科的治療法と の多施設前向きランダム試験は実施されていないが, 本法の治療効果に関しては,少数のコホート研究では あるが外科的血栓摘徐術に匹敵することが示唆される ようになってきた.ガイドラインにおける推奨度は, 日本循環器学会(2009 年改訂版)では Class 2b となって いるが,更なる改訂作業が開始されたところである.
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重症急性肺血栓塞栓症に対する IVR(画 像下治療)の治療成績とその評価 1日本医科大学 武蔵小杉病院 血管内・低侵襲治療センター 2日本医科大学付属病院 放射線科 3大洗海岸病院 放射線科 4日本医科大学付属病院 心臓血管集中治療室 田島 廣之1,金城 忠志1,竹ノ下尚子1 三樹いずみ2 ,上田 達夫2 ,村田 智2 小野澤志郎3,山本 剛4 【はじめに】我々は,今日まで 17 例の循環虚脱を伴う 重症急性肺塞栓症(Collapse type APE)を PCPS 使用下に 全て内科的に治療してきたので,その治療成績を報告 するとともに,現在の当施設での Collapse type APE に 対する PCPS を用いた治療アルゴリズムについて紹介 する.【対象】対象は 1998 年 10 月から 2015 年 3 月まで の間に来院し,PCPS を使用した Collapse type APE 17 例(男性 3 例女性 14 例,平均年齢 65 歳:28∼81 歳)で ある.【結果】PCPS 開始時の状態は,心肺停止状態で 心肺蘇生中のものが 15 例,著明な徐脈と意識レベル低 下を伴うショック状態が 2 例で,全例で人工呼吸器と カテコラミンの使用を必要とした.脱血不良のため PCPSによる有効な循環補助が得られなかった 1 例を 除き,循環虚脱状態出現から PCPS 開始までに要した 時間は平均 24 分(3∼49 分)で,16 例中 15 例で PCPS からの離脱が可能で,PCPS 開始からウイニング開始 までに要した時間は平均 6 時間 0 分(最短 16 分,最長 30時間 12 分),離脱までに要した時間は平均 20 時間 0 分(最短 1 時間 47 分,最長 73 時間 22 分)であった.ヘ パリンによる抗凝固療法は全例,血栓溶解療法は 10 例, カテーテルによる血栓除去術は 3 例に施行したが,血 栓溶解療法施行例のうち 4 例で出血性合併症を認めた. 院内死亡は 5 例で,死因は PCPS 継続不能例が 2 例, 脳浮腫が 1 例,肝損傷による出血が 1 例,癌死が 1 例 であった.【考察】Collapse type APE の多くの例におい て合併症なく PCPS による循環状態の維持がなされた 場合,内科的治療のみでも比較的短時間に病態の改善 と PCPS からの離脱が可能であると考えられる.また 薬物療法に際しては出血性合併症に関するリスクを十 分に検討すべきであり,血栓溶解療法は必ずしも必須 ではないと考えられる.【結論】Collapse type APE では いかに早期に合併症なく PCPS が装着できるかが重要 であり,その後は施設の状況と症例の状態を慎重に考 えた上で治療を進めるべきである.SS-3
PCPSを用いた重症急性肺血栓塞栓症の 治療経験 済生会横浜市南部病院 循環器内科 猿渡 力【目的】重症型の急性肺塞栓症の治療成績は診断能や 治療の進歩にもかかわらず,未だ死亡率の高い疾患で ある.今回,我々の急性肺血栓塞栓症に対する外科的 治療成績について検討を行なった.【対象および方法】 2000年 7 月から 2016 年 2 月までに当院で急性肺塞栓 の診断で治療を行った症例は 90 例で,内科的治療抵抗 性の 9 例,右房内血栓を認めた 6 例,血行動態不安定 であった 25 例の計 40 例(女性 28 例)に対し外科治療を 施行した.平均年齢は 62±16 歳で術前ショックを呈し た症例:31 例,PCPS 装着例:23 例,心肺停止:18 例 であった.手術は人工心肺確立後,3 例は心室細動下に, 37例で心停止下に両側肺動脈を切開し血栓を摘出し た.慢性肺動脈血栓塞栓症の合併を 3 例に認め,すべ て低体温循環停止下に肺動脈血栓内膜除去術を行った. また 26 例に術後 IVC Filter を留置した.術前 CT で計 測した 0RGLÀHG0LOOHU’s score は 36 点満点中 27.0±6.2(内 科的治療群:5.2±3.3)で,術前心エコーで測定した右室 収 縮 期 圧 は 64.1±10.8mmHg( 内 科 的 治 療 群: 27.6±21.1mmHg)で あ っ た.【 結 果 】体 外 循 環 時 間 は 143±86分,大動脈遮断時間は 57±27 分であった.在院 死亡を 5 例に認め,術中大動脈解離を合併した 1 例, LOS 1例,敗血症性ショック 1 例,術前に診断されて いた悪性腫瘍による全身播種 1 例,術前に心停止を来 たし蘇生に時間を要した広範囲脳梗塞の 1 例であった. 慢性肺血栓塞栓症合併例での再発が 1 例,術後 ,9&ÀO-ter留置したにもかかわらず DVT により再発した 1 例 の合計 2 例に再手術を要した.生存退院した症例では 遠隔期死亡を認めず,5 年生存率は 87.4±5.3%であった. 【結語】急性肺塞栓症に対し補助循環を積極的に用いて 血行動態を保ち手術を行なえた症例での成績は良好で あった.また急性肺塞栓症に対する外科的血栓摘除術 の遠隔期成績は良好であった.
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当院における急性肺血栓塞栓症の外科的 治療戦略 神戸大学大学院医学研究科 心臓血管外科 高橋 宏明,河野 敦則,池野 友基 後竹 康子,松枝 崇,阿部 陛之 野村 佳克,井上 武,松森 正術 大北 裕 【目的】当院は医療人口 40 万人の三次救急を担う地方 最前線病院である.急性肺血栓塞栓症(APTE)は NOAC の登場で確かに軽症例の治療はやり易くなった.しか し依然として collapse 症例の成績は悪く,蘇生に成功 したとしても脳症の問題があり,PCPS に乗せて外科 治療まで持っていくことなど夢のまた夢.これが正直 な感想である.当院 APTE の治療成績から最前線の治 療現場で何が起きているかを明らかにしたい.【方法】 2006年 1 月∼2015 年 12 月までに当院で APTE 治療を 施行した連続 155 例を対象とした.平均年齢は 70±15 歳で,女性が 86 例(55%)であった.85 例(55%)は院 外発症例であった.重症度は collapse が 19 例(12%), massiveが 11 例(7 %),submassive が 23 例(15 %), non-massiveが 102 例(66%)である.基礎疾患は悪性腫 瘍が 44 例(28%),外科手術後が 40 例(26%)であった. 深部静脈血栓は 93 例(66%)に合併した.治療方法は抗 凝固剤投与が 133 例(86%),下大静脈フィルター留置 が 32 例(21%),血栓溶解療法 18 例(12%),カテーテ ル治療 8 例(5%),補助循環使用が 4 例,外科的血栓摘 除術 2 例である.2015 年以降の抗凝固剤投与でワーフ ァリンは使用されなくなった.【成績】病院死亡を 27 例 (17%)に認めた.基礎疾患(主に悪性腫瘍)による死亡 11例が含まれているため,これらを除いた重症度別死 亡率を示すと collapse が 63%(12/19),massive が 30% (3/10),submassive が 5 %(1/22),non-massive が 0 % (0/93)であった.Collapse 症例の蘇生成功例 12 例中 10 例は蘇生後脳症で,脳症に陥らなかった 2 例は外科手 術後でいずれも当院 ICU 入院中の患者であった.過去 10年を 5 年ごとに分け collapse+massive 症例の死亡率 を比較したが差はなかった(8/15 対 7/14).【結論】軽症 例の治療成績は良好である.特に non-massive 症例の成 績は良く基礎疾患のない患者は外来管理もしくは早期 退院が可能であろう.しかし重症例の成績は悪く,特 に院外発症の collapse 症例の現実は厳しかった.SS-5
急性肺血栓塞栓症治療に対する最前線か らの報告:地方三次救急病院における連 続 155 例の経験 市立函館病院 心臓血管外科 森下 清文,馬場 俊雄,新垣 正美 柴田 豪,楢山 耕平,馬渡 徹【背景】EVLA は下肢静脈瘤の根治治療であるが,術 後疼痛や皮下出血,再疎通など解決すべき問題が残さ れている.当院は年間 5000 例以上の冠動脈造影,2000 例以上の経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行しており,抗 血栓療法中の患者も少なくない.現在 EVLA において 抗血栓療法下の患者は安全性には問題ないが,再疎通 の原因となる可能性が指摘されている.また併施する 瘤切除等の施行時に,出血を生じやすい.今回,我々 は抗血栓療法下の ELVA について周術期及び治療成績 について検討した.【対象と方法】2012 年 1 月から 2015 年 11 月に EVLA を施行された下肢静脈瘤患者 1136 例 (1136 肢 ),CEAP 分 類 C2∼6 を 対 象 と し た.( 年 齢 66.2±10.4 男性 / 女性 438/698)抗血栓療法群(抗血小板 療法群+抗凝固療法群)は 216 例,control 群は 920 例 について retrospective に比較検討を行った.現在,当 院では抗血小板薬,抗凝固薬は全例継続して治療を行 っている.波長 980 nm の半導体レーザーを用い,超音 波観察下経皮アプローチで TLA(tumescent local anesthe-sia)麻酔下にレーザー出力 10 W で静脈を焼灼した.適 宜瘤切除を追加した.術後 24 時間以内,1 カ月後に合 併症の有無および超音波検査で GSV もしくは SSV の 閉塞の有無を観察した.【結果】治療血管は GSV/SSV 996/191例であり,瘤切除は 1070 例(94.2%)に施行し た.抗血栓療法群のうち抗血小板療法群は 141 例,抗 凝固療法群は 95 例であった.EHIT(endovenous heat-in-duced thrombus)は 27 肢(2.3%)に認められ,classII,III は 10 例(0.8%)に認められた.血行遮断率は 99.9%で あり,再疎通は 1 例のみ認められた.合併症は 14 例(1.2 %)に認められたが,重大な合併症は認められなかっ た.抗血栓療法群では EHIT,再疎通,合併症で有意差 は認められなかった.【結論】当院の EVLA の短期治療 成績は良好であった.抗血栓療法継続下でも術後合併 症を増加させることなく,再疎通率を上昇させること はなかった.
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抗血栓療法下での血管内レーザー焼灼術 (EVLA)の治療成績の検討 新東京病院 外科 高橋 昂大,藤野 啓一,橋本 昌俊 【はじめに】大伏在静脈(GSV)弁不全に対する血管内 レーザー焼灼術が広く行われている.一般に膝下 GSV を穿刺してアプローチする方法が推奨されるが,大腿 部の GSV に強い蛇行を認める場合,膝下からのアプロ ーチでは SFJ までファイバーを挿入することが困難な ことがある.我々はこのような場合,大腿部の不規則 病変部で GSV を確保し,頭側および足側 GSV を双方 向に焼灼している.今回この方法で手術を行った連続 100例の成績を報告する.【方法】対象は男性 26 例,女 性 74 例,平均年齢は 62.3 歳.術前エコーで GSV と不 全分枝を確認し,アプローチ部位をマーキングする. 局麻後に皮膚を切開し,直下にて GSV を結紮する.頭 側方向へ GSV を剥離し,cut down 法により SFJ へファ イ バ ー を 挿 入 す る.TLA を 十 分 浸 潤 さ せ, 波 長 1470nmの ELVeS レーザーを用いて頭側 GSV を焼灼す る.足側 GSV も同様に焼灼する.頭側 GSV は出力 7 Wで,足側 GSV は 4~6 W で焼灼する.【結果】手術時 間は平均 27.2 分,在院時間は約 2 時間,全例で Day surgeryが可能であった.レーザー焼灼の平均長は頭側 GSVで 23.4 cm,足側 GSV で 8.2 cm.平均の LEED は 頭側 GSV で 52.2 J/cm,足側 GSV で 26.5 J/cm.術後, 伏在神経障害や血栓性静脈炎は認めず,DVT や肺塞栓 症もなかった.皮膚切開に伴う有害事象(出血,血腫, 感染,リンパ漏,ケロイド形成)もなかった.術後 1 月 目の GSV 閉塞率は 100%であった.【考察】本法は大腿 部で一か所の皮膚切開を必要とするが,追加の皮膚切 開を行わずに不全 GSV を膝下までレーザー焼灼する方 法 で あ る. 足 側 GSV の 焼 灼 に 関 し て は, 十 分 量 の TLAを投与し,UDGLDOULQJÀEHU を用い,低い LEED を 用いることにより,重篤な神経障害を起こすことなく 血管閉塞を得ることができた.今後血管内レーザー治 療における術式選択の一つとなる可能性が示唆された.SD-1
波 長 1470nm の ELVeS レ ー ザ ー お よ び ULQJÀEHUを用いた大伏在静脈の双方向焼 灼術∼Two Way Ablation∼1 熊本血管外科クリニック 2菊池中央病院 宇藤 純一1 ,塚本 芳春2 ,信岡 博済2
【 背 景 】下 肢 静 脈 瘤 に 対 す る 血 管 内 高 周 波 焼 灼 術 (EVRA)は,良好な血管閉塞率と低侵襲性,手技の簡 便さを兼ねた治療法であるが,医師経験年数と手術成 績との比較は行われていない.今回 EVRA が下肢静脈 瘤治療経験年数によらず良好な成績を上げられること を示すべく比較検討を行った.【対象と方法】2015 年 1 月 1 日∼12 月 31 日に当施設で施行された EVRA157 例 について,以前に下肢静脈瘤治療に携わった経験のな い医師(初期研修医 2 名,後期研修医 1 名,(以降“若手 医師”))が行った 71 例(A 群)と,下肢静脈瘤血管内焼 灼術指導医 2 名(以降“ベテラン医師”)が行った 86 例(B 群)について,手術時間,再発率,合併症発生率につい て比較した.加えて同時期に施行された下肢静脈瘤に 対するストリッピング術 43 例についても,若手医師施 行の 11 例(C 群)と,ベテラン医師施行の 32 例(D 群) について同項目を比較した.【結果】EVRA について手 術時間,再発率,合併症発症率はそれぞれ(A 群 vs B 群) =(43.4±16.1 vs 39.9±17.5min),(1.4% vs 2.3%),(14.1 % vs 18.6%).一方ストリッピング術については同じ く(C 群 vs D 群)=(69.2±42.3 vs 52.5±22.2),(0 % vs 0 %),(18.2% vs 3.1%)であった.A 群と B 群ではいず れにおいても有意差はなかったが,C 群は D 群より手 術時間が長く,合併症発症率が高くなる傾向が見られ た.【結論】ストリッピング術と異なり EVRA では若手 医師とベテラン医師間で差がなかった.このために EVRAは適切な指導,教育の下では経験年数によらず 良好な成績をあげられる優れた治療法である.また, 研修医の段階でも施行できる EVRA の様な手術術式が あることは大きなモチベーションの維持につながり, この分野への興味を持つ若手医師の増加にも繋がり得 る.
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下肢静脈瘤血管内高周波焼灼術における 経験年数による医師間の成績に対する比 較検討 済生会和歌山病院 外科 酒谷 英樹,畑田 充俊 【目的】大腿部穿通枝(Dodd)不全を伴う下肢静脈瘤に 対する血管内レーザー焼灼術(EVLA)においては,大 伏在静脈(GSV)本幹のみの焼灼を行うことが一般的で あるが,本術式の手術成績に関する検討は少ない.今 回,本術式の術後 1 年の成績を中心に検討を行った. 【方法】本院で行った EVLA 326 肢中,Dodd 不全を認め たものは 20 肢で全体の 6.1%あった.診断は下肢静脈 エコーを全例に,3DCT 検査を 12 肢(造影 8 肢,非造 影 4 肢)に施行した.SFJ の弁不全を伴っていたものは 7肢(35%),エコー上の Dodd の最大径は 3.6∼11.0mm (平均 6.5±1.9mm)であった.手術は波長 980nm のレー ザーを用い,Dodd と GSV の接合部を中心に,SFJ 近 傍 か ら 大 腿 部 の GSV 全 体 を 焼 灼 す る 方 針 と し た. Dodd自体にレーザーファイパーの挿入は行わなかっ た.術後 1 日,1 週間,1ヵ月,3ヵ月,6ヵ月,1 年,2 年に下肢静脈エコーを含めた経過観察を行った.観察 期間は中央値 12ヵ月であった.【結果】経過中,GSV の 再疎通は認められなかった.Dodd の最大径は,術後 1ヵ月 で 4.4±1.6mm,3ヵ月で 2.8±1.4mm,6ヵ月で 2.7±1.4mm, 1年で 2.6±1.3mm に縮小した.術後 1~3ヵ月において, Doddの逆流は全例消失していた.しかしながら,術後 6ヵ月で 17 肢中 4 肢(24%),術後 1 年で 15 肢中 4 肢(27 %)に Dodd の逆流が再発した.これらの 4 肢中,2 肢 で静脈瘤の肉眼的再発を認めて経過観察中である. Doddの 形 状 に つ い て は,Dodd と GSV の 分 岐 角 度, Doddの長さおよび Dodd の屈曲の程度から,Dodd 自 体の焼灼の難易度を容易(超音波ガイドで焼灼可能), 中等度(透視下で可能),困難に分類したところ,容易 が 7 肢(35%),中等度が 6 肢(30%),困難が 7 肢(30%) であった.【結語】Dodd の不全を伴う下肢静脈瘤に対す る EVLA においては,GSV 本幹のみの焼灼で概ね良好 な成績が期待できるものの,少なからず再発も認めら れた.これらのことから Dodd 自体の焼灼が容易な症 例に対しては,Dodd の焼灼を考慮すべきと考えられる.SD-3
大腿部穿通枝不全を伴う下肢静脈瘤に対 する血管内レーザー焼灼術の中期成績 1長野松代総合病院 心臓血管外科 2 長野松代総合病院 臨床検査病理部 清水 剛1 ,白石 綾香2【目的】内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS)は, 2014年に保険収載された静脈鬱滞性皮膚潰瘍に対する 手術術式である.限られた施設で行われてあり,まだ 広く普及していない.今回 SEPS を新規導入する際の 工夫と課題について報告する.【症例】60 代女性.静脈 鬱 滞 性 皮 膚 潰 瘍(CEAP 分 類 で C4b, 大 き さ 20 × 25mm).術前 10 日前から入院,下肢を安静にさせて静 脈還流を改善し,炎症を軽減させておいた.全身麻酔 下に SEPS を行った.第 1 ポートは XCEL ポート(Eticon 製)を用いて,optical 法で筋膜下腔に挿入した.第 2 ポ ートは E・Z トロッカー(八光メディカル製)を用いて, 第 1 ポートから挿入した内視鏡で確認しながら筋膜下 腔に挿入した.術前に確認した不全穿通枝 1 本を処理 した.その後大伏在静脈に対してストリッピング術を 行った.術後第 4 病日に退院した.術後 46 日で皮膚潰 瘍は上皮化し,軽快した.術後 8ヶ月が経過したが, 再発はしていない.【考察】術者はこれまでに 45 例の SEPSを経験してきた.今回異動先の施設で,SEPS を 新規導入した.予め生理検査室,手術室,病棟看護師 らに SEPS について説明し,共通の理解を得た.それ によってスムーズな周術期管理が可能となった.また 内視鏡装置や鉗子類は,一般的な腹腔鏡手術のものを 流用した.しかしトロッカーはコスト面を考慮して, 第 2 ポートを安価なものにした.トロッカーの性質上, 第 2 ポートを筋膜下に挿入する際に optical 法ではでき なかったため,内視鏡下に確認しながらの挿入となっ た.内視鏡下静脈疾患治療研究会(JSEPS)は,SEPS が 保険収載されるのに貢献した.また SEPS を普及させ るために,2016 年 1 月成書を刊行した.徐々にではあ るが,SEPS を導入する施設が増加している.今後は更 なる普及を目指すためには,啓蒙活動,手術指導やハ ンズオン・セミナーの開催などを行っていく必要があ る.【結語】SEPS を普及させるには,ハードとソフトの 両面で工夫が必要である.
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内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術(SEPS) を新規導入する際の工夫と今後の課題 医療法人清仁会 洛西ニュータウン病院 外科 松村 博臣,大陽 宏明,趙 秀之 咲田 雅一SEPS(Subfascial Endoscopic Perforator vein Surgery;内 視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術)は重症下肢静脈瘤 (C4b,C5,C6)に対して不全穿通枝を筋膜下で確実に 切離できる術式である.しかし患者の下腿の太さや皮 膚の硬化などの状態によっては不全穿通枝が観察困難 なことがある.また抗凝固剤や抗血小板剤などの内服 を中止しないで SEPS を施行せざるを得ない場合や術 中の思わぬ出血によっても不全穿通枝のオリエンテー ションがつきにくいことがある.そこで積極的に術中 エコーを活用することで SEPS をより正確に行うこと が可能となる.1)SEPS 直前に立位でマーキングした不 全穿通枝を臥位でもう一度確認する.このとき不全穿 通枝の位置だけでなく筋膜下に入ってゆく角度なども よく観察しておく.2)ポート挿入後送気した状態では 筋膜より下の情報は得られないが表在静脈が筋膜下に 入ってゆくところまでは観察可能である.送気を中止 して可能な限り炭酸ガスを抜いてしまえばもっとよく 観察できる.内視鏡で見えにくいところや出血でオリ エンテーションがつきにくい場合は術者がエコーをあ てながら超音波凝固切開装置を操作することで不全穿 通枝を切離することが可能になる場合がある.3)不全 穿通枝を切離後血流がなくなっていることをミルキン グして確認する.術中エコーを活用することで出血傾 向のある患者の SEPS を行うことが可能となった症例 を呈示する.
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SEPSにおける術中エコーの活用法 1三菱三原病院 外科 2たかの橋中央病院血管外科 新原 亮1,春田 直樹2,小川 尚之1【目的】慢性静脈不全の最重症はうっ滞性潰瘍である. 瘤と異なる病態の理解や SEPS の普及によりその場の 治癒は容易になりつつあるが,長期成績の改善には至 っていない.潰瘍はあくまでも皮膚軟部組織レベルで の病態であるため,皮膚軟部組織内に存在する細静脈 循環や微小循環,そして創傷治癒まで加味しないと予 後の改善は得られない.その観点から潰瘍周辺に存在 するうっ滞性皮膚病変治療の必要性については症例ご とに検討すべきと考える.自験例で皮膚病変治療が有 効であった症例を提示し,その意義を検討したので報 告する.【考察】潰瘍発生の主因は皮膚軟部組織静脈高 血圧症であるが難治化,易再発の素因は不可逆性皮膚 軟部組織変化による局所還流障害が加わることと,そ れによる healing potential の低下と考える.うっ滞性皮 膚病変の病理組織像では細静脈内に器質化血栓を認め ることが多く局所還流不全の存在が示唆される.また これらの存在は伏在静脈逆流や不全穿通枝への治療に よる静脈還流改善をも阻害する.皮膚病変内に異所性 石灰化や骨化を認める症例も存在し,これは二次感染 の母体ともなり得る病態でもある.さらに広範囲な皮 膚病変の存在は chronic venous compartment syndrome や 足関節可動域制限による筋ポンプ機能低下など,深部 静脈還流をも阻害する一因となり得る.これらの改善 には皮膚病変の摘出と再建が有効と考える.【結語】潰 瘍は良性疾患であるためどこまで徹底した治療を行う べきか画一的な方法はない.しかし静脈処理や圧迫療 法のみならず皮膚病変治療までも検討すべき症例は存 在する.