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Title 本学における麻疹・風疹対策の見直し

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Academic year: 2022

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Title 本学における麻疹・風疹対策の見直し

Author(s) 羽賀, 將衛; 石田, 香; 三上, 麻紀; 小野寺, 千鶴子; 河上, 靖子; 河

合, 和恵

Citation 北海道教育大学紀要. 自然科学編, 72(2): 43‑47

Issue Date 2022‑02

URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/12246

Rights

(2)

本学における麻疹・風疹対策の見直し

羽賀 將衛・石田  香・三上 麻紀・小野寺千鶴子・河上 靖子・河合 和恵

北海道教育大学保健管理センター

PreventiveMeasuresagainstMeaslesandRubellain HokkaidoUniversityofEducation

HAGAMasae,ISHIDAKaori,MIKAMIMaki,ONODERAChizuko, KAWAKAMIYasukoandKAWAIKazue

HealthAdministrationCenter,HokkaidoUniversityofEducation 5-3-1Ainosato,Kita-ku,Sapporo,002-8501,Japan

概 要

平成21年度から始めた本学新入学生への麻疹対策を継続し,学生のほぼ全員が麻疹に対して 免疫を有すると推測される状況を維持しているが,平成26年度〜30年度新入学生において,麻 疹ワクチンを2回以上接種している者の割合が91.6〜94.3%であったのに対し,風疹ワクチン を2回以上接種している者の割合は80.9〜90.0%であった.麻疹にのみ重点を置いた本学の感 染症対策のあり方が,風疹ワクチン接種が1回あるいは0回となっている背景にあると考えら れた。最近の風疹の流行状況および国の対応を鑑みて,風疹に対する免疫の保有率を高めるた めに,風疹についても麻疹と同様の対策を実施することとした。

1.はじめに

本学では,平成20年4月に新入学生32名の麻疹 集団感染を経験したことを契機に,麻疹対策を徹 底させることを決め,平成21年度から,新入学生 全員に麻疹ワクチン接種歴あるいは抗体検査結果 の提出を求めることを継続している1,2)。麻疹に 対する免疫が不十分と考えられる者にはワクチン 接種を勧めており,その結果,全学生の99%以上 が麻疹に対して免疫を有すると推測される状況が 維持されている3)。風疹については,本学では積

極的な対策を特に講じていなかったが,平成25年 に全国的な大流行が起こり,平成30年から令和元 年にかけてもこれに次ぐ大きな流行があり,今後 もこのような流行が起こる可能性を否定できな い。幸い,これまでに本学の関係者に風疹患者の 発生は認められていないが,危機管理の観点から,

事前に備えておくことが肝要である。また,国は

「風しんに関する追加的対策」として,風疹ワク チンの定期接種を受ける機会のなかった,昭和37 年4月〜昭和54年4月生まれの男性を対象に,風 疹の抗体検査およびワクチン接種を無料で実施す

(3)

羽賀 將衛・石田  香・三上 麻紀・小野寺千鶴子・河上 靖子・河合 和恵

る取り組みを,平成31年度から3年間の予定で進 めている。このような状況に当たり,今回,これ までの本学新入学生の風疹ワクチン接種動向をあ らためて調査し,今後の風疹対策のあり方を検討 することとした。

2.対象および方法

本学新入学生の麻疹ワクチンの接種動向は,第 4期定期接種対象者と第3期定期接種対象者との 間に若干の違いが認められたため3),風疹ワクチ ンの接種動向にも年代による違いがあることが推 察された。そこで本研究では,平成26年度から30 年度までの新入学生のうち第3期定期接種の対象 であった者のみ,それぞれ1043名,1209名,1216 名,1239名,1224名を対象とした。入学前健康ア ンケートの記載および添付された母子健康手帳の コピーから,⑴麻疹および風疹のワクチン接種回 数および接種時期,⑵麻疹ワクチン接種が1回ま たは0回だった者の本学入学前のワクチン接種あ るいは抗体検査の動向を可能な限り確認し,⑶麻 疹のワクチン接種あるいは抗体検査の動向が風疹 ワクチンの接種回数に及ぼした影響を分析した。

3.結 果

本学新入学生の麻疹ワクチン接種回数:2回以 上,1回,0回は,平成26年度:92.6%,4.3%,

2.8%,27年度:91.6%,3.6%,4.2%,28年度:

92.8 %,2.6 %,4.0 %,29年 度:94.3 %,2.5 %,

2.6%,30年度:91.6%,3.2%,4.2%であった(表 1)。

同じ集団における風疹ワクチン接種回数:2回 以上,1回,0回は,平成26年度:81.2%,17.7%,

1.1%,27年度:82.4%,14.8%,2.8%,28年度:

83.2%,14.0%,2.5%,29年度:87.7%,11.0%,

1.6%,30年度:90.6%,8.2%,1.2%で,いずれ の年度においても,麻疹ワクチンと比べて風疹ワ クチンは2回接種の割合が低い傾向が見られた

(表2)。

風疹ワクチン接種が1回のみの者の接種時期:

幼児期,第3期定期接種の時期(中学1年時),

第3期の時期以降は,平成26年度:7.6%,74.6%,

17.8 %,27年 度:22.4 %,63.1 %,14.5 %,28年 度:30.6 %,55.3 %,14.1 %,29年 度:27.9 %,

42.7%,29.4%,30年度:46.0%,40.0%,14.0%

で,年度ごとに,第3期定期接種として1回のみ 接種した者の割合が減少し,幼児期に1回のみ接 種した者の割合が増加する傾向が見られた(表3)。

風疹ワクチン接種が1回のみの者のうち,第3

表1 新入学生の麻疹ワクチン接種回数 平成26年度

(n=1043)

平成27年度

(n=1209)

平成28年度

(n=1216)

平成29年度

(n=1239)

平成30年度

(n=1224)

2回以上 92.6% 91.6% 92.8% 94.3% 91.6%

1回 4.3% 3.6% 2.6% 2.5% 3.2%

0回 2.8% 4.2% 4.0% 2.6% 4.2%

表2 新入学生の風疹ワクチン接種回数 平成26年度

(n=1043)

平成27年度

(n=1209)

平成28年度

(n=1216)

平成29年度

(n=1239)

平成30年度

(n=1224)

2回以上 81.2% 82.4% 83.2% 87.7% 90.6%

1回 17,7% 14.8% 14.0% 11.0% 8.2%

0回 1.1% 2.8% 2.50% 1.6% 1.2%

(4)

期定期接種および第3期の時期以降の接種はいず れもMRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)

で,幼児期の1回のみはみな風疹単独ワクチンで あった。

風疹ワクチン接種が幼児期の1回または0回の 者は,合計301名であった(表2,3)。いずれも 第3期定期接種を受けておらず麻疹ワクチン接種 も1回または0回であったため,本学への入学前 に麻疹ワクチン接種を勧められていたが,MRワ クチンを接種した者はいなかった。MRワクチン を接種しなかった要因は,本学への入学が決まっ た 後 に 麻 疹 単 独 ワ ク チ ン を 接 種 し た こ と が 41.2 %, 同 じ く 麻 疹 抗 体 検 査 を 受 け た こ と が 45.5%,その他不詳が13.3%であった(表4)。

4.考 察

わが国の風疹定期予防接種は,昭和52年8月か ら平成7年3月までは中学生の女子を対象として いたが,平成7年4月からは男女とも接種対象と なり,接種年齢も1歳〜7歳に変更された。その 後,平成18年からは麻疹とともに,1歳時に第1 期,5歳〜7歳未満(小学校就学前の1年間)に 第2期の2回接種となった。平成19年度〜25年度 から,男女とも定期接種となった年代が大学に入 学して来るようになり,平成31年度(令和元年度)

からは,第1期および第2期の定期2回接種の年 代が大学に入学している。

本学では,平成20年4月に新入学生の麻疹集団 感染を経験したことを契機に,麻疹対策を徹底さ せることを決め,平成21年度から,すべての新入 学生に対して,①過去に2回以上または最近の麻 疹ワクチン接種,または②麻疹抗体検査で陽性,

どちらかの証明の提出を求め,麻疹に対する免疫 が不十分と考えられる者にはワクチン接種を勧め ることを継続している1,2)。これにより,ほぼ全 ての学生が麻疹に対して免疫を有すると推測され る状況を維持しているが3),風疹については,特 に対策を講じていなかった。

平成25年に風疹の全国的な大流行が起こった際 に,その年の新入学生の風疹ワクチン接種状況を 入学前健康アンケートおよび添付された母子健康 手帳のコピーから確認したところ,2回以上接種 している者が80.1%,1回のみの接種が17.6%,

0回または不明が2.3%で,大半が風疹に対して 免疫を有すると推測された4)。また,平成21年度

〜24年度の新入学生の87.4〜95.0%が高校3年時 にMRワクチンを接種しており3),新入学生だけ でなく全学年においても集団感染が発生するリス クは小さいと判断された。

しかしながら,平成25年度新入学生の風疹ワク チン接種は麻疹ワクチン接種に比べて2回接種の 割合が低く,この傾向は平成26年度〜30年度でも 同様であったことが今回の調査で明らかになっ た。また,1回のみの接種の時期が幼児期である 例が少なからず認められたが(表3),この場合,

接種からの経過年数が長く,SecondaryVaccine Failureが懸念される。さらに,国は平成30年か ら起こった風疹の全国的な流行を受けて,「風し んに関する追加的対策」として,風疹ワクチンの 定期接種を受ける機会のなかった,昭和37年4月 表3 風疹ワクチン1回のみ接種の時期

平成26年度

(n=185)

平成27年度

(n=179)

平成28年度

(n=170)

平成29年度

(n=136)

平成30年度

(n=100)

幼児期 7.6% 22.4% 30.6% 27.9% 46.0%

第3期定期接種 74.6% 63.1% 55.3% 42.7% 40.0%

第3期以降 17.8% 14.5% 14.1% 29.4% 14.0%

表4 MRワクチンを接種しなかった要因 麻疹単独ワクチンを接種した 124人(41.2%)

麻疹抗体検査を受けた 137人(45.5%)

その他不詳 40人(13.3%)

(5)

羽賀 將衛・石田  香・三上 麻紀・小野寺千鶴子・河上 靖子・河合 和恵

〜昭和54年4月生まれの男性を対象に,風疹の抗 体検査およびワクチン接種を無料で実施する取り 組みを,平成31年度から3年間の予定で始めた。

風疹に関するこのような状況から,本学において も,風疹対策を確立させることが望ましいと考え られた。

麻疹ワクチンに比べて風疹ワクチンの2回接種 の割合が低い要因を探るに当たり,われわれは,

風疹ワクチン接種が1回のみの者が2回目の接種 機会を逃した原因に着目した。

前述のように,本学では新入学生に対して,① 過去に2回以上または最近の麻疹ワクチン接種,

または②麻疹抗体検査で陽性,どちらかの証明の 提出を求めていたが,麻疹ワクチンを2回以上接 種していなかった者が取り得る行動は,⑴MRワ クチン接種,⑵麻疹ワクチン接種,⑶麻疹抗体検 査を受け陽性の結果の提出,この3つであった。

このうち⑴は,麻疹だけでなく風疹もワクチン接 種が1回増えるが,⑵と⑶では風疹ワクチン接種 は増えない。本学からの要請は麻疹のみに関する 内容であったため,いずれの対応でも十分に条件 を満たしていた。こうした例が毎年少なからずあ る(表4)ことが,麻疹に比べて風疹ワクチンの 2回接種の割合が低いことにつながっていると考 えられた。

今回の調査結果から,これまでの本学の麻疹対 策は,麻疹に対する免疫保有率を高める効果は認 められるが,麻疹に特化していたことにより,風 疹ワクチン接種の機会を逸することを招いた可能 性が示唆された。そこで,令和3年度からは,風 疹についても麻疹と同様の対策を実施することと した。

5.今後の麻疹・風疹対策および課題

令和3年度以降の新入学生に対しては,麻疹お よび風疹とも同様に,以下の対策を取ることを決 めた。

⑴ ①過去に2回以上のワクチン接種または,② 抗体検査で陽性,どちらかの証明の提出を求め

る。

⑵ ワクチン接種が1回または0回で抗体検査陽 性の結果を提出していない者には,麻疹あるい は風疹の単独ワクチンではなく,MRワクチン の接種を勧奨する。

以上により,麻疹および風疹ともに,ワクチン 接種が1回のみであった者は2回目の接種を受け ることを促され,0回であった者はこれで1回目 の接種のみではあるが,SecondaryVaccineFailure を生じるまでには猶予があると考えられる。

今後の課題としては,麻疹・風疹以外の感染症 対策をどうするかである。

医療系の学部では,麻疹・風疹のほか,水痘,

流行性耳下腺炎,B型肝炎ウイルスに対しても,

抗体検査やワクチン接種を実習前などに実施して いるが5,6),非医療系の学部において感染症対策 をどこまで実施するか,いまだ定まった基準等は ない。

本学は,医療系ではないが,学生は,教育実習 や介護等体験実習など,学外に出向き,多くの人 と接する機会があり,感染することも感染させる ことも,決してリスクが低いとは言えない。

今後,医療系および非医療系の学生の,実習に 関係した感染症の発生状況などを調査・分析する とともに,国が実施する対策等にも照らして,指 針等を定めることが望ましいと考える。

引用文献

1)羽賀將衛,山崎朋子,三上麻紀,他.本学における 麻疹排除への取り組み.北海道教育大学紀要(自然科 学編).2011;61⑵:1-6.

2)羽賀將衛,山崎朋子,三上麻紀,他.本学新入学生 の第3期・第4期麻疹ワクチン接種動向.北海道医報.

2015;1166:26-27.

3)羽賀將衛,石田香,三上麻紀,他.本学新入学生の 麻疹ワクチン接種動向―第3期・第4期定期接種対象 年代による比較―.北海道教育大学紀要(自然科学編).

2019;70⑴:27-30.

4)羽賀將衛,山崎朋子,三上麻紀,他.本学における 麻疹対策の継続は風疹対策につながった.北海道医報.

2014;1151:32-33.

(6)

5)渡部敏恵,衛藤雅昭,小池勇一,他.4種ウイルス 感染症における抗体陽性率および感受性率の年次推移 について―麻疹・風疹ムンプス・水痘の血清抗体値解 析―.CAMPUSHEALTH.2019;56⑵:104-110.

6)佐藤弘恵,田中智美,神主京子,他.医療系学生に おける流行性ウイルス感染症 ワクチン接種と抗体獲 得率.CAMPUSHEALTH.2019;56⑵:111-116.

(羽賀 將衛  保健管理センター教授・ 

センター長)

(石田  香  保健管理センター看護師)

(三上 麻紀  同 旭川分室看護師)  

(小野寺千鶴子 同 釧路分室看護師)  

(河上 靖子  同 函館分室看護師)  

(河合 和恵  同 岩見沢分室看護師) 

(7)

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