S H R
mini
No.19
滋賀大学保健管理センター〔 2008 . 2 〕
[はじめに]
平成19 年春、関東地区の大学を中心に、全国
の大学生に麻疹が流行しました。このような近
年の成人麻疹流行の背景に、麻疹感受性をもつ
成人(大学生もその一部)の増加が指摘されて
います。その理由として、麻疹罹患歴、ワクチ
ン接種歴のない人の多い世代が成人になったこ
とだけでなく、従来は、終生免疫が持続すると
された、ワクチン接種を1 回受けた人の中にも、
その効果がおよそ10 年程度で低下し、感染・発
病する可能性があることが明らかになってきま
した。これは患者さんの数が減り、ウイルスに
遭遇する機会が減少してワクチンの効果を折々
に増強することができないためと考えられてい
ます。
[麻疹の現状と国の対策]
このような事態を受けて、2007 年 8 月 厚生
労 働 省 に お い て 、 2012 年 の 麻 疹 排 除
(Elimination)を目標に、わが国における「麻
疹排除計画」が策定されました。具体的な対策
として、以下のことが行われます。
1.2008 年 4 月 1 日から 5 年間の期限付きで、
麻疹と風疹の定期予防接種対象が、現在の第 1
期(1 歳児)、第 2 期(小学校入学前年度の 1 年
間にあたる児)に加え、第 3 期(中学 1 年生相
当世代)、第 4 期(高校 3 年生相当世代)に拡大
される。
2008年4月に高校3年生になる世代以降の若年
者に対しては、2回の麻疹定期予防接種が強く
勧奨されることになります。これを受けて、国
立感染症研究所は「保育所・幼稚園・学校等に
おける麻しん対応ガイドライン 第二版を作成
しています
(
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/school-ver2.pdf)。それによりますと、「大学等の学生に
ついては、a.入学する前の手続きの段階で、定
期の予防接種歴を確認し、年齢に応じて必要と
される回数の接種が完了していなければ、入学
前に任意接種として接種を推奨する。b.麻疹
に対する免疫を保有しない者、及び、麻疹に罹
患すると重症化する可能性のある者と接する機
会の多い医学系・教育系・福祉系の大学等にお
いては、入学後に予防接種歴を確認し、必要な
回数の接種が完了していないものに関しては再
度推奨し、接種が完了したことを確認する。」
とされ、「職員等については、a. 勤務開始前(時)
健康状況調査において、麻しん含有ワクチンの
接種歴・麻しん罹患歴を確認し、未接種未罹患
者には任意接種として接種を推奨する。b. a.に
て、接種を推奨した場合には、勤務開始後に接
種が終了したことを確認する。c. すでに接種を
終了しているが、小児期の1 回接種のみである
もの、接種歴や罹患歴が不明あるいは記憶があ
いまいなものに関しては、医療機関にて血液検
査を実施し、免疫を保有していない場合にワク
チン接種を推奨する。あるいは、血液検査を実
施せずにワクチン接種を推奨する。」とされて
います。
2.2008 年 1 月 1 日から麻疹は風疹と共に、全
数把握疾患(診断した全ての医療機関が保健所
に届け出ることが必要)に変更される。
国立感染症研究所から週ごとに発症者数が公
表されています
(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.h
tml)。それによると、従来4-6 月に流行するこ
とが多いとされている麻疹が、今冬は、年明け
から全国で週あたり50-70 名の発病者があるこ
と、地域的な偏りがあること(現在発病者が多
いのは、神奈川県、東京都、福岡県、北海道な
ど)、小児、成人の別なく発病者があることなど
が明らかになっています(図1)。
図1.麻疹の報告数(2008年1月24日まで)
週ごとの報告数
(全国)
全症例(都道府県別)
年齢別
(国立感染症研究所感染症情報センター)
[麻疹の症状]
はしか(麻疹)は、発熱と発疹を主徴とする
ウイルス性発疹性疾患です。麻疹ウイルスは病
原性が高く、免疫がない人が暴露を受けると殆
ど感染・発病するとされています。麻疹は、感
染後に 10-12 日の潜伏期を経て発症します。
38℃前後の発熱が 2-4 日間続き、倦怠感、上気
道炎症状(咳嗽、鼻漏)と結膜炎症状(結膜充
血、眼脂、羞明)が現れ、次第に増強すると共
に、特有の小斑点(コプリク斑)が口腔粘膜に
出現します。その後、発熱が 1℃くらい下降して
半日後に、再び高熱(多くは 39.5℃以上)が出
ると共に(2 峰性発熱)、特有の発疹が耳後部・
頚部・前額部より出現し、翌日には顔面・体幹
部・上腕に及び、さらに四肢末端にまで広がる
まで 3-4 日発熱が持続します。
時に肺炎や脳炎、ごく稀に亜急性硬化性全脳
炎を合併し致命的になる場合もあります。特異
的な治療法がなく、高度弱毒生ワクチンによる
予防が最も重要です。ワクチンによる免疫獲得
率は95%以上とされています。2006 年からは、
ワクチン2 回定期接種が強く勧奨されています。
[麻疹への対策]
御両親からの情報や母子健康手帳などにより、
罹患歴(はしかに罹ったことがあるかどうか)、
ワクチン接種歴を必ず確認してください。はし
かに罹患したことがなく、ワクチンを未接種あ
るいは1回接種した方は、かかりつけ医あるい
は近隣の医療機関で、抗体検査を受けてワクチ
ン接種の必要性を検討するか、ワクチン接種を
受けられることを推奨します。なお、発病者と
の接触後3日以内にワクチンを接種することで、
発病が予防できる可能性があるとされています。
また、左記のような、麻疹を疑わせる症状が
出現した場合は、絶対に登校、出勤せず、速や
かに医療機関を受診してくださるようお願いし
ます。
麻疹(はしか)の診断を受けた場合は、直ちに保
健管理センターに電話で連絡してください。
保健管理センター(彦根) 0749-27-1024
保健管理センター分室(大津) 077-537-7709