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膵管癌の EUS-FNA 生検における  p53 免疫染色の有用性と臨床病理学的意義

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膵管癌の EUS-FNA 生検における  p53 免疫染色の有用性と臨床病理学的意義

昭和大学藤が丘病院臨床病理診断科

鈴木 怜佳  大池 信之

昭和大学藤が丘病院消化器内科

  長濵 正亞

昭和大学医学部臨床病理診断学講座

  瀧本 雅文

抄録:膵腫瘍の質的診断のために超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultrasound-guided  fine-needle aspiration:EUS-FNA)が急速に普及しているが,播種の問題もあり最小回数で の正診率の向上が望まれる.今回われわれは,膵管癌 EUS-FNA 生検材料における p53 免疫 染色像を解析し,悪性判定の有用性や臨床病理学的意義を検討した.昭和大学藤が丘病院にお いて 2014 年〜 2016 年の期間に EUS-FNA された膵疾患 90 症例のうち,膵管癌と最終診断さ れた 50 例のパラフィン包埋生検組織片を材料に p53 の免疫染色を行った.全腫瘍細胞に対す る p53 陽性細胞の割合を百分率で算出し,10%以上の症例を p53 陽性群とし,p53 陰性群との 間で臨床病理学的因子について比較した.p53 陽性細胞の割合や分布は不均一であったが,50 例中 42 例(84%)に p53 変異を示唆する明瞭な陽性所見(p53 蛋白過剰発現)がみられた.

39 例は p53 陽性群,11 例は p53 陰性群に分類された.各種臨床病理学的因子(性別,年齢,

局在,腫瘍径,組織分化,リンパ節転移率,遠隔転移率,病期)に関して両群間に統計学的有 意差はみられなかったが,p53 陰性群では膵体尾部の発生が多く,低分化型が多く,腫瘍マー カーが低値である傾向が認められた.なお,p53 陰性群のうちの 7 例に対して KRAS 遺伝子 検査を行ったところ全例で codon12 変異が認められた.EUS-FNA 検体でも p53 陽性所見が高 頻度に同定され,悪性診断に極めて有用であると考えられた.また,p53 陰性例では KRAS 解析が補完的な役割を担い得るものと考えられた.p53 発現の多寡と相関関係にある臨床病理 学的因子は見出せなかったが,症例数を増やして検討する必要性が考慮された.

キーワード:膵管癌,EUS-FNA,p53,KRAS,臨床病理学的検討

緒  言

 超音波内視鏡下穿刺吸引法(endoscopic ultra- sound-guided fine-needle aspiration:EUS-FNA)

は膵腫瘍に対する最も有用性の高い診断法として確 立されつつあり,国内では 2010 年の保険収載を期 に広く普及している.膵癌診断の特異度は 82 〜 100%と高い1)が,検体が小さく,病変が僅かな場 合や含まれていない場合もあり,その感度は 65%

〜 95%と幅広く報告されている1,2).播種のリスク を抱える検査として,なるべく穿刺の回数を少なく

済ませることが求められ,診断能の向上に何らかの 補完的な手段が必要である.

 膵管癌に特徴的な遺伝子変異として KRAS,p53,

p16,DPC4 などが報告されている3).このうち p53 変異は高頻度でかつ癌特異性に優れている4).また,

変異型 p53 蛋白は日常の診断業務で行う免疫組織 化学的検査で比較的容易に同定することができる.

今回われわれは,膵管癌 EUS-FNA 生検材料におい て p53 蛋白の発現態度を解析し,悪性判定の有用 性や臨床病理学的意義を検討した.

原  著

責任著者

(2)

研 究 方 法

 昭和大学藤が丘病院において 2014 年 4 月〜 2016 年 8 月の期間に EUS-FNA された膵疾患症例(90 症 例)のうち,組織学的かつ臨床的に膵管癌と最終診 断され,免疫組織化学的検討が可能な適正検体が得 られた 50 例(男性 25 例,女性 25 例)のパラフィン 包埋生検組織片を材料とした.また,対照として,良 性・低悪性度病変 10 例(慢性膵炎 1 例,自己免疫性 膵炎 1 例,神経内分泌腫瘍 2 例,solid-pseudopapillary  neoplasm(SPN)1 例,intraductal papillary muci- nous neoplasm(IPMN)1 例,low grade-pancreatic  intraepithelial neoplasia(PanIN)1 例,その他良性 疾患 3 例)の組織片も材料に加えた.

 免疫染色は p53 の一次抗体(DO-7,Leica Bio- systems Newcastle Ltd,Newcastle,UK;800 倍希釈)

を用い,Ventana 社の自動免疫染色装置(BENCH- MARK)を使って ABC(avidin-biotin detection sys- tem)法に準じて行った.p53 免疫染色の判定では,

p53 変異を示唆する強い染色性のみを陽性(p53 蛋 白過剰発現)とした5)(Fig. 1).また,二人の観察 者(鈴木,大池)によって,顕微鏡下の目視で,全 腫瘍細胞に対する p53 陽性細胞の割合を,5%単位 の百分率で算出した.さらに,統計学的比較検討の ため,p53 陽性細胞の割合が 10%以上の症例を p53 陽性群,10%未満の症例を p53 陰性群とし,臨床 病理学的因子について比較検討した.10%のカット

オフ値は顕微鏡下での観察から任意で設定した.統 計 学 的 解 析 に はχ2 乗 検 定,Student-T 検 定 や Wilcoxon 検定を用い,p 値< 0.05 を有意差ありと した.生存曲線の作成には Kaplan-Meier 法を,有意 差検定には Log-rank test を用いた.なお,p53 陰性 群に対しては,PCR-rSSO 法(SRL,Tokyo,Japan)

を用いて KRAS 遺伝子の変異解析を追加した.

結  果  1.p53 発現態度

 p53 陽性細胞は膵管癌 50 例中 42 例(84%)と高 頻度にみられた.しかしながら,陽性細胞の割合は 5%〜 95%(平均 39%)と症例毎にさまざまで,部 位によっても異なり,巣状〜散在性の不均一な分布 を示した(Fig. 1b,Fig. 2).50 例中 39 例は p53 陽 性群,11 例は p53 陰性群に分類された.なお,膵 管癌 50 例中 47 例は通常のヘマトキシリン・エオジ ン(Hematoxylin-Eosin:HE)染色で,膵管癌ある いは膵管癌の強い疑いと診断されていたが,うち 18 例(36%)は診断時,p53 免疫染色が補助的に 施行されていた.残りの 3 例は HE 染色のみでは膵 管癌の診断は困難で,p53 免疫染色の結果と併せ,

膵管癌と診断された(うち 2 例は外科的切除が行わ れ,膵管癌が確認された).対照の良性・低悪性度 病変 10 例はすべて p53 陰性であった.

 2.臨床病理学的検討(Table 1)

 p53 陽性群(39 例)および p53 陰性群(11 例)は,

Fig. 1 Immunostaining of p53

Distinct positive staining (p53 protein overexpression) of p53, indicating p53 gene mutation, is found in  case B (in 50%, heterogeneous) and case C (in 90%, diffuse), which are classified in p53-positive group.

(3)

この順で,性別(男:女)は 20:19,5:6,平均年齢 72 歳,69 歳,平均腫瘍径 31 cm,29 cm,局在(膵頭 部:膵体尾部)は 24 例:15 例,4 例:7 例,組織分化

(高・中分化:低分化)は 28 例:11 例,6 例:5 例,

血清腫瘍マーカー(CA19-9:CEA:DUPAN-2)の平 均値は 2,620 U/ml:4 ng/ml:7,351 U/ml,455 U/ml:

2 ng/ml:668 U/ml で,いずれも両群間に統計学的 有意差はみられなかったが,p53 陰性群では膵体尾

部の発生が多く,低分化型が多く,腫瘍マーカーが 低値である傾向が認められた(Fig. 3,4).また,リン パ節転移率は 44%,36%,遠隔転移率は 41%,36%,

病期(stage Ⅰ:Ⅱ:Ⅲ:Ⅳ)は 4:4:15:16,1: 

1:5:4,いずれも両群間に統計学的有意差はみら れなかった.予後に関しても p53 陽性群の平均生 存期間は 197.4

±

13.5 日,p53 陰性群は 200.4

±

44.5 日で,両群間に統計学的有意差は認められなかった

(Log-rank test;p = 0.41).

 3.KRAS 遺伝子解析

 p53 陰性群 11 例中 7 例に対して KRAS 遺伝子変 異の解析を行ったところ,全例で codon12 の点突 然変異(3 例が G12D,3 例が G12R,1 例が G12V)

が認められた.

考  察

 p53 遺伝子は 17 番染色体長腕(17p13)に存在す る癌抑制遺伝子である.この p53 遺伝子が点突然 変異や欠失を起こした結果,生じる蛋白が正常な生 理機能を失い,癌化を引き起こす6).野生型 p53 蛋

Table 1 Comparison of clinicopathological features between p53-positive and p53-negative groups p53-positive 

group(n=39) p53-negative 

group(n=11) p value

gender(%) Male 20 (51.3) 5 (45.5) 0.73

Female 19 (48.7) 6 (54.5)

age(years)(SD) 72.3±8.6 68.7±8.3 0.22**

tumor size(mm)(SD) 30.7±10.6 28.9±7.6 0.69**

location(%) head 24 (61.5) 4 (36.4) 0.14

body-tail 15 (38.5) 7 (63.6)

histological well-moerate 28 (71.8) 6 (54.5) 0.28

differentiation (%) poor 11 (28.2) 5 (45.5)

serum tumor markers(SD) CA19-9(U/ml) 2619.8±5803.0 454.9±656.6 0.96***

CEA(ng/ml) 3.9±3.2     2.0±0.8 0.31**

DUPAN-2(U/ml) 7351.1±17733.3 668.0±1238.3 0.23***

lymph node metastasis (%)  17 (43.6) 4 (36.4) 0.73

distant metastasis (%) 16 (41.0) 4 (36.4) 0.78

stage (%) Ⅰ   4 (10.3) 1 (9.1) 0.89

Ⅱ   4 (10.3) 1 (9.1)

Ⅲ 15 (38.5) 5 (45.5)

Ⅳ 16 (41.0) 4 (36.4)

      *χ2test

   **Student s t test

***Wilcoxon test

Fig. 2   A line graph of the percentage of p53  positive cells

The positive proportion of p53 varies depending on  the case.

(4)

白は半減期が 30 分程度と短く細胞内で速やかに分 解されるが,変異型 p53 蛋白は分解時間が著しく 遅延し核内に蓄積される.このため,変異型 p53 蛋白は免疫組織化学的に蛋白過剰発現として同定す ることが可能である.膵疾患においては,慢性膵炎 などの炎症疾患や良性腫瘍・低悪性度腫瘍では p53 蛋白の過剰発現は認められないのに対し,膵管癌で は 50 〜 70%と高頻度に p53 蛋白の過剰発現が認め

られることが知られている7)

 EUS-FNA の小さな検体における補助診断に p53 免疫染色が有効かの検討もされている8).Itoiら9)

は腫瘤形成性膵炎と膵癌の鑑別に EUS-FNA 検体を 用いて p53 蛋白過剰発現を調べたところ,膵癌での み 67%に異常を認め,通常の組織診の正診率が 79%であるのに対して p53 異常を癌とした場合には 正診率が 92%まで上昇したと報告している.われわ

Fig. 3 Bar graphs of location and histological differentiation p53-negative group tends to more frequently occur in body and tail  and show poorly differentiated histology. 

χ2 test

Fig. 4 Mean value of serum tumor markers

p53-negative group tends to show low serum tumor marker values. Error bars denote  standard deviations (SD).

   * Wilcoxon test

** Student s t test 

(5)

れの検討でも,膵管癌での p53 陽性(p53 蛋白過剰 発現)が高頻度(84%)に同定され,良性・低悪性 度腫瘍との鑑別や,HE 染色のみでは確定困難な症 例での補助的診断の有用性が高いことが示された.

一方で,陽性細胞は決してびまん性にみられず,さ まざまな割合で不均一に分布した.この発現態度は 切除検体でもみられる一般的な所見であり10,11),と くに EUS-FNA の様な小さな検体では,陽性症例で も採取部位によって陽性細胞が含まれないリスクが あることも知っておくべきであると考えられた.

 本研究においては,p53 蛋白の過剰発現の多寡と 有意に相関する臨床病理学的因子は見出されなかっ た.しかしながら,p53 陰性群にみられた,膵体尾 部の発生が多く,組織学的に低分化型が多く,血清 腫瘍マーカー(CA19-9, CEA, DUPAN-2)低値であ る傾向は,p53 遺伝子変異を欠く膵管癌,もしくは,

p53 蛋白不活化をきたす p53 遺伝子変異を示す膵管 癌の特徴である可能性があり,より多数症例の解析 の必要性が考慮された.p53 蛋白発現の予後因子と しての有用性については,これまで主に切除材料で の検討で, p53 陽性群(p53 陽性細胞≧ 50%)は術後 肝転移のリスクが高く,術後予後が不良であった8), p53 陽性群(p53 陽性細胞≧ 20%)は血管新生を促 進し,術後肝転移や予後不良と相関した10)といっ た報告がある一方で,予後不良因子としての有意性 はみられなかったという報告もあり12,13),現時点で は controversial といえる.陽性・陰性のカットオ フ値の設定が一定していないことも課題と思われる が,本検討ではカットオフ値を変えても有意な相関 関係は見出せなかった.

 EUS-FNA 検体の診断の上で膵管癌を疑うもの の,微量であったり,高分化であったりなどの理由 で,診断が付かないことがある.このような症例で さらに p53 蛋白過剰発現が乏しい場合には悪性判 定に混乱を与えることになるが,良性・低悪性度の 膵病変や他臓器癌と比較しても膵管癌に極めて高率

(90%以上)にみられる KRAS 遺伝子変異の解析は 有用な補助的診断になる可能性がある14‑18).本検討 において p53 陰性群に対し KRAS 遺伝子検査を追 加して行ったところ,解析した全例で codon12 変 異が認められた.この結果は,p53 蛋白過剰発現が 乏しい症例に対しては KRAS 遺伝子解析が膵管癌 の診断に補完的な役割を担い,EUS-FNA における 膵管癌の正診率を更に向上させるものと考えられた.

 総括:EUS-FNA 検体でも p53 蛋白過剰発現が高 頻度に同定され,膵管癌の診断に極めて有用と考え られた.p53 発現の多寡と相関関係にある臨床病理 学的因子は見出せなかったが,症例数を増やして検 討する必要性があると考えられた.p53 蛋白過剰発 現が乏しい膵管癌では,KRAS 遺伝子解析が有用 な補助手段となりうると考えられた.

利益相反

 本研究に関し開示すべき利益相反はない.

文  献

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Fig. 5 Kaplan-Meier survival curve and Log-rank test No significant differences between p53-positive and p53-neg- ative groups.

(6)

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(7)

USEFULNESS AND CLINICOPATHOLOGICAL SIGNIFICANCE OF   p53 IMMUNOSTAINING OF PANCREATIC DUCTAL ADENOCARCINOMA   USING ENDOSCOPIC ULTRASOUND FINE-NEEDLE ASPIRATION SPECIMENS

Reika SUZUKI and Nobuyuki OHIKE

Department of Pathology, Showa University Fujigaoka Hospital

Masatsugu NAGAHAMA

Department of Medicine, Division of Gastroenterology, Showa University Fujigaoka Hospital

Masafumi TAKIMOTO

Department of Pathology, Showa University School of Medicine

 Abstract    Endoscopic ultrasound fine-needle aspiration (EUS-FNA) is widely used to obtain tis- sues for diagnosis of pancreatic diseases.  Because there is a risk of dissemination, few needle passes and  increased diagnostic yield are desired.  This study evaluated the frequency and clinicopathological signifi- cance of p53 protein overexpression in pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) using EUS-FNA speci- mens.  Of the 90 patients who underwent EUS-FNA at Showa University Fujigaoka Hospital between  2014 and 2016, paraffin-embedded sections of biopsy specimens of 50 patients (25 men and 25 women) 

with PDAC were subjected to p53 immunohistochemical staining.  The cases were classified into two  groups according to the percentage of p53-positive cells: p53-positive group with more than 10% cells  and p53-negative group with less than 10% cells.  The clinicopathological features of these groups were  compared using statistical analysis.  A heterogeneous but distinct positive staining (p53 protein overex- pression) of p53, indicating p53 gene mutation, was found in 42 (84%) of 50 cases, and 39 cases belonged  to the p53-positive group and 11 were in the p53-negative group.  Between the two groups, there were  no significant differences in the investigated clinicopathological features, such as gender, age, tumor diam- eter, locations, histological differentiation, serum tumor marker values, lymph node metastasis, distant  metastasis, stage, and outcome.  However, in the p53-negative group, the tumor tended to more frequent- ly occur in body to tail, show poor differentiation, and have lower serum tumor marker values.  An addi- tional KRAS gene test showed codon12 mutations in all cases (n=7) investigated for p53-negative group.  

In this study, p53 protein overexpression was frequently identified on EUS-FNA specimens and seemed  to be extremely useful in the diagnosis of PDAC.  In addition, KRAS testing of EUS-FNA in combination  with p53 immunostaining may improve the diagnostic accuracy for PDAC.  Our data did not find a signif- icant correlation between the p53 expression status and any clinicopathological feature, therefore further  accumulation studies are recommended.

Key words:  pancreatic cancer, EUS-FNA, p53, KRAS, clinicopathological study

〔受付:1 月 6 日,受理:1 月 27 日,2017〕

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