セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質 的分析 : 当事者視点とMaslowの欲求階層説
著者 鄭 煕聖
雑誌名 評論・社会科学
号 123
ページ 21‑35
発行年 2017‑12‑31
権利 同志社大学社会学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000017016
要約:本稿の目的は,当事者視点からセルフ・ネグレクト状態にある独居高齢者の支援ニ ーズを探索的に検討することである。セルフ・ネグレクトの状態にある65歳以上の在宅独 居高齢者9名を対象に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプロー チの手法を参考に分析し,さらにマズローの欲求5段階説を用いて上位カテゴリーにまと めた。その結果,対象者の発言内容から調査対象者の支援ニーズに関係する17個のコード と9個のカテゴリーが抽出された。最終的に,マズローの欲求5段階説に基づき,【安全欲 求充足のための支援ニーズ】【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】【尊重欲求充足の ための支援ニーズ】という3個の上位カテゴリーに分類できた。考察では,対象者の支援 ニーズは段階に関係なく多様性を有しており,とりわけ,長期間放置されてきた潜在的ニ ーズを把握するためには当事者との親密な関係形成及びライフヒストリーに対する十分な 理解が重要であることが示唆された。
キーワード:高齢者,セルフ・ネグレクト,支援ニーズ,Maslow欲求階層説
目次 1.はじめに 2.研究方法
2-1.調査対象
2-2.調査内容とデータ収集 2-3.分析方法
2-4.倫理的配慮 3.研究結果
3-1.対象者の属性
3-2.セルフ・ネグレクト状態にある高齢者の支援ニーズ 4.考察
5.おわりに
────────────
†同志社大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程
*2017年9月28日受付,査読審査を経て2017年11月13日掲載決定
論文
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する 質的分析
−当事者視点と
Maslow
の欲求階層説−鄭 煕聖
†21
1.はじめに
近年,健康寿命の延伸にともない,その人らしく健康で安全に暮らせる地域社会の実 現が望まれている。それは,高齢期における生活の質(Quality of Life)を左右する要 素の一つであると考えられる。しかし,不適切な個人衛生や居住環境,あるいは必要と する健康行動の怠慢・放置により,自己の心身の健康と安全が脅かされる状態に陥る,
いわゆるセルフ・ネグレクトの状態にある高齢者が増え続けている。それに応じて,近 年高齢者のセルフ・ネグレクトに対する取り組みが地域包括支援センターを中心に行わ れてきたが,セルフ・ネグレクト問題は専門職による困難事例として捉えられる場合が 多い(山田ら
2010;浜崎ら 2011)。その理由は,セルフ・ネグレクト状態にある高齢者
のなかには,保健・福祉サービスや治療などを必要とするにもかかわらず,その支援を 一貫して拒否する場合が多くみられるためである。セルフ・ネグレクトは孤独死・孤立死などの高齢者の命に深く関係する問題であるこ とが明らかにされ(ニッセイ基礎研究所
2011),セルフ・ネグレクトの状態にある高齢
者の早期発見とともに,その問題に対する予防的アプローチが重要な課題となってい る。それに応じて,2010年代からセルフ・ネグレクト問題に対する予防策及び介入方 法 に 関 す る 研 究 が 行 わ れ て き て い る(浜 崎 ら2011;野 村 2011;岸 ら 2014;小 口
2015;斉藤 2016)。とりわけ,岸ら(2014)の研究では地域包括支援センターの看護職
17
人への調査の結果から,セルフ・ネグレクトの介入方法として「初動期の介入方法」「展開期の介入・支援方法」「早期発見・予防」というプロセスが明らかにされた。しか し,実際にセルフ・ネグレクト状態にある高齢者が日常のなかでどのような困りごとや 生活問題を抱えているかを,当事者の視点から明らかにした研究は未だ行われていな い。上野(2011 : 78)が「どんな援助やサービスも,そして制度も政策も,この当事者 の一次的ニーズとの対応によって検証されねばならない」と指摘したよう,支援策を講 じる際にはまず当事者の支援ニーズを明確にする必要があると考えられる。
日本の高齢者は,「欧米の中でも個人主義の徹底しているアメリカ社会と異なり,依 存と気兼ね,世間体を気にし,周囲に委ねて自己主張をしない」特徴がある(津村ら
2006 : 3)。さらに,岸(2012)の研究でも「遠慮・気兼ね型」がセルフ・ネグレクト 10
タイプの類型に含まれていたことから,日本においてセルフ・ネグレクト状態にあ る高齢者の支援ニーズを明らかにするためには,特に当事者の視点を重視したアプロー チが重要であると考えられる。それは,高齢者のセルフ・ネグレクト状態の改善ととも にQOL
の向上にもつながると考える。そこで,本稿では,当事者視点からセルフ・ネ グレクト状態にある在宅独居高齢者の支援ニーズを探索的に検討することを目的とすセルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 22
る。また,セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに対し,マズローの欲求
5
段階説が 示唆する点について考察する。2.研究方法
2-1.調査対象
本稿では,セルフ・ネグレクトの状態にある
65
歳以上の在宅独居高齢者9
名を対象 に半構造化面接を行った。調査対象者の選定においては,A市にある社会福祉協議会,福祉事務所,地域包括支援センターなど高齢者のセルフ・ネグレクトに関心をもつ
7
機 関に所属する専門職10
人を対象に本研究に関する説明会を開催した。調査協力への同 意が得られた地域包括支援センター2
箇所と医療介護サービスセンターの職員には,再 度本調査の目的と内容などについて説明し,「セルフ・ネグレクトの状態を示す10
項 目」に関する対象者の評価を職員8
名に依頼した。一方,意思疎通が困難な高齢者は対 象者から除外した。さらに,調査の協力を得た地域包括支援センターより紹介された対 象者のうち,身体の具合の悪化や老人福祉施設への入所などにより,調査の途中でイン タビューが中止になった事例も3
件あった。最終的に,本調査への協力を得た9
名の発 言内容を基にデータ分析を行った。調査対象者の「セルフ・ネグレクト状態を示す10
項目」に関する職員評価の結果は,以下の通りである(表1)。本研究に参加した 9
名 の対象者は最小2
項目から最大10
項目が該当していた。表1 セルフ・ネグレクト状態を示す10項目に関する職員評価の結果 項目
ID
個人衛生 健康行動 居住環境 計
① 個人衛生
② 汚れた
衣服
③ 栄養管理
④ 腐敗した 飲食物の 放置
⑤ 診療・
治療の 放置
⑥ 支援拒否
⑦ 大量の 物の放置
⑧ 家具等の 破壊状態
⑨ ライフラ
インの 停止
⑩ 水回りの 使用不可①〜⑩
A ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8
B ○ ○ ○ 3
C ○ ○ ○ ○ ○ ○ 6
D ○ ○ ○ ○ ○ 5
E ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 10
F ○ ○ ○ ○ ○ ○ 6
G ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 7
H ○ ○ ○ ○ ○ 5
I ○ ○ 2
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 23
2-2.調査内容とデータ収集
調査内容は,基本属性,困りごとや不安,支援に対するニーズであった。対象者の属 性は,年齢,性別,学歴,婚姻状態,同居世帯,独居期間,収入,住居,健康状態,要 介護度の
10
項目とした。困りごとや不安については,今の生活に対する心理・身体・経済・環境の側面に焦点をあてて質問した。支援に対するニーズについては,まず現在 利用している支援について質問した。次に,助けてもらいたいこと,利用したい支援,
人の助けを断ったことの有無とその理由について尋ねた。
インタビューは
1
人当たり1
回で終了したが,信頼関係を構築する必要性があると判 断された対象者においては,当該センターの専門職員と一緒に屋内の掃除などを行い,1
人当たり最小1
回から最大9
回まで訪問した。調査当日には再度調査の趣旨と内容を 調査対象者に説明し,同意を得た。面接時間は1
人1
時間半〜3時間であり,面接場所 は自宅への立ち入りを拒否した1
名を除いた8
名の対象者は自宅で行われた。データの 収集期間は2016
年8
月から2017
年5
月である。2-3.分析方法
本稿では,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)の手法を参考 に分析した。調査対象者の面接内容は事前の同意を得て録音し,録音した面接内容は逐 語録に起こし,データ化・コード化した。文脈の中にある概念は検討を繰り返しつつ,
内容の類似性に基づいてカテゴリー化した。さらに,マズローの欲求
5
段階説を基に上 位カテゴリーにまとめた。マズローの欲求5
段階説を用いた理由は,セルフ・ネグレク ト高齢者の基本的欲求を段階的に理解し,またどのような欲求が欠乏状態であるかを検 討するためである。マズローの欲求階層説は,1943年に論文「A Theory of Human Motivation」と,1954 年著書『Motivation and Personality』で示されている。マズローの欲求
5
段階説では,「生理的欲求」「安全の欲求」「愛と所属の欲求」「尊重の欲求」「自己実現の欲求」の
5
つがあり,低次の欲求が満たされるとその高次の欲求が現れ,そこには優先順位が存在 する。生理的要求(physiological needs)は,最も基本的な欲求であり,食事,水,性,睡眠,排泄,恒常性,呼吸など生存のための本能的な欲求である。生理的欲求がある程 度満たされると安全の欲求(safety needs)が現れる。安全の欲求は,個人的安定,経済 的安定,健康維持活動,事故と病気からのセーフティネットが含まれる。生理的欲求と 安全の欲求が満たされると,愛と所属の欲求(need for love and belonging)が現れる。
愛と所属の欲求では,職場,宗教団体を含め,小さくは家族,友人との関係なども含ま れる。この欲求が欠乏状態に陥った場合,疎外感や孤独感が生じ,うつ状態の原因にも なり得る。尊重の欲求(need for esteem)は,自分が集団から価値のある存在として認
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 24
められ,あるいは尊重されることを求める欲求である。尊重の欲求では,低いレベルと 高いレベルの欲求があり,前者は他者に尊重されたい欲求であり,後者は自己尊重に関 する欲求である。自己実現の欲求(self-actualization needs)は,自分が持つ能力と成長 可能性を最大に発揮し,実行するための欲求である。マズローは
5
段階の欲求階層のう ち,最初の4
つの欲求を欠乏欲求(deficiency needs),自己実現の欲求を存在欲求(be-ing needs)と命名した。
2-4.倫理的配慮
本研究における調査は,同志社大学の「人を対象とする研究」に関する倫理委員会の 承認を得て実施した(申請番号
16018)。本調査の同意を得る際,インフォームド・コ
ンセントの原則にのっとり,事前に本研究の趣旨と内容について調査対象者に説明を行 った。調査で得られたデータは,あらかじめ情報提供者の同意を得た上で収集した。ま た,個人情報保護のため,得られたデータは匿名化して個人情報が特定できないように 配慮し,厳重に保管した。さらに入手した全てのデータは研究目的以外には使用しない ことと,情報提供者から得たデータに対して撤回の意思がある場合は情報を廃棄あるい は提供者に返すことを説明した。3.研究結果
3-1.対象者の属性
本調査に参加した対象者
9
人の基本属性は次の通りである(表2)。年齢は,65〜74
歳が6
人であり,75歳〜90歳が3
人であった。性別は,男性が5
人,女性は4
人であ る。学歴は,中卒4
人,高卒2
人,大卒3
人であった。婚姻状態は,未婚3
人,離婚2
人,死別2
人,さらに再婚及び別居から実際に独り暮らし高齢者が2
人であった。独居 期間では,10年未満が2
人,10年以上〜20年未満が4
人,20年以上が3
人であった。ここでは,配偶者との死別・離婚,両親との死別により独り暮らしになった事例などが 含まれている。住居状態は,自宅が
6
人であり,賃貸アパートが3
人であった。要介護 度では,要支援者4
人,要介護者3
人,さらに申請中の人も2
人いた。収入において は,生活保護受給者であるG
さんとH
さんを除く,7人は経済的な困難は抱えなかっ た。また,全ての対象者は,何らかの疾患を抱えていた。3-2.セルフ・ネグレクト状態にある高齢者の支援ニーズ
本稿では,セルフ・ネグレクト状態にある高齢者の支援ニーズを探索的に検討するこ とを目的としている。まず,対象者がどのような支援を利用しているかを検討した。そ
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 25
の結果,対象者が利用している主な支援として,安否確認サービス,金銭管理,家屋の 環境整備,配食・配達サービス,訪問看護・訪問介護,デイサービス,ショートステイ が明らかになった。次に,対象者が抱えている困りごとや生活問題に焦点を当ててどの ような支援ニーズをもつかを検討した。無論,対象者が支援を利用することになってか らセルフ・ネグレクト状態がある程度改善されたとの職員からの伝聞もあった。
しかし,本研究に参加した対象者の多くは,未だセルフ・ネグレクト状態が続くなか で様々な生活問題を抱えていることが確認された。本稿では,セルフ・ネグレクト状態 にある高齢者の支援ニーズについて,対象者の発言内容から
17
個のコードが抽出され,それらを
9
個のカテゴリーにまとめることができた(表3)。さらに,マズローの欲求 5
段階説に基づき,3個の上位カテゴリーに分類できた。表記は,上位カテゴリーを【 】,カテゴリーを〔 〕,コードを〈 〉,発言内容は「 」で示す。
3-2-(a).【安全欲求充足のための支援ニーズ】
安全の欲求は,安全で安心な暮らしへの欲求であり,生命維持に関する人間の最も基 礎的な生理的欲求が満足されると,安全の欲求が現れる(小口
1972 : 61-63)。【安全欲
求充足のための支援ニーズ】では,〔環境整備〕〔生活支援〕〔経済的支援〕〔健康維持活 動〕の4
個のカテゴリーで構成されている。〔環境整備〕では,既に専門職が介入して,対象者の屋内がある程度片付けられた場 合もあったが,未だゴミや不用品等が散らかっている空間で暮らしている対象者も多く 存在した。不衛生な居住環境で暮らしている対象者
5
人のうち,4人が家の片付けや掃表2 調査対象者の属性 ID 年齢 性別 学歴 婚姻
状態 同居 世帯
独居
期間 収入 住居 健康状態 要介護度
A 80 女性 中卒 未婚 独居 28年 厚生年金・貯蓄 自宅 認知症,骨折,廃用性症
候群 要介護4
B 66 女性 大卒 既婚 別居 3年 月200万円程度 自宅 胸 椎 圧 迫 骨 折,卵 巣 が
ん,甲状腺,腰痛 要支援2 C 71 男性 大卒 離婚後
再婚 別居 16年 月16万円 自宅
(住宅ローン)
ADHD,糖 尿 病, 高 血
圧,骨折 要支援2 D 73 男性 高卒 離婚 独居 13年 厚生年金
(月18万円)
賃貸
アパート 骨折,痛風 申請中 E 65 男性 大卒 未婚 独居 10年 国民年金・遺産 自宅 大腸がん 要介護1 F 90 女性 中卒 死別 独居 11年 国民年金・遺族
年金 自宅 ア ル ツ ハ イ マ ー 型 認 知
症,高血圧 要介護2 G 71 男性 中卒 死別 独居 5年 厚生年金・企業
年金・生活保護 賃貸 アパート
アルコール依存症,糖尿
病,高血圧 要支援1 H 73 男性 中卒 離婚 独居 47年 生活保護 賃貸
アパート 喘息,高血圧 申請中 I 85 女性 高卒 未婚 独居 23年 厚生年金 自宅 糖尿病,心不全,狭心症 要支援1
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 26
表3 セルフ・ネグレクト状態にある独居高齢者の支援ニーズのカテゴリー 上位
カテゴリー
(3)
カテゴリー
(9)
コード
(17) 発言内容
安 全 欲 求 充 足 の た め の 支 援 ニ ー ズ
環境整備
片付け・
物の処分
力の要ることの片付けが,力が入らなくなってきたんでね.トイレの掃除と か,猫砂持っていかならんし,それ重いから.これをちょっと片付けるとか,
物減らしたいし.やっぱりね,猫の遊び場所として,猫中心の部屋にしたいん です(B).もうね,捨てようとしたら,以前は拘って物でも,これはもうい いやという感じで,だいぶあの見切れがついてきましたね.それで,片付けの 手伝いをしてもらいたいですね(C).(本を)捨てるのはもったえないから,
古本屋さんに買ってもらうとか,ヤフーのオークションに出しちゃうとか
(C).やっぱり,そこらの掃除なんかをして欲しいですね(F).高いとこに上 がってる荷物を下ろして欲しいとか,何に限らず,高いとこまで積んである物 があるね,いろいろと.そうやけど,下ろしてもらったら場所が要るやろ.そ れを考えたら,まず下を片付けなあかんし,玄関も物置になってるね(I).
庭木の刈り 込み
刈り込みハサミはありますけど,手に力が入らなくて,困ってます(E).(お 金が)十分にはありませんですわね,年金生活やからね.だから,この植木の 刈り込みなんかでも余分のもんになりますからね.それが心配ですね(F).
住宅の改修 ぐちゃぐちゃな生活ですけどね,雨漏りが2階にするんで,それを直さなきゃ いけないんですね.しかし,かなりの金額なんで(C).
生活支援
猫の世話 猫に感染症が移らないかが心配になって人には手伝ってもらえないけど,猫に 詳しい専門家には猫の世話をお願いすることができると思います(B).
買い物支援
買い物でもお願いしたいんですね,この頃,買い物行くのがしんどなってきて
(B).やっぱりスーパーの買い物なんかでも重たいものかね.持って帰るのが 辛いですね.果物とか,野菜とかね,やっぱ重いですね.持って帰るのがね.
これからも頑張って生きたいと思います(F).
入浴支援 足が屈められないので,上のほうは洗えるけど,下のほうは洗えないし,しょ うがない(I).
経済的支 援
交通費の 支援
内科に2週間に1回行ってるけど,そうやけど,遠いですね.病院まで片道で
2,000円ぐらいかな.往復行ったら,ご飯食べなあかんし.だから,1回行っ
たら5,000円ほど要るから(I).
治療費の 支援
悪い,今日でも行こうかと思うね.前立腺の片方のほうが腫れてるらしいわ.
それとね,最近になって体の水分が入って睾丸こんななった.これがなくなら んと,もうどうにもならへん.でも,お金が要るからね,これから入院したら どれほどかかるか分からへんし.これは一番心配やね(G).毎日,痛いわ.
病院には行かんだけで.行ったら,金がかかるから.あれ,行ったら,何にも いいことないで(H).
健康維持
活動 軽い運動 体力がひきこもってしまって,運動は少ないんで,体力をなんとかしなくちゃ という気がしますね.老人を対象にした軽い体操をするとか(C).
愛 と 所 属 の 欲 求 充 足 の た め の 支 援 ニ ー ズ
家族関係
妻との同居 老人ホームに入所したくないんです.できれば理想ですけど,妻と一緒に暮ら して,ここのうちでね,できれば死にたいなと思ってますね(C).
娘の お見舞い
次女がちょっと病院でお世話になってますからね.行くときはね,車拾って行 くんですけど,帰りはバスで帰るから時間がかかるなと思いますね(F).
情緒的支 援
猫との 暮らし
体がしんどい時はちょっとこう死ぬかなと思う時がありますね,そうやけどこ の子らいると忘れてますわ.猫に癒されることもあるし(B).
話し相手 何よりも独居という一番大変さっていうのは誰でもいいから,そばにいて話を してくれる人がいると相当(生活が)違ってくるんですよね(C).
社会参加 外出同行 支援
ヘルパーさんに買い物つれてもらったけど,この頃のヘルパーさんにあんまり つれていってくれてへんね.外に出て景色みたいな.花見たりな.風景が好き なんや(A).軽車でもいいから,行きたい所に行くことができればいいけど.
歩くのがかなんから,何もできないし,どこも行けへん(G).やっぱり色ん などこも行きたいけど,ちょっと足が悪いし,行けへんの.電車乗ったら降り て,また乗るとそれが行けへんの(I).
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 27
除に対する支援ニーズを持っていたことが確認された。具体的には,〔環境整備〕に関 する支援ニーズとして,〈片付け・物の処分〉〈庭木の刈り込み〉〈住宅の改修〉がある。
〈片付け・物の処分〉では,Bさん・Cさん・Fさん・Iさんが該当し,4人とも自分が 納得した上で,片付け及び物の処分をしてもらいたいという共通のニーズが明らかにな った。それは,専門職が支援を行う際に,対象者とのラポール形成を前提としたニーズ 把握がいかに重要であるかを示唆するものである。このうち,Cさんは行動抑制機能の 低下に伴い,様々な生活困難を抱えながら片付けられない状況が繰り返され,結局屋内
には本
4,000
冊とレコードなどが積み重なった状態に至った。多量の本とレコードを処分したいニーズがあるにも関わらず,それらを処分しない理由について,Cさんは「こ れまで収集してきた物の中には大切な物が混在しているため」と語った。〈庭木の刈り 込み〉では,Eさんと
F
さんは身体機能の低下により,自力では庭木の刈り込みが難 しい状況であることが明らかになった。とりわけ,E さんの場合は,庭木の枝が家の敷 地を超え,隣人とのトラブルが発生したこともあった。〈住宅の改修〉では,Cさんは2
階に雨漏りの箇所があるにも関わらず改修費がないので,改修ができない状況であっ た。Cさんは,2階に本などが多く置かれているため,本が雨水に濡れないかに対して 不安を抱えていた。〔生活支援〕では,〈猫の世話〉〈買い物支援〉〈入浴支援〉が明らかになった。〔生活 支援〕は,心身機能の低下と家族の死により生じる生活困難と密接に関係していた。
〈猫の世話〉では,Bさんは自分所有のマンションで約
40
匹の猫を保護しており,その うち14
匹の猫と一緒にワンルームマンションで暮らしていた。その間,転倒して身体 機能は急速に低下し,猫の世話とそれに必要な物品の持ち運びはもちろん,屋内外の掃 除もできない状態に陥った。しかし,Bさんは猫の世話に対して他人による支援を拒否 したが,その理由として,「猫について専門性を持つ専門家がいなかった」が明らかに なった。つまり,Bさんの事例に介入する際には猫に対して専門的な知識を有する人が キーパーソンとなり,必ずしも支援する側が福祉と看護の分野に限らないことを示唆す尊 重 欲 求 充 足 の た め の 支 援 ニ ー ズ
ライフ スタイル
の充実
気楽で 気兼ねの ない生活
このままいってるほうがいいな.自由奔放な性格なので,友達が二人ほど(老 人 ホ ー ム に)入 っ て る や.自 由 が な い し,か な ん な.通 う だ け で い い わ
(A).まあ,動けへんになったら,老人ホームに入るけどな.自分で動けへん になったら,自分で死ぬかもわからへん.酒も飲めへんし,自由がないからな
(D).このままでよろしいです.みなさんに気を使わなあかんから(老人ホー ムは)嫌いですね.やっぱり,気を使うのが嫌いですね(F).
病院の近い 住み慣れた 住環境
田舎も好きなんやけど,病院が近いとこ,まあこのへんも近いわね,救急車呼 んでもすぐ来ますよね.だから,そういうとこの自分の家で,自分のご飯作っ て,自分の家で住みたいですね,年取っても(B).
死を 迎える ための 準備
遺産と 墓の悩み
このままでいいけど,私が死んだ時,この墓をどんなにするかやな.私の身を な,誰が見てくれるかなと思って.このテレビでやってはるわ.墓のことばか りやな.他人の墓に入るわけにもいかんしな(A).私子供がいないから墓や 跡取りがいないことが不安でね(B).
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 28
るものと考えられる。〈買い物支援〉では,Bさんの場合は猫の世話に必要な物品を購 入しそれを屋内に持ち運ぶ時に,Fさんの場合は食品などを持ち歩く時に,他者による 支援を必要としていた。〈入浴支援〉では,Iさんは両足の膝の手術後,足が屈められ ない状態となり,入浴時に身体的な負担を感じると訴えた。
〔経済的支援〕では,〈交通費の支援〉〈治療費の支援〉で構成されている。まず,〈交 通費の支援〉では,慢性疾患をもつ
I
さんの場合,住宅から病院までの距離が離れてい るため,交通費などの移動費用に経済的負担を抱えていることが確認された。次に,〈治療費の支援〉では,治療費に対する経済的負担が大きいため,Gさんは前立線手術 を放置し,Hさんは必要な治療を放置していた。
〔健康維持活動〕では,〈軽い運動〉から導き出された。具体的には,Cさんは体力を 維持するため,地域にある体操プログラムへの参加意向を示したことが確認された。そ れは,引きこもり状態で暮らし続けている
C
さんに,社会参加のきっかけを与えるも のとしても考えられる。一方,地域活動に参加しない理由について,Cさんは「子供扱 いみたいな,そういう童謡みたいなのを歌わせたり,またダンスみたいなことをさせら れたりとか。僕,ごめんなさいというか,これはちょっとついていけないなと感じます ね」と語った。3-2-(b).【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】
【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】は,〔家族関係〕〔情緒的支援〕〔社会参 加〕の
3
個のカテゴリーで構成されている。〔家族関係〕は,〈妻との同居〉と〈娘のお見舞い〉から導き出され,〈妻との同居〉
では,Cさんの発言より,孤独な生活から脱却して妻と一緒に暮らしたいニーズが明ら かになった。〈娘のお見舞い〉では,公共交通を利用して月
1〜2
回程度で次女の見舞い に通っていたF
さんは,最近体力的に大きな負担を感じ,病院までの移動に困ってい たことが確認された。〔情緒的支援〕は,〈猫との暮らし〉と〈話し相手〉から導き出された。〈猫との暮ら し〉では,心が癒される猫の存在感から,今後も猫と一緒に暮らし続けたいという願望 が明らかになった。〈猫との暮らし〉では,例えば,Cさんは離婚をきっかけに一人暮 らしへ移行し,引きこもりの状態と無気力な状況が続くなかで話し相手の存在を必要と していることが確認された。Cさんは,話し相手が存在すると,孤独感の解消のみなら ず,セルフ・ネグレクト状態を改善するための動機付けになると認識していた。
〔社会参加〕では,〈外出同行支援〉から導き出された。例えば,Aさんは以前に訪 問介護員と一緒に買い物をしたことがあったが,最近では訪問介護員と一緒に外出をし ていない状況であった。Aさんは,「その人(訪問介護員)は忙しいので連れていって もらえない」と現実を受け入れながらも,「訪問介護員に買い物などに連れてもらって
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 29
景色を見たい」と外出に対する願望を表出した。Gさんと
I
さんは,行きたい場所に 行けなくなった現実を受け入れながらも,自分の行きたい場所に行けるようになりたい という希望を持っていることが把握できた。3-2-(c).【尊重欲求充足のための支援ニーズ】
尊重の欲求は,自分に対する高い評価,自己尊敬,あるいは自尊心,他者からの承認 などに対する欲求・願望に関する欲求であり(小口
1987 : 70),大きく自尊心と他者か
らの承認がある。【尊重欲求充足のための支援ニーズ】は,〔ライフスタイルの充実〕と〔死を迎えるための準備〕の
2
個のカテゴリーから抽出された。〔ライフスタイルの充実〕は,居場所の意味合いや住み慣れた家で人生の最期を迎え たい理由を示したものと考えられ,〈気楽で気兼ねのない生活〉〈病院の近い住み慣れた 住環境〉〈猫との暮らし〉の
3
個のコードで構成されている。〈気楽で気兼ねのない生 活〉では,これからも誰に干渉されることなく今の暮らしを継続していきたい願いが確 認された。また,Aさん・Dさん・Fさんは入所型高齢者福祉施設について否定的な意 見を示したが,その理由について自由がない生活や気兼ねする生活があげられた。〈病 院の近い住み慣れた住環境〉では,自宅と病院との距離が,住み慣れた住環境の満足に つながっていることが確認された。その理由として,体調の変化に迅速な対応ができる 点があげられた。〔死を迎えるための準備〕では,〈遺産と墓の悩み〉から導き出された。例えば,A さんと
B
さんは,身寄りが誰もいない状況から,遺産,墓,跡取りなどに対する不安 を抱えていることが明らかになった。4.考 察
本稿では,セルフ・ネグレクト状態にある独居高齢者の願望のみならず,困りごとや 生活問題も視野に入れて,生活全般の支援ニーズを当事者の視点から明らかにした。さ らにマズローの欲求
5
段階説を援用してカテゴリー化した結果,【安全欲求充足のため の支援ニーズ】【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】【尊重欲求充足のための支援 ニーズ】という3
個の上位カテゴリーに分類することができた。具体的には,【安全欲 求充足のための支援ニーズ】では〔環境整備〕〔生活支援〕〔経済的支援〕〔健康維持活 動〕の4
個のカテゴリーで構成され,【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】では〔家族関係〕〔情緒的支援〕〔社会参加〕の
3
個のカテゴリーで,【尊重欲求充足のための 支援ニーズ】では〔ライフスタイルの充実〕と〔死を迎えるための準備〕の2
個のカテ ゴリーで構成された。以上の内容をふまえて,すべての対象者は存在欲求までに至らず,欠乏欲求のみを抱
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 30
えていることが明らかになった。また,マズローの
5
段階の欲求階層のうち,【安全欲 求充足のための支援ニーズ】と【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】が相対的に 多く現れることが確認できた。一方,生理的欲求と自己実現の欲求は確認されなかっ た。しかし,Fさんにおいて〈買い物支援〉に対する支援ニーズが確認されたが,この ニーズは食事摂取と栄養に密接な関係があるため,Fさんの心身機能が低下した場合,いつでも生理的欲求が現れる可能性があると推察される。さらにマズローの
5
段階欲求 のうち,Dさん・E さん・Hさんの3
人を除き,6人には2
つ以上の欲求階層が重複し て現れた。この点から考えると,アダルファー(1969)が指摘したよう,対象者のニー ズはある段階に留まらない,多様なニーズを抱えていると考えられる。例えば,Aさんの場合は【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】【尊重欲求充足 のための支援ニーズ】,Cさん・Gさん・Iさんの場合は【安全欲求充足のための支援 ニーズ】【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】が満たされていない状態であった。
さらに,Bさんと
F
さんは,【安全欲求充足のための支援ニーズ】【愛と所属の欲求充 足のための支援ニーズ】【尊重欲求充足のための支援ニーズ】の3
段階の欲求が満たさ れていない状態にあることが明らかになった(図1)。さらに,同じ【安全欲求充足の
ための支援ニーズ】のなかでも,衣食住のように継続性を有するニーズだけでなく,庭 木の刈り込みのように断続的に現れるニーズがあることも明らかになった。つまり,支 援ニーズは段階に関係なく多様性を有しており,そこには個人の思い・緊急性・価値判 断などが反映された最優先のニーズが存在すると考えられる。マズローの欲求
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段階説は,低次の欲求から高次の欲求への序列が存在し,高次の欲 求が現れる前に,より優勢な欲求が満足されなければならない(小口1987 : 146-148)。
図1 マズローの5段階の欲求階層に該当する対象者の支援ニーズ
セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 31
一方,そこには例外もある。例えば,特質,目標の消滅,精神病質人格,欲求が長い間 満たされていない場合,より基本的な欲求が剥奪された状態にある時にそれを簡単に放 棄してしまう場合,さらに二つの欲求が共に剥奪された場合にはより基本的な欲求の方 を人は欲する場合,などがあげられる(小口
1987 : 80-82)。つまり,ヒエラルキーのな
かに複数の欲求が現れた場合,その人は最も低次の欲求を最も必要とされるものと解釈 できる。また,複数の欲求が表出された理由に関しては,最も低次の欲求の満たされな い状態が長期間継続された結果,その欲求を放棄し,結局その高次の欲求が現れたと理 解できる。例えば,Bさんと
F
さんの場合,【安全欲求充足のための支援ニーズ】が満たされて いない状況のなかで,【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】と【尊重欲求充足の ための支援ニーズ】を抱えていた。それは,現代社会における個人のニーズの多様化を 反映すると同時に,何らかの理由で最も低次のニーズが長期間放置された状態を示すも のと解釈できる。あるいは,平岡(2011 : 428)が示した潜在的ニード(1)の一つの状態 である,「専門的な観点から見ればニードがあるのに,本人が自覚していない状態」の 可能性も考えられる。また,Dさんが必要としているニーズには【尊重欲求充足のた めの支援ニーズ】のみ抽出され,【尊重欲求充足のための支援ニーズ】より低次のニー ズは充足された状態であると予測できる。一方,Dさんは61
歳に定年を迎えた後,す ぐ離婚し,引きこもりの状態が長期間継続された。このような危機的ライフヒストリー を理解すれば,Dさんには【尊重欲求充足のための支援ニーズ】より低次のニーズで ある【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】が満たされないまま放棄されている可 能性がある。セルフ・ネグレクト事例のなかには,国などからの援助を拒否する場合が多く,ある いは支援の必要性について自覚していない高齢者も存在する。このため,セルフ・ネグ レクト状態にある高齢者の支援ニーズを把握する際には,顕在化したニーズのみならず 長期間放置されてきた潜在的ニーズも早期に発見し可視化することが極めて重要である と考える。そのためには,Dさんの事例からもわかるように,当事者との親密な関係 形成とともに,その人のライフヒストリーに対する十分な理解が不可欠である。それ は,セルフ・ネグレクト状態が改善できるきっかけになると同時に,最終的には
QOL
の向上にもつながると考えられる。5.おわりに
本稿では,セルフ・ネグレクト状態にある
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歳以上の在宅独居高齢者の支援ニーズ を当事者の視点から明らかにした。具体的には,まず,インタビューから導き出した対セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 32
象者の支援ニーズをカテゴリー化した。その結果,セルフ・ネグレクト高齢者は,情緒 的,尊厳・尊重,健康,家族関係,物質的,住居環境,社会参加,死後などに対する支 援ニーズを有することが確認された。次に,それらのニーズをマズローの欲求
5
段階説 を援用してまとめた結果,【安全欲求充足のための支援ニーズ】【愛と所属の欲求充足の ための支援ニーズ】【尊重欲求充足のための支援ニーズ】の3
個の上位カテゴリーに構 成することができた。【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】の充足は孤独感解消 に,【尊重欲求充足のための支援ニーズ】の充足は自尊感情の向上に寄与し,【安全欲求 充足のための支援ニーズ】の充足は日常生活に対する不安感解消とともにより良い生活 環境を可能にすると考えられる。本稿を通して,支援を受けているセルフ・ネグレクト高齢者であっても,彼らの支援 ニーズは段階的で複合的に現れることが明らかになった。また,多くの対象者が【安全 欲求充足のための支援ニーズ】【愛と所属の欲求充足のための支援ニーズ】を抱えてい たことが確認された。さらに,独居生活,健康問題,心理的問題,経済的問題などによ り,自分の力のみでは基本的欲求を充足することが困難な場合,他人による支援が極め て重要な要素であることが示唆された。
セルフ・ネグレクト状態に陥った高齢者の多くは地域から孤立しており,人の手助け を拒否する場合もある。しかし,彼らが支援を拒否したとしても,支援ニーズがないと は言い切れない。本稿の結果から明らかにされたように,セルフ・ネグレクト状態にあ る高齢者,そのなかにもゴミ屋敷状態にある高齢者の多くは,〈片付け・物の処分〉に 対する支援ニーズを持っていた。あるいは,低次ニーズの長期間放置により,最も低次 のニーズが潜んでいる可能性も考えられる。つまり,高齢者がどのような生活問題と支 援ニーズを抱えているかを総合的にアセスメントし,ストレングス視点を基盤とした支 援ならびに専門職間の連携を促進しながら,セルフ・ネグレクト問題に取り組んでいく ことが重要であると考える。本稿では,A市のセルフ・ネグレクト高齢者
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名という 比較的少ない調査対象が限界といえる。今後は,フィールドを拡大してセルフ・ネグレ クト事例をふやし,研究結果の信頼性を高める必要があろう。注
⑴ 平岡(2011 : 428)はニード(need)を大きく顕在的ニードと潜在的ニードに分類している。例えば,
顕在的ニードは「まさに表面に姿を現していて,現にそのニードが容易に観察できるという状態」で あり,潜在的ニードは「内部の深いところに潜んでいて表面には現れてこないために通常は観察でき ないが,何らかの手だてを講ずれば存在が把握できる状態」を意味する。
参考文献(アルファベット順)
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セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 33
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セルフ・ネグレクト高齢者の支援ニーズに関する質的分析 34
The purpose of this study is to explore the support needs of the elderly living alone who are self-neglected based on the viewpoint of those concerned. To address the goal, a semi- structuralized interview was conducted to nine elders aged 65 or older who were living alone while neglecting themselves. I conducted analysis and categorization with the use of M-GTA and further classified their needs into the parent categories using the Maslow’s hierarchy of needs.
The results have extracted 17 codes and 9 categories in relation to the subjects’ support needs, which have been classified into three parent categories through Maslow’s hierarchy of needs, in- cluding “support to meet safety needs”, “support to meet desire for love and belonging,” and
“support to meet desire for respect”. The findings of this study imply that the subjects’ support needs vary without particular stages and that building a rapport with the concerned elderly and in -depth understanding of their life history will be required to be able to properly identify their po- tential desires that have long been neglected.
Key words: Elderly, Self-neglect, Needs, Maslow’s hierarchy of needs
Qualitative Analysis of Support Needs for the Elder Self-Neglect :
The Viewpoint of the Person Concerned and Maslow’s Hierarchy of Needs Heeseong Jeong
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