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雑誌名 教育実践研究指導センター研究報告

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

授業展開の指導技術に関する実証的研究(2) − 発間、応答予想と子どもの解釈の記録(安富南中の 場合)−

著者 上野 ひろ美

雑誌名 教育実践研究指導センター研究報告

巻 1

ページ 55‑70

発行年 1992‑03‑31

その他のタイトル A Study for pedagogic Tact in Teaching‑Leaning Process

URL http://hdl.handle.net/10105/4496

(2)

一発間、応答予想と子どもの解釈の記録(安富南中の場合)一 上 野 ひろ美

(教育学教室)

A Study for pedagogic Tactin Teaching−Leaning Process

l.授業構想としての指導案

(1)呼びかける指導案の構想

授業において教師は、子どもたちの意見をすばやく読みとり、それを刻々に組織し、方向づけ ていく。この応答的組織力は、授業のなかでの刻々の教材解釈力とも言えるものであり、授業の 展開過程の深まりひいては授業の質を規定する。fl)こうした応答的組織力を培うためのストラ

テジーに、指導案構想がある。

従来、指導案には二つの類型が存在する。ひとつは「伝え,覚えさせる」指導案と呼ぶべきも ので、事柄を説明し、事項を伝達することに腐心する授業計画案である。明治30年代に定着した 教授段階論による指導案をその典型とし、授業の過程を形式的に文節化するので、概ね授与・伝 達の授業計画案の性質を帯びる。もうひとつは、「調べさせ、見守る」指導案と呼ばれるもので、

授与・伝達の指導案を否定し、児童中心・自発活動中心の精神に依拠している。大正自由教育や 戦後新教育がこれに含まれる。この指導案は授与・注入を正しく否定Lはするが、同時に指導す ること自体を大きく後退させる性質を持っている。いかに指導するかの具体に欠けるのである。

戦後新教育が学力低下を招いた背景に、指導案のとらえ方でいえば、「指導上の留意点」に代表 される曖昧な指導計画があったと言わざるを得ない。(2)

教師の指導は「伝達・注入」でなければ、「留意」点への助言でもない。教科・教材に向かって、

子どもたちの拒否の自由を前提にしつつ意欲を引きだす働きかけである。こういう指導観を貫い てどう授業を計画するか、そのことを具体的に担い得る指導案をどう構想するかが問題となる。

そこで、教師が語りかけ問いかける働きかけによって、子どもたちの学習活動を引き起こす指 導案、「呼びかける指導案」が浮かびあがる。教材をめぐってまず案の上で子どもたちと対話す

る、言い換えればあらかじめ授業を構想するのである。授業構想としての指導案である。

兵庫県宍粟郡安富商小学校では、誰もが意欲的に学習に参加する、わかり合う授業の実現をめ ざして数年来実践研究を積み重ね七きている。その意図は当然指導計画にも反映している。すな わち、「教え、授ける」指導案ではなく、また子どもの活動をひたすらに「見守る」ものとして でもない、「呼びかける指導案」づくりに力を入れている。子どもたちが強制的でなく、選びと

り学びとるための仕掛けの構想図としての指導案づくりである。

(2)発問構想

指導案構想の中核は発問構想である。従来教材解釈と称された、教師による教材理解や解釈は、

子どもの前で伝達されてしまうか、あるいは子どもには難しかったと、伝達さえされずに終わる。

−55−

(3)

上 野 ひろ美

そうならないために、教師の教材解釈を子どもが発見し学びとるものとして、具体化する。伝達 的・教訓的に教えるのではなく、文章に即したイメージの展開として、臨場感をもって子どもを その場にたたせるような問いを構想するのである。その際、教師は視点、反復、対比、文末表現、

倒置といった認識のカテゴリー、認識方法を明確にして、自分の教えたいものをつくりだす。

発問を設定する際の最大の要件は、その問いが、内容理解の本質へせまるプロセスとして、子 どもたちに多様な解釈、言い換えれば思考の対立=分化を惹き起こすものであることである。

「対立二分化」のなかには、文字どおりの「明確な分化」に加え、「まちがい」「つまずき」が 含まれる。「集団を呼びこむ」問いと言えようか。

(3)応答予想

次に、構想した発問にたいして、子どもたちがどう考えを出してくるかという、応答予想を立 てる。子どもからの考えを呼びこんで、多様な対立・分化や誤ったあるいは弱い解釈、意見とい うものを含めながら子どもの解釈を予想していくのである。展開過程の組織化のためには、教師 は作品をいろいろに解釈するというよりも、子どもの応答を、仕掛けの構想として先取りしてい

くこと、その作業が重要である。

2.発間にたいする子どもの応答の記録

以上のような指導案の位置づけに立ち、ここではく発間〉、それにたいして子どもがどういう 考えを出してくるかということを予想したく応答予想〉、そしてく授業の実際〉での子どもたち の発言を、安富南小学校における授業実践から記述する。(3)

(1)「大きなかぶ」(ロシア民話・西郷竹彦再話・1年生教材)

発       問 応  答  予  想

「かぶが大 き くなるまで、お じい さん は どう して いたので し ・毎 日水をや った ようね」 「何 も しな くて も、す ぐに大 き くな った のかな」 ・こや しをや った

・草 ひきを した

・消毒 を した

・一生懸 命世話 を した

授業の実際

C ; 「お願 い しただ けで こん なに大 き くなったんや ろか」 ( つぶ や き)

C ;消毒 した C ;草む しりを した C ;肥 料をや った C ;土 も入れ る

C ;畑 に雨が入 ると土が へ ってい くので、土入 れをす る

(4)

発          問 応  答  予  想

「お じ い さ ん は ど う や っ て か ぶ を 抜 こ う と し た の か な 。 足 の ・足 は 踏 ん ぼ っ て 様 子 は ?  腰 は ?  手 は ?  か け 声 は ?」 ・腰 は 曲 げ て

・ ぎ ゅ っ と薫 の 軸 を に ぎ っ て

・ 「う ん と こ し ょ」 と 強 く、

力 の 入 っ た 声 で

授業の実際

C;引っ張って抜こうと思とんです。

C;うんとこしょ、どっこいしょ、と言うて抜いた。

C;前に出て言います。おじいさんは、こうやってかぶを抜こうと引っ張ったけど、抜けな かった。

C;(動作化:足を踏んぼり、力を入れて、尻餅をついたりして)

C;先生、かぶがないよ。

C;葉っぱがないとあかん。先生の手を葉っぱにしたらええわ=‥‥

C;かぶが抜けんと葉っぱだけが抜ける。

C;足を広げてや。腰、曲げてや。

C;なかなか抜けないからです。

C;「気をつけい」しとったら、抜けないから、足を広げて抜くんです。

C;「気をつけい」しとったら、なかなか力が人らんからです。

C;葉っぱの中の方や。

C;広げて、ぎゅっと両手で、曲げて。

(2)「かさこじぞう」(岩崎京子作、2年生教材)

発       問 応  答  予  想

「どう して 『お らのでわ りいが こ らえて くだ され』 と言 った ・か さこがないか ら

のか な」 ・つ ぎはぎの手ぬ ぐいだか ら

・きたな くて ポロだ か ら

・つ ぎは ぎで、地蔵様 につけ るのは悪 いか ら

−57−

(5)

上 野 ひろ美

授業の実際

T;なんでおらのでわりいん?

C;一番しまいの地蔵さまだけ、じいきまの自分の手ぬぐいをかぶせたから。

C;破れたりしとうやつをかぶっとうから、これでがまんしてくれって言うてかぶせた。

T;「これでええ、これでええ」と言ってるのは、どうしてでしょう。

C;地蔵さまにかさこをかぶせ、手ぬぐいもかぶせたから。

C;これで地蔵さまがぬれなくてすむから。

C;じいきまのしてあげられることはした、という感じ。

(3)「つり橋わたれ」(長崎源之助作、3年生教材)

発 間 「こ の 男 の 子 は や ま び こ な ん だ ろ う か 」

応 答 予 想

・わ か ら な い

・ 「お う い 、 山 び こ っ 」 と 呼 び か け た ら 、 あ ら わ れ た か ら 山 び こ

・ く‥・ と い う 声 が だ ん だ ん 大 き く な っ て 〉 か ら 、 何 か が や っ て く る 感 じ

・ くと つ ぜ ん 、 ど っ と 風 が ふ い て 〉 何 か が き た み た い

・ くか す り の 着 物 を 着 た 男 の 子 〉 だ か ら 、 ふ つ う の 子 じ ゃ な い よ うだ

・男 の 子 は 本 当 は い な い の で は な い か 。 不 思 議 だ 。

・幻 想 で は な い の か

※授業者による組織化のねらい;「山びこかどうか、それを明らかにする決め手はない。しか し、それを考えさせることによって、非現実の世界へ転換した場面の様子を詳しく出させた い。」

授業の実際

T;あの男の子が山びことちがうんかなあ、という人が大勢おってんです。○○さんが感想 でそう書いとって。そのことを考えながら‥‥‥

C;山びこだと思う。

C;くおうい山びこ〉というたら、くおうい山びこ〉 と聞こえたから、山びこ。

C;返ってくる声がだんだん大きくなってきて、そのなかから、かすりの着物を着た子が立っ ていたのだから、山びこ。

C;いくつもいくつも返ってきた、と書いてあるから、山びこ。

C;くおうい山びこ〉 というのが大きくなってきたのは、男の子がだんだん近づいてきたか ら。

C;普通の子やったら歩いてくるのに、風が吹いてかすりの着物を着た男の子がきたから、

山びこだと思う。

(6)

C;くおうい山びこ〉いうたから、山びこが出てきた。

C;くおうい山びこ〉 と呼んだら、この男の子が出てきたから、この子は山びこ。

C;昔の着物みたい。

C;こういう(♯)のがついている(模様)。

C;だから昔の人みたい。

C;古いかすりの着物を着ているから、昔からいるんだと思う。

授業の実際

C ;遊 ん で い る。

C ;お も しろ くな って 、 い ろん な こ と をや って る。

C ;に っ こ り して い る か ら、 け ん か じゃ な い 。 C ;け ん か じ ゃな い け ど、 言 い 合 い み た い 。 C ;山 び こ と思 う か ら、 そ の 男 の 子 が 真 似 を す る。

(4)「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ作、3年生教材)

発 問 「空 にす い こ まれ て い っ た ち い ち ゃん の 目に見 え た も の は 何 だ ろ う」

応 答 予 想

・空 色 の 花 畑

・見 回 して も見 回 して も花 畑

・よ っぽ ど花 が た く さん で 、そ こ ら じ ゅ う空 色 な ん だ

・明 る くて き れ い

・ま るで 夢 の 中 の 世 界

・光 が い っ ぱ い で 、 ち い ち ゃ ん が 今 まで い た 、 防 空 壕 と は全 然 違 う 明 る い 世 界

・ま るで 天 国 の よ うだ

授業の実際

C;空色の花畑。

C;空に似た所で花が咲いている。

−59−

(7)

上 野 ひろ美

C;空。

C;「すうっと」というのは、ふんわり。

C;いきなりすいこまれて、びっくりした。

C;見回しても見回しても、花畑が見えた。

C;あたり全体が花畑。

C;一面空、のことを強く言いたい。

C;ものすごい広がっている。

C;どこをみても家や、そういうものがない。

C;間がないくらい。

C;下が見えないくらい。

C;きれいな感じ。

C;少し楽しくなってきた。

C;心が明るくなってきた。

C;この花畑の所はすごくきれいで安心できるところ。

C;ちいちゃんの気持ちもだんだん明るくなってきた。

発 問 「家 族 に会 え て くき らき ら〉 笑 って い る 、そ ん な ち い ち ゃん を 見 て み ん な は ど う思 う」

応 答 予 想

・良 か った な あ

・で も、 良 くな い 気 もす る 。 ちい ち ゃ ん は 死 ん だ ん と ち が うか

・ く体 が す う っ とす き とお って 〉  く空 の 上 よ〉  く軽 くな った か ら うい た の ね 〉 と書 い て あ る か ら 、 ち い ち ゃ ん は 死 ん で しま った

・い く ら家 族 に 会 え て も、 天 国 で は何 に もな らな い

授業の実際

T;こんなちいちゃんを見てみんなはどう思う?

C;よかったね。

C;今までひとりだったことは忘れてしもて、すごく嬉しい。

C;くもった朝のときも、こわれかかった防空壕のなかでずっとがまんしていて、それで会 えたから本当に嬉しかった。

C;向かいのおばちゃんが「お母さんたち帰ってくるの」と聞いたら、深くうなずいた。だ から、信じていて良かったと思った。

C;バラバラになったけど、また会えたからよかった。

C;でも、死んでしまったから悲しい。

C;く夏のはじめのある朝……命が空に消えました〉 と書いてあるから、けんじ君の言った ことは本当だと思う。

C;くそのとき体がすうっと〉と書いてあるから、ちいちゃんは、軽くなって浮いたんじゃ

(8)

なくて、風邪をひいて死んでしまったんだと思う。

T;「それでも良かった?」

C;空の上で家族仲良く暮らしていけるからよかった。

C;命はなくなっても天国で仲良く遊べるし、生きとったらつらい思いして…命が消えても みんなで楽しく暮らせる。

C;本当の山とか家とかあって暮らせたら、もっとよかった。

C;今までのんで、嬉しいようなさみしいような、いやなようなええような感じがする。

C;死んでも家族いっしょの方がいい。

C;生きとっても、どうせ戦争は終わっていないから、ほとんど一緒。

C;ちいちゃんは嬉しくても、他の人から見たらとてもかわいそうなんだと思う。

C;く・‥小さな女の子の命が空に消えました〉と書いてあるから、ちいちゃんだけでなしに、

戦争で死んだ子がたくさんいたんだと思う。

C;どっちもかわいそう。

授業者;「ちいちゃんは家族に会えてよかったと、子どもたちはちいちゃんに同化しきって読ん だ。死んでしまったからよくないという観点を期待したが、教師がそれにこだわればこだわる

ほど、堂々めぐりに陥った。」

T ; 「なぜ 、 ち い ち ゃ ん と書 か ず に 、 女 の 子 と書 い て あ る の だ ろ う」

C ;ち い ち ゃん が 可 愛 そ うだ か ら、 女 の 子 と書 い た ん だ 。 C ;最 後 の 方 だ か ら、 ま と め た 書 き方 が して あ る 。

C ;ち い ち ゃ ん だ け で な く、 他 に も こん な 子 ど もが い た と い う こ とや 。

授業者;「そこで初めて、『こんな小さい女の子がいっぱいいっぱい、天国で家族に会えてもえ えことないな』という結論になった。こだわり続けた子たちも納得した。子どもは無意識のう ちにも、これほど視点に添ってよむものなのか、ということを改めて感じさせられたし、最後 の二行の大切さを感じさせられた作品であった。」

(5)「ひとつの花」(今西祐行作、4年生教材)

発 問 「お 母 さん は なぜ 、 ひ と つ だ け と 言 い な が ら渡 した の だ ろ う」

応 答 予 想

・言 い た くな か った け ど、 しか た が なか った

・い っぱ い や りた くて も、 何 もな か った

・ 「い っ ぱ い あ げ る 」 と言 え な か った (※ 言 わ ざる を 得 な か った )

一61−

(9)

ヒ 野 ひろ美

授業の実際

T;お母さんは、こんなゆみ子に、なぜくひとつだけ〉なんか言って渡したの?

C;何回ももらわれたら、今度食べる分がなくなるから。

C;ゆみ子がかわいそうだったから。

C;かわいそうやったら、いっこだけあげるんやなくて、……ぐらいあげたらいい。

C;ゆみ子は大きくなるところだから、あげた。

C;お母さんのくひとつだけ〉という言葉には、もっとたくさんあげたいけど、という心が 入っている。

C;ひとつのものに心がつまっている。

発問「くそんなとき、お父さんは、決まってゆみ子をめちゃくちゃに高い高いするのでした〉

どんな様子がみえてきますか」

(様子を尋ねても、気持ちを出してくるだろう。心情についての決め手はないが、喜ぶゆみ 子の顔を見ると、よりせつなくなってくるお父さんをイメージ化させたい)

応答予想

・高い高いしてもらって、ゆみ子はにこにこしている

・お父さんもゆみ子を見て嬉しそう

・くめちゃくちゃ〉と書いてあるからお父さんは怒っとう

・つらい気持ちをゆみ子にうつしたくない

・くそんな時は決まって〉と書いてあるから、ゆみ子のことを思うと胸がいっぱいになって 悲しい

・ゆみ子の喜ぶ顔を見たら、嬉しいけど、悲しい

授業の実際

C;もう会えないと思って高い高いをする。

C;普通やったらそんなんせんけど、たぶん最後やと思って。

C;そんな時と書いてあるから、ゆみ子の将来を考え、不安そうな顔をしてくたかいたかい〉

を何度もしている様子が浮かぶ。

C;すごく高く、くたかいたかい〉をした。

C;戦争に行かされる、そういうことを吹き飛ばす気持ちでくたかいたかい〉をした。

C;くお父さんは決まって〉の言葉で、お父さんは何かを考えていたことがわかります。

C;ゆみ子はまだ小さいんやけど、大きな思い出をつくってあげようと必死でくたかいたか い〉をした。

C;ゆみ子が嬉しそうな顔をするから、ちょっとは笑ったりした。でも心は笑っていなかっ

た。

(10)

発 問 「お 父 さ ん は 、 そ れ を 見 て に っ こ り 笑 う と ・ ・・ 一 つ の 花 を 見 つ め な が ら 〉 と あ り ま す が 、 こ こ の と こ ろ を 読 ん で み ん な は ど う 思 い ま す か ?」

応 答 予 想

・ く何 も 言 わ ず に 〉 と あ る が 、 お 父 さ ん は い っ ぱ い 言 い た い こ と が あ っ た に ち が い な い

・強 い 人 だ な あ

・戦 争 に 行 くの に くに っ こ り 〉 な ん て 笑 え な い

・食 べ 物 で な い 一 つ の 花 に ゆ み 子 が 喜 ん だ の が 嬉 し か っ た ん だ ろ う

・お 父 さ ん と ゆ み 子 が 一 つ の 花 を 見 て い る 。 こ の 花 で つ な が っ た よ う な 気 が す る

授業の実際

T;どんな花だと思ったんだろう?

C;これをあげればゆみ子に笑顔が得られる。

C;ゆみ子が泣きやむと思った。

T;なんで、このコスモスの花は一輪なの。

C;ゆみ子は一つだけちょうだいと言ったら、喜ぶと思った。

C;ゆみ子がいつもくひとつだけ〉と言ったから、お父さんは一つだけとってきた。

C;見た目はさびしいけど、心は明るい。

C;自分でおにぎりを持っていくより、ゆみ子の笑顔を見る方がよかったんだと思う。

C;お父さんは花を見つけて安心した。

C;お父さんはゆみ子にひとつだけの喜びをあげたんだと思う。

C;その花はお父さんの最後の喜びだった。

C;お父さんはゆみ子にプレゼソトをした。

C;このコスモスの花はお父さん、お母さんを助けたと思う。

C;何も言わずに行ったけど、心の中では、元気で育って、コスモスの花のようにと隣って 汽車に乗って行った。

(6)「大造じいさんとがん」(椋 鳩十作、5年生教材)(4)

発問「大造じいさんがくいかにも頭領らしい〉と感じたのは、残雪のどんな様子からなの?」

応答予想

・近づくと残りの力をふりしぼってぐっと首を持ち上げた

・正面からじいさんをにらみつけた

・仲間を助けようと必死で戦って、ひどい傷を負っているのに、まだ、敵(じいさん)と戦 う気がある

・おとりのガソのように、すぐけらいになっていない

・大造じいさんが手をのばしても、じたばたさわがなかった

−63−

(11)

上 野 ひろ美

・じいさんに抵抗しないで、じっとしていた

授業の実際

T;残りの力をふりしぼって、頭を持ち上げてにらみつけた残雪をなんで、大道じいさんに とってく頭領らしい〉と感じたんですか?

C;逃げたりせんと堂々とするから。

C;傷もひどいのに自分の力で首を持ち上げるのは残雪にとってとても大変なことですね。

日日逃げようとせずに正面から睨みつけて、自分は大造じいさんの敵だということを表し ているみたい。だから…‥

C;大造じいさんと今もまだ戦こうている。

C;まだ戦っていて、弱みを見せていない。

C;頭領としての威厳を傷つけまいと努力しているようでもありました。

T;大道じいさんと残雪の距離はどれくらいなんやろね。

C;じいさんが手をのばしたら届くくらいそばに残雪がいる。

C;(動作化)

C;だんだん近づいてくる。

C;じたばたしませんでした。

C;逃げようとしたり、つかまらないように羽とかでじゃましたりしなかった。

C;く威厳〉 というのは、立派で側に寄るのが恐ろしいように思ったということ。

C;残雪が睨みつけたときの大造じいさんは、金縛りにあったように、そのところから一歩 も前へ出られんようになった。

T;比べ読みをしてみよう。くさわざませんでした〉 くさわげませんでした〉

C;くさわげませんでした〉やったら、体力がなくなって逃げたくても逃げられない様子だ し、くさわざませんでした〉やったら、逃げる力はあるけど逃げようとしなかったという こと。

C;首を上げている力を使えば、騒いでじたばたして、大造じいさんを近づけないようにす ることもできないこともないんだけど、残雪はそんなことを考えず、首を上げてぐっと睨 んだままなんです。

C;ちょっと騒ぐ力は残っているんだけど、もう騒いだところでにげきれない。そんなとこ ろが、もう最期の時を覚悟して、威厳を傷つけまいとしているように大造じいさんの目に 写ったんです。

C;あきらめて、じいさんを睨みつけてた。その姿を、頭領だという威厳を見せつけている と、大道じいさんは感じた。

(7)「わらぐつの中の神様」(杉みきこ作・5年生教材)

発 問 「や っぱ り、わ た しが つ くった ん じゃ、だ め な の か な あ」 と、

う」

l

な ぜ が っか り した の で し ょ

(12)

応答予想

・なかなか売れない

・くすくす笑ったり、あきれた顔をして断られた

・「わらまんじゅう」とあけすけなことを言われたから

・自分も最初から自信がなかった

・不細工

・だれもわらぐつのよさを認めてくれなかったから

授業者;「くやっぱり〉にかかって、文章を手がかりに考えさせる。不細工なわらぐっと認めつ つも、売ろうとしたおみつさんの思いにせまらす。外見ではないわらぐつのよさに気づかせる。

大多数の子は不細工だからと読むだろう、しかし、おみつさん白身の価値菖藤(外見と中味)

のくやっぱり〉の意見が出るまで辛抱したい。」

授業の実際

T;「なぜ、くやっぱり〉と書いてあるのだろう」

C;先にお母さんたちに売れるかどうか心配されてがっかりした。お客さんからわらまんじ ゆうみたいと言われてまたがっかりした。売れないからがっかりしている。

C;最初から売れないと思っていた。

C;くやっぱり)は少しあきらめかけている。

C;自分でも格好がよくないと思っていたから、言われて、よけい落ち込んでいる。

C;がっかりしている。

C;みんなと少しちがって、わらぐつは不細工だけどよいところがありますね。それをお客 さんが分かってくれないから、「やっぱり、売れないのかなあ」と思っている(よさを認 めてくれないから)。

C;「あきらめようかな、続けようかな」と迷っている。

発 問 「大 工 さん の よ うす か ら 、 な ぜ 、 大 工 さん は 、 わ ら ぐつ を 買 った の だ と思 い ま す か ?」

応 答 予 想

・わ ら ぐつ を縦 に した り横 に した り して 、 わ ら ぐつ の よ さ に 気 づ い た

・お み つ さ ん に 同情 して

・お み つ さ ん に 人 目惚 れ して

・こん な わ ら ぐつ を 作 った お み つ さん の 人 柄 が 気 に い った

・わ ら ぐっ とお み つ さん の 両 方 で

授業者;「わらぐつのよさを『心がこもっている』というように抽象的にとらえる子には、何が いいのか具体的に考えさせる。eg.はきやすい、あったかい、長持ちする」

−65−

(13)

上 野 ひろ美

授業の実際

C;わらぐつのいいところがわかった。

C;他のお客さんは、左右の大きさが違うとか、底のでこぼことか、そういうところしか見 なかったけど、大工さんにはよいところがわかった。

C;大工さんにしては、このわらぐつはよかった。

T;大工さんにしては何がよかったん? 別のよさがあるわけやな。

C;わらぐつを買ってほしいという気持ちが分かった。

C;他のお客さんはこのわらぐつの悪いところばかりを見ているけど、大工さんは丈夫なこ とこのうえなしですという、いいところばかりを見た。

C;じっくりと良さを見つけて買った。

C;何か目的があるという心が読めた。

C;おみつさんが買ってほしいなという顔をしていた。

C;わらぐつの中におみつさんの心が見えた。

C;履きやすいようにとか、長持ちするようにという、そこの心が読めた。

C;あったかいように、履きやすいようにという心が分かったから、わらぐっと心がつなが った。

C;そのわらぐつには、大工さんだけに分かるよさがあった。

C;わらぐつの本当のよさといったら何なの、一番いいわらぐっとはどんなかな。

C;あったかいこと、丈夫なこと。

発 問 「な ぜ 、 お み つ さん は 、 大 工 さん を お がみ た い よ うな 気 持 ち に な った の だ ろ う」

応 答 予 想

・初 め て わ ら ぐつ を 買 って くれ た

・雪 げ た が 買 え る な

・わ ら ぐつ に こ め た 自分 の 思 い を 理 解 して くれ た

授業者;「『初めて売れた』ことに対する純粋な喜びとともに、外見でなく、わらぐつの本当の よさ(実用性)を見つけてくれた大工さんに対する尊敬の気持ち」

授業の実際

C;おみつさんの気持ちを分かってくれた。

C;わらぐつのよさとか、心を分かってくれた。

C;気持ちを分かってくれたから、偉い人のように思えた。

C;雪下駄が手の届くところにきた。

C;雪下駄を買うお金が少しでも増えた。

C;反対意見!今は、売れんのが売れたということが嬉しくて、雪下駄が買えるなんてこと

(14)

は思っていない。

C;私は雪下駄が買えるのについては、「うれしくて、うれしくて」で表現されていて、やっ ぱりここは、自分の気持ちを分かってくれたことにたいして拝みたいんだと思う。

C;今はわらぐつを売りたいことの方が強い。

C;訳は言えないが、○○さんに賛成。

(8)「石うすの歌」(壷井栄作・6年生教材)

授業の実際

C;おばあさんの悲しいようすがあらわれている。

C;石うすは千枝子が眠たかったら動かない。今度はおばあさんが全然力が出ないほどショ ック。

C;だから一向に動かない。

C;お盆のことなど考えておれない。

C;瑞枝がかわいそうやと思っている。

C;いろいろなことを考えてどうすることもできないから、ため息をついている。

(9)「あとかくしの雪」(木下順二作、6年生教材)

授業の実際

T;「その晩の雪をみんなはどう思いますか」

C;百姓の盗みは罪ではないから、天から見ていた雪の神様が足あとを消した。

C;タイミソグのいい雪。

C;くとばりとぼり雪の上を〉の時の雪は、冷たくてにくいような雪だったけど、卓の晩降 った雪は……いい雪だった。

C;神様が降らせたと考えた方が、百姓の気持ちが澄んだように思える。

C;天が降らせたという感じだったら、百姓が旅人のことを思っている気持ちがきれいに思 える。

T;くあゆむあとからのように〉

C;偶然ではないよう。

−67−

(15)

上 野 ひろ美

C;そういうふうな感じで消えていく。

C;誰にもわからんように、なめらかに。

C;川副こすうっと。

C;百姓や旅人にとっては偶然に。

C;足あとをそっとかぶせてくれるような。

C;優しい雪。

C;百姓の優しさを包みこむような雪。

C;温かい雪。

C;心のこもった雪。

C;美しい雪。

C;百姓の気持ちがとてもよく分かっているような雪。

㈹ 「どろんこ祭り」(今江祥智作・6年生教材)

授業の実際

C;三郎には、そんなせっちゃんがきれいに見えた。

C;何か、特別に見えた。

C;そんなせっちゃんは輝いていた。

C;私はきれかったに似ている。せっちゃん、可愛かった。

C;あこがれをもった。だからまぶしい。

C;自分の身近にいる入というか、大切な人のように感じた。

(16)

くまぶしい〉 というのはじっと見ておれないということであり、側にいるのもそわそわと 落ちつかない。けれども、一緒にいたい。そんな二つの異なった気持ちでいる。

授業者;「くそれでいて〉にこだわるなかで、三郎のせっちゃんに対する気持ちの二重性を読み 取らせる」

授業の実際

C;順説。

C;順説。可愛いから握った手に力をこめた。

C;順説やなあ。

C;私は、「まぶしかった」というたら、何か見とられんという感じ。それで近寄れんとい うか……握った手に力をこめたというたら、せっちゃんが好きに思えるんです。だからつ ながると思うんです。

C;順説でも、逆説でもないつなぎことば。

C;逆説の方がいいみたい。

C;見とれんから手で確かめようという複雑な気持ち。

3.分析視点と課題

(1)応答予想の構造化

上に見てきたように、教師の教材解釈の具体化としての発問にたいする子どもたちの応答は、

教師が予め予想したものしないものを含めてさまざまである。授業では、イメージの累加で読み とることを主眼とした問い、明確な対立=分化によって読みを深める問い、大きくこの二つの発 間が発せられている。とりわけ後者、対立や視点の転換を介して読みを深めることをねらう問い の場合には、応答予想それ自体を構造化しておく必要がある。そこまで指導案段階で構想するこ とで、展開過程のタクトに直接寄与する授業の仕掛けとなる。

(2)子どものイメージ的表現の位置づけ

「授業の実際」にみられるように、発問に応じて発せられた子どもの発言には、イメージ的解 釈ともいうべき独自の表現が伺える。それらの表現は教師が期待するような「論理的」なもので はない。

ところで、子どもが論理的でないことは、よく分かっていないことなのだろうか?

「定義として分かる」「正確に分かる」こととは別に、むしろ心への食い込みの深さにおいて

「分かった気になる」ことがある。子どもが用いる言葉の意味を考えるためには、定義的意味だ けではなく、「らしさ」としてあるようなイメージを考慮しなければならい。定義的意味はあら かじめ決定されているが、「らしさ」としての意味は子どもが何かについて語るという行為のな かではじめてあらわれてくるからである。すなわち言葉を単に単語の定義的意味の問題として考 えるのではなく、子どもが実際に使用する文脈のなかでとらえることが必要になる。

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上 野 ひろ芙

子どもが使用する文脈のなかでその子の言葉の意味をとらえること、言い換えれば子どものイ メージ的解釈に共感し、授業に位置づけていくことが、授業組織化のための重要な手だてとなる。

以上の二つの視点からの分析は次稿(その3)でおこなう。

(1)拙論「授業展開の指導技術に関する実証的研究−『大造じいさんとがん』の授業を中心に−」

奈良教育大学教育工学セソタ一研究報告1990.

(2)『呼びかける指導案の構想』(新・教授学のすすめ4)明治図書1989.

(3)兵庫県宍粟郡安富商小学校実践記録『明倫』Nol〜14,1985〜1991.

(4)「大造じいさんとがん」の授業実践については、一部すでに(1)で取り上げている。

参照

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