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クロム酸銀による指紋の検出
岐阜大学教育学部化学教室 五 島 文 詔 ・ 石 野 二 三 枝 F" α腕Gos〃柳αF""ieIS〃"0
指紋の検出法には種々の方法があるが,ニ ンヒドリン法は,退色性が大きいので,長時間 の保存ができない欠点がある。また,硝酸 銀法も,かなり鋭敏ではあるが,指紋検出の対 象となるものによって,その適用範囲は,限ら れてくる。そのほか,指紋登録などに実施さ れているプリント法は,手掌を汚し,あまり感
じのよいものではない。
Yagodal)は,動植物体組織片中の塩素イオ ンを泳動エレクトログラフィーによって,クロ ム酸銀紙上に捕捉して,そのクロライドパター ンを永久像として捉らえる方法を発表した。
そこで,著者らは手掌から常に分泌されて いる汗に含まれる塩素イオンをクロム酸銀紙 上およびフイルム上に固定することを,試み た。
すなわち,塩素イオンをクロム酸銀と反応 させて塩化銀とし,未反応のクロム酸銀を硝
第1章実験装置,
1 ) 装 置
直流電源として,柳本製の水平密閉式濾紙電 気泳動装置(EC‑10型),および,白金電極板 (45mm×60mm)を,使用した。また,加圧装 置2)として,Fig.1に示すように,一部改造の 市販パイプバイスに発ぽう性ゴム板をとりつ けたものを,使用した。
2)試薬およびクロム酸銀保持体の調製 a)溌白液:
蒸溜水1000mlに,重クロム酸カリウム69を
(
酸で溶解して取り去れば,汗のついた部分の みが,塩化銀として固定される。これを一 般に用いられる写真用の現像液によって処理 すれば,黒色の指紋のパターンが,得られるの
である。
このようにして,試料や手掌を汚すことな くして,鮮明で安定な指紋をプリントするこ とが,できた。さらに,フイルムへのプリン
トは,現像の処理を暗室内で行なう必要がな く,操作も簡単である。検出法は,指紋の ついている試料にクロム酸銀紙を重ね,加圧 するか,あるいは,電流を通じて塩素イオン をクロム酸銀紙上に捕捉し,指紋のパターン を得ることができる。
この方法は,実用的な価値も充分あると思 われるので,得られた結果および方法につい て,報告する。
試 薬 お よ び 実 施 法
溶解し,さらに,濃硫酸6mlを加える。
b)印画紙用現像液(D‑72):
常法によって,調製する。
c)その他の試薬:
1%酢酸,2%クロム酸カリウム,
1%硝酸銀,5%硝酸,
硫酸カルtノウムの飽和溶液 d)クロム酸銀紙の調製:
クロム酸銀の保持体としては,長時間の水洗 にたえうるものならば,市販の洋白紙でも使え 93)
、
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五 島 ・ 石 野&
F i g . 1 加 圧 装 置
A:アルミニウム板 B : 白 金 C:発ぽう性ゴム板
るが,本実験では,写真用の印画紙(三菱・月光 V3)を使用した。
定着液によって印画紙のハロケン化銀を除 いた後,流水で数時間ほど水洗し,自然乾燥 する。この印画紙を2%クロム酸カリウムに 10分間浸す。充分含浸した後とり出して,
完全に乾燥する。この乾燥が不充分である と,クロム酸銀の膜にむらを生ずる。
つぎに,この黄色のクロム酸カリウム含浸紙 を1%硝酸銀に約10秒間浸した後(橿色から赤 褐色に変わる),とり出して,自然乾燥する。
このクロム酸銀紙は,保存しておき,使用時 には,蒸溜水で湿らせ,余分の水分を濾紙で
拭う。
e)クロム酸銀フイルムの調製:
使用するフイルムとしては,未感光のフイル
、ムを定着液で処理するか,あるいは,不用ネ ガフイルムを漂白してもよいが,著者らの実 験では,つぎのようにして使用した。フイ ルムを2‑a)で調製した漂白液で処理し,陰画
が完全に消失して透明になったものを水洗し た上,自然乾燥する。
以上のようにして処理したフイルムを,3規 定硝酸に5分間浸してゼラチン膜をゆるめ,
1〜2分間水洗した後,2%クロム酸カリウムに 約2分間浸す。含浸したならば,クリップには さんで約2時間乾燥する。つぎに,電熱器 の上で加温し,ゼラチン膜をとかして均一に してから, %硝酸銀に 0秒間浸す。とり 出して,自然乾燥する。使用時には,蒸溜水
で湿しておく。
3)実施法
a)クロム酸銀紙にプリントする場合:
2‑d)で調製したクロム酸銀紙に,手指の掌面 を直接に押しつける。汗の量が多いときに は,赤褐色のクロム酸銀上に,白色の塩化銀に よる像が見られる。もし,塩化銀が認めら れなくても,現像処理によって,その指紋の検 出は,充分可能である。つぎに,5%硝酸液 へ浸し,クロム酸銀を完全に溶解させる。
赤褐色を呈しているクロム酸銀紙が白色にな れば,とり出して水洗する。2‑b)で調製した 印画紙用現像液で処理すると,還元されて黒 色の銀による指紋が現われる。 %酢酸で数 分間定着後,充分水洗し乾燥する。
b)クロム酸銀フイルムにプリントする場合:
2−e)で調製したクロム酸銀フイルムに,手指 を直接に押しつける。印画紙の場合と同様 の処理によって,投影用のスライドを,つくる ことができる。
c)加圧法による指紋の検出:
指紋のついている紙面へ,2‑d)の方法で調製 したクロム酸銀紙(4×5cm)を重ね,その上か ら約10〜20kgの力で加圧する。あるいは,
ずれないように注意しながら強くこすりこん だ後,クロム酸銀紙を試料紙面よりはがし,
3‑a)と同様の処理法によって,印画を得ること が で き る 。
金属,ガラス,木,布地(薄手のテトロン.木 綿)からも,紙の場合と同じ操作によって指紋 を反転させることが可能である。
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クロム酸銀による指紋の検出
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d)泳動エレクトログラフイー:
支持電解質としては,硫酸カルtノウム飽和溶 液を濾紙に含浸させる。
Fig2に示すように,試料とクロム酸銀紙を 重ね,この上下を支持電解質含浸濾紙ではさ んだ後,白金電極板をおく。これを,1)での べた装置により加圧し,20mAで30秒間通電す
る。
3‑a)と同様の処理で,印画を得る。
Fig.2クロム酸銀紙の配置
Gし
b 一 一 一 a
F 一 コ
試 料 クロム酸銀紙 支持電解質含浸濾紙
■●●●●● a8DC
第 2 章 結 果 お よ び 考 察
るために,好ましくないことが,明らかになっ た。
c)布地からの加圧式反転法
種々の布地について加圧式反転法を試みた 結果,著者らの実験では,薄地のテトロン,木 綿についている指紋の場合に,満足すべき結果 が得られた。
布地の場合には,繊維自体の吸湿性,繊維の 太さ,織り方等に関係するので,全てに適用す
る こ と は で き な い 。 d)加圧方法について
3‑c)でのべた方法によって,加圧してもよい が,試料がバイスではさめるものならば,1〜
2分間バイスではさんで加圧する方が,鮮明な 印 画 が 得 ら れ る 。
以上の実験によって得られた結果を,A〜C に示す。
a ) 検 出 感 度 に つ い て 、
Yagodal)自身が指摘しているように,塩素 イオンの検出感度は,塩化銀が肉眼で観察で きる場合においては,1:20,000の濃度であっ て,1:10,000,000の濃度まで可能である。
著者らの実験においても,手を洗った直ぐ後 に,クロム酸銀紙に指紋をプリントすること は,可能であった。
b)フイルムゼラチン膜の硝酸処理について フ イ ル ム ゼ ラ チ ン 膜 を 硝 酸 処 理 に よ っ て ゆ るめるときの条件について検討した結果,硝酸 の濃度が高い場合には,ゼラチン膜がはがれ や す く , フ イ ル ム の ベ ー ス 自 体 が お か さ れ た り も す る 。 逆 に 低 濃 度 で は , 長 時 間 を 要 す
括
フイルムへの場合は,複写の必要なく,その ま ま で 投 影 機 に よ る 顕 微 鏡 的 考 察 が 可 能 で あ る。検出法においては,種々の素材の試料に ついて行なったが,布地以外どの試料にも満 足すべき結果が,得られた。本法によれば,
試料を汚したり,検出されたパターンが退色 す る 虞 れ も な い 。 こ れ ら の こ と か ら み て , 著 者 法 は 適 用 範 囲 の 広 い も の で あ る と , い え
る。 総
本 報 に お い て は , 指 紋 を 黒 色 の 銀 に よ る パ タ ー ン と し て プ リ ン ト す る 方 法 と 検 出 す る 術 式とが,記載されている。
す な わ ち , 汗 に 含 ま れ る 塩 素 イ オ ン を ク ロ ム 酸 銀 に よ っ て 塩 化 銀 と し て 固 定 し , 写 真 現 像 の 要 領 で 銀 に 還 元 し , 印 画 紙 お よ び フ イ ル
ム上に,銀による指紋のパターンを得た。
印画紙へのプリントは,従来の指紋登録の方 法と比較して,手掌を汚すことなく,永久像
と し て 保 存 す る こ と が , で き る 。
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五 島 ・ 石 野文
1)H.Yagoda:Industr・Engip・Chem.,Anal.
Ed.,12,298(1940).2)武者宗一郎・池本 雅子:分析化学,7,649(1963).3)保積
献
英次・村山勇:写真処理技術1966,共立出版一東 京.
ク ロ ム 酸 銀 に よ る 指 紋 の 検 州
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穴二、き(
A 直 接 プ リ ン ト 法 B 加 圧 式 反 転 法
試料:(1)紙,(2)金属,(3)ガラス,
(4)木,(5)布地(木綿)
c 泳 動 エ レ ク ト ロ グ ラ フ 法 試料:紙