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低利用性水産資源の有効活用技術の開発に関する研 究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

低利用性水産資源の有効活用技術の開発に関する研 究

原田, 恭行

https://doi.org/10.15017/1932019

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(農学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

氏 名 :原田恭行

論文題名 :低利用性水産資源の有効活用技術の開発に関する研究 区 分 :乙

論 文 内 容 の 要 旨

世界的規模で天然資源の消費量は増大し、資源の枯渇と消費・加工に伴う環境負荷の増大が懸念 されている。我が国の水産資源においても 1984 年以降漁獲量は減少しており、その対策が強く望 まれている。水産資源確保のための方策として、効率的な資源利用と廃棄物のゼロエミッション化 があげられる。そこで本研究では、定置網漁業で混獲される利用効率の低い水産資源の有効利用を 目的として、廃棄物を低減化した新たな水産物加工法の開発を試みた。

規格外アジをそのまま原料とし、内在する自己消化酵素による水産発酵調味料(魚味噌)の醸造 を試みた。醸造工程において原料魚をクエン酸処理し、骨、鱗等の軟化を図った。その結果、いず れの部位も軟化・可食化され、魚味噌中の水溶性カルシウム量が対照区の約3倍となることが判明 した。また、クエン酸添加による遊離アミノ酸量の低下は認められず、呈味性を損なうものではな いことが明らかになった。

次に、魚肉品質低下の要因となるヒスタミン産生に及ぼすクエン酸添加効果を明らかにした。ま ず、魚味噌に存在するヒスタミン産生菌を単離・同定し、Staphylococcus epidermidis TYH1(TYH1 株)と命名した。クエン酸を含む各種の有機酸を用いてTYH1株によるヒスタミン産生に対する抑 制作用を検討したところ、クエン酸添加が最も効果的であった。また、その最小有効濃度は魚肉に

対して0.6 wt%であり、規格外シイラを用いた魚味噌(熟成120日)においてもヒスタミン量の明

らかな生成抑制作用が確認された(ヒスタミン量:クエン酸添加区30mg/L以下、対照区2440mg/L)。

さらに、魚味噌での効果的なヒスタミン抑制作用の発現には、クエン酸を仕込み時に添加すること が重要であり、添加時期が遅れるとその抑制効果が低減し、ヒスタミン量は仕込み後 20 日後に添

加すると 400mg/L 以上蓄積することが明らかになった。一方、クエン酸処理工程を加えて醸造さ

れた魚味噌の呈味性について、味覚センサーを用いて評価したところ、酸味応答については、仕込 み後 30 日目に添加すると、仕込み時の添加と比べ増大したが、仕込み後20 日以内に添加すると、

添加時期が早いほど酸味応答が低下した。また、旨味応答については、仕込み時の添加と比べ 30 日目に添加すると低下したが、仕込み後 20 日以内に添加すると、添加時期が早いほど増大した。

これらの結果から仕込み時の0.6 wt%クエン酸添加は魚味噌の呈味性を向上させることが判明した。

次いで、規格外アジを原料とする新たな塩干品の開発について検討を行った。魚肉内在性酵素(ヌ クレオチターゼ等)の反応を制御した。規格外アジのなかでも急速冷凍・冷蔵による鮮度保持が達 成されやすい小さな魚体サイズを開発対象とした。アジ塩干品に含まれる遊離アミノ酸と核酸関連 物質を指標に乾燥温度ならびに乾燥時間の影響を検討したところ、熱風(50℃)で乾燥した場合、

苦味を呈する遊離アミノ酸(バリン,ロイシン等の合計量)と核酸関連物質(ヒポキサン量)が乾 燥時間の経過とともに顕著に増加し、乾燥 20 時間後には冷風(20℃)で乾燥した場合のそれぞれ 約4倍の220mg/100gと約 5倍の150mg/gに達した。また、乾燥時間の短い(2h)一夜干しの場 合、遊離アミノ酸総量は乾燥温度の影響はほとんどない(熱風乾燥:約2030mg/100g、冷風乾燥:

2100mg/100g)ことが明らかとなった。このため、熱風および冷風で 2h 乾燥した干物をさらに焙

焼した後の成分を比較した結果、熱風で乾燥した干物は、核酸関連物質(ヒポキサンチン量)が約

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290mg/100g となり、冷風で乾燥した干物の2倍以上に達した。また、この苦味成分含量差が官能 評価において苦味に反映する可能性が示唆された。これらの知見は、新鮮な小サイズのアジ等を低 温・短時間で乾燥させることによって、規格サイズ品よりも呈味性に優れた塩干品を開発すること ができることを示唆している。

以上、本研究の成果として、利用効率の低い水産資源(規格外サイズのアジ等)の高品質魚味噌 製造法を確立し、有機酸、特にクエン酸添加によって魚体そのままの利用と品質向上を達成できる ことを示した。また、規格外水産物の加工品として塩干品製造についても検討を加え、低温、短時 間乾燥によって規格サイズ品よりも高品質となることを明らかにした。これら知見は水産資源の有 効活用とゼロエミッション化のための新たな食品加工法の基盤となるものであり、さらに有機酸に よるヒスタミン生成抑制作用については魚醤など他の水産発酵調味料への応用が期待される成果と いえる。

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