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土壌微生物アセスメントの背景(1) 検出 ・ 定量の諸問題

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(1)

土壌微生物アセスメントの背景(1) 検出 ・ 定量の

諸問題

著者

東北大学遺伝生態研究センター

雑誌名

IGEシリーズ

7

ページ

1-77

発行年

1990-03

URL

http://hdl.handle.net/10097/49093

(2)

ロ6匿シリーズ謬***

土壌微生物アセスメントの背景(1)

-検出・定量の諸問題-/

lG∈

東北大学遺伝生態研究センター

(3)

I GEシリーズの発刊にあたって

地球上の環境は,今,かってない大きな問題に当

面しております。世界各地で進行している生態系の

急速な変化のなかには,人間生活に深刻な影響をも

たらす可能性のあるもU)が,多数含まれています。一一

万,人間の活動が宇宙空間へと拡がるにつれ,地球

外生態系の構築が,新しい課題として登場しつつあ

ります。生態系の崩壊を防ぎ,より豊かな環境を創

造するための科学的努力が,今日ほど強く求められ

ている時はありません。

本研究センターは, DNA分子技術を中心に遺伝

子的段階にまで到達した生物研究の諸成果を生か

し,生態系における生物の生活を一層深く解明し,節

たな人間環境の創造に貢献することを目指しており

ます。いうまでもなく,この課題はきわめて学際的

であり,多分野の研究者との相互交流と協力によっ

て,はじめて達成/されるものであります。本研究セ

ンターでは,ワークショップによる研究者間の討論

と意見交換を重視するとともに,その成果をより多

くの万々にご利用いただく出版活動にとり組んでお

り ます。こ こに発刊しますIGE(Institute of Genetic Ecologyの略)シリーズも,こうした努力

(4)

の一環であります。

本シリーズの内容は,多岐にわたる可能性をもっ

ておりますが, 3つのタイプに大きく類別されるだ ろうと考えております。すなわち, (i)特定のテー マ,又はトピックについての解明に関するもの(* 印を付します), (ii)特定のテーマ又はトピックに

関する最新の文献,実験法の紹介に重点をおくもの

(**印),そして(iii)新しい可能性を求める学際的 交流,対話を試みるもの(***印)であります。

このIGEシリーズが,多方面の方々のお役に少し

でも立つことを願って,発刊の辞とします。

1989年3月

東北大学遺伝生態研究センター

(5)

㊥目   次㊥ はじめに 服部  勉---・

1.自然界における破傷風菌の分布

-とくに定量的分析の試み- 海老沢 功・-・----2.土壌中のボツリヌス菌 阪口 玄二

3.土壌中の軟腐病菌 菊本 敏雄--4.土壌中の軟腐病菌のファージ特異性

富樫 二郎---・・-・-・ 1 3  5  7 1  2 41

5.土壌中のセルロース分解菌の分布

山本 広基--・=-・--- 55

6.平板法による土壌中の細菌の検出・定量

服部  勉----日日--- 67 7.微生物アセスメントをめざして -まとめに代えて- 服部  勉- 75

(6)

はじめに

服 部   勉 本書は,遺伝生態研究センターが1989年11月7-9日開催したワーク・ ショップ「遺伝子組換え微生物の野外実験0)ための微生物アセスメント」の 成果に基礎をおいたものであります。 自然環境,とくに土壌環境に住む微生物は,人間生活にどの程度安全な のかという問題は,微生物学の誕生の時から,重要な課題でした。しかし 過去10∩年余りの間,微生物学はこの間題の解明において,余り大きな進 歩を見せませんでした。卜壌中に住む各種細菌の検出・定量は,今だに多 くの国難に悩まされております。紐換え微生物の野外故山となE)ますと,問 題はさらにその遺伝√のゆくえとそU)影響にまで広がりますo 今回U)ワーク・ショップでは,こうした事情を念頭に置き,),), 「野外放 出」以前U)土壌環境でcJj微生物U-)検出・定量の諸問題に/)いて,それぞれ の尊門の立場からお話を願いましたo ヒトや動物の恐怖銅勺となる破傷風 菌やボツリヌス菌と野菜栽培の強敵,野菜軟腐病菌などの重要微牛物をと りあげるとともに,各種微生物の住み場所・分布の問題や増殖U)問題にも 切りこんでいただきました。 卜.壌環境中の微生物の検出・定iiiとそ0)生態的評価u)flij題は,これ圭で ごく限られた分野U)方々の関心事でありました。本書の発刊を機会に,上 r)多く0)専門分野U)方々が,こU)問題に関心をお寄せfJさることを切望い たします。

(7)
(8)

1.自然界における破傷風菌の分布

とくに定量的分析の試み

海老沢   功

1. はじめに 破傷風歯は土壌内に広く分布し,また人を含む動物の糞便からも分離さ れることが知られています。しかしこれらの資料中の破傷風菌を定量的に 調べた文献は,土に関してはほとんどなく,大抵1-2g,まれに"小壷"の 土を検体として分離を試み,何%くらい陽性の成績がえられるかという報 告しかありません。動物の糞便内破傷風菌についても,定性的に各種動物 について,陽性率を求めた報告があるだけです。

これは破傷風菌を人や動物に対する病原体として考える医学的立場から

研究されてきたためですo 土壌中の常在菌として,そのエコロジーのt7_場 からの考察はされていません。また動物の糞便中の破傷風菌に関してはそ れが動物の腸管内で増殖するのか否か,あるいは単なる通過薗なのかとい うことは真剣に考慮されていなかったと思います。

2.定量化の方法

上は乾燥,細挫したあと金属性紅茶こしと2枚のガーゼでこしたものを 10mgまでは天秤で秤量,それ以下は0.5%.に寒天を加えたブイヨンで適 宜希釈して所要量の土を培地に接種しました。破傷風菌の分離には資料を: 1)肝肝ブイヨンあるいはGAMブイヨンで35oC, 2日間増歯, 2)培養液 の上靖約().5mlを毛細管でGAM斜面培地の斜面とガラス壁にふれない 京浜急行川崎診療所

(9)

4 ように注意しながら,その凝固水に接種, 35oCで2日間嫌気的培養を行い ました。破傷風菌が寒天斜面上に這ヒがってきたら,薄膜状コロニーの先 端部分から破傷風菌を分離しました。グラム染色で混合感染が疑われたら 分離菌を3%に寒天を加えたGAM平板培地卜に塗探して単離コロニー を作らせてから肝々ブイヨンに接種して両分離しました。 3)同定はマウ スに対する毒性と抗毒素による中和,ゲラナン液化,3%寒天加血液平板を 用いて潜血性の確認と破傷風抗毒素による潜即Rll二などによって行いまし た。詳細は文献1, 2, 3参照。

3.土壌内破傷風菌の分布と密度

3-1)半定量的研究 検査材料は畑と民家の庭,田および川と池の岸辺,学校と公園内(花壇 を含める),牧場,道路なギ計164カ所の地表の上を集めました。前処理し て200, loo, 50, 25, 10, 5, 2.5, 1mgず-)計8本の肝々ブイヨンで増薗し て破傷風菌を分離しました。各サンプルにつき,破傷風菌が分離された最 も少ない土U)崖をそJ-)サンプルの代表値としました。 全体としては破傷風菌分離率は50%であ-'たが,採取場所に関しては旧 や川・池u)li!:辺(76O/.),畑や踏み固められていない民家の庭(64%)から 多く分離され,牧場(30O/o)や道路上の上には破傷風蘭は多くない所見を 得ました。言I算上1mgに相当する卜から12検体(7.30/o)が陽性0)成績を 炎1大層+.からJ)Y・-定:i川勺破傷仙即す離′犬験成績

上採舶 場所 僥ィ ルYxスク,艇,jIwdfdト「俐Rト、ヲツ ヨr 劔剪r Iz2 ojH ノfメ 総検 体数 兒ゥz2 zbs2 ツ 200 {テ b 5() メ 1日 迭 -2..I) 肌民家庭 釘 9 澱 4 售B 8 免里 66 田」 け1,川池fii 1 3 1 3 2 17 都b '封立,公園 3 8 2 1 1 r 51 牧場 1 澱 ごり h*H. 道路 1 " 日 164 ?「 了千三一 ll 唐 21 ツ 12 買" 窒偵

(10)

臼然糾こおける破傷風菌の分布  5 表2 畑,水田,民家庭の地表面と地Fからの破傷風薗分離成績 上採取 場所 僥ィ ルYylゥZゥz8,儺ケwh, ネワX揵-中ヨr 剳ェ離 陽性 リノ ノ B 分離 率% ≧25 店6リ イモ 1/-2.5 地表 2 ll 2 47 都B 64 地卜 2 迭 *lO R 28 合計 b 13 57 52 'この他にマウスに破傷風を起こすが破傷風菌分離に不成功のサン プル2つあり。 X2-12.95, pく(),()1 示しました。このように微量の土から破傷風菌が分離されるのは破傷風菌 が高率に分離される上記4つの場所から採取した標本に多く見られました (表1)。 畑, E臼,民家の庭の地表面で以前破傷風菌が1mgの土から分離された場 所を含めて6-12月後に,地表と地下5, 10, 15, 20, 30cmから採取した 土について同じように破傷風菌の分離を試みました。同じ場所を再検査し ても,地表面からの破傷風薗分離成績は変化していました1)。すなわち前回 より多量の上を破傷風菌分離に必要としたことがありましたo ま-た地下5 cm以卜では破傷風蘭の分離率とその密度が低い所見が得られました(衣 2)。 3-2)定量的分離実験 以1-.a)実験では土U)各々の足につき1本U)肝々ブイヨンに接種・増薗し て薗分離を試みました。以下に述べる実験では 一定遠のi・.に-)き5本の GAMブイヨンに接種して定量的分析を行いました。 a)舗装道路卜の卜 1km間隔で採取した舗装道路卜の上3()検体につき, 2OO, 20, 2, 0.2mg a)土をGAMブイヨンに接種, 2日間の増南後GAM斜面培地を用いて破 傷風菌分離を行いました。 30検体中13検体が陽性で,その分離状況を表3 に示します。一般に陽性o)試験管が少なく,菌数を計算しにくい成績がで ました。前回の方法(表1)では土10検体中1検体のみ陽性でしたが,こ の実験では試験管数を各接種量につき5本,合計15-20本に増したので分

(11)

表3 道路上上サンプルからの定基的破傷風歯分離 標本番,[3- ィ顗+X+リ 8,ノ-中ヨr 200 r 2 K1,K2 諜 R 0/5 窒汀R K3-K8 R 1/5 R K9 R 3/5 R K1(ー R 1/5 R 1/5 Kll R 1/5 R 0/5 K12 釘 R 1/5 R 0/5 K13 釘 R 1/5 R 1/5 表は各標本の各接種星を5本の培地に接種した成績(分 担)0分子は,破傷風歯分離陽性の試験管の数をホす。標本 番号14-30はすべての試験管で破傷風肉陰性0)ため表か ら除いたo 離率は43%に上がりました。しかし200mg接種で5本中1本のみが陽性 というように極めて菌数が少ないもの,その他土壌内破傷風菌の分布が不 平等である所見が見られました(表3)。 b)人1二的に大壷の破傷風菌を加えたtからの破傷風菌分離 内径約12mmのビニール管に予備試験で破傷風菌陰性の上を約25cm の高さにつめ,水道水で卜分に湿らせました。その上層に107・49CFU(C()1-nny formingunit)の破傷風菌胞子を食塩水1.Omlに薄めて流し,さらに 反復して水柱にして2-5cmあるいは10cmの水を加えました。水柱の高 さにして計50-60cmの水を静に流した後のLEr;の土を乾燥して定量的 に調べました。 その結果はもっときれいなデータがでて,単位重量当りの破傷風菌の密 度を計算できる成績がでました(表4)。すなわち破傷風菌の密度が高けれ ばきれいなデータがでることが示されました。これと舗装道路上の土に関 する成績を比較すると,後者の上二の中の破傷風菌は少なく,その分布は不 均等なことがよく分かります。破傷風菌の密度が高い田畑の上についても 同じような実験をしてみたいと考えています。

(12)

自然界における破傷風菌U)分布  7 表4 人⊥的に破傷風歯を加えた土からu)定境的破傷風歯分離成績 標本番号 ィ顗+X+リ 6 宙,r 劔 eR ,r *&b 6 鳴 10-2 モ2 loll モR 10-6 rモr 211 迭 R「 5/5 迭 R 4/5 R 0/5 R 217 迭 R 5/5 R 0/5 途纈x テR 218 迭 R 5/5 R 0/5 途纉 R '分子は陽性,分秒i接種試験管数

4.ヒトおよび動物の糞便内破傷風菌

破傷風菌はと卜および動物の腸管内常在菌であり,その分離率も極めて 高いと主張する人がいます。これは本菌の腸管内定者の問題を含めて重要 なことですが,糞便内破傷風菌を定量的に調べた文献は少ないものです。わ ずかにTenbroeckたち4)がと卜の糞便中に1g当り104 6コの破傷風菌が いると報告しているだけです。しかしこの論文ではと卜の糞便中35%が破 傷風菌が陽性であり,破傷風菌はと卜の腸管の常在菌であるとしています。 この論文はしばしば引用されますが,このような高い分離率を確認した報 告は他にはありません3)0 4-1)ヒトおよび動物の糞便からの破傷風菌分離率と糞便内破傷風菌の 密度3) この実験ではGAM液体培地10mlにと卜および動物の糞便を約0.25g ずつ4本接種, 2本は60oC lo介, 2本は非加熱のまま35oC, 2日増薗培養

して破傷風菌を分離しました。 4本のうち1本でも陽性の坪績がえられた ときはその検体を陽性として計算しました。 表5に示すようにと卜と牧場にいた横が0,捕獲された野犬と競争馬が 2と1%,牛舎内の午が4%,北大農場の牛が8.3%で日本国内で調べた動 物ではもっとも高い分離率が得られました。放牧中の羊の糞は西ドイツ Tiibingenで採取したもので, 25%の高率で破傷風菌が分離されました(衣 5)。日本の羊については検査していません。この高い分離率は羊と馬,犬, 牛という動物種の違いによるものか,あるいは羊と牛や馬では牧草の食べ

(13)

表5 ヒトおよび動物o)糞便からU)破傷風南分離成績 動物種 冽ゥ ケ B ノ ノ B3 950/o信頼限界ホ ヒ卜 # 1.5-0 午( 1) 釘 ニ ィ 1日-I 午(2) 3bモ 17-1 i-+ 窒汀C 7--0 鶴 5-() 7--. C R 44-14 人 S ll-() 牛(1)は牛舎内の牛,午(2)は牧場内の牛。馬は競争馬,千 は牧場内の羊(西ドイツ),犬は捕獲された野犬。 *分離率の95%信頼限界。 方が異なるためか分かりません。 ただし破傷風菌陽性の動物の糞便の定量的検査では約0.25gの糞便を4 本の培地に接種すると1-2本から分離できましたが, 0.1gからは5本接 種してもせいぜい1本しか破傷風菌が分離されず,定量的検査はできませ んでした。糞便からの破傷風菌分離には混在する他の細菌による干渉の問 題もありますが,その薗量は多くないと考えています。[実験的にはC.per-fn'ngensとG群Streptococcusが大壷混在すると破傷風菌がGAM斜面 培地を這卜がるのを妨害することが証明されています。] 4-2)マウス腸管内における破傷風薗増殖2) はたして動物の腸管内で破傷風菌が増殖できるのか否かについてマウス

の胃内に一定量の破傷風蘭を注入し,糞便内破傷風菌を毎日定性と定量的

に2-3週間追跡しました。この実験で得られた結論は: i)接種後24時間以内では表6に示すように大量の破傷風菌が定違約 に分離され,その量を便宜L糞便1gあたりのMPNの形で算出すること ができました。その童は接種童と相関関係があります。横軸に接種菌量 CFUの対数,縦軸にマウス糞便1g当りの菌崖MPNの対数をとって図示 するとY-0.979×-0.561,r-0.937,P<0.01の値が得られました(表6と図 1)。なおマウスの1日の糞便量は1-2gです。

(14)

臼然界に1,'ける破傷風菌o)//Hl1 9 表6 糞便からU)定≡丘的破傷風蘭分離実験 サンプル 番号 佇(霻 ル ; 糞便の希釈倍数と破傷風蘭分離成績 劔儁PN/ど (logunit) 一日-■ s2 1(ト4 rモR 10-6 モr 429 諜b經R 5/5 釘 R 5/5 釘 R 1/5 R 5.24 455 澱經R 3/5 迭 R 5/5 迭 R 3/ノ5 R 5.90 467 澱經R 5/5 迭 R 5/5 迭 R 2/5 R 5.85 594 迭 5/5 迭 R 5/5 釘 R 0/5 5.ll 595 迭 1/5 R 4/5 s 0/5 4.23 598 釘 ,h.イ 5/5 迭 R 3/5 R ()/5 4.24 *ril一位はコロニー形成菌数o) 10 a)対数o破傷風歯胞子を(),5ml の食塩水に浮遊させてマウスの胃内に注入,その後24時間内 に排附された糞健に/)いて定立的に分離実験を行一)た。

Dose of in∝ulum vs the MPN of C. tetanI'

per g of the stool of mice excreted during the

first 24hrs

0 o o o 0 0 0 「-654321

(I)lOOTSI03Jad NdLNaL41-0叫〇一

1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 7.0 10g of the dose of lnOCUlum(×)

lx]1マウスに経胃接種した破傷風菌胞子U)菌iifと24時間以r加こ

(15)

Quantitative recovery C. tetanI- from the stools

of mice following intragastric inocu一ation on Day 0

Dose of inoculum=10655 C.F.U.

1001SJOW lOOIS10仙

LadNd∑aLJご0?O一JadNd2aLl=0BOl

_._A-A-I 2 3 4 5 6-8 910111213-151617181920-7       14       21

Days after LnOCulatron

図2 人近(10655)ro)破傷風繭胞子経胃接種後U)糞便内破傷風菌U)排 itg:状況 10655の破傷風菌胞子を含む上o)_辻はこれを最も多く含む土 o)約1-3kgに相当するo ii) 2 EjEj以後は106・55CFUの大壷の胞子を飲ませた後は頻跡こ糞便か ら分離されましたが,その童は1g当り102を超えることはありません(図 2)。それ以下の接種菌童では分離回数も糞便内薗壷も減少して,極めて小 量の破傷風菌が,短い期間しか分離されません(図3)。これらの図で菌量 が+印で示されているのは, 0.25gの糞便からは1-2本の試験管から破傷 風菌が分離されたが, 0.1gを接種した試験管からは分離できなかったこと を示しています。 以上-.の成績から,少なくともマウスの腸管は破傷風菌の増殖には好都合 な環境ではないと考えられます。また土の中の破傷風菌数がせいぜい1g 当り103-104コとすると実験に用いた菌基はマウスが土として摂取しう る童をはるかに越えるものであり,自然界では起こりえない壷です。 馬,午,犬,羊などの動物の糞便内破傷風菌の分布は羊を除き少ないこ と,かつ陽性の糞便内破傷風菌の密度が高くないことは,自然環境におけ る破傷風菌の分布に果す動物の役割は多くないことを示すと考えられま

(16)

n然界における破傷風菌u-)分布11

Quantitative recovery of C. tetanI- from the stoo一s

of mice following intragastric inocu一ation on Day 0

sl!unBoLu二〇01S103Jad!uplal.U}0(LaquJnuaLqeqOJdlSO∈)Nd≡

4321

4321   4321   4321

Dose of lnOCUtUm-5.08 log CFU

mouse No7&9

lnoculum-4.08 log CFU mouse No.10&12

1nocu山m-3.28 一og CFU

mouse No.14

Inoculum-2 28 一og CFU

mouse No.16

lnoculum= 1.40 一og CFU

mouse No.18

Inoculum=1.40log CFU mouse No.1 9

1  4 6 8 10 12 14 16 18 20

Days after inoculation

阿3 人∼少しとu)破傷風歯胞子を繕日揮挿した後C/)糞便内破傷風歯

U)排桝状況

すo 破傷風菌は動物の腸管内で増殖し,その糞便を介して地表面にばらま

かjLるという考えは支持できません。私が岩手県小岩井牧場などで集めた 1・.a)中o)破傷風菌は分離率とそ0)密度は田畑U)土よりはるかに低し、も0)で

(17)

12 した。

5.新鮮創傷内破傷風菌5)

医学的に問題になるのは創傷面に破傷風菌を含む微量の土が附着して破 傷風とし,:)病気を起こすことです。そこで治療前U)創傷面にどれくらい破

傷風南がいるかを検討するため,救急車で搬入された外傷患者の創傷而擦

過物から破傷風菌o)分離培養を試みました。その結果2月間に103人中2 人(1.90/o)から破傷風菌が分離されました(95%信頼限界71)%)。なおウ エルシ菌C.perfringcnsは4人(3.70/o)から分離されました(表7)。ただ しいずれの患者も破傷風やガス壊痕には確患していません。これは2月間 〟)経験ですから,簡単な計算で1年に12人,10年に120人の破傷風菌に汚 染された外傷患者がいたことになりますが,そu)病院では破傷風患者は1 人も発牛していません。外科的処置を十分に行えば破傷風にはかからない ということです。創傷面から破傷風南が分離されるには何mgの十が付着 していることが必要な0)でしょうかo 少なくとも肉眼的に市ぐFいJ/∼/)ほど a)上は多くUj場合-)いていないでしょう。前記定道的検査から想像できる i;:)に1mg (表1),あるいは0.2mg (表3)のLがついていれば,陽十侶二 なることがあるもJ)と思います。 人7 外手車J/J妬鋸帰)外傷jillH 1()3人からu)破傷風菌,ガス 横山l.i) (rl′上ルシL'il)なとU)JJ)離成績 /Jl甜L+iT椎 破傷風L'i) -I/ 1 -/L/シ[7-1 ソトー1/球【+i:1 (coa§. i ) (i削レンサ球['i,1 人暇【lil 暮分離ヰJ)丁.i頼限押 分離数(㌔) 涛T ヒ駘偉 5 2(1.9) ィ. 4(3.7) モ 10(9.3) ふR 1川.19) 迭r I(0.9) 迭メ

(18)

H然非における破傷風菌LTj分Jt] 13 6. ま と め 破傷風菌は上の中の常存蘭で,とくに踏み荒らされていない民家の庭, 蝿,田,川や池の岸辺から容易に分離され,約半数o)陽性例では10mg以 下の土から分離できました。動物の腸管内にも破傷風菌はいますが,その 分離率は低く,糞便内の密度は低い。マウスの腸管内では破傷風菌は極め て大量を接種した場合C7)み定着した所見がえられました。破傷風歯は本来 上のなかの常在菌と考えられます。

参考文献

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5)高柳満喜子,海老fj川),城川美佳, Hl本1Ii∴:破傷風菌u)外傷創への附着状況

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(20)

2.土壌中のボツリヌス菌

阪口 玄ニ

1.ボツリヌス菌とは

ボツリヌス菌(学名はClostridium bolulinum)はクロストリジウム属U) 200以l二ある両種の一つです。クロストリジウム属菌は芽胞を形成する嫌 気性,グラム陽性の梓菌ですが,恐ろしいボツリヌス巾毒を起こすポッリ ヌス毒素を産生する菌をボツリヌス菌と呼び,性状の異なる種々の歯を含 みます。性状により4群に分類されています(表1) (Smith,1977)。各群 の生化学的性状を表2に示します。毒素の抗原性により, AからG型まで の7型に分類されています。ヒトの中毒は車としてA,B,E型毒素でおこ り, F型中毒も数例報告されています。 C,D型毒素は動物(晴乳類,鳥類) 表1.生物性状によるボツリヌス府o)分類 Ⅰ     11    ⅠⅠⅠ 蛋白分解         + ゼラチン糖化 毒素型 芽胞耐然性 発育至適温度 発育最低温度 ブドウ糖醸酵 リパーゼ席/+-. +       十

AB,F B,E,F C,D

120oC4分 80DC6分1OOoC15分 37- 39oC  28-3rC  40-42oC IOoC    3.3oC   15uC +       十       十 十       十       十 十 十'し 人阪府立大学農′ゝ邦憎犬医学科

(21)

16

表2 C. b()lzllinum I, lI, III, IV邪, C, butJ・rl'(7Lm,およびC. blIIJ(1tiJ)性状

菌 Y,霊ミルク三三7 詣乳糖;言誤運動性毒素-#l・i C. bLJtulim/m I群        D   十   十 lI群    一   一  一十  + lII群   -(十) D(-) 十一  十 IV群        D C. bu/yr2-(.um  -   St C bar.ah' ' +   -FF ㌶e・。E。 - 十 十 1 一 一一  一 十 D-消化; St-強く発酵. の中毒をおこします。普通1薗株は1種類の毒素を産生しますが, A型と F型,A型とB型,2種の毒素を産生する菌株も報告されています。C型菌 はCl毒素と少量のD毒素を, D型菌はD毒素と少量のCl毒素を産生し ます。C,♪型菌の多くの株はさらにC2毒素と呼ばれる毒素を産生します。 C2毒素は神経毒ではなく,下痢をおこすエンテロトキシンです。冷蔵庫内 でも増殖して毒素を腐生するのはⅠⅠ群歯です。 芽胞形成能は歯型によって異なり,同 一菌株でも環境によって異なりま す。 Ⅰ群菌は多数の芽胞を形成しますが, ⅠⅠ群およびⅠⅤ群菌はあまり芽胞 を形成しません。芽胞の耐熱性は, I群菌は最高(殺菌には120oC 4分以卜 の加熱が必要), ⅠⅠ群菌は最低(数分の煮沸で死滅します), ⅠⅠⅠ群歯はその 中間の抵抗性を示します。 ボツリヌス菌芽胞は内陸♂)土壌,海や湖沼の底の泥に分布しています。 従って,農作物,魚介類,種々の動物などは本薗芽胞で汚染されています。 乳児ボツリヌス症では蜂蜜が芽胞を媒介すると考えられています。 ボツリヌス中毒は,食品中で産生された毒素の摂取で起こる『食餌性ボ ツリヌス中毒』が普通の型です。乳児が芽胞を摂取して消化管内で産生さ れた毒素による『乳児ボツリヌス症』,創傷局所で産生された毒素による『創 傷性ボツリメス症』も知られています。ボツリメス中毒はヒトだけではな く,種々の動物(晴乳類,鳥類,魚類)も躍ります。

(22)

L壌中a)ボ、ソリTi(ス向 17

2.土壌その他の試料の採取

ボツリヌス菌の検査は図1の手順で行います。 土壌試料の採取には特に注意すべきことはありませんが,試料の数と払 採取場所は重要ですo通常1か所から50g以亡の試料を滅菌容器(JiI.)エ チレン袋を用います)に採取します。試料は袋の中でよく混合し,直ちに 試験できない時は常温で保存します。遠隔地へ輸送する場合も特に冷却す る必要はありません。患者の材料(血液や大便)を検査する時には,試料 は低温に保ち速やかに検査室に輸送します。新鮮な生魚,生肉などはそU-) まま増薗培地として用いることが出来ますが,鮮度の悪いものや,加吊ん はそのまま増菌培地に用いることは出来ません。 クットミート培地 マウス毒性試験 生化学性状試験 し対1ボツリヌス菌検査の大要

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3.増菌培養法と分離培養法

ボツリヌス菌の増蘭培養には新鮮な牛肉を用いて作るチョップトミート 培地が望ましいですが,現在は市販の乾燥クックトミート培地が広く用い られます。土壌の懸濁液(検体と等量の蒸留水,生理食塩水,またはゼラ チン加リン酸緩衝液, pH7.0)を数分間静置して大きな粒子を沈殿させ,上 澄液の遠心沈漆を増歯培地に接種します(図り。この方法では50-100g の検体を1本の試験管に接種することが可能ですが,雑菌の接種量も多く なります。また,粒子の細かい粘土には用いることは出来ません。その時 には,検体を直接増菌培地に接種しますが,培地の量の10%位(10mlの 培地に1g)が限度です。 試料を接種した増菌培地は無芽胞菌を殺すため80oC 15-30分間加熟し ます。 II群菌芽胞の熱抵抗性は低いので,試料に等量のエチルアルコール を加え, 、室温に1時間静置した後増菌培地に接種します。未知の試料は 80oC 15-30分, 60DC 15分の加熱処理,および非加熱の3種類を増菌培養 します。 ボツリヌス菌の発育至適温度は菌群により異なりますので,30oCと37oC で培養することが望ましいのですが, ・温度しか用いない時は30oCで培毒 します。 II群菌は多量のガスを産生します。菌の発育が認められると, 4, 6,8,10日目,あるいは4,7,10日目に毒素の試験をします。 -度しか試験 できない時は5-7日目に行います。毒素試験には培養液を3,000rpm 10 -20分遠心した上清を用います。培養上清を適当に希釈(5または10倍) したものをマウスの腹腔に注射し,さらに100oCで10分間加熱したもの, および抗毒素血清をあらかじめ注射したマウスを対韓削こ置きますo毒素試 験の方法は後述します。 ボツリヌス菌の分離培養は,平板培養あるいは混釈倍養法により行われ ます。培地として血液寒天培地(ツァイスラー)または卵黄寒天(マック ラング・トウペ卵黄寒天, GAM卵黄寒天)が用いられます。増菌培養を寒 天平板培地に直接塗抹し嫌気的に培毒します。Ⅰ群菌の分離,とくに乳児ボ ツリメス症患者の大便の直接塗抹用に,マックラング・トウペ卵黄寒天に

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L壌L恒)ボツリヌス菌 19 サイクロセリン,スル7ァメトキサゾ-ルおよびトリメトプリムを添加し たCBI寒天が用いられます。寒天平板は使用前によく乾燥することが必要 です。乾燥不十分な場合は集落が互いに融合し,単離を困難にします。培 養には厳重な嫌気性が必要です。接種材料は20-24時間増菌したものがよ い結果を与えます。液体培地に継代培養した時,代を重ねる度に毒力が高 くなる場合には分離が容易であり,反対に継代培養すると毒力が低くなっ て来る時には分離が国難です。培養は24-48時間が適当です。 嫌気培養法としては嫌気ぴんに入れて気相を窒素あるいは炭酸ガスで置

換する方法,気相中の酸素を化学反応を利用して除く常温触媒法(脱気し

水素を充填後,市販の常温カタリストで残っている酸素との反応を触媒し, 水を形成させる方法),キットとして市販されているガスパック法,ガス噴 射法,ワインベルグ法(高層寒天混釈培養),パウチ法(非通気性のプラス チックフィルムで作った袋内での混釈培養)などがあります。 ⅠⅠ群菌は混 釈培養するとガス腐生のため寒天に亀裂を生じ,集落の単離が困難です。

4.培地・試薬の作成法

Ii\試薬 ゼラチン希釈法 NaZHPO。

蒸留水

HClでpH7.0に修正(毒素希釈用はpH6.2) ゼラチン

高圧滅菌

家兎抗毒素血清(A, B,ClrC2,D,E,F型,それぞれ千葉県血清研究所製) A,B,C.,E,F型血清は1.0国際巣位(IU)/mlの濃度で, D型は10IU/ mlで用います。抗C2血清は国際単位がないので原液で使用します。 A,B, Cl,F型抗毒素1IUは約50,000マウスip LD5。, D,E型抗毒素1IUは約 5,000マウスipLD5。の毒素を中和します。

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2() ② 培地 チョップトミート培地 挽き肉(赤身)

蒸留水

1N NaOH 以ヒを沸騰させ,冷却して滴過します。肉片は生乾きにします。 ペプトン 酵母エキ`ス K2HPO4 1N NaOHでpH7.8に修lEL, ブドウ糖

可溶性澱粉

肉片を適宜入れた中試験管に培地を10mlづつ分注し高圧滅菌します。 マ、ソクランプ・トウペ培地 トリプチケース Na2HPO。 NaCI MgSO。 ブドウ糖

寒人

蒸留水

0    2 0 日H g g g g g g m nu  5  2  1  1  5  nU pH 7.3-7.4 高圧滅菌し, 60oCに冷やし, 50%卵黄懸濁液(生理食塩水)      0・1容 CBI培地 マックラング・トウペ培地に卵黄と共に次の抗生物質を加えます。 サイクロセリン       250JLg/ml スルフアメトキサゾール      76JLg/ml

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トリメトプリム L壌中J)ボツリヌス菌 21 4 JLg/ml

5.検出法

寒天培地平板上の集落の所見から,ボツリヌス菌であると決定できるよ うな特徴は認められません。 I,II,ⅠⅠⅠ群菌は卵貞反応陰性,リパーゼ陽性で すが, ⅠⅤ群菌はリパーゼ陰性です。また,乳児ボツリヌス症例から分離さ れF型毒素を産生するC. bwati, E型毒素を産生するC. bulyricumもリ パーゼ陰性です。 平板培養で発育した独立集落をなるべく多く釣薗し,クックトミート培 地に接種し, 30oCで培養し,逐次毒素の試験を行います。分離したボツリ ヌス菌の生物学的性状が表2と一致しなくても,歯の同定・型別には毒素 の同定が優先します。すなわち,抗毒素血清による中和試験でボツリヌス 毒素が証明されれば,生物学的性状は無視しても差し支えありません。 毒素の試験には, 15-20gのマウス2匹以上二を1群とし,次のような8 群を用意します。 第1群には上活をそのまま0.5mlずつ腹腔内に注射します。 ・-第2群には上活を1()OoC IO分加熱し,そU)0.5mlを腹腔内に注射しま す。 第3群には予め0.25ml(0.5-1単位/ml)のA型抗毒素血清を腹腔内に 注射しておき,さらに無処理の上活0.5mlを注射します。中和反応は,請 験管内で適当に希釈したA型抗毒素血清(1-2単位/ml)と,上清を等量 混合し, 37oC 15分反応させその0.5mlを注射してもよろしい。 第4群は,第3群と同じようにしてB型抗毒素血清を使用します。 第5群は,同様にC型(Cl)抗毒素血清を使用します。 第6群は,同様にD型抗毒素血清を使用します。 第7群は,同様にE型抗毒素血清を使用します。 第8群は,同様にF型抗毒素血清を使用します。 いずれの群も4日間観察します。第1群のマウスがボツリメス特有の症 状(腹壁の陥門,呼吸困難)を呈し全部が莞死し,第2群と,第3-8群の

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2-2 うち1群のマウスが生残した時,使用した抗毒素の型に相当する毒素が存 在することになります。全群マウスが繁死すれば,ボツリヌス以外0)耐熱 性毒素が存在すると考えられます。第1群のマウスが柴死し,第2群が生 荏,第3群∼第8群のマウスの1群の 一部が生存するか,全群が笑死し,し

かも特異的症状が観察された場合は,用いた抗毒素血清の力価がト分でな

いか, A∼F型以外の毒素の存在が考えられます。上活をさらに希釈し,読 験を繰り返すか,他の型(G型, C2)の抗毒兎による中和を試みるべきで す。

検体の活性化は,全培養液に(菌体に毒素前駆体が存在するので遠心は

行わない)に等墨の20/.トリプシン溶液(結晶トリプシンの場合は0.020/o) を混ぜ, pHを6.0に修正し, 37UC 3O∼60分間保ちます。活性化した材料 のマウス試験は,遠心卜清と同じ方法で行います。

毒素の定量には,静脈内注射法(致死時間の対数と授与した毒素冠の対

数U)間に此例関係が成立する)も用いられます.このjj法は,短時間(2-3 時間)で定量可能ですが,ボツリメス毒素以外の毒物が混在する時や毒力 が-一定レベル以下0)場合は使えませんo

毒素の検出に免疫反応を応用した逆受身血球凝集試験,二重拡散ゲル内

沈降法,ラヂオイムノアッセィ,酵素抗体法(ELISA)などが開発されて いますが,マウス注射より感度が高い方法はありません。また免疫反応に は,高度に精製した毒素と,それに対する抗毒素血清がなければ非特異反 応がおこります。しかし,迅速,簡便,活性化不要,多数の試料処理可能 などの点で,スクリーニング法としては有用です。

6.土壌調査の例

埋止。山川ら(1988)は石川県,山陰地方,北九州地方,対馬,与那国, 石垣,宮古島などから266,中国新彊自治区から20の土壌検体を採取して 調べました。方法は10gの検体を10本の増菌培地(10mlのチョップト ミート・ブドウ糖培地)に分けて接種し, 30oC 5日間培養後に毒素試験を 行いました。中国の20検体中14検体(70%)からボツリヌス菌が検出さ れ,その内訳は, A型3検体, B型5検体, A+B型4検体, A十C型1検

(28)

i二壌巾U)ボツリヌス菌 23

体, A+F型1検体でした。 1本の試験管でA,B両型毒素が検出されたも a)が1例見られました。土壌中の芽胞数はA型25/g, B型10/gが最高で

した。国内の266検体中40検体(15.0%)にボツリヌス菌が検出,され,そ の内訳は, C型3O検体, E型10検体で, A型もB型も検出されませんで

した。 壁担。 1976年,我々は琵琶湖から,大阪湾へ注ぐ淀川の河川敷の土壌中 のボツリヌス菌を調べました。 106検体中46検体(43.6%)がボツリヌス 菌陽性で, C型16検体, D型10検体, E型5検体, C+D型7検体,不明 (C型かD型か決定できなかったもの) 8検体でした。検査法は検体50 -100gと等量の0.5%ゼラチン加0.1Mリン酸緩衝液(pH7.())を加えて 撹拝し,洗い水を遠心し,沈殿を肝々ブイヨン,クックトミート培地,あ るいはエッグ・ミート培地に摂取し, 30oCあるいは37DC 3-4円培養後に 遠心上活の毒素を調べました。また1976年8月から1977年9月まで同 一 地点で検体を採取し,同じ方法で検出率を調べました。 ll, 12月の検出率 は約10%でしたが, 2-10Jlは検出率500/.以上で,最高75%でした. 塑j。 Smith,LDS (1979)は米国(アラスカ,ハワイを除く)全州から, 約50マイ/レ間隔で260の土壌検体を採取し, 1gづつ10本のークックト ミート培地に接種し, 30oC 3-5口間嫌気培養LJ,培養液を凍結融解し,そ の0.3mlをマウス腹腔に注射し毒素を調べました。 61検体(23.5%)から ボツリヌス菌を検出し,その内訳はA型26検体, B型22検体, C型3検 体, D型5検体, E型6検体でした。 A型菌は西弧 B型菌は東部に濃厚 に分布し, C型菌は南部に, D型菌は北西部, E型南は水に関係した場所に 見られました。同時に破傷風菌を調べ, 49検体(18.80/o).め,!,検出しまし た。

型4。 Smith and Y()ung (1980)は英国のl二壌174検体を調べ, 10検体

(5.70/o)からボツリヌス菌(すべてB型菌)を検出しましたo 湖や河川J) 泥を採取した76地点のうち55地点(72.4%)からボツリヌス菌(B型31

地点, C巧■).11地点, D巧rl_1地点, E型6地点, B+E型2地点, B+C+E

型2地点,型別不能2地点)が検出された成績(Smith andM()rys。n, 1975) と比較すると有為に低い検出率と云えます。検査法は検体50gを50mlu)

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-.ヱl リン酸緩衝液, pH7.0で洗い,仁清の遠心沈殿を2本(22ml)のクックト ミート培地に接種し, 1本は60oC 1時間加熱,他U)1本はそ0)まま30oCで 6-8日培養して毒素を調べました。

7.土壌検査の問題点

(手 検体採取の場所。地表から10-3Ocmの土壌を採取したという報告 が多いが,魚を地表で1サような海岸では表面の砂の検出率が高い。 ② 接種材料。少遣(1g) C/)土壌試料をそ0)まま増菌培地(10-25ml) に接種するか, 5(ト100gの土壌試料の洗い水の遠心沈殿を増菌培地に接 種する方法が用いられています。増薗培地1本を用いる時には後者の万が よいと思われますが,粒f・の細かい精一‖二は用いることが出来ません。後 者は増薗培地の数を増やし感度を上げられますが,毒素試験に使用するマ ウスの数も多くなります。どちらが良いかは決着が付いていません。 ③ 安全性の評価。上嬢の場合より深刻なのは食品(例えば砂糖,蜂蜜 など)の安全性を評価する場合です。砂糖,蜂蜜などは増菌培地に加える と,それ口体ボツリヌス菌の増殖を阻害しますから,溶液の涯過,あるい は遠心が必要です。乳児に与えても安全と云うために必要な検体量は誰も 答えることは出来ません。ボツリヌス菌陽性o)検体を再検査すると陰性に, 陰性0)検体を再検査すると陽件になる(稀に)ことはH常経験しています。 ④ 培養混度,培養時間。同・検体を37uCで培養するとC型菌のみ, 30uC, 20uCで培養するとE型歯が検出されたことが報告されています

(Notermans a/ al" 1979).低温晴好性のあるE型菌o)検出にはわざわざ

1()r、Cで培養することもあります。増蘭培養は1(=」「Hj行い,毎u毒素を調 べ,すべて陰性J)日射こ陰件と結論出来ますが,現実には手間と費用の点で

美行困難です。

⑤ 選択培地。すべてのボツリヌス菌に用いられる選択培地は有りませ んo CBI培地はI群菌の分離はできますが, II群, III群菌o)増殖は抑制さ れます。増菌培地に接種する検体iiiを多くした時にはボツリヌス菌は検出

されず,少量を接種したときのみ検出される例は多くの研究者が経験して います。

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上ー壌L恒りポ、ソリズri菌 2.5 ⑥ 加熱処理。芽胞を塵生するクロストリジーンム属菌の増菌,分離培養 に用いられる加熱による選択は,両群によって耐熱性が異なるので条件U-) 設定は困難です。一一一・般に8OrC 15-30分J)条件が用いられますが, II群歯 牙胞は殆ど死滅しますoそれで,普通6OLIC 15分と非加熱の条件も併用しま す. 1922年, Meyerらは世界中のl二壌を調べ, A型とB耳順TJLか検出でき なか-)たUjは,明らかに検体の加熱のし過ぎであると考えられています。 ⑦ 嫌気性条件。ボツリヌス菌は絶対嫌気性菌と云われていますが,酸 素耐侶ま薗群によって異なります。この面の研究は殆どありません。Meyer はウエルシュ両くスポロゲネス蒔くA型<B型<C7モ町)順に酸素耐性が厳 しくなると報告しました。血液寒天培地がよく用いられた理由は血液成分 が増殖に必須の栄養を提供するのではなく,血液中の還元物質が嫌気ぴん 0)欠P(t')を補っていたものと思わjLますo嫌気培養装置が改良されるに従っ て血液寒天が便Hほれなくなってきたu)は,こ0)問u)事情を物語るもcl)と 思われます。 空もしと0)接触を遮断する混釈培養法,ロールチューブ法などは優れてい ますが,これらの方法は,ボツリヌス菌が多数存在する時(患者からu津オ 料など)では成功しますが,雑菌が多数を占める時には分離は国難ですo寒 大平板U)万が少数の集落を釣菌するのは容易ですが,1平板の集落数が300 を越えると,そU)rTlの1個を釣両するの倒刈難です。イソブリドメンブラ ンは1枚o)平板に1,6000)集落が生じても疎水件グリッドで分画されてい るので,ニトロセルu-ス膜に虹写してELISAで毒素を検出できると,汁 、ソリヌス菌の分離は容易ですo ⑧ 増菌培地。以前には,肉や臓器を購入し培地は冊牛していたも0)で す。,こU)ような面倒なjj法は好まれなくなり,殆どの培地0)作成に市販の 乾燥粉末製品がF机ゝられますo 均貿件U)点からは好ましいことですo 乾燥 粉末は湿らせなければ変質しないと考えられていますが,酸化は嫌/*rl三園 には好ましくありません。製造l=二便JH期限を考慮して使用したいもので す。

(31)

26

参考文献

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3.土壌中の軟腐病菌

菊 本 敏 雄

1.軟腐病菌とは

軟腐病菌(Em〃inia cwotouwa subsp. cwoiovwa)は腸内細菌科に属す る植物病原細菌です。この病原菌はハクサイやダイコンなどアブラナ科の 野菜類をはじめ,ニンジン,コンニャク,タマネギ,セロリ-,シクラメ ンなど多数の植物に寄生し,大きな被害を与えます。さらに収穫後のトマ トやキュウリ,貯蔵中のジャガイモなどの腐敗もひき起こします。病原菌 は通営,これら植物の多肉な貯蔵的組織に生じた傷口から侵入し,病斑を 形成します。病変部はアメ色・水浸状を呈し,病名どおり軟化,.腐敗して ゆきます。これは軟腐病菌の産生するペクチン分解酵素の作用によるもの です。病勢は高温多湿な条件下で一一層はげしさを増します。 軟腐病菌は土壌中に生息していて,とくに感受性の作物のほかアカザ,ツ ユクサ,スベリヒユなど,ある種の稚草の根圏でも顕著な増殖を示します。 ハクサイの場合,播種後40日頃から根圏や地際郡の葉圏土壌で急激に増殖 し,菌数は乾土1グラム当り106-107のレベルに達します1)。そして,ちょ うどこの時期に,ハクサイの地際部附近から軟腐病の発生が見られるよう になります。このように,発病に先だって病原菌の増殖が起こります。ハ クサイ軟腐病は土壌伝染性の重要病害の1つに数えられています。 東北大学遺伝生態研究センター

(33)

2とS

2.土壌中における軟腐病菌の検索

1950年,津山らは軟腐病菌の土壌中における生態の研究をはじめるにあ たり,本菌の検出・定量法として2つの手法,すなわちニンジン円盤法2)と Kauffmanによる変法ドリガルスキー培地3)を採用しています。 1)ニンジン円板法

植物病原菌が特定の植物に寄生する性質に毒口し,病原菌に感受性の植

物あるいはその'一部分をエサ(bait)にして,目的とする病原菌を選択的に 検出する試みは古くから行われてきました4)。感受性植物のなかから,一一年 を通して比較的入手しやすいニンジンが選ばれたのです。 まず,表面殺菌を行ったニンジンから,無菌的に厚さ0.5cmの円板をつ くります。土壌希釈液の一一定量を円板の切口上・_面に接種し,湿室中で25 -30cc 2-4日間培養して,腐敗の有無を調査します5)。ニンジン円板法は 原理的にはMPN法(希釈頻度法)と同じです。 さて,津山はジャガイモとハクサイとの輪作圃場の,畝上株間の表面か ら5cmの深さの土壌について, 4月から翌年10月まで定期的に調べまし た。その結果,ニンジンの腐敗率は時期的に大きく変動し,作物の成熟期 にあたる6月と9月, 10月に高い値がえられました。このように,ニンジ ン円板法の利用により,初めて土壌中における軟腐病菌の季節的消長とい う,大変興味深い現象がクローズアップされたのです2)。 2)ニンジン円板法の問題点 土壌中にはErwinia属の軟腐病菌グループの他にも,ニンジンやジャガ イモを腐敗させるPseudomonas属およびBacillus属に属する数種の腐敗 性細菌が生息しています6)。したがって,この種の実験においては,発生し た腐敗がたしかに目的の菌によるものであるとの確認が必要になります。 また,使用した実験材料が,すでに軟腐病菌によって汚染されていること i)間々あるのです。常に,新鮮な材料を使用することは,こうした汚染を 最少限に抑えるだけでなく,病原菌に対する感受性の面でも優れておりま す。ちなみに,新鮮なニンジン円板に101オーダーの軟腐病菌を接種する と,腐敗率は60-100%に達します。さらに,新鮮なハクサイの感受性は

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十二壌中の軟腐痛菌 29 ニンジンより, 10倍も高いのです。このように感受性植物の生組織の利用 により,試料中に存在する1個の病原菌を検出することも,それほど困難 ではないのです5)。その際,軟腐病菌による腐敗の発生に適した環境条件の 設定が重要です5)。しかし,この方法の最大の難点は先にもふれたように, 腐敗性細菌による実験材料の自然汚染という問題です。表面殺菌で,これ らの汚染菌を完全に除去することは望めません。そのため実験結果にはい つでも?マークが付いてまわります。もし,無菌栽培をしたニンジンやハ クサイが入手できるようになれば,この間題は一挙に解決されましょう。

3)ハクサイ栽培による軟腐病菌の検出

畑にハクサイを播種し,変法ドリガルスキー培地を用いた希釈平板法に

より,根圏や地際部の菓圏土壌中における軟腐病菌の動態を経時的に調査

しました。その結果,播種後40日を経過する頃から軟腐病菌が急激な増殖 を示すことは既述の通りです。軟腐病菌の菌数は乾土1グラム当り106 -107のレベルに達し,色素耐性細菌数の数パーセント,場合によっては10 パーセントを越えることさえあるのです.このように,ハクサイは土壌中 における軟腐病菌の選択的な増殖を惹起する,素晴らしい機能を備えてお ります。現在,これに匹敵する増菌法は見当りません。 東北大学片平キャンパス内にある軟腐病の常発畑に,雑草の生育と外部 からの軟腐病菌の侵入を防ぐ目的で,シルバーポリトウを被覆して,5年間 休閑しました。この畑にビニールハウスを建て,その中でハクサイを栽培 したところ,軟腐病が激発しました。その発病株から分離した病原細菌は, すべて軟腐病菌と同定されました。この結果から,軟腐病菌はきわめて腐 生能力の高い植物病原細菌であることが明らかになりまLTL,。

3.土壌中における軟腐病菌の生活

軟腐病菌は植物の生えていない畑の土のなかで,少なくとも5年間生存 することは,休閑畑に感受性作物を栽培する方法で解明されました。しか し,本菌の土壌中における生活の実態については,不明の点が多く残され ています。

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3() 1)変法ドリガルスキー培地 この培地の組成は普通寒天培地に乳糖,クリスタル紫およびB・T・B・を 加えた簡単なものです3)。本培地の特質はグラム陽性細菌の生育の抑制と, 乳糖からの酸の生成にともなう黄色コロニーの形成の, 2点にあります。 流し込みを終えた平板は28oCで2日間培養し,黄変したコロニーをマー クし,翌日もう一度チェックします。これは,黄変の遅いコロニー,小さ いものや再び育変するなどして,軟腐病菌が見落されるのを防ぐ意味があ ります。このように,黄色コロニーの出現はかなり不安定な性状である点 に注意を要します。黄色コロニーの出現とその持続は,発生するコロニー の密度に著しく影響されるため,通常コロニー数が300個以下になるよう に調整します。出来れば,前後数段階の希釈液を調製し,各希釈液を3-5 枚のペトリ皿に流し込んでおくと安心です。平板の表面に形成された黄色 い,円形のコロニーをルTペで覗くと魚のウロコ状の模様が見えます。こ の形状は軟腐病菌を鑑別する重要な形質です。一方,培地の内部に形成さ れると黄色い凸レンズ状を呈します。よく見ると縦横に走った紋様が認め られます。流し込む培地の量を6-7ml/シャーレ(径9cm)と,少なめに すれば表面に形成されるコロニーの割合が増し,それだけ判別が容易にな ります。ところが大腸菌も同様の形状を示すため,平板上で見分けること はできません。幸いなことに,他にこのような性状を示す細菌が土壌から 検出されることは,ごく稀なのです。まれな例として, Eru)iniaherbicokl グループの細菌を挙げることができます。 2)病原性(腐敗力)のテスト 変法ドリガルスキー平板上に形成される軟腐病菌のコロニーの性状は, 菌株により多少の差異がみられます。ですから多くのコロニーの顔を観察 し,馴れ親しむことが肝心です。そうすれば, 90パーセント以上の確度で コロニーを見分けることが出来るようになります。実験の目的によっては, さらに高い精度が要求されることもあります。その時は病原性テストを行 います。 いま調べようとするコロニーを,滅菌したツマヨウジか針の先端になす り付け,表面殺菌をした新鮮なハクサイの中肋片に,数mmの深さに突き

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土壌中の軟腐病菌 31 さして接種します。その中肋片がほどよく入いる程度のポリ袋にいれ,輪 ゴムで口を封じ, 25-30oCで培養します。 15-20時間後には,接種部位を 中心に水浸状の病斑が形成されます。場合によっては,スラントに植菌し ておき,新鮮なハクサイが入手できる時にまとめて腐敗テストを行っても よいのです。

3)土壌中における軟腐病菌の季節的消長

播種40日を経過し,結球期に入ったハクサイの地際部の葉圏土壌では, 品種や個体の区別なく,一斉に軟腐病菌の急激な増殖が起こります。ニン ジン円板法でも,ジャガイモやハクサイの成熟期には腐敗率も上昇し,病 原菌の季節的な変動が示唆されました。それでは,植物は土壌中における 軟腐病菌の季節的な変動とどのような関わりをもつのでしょうか。 ハクサイ軟腐病の常発煙に,ハクサイを周年にわたり栽培しました。結 球期に達したハクサイの根圏と葉圏土壌を定期的に採取し,変法ドリガル スキー培地を用い希釈平板法により,軟腐病菌数を測定しました7)0 図1でみるように,軟腐病菌は5月下旬から11月中旬のほぼ6カ月間に わたって検出され,菌数は乾土1グラム当り105-107のレベルです。本菌 がこのように高い密度で生息している部位は,明らかにハクサ正の根系や

外葉の接触した土壌に限られ,直接植物体の影響の及ばないうね間の土壌

8 7 6 5 4 3 2 1 0 7 ニOS言.6/e!la13eq lOl tJOS IO.Ou'601

(month) J F M A M J J A S 0 N D

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3-: からは全く検出されません。軟腐病菌は植物から栄養源を摂取して増殖し, 高い密度を持続しているのです。言いかえれば,軟腐病菌は野外で植物に 依存しないで,高い密度を維持することはできないのです。一一万,栄養条 件が満たされていても気温(地温)が低下すると,軟腐病菌は検出できな くなりました。このように自然の生態系で,軟腐病菌が増殖し,高い密度 を維持するためには,栄養と温度の2つの要因が同時に充足される必要が あるのです。

4)選択培地とその検出限界

津山らが軟腐病菌の検出・定量に変法ドリガルスキー培地を使用して以 莱,わが国ではこの培地が最もよく使われています。それは,この培地が 安価で,調製や使用が簡単,保存がきき軟腐病菌に対する阻害作用がなく, しかも検出精度は他の選択培地に劣らないなどの理由が挙げられます。さ て,本培地の検出限界は,,平板上に形成されるコロニー(色素耐性菌)敬 の0.1-0,5%が経験的に想定されます。これを土壌に当てはめれば103 -104CFU/g乾土,となります。但し,後述のように風乾などの処理によ り,色素耐性細菌群の大半を除去した土壌を使用した場合には, 101-102 CFU/g乾土の検出も可能です。 ヨーロッパやアメリカでは,軟腐病菌の産生するペクチン分解酵素に着 目した培地がいろいろ考案されています。ペクチンやペクチン酸塩を炭素 源とし,これに種々の生育阻害物質を加え,培地の選択僅を高める丁二夫が なされています。広く利用されているものに, Stewart培地8)とCVP (crystal violet-pectate)培地9)があります。前者はMcConkey培地の上 にペクチン酸塩のゲルを重層,固化させたものです。これらの培地は使用 前に1-2日間,平板の表面を乾かせます。そして,希釈けんだく液を平板 の全面に広げ,22-25oCで2-3日間培養します。小さな凹みの中心にコロ ニーが観察されます。もちろん,凹みの中のコロニーのすべてが軟腐病菌 であるとは言えません.これらの選択培地の検出限界は,変法ドリガルス キー培地のそれと同じレベルです。

5)軟腐病菌の増菌培養法

軟腐病菌の土壌中での越冬については長い間,肯定と否定の両派に意見

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上機中の軟腐病菌 33 が分れています。その最大の原因は,使用した検出法の精度にあります。前 項でみたように,選択培地を用いた希釈平板法では,通常103CFU/g乾上 以Fの検出はできません。ところが,野外における軟腐病菌の生息密度は, ある種の植物の根圏土壌を除けば,この検出限界よりさらに低いレベルな のです(図1参照)。 軟腐病菌を殺菌土壌で7日間培養し,この土壌を約33gずつナイロン製 ストッキングの布で包み, 12月13日に圃場の表面から3, 10, 20, 30およ び50cmの深さに埋めました10)。埋没時の菌数は6.6×107CFU/g乾土で す。埋没後,凍結と融解の繰り返えされた表層3cmの部位では,軟腐病菌 が急速に減少し, 1カ月後には102のオーダまで低FLました。これに対 し, 10-50cmのより深い層位では,いずれも106のレベルを保っていま す。埋没2カ月後,表層3cmの土壌から軟腐病菌は,希釈平板法では検出 できなくなりました。そこで,変法ドリガルスキー液体培地に, 25-30oC 24時間静置培養を行い増菌を図りました。この方法で, 3カ月後の表層3 cmの土壌からも軟腐病菌が回収されました。しかし,埋没4カナ‖こなる と,この増菌培養でも表層土壌については,検出できなくなったのです。

Meneley & Stanghellinill'らは,つぎのような組成の増薗培地を発表し

ました。蒸留水225ml,Na-ポリペクティト0.625g,10% (NH。)2SO。 2.5 m1, 10% K2HPO。 2.5m1, 5% MgSO。 ・7H20 1.5mlこれにサンプルの上 壌25gを加え, 250ml容エレンマイエル・フラスコを使用して,嫌気的に 室温(約25℃)で48時間培毒します。嫌気培養はペクチン物質資化性 pseudomonas属細菌の生育を抑制するE]的があY)ます。谷井12)はこU)方 法を改変して増菌培養を行い, 0.1-0.2CFU/g乾上の検出が可能であるこ とを報告しています。功, Butler13)は非常に単純な増蔚培養法を考案し ましたoO.5%アスパラギンの水溶液40mlをビーカーに注ぎ,これに土'.嬢 を加え28oC, 48時間好気的に培養します。常法により,この培養液U)0.1 mlを選択培地(CVP)平板上に広げ,培養して軟腐病菌を計数します。 Butlerの増菌培養法の検出精度は,上記MeneleyらU)嫌気的な増菌培養 法に勝ることが分りました。増菌培養法をMPN法に適用することによ り,低密度で存在する軟腐病菌の定量化が期待されます。

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34

6)土壌団粒における分布

仙台地方の畑の表層土で軟腐病菌が越冬する可能性は低いようです。し

かし,10cmより下層では植物が生育を開始する春まで生存しています。津 山2)は畑の深さ70cmの土壌から軟腐病菌を分離しました。内生胞子のよ うな明確な耐久器官をつくらない軟腐病菌が土壌中のどこで,どのように 生きているのか? これについては全く分りません。そうした研究への一一一一 歩として,服部14'の考案した「洗浄一音波法」′を応用し,ハクサイの葉圏

土壌における軟腐病菌の存在様式の解析を試みました。

表1でみるように,軟腐病菌の細胞の93パーセントが土壌団粒の外部に 分布しております。さらに,洗浄過程でみられる菌数の大きな変動から,本 菌が団粒の外部で偏在していることも示唆されました(図2)。また, 46個 の団粒(2.00-0.84mm,1.5mg)を調べたところ, 29個から軟腐病菌が検 出され,その菌数は数個から数千個でした(表1中の実験Ⅰと同じサンプ ル)15)。一. それでは,しばらくハクサイの根元に降りて,軟腐病菌を含む微生物た ちの演ずる壮大なドラマの一幕を鑑賞しようではありませんか。『そこは暗 くて湿度も高い。温度計はほどよく20oCを指しています。地番はかすんで 見えない。突然,大きな白いハクサイの根が伸びてきて,甘酸っぱい液体 の分泌をはじめます。深い眠からさめた軟腐病菌は,味に覚えのあるこの 表1土壌団粒中における軟腐病菌の生息部位 反復 実験 8ンxスイ 色素耐性菌 餽YV スイ 放線菌 倩X 8スイ CFU/g(乾土) 白 xl06 157.9 cR繧×104 54.0 綯B 361.5 ×103 ⅠⅠ 32綯 615.4 田c偵 426.5 s"纈 団粒外部(o/.) 白 30 鼎R 93 鼎" 57 ⅠⅠ 43 涛2 30 鉄 団粒内部(%) 白 70 鉄R 7 鉄 43 ⅠⅠ 田b 57 途 70 鼎" ハクサイの葉圏上項より採取した団粒(2.00-0.84mm)を使用した。

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〇     〇       〇    〇     〇 的  帥   川  川  L-偶 数 の 相 対 仙 30 20 10 1 123 5 7 10 15 l 沈1'lr回 数      llli二彼処押 [9(12 土壌F司粒における軟腐病菌の分布の洗浄-音波法による解析 液体を貧るように吸収し,分裂をくり返し,仲間をふやします。周りにも, いろいろな連中がいて,なにやらしきりに活動しています。人一倍,内弁 慶な軟腐病菌が集って旅行の相談をはじめます。予定通り,小雨の日の出 発と決りました。根の表面の水たまりをたどりながら,上へl二へと登りま す。数日後,直径1cm以上もある根元にたどり着きました。どうやら外は 秋の気配です。この附近一帯はEl陰で,何時でもじめじめしていて,自由 に泳げまわれます。大小さかざまな穴のある土塊が一面に広がっています。 そして,穴の奥から賑やかな話し声が聞えてきます。でも軟腐病菌には分 りません。やっとの思いで,誰もいない,浅くて小さい穴が見つかりまし た。溜っていた水を口にした途端,味のとりこになりました。 pHは6.5, とっても壮快です。数日後には,もう身動きができないくらい新しい仲間 がvi、えました。実は,軟腐病菌の大半は雑居生活を強いられているらしい のです。ここの住人の多くはグラム陰性菌ですが,陽気で活動的な連中な

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36 のです。軟腐病菌の居住区はほぼ円形で,直径は100mmを越えますが深 さは5mmほどです。この区域へはハクサイの地卜部から根圏の何倍もの 栄養分が分泌されるため,微生物の生息密度は周りの数百倍も高くなりま す。それ故,根圏とは区別して菓圏土壌と呼ばれています。 晴れた日の朝,ハクサイの収穫がはじまりました。たちまち栄養分の供 給はストップし,土は白く乾きはじめます。そして,軟腐病菌は天国から 地獄への途をたどることになります。幸か不幸か,入粒の雨が降り,軟腐 病菌は思い思し`)に,この場を去って行きます。』 一週間後,ここに来て軟腐病菌を探しました。もう,希釈平板法では検 Hiできないことが分りました0

7)蛍光抗体法

圃場から採取した新鮮な土壌に,培養した軟腐病菌を大量(108CFU/g 乾上)に導入し,室温におきます。 3日後には104以下のレベルに低下し, 希釈平板法で検出できなくなります。ところが,この土壌を十一分風乾して 軟腐病菌を導入した場合,2日後にピークを形成し,その後緩やかに減少し ます10)。エスロンパイプ(10×5cm)の・端をナイロン製ストッキングで 底を作り, 160gの風乾土壌を入れ,圃場に深さ9cmに埋めます。これに 100mlの軟腐病菌のけんだく液(5.3×10日/ml)を加えます.表面殺菌をし て, ・夜25oCで催芽させた22種の植物の種子を,それぞれエスロンパイ プにまきます。 一週間以内に,すべての植物が発芽しました。 一万,導入 10 Ej後の軟腐病菌数は9.5×105CFU/g乾しで,なお高いレベルにありま す01カ月後から4回,変法ドリガルスキー培地を用いた希釈平板法と蛍光 抗体法により,供試植物の板圏から軟腐病菌の検出・定量を試みました。 希釈平J一板法で検出された植物はハクサイ,キュウリ,アサガオの3種で す。しかも,実際に検出されたのはハクサイが4回の調査中1回,キュウ リは3回中1回なのです。他方,蛍光抗体法ではハクサイのほか7種の植 物から本菌が検出できました16)。これに対し,植物を植えなかった対照土壌 からは,この調査期間中5.0-5.6×102CFU/g乾土の軟腐病菌がコンスタ ントに検出されました。この結果は導入した軟腐病菌が,根圏に定着し増

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上壌中の軟腐病菌 37

表2 軟腐病菌の検出・定量法

実験法 佶 Tト箸靂 、R 備考

植物生組織法 モ 4eR モ ニンジン,ハクサイ,ジャガイモなど,あ る程度の特異性ありoMPN法を応用す れば定蛍HJ能o材料の白然汚染に汀意o

希釈平板法 2モ D4eR ,r穐8 2 変法ドリガルスキー培地,Stewart培地, CVP培地など○選択性は高くないo菌数 が多い試料では定量は簡単○

増l岩槻養法 モ 4eR ,r穐8 2 選択性は高くないが,増歯に期待oMPN 法を応用すれば定立可能o

蛍光抗体法 4eR &モ 高い特異性あり,タイプの異なる軟腐病 菌は検出不能○工夫すれば定量も(.Jfi巨○

ファージ法 s$4eR r穐7B 高い特異性あり,タイプの異なる軟腐病 菌uj検出不能oお冠可能o バクテリオ 2モ sD4eR r以 オ 高い特異性あり,タイプの兇なる軟腐病 シン法 剪福フ検出イ絹Eo定競可能C PCR法 緬Zィ 、ヲツ謁ル &ツ 遺伝子レベルの検出が可能,高い特異性○ 実験機器が高価?(100Jj'FJJ以卜)○ 殖するどころか,逆に植物の生育にともなって,新たに成、Li.したミクロフ ローラにより,排除されることを示しているのです。但し,無菌的に育て たこれら植物の根圏に導入した場合は,いずれも、増殖が促進されます1)。し たがって,圃場において,ある植物の板圏で軟腐病菌が選択的に増殖する という現象には,植物と軟腐病菌に加え,土壌中のミクロフローラが深く 関与していることに注目する必要があります。 さて,軟腐病菌の検出に利用した蛍光抗体法は,塗抹法とミクロコロニー 法に分れます。前者は根圏試料をペクチン培地などで増菌培養を行います。 その培養を直接か,遠心器で集薗したものをカバーグラスに塗抹して標本 を作ります。後者は増菌培養を10 3-10 4に希釈し,その0.02mlをあらか じめ乾かしてある選択培地の平板上に滴FL, 30oCで6-8時間培養しま す。その上にカバーグラスをのせ,発生したミクロコロニーの印画標本を つくります。また,ハクサイ葉面上のミクロフローラに印画法を適用すれ ば,生態的な知見がえられます17)。蛍光抗体法は抗原抗体反応という特異件 の高い反応に基づくもので,これまでの方法では得難い高い選択性がえら

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38 れます。その反面,軟腐病菌でも血清型が異なれば検出できないという欠 点もあります。ミクロコロニー法を応用すれば,サンプル(0.02ml)中に 1個の軟腐病菌が存在すれば容易に検出できます。それ故,蛍光抗体法の検 出限界は,前処理でいかに軟腐病菌を増菌できるかにかかります17)。 4.おわりに これまで利用されてきた軟腐病菌の検出・定量法と,それによって明ら かになった生態的知見の概略を紹介しました。なおファージ法18)は次章で 詳述されますので省略します。ここでは,仮にバクテリオシン法19)として おきますが,この方法の利用も1つ考えられます。それは軟腐病菌の被検 試料を選択培地の平板上で培養しておき,バクテリオシン感受性の軟腐病 菌を指示菌として重層するのです。そして,形成されたプラークを計数し ます。組換え微生物の生態系におけるモニタリングについては,組換え体 と同時に組換え遺伝子の挙動についても追跡する必要があります。こうし た観点から,軟腐病菌のpectatelyase遺伝子の一部を利用したPCR法の 応用についで検討しています。 PCR法を含め,軟腐病菌の検出・定量法の 特徴などを表2にまとめてみました。 検出・定量法の真価が問われるのは,低密度で存在する試料を扱う場合 です。その際,被検試料に対し,つぎに示すようないくつかの処理を行う 必要があります。①分散, ②増菌, ③濃縮, ④計数化, ⑤確認。これ らの処理は検出だけでよいのか,定量も行うのか,と言った実験の目的や 利用する実験方法によっても,当然異なります。例えば,雨滴などでは最 初に遠沈して濃縮する必要がありましょうし,MPN法を採用すれば,計数 化と増菌とを同時に行うことになるでしょう。要は,実験の目的に合わせ て,いくつかの方法を組合わせ,それぞれの方法がもつ長所を生かすよう に工夫することが賢明です。

参考文献

1) T Kikumoto: Rep. Inst Agr. Res. Tohoku Univ., 31, 19 (1980).

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