ア メ リ カ 議 会 の 戦 争 権 限
( 四
)
富 井 幸 雄
蠢 は じ め に 蠡 戦 争 権 限の 議 論 の 枠組 1 憲 法 の条 文 の 構 造と 問 題 の 所 在 2
ProCon
とProExe
3 大 統 領と 議 会 の 協働 蠱 戦 争 権 限の 憲 法 問 題― 文 言 と 歴 史・ 運 用 1
ProExe
か らみ た 論 点 整理:Yoo
の 議 論 2
ProCon
か ら みた 論 点 整 理:Stromseth
の 議 論( 以 上 本 誌五 一 巻 一 号) 3 戦 争 権限 の 憲 法 解釈 の 理 論 的 総括 蠶 議 会 の 関与 の 歴 史 的 展開:
戦 争 権限 法 制 定 前ま で 1 朝 鮮 戦争 以 前
( 以上 本 誌 五 一 巻二 号
) 2 宣 戦 の実 際
3 朝 鮮 戦 争か ら 戦 争 権 限法 へ 蠹 戦 争 権 限 法 1 戦 争 権 限法 の 内 容 2 戦 争 権 限法 の 意 義 と 問題 3 戦 争 権 限法 の 運 用 4 戦 争 権 限法 の 効 果
( 以上 本 誌 五 二巻 一 号
) 蠧 集 団 安 全 保障 と 戦 争 権 限( 以 下 本 号) 1 国 際 連 合憲 章 と 戦 争 権限 2 条 約 の 履行 と し て の 戦争 権 限 3 湾 岸 戦 争 4 国 連 参 加法 と 戦 争 権 限法 へ の イ ンプ リ ケ ー ショ ン 5 ク リ ン トン の 戦 争 6 議 会 の 宣戦 は ど こ へ いっ た の か ア メ リ カ 議 会 の 戦 争 権 限
( 四
)
(都 法 五 十 二
―
二
) 六 三
蠧
集団安全保障と戦争権限
1国際連合憲章と戦争権限
︵1︶集団安全保障体制と国連参加法
冷 戦 崩 壊 後、 ア メ リ カ の対 外 的 武 力行 使 は
、 なん ら か の 多 国籍 の 枠 組 でな さ れ る よ うに な り
、 ここ に 戦 争 権限 の 新た な 局 面 を呈 す る に 至 る
( 294)
。 冷 戦 が 崩壊 す る と
、国 際 秩 序 の 維持 と か 国 際紛 争 の 解 決 とい っ た 集 団安 全 保 障 体制 の 下で
、 ア メ リカ は 多 国 籍 の軍 事 活 動 の中 で の 武 力を 使 用 す る
。こ れ は 憲 法の 想 定 し た 戦争 で は な い。 戦 争 概 念の 変 容は
、 誰 が そう し た 戦 争 を始 め る こ とが で き る のか と い っ た
、憲 法 制 定 の時 か ら 存 在 する 古 典 的 問題 を 再 提 起す る こと と な る
。 ア メ リ カ のこ う し た 軍 事活 動 に は 外交 保 守 の 伝統 か ら 慎 重 な面 が あ る
。第 一 次 世 界 大戦 後
、 ア メリ カ の 大 統 領ウ イル ソ ン が 提唱 し た に も かか わ ら ず
、議 会 は 国 際 連盟 へ の 加 盟に 反 対 し
、結 局
、 ソ ビ エト 連 邦 と もど も こ れ に 参加 する こ と は なか っ た
。 ア メリ カ 議 会 でひ っ か か っ た の は 国 際 連 盟 規 約 一
〇 条 で あ る
。「 連 盟 国 は
、 連 盟 各 国 の 領 土 保全 及 現 在 の政 治 的 独 立 を尊 重 し
、 且外 部 の 侵 略 に対 し て 之 を擁 護 す る こと を 約 す
。 右侵 略 の 場 合又 は 其 の 脅 威若 は危 険 あ る 場合 に 於 て は
、連 盟 理 事 会は
、 本 条 の 義務 を 履 行 すべ き 手 段 を具 申 す べ し
」と 規 定 す る同 条 を し て
、自 国と 利 害 関 係の な い 紛 争 にア メ リ カ が軍 隊 を 送 る はめ に な る ので は な い か、 と の モ ン ロー 主 義 的 懸念 か ら
、 ま た憲 法上 議 会 が 宣戦 の 権 限 を 持っ て い る ので あ る か ら
、議 会 の 同 意な く し て ア メリ カ 軍 を 武力 行 使 で 海外 派 兵 す る こと
六 四
はで き な い との 憲 法 原 理か ら
、 疑 問 とさ れ た295()
。 条件 付 き の 承 認案 が 出 さ れる も
、 可 決 され る こ と はな か っ た
。国 際 的な 組 織 が 創設 さ れ て も
、軍 事 力 使 用に は 憲 法 の 原 理 や 手 続 に こ だ わ る こ と を 見 せ つ け た の で あ る
。「 一 九 一 九 年 では
、 侵 略 に対 す る 協 同行 動 に 合 衆 国が 参 加 す るよ う 連 盟 理 事会
(LeagueCouncil
)が 勧 告 し た とき で さ え
、大 統 領で は な く 議会 が 各 事 例に ア メ リ カ 軍を 使 用 す る権 限 を 持 つ べき だ と さ れて い た こ と は明 ら か で あっ た296()
」。 集 団 安 全 保障 体 制 で の武 力 行 使 に アメ リ カ は
、国 際 連 合
( 国連
) へ の 参加
、 法 的 に はそ の 国 連 憲章
(UnitedNa-
tionsCharter.
以 下
「 憲 章」
) を 批 准 する と き に 腹を く く る こ とに な る
。 憲章 は
、 こ れ まで の 国 家 の武 力 行 使 の根 拠 とし て 自 衛 権( 五 一 条
) に加 え て
、 集団 保 障 体 制の 枠 で 国 連 の授 権 に よ るこ と を 認 め た
( 297)
。 憲 章 は かつ て の 国 際連 盟 規約 で の 軍 事的 制 裁 措 置の 実 効 性 を 高め る べ く
、国 連 安 全 保 障理 事 会(UnitedNationsSecurityCouncil
(UNSC
)) の権 限 を 強 化 し
、 軍 事 的 制 裁 措 置 の 決 議 に 法 的 効 力 を 認 め る 仕 組 み を と っ た
。UNSC
は、
「 平 和 に 対 す る 脅 威、 平 和の 破 壊 又 は侵 略 行 為 の 存在 を 決 定 し、 並 び に 国際 の 平 和 及 び安 全 を 維 持し 回 復 す る ため に
、 勧 告を
」 す る
(三 九 条)
。 ま た
、 この 勧 告 を 実施 す る た めに 兵 力 の 使 用を 伴 わ な い非 軍 事 的 措 置を 決 め る こと が で き る( 四 一 条
)。 そ れ では 不 十 分 とUNSC
が 認 めた
、 も し くは 不 十 分 で ある こ と が 判 明 し た と き に は、
「 国 際 の 平 和 及 び 安 全 の 維 持 又 は 回復 に 必 要 な空 軍
、 海 軍 又は 陸 軍 の 行動 を と る こと が で き る
。こ の 行 動 は、 国 際 連 合 加盟 国 の 空 軍、 海 軍 又 は陸 軍 によ る 示 威
、封 鎖 そ の 他 の行 動 を 含 むこ と が で きる
」( 四 二 条)
。 非 軍 事 措 置を 軍 事 措 置 に先 行 さ せ る必 要 は な く、 ど の 措 置 をと る か はUNSC
の 裁 量 であ る
。国 連 加盟 国 は
、UNSC の決 定 を 受 諾し 履 行 す るこ と に 同 意 する も の と さ れ る
(二 五 条)
。 四 二 条 の 軍 事 的 措 置 は
、 国 連 と 加 盟 国 と の 間 に 締結 さ れ る 特別 協 定 に よ って 加 盟 国 が供 出 す る 軍 か ら 国 連 軍 が 形 成 さ れ る こ と で 始 ま る( 四 三 条 一 項)
。 特 別 協 定 が 締 結 さ れ た こ と は な い が298()
、 湾 岸 戦 争 時
、 多 国 籍 軍 を 授 権 す るUNSC
決 議 六 七 八
( 一 九 九
〇 年) は 憲 章 七 章 の み ア メ リ カ 議 会 の 戦 争 権 限
( 四
)
(都 法 五 十 二
―
二
) 六 五
に言 及 し て いる の で
、 それ が な く て も四 二 条 の 措置 が で き る とも さ れ る
。 四 二 条 の 措置 が 決 議 さ れれ ば
、 ア メリ カ は こ れを 順 守 す る 国際 法 上 の 義務 を 負 う
。 軍事 力 行 使 が伴 う こ と に憲 法 上の 戦 争 権 限が か ぶ さ っ てく る の か が 問 題 と な る
。 兵 力 供 出 の 特 別 協 定( 憲 章 四 三 条
) は
、「 署 名 国 に よ っ て 各 自 の憲 法 上 の 手続 に 従 っ て 批准 さ れ な けれ ば な ら ない
」( 同 条 三項
)。 憲 章 に自 力 執 行 力が あ る わ け では な い か ら、 国 連参 加 法(UnitedNationsParticipationAct
(UNPA
)) を 制 定 す る 必要 が あ っ た。 そ の 六 条 は、 国 連 と の協 定 は「 財 政支 出 法 も しく は 合 同 決 議に よ っ て 議会 の 承 認 に服 す る
」 と する
。 国 連 にい か な る 規 模( 人 員 や 装備
) の ア メリ カ 軍を 供 出 す るか は
、 議 会 が決 め る の であ る
。UNPA
制 定 時、 議 会 は
、国 連 の 軍 事 行動 に は 議 会の 承 認 が 必 要 と 認 識 し て お り
、大 統 領 が 単 独 でUNSC
の 授 権 の み で 武 力 行 使 は で き な い と 解 し て い た 節 は あ ろ う
。 朝 鮮 戦 争 で は、 ト ルー マ ン は 議会 に 諮 る こ とな く 単 独 で武 力 行 使 をし た の で
、 国連 軍 で の 武力 行 使 に 議 会の 承 認 が 必要 か は 先 例も な く定 か で は ない
。 一 九 九 一 年の 湾 岸 戦 争 時で も 多 国 籍軍 へ の 軍 事参 加 は 国 連 憲章 四 三 条 を適 用 し て お らず
、 実 務 的に は こ の 論点 は 薄れ て い っ た。 一 方
、 多 国籍 軍 は 集 団安 全 保 障 の一 つ の 方 式 とな り
、 そ の憲 章 上 の 根 拠は 四 二 条 とか 四 三 条 で はな く、 包 括 的 に七 章 と さ れ る。 憲 章 と 戦争 権 限 と い う問 題 設 定 では な く
、 国連 の 授 権 や 決議 に 基 づ く集 団 安 全 保 障で のア メ リ カ の武 力 行 使 にWPR
( 戦 争 権 限 法
) は ど う か か わ っ て く る か が 問 題 と さ れ る よ う に な る299()
。 冷 戦 崩 壊 後
、 九〇 年 の 湾 岸危 機 に 始 まり
、 ソ マ リ ア、 ユ ー ゴ
・ボ ス ニ ア
、 ハイ チ な ど
、九
〇 年 代 ア メリ カ の 武 力行 使 は
、 国連 の 枠の 中 で な され300()
、 戦 争 権限 がUNPA
とWPR
、 そ し て 憲 法 の 三 つ 巴 の 関 係 で 論 じ ら れ る こ と と な る
。 国 連 の 平 和 維 持 活 動
(PKO
) あ る い は そ の 他 の 国 連 主 導 の 行 動
(U.N.−sponsoredactions
) に 議 会 は ど う 関 わ る の か と い う 新 た な問 題 で あ る。
六 六
UNSC
の 創 設 と そ の集 団 安 全 保障 体 制 は
、国 内 の 議 論 を要 せ ず し て、 特 定 の 状 況に 自 国 の 軍 隊 を 使 用 す る 権 限 が 大統 領 に 認 めら れ る の が 前提 で あ り
、国 家 の 執 行権 が そ の プ ロセ ス に 参 加す る 根 本 的 な決 定 は 国 際機 関 に よ って な され る も の だと の 見 方 が ある301()
。 こ の 枠で の 武 力 行使 の 決 定 は 合法 的 に 国 際機 関 に 委 ね たの で あ り
、国 家 と し て血 を 流さ せ る 決 断を 大 統 領 に 留保 さ せ た
。憲 章 は 国 家的 判 断 の み でな さ れ る 武力 行 使 を 自 衛権 に 極 限 する と と も に、 国 家の 武 力 行 使の 決 定 権 を 国家 が 独 占 する こ と か ら、 国 際 的 な 集団 安 全 保 障機 関 に 移 行 させ た と い うの で あ る302()
。
ProExe
と 目 さ れる タ ー ナ ーは
、 議 会 はUNPA
を 制 定 し、 上 院 は 憲 章 に 合 意 し た こ と で 国 連 の 枠 内 で の ア メ リ カ 軍 の 使 用 を 承 認 し た か ら
、 憲 章 の 枠 内 で 認 め ら れ るPKO
に も 集 団 安 全 保 障 に も
、 議 会 の 宣 戦 は 不 要 だ と い う
。
UNSC
の授 権 に 基 づ く強 制
( 軍 事) 行 動 に は、UNPA
審 議 で 上 院 に提 示 さ れ た、 議 会 の 承 認 の 条 項 を 盛 り 込 む 上 院
バートン・ウィーラー
議員BurtonWheeler
の 修 正 案 が、 ア メ リ カ の 義 務 と 大 統 領 の 確 立 し た 権 限 の 観 点 か ら あ っ け な く 否 決 さ れ た こ と を重 視 し て
、議 会 の 承 認 はUNPA
で も求 め ら れ な いと す る303()
。 憲 章 批 准 を認 め た 上 院も こ の よ う に考 え た よ うだ
。 上 院 外 交委 員 会
(SenateForeignRelationsCommittee
)は
、
「UNSC
の命 令 に 基 づ く
( 憲 章 四 三 条
) の 予 防 的 あ る い は 強 制 的 行 動 は
、戦 争 の 行 為 で は な く
、 戦 争 を 避 け る 目 的 の、 平 和 を 維持 す る た めの 国 際 行 動 であ る
。 し たが っ て
、 憲 章の 諸 規 定 は議 会 の 宣 戦 とい う 排 他 的権 限 に 影 響を 及 ぼす も の で はな い
」 と し てい る304()
。 そ して
、 憲 章 の 採 択 を 要 請 し て こ う 述 べ て い る
。「 ダ ン バ ー ト ン
・ オ ー ク ス 会 議 とサ ン フ ラ ンシ ス コ 会 議と ア メ リ カ 人民 と の
、 今や こ の 委 員 会に よ っ て 承認 さ れ た
、 目に 見 え る 一致 は
、 平 和と 安 全に 何 を な すべ き か の 相 当の 実 践 的 な基 盤 が 達 成さ れ た と の
、い つ で も 援用 で き る 最 良の 証 拠 を もた ら し た
。… 平 和維 持 の 国 際的 ア カ ウ ン タビ リ テ ィ の機 関 に わ れわ れ が 参 画 する と い う 問題 は
、 国 中
、そ し て 当 議会 で
、 わ れわ れ の 歴 史 上 こ れ ほ ど ま で 議 論 さ れ た こ と が な い く ら い
、 公 的 な 問 題 と し て 十 分 に 討 議 さ れ た
。 本 委 員 会 は 人 民 と ア メ リ カ 議 会 の 戦 争 権 限
( 四
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(都 法 五 十 二
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二
) 六 七