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i 米国における戦争権限と司法審査

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(1)

1 2

3

戦争権限と司法審査

C r

o c

k e

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  v .  

Re

ag

an

 

Sa

nc

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An

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Bu

sh

 

Ca

mp

be

ll

  v .  

C l

i n

t o

n  

1

政治的問題の法理と対外事項に対する司法の自制

2

政治部門問の紛争と機能主義的権力分立観

3

戦争権限決議の実効性と議会の責任

おわりに

ー戦争権限決議制定後の判例の動向—|_

米 国 に お け る 戦 争 権 限 と 司 法 審 査

五九

20-3•4-241 (香法2001)

(2)

問題の所在

戦争権限に関する歴史的論争

米国では憲法上大統領と連邦議会のどちらに戦争権限

( w

a r

p o

w e

r s

) が属するのかが議論の的となってきた︒一九七

三年議会は戦争権限決議

( W

a r

P o

w e

r s

  R e s

o l u t

i o n )

を成立させ︑大統領の軍事行動を制約しようとしたが︑大統領の

一方的武力行使は絶えず︑

するものである︒

米国憲法の第一編八節一 その都度その違憲性及び違法性を争う訴訟が提起されてきた︒本稿はこれらの訴訟を検討

で︑第二編二節一項︵最高司令官条項︶

(1 ) 

一項︵戦争宣言条項︶は議会に﹁戦争を宣言する

( d e c

l a r e

w a

r )

﹂権能を付与しつつ︑他方

は大統領は﹁連邦の陸軍及び海軍︑並びに現に連邦の任務に招集された州の

民兵の最高司令官

( C

o m

m a

n d

e r

i n  

C h i e

f ) ﹂であると規定する︒

米国憲法の起草過程においては︑当初議会は﹁戦争を行う

( m

a k

e w

a r

) ﹂権限を付与されていた︒これが現在の文言

に変更されたのは︑大統領に﹁突然の攻撃を撃退する

( r e p

e a l

s u

d d

e n

  a t t

a c k )

﹂すなわち緊急の場合に議会の承認を待

委ねるのが合理的であること︑ たずに即時に反撃することを認めること︑及び戦争を行う上での作戦上の事項については議会よりも大統領に決定を

という二つの考慮によるとされている︒

従って︑米国憲法上は戦争権限は議会と大統領によって共有されているということができる︒しかし︑戦争開始を

決定する究極の権限を議会に認めるのか大統領に認めるのかについては憲法制定後から議論の対象となってきた︒

方で︑原則として米国の軍事行動には﹁戦争宣言﹂に象徴される議会の授権がなくてはならず︑

その例外として大統

六〇

(3)

米 国 に お け る 戦 争 権 限 と 司 法 審 査 ( 湯 山 )

付与されており︑大統領は自衛など﹁戦争﹂にいたらない

I .  

︵国際法上宣戦布告を必要としない︶あらゆる武力行使を

(4 ) 

領単独の決定による軍の行使が認められるとも考えられるが︑他方で︑憲法が

﹁最高司令官﹂と指定したことの意義

を重視し大統領単独の決定による軍事行動を広範に認めれば︑原則と例外の関係は逆転する︒

一方の説は︑戦争宣︱︱︱口条項は戦争に関する一切の権限を議会が有していることを意味し︑あらゆる軍の使用は︑宣

戦布告なき戦争や戦争にいたらない武力行使︑情報機関による秘密の準軍事的活動のようなものも含めて︑議会の事

前の明示的かつフォーマルな授権︵戦争宣言︑制定法または決議の形式での︶なしにはなしえないというものである︒

一切の武力行使に授権が必要であることの根拠として挙げられるのが憲法第一編八節一

(6 ) 

及び復仇の特許状

( L e t t e r s

o f  

Ma rq ue n   a d  R e p r i s

a l

) を発する﹂と規定しており︑﹁戦争﹂にいたらない敵対行為や

私人が米国のために武力行使を行う場合でも議会の授権が必要であると制憲者は意図していたという︒

他方の説は︑大統領の戦争権限を広範に認める説である︒米国の戦争権限は﹁最高司令官﹂たる大統領に排他的に 独自の判断でなしうる︒議会の戦争宣言は軍への支出の承認と同様に大統領の戦争権限に対する議会のチェックの方

法でしかない︒すなわち︑武力行使が主権国家に対する攻撃戦争または全面戦争となる場合に限り戦争宣言の形によ

る議会の授権が必要とされるという︒

両説は司法の役割や制憲者の意思の解釈に関しても対立があり︑現代においては世界各地での米軍のプレゼンスや 集団安保体制へのコミットメント︑核兵器の発達を背景に︑軍事的決定の迅速性・秘密性の観点から大統領に戦争権 限を認める主張がなされる一方で︑軍事行動の民主的コントロールという観点から議会に戦争権限ありとする主張も

なされ︑議会にあるとする説が有力ではあるが決着を見ていない︒

( 1 0 )  

歴代の大統領は最高司令官条項やその他の憲法規定を根拠に議会の授権なしに軍事行動を行ってきた︒特に︑

L i n   , 

一項で︑同項は議会が

﹁私

20~3-4 243 (香法2001)

(4)

ベトナム戦争(‑九六四ー七五年︶

は論議を呼んだ︒

c o l n

は南北戦争(‑八六一ー六五年︶において議会の授権のないまま徴兵を行い南部との戦争を遂行した︒

F r a n k l i n R o o s e v e l

t 大統領も第二次世界大戦に先立ってグリーンランド︑アイスランドなどへの派兵を行った︒結局のところ︑

米国の対外軍事行動は二百回を越えるが︑議会の戦争宣言が行われたのは︑米英戦争(‑八︱ニー一五年︶︑米墨戦争

四五

年︶

︵一八四六ー四七年︶︑米西戦争(‑八九八年︶︑第一次世界大戦(‑九一七ー一九年︶︑第二次世界大戦︵一九四一ー

( 1 2 )  

の五回にとどまる︒大戦後も

T r u m a n

大統領は朝鮮戦争(‑九五

OI

五三年︶において議会の授権のないま

ま米軍を投入した︒

その

後は

︑ E i s e n h o w e r 政権の台湾決議︵一九五五年︶︑中東決議(‑九五七年︶︑

K e n n e d

y 政権のキューバ危機決議・

ベルリン決議(‑九六二年︶と︑主要な軍事行動において大統領は議会の承認または支持を求める態度をとったが︑

ベトナム戦争では

T o n k i n

湾決議(‑九六四年︶という議会の授権が存在し︑ゆえにベトナム戦争そのものは合憲で

あったという説もある︒少なくとも︑ベトナム戦争以前に議会の承認のないまま

K e n n e d

y 政権によって米軍の南ベト

ナム派遣が行われたこと︑前記決議のきっかけとなった

T o n k i n

湾事件が

J o h n s o

n 政権のフレームアップであったこ

となどの問題があった︒また︑

N i x o

n 大統領は︑秘密裡に実施したカンボジア爆撃(‑九六九ー七

0

年︶やカンボジ

ア侵攻(‑九七

0

年︶など一方的に戦争を拡大し︑議会による

T o n k i n

湾決議の廃止(‑九七一年︶後も最高司令官条

項を根拠にベトナム戦争を継続し︵特にパリ和平協定締結後も北爆を続行︶︑議会との間に深刻な対立を生じた︒そし

て議会では大統領によるほしいままの軍事行動を制約する方法が検討されるようになった︒

r. 

(5)

米 国 に お け る 戦 争 権 限 と 司 法 審 査 ( 湯 山 )

戦争権限決議の成立

一九七三年︑米国議会は︑本来議会が有するはずの戦争権限を自らの手に取り戻し対外事項の政策決定に関与する

ことを意図して︑

Ni xo

n大統領の拒否権発動を三分の二以上の多数の賛成で覆して﹁戦争権限決議﹂を成立させた︒

その概要は次のとおりである︒

① 決 議 の 目 的 と 政 策

││i決議の目的は︑制憲者の意図を実施し﹁敵対行為

( h o s t i l i t i e s

) または敵対行為への差し迫

った関与が情勢によって明確に示される状況

( s i t u a t i o n s w h e r e   i m m i n e n t   i n v o l v e m e n t   i n   h o s t i l i t i e s   i s   c l e a r l y   i n ‑

への米軍の投人に議会と大統領の﹁共同の決定﹂がなされることを確保するためで

ある︵二節切︶︒また︑決議制定の根拠は︑憲法が連邦政府︑

に必要かつ適切な法を制定する権限を付与する憲法第一編八節にある︵二節⑮︶︒そして︑米軍を敵対行為に投入する

大統領の最高司令官としての憲法上の権限は︑

m

戦争

宣言

5

特別の制定法による授権︑③米国︑その統治地域また

は米軍に対する攻撃による国家的緊急事態の場合に限られる

1

,

¢ー~i言

期的に議会と協議するものとする

J

,1

, 

I. 

その部局及び職員に付与したあらゆる権限を実施するの 議会との協議

│̲i

大統領は︑米軍を敵対行為またはその差し迫った状況に投入する場合は︑事前に及び事後定

軍の投入を必要とする情勢︑ d i

c a t e d   b

y  t h e   c i r c u m s t a n c e s )

︵ 三

節 ︶

議会への報告—ー大統領は、戦争宣言がある場合を除き、米軍を①敵対行為またはその差し迫った関与が情勢

によって明確に示される状況︑②戦闘の装備をして外国の領域︵訓練などの場合を除く︶

てすでに外国に所在する米軍の増強のために投入する場合には︑

⑮投入の憲法上及び法律上の根拠︑ にまたは③戦闘の装備をし

四八時間以内に下院議長及び上院臨時議長に︑

5

い敵対行為またはその関与の範囲及び期間の評価に

ついての報告を書面で提出するものとする︵四節切︶︒大統領はその後定期的に︵六か月以内に一度︶報告を提出する

︵二

節い

︶︒

20-3•4-245 (香法2001)

(6)

︵ 四

節 い

︶ ︒

④軍使用の終了期限ーー'四節⑧①に基づく報告が提出される日または提出が求められる日のうちいずれか早い日

の後六

0

日以内に︑議会が①戦争宣言もしくは軍の使用を特別に授権する法律の制定または②法律の制定によって六

0

日の期間を延長しない限り︑または③米国への武力攻撃の結果議会の会合が物理的に不可能である場合を除き︑大

統領は米軍の使用を終了するものとする︒ただし︑この六

0

日の期間は︑米軍の迅速な撤退のための避けがたい軍事

決議の解釈敵対行為またはその差し迫った状況に軍を投入する権限は︑

上の必要があると大統領が決定し議会に書面で通知した場合︑三

0

日を越えない範囲で延長される

③撤退︵撤収︶の指示ー五節⑮の規定にかかわらず︑米軍が戦争宣言または法律の授権なしに国外で敵対行為

に従事している場合には︑撤退を指示する議会の同意決議により大統領は軍を撤退させるものとする︵五節い︶︒

⑥優先手続ー五節⑯に規定する合同決議案または法律案の議事における優先手続︵六節︶︑及び五節いに規定す

る同意決議案の優先手続︵七節︶が規定されている︒

その規定が当該権限を特別に授権

しかつ本決議の意味内での特別の制定法による授権であるとの意図を明示しない限り︑既存のまたは将来制定される

歳出予算法の規定または条約から推論されてはならない︵八節い︶︒また︑本決議のどの規定も︑①大統領及び議会の

憲法上の権限を変更するものではなく︑②大統領に新たな権限を付与するものではない︵八節⑯︶︒

以上のような戦争権限決議の内容であるが︑現実の適用はほとんどなく︑実効性の疑わしい法律である︒運用上問

題になるのは︑事前協議︑報告︑六

0

日後の撤退などの規定は︑あらゆる軍の投入の場合に適用されるのか︑二節い

③の﹁国家的緊急事態﹂に限られるのか︑それともそれを越えて議会の戦争宣言または制定法による授権のない軍の

投入が想定され︑その場合にも適用されるのか不明確な点である︒また︑﹁敵対行為または敵対行為への差し迫った関

︵ 五

節 ⑯

︶ ︒

六四

(7)

米 国 に お け る 戦 争 権 限 と 司 法 審 査 ( 湯 山 )

歴代の大統領は最高司令官としての権限を制約するので違憲であるとの立場をとった︒特に︑決議の制定後も大統 領による軍の行使は何度も行われたが︑議会との事前協議は行われず︑決議四節い①に規定する議会への報告を大統

領が怠る︑あるいは﹁戦争権限決議に従って﹂﹁報告﹂は行うが決議四節①①に従ったものであることを明示しないこ

( 1 5 )  

とが多かった︒例外的事例として︑

Fo

rd

政権によるカンボジアに拿捕されたMayaguez号の救出作戦(‑九七五年︶

があるが︑事前協議はなく︑作戦終了後に決議四節印①に言及した報告が行われた︵ただし︑

みであった︶︒さらに︑報告の提出により五節⑮の六

0

日の期間満了による撤退規定が適用されるはずであるが︑報告

の提出のないまま軍事行動が六

0

日を越えることもあった︒

との﹁タンカー戦争﹂及び

NATO

によるユーゴスラビア空爆︶︒

決議成立後も大統領による武力行使は何度も行われ︑

立が表面化したが︑多くの場合︑議会は﹁敵対行為﹂に該当するか︑

終始し︑結局︑大統領との対立を避け何らの行動もとれないで終わった︒

議会が特別の法律による授権を行い︑軍事行動のプロセスに関与できたのはレバノン派兵と湾岸戦争の二度だけで

ある︵湾岸戦争については後述︶︒Reagan政権による平和維持目的でのレバノン駐留(‑九八ニー八四年︶において︑

大統領と議会の妥協の結果成立したレバノン多国籍軍決議︵合同決議︶

別の授権であることを明示し︑戦争権限決議四節①①が八三年八月二九日をもって作動したこと︑派兵の期間は当該

日より一八か月間とし︑六

0

日毎に大統領に報告を求めることを規定していた︒大統領は決議に署名したものの︑戦

︵例えば平和維持目的での駐留︶︒

﹁タンカー戦争﹂や湾岸危機では議会と大統領の間に深刻な対

︵例

えば

六五

いつの時点から六

0

日が起算されるかの議論に

は︑戦争権限決議に規定する制定法による特 イラン・イラク戦争時のペルシア湾でのイラン

与が情勢によって明確に示される状況﹂もあいまいな概念で︑米軍の海外派遣のたびにこれに該当するか議論がある

﹁留意する﹂と述べたの

20-3•4-247 (香法2001)

(8)

を仰ぐことが考えられよう︒

このような米国における戦争権限論争であるが︑解決するための方法として憲法及び法律に照らして裁判所の判断

( 2 5 )  

これまでも大統領の軍の使用について連邦最高裁が判断を下した判決があったが︑第二次大戦後特にベトナム戦争 に関して︑法廷闘争によって大統領の権限を争うことが顕著に見られるようになり︑連邦レベルの多数の下級審判決

例がある︒しかし︑最高裁のMora

v .  

M c

N a

m a

r a

,  

389 

U .

S .

  934 

(1 96 7)

(裁量上訴を拒否︶や  

A t

l e

e

v .  

R i

c h

a r

d s

o n

,  

3  争権限決議が違憲であること︑及び一八か月の期限に拘束されないことを表明した︒

( 1 8 )  

学説の中にも最高司令官としての大統領の権限を侵すがゆえに違憲であるとするものがある︒また︑

する六

0

日︵または九

0

︵ 二 節 い

③ の 緊 急 事 態 の 場 合 に 限 ら ず

︶ 認 め ら

( 1 9 )  

れるという主張があり︑他方︑大統領は議会の事前の授権のないまま六

0

日間軍を使用できると解されるがゆえに決

議は違憲であるという見解や︑六

0

日間の期間が適用されるのは二節い③の場合に限られ︑原則は憲法の戦争宣言条

( 2 0 )  

項及び戦争権限決議︵特に八節⑮②︶に従って議会の事前の授権が必要という見解もある︒

また︑法律の効力を持たない同意決議によって軍の撤退を指示する五節いの規定は︑議会が判断を留保し事後に法

律によらない形式で大統領を拘束する議会拒否権制度が憲法に違反するとした最高裁の

I•

N .

  S

.  

v .  

C h

a d

h a

,  

462 

( 2 2 ) ( 2 3 )  

s .  

919 

(1 98 3)

の先例に照らして違憲であるという説が有力である︒議会は戦争権限決議の議会拒否権に関する判断で

はないとして五節いを改正していない︒しかし︑

( 2 4 )  

律の審議の手続を規定した条文が追加された︒

戦争権限と司法審査 の期間は大統領による軍の使用が自由に

c::::: 

五節⑯に規定

一九八三年に五節いの場合に軍の撤退を指示する合同決議または法

六六

(9)

米 国 に お け る 戦 争 権 限 と 司 法 審 査 ( 湯 山 )

見られるようになった︒ 411 

U .  

S.

  911 

(1 97 3)

 (政治的問題とした原判決を理由を付さず是認︶に複数の裁判官が審理を行うべきであるとして反

カンボジア爆撃の合法性が争われた

H o l t z m a n

v .  

S c h l e s i n g e r ,  

414 

U . S .

  1316 

(1 97 3)

では︑地裁による

爆撃の差止命令を停止した控訴裁の命令を

D o u g l a

s 裁判官が取り消したのに対し︑

M a r s h a l l 裁判官が他の裁判官の同 意を得て再び停止を命令したことはあったものの︑結局︑最高裁はベトナム戦争の合憲性を判断しようとはしなかっ

一九七一二年に戦争権限決議が成立したことにより︑戦争権限をめぐる紛争は憲法の抽象的な文言の解釈論争

にと どま らず

合性だけでなく︑決議との適合性という間題も有することになる︒特に

R e a g a n

政権以降︑対外武力行使が増え︑他方

大統領と異なる政党が多数を占める議会も戦争権限を主張して軍事行動を自らのコントロール下に置こうとし︑連邦 議会の議員が決議に従わない大統領を相手取って出訴し裁判所の命令によって決議の遵守を強制しようとする事例が

本稿ではこのような戦争権限決議成立後に提起された裁判を検討の対象とし︑

対する司法権行使の態様から安全保障の問題に対する司法審査の方法及び戦争権限決議の問題点を明らかにしたい︒

本稿で取り上げる諸判決は具体的には中米紛争︑グレナダ侵攻︑

岸戦

争︑

コソボ紛争といった事件であり︑裁判の争点としては︑政治的問題︑訴えの成熟性︑原告適格︑

といった本案前の事件性に関わる問題が多い︵憲法の戦争権限条項や戦争権限決議の解釈を示した判決もある︶︒

そも国家の安全保障に関わる問題に裁判所が関与することが適切なのか︑政治的紛争の解決のフォーラムとして裁判

所が適切なのかという問題に︑裁判所はそれぞれの答えを示している︒

さ て

こ ︒

した ほか

六七

より明確な規則によって規律されるようになった︒大統領の一方的決定による軍事行動は憲法との適

それらの判決に見られる戦争権限に

イラン・イラク戦争︵ペルシア湾パトロール︶︑湾

ムートネス

そも

20~3-4 249 (香法 2001)

(10)

( 5 )  

( 4 )  

( 3 )  

( 2 )  

( 1 )  

El y,   s u p r a , n .   ,     2 6 ;  

M .  

J .   G le nn on ,  Th e  G ul f 

﹁突然﹂ということ 連邦議会が﹁戦争を宣言し︑私掠及び復仇の特許状を発し︑陸上及び海上での捕獲に関する規則を作成する﹂権限を有すると規定している︒また︑陸軍及び海軍の設置及び維持︑その統制及び規律に関する規則の制定︑民兵の︵連邦の任務への︶招集とその編成︑装備及び規律に関する規則の制定の権限も付与されている︵第一編八節︱ニー一六項︶︒

J•

H.   El y ,   WAR 

AN D R ES PO NS IB IL IT

Y  5 

( 1 9 9 3 ) .  

外国からの侵攻の場合大統領単独で戦争を行うことができるという例外は︑制憲者

意思

( M .

Fa rr an d,

THE  

RE CO RD S  O

F  T HE O C NV EN TI ON

  OF

1   78 7  1 68   ( r e v .   e d .   1 9 6 6 ) )

︑建芦国以宰太り慣g

3 (T he Pr iz e  C as es ,  67   U. S.   (2   Bl ac k)   6 3 5 ,   66 8  ( 1 8 6 2 ) )

El

yは憲法第一編一0節三項が州の軍事行動の権限について﹁いかなる州も︑議会の

同意なしに⁝⁝現実に侵略されまたは遅滞を許さないような差し迫った危険のある場合を除き戦争に従事してはならない﹂と規定

していることから︑大統領の戦争を遂行する権限についてもパラレルに考えられると主張する︒

El y, s u p r a ,   n . .   戦争権限条項の起  7

草過程については︑

C. A.   Lo fg re n,

W 

m

1

M

ki ng Un de r  t h e   C o n s t i t u t i o n :   T he

 0

2d lu

d

em

t

nd in g, 81 a  Y le  L .  

J.

6  

72   ( 1 9 7 2 ) .  

戦争権限を個人ないし単一の機関に独占させることは危険であるという認識があった︒

D' Am at oは︑﹁硬貨を鋳造する﹂﹁郵便局を設置する﹂といった議会の権限に関する他の憲法の規定に文言上の意味にとどまらず 実質的かつ完全な権限を読み込む最高裁の解釈方法を参照し︑﹁戦争を宣言する﹂も戦争を授権する完全な権能が議会に付与されていると論じる。A•

D' Am at o, N  I TE RN AT IO NA

L  LAW 

AN D P OL IT IC AL   RE AL IT Y  67   (1 9 9 5 ) .   ER

AL IS T,  n o . 9 ,   6 4  65   (e d

.   b

y  J .   Co ok e,  1 9 6 1 )

)また︑制憲者の一人

Ha mi lt on

する英国国王とは異なり︑﹁連合の筆頭の将軍及び提督として陸海軍の最高の指揮命令以上のものではない﹂と述べている

(T HE FE D'   C f .  

L .  

F i s h e r ,   PR ES ID EN TI AL   WAR 

PO WE

R  1 

( 1 9 9 5 ) .  

w

nd

t h e   C o n s t i t u t i o n ,   70   Fo

re ig n  A ff ai rs   84   (1 9 9 1 )

L .     ;  He nk in ,  FO RE IG N  AF FA IR S  O F  T HE N U IT ED   ST AT ES   CO NS TI TU TI ON   98   (2 nd   ed .   1 99 6)

;  F i s h e r ,   su pr a  n .   4 2 . ,    

i ( 7 4 )

am ic us b r i e f  

1

 

ただし︑例外の範囲については︑米国の領土に対する攻撃に限るのか否かで幅がある︒例えば︑

Tr ib

の防衛のための大統領単独の武力行使は合憲であるという。L• e は在外米国民の保護や同盟国 H.   Tr ib e,

 

AM ER IC AN  C ON ST IT UT IO NA L 

LAW 

65 9  (3 rd e   d .   2 0 0 0 ) ・   Fr an kも在外米国民の救出や国連憲章七章の下で授権された武力行使を挙げる︒

T.

M .   F

ra nk ,  Re th in ki ng W  ar

  Po

e r

s :

By Law 

or by 77 T

um at ur gi c In vo ca ti on

"

?, 8   3  A m.  J. 

I n t ' l .  

L .  

77 2 

(1989)•

El y

R争丁宣言条項の例外として

に力点を置いていたのであって︑米国領土の侵略の場合に限っていなかったのではないかという︒

六八

(11)

米 国 に お け る 戦 争 権 限 と 司 法 審 査 ( 湯 山 )

( 1 0 )  

( 9 )  

( 8 )  

( 7 )  

( 6 )  

六九

He

nk

in

は︑大統領の単独の武力行使が許される場合でも︑議会の事後の監督に服するという︒

一括して﹁復仇免状﹂と訳すこともある︒海上での私掠

( m

a r

q u

e ,

私拿捕または捕獲︶と陸上での︵私的︶復仇

( r e p

r i s a

l ) は︑私

人が本国の許可を得て外国またはその国民に対して行った自力救済である︵のちに国家による公的復仇へと転化した︶︒その概要に

ついては︑木村賓﹁﹁裁判拒否﹂概念の継承と機能転換﹂法律時報五五巻八号(‑九八三︶九八頁︒

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y は︑制憲者は宣戦布告なしに戦争が行われることも知っていたが戦争を行う決定として戦争宣言を観念したのであり︑復仇免

状や陸上及び海上での捕獲に関する規則も議会の授権を要するという憲法の規定振りから米国を代表して行われるすべての武力行

使が議会の授権を必要とするという︒

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は︑公的復仇によって戦争を開始した制憲時の英国

の実行を指摘する︒

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によれば︑大統領は国を防衛する資任を有し︑

国際法上宣戦布告を要求されない︑外国からの攻撃に対する自衛戦争︑海外に展開する米軍や在外自国民の保護︑その他の米国の安

全保障上の利益を保護するための武力行使︑国家以外の実体に対する敵対行為︵内戦への介入︶などは独自の判断で軍を投入できる

という︒また︑法律の執行者︵執行府の長

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として国際条約に規定された武力行使︵国連憲章七章下の強制行動や

安全保障条約に基づく同盟国の防衛︶もなしうる︒唯一制限されるのは他国に対する攻撃または侵略戦争の場合で︑議会の戦争宣言

なしに戦争をすることはできないという︒

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. 制出恵者音苗心に問やしては︑大紐芦唄制文りモデルとなった英国の国王大権︑特に戦争

宣言なしに戦争を遂行した実行が参照される︒

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(1 98

9)

したものとして︑会田弘継﹃戦争を始めるのは誰か湾岸戦争とアメリカ議会﹄(‑九九四︶︒

詳細は以下を参照︑宮脇客生﹃アメリカ合衆国大統領の戦争権限﹄(‑九八

0 )

︑山田康夫﹁アメリカ合衆国憲法における戦争権限﹂

﹃憲法の諸問題︵奥原唯弘教授還暦記念論文集第一巻︶﹄︵一九八九︶一九五頁︑間宮庄平﹁アメリカ合衆国大統領の戦争権限の統

20-3•4-251 (香法 2001)

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