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ア メ リ カ に お け る 製 造 物 責 任 の 法 的 構 成

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(1)アメリカにおける製造物責任の法的構成 ー特に不法行為法上の厳格責任を中心として!. 製造物責任における不法行為法上の厳格責任の形成過程. 一 序論 二 1 過 失. 三 過失責任法理および保証理論と不法行為法上の厳格責任法理の比較検討. 損害. 被害者の範囲. 3 責任主体. 2 欠 陥. 5. 4. 結. 語. −危険分散理論ならびに予防理論ー. 四 不法行為法上の厳格責任法理の根拠 五. アメリカにおける製造物責任の法的構成. 執. 行. 秀. 一八五. 幸.

(2) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 序 論. 一八六. 最近︑日本においても︑商品による事故や︑いわゆる欠陥商品の問題が注目を集めている︒そして︑一般には︑欠. 陥ある製品により消費者が蒙った身体または財産に対する損害につき︑製造者が負うべき責任を製造者責任ないし製. 造物責任と言い︑さらには生産物責任とも呼んでいる︒アメリカにおいては︑直接の買主ばかりでなく︑その家族︑. 使用人さらには第三者までも原告適格を有することが可能であり︑製造者ばかりでなく中間業者︑販売業者さらには. 小売業者まで訴訟当事者適格を有し︑被告たる地位に置かれる︒本稿においても︑製造物責任という場合︑右のよう. な広い範囲で考えることとする︒もっとも︑直接︑当事者の範囲が問題となっていない場合は典型的な事例によって 論議を進めていく︒. 大量生産と高度の技術革新の展開は︑消費者の商品に対する認識能力をもつ可能性を事実上奪い︑もっぽら生産者. ないしは販売者の情報に依存せざるをえない地位へと消費者を追いつめるにいたった︒ところが︑商品の生産は会社. 企業によって行なわれ︑商品の安全性も︑利潤追求のもとで考慮されるにすぎない︒他方︑多様かつ複雑なる商品の氾. 濫により消費者にとっては︑その危険性の判断が困難となり︑これらの商品を使用︑消費する際に生命健康を害され. る可能性が増大する︒その際︑商品によって被害を蒙った者が契約責任にもとづき製造者に対し損害賠償を請求しょ. うとしても︑当事者間にあっては直接の契約関係が存しないという点が訴訟上の救済の妨げとなっている︒また︑不. 法行為責任にもとづき製造者の責任を追及する場合にあっても︑過失を立証するために伝統的な考えでは︑多くの製.

(3) 造過程にまで立ち入らなければならないと考えられるので︑過失という要件は訴訟遂行上の障害となっている︒この. 一九二〇年代から三〇年代にかけて他の先進資本主義諸国に先駆けて︑消費財商品の大量生. ような事情は︑程度の違いはあるにせよ︑先進資本主者諸国においては︑ほぼ同じ事情にあると考えてよい︒ アメリカにおいては︑. 産による技術革新に成功し︑それによる過剰生産に直面した企業が高圧的マーケティングにょう販売市場の拡大に突. 進した︒これに対し︑消費者運動もすでに一九二〇年代から活発となった︒このような背景のもとにアメリカにおい ては早くから製造物責任が発展してきているのである︒. 現在︑アメリカにおける製造物責任は︑一般的には︑過失責任︵8西凝98鼠喜尊︶︑保証責任︵暴旨きξ冨匡ξ︶︑. 不法行為法上の厳格責任︵の鼠9冒喜昌日8昌︶のそれぞれの法理により追及されている︒過失︵8四凝88︶は一つ. の不法行為類型であり︑その成立要件を製造物責任に即して述べれば︑製品の使用を予見できるすべての者に対して︑. 製造者がその製品を安全にするための相当の注意義務を負っていたにもかかわらず︑それを怠ったために製品に欠陥. を生じさせ︑その欠陥により使用者︑消費者︑その他の第三者に損害を与えることである︒この過失責任にあって. は︑過失の立証が問題となる︒ところが︑保証責任にあっては過失の立証は不要である︒この保証責任には明示の. 保証︵︒巷§ω慧暴昌Sと黙示の保証︵冒讐亀毛霞き蔓︶とがあり︑黙示の保証にはさらに商品性の保証︵毛霞き蔓. 9幕容冨旨畳一尊︶と特定目的適性の保証︵壽塁昌蔓︒;9︒のω略︒冨冒三亀貰讐壱8︒︶とが存する︒ある製品につい. て製造者が明示した保証︑商品性についての保証または特定目的に適すという保証が製造者に存し︑消費者もしくは使. 一八七. 用者がそれを信頼した結果︑損害を蒙った場合には︑保証違反︵帥夏8畠9轟旨き蔓︶として︑その製造者の責任を アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(4) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 一八八. 追及できる︒この保証責任は契約責任として発展してきているため︑保証責任を追及するには契約関係︵噂ユ︿芽亀. 8葺8け︶の存在が必要である︒そこで︑過失も契約関係も不要とする不法行為法上の厳格責任が登場することとな るのである︒. の 我国においても︑製造物責任をどのような法的構成にすべきかが間題となっており︑現に無過失責任︵厳格責任︶ む も主張されている︒そして︑なんらかの方法で︑無過失責任化へ努力がなされており︑そのような傾向は︑フランス︑ の ドイッにおいても同様であるので︑今後もその傾向で努力がなされていくであろう︒その際︑当然無過失責任とする. 理論的根拠︑その意義︑その具体的適用範囲などが問題となるであろう︒そこで︑既に現実に用いられているアメリ. カの製造物責任における不法行為法上の厳格責任とはどのようなものかを考察することは︑日本において右のような ことを考える際にかなり参考となるであろう︒. まず︑不法行為法上の厳格責任はどのように形成されてきたのか︒また︑他の法理とどのような差異があるのか︒. もし︑あまり差異がないとしたら︑それは何故なのか︑その場合︑不法行為法上の厳格責任はいかなる意義をもっの. であろうか︒さらに︑不法行為法上の厳格責任の理論的根拠としてどのような主張がなされているのか︒特に︑日本. に紹介されており︑しかも︑製造物責任を無過失責任とする理論的根拠の一つとして採られている危険分散理論はま. ったく疑問の余地のない理論と考えられているのであろうか︒また︑危険分散理論にかわるべき理論は主張されてい. ないであろうか︒そして︑これらの理論は具体的適用範囲を決定する際にどの程度機能しているのであろうか︒本稿. ではこれらの点を考察することによって︑日本の製造物責任における無過失責任を考える際の参考としたい︒.

(5) 民8巴忠℃窪℃冨ロo富一参照︒. 刈︵這9︶を参照︒ ︶ 国oの巴段︸ギo身9ωピ壁げ臣梓ざお鴫>旨炉一・oooo 1 ︵ 2 椿寿夫﹁商品製造者の賠償責任﹂﹃法学セミナー﹄一九七〇年四月号に要領よくまとめられている︒ ︵ 助藤編﹃注釈民法⑲﹄一三四−五頁く加藤V︒椿寿夫﹁欠陥車と民事責任︵下︶﹂ジュリスト四三六号一四七頁以下︒ 3 ︵. @ の 加藤編・前掲書注③︑一三四−五頁︒ ︵. 二 製造物責任における不法行為法上の厳格責任の形成過程 ぶ. アメリカにおける製造物責任の歴史は製造者の責任をしだいに重くする歴史であった︒まず︑過失責任にもとづい. り て追及された︒しかし︑一九世紀初期の英米法にあっては︑譲ぎ冨吾o洋o目F白ユ騎犀事件︵一八四二︶により確立された む. 原則により︑過失責任を追及するためにも原告と被告間に直接の契約関係が必要とされていた︒この原則は当時の企業. 保護思想によるといわれている︒その後︑この原則に対する例外が確立され︑その例外の一つである﹁本質的に危険. な︵一浮R9ξ鼠凝R︒岳︶物品﹂の場合においては過失責任を間うために契約関係の存在は不要であるとする例外は︑ む 危険物の概念の拡大によって例外たる地位から原則たる地位へと移行していった︒すなわち︑匡8噂訂お8 切鼠鼻. 竃9自OP事件︵一九一六︶により﹁本質的に危険な物品﹂でなくとも︑﹁もし不完全に作られた場合には︑第三者. 一八九. に対して危険が生ずることが不可避であることが予見できる物品﹂についても製造者は責任を負うこととなった︒そ アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(6) アメリカにおける製造物責任の法的構成. ⑯ して︑この原則は︑ほとんどすべての州で採用されてきている︒. 一九〇. しかし︑依然として過失の立証が間題として残り︑後述する事実推定則︵32甥巴8三ε﹃︶や法律違反即過失自体の. 原則︵浮︒α8菖昌9≦o一畿o昌鼠ω鼻暮︒器器磯凝8︒︒需3①︶が用いられるようになるが︑これらとは別に︑この間題. を解決するために契約責任の一つであり過失を不要とする保証責任が︑製造物責任を追及するために利用されるにい. たる︒ところが︑保証責任にもとづいて製造物責任を追及する際に︑保証責任の要件としての契約関係の存在︑保証違. 反の通知義務︑さらに免責条項が問題とされるにいたるや︑裁判所はそれらを緩和ないし廃除していった︒すなわち︑. 一九世紀後半から二〇世紀にかけて︑直接の契約関係にある食物の売主に黙示の保証に似た厳格責任が課せられてい. た⑳ ︒二〇世紀に入り︑ジャーナリズムの活躍するところもあり︑食品の安全性が問題とされ︑食品製造者の責任が社. 会的政治的にク・ーズアップされ︑一九〇六年には連邦食料医薬品法︵↓冨頴8邑ぎ且彗ユ∪三頓︾3が制定され. た︒一九一二年に保守派の政治家が没落し︑国民は大企業から保護されなくてはならないという新しい考えをもった 圃 多くの政治家や判事が登場するにいたった︒ 一九二二年にワシントン州で食品製造者の厳格責任を追及するにつき製 側 造者と原告との間に契約関係は必要でないという判例が出され︑この原則は︑ほとんどの裁判所に受け入れられてい. った︒この原則の根拠として︑さまざまな理論が出されたが︑捺印証書が土地とともについてまわるのにならい︑保. 証は製造者から消費者に製品と相伴って行くという考えが出され︑以後︑ほとんどの事件がこの理論によった︒この. 契約関係を不要とする厳格責任は長い間︑食品に限られたが︑一︑九五四年に食品であることにはかわらないという理 図 由で動物用飼料にも拡大され︑直接身体に使用する製品︑さらには︑それ以外の製品にまで適用されていった︒一九.

(7) お 六〇年には画期的な判例である国自三凝ω窪<・国8目留箆冨08β冒ρ事件において︑契約関係を不要とする厳. 格責任は欠陥自動車にまでも適用され︑その適用領域をほとんどあらゆる製品にまで拡大するにいたった︒そして︑ この判決では︑免責条項も公序良俗違反を理由に無効とされたのであった︒. この=①言ぼ暢窪事件は依然として︑過失も契約関係も不要とする責任を黙示の保証と呼んだ︒しかし︑そのよ. うな責任はもはや︑契約法上の責任ではなく不法行為法上の責任ではないかと考えられよう︒まさに︑一九六三年. に出された08窪日窪<・網魯四ぎ名Rギ&琴宏冒Ω事件において︑裁判所は︑そのような立場をとった︒この. 事件では保証責任が問題となったのであるが︑裁判所は次のような判示をなした︒すなわち︑従来︑保証違反の名の. もとに製造物責任が認められてきたが︑これは売買法の保証理論を利用したにすぎず︑契約関係の放棄や免責条項の. 無効などにより︑その責任の本質は不法行為法上の厳格責任であることは明らかであり︑売買法の保証理論の要件で ㈲ ある通知は必要ないと︒この不法行為法上の厳格責任法理は︑その後︑多くの裁判所の支持を得︑さらに︑不法行為 法リステイメント︵ω︒8区︶四〇二条に明文上規定化されるにいたった︒. これまで︑考察してきたように︑製造物責任における不法行為法上の厳格責任は︑過失を要件としないという意味. では無過失責任であるが︑この法理は︑保証理論により製造物責任を追及する際に障害となった契約関係︑保証違反 の通知︑免責約款を廃除する機能を負わされた法理であるといえよう︒. 先に︑アメリカにおける製造物責任の歴史は︑製造者の責任をしゼいに重くする歴史であったと述べたが︑これ. 一九一. は︑また︑従来からある過失責任法理および保証理論にもとづいて製造物責任を追及する際︑障害となる要件を緩和 アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(8) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 一九二. ないし廃除する歴史であったといえよう︒そして︑これらの障害をほとんど廃除することに成功した法的構成が製造 物責任における不法行為法上の厳格責任であるといえよう︒. では︑この不法行為上の厳格責任は他の二つの法理とは全く異なる結論を導びく結果となりそうであるがはたして. そうであろうか︒この点を明らかにするために︑次に︑いくつかの点について不法行為法上の厳格責任の法理と他の 二つの法理を比較検討することとする︒. 一確O︶嵩卜o国肉●卜8一〇︼≦塵俸薯. 一〇〇︒. 渡辺編﹃市民社会と私法﹄七八ー八○頁︒広川浩二﹁製造者責任﹂民商法雑誌六四巻四号六〇八頁︑. 較法研究第一五号︑六四ー六八頁︒内田力蔵﹁物の製造者の責任・判例法の発展﹂﹃英米判例百選﹄二〇四i七頁︒有泉亨﹁生. ⑥ この点に関する研究は︑日本ですでに多く存在する︒小林規威﹁アメリカ法における物の製造者の消費者に対する責任﹂比 産物責任論序説﹂内田. ︵国図oゲ. 六四巻五号八 一 二 頁 ︒ の. 一五九−一六六頁参照︒. ⑧ ≦ぼ冨芒98B事件の経済的︑社会的背景および︑この判決が誤まって解釈されたことについて︑小林前掲注ω︑六四ー五 頁参照︒. q≦霧ダO認﹂ω㎝評ρ8ω︵一〇一ω︶︒. ギoののR︸↓ゲo︾ωの巴け仁℃8些oΩけ区o一︵ωけユ9=菩凶一凶な8島oO8霊ヨRy8國>■国﹃一一80り一一8︵一80︶・. ⑨ 小林・前掲六六八頁および矢崎光囲﹁判例法と法的推論﹂︵一九七一年法哲学年報︶ ハ⑳. ⑪HFg一一 零 ⑫一畠.暮一一 零 一 一 8. ⑬匡器o注︿ ≧ヨoξ俸Oo. ⑬ 以上については弓8の器5象唱轟口09一ρ暮=忌下二匡によった︒. ⑮認2●い器o︒﹂9>鵠α8︵一〇〇〇︶︒.

(9) 過. 失. 三. oユo oO凶bo刈O 一・男宮鉾①O刈︵一8ω︶︒. ︵一8①︶■. 過失責任法理および保証理論と不法行為法上の厳格責任法理の比較検討. ㎝OO帥一9卜oα㎝80. 0ミ℃︒b 句 O カ ギoωの05↓富評=o賄浮ΦΩけ区〇一︵o o鼠gご筈一一ヰ図8浮Φ08ωβB震︶qO寓﹇zz︒一●寄くお一矯o︒簿 O. 1. 保証責任および不法行為法上の厳格責任の場合には︑過失の立証を要しないことはいうまでもない︒反対に過失責. 任の場合には︑過失の立証が要求されるが︑この場合でも少なくとも前述した二つの原則の確立により厳格責任へ接. 近してきている︒その一つは事実推定則であり︑もう一つは法律違反即過失自体の原則である︒ ⑬ 事実推定則の要件は︑一般には次の三つであるといわれている︒第一は︑事件が誰かの過失がなけれび決して生じ. ない性質のものであること︑第二は︑その事件が被告の排他的支配内にあった物︑道具等によってひきおこされたこ. と︑第三には︑その事件が原告側の行為または助成によって生じたものではないこと︑である︒この原則をそのまま 四 製造物責任に適用する場合︑製造者はもはや欠陥製品を支配していないという点が問題となる︒そこで︑排他的支配. という要件を厳格に解するとすれば︑事実推定則は製造物責任には適用不可能ということになる︒そこで︑しばしば. 繰り返されている支配の排他性とは︑種々な情況を考慮すれば被告に責任ありとしなければならないということを内 凶 容的に表現したものであるにすぎないといわれている︒また︑事実推定則と他の証拠法上の原則との相異は明確に区. 一九三. 別できず︑しかも事実推定則が適用されている事件においても︑事実推定則を適用したことを明確に述べていないも アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(10) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 一九四. ⑳ のがあり︑ある事件がその原則を適用した事件であるかどうかを判断することは困難であるといわれている︒しかし︑. 事実推定則の適用事例であるかどうかは別として︑原告の損害を製造物の欠陥から生じ︑その欠陥は︑おそらく製造. 者がその製品を売り渡した時に存在し︑かつ︑販売の時点で製造者に過失がなければその欠陥は通常存在しない種類 幽 のものであることが証明された場合には︑過失は一応推定される︒ ㈲ この過失が一応推定される要件は︑厳格責任が認められる要件とほとんど同一である︒もっとも︑原告が上述した. 三つの要件を満たすような欠陥を証明しえたとしても︑過失がないとか︑被告は注意義務をはたしたと立証して︑製 ㈱ 造者に責任が負わされない場合がないわけではなかろう︒しかし︑欠陥を証明しえた場合にはほぼ過失が認められる. ので︑過失推定に関する実際上の問題は︑過失を推定する欠陥を推定するためにどのような証拠を必要とするかとい ㈲ う問題となり︑過失責任での立証の問題と厳格責任での立証の問題はほとんど同じであることになる︒. 多くの裁判所がなしたように︑制定法に違反して︑有害成分で汚染している食品または医薬品を販売することはそ. れ自体過失︵器凶凝88需﹃器︶であり︑有害成分を含んでいるということの認識とそれを作り出す際の過失または ㈲ それを発見する際の過失を立証することなく︑食品から生ずる損害に対して責任を追及することができる︒この場. 合︑実質的には︑厳格責任を課しているといってよいであろう︒また過失責任法理は注意義務の強化の側面からも厳 鋤 格責任へと接近する傾向にある︒もちろん︑個々の具体的事件における原告勝訴の確率からすれば過失の問題につい. ては︑保証理論︑不法行為法上の厳格責任法理が優れているであろうが︑過失責任が厳格責任へと接近する方向にあ ることは否定しえないと思われる︒.

(11) ︵ 浮oF一〇刈一︶・ ⑱︵●い︒勺男o︒︒・ o 男℃ピ>≦o岡↓o胃ψ曽. は異なる者によって製造された何種類もの部分品からなっていることがあり︑特定の欠陥について鑑定証拠が存在しない場合. o︶●さらに︑製品 ⑲民oo8P牢oo琴房口暮三ξー準099浮o竃餌ヨ鼠碧ε話︑ω2①笹蒔88お<>︒貯即o︿︒爲9①oo?oo一︵おOo. 9ωい宣げ筐蔓1℃8三〇ヨのりo旨巴巳ロ西ε勺89920笹蒔oロ8レOω毛●﹃ト. は︑たとえ過失による欠陥が存在するとされても︑その欠陥に責任のある者を特定する方法が全くないという点も問題となる Nρ自︵這9︶参照︒. ︵一げ箆︶が ︑ こ の 点 に つ い て は ︑ 囚 8 8 P 勺 8 α. ︾暮oBoび凶一〇ーピg︿一口磯閑ooα1肉oの甘鐙ピoρ三9円1お︾い幻Nユ一♪窃︵一〇〇一︶・. 20固●900①● 彗認一︒. ところで︑この事実推定則と同様の見地から︑目本においても一定の事情があれば︑過失があったとの一応の推定をして︑. ギoωωoき豊胃国口o富嵩. ⑳卜ZZO. ⑳. 9﹀不法行為コ一三頁︶に対し︑道田教授 反証のないかぎり製造者に責任を負わせていくべきであるという見解︵注釈民法︿1. は﹁一定の事情﹂とはどういう事情かについて民法学説はふれるところがないし︑また︑アメリカにおいて事実推定則の適用. 学論叢八六巻一号一一ー一二頁︶﹁民法学説は⁝⁝メーカーの過失を一応推定していくべきことを専ら強調する観さえ呈して. が多いことがその根拠としているが事実推定則の適用例は実際には多くはない︒︵道田信一郎﹁メーカー責任の推理﹂︵一︶法. いるが︑⁝⁝﹃一定の事情﹄および﹁事情に応じて﹂とはむしろ﹃一応充分な立証﹄があったときと解されるべきである︒﹂. ている︒︵同︿二﹀︿三V︿四V︿五﹀︿六V未完法学論叢八六巻二・三・六号︑八九巻一二一号︶ところで︑教授は︑過失. と結論される︒そして︑アメリカの欠陥自動車訴訟を中心に分析して﹁一応充分な立証﹂をより具体的に提示されようとされ. へと対象を拡. 大し︑論題の﹁メーカi責任の推理﹂がなされるにはどの程度の立証が行なわれればよいかという問題へと進んでいかれる︒. の推定の基準を問題にされながら︑過失責任に限らず︑保証違反と﹁無過失責任﹂︵不法行為法上の厳格責任︶. 保証違反と﹁無過失責任﹂の場合は︑過失の立証は不要であるにもかかわらず︑過失責任と同列に論じておられるということ. 一九五. は︑過失責任にあっても︑その程度は問題があるとしても︑欠陥が立証されればメーカーに責任を負わせるべきであると考え アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(12) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 一九六. かは別としても︑欠陥が立証されれば過失が一応推定されるとする原則を日本においても主張する︵遠藤・川井他編・民法. られておられるとしか思われない︒しかし︑このこと自体︑事実推定則を適用したと考えられないだろうか︒民法七〇九条に おいては︑たとえ欠陥が立証されたとしても過失が当然に推定されることにはならないのであるから︑事実推定則と呼ぶか否. ︵7︶二一七頁︶ことは充分な意味をもつと考える︒もっとも道田教授はこのことを当然の前提とされ︑さらに︑その欠陥はど の程度立証されればよいかを検討されているので︑右のような指摘によって研究価値を失なうものではあるまい︒ ⑳. ミ区oω鼠9↓o#=帥獣一一崎o胤寓き鼠8ε3ω一〇ωミ●﹃匂●伊O︵一8㎝︶・. 鱒 一阜暮漣ド 牢oωの05撃℃雷口90嵩り暮漣ド. ℃8α8富=ぎ=凶な国器aq℃8≦O一暮一80hの富葺8蔓ω富ロ母包ω. ㈲. 密寓一〇害●甲野国孚●一毯︵一§︶を参照︒. ㈲≦&ρ窪℃冨ロO冨睡一暮9詳しくは︑OOBヨ窪. 欠. 陥. の 民88P℃8α8富ピ壁げU躍蔓i︸8三〇B¢勺o旨巴巨ロoq8℃89亀20笹凶oq88這ω峯いいboρω?器︵一80︶参照︒. 2. 欠陥とは何か︒日本で製造物責任が論じられる場合︑欠陥とは何か︑それはどのように分類すべきかという論議. がなされている︒だが︑アメリカにおいて︑このような問題が議論されるようになったのはごく最近のことである 姻 と言われている︒それは︑次のような理由によると思われる︒すなわち︑過失責任では被告に帰責原因を求めれば. たり︑独立して製品自体に帰責原因を求める必要はないのに対し︑厳格責任にあっては︑もはや過失の立証は必要. とされないが︑製品によって損害を蒙ったということだけの証明では製造者に責任は課せられない︒原告がこの製造. 者の製品によって損害を蒙ったということの証明のほかに︑その製品がその販売の時点で法律上欠陥ありとみなされ 四 た場合にはじめて︑製造者は責任を追及される︒そこで︑製品の欠陥とは何であるかがこの問題の中心となってこざ.

(13) るをえない︒また︑初期の製造物責任訴訟にあっては︑食料品に異物が入っているような製造過程での欠陥のみが間. 題とされていたので︑特に︑法律上︑欠陥とは何かを問題とする必要もなかったという理由もあるであろう︒. 過失責任においては︑欠陥概念と過失との異同が問題となるが︑欠陥を設計上の欠陥と製造過程での欠陥とに分け. 一般的には生命︑身体︑財産に不相当に危険な. た場合︑設計上の欠陥の場合においては特にその異同が不明確となる︒そして︑この場合︑後述するように経済上の 損失のみが発生した場合には製造者に責任が課せられていないので︑ 製品の状態を過失訴訟での欠陥と呼んでよいように思われる︒. 保証責任︑不法行為法上の厳格責任にあっては︑過失をもはや要件としないので︑欠陥概念が重要な問題となる︒ そして︑不法行為法上の厳格責任の場合にあっては︑とりわけ重要な間題となる︒ 3①. 保証理論によれば︑製品には買主が売主を信頼している何らかの特定の目的に適する商品性︑および品質に関する. 何らかの信頼された表示または約束に合致する商品性が要求される︒保証で特に重要なものとして商品性についての. 保証違反があるQこの商品性については統一商法典二−三一四条二項に規定があるQその規定は︑商品性の意味を全 圃. 部列挙しているのではなく︑取引上の慣行もしくは判例法から生ずるその他のありうべき意味を認める余地を残して. いる︒そして︑要するに︑商品性とは﹁そのタイプの物品が使用される通常の目的への適性﹂︵ゆ言︒器鉾昏︒︒急冨蔓 幽 讐弓8窃算喜喜霊昌αq︒︒房碧︒房8︶である︒そこで︑保証理論における欠陥とは製品が通常の目的に適していな. 一九七. いということとなり︑必ずしも危険性にとらわれることなく︑後述するように︑経済上の損失のみが発生した場合に おいても︑この保証責任︵明示の保証︶にもとづき︑製造者に対し責任を追及しうる︒ アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(14) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 一九八. 保証責任にあっては︑製品が備えるように設定された基準に合致しない場合が欠陥であった︒不法行為法リステイ. トメソト︵ω︒8且︶四〇二A条は法律上の欠陥それ自体の基準を明確に︑直接的に規定した︒すなわち︑﹁利用者また. は消費者あるいはその財産に対して不合理なまでに危険な欠陥を有する︵冒帥号誉牙︒8且三8琶括器8畳昌αき・. 碧35︶物品を売った者は⁝⁝責任を負う︒﹂と規定されている︒しかし︑﹁消費者に不合理なまでに危険な欠陥﹂と いうにとどまり︑それ以上欠陥の具体的内容が述べられているわけではない︒. ところで︑不法行為法上の厳格責任における欠陥はその製品が合理的に安全であるか否かにより判断され︑その判 鮒. 図. 断は︑さらに︑その製品の危険性を知っていたとしたら︑はたしてそれを通常人︵§8髭幕Bき︶が市場に出すで. あろうかどうかの問題に還元できるとすれば︑欠陥存否の要件は過失責任と類似の要件となる︒また︑不法行為法上. の厳格責任の欠陥と保証責任の欠陥は︑経済上の損失が問題となる環疵を除けば︑先に述べたような構成上の違いが 的 あるにせよ︑基本的には共通する問題であると考えられているように思われる︒. これらのことは一体何を意味するのであろうか︒結局︑それは︑次のようなことを意味するのではあるまいか︒す. なわち︑製造過程での欠陥にもとづく訴においては︑過失責任によろうと厳格責任によろうとも︑製品が製造者の手. を離れるとき欠陥が存在したということを証明することが主要問題となる︒そして︑その際問題となっている製品の. 蝦疵が法律上の欠陥であるのか否かは︑それほど問題となることはないであろう︒そこで︑どの法理によっても欠陥. 概念に相異が生じないこととなる︒他方︑設計上の欠陥または指図上の欠陥にもとづく訴においては︑問題となって. いる製品が一般的安全設計基準に達しているか否か︑また︑一般的安全設計基準の線をどこで引くか︑さらに︑その.

(15) 製品の使用のための充分な指図や適切な警告はどの程度まで行なえばよいか︑そして︑実際の指図や警告はその基準. にまで達しているか否かという問題は過失責任による場合にあっては︑過失という要件の中で考えられているのに. 対し︑厳格責任による場合にあっても︑これらの問題をまったく捨象してしまうわけではなく︑欠陥概念の中で考え. ざるをえないがゆえに︑欠陥存否の要件と過失責任の要件は類似のものとならざるをえなくなるのではないであろう. か︒たとえば︑保証責任や不法行為法上の厳格責任におけるアレルギーに関する原則は︑過失責任においても基本的 岡 にはかわらないといわれているが︑それは︑アレルギーを発生させる製品の製造者にどのような場合に責任を課すべ. きか否かという前提問題それ自体は︑それを過失の要件の中で考えようとも︑欠陥という要件の中で考えようとも︑ それほど︑大きくかわりうるものではないからである︒. 経済上の損失のみをもたらすような毅疵も︑明示の保証にあっては欠陥として認められるということとなる︒不法. 行為法上の厳格責任にあっては損害が経済上の損失のみの場合にも責任を認めるべきか否かにつき対立があるので︑. 経済上の損失のみをもたらすような蝦疵も欠陥として認められるかどうかは︑その対立の結果いかんによることとな. る︒しかし︑これらの点を留保しておけば︑欠陥についての法的構成はそれぞれの法理により異なるにもかかわらず︑. 噌九九. N一z三>z>﹃ いωOドω8︵一〇爲︶ なお︑. どの法理によっても︑欠陥とは︑身体︑財産に不相当に危険な製品の状態ということができるのではなかろうか︒そ 働 一般的に消費者の期待を基準として決せられるべきであると考える︒ 自o≦08房αooの角勺3山仁9訂仁08げoぎ. 欠陥問題については︑次の論文を参照︒. U一〇犀RωoP頃﹃&8びご昏強蔓. して︑不相当に危険な状態であるか否かは︑. 幽. アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(16) 餌什お肌↓冨矯昌oぴ↓げo≦塁ω. 二〇〇. 昌畠蜜8巳oqのohOoh8寓くoり賊&8房. P︑︑Uoho9..冒些oギ0291↓訂Zo8馨昌守ω一ωho﹃寄o身9ω=ぎ一一容鴇旨↓o旨四民言ミ四賃目昌1︸ωoo. アメリカにおける製造物責任の法的構成 津08ヨ ↓団zz︒r幻oく●ω器︵一§︶嚇白区o 雲冒mロ90認. ロαU建鵯. ωoヨo国島oo該8の. 0℃8一凱民oo89℃8α8房=暮凶一凶ξ:ピ貯げ筐蔓薯陣昏o暮男 三け四昌α島o閑8忌器ヨ090脇 = 玄=蔓 一逞q●置ピ︒い男・80. きαω鼠9=呂凶=昌堕認↓閏zz・ピ.勾o︿︒8ω︵一8㎝︶旧国88Pギ98房=菩差昌1↓げ02暮自o帥bα国答o旨ohω耳一9. o蜜︵一§︶旧甘日oρ↓ぎq暮o矩僧民国融09ωohΩ磯醇o暮8 mU無8け 瞠↓実﹀の↑●幻oく︒o 8国艮o∈ユのoぽ菩一洋矯︸総O>=アr勾①く●一300︵一800︶.. 凶ギoωωR℃讐℃β8富嵩︸緯巽ド. 買﹄一六八−一九六頁および︑299↓げoOo口#8ε巴卜名090hOoロ置BR勺3器9δ目幻08口けU宰oδ℃日o旨言昏o. 前者を黙示の保証︑後者を明示の保証という︒これらについては︑R・ブラウカー道田﹃アメリカ商取引法と同本民商法工売 GO. ギ8ωR︸ピ帥零oh↓R件¢馨燈︵ω含8一8戯︶6 誘曾P霊冒餌ロo霊鱒oo を参照︒. 20笹凶oq窪oo斡ロαω貸一9↓o旨=ぎ出凶蔓ー象ζ8霞●い因o︿︒一ωUO︸. い帥ξ9ω巴8譲震旨暮8μ総鼠8霞■い︒国零●崔ωρ辰ω㌣一偉一︵一§︶を参照︒. o●. .OoBBo暮o. ㈱q.ρρ伽甲ω一↑Oo日ヨ099 ⑫q.O.ρ㎝㌣ω一. Oo日B8戸勺8q仁9ω口鎖三一一蔓ー問×冨ロω圃o房o略問冨q. 鈴毒&P霊℃ββo貯o認︾暮一㎝・. 90ぎ. 注①に掲げた論文を参照︒. 一ω課︵一§︶●. Gφ. Gり. 責任主体. ㈲累. 翰. 3. 過失責任にあっては︑ 部品メーカーには製造者と同様の注意義務が課せられている︒製造者は︑その最終製品の隠.

(17) れた欠陥を発見すべき合理的な注意を払う義務をもち︑通常他人が製造し︑製品に組みこまれる部品の欠陥を発見す 幽 べき努力をなさねばならないが︑逆に︑小売業者は︑一般にはそのような義務をもたない︒. しかし︑例外がいくつか存在する︒宣伝や自らのトレードマークを製品につけて︑ある製品の製造者として製品を. 市場に出した場合︑小売業者が製品の最終の組立てに助力している場合︑小売業者が中古品を売っている場合︑さら 鱒 には直接使用する製品の寄託者である場合である︒卸売業者やディーラーのような中間業者は小売業者と同様に扱か. われる︒中間業者は︑自らが知っている製品の欠陥によって生じた損害に対して責任があり︑通常︑欠陥をみつける. ため︑製品を検査する義務はないが︑現実には明らかに知っていないとしてもその製品に関し知るべきであった危険 鱒 を消費者に警告しなかったことに対し︑責任を課した判例が存する︒. 被害者と小売業者との間では製造者との場合よりも︑直接の契約関係が存在する場合が多いのであるから︑保証理 ㈹ 論は小売業者の責任を追及する場合に有力な手段となりうる︒現に︑少なくとも密閉された容器に入った製品につい ㈹ 一般的には小売業者の責任は保証理論にもとづいて認められている︒中間業 ては認めていない判例が若干存するが︑. 者に対しては︑契約関係がないとか︑欠陥を発見する能力がないとか︑さらには中間業者の技術や判断に対する信頼. が存在しないということを理由に中間業者に対する責任を否定しようとする判例も存するが︑ 一般的に責任を肯定す ㈹ る傾向にある︒国o自ぼ鵯9事件においてもデイーラーに対しても責任が課せられた︒むろん︑部品の組立て製造業 者および部品メーカーに対しては保証責任が課せられる︒. 二〇一. 不法行為法上の厳格責任の責任主体として︑典型的には部品の組立て製造業者を挙げることができる︒部品メ!カ アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(18) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 二〇二. ㈲ 1については︑判例は分かれる︒すなわち︑後述するようにOo匡げR閃 国o房ヨ霞ご雪毎B①旨08宕﹃蝕§事件 ㈲ 名ビ8竃990P事件では責任が課せられた︒リステイメントは小売業者および卸. では免責されたが︑ωロ毒鼠. 売業者に対しても不法行為法上の厳格責任を課しているが︑後述するようにこの点については争いがある︒. ところで︑裁判所が製造者に厳格責任を課す主要な理由は︑後述するように製造者が危険の分散に最も適格性を有. しているということである︒そうだとすれば︑製造者以上にその目的に適当な者がいれば︑その者に責任を課した方. が好ましいのではないかという問題が生じてくる︒Oo58お事件においては︑まさにこの点について多数意見と少. ヤ. ヤ. ヘ. や. ヤ. ヤ. ち. ヘ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. う. ヤ. ヤ. 数意見が対立した︒多数意見は︑不法行為法上の厳格責任を取ることを明らかにし︑部品製造業者である国o器日睾. が製造した高度計に欠陥があると考えられたにもかかわらず﹁完成された飛行機を市場に出す航空機製造業者に責任. を課すことによって乗客達は適切な保護がなされている﹂ので﹁少なくとも本件においては︑我々はこの原則を部品 ㈲ 製造者︵被告国︒房Bき︶に責任ありと判示するように拡張する必要はない﹂と述べている︒. これに対し︑少数意見は︑危険分散理論にもとづく厳格責任にあっては︑航空機製造業者よりもむしろ最も危険を ㈲ 容易に分散しうる航空会社が論理的には責任主体と考えるべきであると主張する︒もっとも︑この意見の論者は厳格 責任をとること自体に反対の立場をとっているのではあるが︒. このように︑誰が支配的地位にあるかということが厳密に考えられてくると︑はたして中間業者に厳格責任を課す 鰺 ことが︑社会的に望ましいのかという疑問が再び出てくる︒℃3詔Rは厳格責任を課す根拠のすべてがディーラーに. ついてもそのままあてはまるし︑また︑製造者が管轄をこえていたり︑被害者たる原告が︑製造者が誰であるかさえ.

(19) もわからない事件が多く存在すること︑ディ:ラーはかならずしも町の小さな小売店ではなく︑今日では︑ほとんど. の場合が他の州にもまたがる活動領域を有する企業であり︑製品を市場に出す主たる決定者であり︑製造者はその命 ㈹. 詩ダ男o旨寓990P事件の中で↓冨春霧判事は︑小売業者も欠陥品から生ずる損害の費用を負うべ. φ◎. 令にしたがう小規模の企業にすぎないことを理由に中間業者に対しても厳格責任を課すべきであるという︒また <きαRヨ. き総合的な製造・流通企業の一部であり︑場合によっては小売業者自身︑製品の安全性を保証する︒さらには︑小売. 業者に厳格責任を課することが被害者保護の強化となり︑小売業者と製造業者間にあっては継続する事業関係の過程 50 で︑彼らの間で︑そのような保護の諸経費を調整することがでぎるので不公正とはならないと主張する︒. このような立場に対して︑次のような批判がなされている︒中間業者が欠陥を発見する手段をもたない場合には特. に責任を中間業者に課すべきでないという︒さらに︑・ング・ア!ム法にょり︑小売業者の責任を課す判決がなされ. る必要性は減少したし︑販売業者に厳格責任を課す場合ですらも小売業者と小さな製造業者達の製品を販売する大企 6a 業とを区別すべきであるという︒. 部品の組立て製造業者はどの法理によっても責任主体となりえた︒部品メーカーは︑過失責任および保証責任では. 責任主体と認められた︒もっとも保証責任にあっては例外が存する︒不法行為法上の厳格責任においては対立してい. た︒小費業者︑卸売業者は︑過失責任では一般的には責任主体と認められていないが︑いくつかの例外が存した︒保. 証責任では一般的に責任主体として認められている︒不法行為法上の厳格責任では︑対立があった︒ある法理では責. 二〇三. 任主体と認められるにもかかわらず︑他の法理では責任主体として決して認められないということはなかった︒その アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(20) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 意味では各法理によりそれほど大きな差異は生じないともいえよう︒. 二〇四. ところで︑過失責任の場合︑責任主体は注意義務の存否で決せられ︑保証責任の場合︑被告が原告に対し問題とな. っている製品を保証しているか︑さらには買主のその者に対する信頼︑契約関係の存否などにより決せられる︒で. は︑不法行為法上の厳格責任は何により決せられるのか︒確かに︑欠陥の存在という要件はあるが︑この要件は中間. 業者を責任主体とすべきか否かについては充分に機能できない︒そこで︑過失責任や保証責任の場合に背後にあった. 政策的配慮が不法行為法上の厳格責任においては前面に出てこざるをえなくなった︒そして︑その中で危険分散理論. という考え方が出されている︒しかし︑その理論によった場合︑具体的にどのような結論が導びかれ︑はたしてその. 結論は妥当であるか否かは明らかとなっていない︒しかし︑何らかの責任集中が肯定されるとするならば︑その有力. な理論的根拠および判断基準となりうるであろう︒そして︑そのことは日本法においても同様であると思う︒. 一9魯一8bo︒. 一99一ωOO︒. 〇qoo占まO● 鮒 Ooヨ日o暮り鶏℃轟口08認緯一〇. ㈹. ㈹. 一〇け客国●的. oo一りo o㌣ω・. 認目い●Nα2ρ曽O客国.鱒ユ一〇〇N︵一〇臼︶●. 旨Z●ドいαおρお一客国Nユoo一℃隠ρZ・嘱●ψωO㎝旨︵一8ω︶︒. 一げ置●. ㈲ 冒日o即ギ099ω=昏自一蔓一鍵↓国×>のピ︒国o〜一〇鱒譜一︵一〇3︶● 幽 ℃3昭R℃警℃旨口o件o一P薗け=呂● 爾. ㈲ ㈹. 爾.

(21) ㈲ 一. 暮oo9. このことは保証責任の場合にも大いに争われた︒ 来栖三郎﹁小売商人の暇疵担保責任﹂﹃契約法大系辺﹄ 一八九−二五六頁. 参照︒. ㈹. .国α留9ωO一型Nα一①oo︵お窪︶●. o一〇・ ㈲ ℃8ののoびω仁℃轟ロo富一S葺o. ①一〇〇一. Pの信℃壁. 〇一〇一葺Oω?S. O一り●Nユ一〇〇〇矯一コード. 民oo8. ω. 60 ⑳. 被害者の範囲. 62. 4. 過失責任においては︑注意義務の客体は︑製品の予想される使用が行なわれる近くにいる者で︑かつその製品に欠. 陥がある場合︑危険にさらされると合理的に製造者が予見することのできるすべての者に対して︑したがって︑第三 鈴 者にまでも拡張されてきている︒すなわち︑予見可能性が過失責任における被害者の範囲の決定基準である︒. 保証責任においては︑製造者に責任を追及する場合︑契約関係理論が障害となった︒多くの州法は︑売主の家族お. よび世帯構成員に︑現実の買主に対する売主の保証の受益を認めてきたが︑ 一般には被害者たる原告の損害が不純食. 品または︑本来危険な製品の欠陥によって惹起された場合にのみ製造者の責任を認めてきた︒しかし︑統一商法典第. 二−三一八条によれば︑家族︑世帯構成員︑客人に対して売主の保証がおよび︑ほとんどあらゆる種類の欠陥製品に より惹起された損害にもとづく訴訟に適用されることとなった︒. 二〇五. ところで︑第二⊥三八条のコメント三によれば︑この規定は売王の保証の受益が本条に明らかに含まれない者に アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(22) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 二〇六. 対して与えられていた統一商法典施行以前の判例の適用および拡張の問題については中立であると述べている︒しか G4 し︑一般的には︑裁判所は本条の条文にとらわれて︑その適用範囲を拡張することを躊躇しているといわれている︒ ㈹ 買主の被用者については︑この責任をしだいに認める傾向にあるが︑第三者については︑さらに問題が残る︒だ 鱒 が︑保証責任は︑頃R8膏匡〜勾o巨躍8昌>﹃ヨの9目冨塁事件において第三者にまで拡張されたと言われてい. る︒裁判所は第三者にまでこの責任を拡張することを認める理由として︑単に︑・・シガン州ではずっと以前に契約関係. の要件を廃し︑最近の判例も第三者が問題となっているかぎりでは契約関係が存在しないという抗弁を廃したこと 6り を指摘し︑第三者と消費者または使用者を区別すべき論理的根拠がないことをいくつかの例をもって示した︒もっと 翰 も︑裁判所は︑保証の範囲の限界を決定することは国o目ぼ鵯9事件の裁判所がなしたように必要でないとした︒. また︑国8犀判事は︑第三者に損害賠償を認めるのは︑適合性に対する保証違反の基礎となる不法な行為に対し︑コ. モソ・ー上の救済を肯定する結果であり︑その適合性に対する保証は契約法上のものというよりむしろ法が課したも ㈲ のであると言うQ. この霊段8瀞往事件の後いくつかの裁判所は黙示の保証で第三者の請求を認めた︒そのいくつかは保証責任で認. めたといっても︑=R8富包事件においてそうであったように︑その認める根拠を不法行為法的原則に求めている︒. そして︑国R8瀞匡事件においては︑通知も不要としているので︑黙示の保証責任で第三者の訴を認容したといって. も︑それは︑もはや単なる形式上のものにすぎなく︑実質的には不法行為法によって認めたことになるのではないか. と考えられる︒もっとも︑純粋な保証責任で認めた判例もないわけではないが︑擬制的な理由をその根拠としなくて.

(23) ㎝ はならなくなっている︒. 不法行為法上の厳格責任においては︑原告は被告との間に契約関係がないという理由だけで損害賠償を認められな 6り. いということはない︒その保護の範囲は︑どのような欠陥製品の使用者︑消費者あるいは最終消費者の家族︑被用者. ︾ヨR8弩冒08目ω. にもおよぶ︒だが︑ここにおいても第三者が問題となった︒もっとも︑不法行為法上の厳格責任が認められれば︑第 62 三者の損害暗償は︑保証責任によるよりも認容されやすいことは確かである︒. 63. この不法行為法上の厳格責任にもとづき第三者の損害賠償を認めた最初の判例は︑田目oお<. 098轟け一9事件である︒裁判所は︑リステイメントおよび先例を引用し︑さらに︑次のような理由を挙げる︒すなわ. ち︑08窪ヨき事件が宣明せられた不法行為法上の厳格責任の冒窪o宕一一qの理論的根拠は︑第三者の事件にお. いても同様に適用される︒また︑不法行為法法上の厳格責任の法理は︑契約法上の契約関係理論に制限されないので. あるから︑製造者が予見しうる場合の少なくない第三者の損害につき︑その賠償請求を制限することは契約関係理論. の痕跡である︒また︑欠陥を検査しえず︑製品を選択しえぬ第三者は︑そのようなことができる消費者や使用者より ⑮参 も︑より厚く保護されるべきだと言う︒田ヨ08事件以後も第三者に対して不法行為法上の厳格責任によって損害賠 ㈹ 償を認めた判例がいくつか出ている︒. この不法行為法上の厳格責任を認める根拠として危険分散理論がとられるとすれば︑第三者を他の被害者と区別す 岡 る理由はなくなる︒また︑第三者は買主でないのであるから︑製品の選択や使用の際に注意を払うことは不可能であ. 二〇七. るし︑より安全な製品を作るよう製造者に圧力をかけることも不可能であるから︑後述する予防理論からしても第三 アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(24) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 二〇八. 勧 者に損害賠償を認める方向が支持される︒さらに︑これも後述するが︑経済効率からしても︑取引費用は第三者に対. しては︑はなはだ高価であるので︑使用者や消費者に対しての法律上の取り扱いがどうであれ︑第三者に対しては厳 働 格責任による損害賠償を認めるべきであるという︒. 以上のごとく︑どの法理をとろうとも︑その構成は異なるにせよ実質的な被害者の範囲においては大きな差異は存. しない︒しかし︑実際の裁判で︑保証責任にもとづいて︑被用者また第三者が保護される確実性からすれば︑他の二. つの法理にもとづく場合よりもその確実性は薄いといえるであろう︒過失責任においては予見可能性が︑また︑保証. 責任にあっては保証の範囲ーその際︑契約関係理論が大きな問題となったーが被害者の範囲を決する基準となっ. た︒不法行為法上の厳格責任にあっては︑ここにおいても政策的配慮が前面に出ざるをえなかった︒危険分散理論お. よび危険抑制理論は︑第三者の損害賠償を認める立場を支持しているように思われるが︑第三者の損害賠償のすべて. 20けPω仁胃 口o什oωP讐一障刈.. 閃oω富件oヨ①旨o略↓o旨ω︵国昌ユ︶㎝o o㎝り︾℃﹃oω8きω躍胃 ロ90一〇 〇︸讐8卜o−oo.. を認めるのか︑何らかの制限をしていくのか︑その場合︑危険分散理論および予防理論によるのか︑それとも予見可 69 能性を再びもちだすのかについては︑いまだ明確な判断は示されていない︒. 鰯 6ゆ. oO. 群釦コN山認︾零o. oo. 謡蜜8国oo9一ωω客譲■NF旨O︵一8q︶.. 鱒 たとえばぎ目8︿︒↓塁一9譲凶器Oo■﹂鼠評・ミ紳一8>﹄α﹂Ooo︵一裟︶.. 6力. ㈹. ω唇ワ 鈴 たとえば︑U醇昌一く︒閃O鼠寓9909匙Oω︒≦﹄匹80︵↓震一80︶訪凶一一ω︿●冨器8蔓・寄渥窃O戸冒︒﹄8男.

(25) ㈹. ミ①. ㊨①. ︵2・q一区一80︶.. 且注o厚雪き自︒﹃総. >ω什且鴇凶昌OoBB8富名Ug︒§ぎ凶ω3一ωo︒q・O霞ダ寄︿.. 寄お58ぎp︵NOo ︒コω唇㌘ミ①︹2●q一且一80︺︶20貫ω霞凶9準o身9のい凶ぎ一一坤蔓. ︸ω后超8富①O帥け窪ρ. 軍oのωoきの巷鍔口90嵩曽梓oo一璽 Ooヨ目o旨. 固象9. ω一一一ω. 固一認占ω 9. ω鼠gギ03gの=3ま蔓ε島︒謬器且震. Oo﹇o罫い即o〜O一ρ8μ︵這密︶参照︒. 62. 6D. 鱒 固一〇〇ω︒ 一ぴす. 6ゆ. ㈹. 旨ω︵鱒鼠︶㎝お鱒>8B日〇二.. の后醤8酔oOO即け①謡ロg①旨ふo︒q8けo一簿●. 898一占認︵一〇謡︶︒. ㈹O︒日目①暮. 6り. 刈OO巴●謹宅o ︒矯a一型程o︒継℃胡O巴・国℃ヰO鵠︵一80︶・. 鱒Ooヨ目8. 69. 5 損害の種類 ⑳. ⑳. 竃8︸げRの9事件の法原則は財産に対する損害にも拡大されているが︑大多数の判例は︑過失を理由としては︑ ウ2. 経済上の損失に対する賠償責任を認めていない︒その理由としては︑﹁経済的諸利益は単なる過失に対しては保護さ. れない﹂という法原則があげられている︒また︑製造者に︑経済上の損失のみをもたらすような欠陥を回避する一般. 二〇九. 的注意義務を課すことは︑当事者間を﹁保証﹂により伝統的に規律している法分野を侵害することになるであろう アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(26) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 一二〇. し︑仲介業者との契約内容となっている損害賠償の制限を避けることを買主からさらに買受けた者に︵窪9∈魯88 ㈲ 対して認めるこ と に な る と 言 わ れ て い る ︒. 製造者は︑その製品が表示された機能を有しないことから生ずる身体上の傷害に対して︑その表示を信頼する買主. に責任を負う︒財産上の損害に対してもこの明示の保証が認められている︒現在では経済上の損失のみが生じた場合 の でも容易にこの明示の保証が適用される︒. 直接の取引関係の当事者間の品質に関しては︑コモン・・!により動産売買の合理的な商業上の履行を保証するため ㈲ に早くから黙示の保証が存在するとされていた︒この黙示の保証は︑最初︑売買の直接の当事者に限られていたが︑. まず初めに欠陥ある食品による身体に対する損害︑さらには食品以外の製品による身体に対する損害にも拡大されて ⑯ きた︒そして︑現在では﹁身体に対する損害と財産に対する損害の二つを区別すべき正当な理由はない﹂という理由. で︑中間の介在者をはさんだ当事者間にあっても︑財産に対する損害賠償が黙示の保証を理由に認められてきてい. る︒ところが︑製品が身体や財産に損害をもたらさない場合には︑欠陥のある製品の製造者に対しては︑黙示の保証 ⑳ を理由とする経済上の損失に対する損害賠償はほとんど認められていない︒. に対して合理的な適合性に関する黙示の保証違反を理由に直接訴訟を維. 不法行為法上の厳格責任については︑身体に対する損害が初めに認められ︑現在では財産に対する損害にっいても ㈲ これが認められている︒経済上の損失については︑留旨9︿の︾﹃冨囚胃お冨霧一き事件とωoo蔓 譲匡富竃9a 四 〇P事件で対立がみられる︒すなわち︑民貰詔ぽ臣凶き事件では裁判所は︑﹁原告は欠陥あるじゅうたんの最終の買 主として︑被告製造者たる国貰品冨霧一き.

(27) 持することができる︒⁝⁝また彼らの間に契約関係はかならずしも必要ではないし︑このような訴は原告の損害がじ 8① ゆんたんの価値の損失に限られていたとしてもこれを提起することができる︒﹂と判示し︑さらに︑黙示の保証では なく不法行為法上の厳格責任によってこれを理由づけるべきであることを主張する︒. ωoo帯事件では︑裁判所は明示の保証によって経済上の損失に対する損害賠償は認められるとし︑さらに傍論とし. て︑経済上の損失が不法行為法上の厳格責任によって認められるべきか否かについて論及する︒多数意見は︑次のよ. うな理由でこれを否定する︒すなわち︑もし不法行為法上の厳格責任を課すことになれば︑﹁製造者は︑予見しない. 無制限な範囲の損害に対して責任を負うことになる︒﹂また︑﹁不法行為法は︑統一売買法または統一商法典の保証規. 定の根底を危うくするものとして作られなかったのであり︑むしろ身体に対する損害の明確な間題を扱かうように作. られた﹂のであって︑保証の諸原則は身体上の損害に対する合理的な賠償を妨げるとしても︑保証は商業上において 鋤 は充分に機能すると述べる︒. これに反して︑男9R判事は︑多数意見のように明示の保証により経済上の損失に対する損害賠償を認めるべきで. はなく︑不法行為法上の厳格責任によるべきだとする︒そして︑﹁重要なのは損害賠償の種類ではなく︑売買契約に. 両当事者が果す相対的役割であり︑身体に対する損害とともに経済上の損失が生じた場合︑経済上の損失に対する賠. 二一一. 償が認められるのに対し︑本件では身体に対する損害が生じていないで︑経済上の損失のみが発生した場合に賠償を 圃 認めないのはバランスを失する﹂と述べる︒また︑彼によれば︑不法行為法上の厳格責任の根拠として危険分散理論 鈴 をとるとすれば︑身体傷害に対する損害と他の種類の損害とを区別する理由はないと主張する︒もっとも︑これに対 アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(28) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 6φ. 二一二. し︑危険分散の考え方によっても︑身体に対する損害よりも︑経済上の損失の場合に︑責任保険をかけることが困難. であるという批判がなされている︒しかし︑製品の価格を引き上げることにょり結果的に危険を分散することができ ることを考慮すれば︑決定的な批判とはなりえないと思われる︒. それでは︑不法行為法上の厳格責任において経済上の損失は︑はたしてなにを根拠として認めるべきであろうか︒ ㈹ 結論から先にいえば︑結局︑その決定は政策的判断を中心に考えざるをえないということになろう︒損害の種類にお. いては︑問題となるのは経済上の損失であった︒そして︑過失責任︑黙示の保証においては経済上の損失に対する賠. 償は認められていないが︑明示の保証ではこれを認めている︒不法行為法上の厳格責任においてはこの点では意見の. 対立があり︑その決定にはやはり政策的考慮が前面に出ざるをえないことが明らかにされた︒そして︑その際︑危険. 分散理論がその決定の一つの根拠をなすものと考えられていた︒しかし︑ここにおいても︑経済上の損失を認めるべ きか否かの決定的な理由づけは出されていないように思われる︒. 損害の種類についても︑経濟上の損失の場合を留保すれば︑やはり三つの法理により大きな差異は生じないといえ. ﹁経済上の損失﹂とは︑身体に対する損害および財産に対する損害に対立する概念で︑たとえば暇疵による製品の価額の減. るであろう︒ ①. 少︑修理または取替の費用︑製品の環疵による派生的な利益の喪失等をいう︒︵乞99国8ヨoヨ一〇一〇器ぎ牢&5富ピ貯げ臣蔓 ゴユω冒民窪8℃808ロ罫ピ・国o︿●〇一SO一〇〇︵一§︶︶●. り8霧05段℃β口o梓oωO︸暮8鱒. ㈲ 一 暮O鱒O●. ⑫.

(29) ぎ8﹃ρ讐OωO参照︒. oo︒. 一●男 ℃ 言 一 ざ お ω ℃ ● N α 一 ホ ︵ 一 8 ㎝ ︶ ●. 僻Oω頴Nユ置μ犀㌣一8.. 鱒O刈>.卜oユo oO㎝℃ωOO.. ホO. 喰2︒βq 節 8 ﹃ ︾ 9 吋 自 ω 8 ︵ 一 り 臼 y. o仁℃ββoε刈ρ暮Oωq● 208︸o. ︸3ののoび霊℃鵠ロo冨一ρ辞に. 国oのの一〇き↓冨汐g8け一80︷荘①08鶏ヨRd巳段寓&①醤ω巴①の富ヨ課く>田ピ●いま鱒80︒︵一〇罐︶.. oド 一α℃9㊤o. ⇒ 29ρ讐鷺 ウ. ⑯ ㈲. ⑯ ⑳. ㈲ 四. 圃 ⑳ ㈹ 置℃暮OO9. Zoけρ誓冥 昌o帯刈ρ8㎝の. 一α 暮嶺伊. o. e2置矯暮嶺o. 図. 鱒. 限られた範囲で︑ 以上のごとく三つの法理を比較検討してみたのであるが︑経済上の損失が認められるか否かとい. う点を留保すれば︑ 三つの法理によりそれほど大きな差異は生じないと結論することができょう︒特に不法行為法上. の厳格責任と過失責任にあってはそうである︒むろん︑因果関係︑抗弁︑出訴期限の問題などについて検討を行なって. いないので︑断定的な結論を下すことはできないことはいうまでもない︒しかし︑抗弁の間題に限ってみれば︑寄与. 過失︑危険の引受︑さらには正常な使用がなされていなかったという抗弁の適用は︑それほど大きな差異はないといえ. 二二一一. る鱒 ︒また︑保証責任に特有な抗弁である契約関係の不存在︑通知の欠敏︑免責条項の存在という抗弁も︑前述のように アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(30) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 二一四. しだいに事実上認められなくなる方向にあるので︑前述の結論にそれほど大きな影響を与えるものとは思われない︒. このことは︑どの法理をとるにせよ︑欠陥製品による損害の公平な配分ということが常に問題にされてきているか. らだといえよう︒ただ︑過失責任および保証責任にあっては︑そのような政策的配慮はそれらの責任の諸原則の背後 ㈲ で考えられてきたのに対し︑不法行為法上の厳格責任にあっては︑それが前面に出てきたという差異があるにすぎな. いからである︒むろん︑アメリカにおいて製造物責任に限ってみた場合︑それほど理論構成に拘束されていないとい う点も重要であろう︒. 不法行為法上の厳格責任において前面に出てきた政策的配慮の理論化が要求されていることはいうまでもなく︑そ. の一つが危険分散理論であるといえよう︒しかし︑この理論は︑これまで考察した限りでは︑適用範囲の判断基準の. 一つとして用いられることもあるが︑決定的な判断基準として重要な機能をもっていたとはいえないであろう︒そし. て︑たとえ重要な機能をはたすようになったとしても︑個々具体的な事件において︑この理論ですべて解決できると. いうものでもなかろう︒このように具体的場面においても理論的場面においても不法行為法上の厳格責任はまだまだ 未解決の間題が残されている︒. 以上のごとき検討からすると︑はたして︑不法行為法上の厳格責任は実質的にどのような意義をもつのであろう. か︒この問いに答える前に︑さらに不法行為法上の厳格責任の理論的根拠を考察しておこう︒ここでは︑危険分散理 論と予防理論に限って考察することとする︒ 鱒勺8器Rり段買僧昌o言ミ℃魯oo漣100000参照︒.

(31) 鋤. 不法行為法上の厳格責任にあっては︑過失責任および保証責任における諸原則を廃除しているので︑ それらの背後にあった. と考えられる欠陥製品による損害の公平な配分についての価値判断が前面に出てこざるをえなくなる︒ そして︑このことは欠. ー危険分散理論ならびに予防理論ー. 不法行為法上の厳格責任法理の根拠. 陥概念の中にそのような価値判断を充分包みこみえないことにもよろう︒. 四. 現在︑裁判所で厳格責任の根拠として一番広く認められているのは︑危険分散理論である︒この理論によれば︑製. 造者は欠陥製品によりもたらされた損失を多くの者達に分散させることにより︑損失の経済的影響を最小限にとどめ. ることがでぎるのであるから︑その損失は究極的には製造者に負担させるべきであるとする︒製造者は︑その損失を. 吸収するか︑保険をかけることができ︑しかも価格をより高くすることにより追加的経費を製品の買主のすべてに分. 散しうる︒そこで︑買主は︑その製品自体を買うだけではなく︑製品の欠陥から生ずる損失をカバーする保険証券も 買うことになるというQ. この理論に対する批判を要約すると次のごとくである︒そもそも︑現実の経済が完全に自由な経済でないのである 幽 から︑企業は消費者に事故および事故保険の経費を分散できない場合がありうる︒もし︑分散できるとすれば︑事実. 推定則を用いることにより︑過失責任によっても分散できるのではないか︒しかし︑分散させる結果として価格が上 田 昇すれば︑一定の消費者はその製品を買えなくなり︑また︑保険がつけられていない比較的安価な製品を買う自由を. 一二五. 一定の消費者から奪う結果となる︒さらには︑すべての消費者に製造物責任保険の経費を強制的に負担させるとすれ アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(32) 〇の. アメリカにおける製造物責任の法的構成. oD. 一二六. ばそれは公正でないということになろう︒また損失分散だけを考えれば︑製造者よりも大きな分散能力を有する者が. 存在する場合もあり︑さらにまた︑すぐれた分散機能をもつ社会保険制度を設けるべきであるということにもなろ うo. これらの批判に対し︑その製品の価格に反映する結果︑事故率の増加によりその製品が競争力のないものとなり︑. 企業が事業をやめざるをえなくなったとしても︑その資源は消費者の立場からよりよく配分されるように他の方面に 紛 利用でぎることになるから問題はないとの反論もある︒過失責任の追及は争訟の面では︑かならずしも安心できない 鱒 点が残る︒もっとも︑現実には裁判所は事実推定則により︑過失責任についても厳格責任を課した場合に近い結果を. もたらしているのであるから︑価格は大きな影響を受けない︒また︑もし買主が︑製品の危険について正しい知識をも 図. 鱒. ち︑損害の発生の可能性にたえざる注意を払う場合には︑すべての人は保険がつけられた製品を選択するであろう. し︑個々の買主が保険に入るよりも︑このような強制保険のほうが経済的である︒被害者たる原告は製品の製造者お 90. ゆわ. よび販売者のすべてを裁判上訴えることができるのであり︑被害者が救済された後においては︑業者の間で内部的に. 処理すればよい︒確かに社会保険は分散能力があるが︑予防効果を全く無視すべきでなく︑そもそもそのような制度. の確立は実際には容易ではないであろう︒このような反論がなされているが︑企業の欠陥製品による事故経費を消費. 者にすべて分散することが無条件に積極的に認められるべきなのであろうか︒交通事故のように加害者と被害者の互. 換性がある場合はこの理論の適用が妥当であると考えることも可能であろうが︑基本的に立場の互換性の想定してな い製造物責任事件においては︑疑問が残るであろう︒.

(33) 厳格責任を正当化する根拠として︑欠陥製品により生じた損失は製造者がそのような製品を市場に出さないよう. にするために︑究極的に製造者が責任を負うべぎだという単純な予防理論を挙げることができる︒だが︑製造者の 鈴. 合理的な行為によっても欠陥製品の発生が避けられない場合には︑この根拠は弱いものとなる︒ところが︑最近. 一$讐ざ8ぎB凶のけは予防効果の基本観念を︑さらに他の要素を取り入れた政策的基準へと発展させ︑それを経済効率 99. の問題として議論している︒そして︑その理論は少なくとも文献の上では厳格責任による製造物責任の有効性の最も. 重要な判断基準として︑危険分散理論にとってかわろうとしているという︒ところで︑取引費用︵欝拐9︒&88ε. がゼロで一定の製品の使用を強制されることなく︑自発的に取引されるとすれば︑資源配分︵誘o自8毘︒8梓一8︶に. 一般に承認されている︒. 関するかぎり︑法律上の権利や責任をどのように割りあてるか︑すなわち︑買主と製造者のどちらが損害に対して責 の. 任を負うかは重要でないということが︑まず男o壁匡088の分析により明らかにされ︑. しかし︑実際には取引費用はかなり多額にのぼるものであるから︑経済効率からすれば︑最も少ない出費で事故経費 D︑ を減らせる立場にある者に責任が課せられるべきだということになる︒. この経済効率のアプ・ーチの提案者のほとんどは︑少なくとも製造者に過失がない場合には︑欠陥製品にもとづく の. 損失は消費者が負担すべきであることが経済効率により明らかにされると主張する︒すなわち︑過失責任や市場での. 圧力︵暴詩︒な誘ω畦8︶がすでに製造者をして合理的に安全な製品を作る強いインセンティブをなすのであるからこ の. れに対して厳格責任を課す意味がない︒製造者が厳格責任の基準に応じようとすれば︑生産費用が上がり︑一定の消. 二一七. 費者はその製品を買えなくなるが︑他方︑消費者は製品を使う際に容易に通常以上の注意を払うことが可能である立 アメリカにおける製造物責任の法的構成.

(34) アメリカにおける製造物責任の法的構成. 二一八. D. 場にいるのであるから︑消費者こそ最も安く事故経費を回避することができる立場にいると主張されている︒. しかし︑過失責任や市場における圧力によっては︑より安全な製品を作るための新らしい技術の発明を推進するも. のではなく︑過失の基準は既存の規範に合致するにもかかわらず損害をもたらす製品の製造者に対しては責任を課す. ことはできないであろう︒さらに︑消費者は事故経費を最も安く回避することができると考えられるとして︑消費者. が責任を負うべきだとしても︑消費者は︑製品の使用の際の危険評価や一般事故保険などにより︑この責任の抑制的. 一般的に消費者が最も安く事故経費を回避することができるとは言えないと. 効果を転嫁しうる︒これに対し︑製造者は危険を客観的に評価しうるし︑製造者の製造物責任保険の保険料は製品の 事故率を正確に反映するのであるから︑ の 反論されている︒. 8℃㎝ミ占ミ︵一8一︶︒. このように︑不法行為法上の厳格責任を根拠づける理論である︑危険分散理論︑予防理論自体にもさまざまな問題 があり︑充分に確立した理論となっていないことが知られる︒ O巴菩3貫ωoヨo↓ぎ頗鐸8困降臣の鼠げ仁二8. 民些oピ凶毛o騰↓o旨ω℃刈O吋>田い↓. 幽. をギo匡oBー>qけ000ヨ℃8ω緯一8︸冨ヨ蜘ω一d●0霞℃. 南8冨ロ曽ロ﹂ロUo︷8890ミo跨国B宮o﹃︸ωood︒O霞︒﹃沁o︿.鰹︵一鶏O︶︒. 0●. 58げ鴇U寓g富凶ロ甲&琴8ー>昌O署8首晦<8ヨ譲↓国z!. ギ守讐oピ. ≦●劇ピ仁ヨo俸国︒内即い︿φP℃. 玄一〇℃R呂09ぞ80昌. ㈹. ω鼠9=筈豊什鴫亀冒碧覧碧ε8お♂﹃一且ξ一80. い幻o︿︒望ト認oo︵一§︶.. 鱒. =§. 漣刈︵一〇爲︶●. 内oの巴oき鶏℃β昌oけo一辞80. 野菊oくOωoo. 團. 働.

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