論文内容要旨
論 文 題 名 当 院 に お け る 極 低 出 生 体 重 児 に 対 す る early aggressive nutritionが生後2週間の成長とIGF-Iに与える効果
掲載雑誌名 昭和学士会雑誌(第74巻・第4号・2014年)
昭和大学医学部小児科学講座 佐々木寛
内容要旨 近年、極低出生体重児の NICU 入院中の成長遅延が後の成長 発達に悪影響を及ぼす可能性が指摘され、可能な限り胎児期と同等の成長 や栄養蓄積を目指すことが重要と考えられているが、実際には十分に成長 していない子宮外発育不全児(Extrauterine growth restriction:EUGR)が 多い。EUGR を減らすには生後早期の栄養状態を改善させることが重要 であり、母乳による経腸栄養とともに出生時から静脈栄養を併用する early aggressive nutrition(EAN)という栄養管理方が我が国でも導入さ れるようになってきた。一般に栄養状態の評価には身体測定以外の生化学 的指標としてインスリン様成長因子(insulin-like-growth factor-I:IGF-I) が用いられる。胎児期のIGF-Iは妊娠中期から後期にかけて上昇するため、
早産低出生体重児はIGF-Iが低く、また出生すると同時に母体からの供給 が停止するためIGF-Iはさらに低下する。理論的に IGF-Iの低下を防ぐた めには EAN が必要であるが、EAN の短期的な効果や IGF-I への効果は 不明な点が多い。そこで当院で行っているEANが生後2週間程度で終了 することから、その間の栄養摂取量と成長、IGF-I との関連性について検 討した。
2008 年 8 月から 2010 年 3 月までに当院に入院した極低出生体重児で 臍帯血及び生後 2 週の IGF-I 測定が可能であった症例 25 例を対象に 出生体重および生後2週の体重SDを算出し、累積蛋白摂取量、エネルギ ー摂取量およびIGF-Iとの関連について統計学的解析を行った。
主な結果は 1)検討期間に摂取した蛋白量は平均 2.9g/kg/日でエネルギ
ー量は 82kcal/kg/日であった。これは胎児期に必要とされる量(蛋白
3.5g/kg/日、エネルギー120kcal/kg/日)からみると不足していた。2)生後2 週間の体重SDは平均-1.0SD(95%CI: -1.2~0.8SD,P<0.001)低下したが、
この間のIGF-I に有意な変化は見られなかった。3)生後2週のIGF-Iを従 属変数とし、在胎週数、出生体重、性別、生後 2 週間の累積蛋白摂取量、
累積エネルギー摂取量、最低体重から生後2週までの体重増加率を独立変
数として重回帰分析を行ったところ、有意に関連する因子は出生体重(β
=0.672, P=0.008)と体重増加率(β=0.366, P=0.036)であった。
以上の結果から、胎児必要量には満たないが現行のEANを行うことは 出生後の細胞外液減少(体重減少)後の速やかな体重増加につながり、結果
として IGF-Iを上昇させている可能性が考えられ、EAN の効果が示唆さ
れた。