論文内容要旨
In vitro characteristics of enamel-like hexagonal hydroxyapatite single crystals: implications of fluoridization for acid resistance
(エナメル様六方晶ハイドロキシアパタイト単結晶の
in vitro
特性:耐 酸性に対するフッ素処理の関係)Pediatric Dental Journal(投稿中)
小児成育歯科学 志賀 友里
【目的】これまでフッ化物は様々な研究において,齲蝕予防の可能性を示 しており,フッ化物の広範囲にわたる使用につながっている.しかし,ナ ノスケールの小さなエナメル質の結晶では,結晶(材料)レベルでフッ化 物処理を施したハイドロキシアパタイト(以下
HAP)の潜在的なメカニ
ズムを完全に解明することは困難である.そこで,数十ミクロン以上のHAP
結晶を合成し,in vitroでフッ化物処理と脱灰パターンを再現した.【方法】電融酸化カルシウムとポリリン酸から水熱合成にて
HAP
結晶を 得た.それらのHAP
単結晶を,フッ化物および対照の脱イオン水に30
日間浸漬させた.フッ化物は,ミラノール®顆粒11%
を450
,900
,1500ppmF
に調整したフッ化ナトリウム溶液,および9000ppmF
の弗化 ナトリウム液ネオ®を使用した.各サンプルを3%クエン酸溶液に 60
分間 浸漬させた.その後,表面形態の脱灰パターンを走査型電子顕微鏡(SEM)に よ り 観 察 , さ ら に 表 面 領 域 の
F K
端 エ ッ ク ス 線 吸 収 端 近 傍 構 造(XANES)測定を行った.
【結果】SEM において,溶解はさまざまな様相を呈した.傾向としては 概形は保ちつつ点状に穿孔される形で脱灰されていた.
1500ppmF
群ではHAP
とは異なる均一な層を認め,溶解像は部分的であった.9000ppmF
群では,顕著な溶解像を呈さなかった.F K 端XANES
測定において,450ppmF
及び900ppmF
では痕跡程度のCaF
2に近いピークを観察した.1500ppmF
では酸処理前には CaF2 より低エネルギー側にピークを示し たが,酸処理後にCaF
2由来のピークへシフトした. 9000ppmF では酸 処理前後ともにCaF
2に近似したスペクトルを示した.1500
と9000 ppm
フッ化ナトリウム溶液で処理された結晶の脱灰パターンからHAP
結晶表面に
CaF
2が残留し,高い耐酸性の獲得につながる可能性が示唆された.【結論】歯のエナメル質のフッ化物処理は,十分なフッ化物濃度と作用時 間に注意することで,結晶レベルで早期の脱灰の予防につながる可能性が 示唆された.