• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 農 学 )

A

K

M

. ゴ ー ラ ム サ ル ワ ル

    

学 位 論 文 題 名

Pollen IVIorphology and Its Systematic Significance     

    1ntheEriCaCeae

(ツッジ科植物の花粉形態とその体系学的意義)

学位論文内容の要旨

  広 義のツツ ジ科は8亜科 ・125属 .4100種か らなる植 物群で、被子植物の中では8番目 に大きい科であり、ブルーベリーなどの果樹やシャクナゲ.エリカ類などの花木を含む農 学 的にも重 要な植物 群であ る。最近20年ほど の間に多 数の植物群でDNAによる分子系統 樹が構築されているが、ツツジ科では、これまで主要な属の解析による科内の亜科・連レ ベルでの大まかな系統関係のコンセンサスが得られたに過ぎない。本科においては属の範 囲づけや属内の分類体系に多くの分類学的問題が残されている。そのためこれまで明らか になっていなぃ新形質の包括的、網羅的な観察・記載をおこなう事で分子系統の不十分点 を 補 い 、 総 合 的 な 形 質 評 価 に 基 づ ぃ た 分 類 体 系 に 改 訂 し て い く 必 要 が あ る 。   一方、電子顕微鏡レベルでの花粉形態形質は、多くの植物群の分類体系改訂において大 きな貢献をなしてきた。被子植物の花粉粒は単数世代の配偶体にあたり、陸上植物の大系 統をよく反映した微細形態を示す事が確認されており、被子植物の科や属レベルでも花粉 外壁の微細形態形質が集中的に観察・記載されつっある。しかしながらツツジ科において は、特定の亜科や属の代表的な種で電子顕微鏡レベルでの花粉形態が観察されているに過 ぎ ず、大半 の属や種 では未 だ電子顕 微鏡レ ベルでの 花粉形 態観察は 行われて いない 。   そこで本研究では、ツツジ科における花粉形態の全体像を明らかにし最新の分類体系と の整合性を検討することを目的とした。広義のツツジ科植物のうち既に電子頭微鏡レベル での花粉形態が報告されているシャクジョウソウ亜科と、試料入手が困難だった南半球産 のスティフェリア亜科を除く6亜科(ドウダンツツジ、アI/ブトゥス、エリカ、イワヒゲ、

ジ ムカデ、スノキ)の270種について、世界各地の植物標本庫に保存されているツツジ科 植物標本から花粉を採取し、光学顕微鏡(光頭).走査型電子顕微鏡(走査電顕)、一部は 透過型電子顕微鏡(透過電顕)により花粉外壁を観察し形態記載した。この研究過程で、

いくっかの属内分類体系の問題点を指摘し、また興味深い花粉形態形質について明らかに した。また現在得られている最新の分子系統樹上に花粉形態形質を配置し、形質進化を推 定した。

  以下、本研究成果の概要を述べる。

1.ツツ ジ科の花粉形態は多様であり、他科から明瞭に識別できるような本科のみに固有 の花粉形質を発見することはできなかった。しかしながらいくっかの亜科や連の範囲づけ や類縁関係を明らかにする上で花粉形態形質は有意義であり、属間の類縁関係や属内の分

926

(2)

類 体系・種レベルでの多様化を明らかにする上では大きな分類学的意義を認めた。特に走 査 電 顕 で明 ら か にさ れ た 多様 な 外 壁表 面 紋 様パ タ ー ンは 重 要 な 形質 と 考 えられた 。 2.ツツ ジ科の花 粉で一 番多いのは四集粒であり、シャクジョウソウ亜科のウメガサソウ 属 のみ多集粒を形成する。一方、被子植物の中で最も普通の花粉型である単粒は本科にお い ては稀で あり、ド ウダン ツツジ亜科、シャクジョウソウ亜科、工リカ亜科の3亜科のみ で確実な単粒花粉を形成する種が見られた。

3.ツ ツジ科花 粉の特 徴として よく取り 上げら れる粘着糸は、実際には科内での出現は稀 で 、エリカ亜科の39属(ホツツジ、イワナシ、カル′ミア、ツガザクラ、ヨウラクツツ ジ 、 ツ ツ ジ 属 な ど ) に の み 出 現 し 、 虫 媒 受 粉 に 適 応 し た 形 質 と 推 察 さ れ る 。 4.主要な亜科の花粉形態は以下のようにまとめられた。

・ ドウダン ツツジ亜 科は1属のみから成る小さな亜科で、ツツジ科の系統樹の最も基部に 位 置し、他の全ての亜科を含む系統群と姉妹関係を持っている。ドウダンツツジ属は単粒 花 粉で特徴づけられるが、さらに開口部数、花粉粒形、表面紋様などの花粉形態形質によ り2つの 種群に分 ける事 が出来た。既存のAnderberg (1994)の属内分類体系を正しいと仮 定 すると、花粉外壁表面模様は微細ないば状一うね状紋様から粗いうね状一無紋様方向に 進化したと推定された。

・ アルブトゥス亜科は偏球形の花粉粒が密に集合した四集粒花粉を形成する。特にアルク ト スタフイロス属、コマロスタフィリス属の四集粒花粉は微穿孔を持つ隔壁を持っことで 特徴づけられた。

..エリカ亜科の花粉は明瞭なエンドクラック(内部外壁のひび割れ様構造)の存在で特徴 づ けられる。本亜科に含まれるガンコウラン連の花粉では極観・溝間域の花粉壁よりも、

隔 壁が厚いという特徴があった。極端に狭い発芽溝は、風媒受粉という特徴に適応・進化 したと推察される。

・ イワヒゲ亜科の花粉表面は、ツツジ科花粉としては大変稀な線状紋で特徴づけられる。

・ スノキ亜科に出現する異形四集粒は、本亜科と南半球産スティフェリア亜科との近縁性 を 示しており、同形四集粒からの平行進化を示していると思われる。本亜科に属する大多 数 の種は花粉外壁の一次紋様単位の上に更に二次紋様がある事で特徴づけられる。ヒメシ ヤ クナゲ連の四集粒花粉は微穿孔型の薄い隔壁で特徴づけられる。スノキ連に所属する新 熱 帯産ケラトステマ属において、外形的には四集粒にも関わらず、花粉粒問の隔壁が欠落 し ている特異な花粉形態を発見した。これはツツジ科のみならず被子植物でも初めてのも ので、特殊化した派生形質と考えられる。

5.花 粉 形 態 学 の 観 点 か ら 、 以 下 の よ う な 分 類 学 的所 属 に つい て の 見解 を 述 べた 。   ErゴぬrecurvifoliaE.G.H. Oliv.は厨伽血胎cw昭ぬIくlotzschとして、また協弛洫u/:叩凹血umMiq.は觚璢鬱r函メ印伽jぬ(Miq.)Nakaiとして取り扱う事を支持した。ハコネコ メ ツツジは最近の見解通り、ツツジ属勵Ddめ出伽から独立した単型属飴us轟リ轟F欣z閲 とすることを支持した。

  カイナンサラサドウダン盈ユ血ぬnめuss.Zわ丘幽ロusくPalibin)0hwiはサラサドウダンE 餾即aロ甜awMiq.)Nicholsonから独立した種として認めるべきという考えを支持した。

‑ 927 ‑

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査

副 査 副 査 副 査 副 査

教授 教授 教授 助教授 助教授

高橋 山田 諏訪 冨士田 大原

英 樹 敏 彦 正 明 裕 子 昌 宏

     学 位 論 文 題 名

Pollen Morphology and Its Systematic Significance      ●

    lntheEriCaCeae

( ツ ッ ジ 科 植 物 の 花 粉 形 態 と そ の 体系 学 的 意義 )

  本 論 文 は4章 か ら な り 、 図59、 表21、 引 用 文 献249を 含 む 、 総 ぺ ー ジ 数302の 英 文 論 文 で あ り 、 別 に 参 考 論 文5編 ( 全 て 英 文 で4編 は 学 会 誌 、1編 は 国 際 誌 ) が 添 え ら れ て い る 。

  広 義 の ツ ツ ジ 科 は8亜 科 .125属 .4100種 か ら な り 、 被 子 植 物 の 中 で は8番 目 に 大 き い 科 で あ り 、 ブ ル ー ベ リ ー な ど の 果 樹 や シ ャ ク ナ ゲ ・ エ リ カ 類 な ど の 花 木 を 含 む 農 学 的 に も 重 要 な 植 物 群 で あ る 。 本 科 に お い て は、 こ れ まで 主 要 な属 の 解 析に よ る 科内 の 亜 科 ・ 連 レ ベ ル で の 大 ま か な 系 統 関 係 の コ ン セ ン サ ス は 得 ら れ て い る が 、 属 の 範 囲 づ け や 属 内 の 分 類 体 系 に 多 く の 分 類 学 的 問 題 が 残 さ れ て い る 。

  被 子 植 物 の 花 粉 粒 は 陸 上 植 物 の 大 系 統 を よ く 反 映 し た 微 細 形 態 を 示 す 事 が 確 認 さ れ て お り 、 電 子 顕 微 鏡 レ ベ ル で の 花 粉 形 態 形 質 は 、 多 く の 植 物 群 の 分 類 体 系 改 訂 に お い て 大 き な 貢 献 を な し て き た 。 本 研 究 で は 、 ツ ツ ジ 科 に 韜 け る 花 粉 形 態 の 全 体 像 を 明 ら か に し 最 新 の 分 類 体 系 と の 整 合 性 を 検 討 す る こ と を 目 的 と し た 。 広 義 の ツ ッ ジ 科 植 物 の う ち 、 シ ャ ク ジ ョ ウ ソ ウ 亜 科 と 南 半 球 産 の ス テ ィ フ ェ リ ア 亜 科 を 除 く6亜 科( ド ウ ダン ツ ツ ジ 、 ア ル ブ ト ゥ ス 、 エ リ カ 、 イ ワ ヒ ゲ 、 ジ ム カ デ 、 ス ノ キ ) の270種 に っ い て 、 世 界 各 地 の 植 物 標 本 庫 に 保 存 さ れ て い る ツ ツ ジ 科 植 物標 本 か ら花 粉 を 採取 し 、 光学 顕 微 鏡( 光 顕 ) ・ 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 ( 走 査 電 顕 ) 、 一 部 は 透過 型 電 子顕 微 鏡 (透 過 電 顕) に よ り花 粉 外 壁 を 観 察 ・ 形 態 記 載 し 、 亜 科 . . 連 の 特 徴 を 明ら か に し、 属 の 範囲 づ け や属 内 分 類体 系 の 問 題 点 を 指 摘 、 ま た い く っ か の 興 味 深 い 花 粉 形 態 の 新 形 質 を 発 見 し た 。   得 ら れ た 結 果 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。

(4)

1

.ツッジ科の花粉形態t ま多様であり、他科から明瞭に識別できるような本科のみに固 有の花粉形質を発見することはできなかった。しかしながらいくっかの亜科や連の範囲 づけや類縁関係を明らかにする上で花粉形態形質は有意義であり、属間の類縁関係や属 内の分類体系・種レベルでの多様化を明らかにする上では大きな分類学的意義を認めた。

特に走査電顕で明らかにされた多様な外壁表面紋様パターンは重要な形質と考えられた。

2

.ツッジ科の花粉で一番多いのは四集粒であり、シャクジョウソウ亜科のウメガサソ ウ属のみ多集粒を形成する。一方、被子植物の中で最も普通の花粉型である単粒は本科 にぉいては稀であり、ドウダンツツジ亜科、シャクジョウソウ亜科、エリカ亜科の3 亜 科のみで確実な単粒花粉を形成する種が見られた。

3.

ツツジ科花粉の特徴としてよく取り上げられる粘着糸は、実際には科内での出現は 稀で、エリカ亜科の3 連

9

属(ホツツジ、イワナシ、カルミア、ツガザクラ、ヨウラク ツ ッ ジ 、 ツ ツ ジ属 など) にの み出 現し、 虫媒 受粉 に適 応した 形質 と推 察さ れる。

4.

主要な亜科の花粉形態は以下のようにまとめられた。

ドウダンツツジ亜科は1 属のみから成る小さな亜科で、単粒花粉によって特徴づけら れるが、さらに開口部数、花粉粒形、表面紋様などの花粉形態形質により2 っの種群に 分ける事が出来た。既存のAnderberg (1994) の属内分類体系を基にすると、花粉外壁表 面模様は微細ないば状ーうね状紋様から粗いうね状一無紋様方向に進化したと推定され た。

・アルブトゥス亜科は偏球形の花粉粒が密に集合した四集粒花粉を形成する。特にアル クトスタフイロス属、コマロスタフィリス属の四集粒花粉は微穿孔を持つ隔壁を持っこ とで特徴づけられた。

・エリカ亜科の花粉は明瞭なェンドクラック(内部外壁のひぴ割れ様構造)の存在で特 徴づけられる。本亜科に含まれるガンコウラン連の花粉では極観・溝間域の花粉壁より も、隔壁が厚いという特徴があった。極端に狭い発芽溝は、風媒受粉という特徴に適応・

進化したと推察される。

・イワヒゲ亜科の花粉表面は、ツツジ科花粉としては大変稀な線状紋で特徴づけられる。

・スノキ亜科に出現する異形四集粒は、南半球産スティフェリア亜科で見られるのと同 様に、同形四集粒からの平行進化を示していると思われる。本亜科に属する大多数の種 は花粉外壁の一次紋様単位の上に更に二次紋様がある事で特徴づけられ、ヒメシヤクナ ゲ連の四集粒花粉は微穿孔型の薄い隔壁で特徴づけられる。スノキ連に所属する新熱帯 産ケラトステマ属において、外形的には四集粒にも関わらず、花粉粒間の隔壁が欠落し ている特異な花粉形態を発見した。これはツツジ科のみならず被子植物でも初めてのも ので、特殊化した派生形質と考えられる。

5.

花 粉 形 態 学 の観 点から 、以 下の ような 分類 学的 所属 につい ての 見解 を述 べた。

  Erica recurvifoliaE

G

.H .Oliv. はEremiaj ーecurvata Klotzsch として、またアクシ

/ミ艪ccinium japonicum Miq. は

Hugeria japonica (Miq.

)Nakai として取り扱う事を支

持した。ハコネコメツツジは最近の見解通り、ツッジ属Rhododendr on から独立した単型

属Tsusioph yl |

 um

とすることを支持した。

(5)

  

本研究により、ツツジ科植物における花粉形態多様性の概要が初めて明らかにされた。

特に、科全体を網羅的に研究した本論文により、粘着糸はエリカ亜科に限られること、

イワヒゲ亜科の花粉が線状紋で特徴づけられる事、スノキ亜科の多数種で2 次紋様が認 められる事など、重要な植物分類学上の知見が得られた。また隔壁が欠落した特殊な花 粉四集粒の発見は、被子植物において新たな花粉の形態進化方向を示し、学術的に評価 できるものである。

  

よって審査員一同は,サルワルA .K .M .ゴーラムが博士(農学)の学位を受けるに十

分な資格を有するものと認めた。

参照

関連したドキュメント

る。特に茎における発現は縞模様のある特徴的な部位(管状要素)で検出された。この縞 模様は2 次細胞壁が凝集・沈着してできあがる特有な模様である。っまり、

こ れが 前述 の光 合成 速 度の 増加 をも たら した ものと推察された 。さらに、根粒非着生 系 統で はウ ニコ ナゾ ー ル散 布区 と標 準区 との

   第3 章で は,人工生物の形 状,すなわち形態と 関節数が人工生物

   本 研 究は、最近 の研究成果 を踏まえて 、氷床にお ける化学物 質の存在状 態の 変化 を 多成分系 の相平衡の 視点から明 らかにし、 各種イオン の再分布の メカニ

系統関係については結論が得られず,Okada (1989)

ン(L‑Leu) 単結晶 に注 目し た。Si3N4 製 の探針 を用 いた AFM 観察 からは(1)

  

受粉前生殖隔離を検証した 12 組のうち,幾つかの種間では生育場所 (①生育環境隔離) と開花期 (②