博 士 (獣 医学 ) 好井 健太朗
学 位 論文 題 名
Studies on the mechanism of the virus particle assembly of flavlVlruSanditSappliCation
( フ ラ ビウ イル スのウイ ルス粒子 形成機構 とその応 用に関する 研究)
学位論文内容の要旨
ダニ媒介性脳炎(TBE)ウイル スはフラビウイルス科フラビウイル ス属に属し、
人 に 感染 す る と重篤 な臨床症 状と高い 致死率を 示す人獣 共通感染 症の原因ウ イ ル ス であ る 。TBEウ イ ルス は 自 然界 に おい て 、ダ ニと小型 野生哺乳 動物の間に 形成 される感 染環で保 持されて おり、ヒトは主にマダニの吸血による咬傷で感染 する。
フラ ビ ウ イル ス は感 染 細 胞内 の 粗面 小 胞 体(ER)に お いて 粒 子 が形 成 さ れ出 芽し ていくと 一般的に 考えられ ている。この粒子形成過程において、エンベロー プ 膜 蛋 白prM、Eは 翻 訳 と 同 時 にER内 に 挿 入 さ れ 、 ウ イ ル ス のNS2B‑3プロ テ ア ー ゼ と 細 胞 の シ グ ナ ル ベ プ チダ ー ゼに よ る 切断 を 受け 、 ゲ ノムRNAと 正20 面 体 のヌ ク レ オカ プ シド 構 造 をと るC蛋 白を 内 包しつつ 、ER内腔へ と出芽して いく 。しかし 、そのウ イルス粒 子形成およぴ分泌の分子機構に関しての詳細はほ とん ど明らか になって いない。 そこで、本研究ではウイルス粒子形成におけるウ イル ス構造蛋 白の働き を明らか にするために、本来のウイルス粒子の代用となる ニっ の組み換 え粒子分 泌系を確 立し、それを用いてウイルス粒子形成の分子機構 の解析を行った。
第1章で は 、 準ウイル ス粒子(subviral particles;SPs)系および 感染性cDNA ク ロ ーン を 用 いてTBEウイ ル ス の粒 子 形成 に おけ る、エン ベロープ 膜蛋白の変 異 の 影響 に っ いて解 析した。SPsとはエン ベロープ 膜蛋白prM/Eを 発現する 細胞 より 分泌され 、そのエ ンベロー プ膜蛋白は本来のウイルス粒子と同様の性状を保 持 し てい る 。 また 粒 子は 遺 伝 子RNAを 内包 す るヌ クレオカ プシドを 含んでいな いた め、細胞 内に侵入 してもウ イルスの 増殖はおこ らない。 この系においてprM の63番 目のアミ ノ酸変異 がSPs分泌を 減少させ るというこ とが明ら かになった。
この 変異がエ ンベロー プ膜蛋白 の高次構 造形成やpr.Mのシヤベ ロン様活性に与
える影響は認められなかった。共焦点顕微鏡で観察したところ、 prM の変異に よルウ イル スエ ンベロ ープ 膜蛋白はゴルジ体には移行せずにER 内に蓄積して いた。そして電子顕微鏡ではER 内にフアラメント状の構造物が多数形成されて いるのが認められた。さらに、今回確認されたprM 蛋白の63 番目のアミノ酸変 異を感 染性 cDNA クロー ンを 用い てウ イルス ゲノ ム RNA に 組み 込んだところ、
SPs の場合と同様に感染性ウイルス放出量が減少した。これらの成績よりprM が ウイ ル ス 粒 子 の 出 芽に 重要 な役 割を果 たし てい ること が明 らか にな った。
第2 章 では、 フラ ビウ イル スのゲノムRNA がウイルス粒子内へとパッケージ ング(内包)されていく機構を再現するために、 TBE ウイルスのレプリコンを 相補的に発現させたウイルス構造蛋白によルパッケージングさせる系を構築し た。レプリコンは本来のウイルスゲノムより・構造蛋白領域を欠損させたもので、
レプリコンRNA は複製されるが構造蛋白がないため感染性ウイルス粒子が分泌 されない。そこで細胞にレプリコン RNA をトランスフェクトしておき、続いて ウイノレス構造蛋白を発現するプラスミドをトランスフェクトすることにより、
TBE のレ プリコ ンを 内包 した 粒子(ウイルス様粒子: VLPs) を分泌させること に成功した。 VLPs は一度のみの感染性を有しており、その感染性はTBE ウイル ス特異的な中和抗体により阻止された。そしてVLPs の物理的性状も本来のウイ ルス粒子とほぼ同様であり、内包されたレプリコンRNA は相補的に発現させた 構造蛋 白の mRNA などと の遺 伝子再組み換えは全く起こしていなかった。さら に緑色螢光物質(GFP) やネオマイシン耐性遺伝子などを組み込んだレプリコン をパッケージングさせることで、外来遺伝子を導入し発現させることにも成功 した。今回構築したレプリコンパッケージング系は、 TBE ウイルスのゲノムパ ッケージング機構の分子生物学的な研究や、新たなヮクチン系の開発などに有 用であることが期待される。
本研 究に おい て、二 つの 組み 換え 粒子(SPs お よび VLPs) の 系を用いて、フ ラビウイルスのウイルス粒子出芽およびゲノムパッケージングのニっに着目し て、ウイルス粒子形成機構についての解析を行った。その結果、この組み換え 粒子の系はウイルス粒子形成機構研究モデルとして有用であることが確認され、
粒子形成においてウイルス構造蛋白質が重要な働きをしていることを明らかに した。これらの成績は、ウイルスの粒子形成機構解明において新たな知見を提 供するとともに、ワクチンとして有効な組み換えウイルスや抗ウイルス薬の開 ナ
発ヘ発展するものと考えられる。
学位論 文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
高 島 郁 夫 小 沼 操 苅 和 宏 明 前 田 秋 彦
学 位 論 文 題 名
Studies on the mechanism of the vlrus particle assembly of flavlvlrus and its application
( フ ラ ビ ウ イ ル ス の ウ イ ル ス 粒 子 形 成 機 構 と そ の 応 用 に 関 す る 研 究 )
ダ 二 媒 介 性 脳 炎(TBE)ウ イ ル ス は フ ラ ピ ウ イ ル ス 科 フ ラ ピ ウ イ ル ス 属 に 属 し 人 に 重 篤 な 脳 炎 と 高 い 致 死 率 を 示 す 人 獣 共 通 感 染 症 の 原 因 ウ イ ル ス で あ る 。 フ ラ ピ ウ イ ル ス は 感 染 細 胞 内 の 粗 面 小 胞 体(ER)に お い て 粒 子 が 形 成 さ れ 出 芽 し て い く と 考 え ら れ て い る が 、 そ の ウ イ ル ス 粒 子 形 成 と 分 泌 の 分 子 機 構 に 関 し て の 詳 細 は ほ と ん ど 明 ら か に な っ て い な い 。
本 研 究 で は 、 ウ イ ル ス 粒 子 形 成 に お け る ウ イ ル ス 構 造 蛋 白 の 働 き を 明 ら か に す る た め に 、 本 来 の ウ イ ル ス 粒 子 の 代 用 と な る ニ つ の 組 み 換 え 粒 子 分 泌 系 を 確 立 し 、 そ れ を 用 い て ウ イ ル ス 粒 子 形 成 の 分 子 機 構 の 解 析 を 行 っ た 。 ヌ クレ オ カ プシ ド を 含ま な い 準ウ イ ル ス粒 子(subviral particles: SPs)系 お よ び 感 染 性cDNAク ロ ー ン を 用 い て 、TBEウ イ ル ス 粒 子 形 成 に お け る エ ン ベ 口 ー プ 膜 蛋 白 の 変 異 の 影 響 に つ い て 解 析 し た 。SPsの 系 に お い 下Tン ベ ロ ー プ 膜 蛋 白 の ー つ で あ るprMの63番 目 の ア ミ ノ 酸 変 異 に よ りSPs分 泌 が 減 少 し た 。 感 染 性cDNAク 口 ー ン の 系 お い て も こ の 変 異 に よ り 感 染 性 ウ イ ル ス の 放 出 量 が 減 少 し た 。 こ れ ら の 成 績 よ りprMが ウ イ ル ス 粒 子 の 出 芽 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。
フ ラ ピ ウ イ ル ス の ゲ ノ ムRNAが ウ イ ル ス 粒 子 内 へ と パ ッ ケ ー ジ ン グ ( 内 包 ) さ れ て い く 機 構 を 解 析 し た 。TBEウ イ ル ス の レ プ ル コ ン を ト ラ ン ス フ ェ ク ト し た 細 胞 に 、 さ ら に ウ イ ル ス 構 造 蛋 白 を 発 現 す る プ ラ ス ミ ド を ト ラ ン ス フ ェ ク ト し て 、 ウ イ ル ス の レ プ リ コ ン を 内 包 し た ウ イ ル ス 様 粒子(virus like paticles: VLPs)を 分 泌 さ せ る こ と に 成 功 し た 。VLPsは 一 度 の み の 感 染 性 を 有 し て お り 、 そ の 感 染 性 は 抗TBEウ イ ル ス 抗 体 に よ り 中 和 さ れ た 。 さ ら に 緑 色 螢 光 物 質 や ネ オ マ イ シ ン 耐 性 遺 伝 子 を レ プ ル コ ン に 組 み 込 み 、 ウ イ ル ス 粒 子 内 に バ ッ ケ ー ジ ン グ さ せ る こ と に 成 功 し た た め 、 外 来 遺 伝 子 の 導 入 と 発 現 が 可 能 と な っ た 。
本 研 究 に お い て 、 二 つ の 組 み 換 え 粒 子(SPsお よ びVLPs) の 系 を 構 築 し 、 ウ イ ル ス 粒 子 形 成 に ウ イ ル ス 構 造 蛋 白 が 重 要 な 働 き を し て い る こ と を 明 ら か に す る と と も に 、 こ の 組 み 換 え 粒 子 の 系 が ウ イ ル ス 粒 子 形 成 機 構 研 究 モ デ ル と し て 有 用 で あ る こ と を 示 し た 。 こ れ ら の 成 績 は 、 今 後 ワ ク チ ン と し て 有 効 な 組 み 換 え ウ イ ル ス や 抗 ウ イ ル ス 薬 の 開 発 へ 発 展 す る も の と 考 え ら れ る 。 よ っ て 、 審 査 員 一 同 は 、 上 記 博 士 論 文 提 出 者 好 井 健 太 郎 氏 の 博 士 論 文 は 北 海 道 大 学 大 学 院 獣 医 学 研 究 科 規 程 第6条 の 規 定 に よ る 本 研 究 科 の 行 う 博 士 論 文 の 審 査 等 に 合 格 と 認 め た 。