論文の内容の要旨
氏名:西 盛 信 幸
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:慢性特発性蕁麻疹患者におけるHemokinin-1の役割
背景:近年、神経伝達を担うタキキニン類神経ペプチドの1つであるサブスタンスP (substance P: SP)が 慢性特発性蕁麻疹 (chronic spontaneous urticaria: CSU)患者の血清中で有意に増加し、SP濃度と重症度 との間に正の相関関係があることが報告され、SPがCSUの病因の1つであることが示唆された。また、
Fujisawaら(同研究室)はMas-related gene X2 (MrgX2)がSPの受容体であり、慢性蕁麻疹の重症度スコ アであるurticaria activity score 7 (UAS7)が30以上の重症CSU患者の膨疹部において、MrgX2を発現 している皮膚マスト細胞数が有意に増加していることを報告した。SPとヘモキニン-1 (hemokinin-1: HK- 1)は、11個のアミノ酸からなり、アミノ末端側に6個の共通のアミノ酸を有している。HK-1は痛みやか ゆみに関与するペプチドであるが、その他のタキキニン類神経ペプチドとは異なり血球系の細胞で発現す るという特徴を有し、がん細胞の浸潤や動脈圧降下に関与することが知られているが、CSUへの関与は不 明である。
目的:CSU患者におけるHK-1の役割を明らかにすること。
方法:日本大学医学部附属板橋病院皮膚科を受診したCSU患者56名と対照群 (健常コントロール、normal control: NC) 44名から採血し血清を分離した。さらに、血清からC-18カラムを用いてペプチドを抽出し た。血清中のペプチド濃度を5倍に濃縮し、このペプチド溶液をHK-1およびSPの測定に用いた。ヒト マスト細胞は皮膚および関節滑膜から精製し、stem cell factor (SCF)とinterleukin (IL)-6を用いて培養し た。NCおよびCSU患者のT細胞を分離し、抗CD3抗体および抗CD28抗体で刺激し、細胞上清中の HK-1濃度を測定した。HK-1, SPおよびヒスタミンの測定は、酵素免疫測定法 (enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA)を用いた。統計学的解析はMann-Whitney U testを用いた。
結果: CSU患者56名中13名 (23.2%)においてHK-1がELISAの感度以上で検出され、HK-1はNCよ りもCSUの方が統計学的に有意に高かった (p = 0.006)。CSU患者において、血清HK-1濃度と抗Fcε RIα鎖自己抗体濃度には負の相関がみられ、抗IgE自己抗体濃度との相関は認められなかった。また、HK- 1はMrgX2を介してヒトマスト細胞からの脱顆粒を惹起した。HK-1がELISAの感度以上のCSU患者に おいてTCRおよびCD28を介する刺激でHK-1が産生された。
結論: CSU 患者の一群で、HK-1が病態に関与していることが示唆された。この群は、自己抗体が原因
と なるCSU群とは別の群の可能性がある。