︿論説﹀
アメリカ水法における地表水の利用ルール(上)
宮暗淳
目次
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第一章序論
第二章民事法のルール(O一く一一 [⇔♂<即己一Φ)
第一節民事法のルールの意義
第二節民事法のルールの修正
第三節修正民事法のルールの現状
第三章コモン・ローのルール(Ooヨ日○⇒国口08図国三Φ)
第一節コモン・ローのルールの意義
第二節コモン・ローのルールの修正(以上本号)
第三節修正コモン・ローのルールの現状
第四章合理的利用のルール(国Φゆg∩○昌節げ一ΦqのO菊=一①)
第一節合理的利用のルールの意義
第二節合理的利用のルールの修正
第三節合理的利用のルールの現状
第五章結論
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第一章序論
ユ ﹁地表水﹂とは︑河川︑湖沼︑池以外の場所において地表上に存する水をいう︒例えば︑地上を流れる雨水や洪水
によって盗れた水などが主なものとして挙げられる︒地表水にかかわる紛争は︑隣接する上流地所有者と下流地所有
者の間において生じる傾向にある︒地表水に関する紛争の典型的ケースは︑上流地所有者が地表水の自然な水量を増
減させたりもしくは水流を変化させたりすることによって︑下流地所有者の権利を侵害した場合︑または下流地所有
者が自然の水の流れを阻害することによって︑地表水を逆流させ上流地所有者の権利を侵害した場合である︒特に︑
適切な排水システムを考慮せずに土地を開発したり改良したケースにおいて︑地表水の処理をめぐる問題が顕著とな
ることが多い︒
具体的な事例で説明しよう︒土地所有者が近代的な居住用建造物並びにそれに隣接する駐車場を建設した︒その駐
車場は不浸透性のコンクリートで地面を覆っていたため︑多量の雨水が地面に吸収されず隣接地に流入して隣接地所
有者に損害を与えた︒そこで︑隣接地所有者は損害を回避するため︑土地の境界線に沿って土堤を造った︒その結果︑
地表水が逆流することとなり︑居住用建造物および駐車場に損害が生じた︒かかる状況において︑どちらの土地所有
者がこれらの損害を賠償しなければならないのであろうか︒また︑どちらが土地の改良についての経済的費用を負担
しなければならないのであろうか︒当該問題についての解決策は︑アメリヵ合衆国各州が採用する地表水の利用ルー
ルによって異なってくる︒
アメリヵ水法における地表水の利用に関するルールは︑民事法のルール(O一く一一一9<﹃﹃ロ一Φ)︑コモン・ローのルール
(︒08ヨ○昌①き旨図憎乱Φ)および合理的利用のルール(おpωo舜巨Φ話①巴三︒)の一二つがある︒これらのルールは︑一
ア メ リカ水法 にお け る地 表 水 の利 用 ル ー ル
八一二年から約半世紀の間に裁判所によって判示された︒この頃から︑土地の開墾︑農業の発達︑鉄道の建設および
都市の発展などの諸要素によって︑地表水の処理をめぐる訴訟が徐々に増加しはじめた︒そして二〇世紀に入ると︑
都市への人口集中が著しくなり︑急速に都市化が進展するに至った︒その過程で都市の土地利用のあり方が変化し︑
これに伴って必然的に水の利用にも変化が生じることになった︒そこで各州裁判所は︑前述の三つのルールを修正し
たりまたは他のルールへ移行することにより︑都市化に適応しうる地表水の利用ルールを形成していったのである︒
本稿の目的は︑地表水の利用ルールの原形を説示したうえで︑土地利用の変化に対応するための地表水の利用ルー
ルの修正または移行について考究し︑その利用ルールの変遷並びに現状を明らかにすることにある︒
注(1)○閃巨;;9≦讐興図Φ︒︒︒母8︒・しuα.<●08訂巴○昇一導︒ヨ①ζ器げ霞O︒器2養口身U一︒︒ひこま偽頃﹄ユ置︒︒隔⊆︒一(○匹9・
一⑩①c︒γ一㌧〜暑お題oO・U鋤く一︒︒"日げ①冒鋤薯ohGQ霞h舘①≦鋤⇔霞言]≦♂︒︒o霞廿bO腿室o.U︒国①<.一ω8一G︒○︒山参(一⑩切Φ)が詳細で
ある︒
第二章民事法のルール(○一く一一ピ螢類国嘗一①)
第一節民事法のルールの意義
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地表水の利用に関する民事法のルールとは︑地表水の自然の流れを妨害する土地所有者が︑
ユ 土地所有者に生じた権利侵害について責任を負わねばならない︑というルールである︒ その妨害によって他の
ll8
アラバマ州が初めて民事法のルールを適用した判例において︑﹁民事法の原理(αOOけ﹃一昌Φ)とは︑上流地所有者ま
たは要役地所有者がその土地の上に降り注ぎまたは集積する全ての水を排出するために︑下流地所有者または承役地
所有者に対して自然的地役権(昌鋤酔⊆﹃餌一①鋤g亀①bPΦ口ひ○﹃ωΦ﹃<一貯⊆画①)を有することでみ撰・﹂と説述しているように・民
事法のルールは自然流水についての地役権(◎aΦ同く一σ二島Φ)の理論を基礎としている︒したがって︑下流地所有者は自
分の土地に流れ込んでくる地表水を受け入れなければならないし︑一方︑上流地所有者は下流地所有者に損害を与え
るような排水の自然秩序を変更する権利をもたないことになる︒要するに︑土地所有者相互間において自然の排水シ
ステムを維持する義務を負うということである︒
アメリカ合衆国において初めて地表水の利用に関して扱った判例は︑一八一二年のルイジアナ州の〇二$霧
ヨ Z鋤く一σq鉾一800・<G乞Φ≦○巴一$口︒︒である︒当該判例は︑ナポレオン法典に表れている法から民事法のルールを導き
出したと言われている︒
ら ペンシルベニア州で民事法のル⁝ルが初めて採用された]≦節暮ぎく・口己巳①は︑民事法のルールの起源について︑
﹁取り扱われている[地表水に関する]問題を我々の参考文献から即座に見出すことはできないので︑私は敢えて外
国の文献から[地表水に関する]法を引き出すことにした︒﹂と陳述している︒
続いて︑この判例は民事法のルールを次のように詳しく説明している︒
﹁二つの土地が隣接しており︑一方の土地が他方の土地より低かった場合︑下流地は上流地からの全ての自然流
水を必然的に受け入れなければならない︒(中略)下流地所有者は︑上流地からの自然の水の流れを止めるであろ
う堤防を建設する権利を有してはいないし︑また上流地所有者は水流が自然の水道(筈9昌昌Φ一)および下流地に造
られた一つの新水道に注がれる何らかの掘削または下水施設を建設する権利を有していない︒すなわち︑上流地所
有者は通常いくつかの水道によって隣接地に流出する水を一つの水道に集め︑下流地の浸食を拡大することはでき
ア メ リカ水法 にお け る地 表水 の利 用 ル ー ル 119
ないのである︒﹂
お 前述したように民事法のルールは︑一八〇四年のナポレオン法典に遡ることができるが︑更には﹁水は昔ながらに
流れ︑そして流れなくてはならぬ︒﹂との法格言に表れている自然法の原理に︑その根拠があると言われている︒す
なわち︑民事法のルールの理論的根拠は︑自然流水の理論のそれと同一のものであることになる︒次のイリノイ州の
判決は︑このことを如実に述べている︒
一水が[雨として]上空の雲から直接に土地に降ってくる場合と︑水が[雨として]遠く離れた丘に降り︑そし
て地表を流れて土地に到達する場合とでは︑原則的にどこが違うのであろうか︒(中略)自然法を強制するルール
と同じくらい公平で︑かつ適用が容易な他のルールは明らかに存在しえない︒﹂
民事法のルールが適用される主な理由は︑﹁地表水を処理するための損害を最小限にする方法(夢Φ一①器けげ碧日h三
ね ≦醇)は︑排水に関する自然法(廿げΦ昌簿け二巴9一一9ぐくo◎)を強制することである︒﹂という考えにあり︑また﹁土地の取
得につき︑その土地が自然排水の負担を条件として譲り受けられることを予期すべきであり︑かつ要求されるべきで
ハお ある︒﹂との見解にも支えられている︒
自己の土地を開発したりまたは改良することによって︑自然の排水秩序を変えてしまうことがある︒このような場
合において︑民事法のルールを厳格に適用するならば︑開発または改良を加えた土地所有者に対して︑その排水秩序
を変更したことにより生じた損害または損害の発生を回避するために要した経済的費用を負担させることになる︒そ
ちれ故に︑民事法のルールは土地の開発および改良を妨げるとの非難を受けるに至った︒
お かかる批判は多くの裁判所に影響を与え︑民事法のルールを否定する主要な論拠となっている︒しかしながら︑民
事法のルールは実際のところ土地の開発および改良を禁じているわけではないとの理由により︑現在でも多数の裁判
所において当該ルールが採用されている︒とはいえ︑民事法のルールをそのまま無修正で適用している法域はなく︑
伽土地の開発および改良を充分に考慮した修正または制限をルんに付加している州がほとんどでみ群︒
注(1)ω笹臣$<・固昌8即即oげ霞けρ]≦6Ωξρ圃暮①匡霞窪8︒・≦騨げの=眺08≦鉾Φ声b︒らζ弦P﹃●罰︒<・g︒⑩ど︒︒㊤G︒(δ心O)じ(2)ZぎぎσQ興︿●乞o毫ooρ醒﹀一鋤・讐8卜σ○○凹‑卜OQOc︒(一器bQ).
(3)鱒ζp註島崔(冒﹂c︒一ト︒)・
(4)9︿グ8・簿.も﹂躯︒︒・
(5)ま霊●心届(δ軽c︒)●
(6)景α●も●自①・
(7>録ロ.
(8)詳細は︑拙稿﹁アメリカ合衆国における沿岸権の起源﹂創価大学創立二十五周年記念論文集二七〇頁以下参照︒
(9)閑ξ・p︒b●葺●もp︒︒逡﹂︒︒⑩90匿︒・るb・︒一け.も・置c︒.
(10)自然流水の妨害を禁止する理論をいう︒
(11)Ωo同]Bδk<・ω鋤曵o円ρ切卜◎一一憎騙cO"H①図(屋①⑩)・
(12)O匿=︒ω国・じu円乙σq︒︒・"弓冨﹀℃忌8鉱30hωξ審8≦鉾霞切巳︒︒︒ぎdき簿昌﹀冨霧﹄b︒ζo・ド即o︿・刈少刈㊤(おミ).譲塁oPoP簿こPc︒霧嚇U㊤<寅Ob.o貯もb﹂島1=c︒も同旨である︒
(13)訳①気く・国○白δざ凸爬勺.邸α・蜘図P器鵠(○巴・δ①①)・
(14)実際に︑民事法のルールが土地の開発および改良を妨げる結果を招いているか否かについては︑議論がある︒詳しくは︑
本章第三節において述べる︒
(15)匡鋤=<・空臨品る刈のo.qQ︒①(おO腿ごいoξ<・Z舘戸コト︒ω・≦﹂お(おOO︒)旧じuo覧<.09包ぎbOZ・≦一窃8(易鐙ご﹀げげoひく・國9︒霧塁O詳ざの﹃9塵ρbu.国・国こ○︒ω寓ρ卜σコ(一Q◎○◎腿)一uuo≦Hのげ賢く.の冨①さ曽Z曾9い●○︒蟄(H◎︒①q)"
しσ碧江2<・≦=8ぢ○◎①Z・鴫■=O(一〇◎○◎H)⁝い=屋8巳く●の8芝碧計旨O乞.国●卜◎ユお①(お器)嚇じo⊆鉱霞く●しσ把口ρこ○凸︾・卜○αおα(国﹂.お刈α)二≦三画霞く.臼鋤σqロρお①Z●ぐく.鱒儀器継(一⑩コ)ら
(16)本章第二節において詳述する︒