ア メ リ カ に お け る 経 済 規 制 立 法
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(2) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶ ︵2︶. 三四二. iク事件≧&ミ黛§さミ劉ミ神までの一連の判決においては︑デュー・プロセス条項が︑手続のみならず実体的側. 面においても︑立法部を制約する規定として適用されてきた︒このような実体的デュープ・セスの法理によって︑多 ︵3︶ くの社会・経済立法が違憲とされてきたことは周知の事実である︒とりわけ︑アメリカにおける財産権保護の主要な. 防壁は︑連邦最高裁判所︵以下︑最高裁と呼ぶ︶とよくいわれるが︑デュー・プ・セスとレッセ・フェールの経済を. 同一視することにより︑財産権は︑他のすべての憲法が保障する価値に優越し︑社会経済状況の変化にもかかわら ず︑調整にも修正にも服さない絶対的価値として安置された︒ ︵4︶. しかしながら︑このような司法哲学も一九三〇年代の大不況という社会経済的現実の前に︑無条件降服したと評さ. れるのももっともであろう︒つまり︑一九三四年のネビア事件で︑最高裁は︑州法による牛乳の価格規制を合憲と判. 示し︑さらに︑一九三七年には州の最低賃金法を承認したのである︒それ以来︑最高裁は︑連邦のものにせよ︑州の ︵5︶ ものにせよ︑デュー・プ・セス条項を理由としては︑経済規制立法を︑一件の例外を除き無効としてきてはいない︒. これに代わり︑平等保護条項が援用されることになった︒そして︑いわゆる﹁優越的自由﹂という名の下に︑最高裁 ︵6︶ は︑修正一条の人格的諸自由を極めて強く保護する反面︑経済立法の規制に対しては︑一九三七年のカロリーヌ事件. q§馬ミ9ミ霧§Cミミ§鳴︑︑ミ§凝Coミミミ以来︑極めて強度の合憲性を推定し︑無干渉の姿勢を長く維持し ︵7︶ てきた︒しかし︑ライク教授の﹁新しい財産﹂に象徴される福祉行政の拡充と公権力への私的自治領域への積極的介. 入は︑従来の人格的自由と経済的自由を峻別する二分法の問題点を明確化し︑それとの関連で︑平等保護条項の下で ︵8︶ の︑人格的自由には︑﹁厳格審査﹂︑経済的自由には﹁最少限の審査﹂という定式の再検討を迫ってきている︒このよ.
(3) うなことを念頭において︑本稿はいわゆる﹁二重の基準﹂の主要な論拠とその問題点を概括することにより︑社会経 済立法に対する違憲審査基準を考察しようとするものである︒. そこで︑まず︑市民的自由と経済的自由との二分法を仮定し︑これらの異なる自由を侵害する立法に対する司法審. 査の基準はそれ自体異なることを提起した一九三八年のカ・リーヌ事件でのストーンの法廷意見を検討しなければな. ﹁二重の基準﹂の論拠と問題点 ﹁二重の基準﹂の確立. らない︒. 一. 一九三八年の有名なカ・リーヌ事件は︑混入ミルクの州際通商を禁止する法律違反で起訴された同会社が︑当該法. 律のデュー・プ・セス違反を争った訴訟である︒経済規制立法に対する強度の合憲性の推定を前提とする合理的基礎 ︵合理性︶の基準を打ち出し︑ストーン法廷意見は次のように述べている︒. ﹁立法府の判断を支える事実の存在は推定されなければならない︒というのは︑通常の商取引に影響を与える規. 制立法は︑既知の事実もしくは一般に想定された事実に照らし︑それが立法者の知識と経験の範囲内で︑ある合 ︵9︶. 三四三. 理的基礎に基づいているという推定を排除するような性格のものでない限り︑違憲と宣告されるべきでないから である︒﹂. さらに︑これにあまりにも有名な次のような脚注4がつけ加えられている︒ アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(4) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 三四四. ﹁立法が最初の修正十ケ条のような︑これらの条項が修正一四条の範囲的に包含されると考えられる場合も同様. だと思われるが︑憲法の明確な禁止の範囲内に文面上入っていると思われる場合︑合憲性推定の働きの範囲はよ り狭くなるであろう︒. 望ましくない立法の廃止をもたらすことが通常期待される政治過程を制限する立法が︑修正十四条の一般的禁止. の下で︑多くの他の立法の類型よりも︑より厳格な司法審査に服するか否か︑ここで考察することは不必要であ る︒. 同様な考慮が︑特定の宗教的⁝民族的⁝もしくは人種的少数者に向けられた法令の審査に働くか否か︑即ち︑個. 々の孤立した少数者に対する偏見が︑通常確実に少数者を保護してくれる政治過程の作用をひどく削減する傾向. があり︑かつ︑それに対応して一層厳重な司法審査を要求するような特別な状況となりうるか否かを調べる必要 もない︒﹂. このことは︑市民的自由と経済的自由との二分法を仮定し︑これらの自由を侵害する立法の司法審査の基準それ自. 体が異なることを意味し︑規制立法が経済的自由の侵害の場合には︑合理的基礎という最少限の審査に服し︑市民的︑. 人格的自由を侵害する場合には︑より厳格な司法審査に服するということを明らかにしている︒したがって︑経済的. 自由の規制には強度の合憲性の推定が働くことにより︑事実上︑立法府の裁量に委ねられるのとは対照的に︑人格的. 自由には強度の司法上の保護が与えられることになる︒このようにして﹁二重の基準﹂の根拠が与えられ︑そして︑.
(5) ︵10︶. それは四年後のジョンズ対オペリィカ事件\ミ跨鉾O慧畿ぎでのストーンの反対意見で用いた﹁優越的自由﹂とい. う観念と結合して︑﹁二重の基準﹂とその司法審査の形態として定着することになった︒さらに︑このような二分法. は︑ウォーレン・コート期に判例理論として結実する︒そこでは︑ストーンが用いた﹁優越的自由﹂という文言が︑. 権利の章典に限定されていた当初から︑新しい黙示的ではあるが憲法上の自由を創設するところまで︑権利章典の内 ︵n︶. 容の解釈を自由化するのとは逆に︑経済規制立法に対しては︑最高裁は︑もはや︑無干渉という領域まで後退してし. まったと批判されるにいたった︒他方で︑この﹁二重の基準﹂は︑平等保護事件にも適用され︑いわゆる二段階アプ. ﹁二重の基 準 ﹂ の 論 点. ・ーチとして展開することになった︒. 二. 人格的自由が︑人間の精神という︑いわば内的な絶対性を志向するのとは異なり︑経済的自由が対社会性を前提す. るという意味において︑経済的自由と人格的自由を区別する二分法は︑それなりの合理性がある︒したがって︑人格. 的自由の方がより厳格な審査に服さなければならないという一般原則それ自体は︑判例︑学説ともに認めるところで ︵12︶. 代議的民主政の原理による基礎づけ. 三四五. ある︒そして︑人格的自由の優越性を基礎づける根拠は︑自然権説︑前提条件説︑功利主義的基礎ずけ等々あまたあ ① ︵13︶ ω るが︑ここでは︑その中で︑最も説得力に富む代議的民主政の原理による基礎づけ︑及び︑経済規制領域での司法能 ︵14︶ 力という二点で﹁二重の基準﹂の問題点を検討することとしたい︒ i. アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(6) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 三四六. これは︑アメリカ憲法の本質的基盤が︑代議的民主政︑国民の自治の原理にあり︑あらゆる言論が自由に発表され︑. 国民が自由に政治的真理を発見し︑決定してゆくところに民主政の発展を見る見解で︑表現の自由の保障に最も大きな ︵15︶. ウェイトを置くものである︒したがって︑国政の基本原理と直接の関連を有しない経済的自由と比較して︑表現の自. 由を含む人格的自由が一層強い保護に値することになる︒あるいは︑精神的自由及び少数者の権利が︑経済的自由と ︵16︶ 異り︑民主政の政治過程と特別な関係を有するが故に︑優越するという立場である︒しかし︑政治的な表現の自由が. 重視され︑それが表現の自由の中で最も重要であるとしても︑単に政治的表現の自由の優越性のみを支持することに. なるのではないかということ︒さらに︑政治過程と特別な関連を有する自由の優越性の問題に答えうるとしても︑他. 経済規制 領 域 で の 司 法 の 能 力. の諸自由の問題が回避されているのではないかということ︒より本質的には︑表現の自由の規制立法に対してより狭 ︵17︶ い合憲性の推定が働くという原則を超え︑違憲の推定が働くとする場合︑この見解は︑論理矛盾に陥ることである︒ 11. にかかわるものまで多種多様であり︑それらに対する規制は︑諸般. 経済問題という複雑な利益の調整をなし国家目的を遂行する上での高度な政策的判断を必然的に伴う経済的自由の ︵18︶ 規制立法の合憲性を判断する機関として︑裁判所が必ずしも適切ではないとする理由である︒しかし︑経済的自由と いっても巨大な企業体から︑一国民の 生存権. の事情を考慮すれば︑立法目的により︑あるいは︑政策により︑その委ねられる度合は異なるであろう︒さらに︑現. ︵︵. 11の. 代社会では︑公権力が一定程度介入する経済生活の領域は構造的に避けられないものである︒いずれにしても︑経済. 規制は︑原則的に︑国民代表たる立法府に委ねられる政策的事項ではあるが︑従来の﹁二重の基準﹂を支えるi.
(7) 正当化理由によっては︑合理性の基準による経済的自由の規制立法に対する﹁最少限の審査﹂︑その帰結としての司. ︵19︶. 法の無干渉を正当化することはできないであろう︒このような︑裁判所の態度に異議を唱えたのがマク・スキーであ. った︒彼は︑経済規制措置については︑立法府の判断が尊重されるべきであるが︑それは全面的な司法の無干渉を正. ︵20︶. ︵21︶. 当化するものではないという立場から︑伝統的平等保護原則を適用したリーディングケースとしてしばしば参照され. る︑リー眼鏡会社事件ミミ欝ミ吻ミ黛トミO辱赴らミ9.1ここでは︑オクラホマ州法が︑検眼師または眼科医によ. る処方なしに眼鏡屋がレンズを合わせたり︑取り換えたりすることを違法としていることが争われ︑最高裁が︑立法. 府の裁量に判断を委ねた事件ーを引合いに出し︑﹁われわれのなすべきことは︑経済に関する法律が︑常に︑あるい. は通常慎重な司法部であれば︑経済問題よりも困難なその他の争点に判断を下す権限を主張するにもかかわらず︑そ ︵22︶ れを回避しなければならないというような極度に困難な課題を含むかどうかを決定することである︒﹂と述べ︑経済. 規制立法に対する最高裁の無干渉アプ・ーチを批判した︒そして︑彼は︑合理的な基礎を欠く経済規制立法の合憲性. を審査する裁判所の権限の主張を通して︑人格的権利と経済的自由に積極的な保護を及ぽそうとする︒さらに︑若干 ︵23︶. の事例を挙げ︑経済問題と︑人格的権利とが政府の単一の措置に深く関わっている場合︑二分法はどのようにして維. 持するのかという疑問を投げかけた︒このように︑﹁二重の基準﹂から派生するウォーレン・コート期の厳格な二段. 階アプ・ーチは︑経済的自由︵権利︶と︑人格的自由︵権利︶とが明確に区分されることを前提として成立するもの. 三四七. である以上︑両者の混在する今日的問題を解決しなければならない場合︑二段階アプ・ーチの硬直性が批判され︑そ の再検討が日程にのぼるのは当然のことであろう︒ アメリヵにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(8) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 二 二段階アプローチ. 三四八. 最近︑最高裁は︑特定のタイプの平等保護及びデュー・プ・セスに厳格な司法審査をなすことによって︑伝統的な ︵24︶. ﹁二重の基準﹂を修正してきたといわれている︒つまり︑制定法の分類のタイプに応じて異なるカテゴリィーに事件. を置くか︑異なるレベルで審査を行っているのである︒経済・財産的自由︵権利︶に関する事件では︑最高裁は︑立. 法がその制定法上の分類をなす上で︑合理的な基礎を有するか否かを審査する伝統的な平等保護基準を使ってきたが︑. 基本的市民的権利及び自由の争点は︑より厳格な審査に付せられてきた︒いわゆる基本的利益もしくは権利︵投票権︑. 疑いのあるμものではないが特に厳格な審査が要請される. 性 の分類の. 刑事手続に関する諸権利︑州際間の旅行の自由︶︑もしくは疑いのあるカテゴリィーに触れる法律上の分類の提示︵人 ︵25︶. 種︑国籍︑血統による差別︶︑あるいは︑. 強度の必要的. 国家的利益の論証を求めることになるのである︒かくして︑一度︑基本的利益. 提示がそれである︒このような場合︑最高裁は︑立法府もしくは行政府にその立法の挙証責任を転化し︑争点として. 当該制定法の分類に. もしくは疑いのある分類カテゴリィーが論証されれば︑このような諸権利は︑相当強い保護を司法部によって保障さ れることになる︒. 一九六〇年代の初頭まで︑平等保護という名の下での司法の干渉は︑人種差別事件以外では︑事実上知られていな ︵26︶. かった︒しかし︑ウォーレン・コートの最後の十年間で展開したいわゆる新平等保護の台頭は︑厳格な二段階アプ・1. チとして帰結した︒これは︑ある状況では︑理論上厳格であるが実際上は致命的とされる新平等保護を援用し︑他の.
(9) 文脈では︑理論上最少限の審査で︑事実上審査なしという敬譲的平等保護が勢力を揮ったことを意味している︒新平. 等保護は︑ダイナミックな概念であるため︑そのフ・ンティアとして︑福祉受給︑ゾーニング︑公役務︑学校の財政. が︑類似の領域として検討されてきた︒他方︑疑いのある分類に関しても︑富の分類が付加されることになった︒こ ︵27︶ のように︑次々と﹁厳格審査﹂の発動を正当化するという急転回を招いたのは周知のことである︒. だが︑バーガー・コートは︑新平等保護の拡大には消極的であるといわれている︒AFDCプ・グラムにょる扶助 ︵28︶. 額の最高限度額が原告の家族規模と比較して差別的であることを理由に︑平等保護条項違反が争点となったダンドリ. ッジ対ウィリアムズ事件b§辱畿題§ミミ貯ミ肋で最高裁は︑最大限度を越える福祉受給の拒否は︑基本的利益. を侵害するものではなく︑審査のレベルを最少限から最大限に上げるものではないと宣言した︒ここでは︑伝統的な. 合理性の基準が援用された︒しかし︑﹁厳格審査﹂発動の機会を見出せなかったということから直ちに︑新平等保護の. 放棄と見るのは早計であろう︒実際.ハーガー・コートは︑ウォーレン・コートの下で確定されたものは継承したので. ある︒つまり︑最高裁は︑旅行︑刑事訴訟︑投票︑及び言論の分野において︑十分に確立した基本的利益︑もしくは ︵29︶ 権利を認めるために﹁厳格審査﹂を適用した︒また︑人種差別事件︑定数配分事件に関しても同様である︒しかし︑. このような﹁厳格審査﹂と﹁最少限の審査﹂という形式的二分法は︑多くの学者︑裁判官の批判にさらされることに. なったのはいうまでもないことである︒特に旧定式の再検討と新たな明確化において他の最高裁判事をリードしてき ︵30︶ たとされるマーシャル判事は︑ダンドリッジ事件の反対意見での分析において︑基本的もしくはそうではないとする. 三四九. アプリオリな定義による顕著な進展はなかったと批評した︒かくして︑二段階アプ・ーチの硬直性の再検討と再定式 アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(10) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 合理性の基準. 化が進展していることは興味深いところである︒. 二. 三五〇. ウォーレン・コート期において︑平等保護事件の違憲審査基準に関しては︑前述の二段階アプ・ーチが判例理論と. して確立していた︒そして︑租税あるいは経済規制に関する差別的取扱については伝統的な﹁合理性﹂もしくは︑﹁合. 理的基礎﹂の基準が適用されてきた︒これは︑経済規制立法に対するデュ:・プ・セス違反の主張がもはや最高裁で. 認められなくなったために︑それに代わる違憲訴訟の根拠に︑平等保護条項が援用され︑さらに︑平等保護審査に︑ ︵31︶ 違憲審査の準則として︑伝統的なコ一重の基準﹂の考え方を取り入れたことを意味している︒. しかし︑このような︑人格的自由と経済的自由を峻別する二分法は︑﹁疑いのある分類﹂あるいは︑﹁基本的権利も. しくは利益﹂に示される概念それ自体が必ずしも明確ではなく︑司法審査における合理性の﹁最少限の審査﹂と﹁厳. 格審査﹂とのギャップを埋めることができないということ︒それに加えて︑特に福祉給付事件に代表されるいわゆる. 生存権的権利 と結びついた形で︑経済的自由の問題がク・ーズアップされたとき︑二分法に内在する矛盾は一層. 明瞭なものとなった︒現代社会の貧困と失業が︑資本主義的経済機構の不可避的産物である以上︑人民には最少限の ︵32︶. 分け前を受ける権利があるとし︑公的な扶助は︑貧困者あるいは失業を償う国の補助金であると述べ︑福祉受給資格. の理論的な基礎づけをなしたとされるライク教授の﹁新しい財産﹂もその一つの例証であろう︒このような傾向を感. 知してか︑最高裁は︑従来の二分法に著しい転換をなした︒それが︑告知聴聞の機会を与えずに銀行預金の差押え通.
(11) ︵33︶. 告処分を認めるコネティカット州法の合憲性が争われたリンチ事件卜黛§魯鉾き§§oミ霊ミ§恥Oo鳶︒である︒. ここにおいて全員一致のスチュアート法廷意見は︑カ・リーヌ事件以来の二分法はもはや維持することが困難である ことを明確にして次のように述べる︒. ﹁人格的自由と財産的権利との二分法は間違っている︒財産が権利を有するのではない︒人が権利を有するので. ある︒不法に剥奪されることなく財産を享受する権利は︑問題の﹃財産﹄が福祉小切手︑家庭の勘定書であろう. と︑預金計算書であろうと︑話す権利または旅行する権利に劣らず︑まさに人格的権利なのである︒実際︑自由. に対する個人的権利と財産における個人的権利との間には︑根本的な相互依存性が存在する︒どちらも他がなけ ︵34︶. れば意味をもつことはできないであろう︒財産における権利が基本的な市民的権利であることは︑古くから認め られている﹂と︒. このようにして︑二分法が否定されれば︑当然︑二段階アプ・ーチにもその余波は避けられず︑その理論的根拠は 再検討を迫られたのである︒ ︵35︶. ところで︑平等保護の問題がデュー・プ・セスの議論と挟をわかち︑独自の審査基準を裁判過程で打ち出すのは今. 世紀半ば以降のことである︒一九五〇︑六〇年代には︑最高裁は︑数多くの平等保護判決を下し︑いくつかの法理を. 三五一. 象愚魯o鉾↓ぎミ讐ミ事件である︒これは︑社会保障の受給者に一. ︵36︶. 発展させてきた︒そこで︑その中で平等保護の審査基準について最も典型的なものを概観することにより︑その合理 性の基準を考察することにしたい︒. まず︑一九六九年のシャピ・対トンプソン. アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(12) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 三五二. 年以上の居住条件を課した法律が︑平等保護違反を理由に争われたものである︒最高裁は︑公的扶助の受給資格とし. て一年間の居住条件を要求することは︑州際移動の基本的権利を侵害し︑平等保護に違反するとした︒そこで次のよ. うな基準を打ち出した︒﹁なんらかの﹃疑わしい﹄基準に基づくか︑あるいは﹃基本的権利﹄に影響を及ぼすような ︵37︶ 法律上の分類は﹃強度の必要的﹄利益により正当化されないかぎり︑平等保護を否定する﹂という画期的な基準を明 確にしたのである︒. ︑. ︑︑︑. ︵38︶. そこで︑このような基準が打ち出されるまでの平等保護の基準を概観することは有意義であろうと思われる︒最初. の事件は︑修正一四条の規定が︑人種差別に対する保護であるとする屠殺場事件曽ミ晦ミミ魯ミ器O禽馬である︒そ. ヤ. モ. の後のサンタ・クララ・カウンティー対南太平洋鉄道会社事件ぎミ亀9ミ黛らミ§礎§象ミ魯ミ醤尋ら慧q和09. では︑法人が修正一四条の保護の対象に含まれることを承認した︒このことにより︑以後法人が訴訟当事者として︑ ︵39︶. 企業規制立法もしくは課税立法という類の経済活動に対する諸立法の合憲性を争うことになり︑これが平等保護原則. ︵41︶. の中心的分野となる︒この段階では法律が︑それを適用する上で一定の分類をするが︑その分類が法律の目的との関 ︵ω︶ 係で合理性を有するか否かを間うことが合理性の基準である︒さらに︑一九一〇年のリンズリー対炭素天然ガス会社. 事件トき勢N遷黛O亀&ミ魯さ殊ミミO毯09で︑いわゆるリンズリー法則が明らかにされる︒その要点は︑次の 如くである︒. 一︑平等保護条項は︑分類が合理的で全く恣意的でないときは︑規制目的のための財産・職業の分類を容認する︒. 二︑分類は︑有効であるためには数理的な正確さによってなされる必要はなく︑また︑実際上完全に不平等を避.
(13) ける必要もない︒. 三︑分類が間題とされるとき︑いかなる事実状態もその分類を確証せしめるであろうと合理的に考えられるなら. ば︑法律が制定された時点で︑そのような事実の状態が存在していたと推定されなければならない︒ ︵42︶. 四︑ポリス・パワーの下にある分類の有効性を問題とする者は︑分類が不合理で恣意的であることを証明する責 任を有する︒. 以後︑このようなリンズリー法則にのっとって最高裁は︑伝統的平等保護の基準を︑ポリス・パワーとの関連で︑ ︵43︶. あるいは︑経済活動規制の分野で明確にするに至る︒従って︑ここでは︑その典型的事件としてのウィリアムソン対. リー眼鏡会社事件ミミ蔚§肋§鮮卜SO黛魯ミ09を挙げることができる︒この事件は︑検眼師あるいは眼科医に. よる処方なしに眼銀屋がレンズを合わせることあるいは取り換えることを禁ずるオクラホマ州法が争われたのである. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ち. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ち. ヤ. ヤ. ヘ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ち. ヤ. セ. ヤ. ヤ. ヤ. ち. ち. ヤ. ヤ. ち. ヤ. ち. ヤ. ち. が︑最高裁は︑当該法律要件の必要性の有無を立法府の判断に委ね︑その経済規制立法の合憲性を認めたものである︒. ヤ. このような判例の共通点として︑次のような点が指摘されている︒. ヤ. ヤ. ヤ. ﹁一︑法律が平等保護原則に反しているか否かの審査についてきわめて抑制的態度をとること︒. ヤ. ニ︑法律の設けた分類と立法目的との関係に広く合理性を認めること︒. ぬ. 三︑立法目的の分析について︑立法者意思を尊重し︑立法目的の実質的検討を控えること︒ ヤ. ︵44︶. 三五三. 四︑法律により運営されている安全︑衛生︑道徳等々の社会的利益あるいは優遇された団体の経済的便宜の方を 個人的利害より有利にしていること﹂ アメリヵにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(14) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 三五四. このような合理性の基準が︑実質的な平等保護の要求に答えられないことは火を見るよりも明らかであり︑そこで. 考案されたのが︑新平等保護の原則である︒これは︑基本的には︑法律の分類が︑差別的な要素をもっているとき︑. ︵45︶. 当該法律の目的それ自体が批判の対象となり︑厳格な審査に服するとするものであり︑伝統的平等保護が︑法律の分 類と目的との合理的関係を主として対象とするのとは極めて対照的である︒. である︒この事件では︑犯罪常習者に対する断種手術を許容するオクラホマ州法が平等保. このような﹁厳格審査﹂の基準が明確にされたリーディング・ケースは︑一九四二年のスキナ:対オクラホマ事件. の鳶§ミ鉾O蕊§oミ. 護原則違反として争われ︑最高裁は︑﹁厳格審査﹂の適用を示し︑当該法律を違憲としたものである︒そして︑ここ. ︵46︶. で示された基本権に対する﹁悪しき差別﹂とシャピ・事件での﹁強度の必要的﹂政府の利益の基準が結合して︑新平 等保護の﹁厳格審査﹂が確立したとされている︒. そしてこのような厳格審査には二つの類型がある︒. i ﹁疑わしい分類﹂型. 法律の分類が︑人種︑血族︑国籍︑富等を根拠になされる差別の場合がこれに該当する︒平等保護原則が適用され. るためには︑法律上の分類がどのカテゴリィーに属するか否かが問われ︑それによって国民の権利・自由・利益の保 ︵47︶. 護の度合が異なる︒それ故︑どの分類に該当するかということが重要な意味をもつことになる︒このテストの下で差. 別が容認された事例は︑日本人強制収用事件の一件だけであるが︑ここでは︑主として少数派に対する特別な保護が. 眼目となる︒この場合︑法律の合憲性がほとんど働かず︑むしろ︑違憲の判断をなす傾向があり︑必要性の要件及び.
(15) 基本的権利︵利益︶型. 公的利益の要件等の挙証責任が立法者に課せられることが特徴である︒最近では︑ 性 の分類が一つの大きな争点 でもある︒. 11. ︵48︶. いわゆる合衆国憲法が保障する基本権︵利益︶に法律の分類が影響を与える場合に厳格な審査がなされるとするも. のである︒したがってここでは︑憲法がどのような権利︵利益︶を基本的なものとして保障しているかということが. 焦点となる︒そして︑平等保護条項の下で︑選挙権︑結婚と出産︑刑事裁判上の権利︑移動の自由等が問題とされ︑. これら諸権利は︑明確に最高裁の承認を得た︒そして︑最近話題となっている福祉受給権︑教育を受ける権利等は︑ ︵49︶. その基本性の明確な承認を受けるまでに至っていないが︑基本性を広く認める見解の中では︑当然承認されることに なるであろう︒. このように︑平等保護条項は︑きわめてダイナミックなもので︑積極的かつ強力な施策に用いることが可能であろ. う︒しかし合理性の基準を用いる﹁最少限の審査﹂と︑疑わしき分類もしくは基本的権利︵利益︶を用いる﹁厳格審. 査﹂との間には︑理論的にも実務的にも大きなギャップがあり︑司法権の介入についても大きな落差があることが批 判されるのは当然でもあろう︒. 三 ﹁厳格な合理性﹂の基準. 三五五. 最近︑最高裁が︑厳格な審査という公式を援用することなく︑伝統的な最少限の審査基準を明示した後に︑平等保 アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(16) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 三五六. 護条項の下での司法的干渉を強めた一連の事件がある︒それは合理性の要件が︑事実上の司法審査の放棄 無干渉を. ︵0 5︶. 象徴した時代の後に︑突如として穏健な基準に基づいて︑司法的干渉を再開する機会を見い出したとされるものであ め. ヤ. ち. る︒つまり︑伝統的最小限の合理的基礎に基づきつつ︑旧平等保護のアプ・ーチとは一致しないより実質的な審査が. それである︒それは︑﹁厳格審査﹂と﹁最少限の審査﹂との中間的なものであり︑合理的基礎を欠く法令を無効とす. る最高裁の権限の再主張を通し︑長い間立法府の恣意的裁量に委ねられていた経済的自由を︑人格的自由と同程度も ︵肌︶ しくは︑それに次ぐ程度にまで︑平等保護の下で保障するものであるかもしれない︒一方で︑それは︑﹁新しい財産﹂ ︵52︶. を含む︑財産に関する人格的権利の保護に通じ︑他方で︑市民的自由に対する原則のない司法権行使のあるものの削 減となるであろうと思われる︒. 一九三八年のカ・リーヌ判決で︑ストーン判事は︑経済規制は︑法律の合理的基礎に想定される事実に反証を挙げ. ることによって︑異議申し立てがなしうるという推定をなしていた︒しかし最高裁は︑ストーン法廷意見を超え︑い. わゆる合理的基礎に基づく合憲性の推定原則を堅固な障害に転化させ︑司法の敬譲のかなり極端な形態まで︑経済的. 価値の衡量は︑最もよく立法府に委ねられるというもっともらしい理由で正当化してきた︒このような推定が判決の. 中にしぽしば現われたのは︑デュー・プ・セス条項が実体的権利保障にまで拡大され︑その条項の下で法律の効力が ︵53︶. 争われた事例で︑たとえば経済的規制とデュー・プ・セスとの関連で有名なマン対イリノイ事件さ§黛︑ミ§蹄. では極めて明瞭に﹁あらゆる法律は︑合憲のものと推定される︒法律が明らかに違憲でなければ︑そのように宣言す ︵54︶ べきではない︒もし疑いが残る場合には︑立法府の表明された意思が支持されなければならない﹂と判示している︒.
(17) それ故︑このような合憲性推定の原則は︑立法の違憲性を主張する側にとっては︑極めて多大な負担を課せるもので ︵55︶. あり︑過去二〇︑三〇年に亙り︑最高裁は︑財産に関する利益に影響を与える立法の合理性に対して︑実質的な審査. はほとんどなさなかったと評されるのも無理のないところであろう︒しかし︑以下で挙げる一連の事例は︑司法の無. 干渉地帯への干渉を再開するものとして評価されるものである︒社会︑経済規制領域での制約された司法の役割の再. 主張が︑平等保護条項の下でか︑あるいはデュー・プ・セス条項の下での解釈を通じてよりよく行われるかは依然と. して未解決のままである︒さらに︑平等保護の下での二段階アプ・ーチは︑すでに検討してきたように︑特に正確か ︵56︶. つ規律されたものは何らなく︑利益の基本性︑あるいは疑いのある分類についても裁判官の主観に大きく依存してい るのは否定できないところであろう︒. 確かにきここでいう穏健な干渉主義モデルの採用は︑最高裁のすでに重い仕事の負担量を増すであろう︒しかし︑. すでにマク・スキーが︑十数年前に︑経済的権利の領域での司法審査の放棄に関するあらゆる議論に︑原理の不十分. ︵57︶. さを見い出したにもかかわらず︑経済的デュープ・セスの綿密な検討の後に︑なおその埋葬が適切であると結論ずけ. ち. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. たことを考慮すれば︑デュープ・セスよりもむしろ︑平等保護条項の下でよりよく発展するであろうと思われる︒. このモデルにおいては︑選択された手段が達成されようとする目的に実質的・現実的な関係を有するか否かを決定. するという穏健だが現実的な審査である︒このような公式は︑だが︑平等保護判決からではなく︑近代の無干渉領域. ︵58︶. 三五七. での最初のデュー・プ・セスの事例である一九三四年のネビア対ニューヨーク事件≧&黛貸鉾≧恥ミぎ幕に由来し ている︒. アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(18) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. 三五八. そして︑デュー・プ・セスの法理の主たる難点は︑手段ではなく目的に対する独断的な司法干渉であったとされる. が︑手段に焦点を置き︑立法目的に敬意を払うより厳格なデュー・プ・セス審査は︑司法価値選択を通じてなされ. る立法の麻痺という危険に︑はるかに服さなかったかもしれない︒いうまでもなく︑実体的デュー・プ・セスに対す. る最高裁の過度の反動は︑平等保護条項の下でさえ︑﹁手段審査﹂を擁護したが︑﹁目的の審査﹂には難色を示してい. た︒それ故︑旧平等保護の審査は常に﹁手段志向﹂であった︒つまり︑それはデュー・プ・セスとは異なり︑目的の. 合法性に焦点を当てるという実質的広がりをなんら付け加えることはなかったのである︒そして︑旧平等保護の合理. 性の要件は︑﹁目的志向﹂のデュー・プ・セスに対する反感によって︑さほど打撃を加えられていない有効な﹁手段. 志向﹂の道具として生き残ってきた︒また︑それは︑司法審査のより優れた︑より干渉主義的ではない道具となりう ︵59︶ るものであり︑立法権の完全な否定ではなく︑立法府の恣意性に対する保障であるとされる︒このような無干渉領域 ︵60︶ への穏健な干渉主義的アプ・iチが︑ガンサ:の主張する︑司法審査の手段志向方式である︒. これは︑伝統的な合理性のテストと厳格な審査の中間項としての﹁厳格な合理性﹂という基準の下で︑立法府が追. 求していると主張する目的を︑選択された手段が実質的に促進しているか否かを検討するものである︒そして︑立法. 府の政策的判断を尊重しつつ︑選択された手段に︑﹁厳格な合理性﹂の基準を用いて︑財産的経済自由と人格的自由. の両者に平等な保護を提供しようとする趣旨のものである︒このような﹁厳格な合理性﹂のテストが︑現在進展しつ ︵61︶ つあるとされているもので︑それには︑次のような二つの方式が示される︒. i 手段志向方式.
(19) 実質的に立法目的を促進しなければならない. ︒また︑立法上の分類が︑立法目. 実質的関連を有しなければならないμという平等保護の要件は︑結局︑このような一般原則の本質的により明. この方式の下では︑立法手段は︑. 的に. 示的な公式であるが︑実際には︑リップ・サーヴィス以上のものではなかった︒つまり︑想定でぎる事実︑及び想定. できる立法目的への極度の尊重がそれである︒しかしこの﹁厳格な合理性﹂の基準の下では︑単なる推定上のもので. はなく︑現実において実質的な基礎を有する立法目的によって手段を審査するということであり︑従来の司法上の推. ぬ. ヤ. 定により作り出された正当化のレトリックに訴えるものではないということである︒その意味で︑旧平等保護よりも ︵62︶ 干渉的であり︑新平等保護よりも厳格ではないものとなるであろう︒. さらに︑ここでは︑目的でなく手段のみに関心が払われる︒ウォーレン・コート期の実体的平等保護は︑立法目的. が︑﹁強度の必要性﹂を有することを再三要求してきたが︑このモデルの下での平等保護審査は︑あやふやな憲法上. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. の論拠を有する基本的権利︵利益︶に基づく裁判には関与せず︑立法府に広汎な目的達成を許容するものである︒そ. して︑手段受容の目安は︑目的に関する立法権を不当に侵害することなく手段の合理性を確証することである︒この. ような手段志向の審査は︑この二〇︑三〇年間︑司法の無干渉領域として知られる社会経済規制立法を含む広汎な制. 定法に対して適用可能であると考えられ︑このような審査権の行使の主たる制約は︑社会経済的種類というアプリオ. リなカテゴリィーからではなく︑司法権に対する特別の考慮から生ずるとされる︒そしてこのような回避技術として ︵64︶. の手段志向方式の代表的な事例とされる一九七一年のリード対リード事件ざ&黛響&は︑遺産管理人に任命さ. 三五九. れることを望む申立人が複数存在し︑同順位の場合には︑男性が女性に優先するとするアイダホ州法が違憲と判示さ アメリヵにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(20) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. れた事件であるが︑その審査方式は︑次のように要約される︒. 三六〇. ﹁リード法廷意見⁝⁝裁判官は︑伝統的な合理的基礎の理論と厳格審査との両方に代わるもう一つの方法を用い ︵65︶. た︒つまり︑伝統的な分析を適用しながら︑裁判所は︑定められた分類を論証しうるほどに正当化する立法目的. ち. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. を探索する︒そしてこの目的が実際に促進されるかどうかは徹底的には審査しない﹂. と説明されるもので︑立法目的を承認した上で︑手段の合理性を否定した典型である︒だが︑手段と目的との相互. 連関を考慮すると︑目的の検討を抜きにする手段のいかなる審査も︑その妥当性には疑問が残らざるをえない︒それ. 目的志向方式. 故手段にもっばら集中することは平等保護条項の主たるほこさきー扱いの上での公平さーを無視することになること ︵67︶ ではあるが︑その正当化理由を現実的に主張立証することは妥当と評価されるであろう︒. h. さらに︑立法目的を尊重し手段審査に集中する矛盾を解決するもう一つの審査方式として挙げられるのが︑この方 ︵68︶. 式である︒この方式の事例として挙げられるのが︑一九七三年の︑福祉受給を制限する分類に﹁厳格な合理性﹂のテ. ストを適用したとされる合衆国農務省対モレノ事件qミ牒&無ミ湧b愚ミ§馬ミ皇﹄鴫§ミ誉ミ黛§︑§oであ. る︒この事件では︑フ!ド・スタンプ・プ・グラムヘの参加資格を親族関係に限定したフード・スタンプ法の規定を︑. 合理的基礎に欠けるものとして違憲と判示したものである︒ここではブレナン法廷意見は︑立法目的を綿密に審査す. るアプ・ーチをとり︑法の定める分類と︑血縁関係が栄養補給の必要性もしくは経済の振興であるとする立法目的と. が全く関係なく︑スタンプ計画濫用の危険性に対する政府の主張は全く実証されず︑正当な立法目的たりえないとい.
(21) ︵7 0︶. ︵69︶. う結論を導き出したのである︒さらにこの方式の適用として︑一九七五年のウェインバーガー対ウィーセンフェルド. 事件ミ蕊§偽茜ミ§ミぴ§瀞ミが挙げられる︒これは︑社会保障法の公的扶助に関する条項を違憲と判示するもの. であるが︑それは︑当該社会保障の定める分類がf母子世帯の場合には︑寡婦年金と児童扶養手当を支給︑父子世帯. の場合には児童扶養手当のみ支給と規定するー女性の経済的地位を補うことを目的とするものであるという政府の主. 張を綿密に審査し︑当該条項が修正五条に反し違憲であると判示した︒従来の合理性の基準では︑少くとも︑立法目 ︵71︶. ︵72︶. 的に対する綿密な審査は巧妙に回避されてきていた︒しかし︑これらの事例が︑﹁実質的理由﹂もしくは︑﹁説得的理. 由﹂の基準によるものであれ︑﹁性﹂及び﹁非嫡出子﹂の事例での中間段階の審査に該当するものであれ︑また︑こ. 括. の方式の下での司法の干渉が︑どの範囲で︑かつどのような時期に展開されるかは明らかではないが注目に値する発 展であろう︒. ︑. ﹂ ノ. 以上︑﹁二重の基準﹂とそれから派生する二段階アプ・ーチという平等保護条項の下で確立した違憲審査の基準の. 間題点を簡単に考察してきたのであるが︑一方で︑経済的自由と他の基本的諸自由との混在する複雑な法的問題の発. 生と︑他方での︑形式的二分法の硬直性から生ずる新たな批判の狭間で︑最高裁が︑﹁厳格な合理性﹂の下に従来の. 無干渉領域への穏健な干渉主義的アプ・ーチを採用することにより︑社会経済規制立法に対するより実質的な審査へ. 三六一. と一歩踏み出したことは注目に値するものである︒とりわけ︑デュi・プ・セスに対する不信が独断的な立法目的に アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下郎史︶.
(22) 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八日︶. 三六二. 対する司法干渉であったことを想起するとき︑﹁厳格な合理性﹂の基準という中間的アプローチも︑目的と手段との ︵73︶. 実質的関連という不明確な概念を用いての比較衡量の手法には︑依然として裁判官の広汎な主観的価値選好を免れえ. ないという疑間は残るが︑評価されてよいだろう︒しかし︑政府が主張する立法目的を完全に否認する目的志向方式. の一例であるウィーセンフェルド事件に見られる方式には疑問がないとするのは言い過ぎでもあろう︒さらに︑司法. 部による立法目的の確定と立法目的との関連での立法動機の処理の問題︑立法府の政策事項への司法干渉を強化した. 場合の司法権の適切な役割の問題︑立法事実の認定の問題等々︑複雑な未確定要素を含む問題が山積しているが︑こ. T・1・エマスン﹃現代アメリカ憲法﹄木下毅訳三〇二頁︒. 一つの方向性を示唆するものとして. れらの問題の分析と検討は他の機会に委ね︑ここでは︑ガンサー教授の﹁手段志向方式﹂︑ノワク教授の﹁合理的基 ︵74︶. ︵75︶. 礎テスト﹂︑ブレナン及びマーシャル裁判官の﹁三段階アプ・iチ﹂の提唱が︑. い03ロR︿●20妻網o﹃ぎ一〇〇〇d●9ホ︵一〇8︶.. 注目されなければならないであろう︒. ︵1︶. Φげげ凶帥く.20毛肖o械FNO一d●o D●8N︵一〇鍵︶. 男仁昌の8P﹃ぎ導&鳶的誉醤§ミ毫qo諜赴︑ミ軌§ミ︑︑ミ8勘§きき偽肉ミ皇き鳴 きさ§恥ミ貧09りoダω999辞. 2. ︵2︶ ︵3︶. C・プリチェヅト﹃アメリカ憲法入門﹄村田・他訳一八五ー一八六頁︒. 鱒8ー総●. ︵4︶. ︵5︶. 勾o一〇F↓漕>愈ミ︑︑奪ミ受ヤお磯>冨ピ﹂. q且梓aω9け8︿︒O巽o一〇昌oギoα8aOo日窓昌鴇ω9q︒ω●一瞳︵一800︶︒. 舞おωム①︵一〇9︶●. ︵7︶. ︵6︶.
(23) ︵8︶. O信口9R℃↓ぎooミ︑還ミ恥Goミミヤ一〇目↓ミミーきミミミ野ミ留ミさ魚肉sごき頓b8牒ミき恥§貸O魯§晦誉晦Ooミ廿. 一〇昌8〜O℃o一涛欝ω一①ご︒ω. ω○ q︐o り●一 ト. q象︵一漣N︶︒. 一五四五頁︒. ﹄さ澄馬瀞︑黛≧鳴ミミ肉嶋ミミ︑︑ミ8畿oドoo①=>国<︒ピ●勾国<●︸緯O占O︵お認︶●. ︵10︶. 芦部信喜﹁憲法訴訟と﹃二重の基準﹄の理論﹂﹃公法の理論下1﹄. 問ρ昌ω8P砺貸︾ミロo冨♪彗零1ωo. ︵9︶. ︵11︶. 伊藤正己﹃言論出版の自由﹄三二−四三頁︒. ミ織﹃ミ砺ミ㌧鳶ミ鳴O§ミ%﹄ミ肉聴魯ミミミ噺§亀ミ織肉9ミ噺ミ︸一〇8ωq70↓●国国く. ︵13︶. o︒. ︵12︶. 鴇. 竃oΩo畏oざ肉ミミミ驚ミ僑︑︑ミ 印け㎝軒IqO︒. ︵14︶. 芦部・前掲一五四五−一五四六頁︒ 伊藤・前掲四一頁︒. 伊藤・前掲四〇f四一頁︒. 寓oO一〇⑦犀oざ勉黛辱︑. ︵16︶. ︵17︶. ︵15︶. ︵18︶. 戸松秀典・﹁平等保護と司法審査︵一︶﹂国家学会雑誌・九一巻三七四頁︒. ミ9勢け. ﹈≦oO一〇のド①ざ⇔ミ辱ミ昌o富一倉讐㎝N●. oω︵一〇親︶● ≦⁝富ヨωo昌<.冨oO℃ユ8一〇〇 謹ooO︒ω.轟o. ロoけo一倉辞㎝q・. ︵19︶. ︵21︶. ミ噸帥貯㎝劇1㎝㎝.. QQI卜O●. ︵20︶. ︵23︶. 国︒>切勾>国>竃一司力国国OO蜜>Zu↓=国OOq幻↓一①1嵩︵N⑦α・一〇謡︶9. ︵2︶. ︵4 2︶. 0q暮げR. 29ρb恥ミ馬愚§馬ミ物きき鳴蜜ミー向ミミ︑︑ミミ職oドooN=>国<・い勾国く︒ 鉾一一ミーω㌣Oqロ浮①び簑特︑匙8富oo︸緯一下這9 簑辱ミ昌oけooo︸讐ooムO︒. ︵26︶. 三六三. ︵25︶. アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶.
(24) ︵28︶. ︵27︶. エマスン・前掲二九九ー三〇一頁︒. O口⇒浮R燭⇔ミ感ミ昌9000 暮一〇●. U帥昌費箆に①く.≦窪富讐のo昌の噛ω零d︒ω.ミ一︵一SO︶●. ミ●餌けOー一〇D. 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶. ︵29︶. ︵32︶. ピ欄⇒oプ︿・=oβ器げo一α男首曽昌800﹃℃. o9 勾o凶oF§辱︑亀昌o冨8讐刈o. 同前三四〇頁︒. 戸松・前掲 三 六 九 ー 三 七 〇 頁 ︒. o逡︵一〇〇〇 二〇〇q︒ω・o 〇①︶●. F8d.ω辱㎝禽︵一零Ny. 三六四. 頃仁諾8P簑︑ミき冨♪讐まOも9松平光央・﹁平等保護条項と経済的不平等の是正﹂﹃アメリヵ憲法の現代的展開−人. ︵30︶. ︵33︶. 戸松・前掲三五五頁︒. 卜Oqq︒9㎝qQQo●q劇S. 権﹄二五〇ー二五二頁︒. ︵31︶. ︵34︶. q●ω︒ONS①ωQQ.. ω訂仁oq耳o昌o霧oO窃P一①譲巴一 ooO︵一〇〇お︶︒. ω漣. ωゲ帥豆8︿︒↓げoB陽oPω総d.ψ①一〇〇︵一80︶.. ︵35︶. ︵36︶. ︵37︶. ︵38︶. ︵39︶. ω帥昌冨Ω胃 OoG昌蔓く●ω05げ03℃8詫一〇幻●Oo. ︵40︶. ωSq・ω. いぎ富ざ矯く.O畦ぴo旨02帥幹畦巴O器09譜Oqψ曾︵お二y戸松・前掲三七〇1三七一頁︒ 鳶一︵一零Oy戸松・前掲三七一頁︒. ︵招︶. ︵41︶. ooo ︵一〇器︶︒ 巽ooq︒ω●斜o. 戸松・前掲三七三頁︒閤碧鴇℃ミ蔑概ご霧黛恥ミ軌ミ誉ミむ醤%︑§疑ミ導黛随ミ恥 醤亀↓ミ霜恥ミ§ミき偽..>ぎミ︑ミ・旨挙. 譲旨富Bωo昌︿. 常oO讐凶8一〇〇. ︵44︶. 彗刈一?器︵一80︶︒. ︵43︶. ミ恥㌔琶驚鴇き︑ミミ ●︑︑一〇q●ρピ︒>・一︒勾o︿.
(25) ω. qωq. エマスン・前掲二九五−二九八.頁︒. ω犀凶昌昌O﹃︿︒O匿一. げOヨ帥︸ω一①d. ︵45︶. 同前二九五 頁 ︒. ︵46︶. ︵47︶. 口OけO斜︸ρ梓. ⇒O件O. NQ o斜.. ︵一〇↑N︶●. QOIQ. Q Q℃m什 一〇ーNO.. ハ甲仁昌けゲO﹃︸肋黛辱︑貸. 什. Q Q−N斜︒ o︸蝉什 一Q. 一斜. o①Io NQ. 図象ーQo㎝. ρけ. Q●. Q 喫>一国い・一 切ミ守物殊貸醤聾暁甦恥bミ鴨︑︑Oq偽賜⇔︑﹄卦︑O辱O動鳴亀﹄︑㌧︑O亀q魯︑o QQ. ⇒O梓①. oQ. QN ︵一Q d︒ω●一ω︾一Q Q刈①︶.. 昌O幹O卜︸餌け N刈O●. づO什O. ︵48︶. ・. 噂防ミ特\貸. NQ o一■ー◎ Q㎝・. 閃仁づω梓O旨︸恥ミ特︑黛. ㌧亀. ︵49︶. ︵50︶. ︵51︶. 竃四口昌. 蜀仁仁ω什○昌℃⇔ミ特︑. ゆN︒ ﹈■Q. <︒一一一凶50凶ωサO昏. ︵53︶. ︵2 5︶. 一一GQ︸. 伊藤・前掲四六頁︒. O蒔 d●o り︒. ︵55︶. 閃G昌¢けO口︸物ミ辱︑貸. ︵54︶. ︵56︶. ︼︿︻OO一〇ω犀①鴇噂⇔ミ︾︑. 昌OけO斜噂即什. ︵57︶. 20けO一の〜亀〜恥肉qOミOミ画 ︵一〇ω癖︶︒. 叶ゲ①﹃︸吻貸特︑. d︒ω・q①. ﹈﹃O刈N. ︵一〇刈N︶・ 8馬︑ミ︑. OOミ︑ひ. 昌〇一〇 一僻り鎚什 偶ω1わ㎝.. エマスン・前掲二九七ー二九八頁︒. ︿● 勾 O O ユ ︸ 群 ○ 斜 切ミ特︑恥ミ恥. Q o︶︾ Q刈 一⁝︻>菊<︒ い●国国くこ 餌け 一NもQ ︵一〇﹃Q. ↓魯恥. 一〇刈も ゆ 8恥︑§b. ︵一〇刈㎝︶︒. 0貯一■麻OO−OO ︵一〇刈O︶一〇〇一d︒ 9. 三六五. ω貰辱︑恥ミ恥OOミ︑︑︸. 刈1ωQ G o 蔵● 帥貯N斜馴 Oゲ﹃凶ω鼠O︸> §概鴨N鳥\\ミ織画 軌黛N肉鳴駐噺恥ミ毫卜恥晦馬賜︑貸蝋暁O醤︑斜Q oωO・O>い︒い●﹈刃国く●℃帥け 一o QQ ﹄. 竃090ωぎ矯も愚ミぎg峯鉾お−倉・. qO髄. ︵58︶. ︵59︶. ︵60︶. ︵63︶. ︵61︶. 即OOα. O仁昌. ︵4 6︶. の偽恥. ﹃香恥 ︵65︶. アメリカにおける経済規制立法に対する違憲審査基準︵森下史郎︶. ω・. QQ Qo.
(26) 一ω一. ︵一〇刈卜︶.. 早稲田法学会誌第三二巻︵一九八一︶ い︒勾国く燈帥け. エマスン ・ 前 掲 二 九 六 頁 ︒. 国>勾<.. 属>い閏. 貯. ﹄∪ミ憶昼O肋魯. 馬鴇マb. 肉嶋ミ. 国一矯讐. 黛ミ織. ︵一〇刈q︶・. O↓●国国く蒔一旧. 肉貸畿O§. ︵一〇刈O︶●. ωq℃●. 一■N一刈INN︸. ︵一〇刈鱒︶. 議e鳴. ピ︒一4. N鳶短. 206Φ︸﹂い恥偽帖包. 識魁鳴. O国O℃い.匂. ︸餌什. 一〇刈一. ︵一■O刈. ︶. o oN. K>ピ国い9︸. 三六六. ﹂<凶. け05. ︑O畑恥︑肺マb. OO蕊恥畿妹ミ畿Oミ鶏N. ︑貸醤〜恥恥−︑︑O誉軌竪計恥織︑. ≧馬ミ㌧. ﹄も\軌 ﹃恥︑ミヤO一国>幻く●. さ畿ミ黛鳳軌Oミ 画ミ. oーωN︸ 印け一NQ. ︑︑︑O鳳鳴偽織oミOミ. ↓誉恥 ω黛辱︑馬ミ鳴 OOミ︑ひ. ミ織 ﹄亀ミ画§詠牒︑氣欺鵯恥. ㌧瞳O牒恥q畿O§b. 富偽軌恥︑. h. o︵一■O刈ω︶9 ¢昌津①Oω梓帥什①ωUΦ℃帥﹃什ヨO口什O賄︾磯噌一〇一βけq﹃o︿・寓O﹃O口O℃斜一Q Q q︒ω9窃NQ. ︵67︶ ︵8 6︶ ︵69︶. 刈O. 両らOミO§帖ら肉崎ミ. >一≦国幻一〇>Z. エマスン・前掲二九八頁︒ ピ︒一肖●↓国一切国︸. ①N. q醤概恥︑〜魯鳴肉嶋貸. OO≧o 〇NIOO ︵一b刈o oy Q↓一↓q↓一〇Z>い ピ>≦u 一〇〇. ︵①凶口びΦ﹃凶o﹃<︒≦凶昌のO昌h①一岱℃癖NOq●ω●8①. 冒ミ㌧. ︵m︶. ︵1 7︶ ︵η︶ oO● 一一刈刈ーQ. 戸松・前掲四四四〇1四四五頁︒. 一ギ●勾国く曽帥け. 3 ︵ 7︶. 〜軌Oミoob. エマスソ・前掲三〇〇頁︒. 醤織艶鳴︑ミ馬吻物軌q恥O︑亀恥ω慧ら. ︵四︶ の恥恥匂︒国●ヴqo毛 犀︸ 肉恥 鋭晦醤画頭 牒ぎ 的牒黛醤織貸︑織防魚肉恥曵軌恥ミ. ︵75︶.
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