プヌ語動詞アクセント試論
A Tevitatne lanoT anAsisyl fo nuP u Vsbre
湯川恭敏
Y a s u t o s hi Yukawa
はじめに
プヌ語 (piy i!)un というのは、アフリカのガポン共和国の南東部に話されるパントゥ系の 一言語である。 n
本論文でこの言語の表記に用いる子音字とその概略的音価は、次の知くである。
b ()]b[ , d ()]d[ , ,f ()Jf[ g ()]g[ , gh
([y]-{
凶,) j ([d~]) , k ()]k[ , 1 ([1]),皿([凶), n ()]n[ , ,)y]n"1.[( -p ()]p[ , r ()]r[ , s )]s[( , t ()]t[ , ts )]st[( , v ()]v[ , w ()]w[ , ,y ()]j[ z ()]z[ , m/n
(子音前鼻音).
2)母音字は、次の通りである。
i ()Ji[
, e ()Je[ , a ()Ja[ , 0 ()][0 , u ])U([ , a (.)Ja[
中舌母音のaは、語末のa( およびその前に、語幹冒頭音節母音ではないa があれば、その a
) としばしば交替してあらわれ、その限りでは音素a の異音と考えられるが、そうでない あらわれかたをする場合がある。一応独立した音素と考えておく。この言語には、長母音
(同一母音連続)も存在する。
アクセントについては、母音字上の fで f
高J
を、無印で「低J をあらわす。この言語における人称主格接辞・対格接辞S) の形は、次の通りである。
単数1人称 'N/in 1) N 複数l人称 ut ut
2人称 U U 2人称 ud ud
3人称 a 皿U 3人称 ab ab
クラス5) 主格接辞・対格接辞は、次の通りである。クラスは、名詞例で示す。ハイフン は、接頭辞と語幹の境界を示す。 IIV-I は単数名詞のクラスで、IIV 1 IIX- は複数名詞 のクラスである。
脚ana-' r子供J , satghmu- i 「妻j 単数3人称に同じ 1.1 血dasanu- r
傘
J , 61tsso-tm6 i 『野鳥の一種J U U1
1.1 tsub6-ladi r
栓
J , liku6-kid 『蝶j idI V
. ut6k-iY
「着物
Ji1• 6znuuzn-iY rトンボ
J ly lY V. 皿dtGb- r
ぴん
J• k~uru(接頭辞ゼロ) 『サソリ
J lJ IJV.I alas-ud r羽J • aneewgn-6d r
カメレオン
J• udno6p-ud「 靴
j ud ud VI.I is61-ub f
呪術
j ub ubV I
I .1ana-'b r
子供
J,
'hg-ab i st「 妻
j cf. .1 複数3人称に同じ
I X
. a田dnas-i r
傘
J,
6stost-im i1「野鳥の一種」
c.f 1.1 lm lm X. ust6bal-am r
栓
J• ukGk-am 1 i『 蝶
J,
m'-ng\V~ena rカメレオン
J,
皿s61-a
i
「呪術
J c.f 11!IIV/IV .1 回a 皿a X.I ut6k-ib「着物
J,
ib l6znui 6zn- rトンボ
J .fc .VI ib ib XI.I dt6b-mab r
ぴん
J,
uruGk-ab rサソリ
J,
udno6p-ab r靴
J,
t s ' l
a <()al's-n r羽J c.fIV/V ist ist
クラス
IIXのうち
{ab m/)nを接頭辞とするものは、
istの他に
abを主格接辞・対格接辞と することもある。この他に、対格接辞の一種として再婦接辞
eekがある。
主格接辞を
Sであらわし、対格接辞を
Oであらわし、再帰接辞はそのまま
eekであらわ す。この言語の動調自体は、元来のアクセントの型の対立を失っている。
g .1
不定形
この言語の動詞にも、不定形と呼んでよい形{
--rすること
Jの意)がある。
不定形は、
u
+ 語 幹 +
aおよび
(u )+
対 格 接 辞 + 語 幹 +
aという構造を有する。ただし、対格接辞が再帰接辞の場合、
Uがあらわれる形はデータに はない。また、
aが@であらわれる場合も多い。ただし、
aで終わる形が採取されている ものは、
9で終わる形も採取されていても、
aであらわすことにする。語幹が子音一つの 場合、
a以外の母音が語尾としてあらわれうる。アクセントは非常にぷれるが、次のよう に表示しうるようである。 c は(子音前鼻音+)子音{+半母音)を、
Vは母音をあらわし、
X
は任意の音索列を示す。+
11は、調整規則的
11をつけ加える必要がある、の意である。
(
. . . _ / . . . . _ L . .
.
.
・u X V C
a ( X = -V-
なら、
Vの は直目。の
vにうつる。
aCV = iahgなら、
ahgは低く、
かっ、無いものと扱われる
o X = JRなら、
dもダであり、 r は直前にうつる。
r調整 規則
1 Jと呼ぶ),
(
ωcaxd6 (X=~V
なら、
Gの
rは直前の
Vにうつる
o X = oなら
jも釘である。
「調整規則JII と呼ぶ).
k~eXÝCa ( + 11.) 6
j
i r食べるJ • u ab'l r見るしagn6tu rむすびつけるJ • ahgeetu 7) r汲むし u
s 6 u m b
a 8) r買うJ• ahgibidu r閉めるJ• an6sugnebu rくっつけるJ (
u ) y {
j i rそれ(クラス)VI を食べるJ.a• b'11y)u( y)u( t.a'gn6t (u)m't~egha rそれ(クラス XD) )を汲む J.ab• mu6s{y)u( .ahg{bid{y)u( (
u );anGsugnebfy
“
abale r自分を見るJ •調整規則Iの2番目の規定は奇妙であるが、この言語における派生接辞hgi
寧 < (
)ki の 扱いに関係するものらしい。派生接辞liは、多くの接辞のあとにあらわれ、いわゆる『適 用動詞J をつくるが、hgi に対しては(意味的に変でも)その前にあらわれる。u b e n g u s u n i l
a r~のためにくっつけてやる J .sv
u d i b ( l i g h
a r~のために閉めてやる J
(九
a11hgibid ) なお、あとに目的語等があらわれる時、動詞不定形は、u X . XOu
というアクセントになることもある。
u b e n g u s u n
a ami{y rある物{y()ami をくっつけるJ •
Ulinus皿ugnebu
a ami{y r彼のためにある物をくっつけてやるJ • また、 a3-2-2 参照。
1 2. 直説法形
直説法形に用いられる語尾としては、.a.agna .iigni がある。以下、語尾別に見る。
1 2-1. 語尾aを用いる形
まず、不定形と同じ語尾を用いる形を見る。
12-1-1. 逮過去形
一昨昨日もしくはそれ以前の過去に行われた行為をあらわす形は、
主格接辞+ am + (対格接辞+)語幹+ a
という構造を有する。単数1人称主格接辞はinである。アクセントは、次の如く表示しう る。
dmxdca(X=~V
なら、
dの〆は直前の
Vにうつる。
aCV = iahgなら
ahgは低く、
かっ、無いものと扱われる
o X=鮮なら、
dも
6である。 r調整規員IIU [ j と呼ぷ),
imodea(+II) ,
s
EIaidedca(+II).n ( m a
j i r
私は食べたJ
a,
balamin .agn,
6tamin .ahge6tamin n{mas~umba,n {
1.ahgi四bida ;anGsugnebamin n
i m a Y i j
i r
私はそれを食べた
j.ab'l,
iyam{n .agnGtiYamin n{ma四at~egha,n ( m a Y
i
6 s
.abmu.ahg{bidiyam(n ;an6sugnebiYam{n nf 皿a凶abale r
私は自分を見た
j •f
i 2-1-2. 近過去形
5
日ほど前以降で現時点までに行われた行為をあらわす形は、
主 格 接 辞 +
ist +(対格接辞+)語幹+
aという構造を有する。単数
1人称主格接辞は
Nであり、
ist+Nは
iznとなる。アクセント は、次の如く表示しうる
oS t s
i VxaC ( + [ ,)aCVXOistS ( + [[ .) ~tsik'eeXVCa ( + [[ .) a
t s { j
i r
彼は食べた
j • list' a.'ab ~tsitGnga. 'tsit~egha, .abmubsist' 't s i d ( b i g h a
. ;anGsugnebist' '
t
s {yi ij r
彼はそれを食べたJ
.ab'l,
iyist' àtsiy(t~nga, 'tsim{t~egha,' t s i y 1 s 6 u m b a
. ahgfbid{yista ;anus
,
uganeb'{yist 't s
i erIabale r
彼は自分を見た
j •f
i 2
ー
1-3.現在完了形
既に行われた行為をあらわす形は、
主 格 接 辞 +
am +(対格接辞+)語幹+
aという構造を有する。単数
1人称主格接辞は
inである。アクセントは、次の知く表示しう る 。
S m ' X V C
a ( + [[ ,) mS必aCVX ( + 11,) Smak~eXVCa ( + 11 .) n
i m ' j
i
r.私はもう食べた
j • nim'l~ba. agnut'min,
nim't~egha. nim's~umba.n i m ' d i b ( g h a
. in尚sugneb u';an n
i m
a Irij r
私はもうそれを食べたし
nimayfl~ba. agn6tfyamin,
nim佃't~egha,n i m a y f s G u m b a
. .ahig{nbid.皿'ya ;an6sugneb1yamin
n i m a k 6 e l ' b
a r
私はもう自分を見た
J •~
2ー 1-1の形とは、アクセントだけで区別される。
~
2-1-4. 未来形未来のある時点において行われる行為をあらわす形は、
主 格 接 辞 +
u +語 幹 +
aという構造を有する。主格接辞
u+の形は、次の如くである。
単数
l人称
uun,
2人称
uu,
3人称( =クラス
1) 00, 複数
1人称
uut,
2人称
uud,
3人称( =クラス
)IIVI oob,
クラス
11 uu,
111 uuyd,
VI uuy,
V juu,
IV uud,
IIV uub,
I
X uuym
,
X moo,
IX uuyb,
IIX .uuyStアクセントは、次の知く表示しうる。
S
UVxaC ( + 11
, )
~uÓXVCa ( + 11, )
e6kuS VxaC ( + 11.) n6 u
j i r
私は食べる
J,
n~ul~ba, agn6tu6n,
n6ut~egha, abmu6su6n,
ahg{bidu6n,
n 6 u b e n g u s G n a
; n 6 u y f j
i r
私はそれを食べる
J,
ab16fynh a,
gndd11611,
nduddegha,
n G u y { s 6 u m b
a , n~uy{dib{gha, ;an6sugneb(yuGn
n6uk~e16ba r
私は自分を見る
J •~
2-1-5.逮過去否定形
~
2-1-1の形に対応する否定形は、
主 格 接 辞 +
as+ 皿
a+(対格接辞+)語幹+
aという構造を有する。単数
1人称主格接辞は
inである。アクセントは、次の如く表示しう る 。
SsimaX~Ca ( + 1I1
, )
Sお
I'S泊6血益&m ω nり、,は直前にうつる
o r調整規則JVIと呼ぶ),
s s ' m a k 6 e x v c
a ( + 1I.) n
i s ' m a j
i r
私は食べなかった
Ja,
b'lam&sin,
nis~matGnga, nis~at~egha,/ • / d
n i s a m a s u u m b
a ahgi, bidamasin ;anusugn, ebamasin
n i {yam's ij r
私はそれを食べなかった
Jab'l.i,
Yam6sin agn6,
tiyamasin,
nis'mamat~egha. nis~mayis~umba. .ahg(bidiyam6sin sin 企yan sui gneb 1l ; an nis'mak~elàba r私は自分を見なかったJ •
対格接辞があらわれる場合、 g 2-1-1 の形と微妙に異なる点、奇妙である。一方もし くは両方がぶれているのかも知れない。
B 2-1-6. 近過去否定形
g 2-1-2 の形に対応する否定形は、
主 格 接 辞 +aahg + 側格接辞+)語幹+ a
という構造を有する。単数1人称主格接辞は Nであり、aahg+N はaagn となる。アクセント は次の如く表示しうる。
sgimidea(+III) ,+II)Ca(a6xdgllas ,sghaaidedca(+II).
n g a ' j
i r私は食べなかったJab6,1iaglI aglI,dt6agn aitge6,t6aglI abmild,sdagiI , n
g a ' d { b i g h a
. ;anGsugneb'agn n
g a a y { j
i r私はそれを食べなかったJ , ngaay11~ba, aagn Iyagn6t , ngaam't~egha,
n g a a y { s G u m b
a .ahg{b, id{yaagn yaagn イugneb u's;an ngaak~el'ba r私は自分を見なかったJ •
B2-1-7. 完了否定形
g2-1-3 の形に対応する否定形は、
主 格 接 辞 +ak + (対格接辞+)語幹+ a
という構造を有する。単数1人称主格接辞はinである。アクセントは、次の如く表示しう る。
S k a X V C
a ( + IV .)aCVX6akS ( + 11
, )
ákak~eXVCa ( + 11 .) n{ k a j
i r私はまだ食べていないJ , naイb'lak ,n1kat~nga. níkat~egha. sak{n abmイui , n
{ k a d i b { g h
a ;anu, sugnebak1n n
1 k a y { j
i r私はまだそれを食べていないJa, b'liyakfn , n1 kay{t~nga,
níkam'at~egha, abmu6siyak1n , yak(n .ahgイ{bid ;an6snugneイbfyak n
f k a k 6 e
1 aba r私はまだ自分を見ていないJ•
B 2-1-8. 未来否定形
a 2-1-4 の形に対応する否定形は、
主 格 接 辞 +
oohg +(対格接辞+)語幹+
aという構造を有する。単数
1人称主格接辞は
Nであり、
oohg+Nは
oognとなる。アクセント は、次の知く表示しうる。
Sgh66X~Ca ( + 11 ,)acVX66ohgs ( + 11 ,)aCVXe'k66hgS ( + 11 .)
n g 6 6 j
i r
私は食べないJ ,
abalO6gn,
agn6t66gn,
ahge6t66gn,
6n&abmuus6,
n g o O d i b ( g h
a ;an'
,
sugneb66gn ng 6
6 Iy j i r
私はそれを食べないJ
a,
b'I{Y66gn,
yO6gn I'agnbt,
ng6ómát~egha,n g 6 6 y 1 s 6 u m b
a , y6ogn ah合gibil ;anGsug,neb1yo6gn n
g 6
6 etIe l~ba r
私は自分を見ない
J•B 2 - 2.
語尾銅
agを用いる形
語幹直後の
aは長くなると解釈される。また、語幹が子音一つからなる場合、
agnaは重 複される。
A 2-2-1.
逮過去進行形
一昨昨日もしくはそれ以前の過去に行われていた、あるいは、よく行われた行為をあら わす形は、
主 格 接 辞 +
am +(対格接辞+)語幹+
agnaという構造を有する。単数
1人称主格接辞は
inである。アクセントは、かなりぶれるが、
次の如く表示しうると解釈する。
i m a x c a 6 1 1 g
a (XCa=~igha
なら、
agn'のノは直前の
aにうつる
o X =仰なら、 ~ngaの/は直前の
aにうつる。
r調整規則V Jと呼ぶ),
S m a 6 X C a a n g
a
,
Smak~eXCa'nga.n i m a j a a n g a ' n g
a r
私はよく食べた
Jagn,
aabalam1n agn,
aagnutam1n,
n { m a t e e g h a a n g
a agn6
,
abmuusam(n, 1agnan
ahgibidam ;agn6anu,
sugnebam{n
n
f m a y i j a a n g a a n g
a r
私はよくそれを食べた
J,
'1nbal{yam I1aagn,
In'yam agnイ'agnut,
nímam'teegha~nga, agniabmuusiyamin,
yam1n agn'aイhgibid,
yamin anuイsugneb ';aagn n(ma~elabaánga r私はよく自分を見た
J •A 2-2-2.
近過去進行形
5
日ほと官官以降で現時点までのある時点に行われていた、あるいは、よく行われた行為
をあらわす形は、
主格接辞+ i + st (対格接辞+)語幹+ agna
という構造を有する。単数l人称主格接辞はN であり、ist+N はizn となる。アクセント は、次の如く表示しうる。
StsiC~XCa'nga (XCa
=
(~)lgha なら、á'ngaの〆は直前のa にうつる。 X=
JRなら an g
a の/は直前の a にうつる。 r調整規則JIV と呼ぶ),
S t s i 6 X C a
a 時.aagnaaC,Xe6kistS '
t
s ai gniaj gnaa r彼は食べていたJ , ist' l~b~anga, agnaign6tisti , 'tsit~eghaínga, u6sist' a皿gnaab ,dist' agnaイ'hgib ,itsib~ngusuna'nga;
~tsiyíjaanga~nga r彼はそれを食べていたJagn'a, balfyista , ist' Iyagnaagnut , 急tamist
e e g h a ' n g
a ,'tsiy{suu皿ba~nga,agn'ahgibid{yisti ;agnianusug, neb{yist&
'tsik~elaba'nga r彼は自分を見ていたJ •
g 2-2-3. 未来進行形
未来のある時点において行われている、あるいは、よく行われる行為をあらわす形は、
主格接辞+ u + 語 幹 +agna
という構造を有する。主格接辞u+ の形は62-1-4 に見た通りである。アクセントは、
次の如く表示しうる。
~uXCaánga ( + V ,) ~u6XCaãnga, .agn'aCXeekUS n
6 u j a a n g a a n g
a r私はよく食べるJag, naibalu6n , agna"nutu6n agni, ahgeetu6n , I
I 6 u s u t
I a皿gnaab ,n6udibigh~anga, ;agn'anusugnebu6n
n~uy{jaangaánga r私はよくそれを食べるj ,Ihdlabahga agndagnutf,y11621 , n
6 u m ' t e e g h a a n g
a , n~uyfsuumba'nga, nGuy{dibigha~nga, ;agn{anusugneb{yuGn n~uk~elabaá'nga r私はよく自分を見るJ•
f
i 2-2-4. 逮過去進行否定形
62-2-1 の形に対応する否定形は、
主格接辞+as + ma + (対格接辞+)語幹+ agna
という構造を有する。単数l人称主格接辞はinである。アクセントは、次の如く表示しう る。
Ss~aXCaánga ( + V)agn{aCX, OamursS , Ss'ma~eXCaínga.