奈良教育大学学術リポジトリNEAR
砂の透水係数の測定実験について
著者 福尾 義昭
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 15
ページ 19‑28
発行年 1979‑03‑23
その他のタイトル Experimental Exercise in the Measurement of Permeability of Soil Sand.
URL http://hdl.handle.net/10105/6412
砂の透水係数の測定実験について*
福 尾 義
(地学教室)
昭 榊
まえがき
地下水は貴重な淡水資源である.。山地で降った雨が斜面に浸みこみ、地下を流れる間に、岩石 中の化学成分を溶かし、土の浄化作用も受けて、清澄で滋味は地下水ができる。その水温も安定
し、夏は冷たく冬は暖く感じる。私達の毎日の生活にとって、これ種ありがたい水ははい。しか し、地下水のもとは、斜面に浸みこんだ降水であり、量に限りのあることは云うまでもない。そ の上、山地から海まで流下する速さがきわめて遅い。この遅さを知ることが、地下水を利用する 上で、非常に大切なことなのである。地球上の水の総量を示すと、表一1のとおりである。海水 が全体のうち97.5%も占めるのは当然と思
表一1、堆球上の水の体積 われるが、淡水に限った場合、氷の1.75%に
(極板勇著 水の循環{共立出版,1972,17頁から)
ついで、地下水がO.72%を占め、淡水湖や川 よりもはるかに多いのである。これは意外と 思われる人も多いであろう。意外と思われる 背景には、河川は地表にあって我々の目に直 接映ることや、さらには、河川水の流速が早
く、とうとうと流れる大河の流量などの印象 が強いためではないだろうか。
現在都市では、生活用水のほとんどが水道 水であるが、地方では依然として地下水が利 用されている。また、水道水といってもその
もとは河川水であり、この河川水も、洪水時 を除けば、地下水が河道へ浸出したもの である。近年、わが国の産業は大きく発展し、
国民の生活水準も著しく向上した。この発展 向上にともなって、淡水の使用量も非常に増 大している。淡水使用量が生活水準のバロメ
体積(㎞) 百分率協
〔塩水〕
海 洋 1,349,92軌000 97.5
塩水湖 94000 0.007
〔淡水〕
氷 24,230,000 1.75
淡水湖 125,000 0.009
河 川 1,200 0.0001
土壌水 25.000 0.002
地下水{簑篶 4,500,000 5,600,O00
}α・2
〔水蒸気〕
大気中の水 12,600 0.001
〔生物〕
動 物 600
樟物 600
}α・0・1
総 計 1,384,518,000 100 ニダ_と云われるゆえんである。生活水準の向上はよろこ一はしいことであるが、安易に淡水を得 ようとして、地下水の無理な揚水をおこない、その結果として、処々で地盤沈下や地下水の塩水 化(地下水中に海水が浸入する現象)がおこっている.ことは周知のことである。
‡Exper㎞ental Exercise in the Measurement of Pemeabi1ity of Soil Sand.
榊Yoshiaki Fukuo ①ゆartment of Geoscience,Nara University of Education,Nara)
一19一
地学という教科の特徴の一つは、他の科学の考え方や方法を活用して自然界の複雑な現象を分 析・総合し、われわれの生活基盤としての地球の姿を求めようとすることである。人類が生活し ている地域の大部分は沖積平野であり、土と地下水に恵まれた地域である。というよりも、土が 肥沃で地下水が豊富な所で、始めて私達の生活が安定できる。晴天が続き断水騒ぎをおこしてい るのを聞くと、いつも苦い思いにさせられる。残念なことに、地学の教科書をみると、この大事 な土や地下水についての記述はまことにお粗末なものである。淡水資源の重要姓を考え、地下水 の存在や水理に充分な理解をもつように、もっと教科内容をもりこむべきだと考える。この論文 は、地下水の流動に基本的な役割を果たす透水係数の測定実験を教材として実施していくことを 提案し、この実験測定を通して、地下水の循環速度・循環量の常識を養えるようにしたい。
1.実噴装置の摂要
図一1は、砂の透水係数を測定する装置を示したもので、高等学校地学教科で実施してほしい 実験の装置である。 図一1
ヘッドタンク
まず、スタンドの上に、オバーフローバ から一一)
イフのついたシリンダーを置き、これに水 をみたす。つぎに、同じくオバーブローパ イプのついたガラス管の底に金網を張り、
その上に透水係数をはかりたい砂を入れて 砂柱を作る。今までの経験によると、ガラ ス管の内径は約2㎝、砂柱の高さは10〜15 C皿程度が適当のようである。この管を、図 にみられるように、シリンダーの中に立て る。この際、砂粒間に存在する空気をでき るだけ追い出すように、徐々にガラス管を 沈めるように注意する。ヘッドタンクの水 をビニール管で導き、注水管を通してガラ ス管の中へ注ぐ。しばらくすると、余分の 水はオバーフ1コーパイプから流れ出て、ガ ラス管中の水位は一定に保たれる。と同時 に、カ ラス管中の水は、砂柱を通り抜けて
注水
オーバーフ0一バイブ
h.h■
メ ス シ
リ ン
二上 ガ S ラ ス 管
砂
山
「
1
;
O
ヘッドタンクベ
スタンド 5
8
シリ
シリンター中に流入するので、その量だけシリンダーのオバーブローパイプから外へ水があふれ 出る。このあふれ出る水の流量は間もなく一定にはるので、この定流量を適当な容積のメスシリ ンダーで測定する。
カラス管内の断面積を∫、砂柱の長さをノ、金網からガラス管内水面およびシリンダー内水面 までの高さを、それぞれ危1、机、そしてソリシターのオバーブローパイプから流れ出る定流量を Qで表わそう。 ≡◎/8はガラス管中の水柱部分の断面平均流速に相当する。砂柱部分では、
一20一
砂粒が存在するために、水が通過できる断面積は∫より小さい。この断面積を8 で表わすと、
〃…Q/∫ は砂柱部分の断面平均流速に相当する。一定流量Qの状態であるから、
Q=〃∫=〃∫ (1)
ガラス管内水面とシリンダー内水面との差を免で表わすと、
ゐ=(ゐ1+4)一仏=(〃r〃ヨ)十4 (2〕
ガラス管を保持する高さを等間隔、たとへば1㎝づつふやしてゐを大きくし、その時の流量Qを 測定して、横軸に力〃を、縦軸にm…り/∫をとって、実験結果をグラフ用紙に固くと、すぐあ とで述べる操作法を守って実験すれば、図一2にみられるように、原点を通る直線が得られる。
したがって、
々
m=K一 (K;比例常数) 13〕
ノ
比例常数Kを、この砂の透水係数(hydrau1ic conductivity)と呼んでいる。
単位は(3〕式からわかるように、速度の単位 であり、通常、水の場合にはlC皿/S㏄が用い
られている一3〕式は1856年、Darcy(フラン ス人)が始めて発表したので、 Darcyの 法則 と呼ばれている。種々の粒径の砂に ついて、同じ乃/ノにおいては、Kが大きい 程m、したがってQが大きくなる。Kが水 のとおしやすさを示すゆえんである。 く ♀
コ
2 実験装置の操作法とその注意 現実の土は、表一2でみられるように、
粒径が1μ以下のコロイドから、2皿以上 の礫など種々の粒径の粒を含んでいるので、
実際に地下の帯水層を流れている地下水流 量を調べる場合には、複雑な粒径分布をもっ た土についても透水係数が測定できるよう な高級な装置が必要であり、図一1に示し た装置では到底はかれない。この装置は、
あくまでも教材としての実験装置である。
Q8
一α4
αO
図一2
(Cm応eC)
■ 粒径α84−1,OOrnm
▲ 〃 O.59一α7. 〃
● 〃 α35一α42 〃
ψ二. 一
O α5
h/」
▲
1.O
したがって、この実験では、粒径の範囲が限られた砂についてしか実施できないことを始めにこ とわっておく。
i)表一3に掲げたJ I S規格のフルイのうち、フルイ目の開き0.25mから、1.00㎜までの各 フルイを用意し、運動場などから採取した土をこれでよくふるい、各開き目の砂を必要量だけ作
る。
一21一
表一2 土の粒径区分とその名称
粒径(㎜) 2
0.2O.02 0.002
国際土境学会
操 粗 砂 細
砂1シルト 粘 土
O.25 O.05 0.01
日本農学会 課一 粗 砂 細砂1微砂1 粘 土
O.005 O.OO1
日本工業規格
繰 粗 砂 細砂. 沈泥1 粘
土1・ロイド合衆国農業局 1O.510.1
操 ミ極粗砂1粗砂ミ中砂細砂1極細砂j
シルト 粘 土
(山崎不二夫著^土壌物理 、養賢堂、1971,から引用)
表一3 フルイー覧表(J I S規格)
一日本工業規格 JIS Z 8801
ア
ラ 目細
目呼び方
フルイ目の開き(㎜)
呼び方フルイ目の開き(㎜)
101.6 m lO1.6 5660
μ5.66
88.9
〃88.9 4760
〃4.76
76.2
〃76.2 4000
74.00
63.5
〃63,5 3360 3.36
50.8
〃50.8 2830
〃2,83
44.4
〃44.4 2380
〃2.38
38.1
〃38.1 2000
〃2.00
31.7
〃31.7 1680
〃1.68
25.4 25.4 1410
〃1.41
22.2
〃22.2 1190
〃1.19
19.1 19.1 1OOO
〃1.00
15.9
〃15.9 840
〃O.84
12.7
〃12.7 710
〃0.71
11,1 11.1 590
〃O.59
9.52
〃9.52 500
〃0.50
7.93
〃7.93 420 O.42
6.73
〃6.73 350
〃0.35
297
〃0.297
250
〃0.250
210
〃0.210
177
〃0.177
フルイの大きさは 149
〃O.149
a)200m内径×60㎜深さ 125 0.125
b)150 〃 ×60 〃 105
〃O.l05
^ ^ ^c) 75 〃 ×20 〃 の3通りがある。
88 74 62 53 44 37 32
0,088 0.074 0.062 0.053 0.044 0.037 0.032
注)
フルイには、J I S由格のほかに、アメリカ標準規格・タイラー規格の ものがある。
一22一
ii)各開き目ごとに、砂を米を洗うようによく水で洗う。14ビーカーに砂200㏄程を入れ て洗うと手際がよさそうである。洗い始めは、砂粒についている粘土やシルトのために水が濁る が、このにごりがなくなるまで充分に洗う。また、砂より比重の小さい粒は水を流す時に浮きや すく流れ出ようとするので、これを利用して、簡単に流れ出るものは流し去った方がよい。
iii)こうしてできたきれいな砂をガラス管中に入れる。水洗いの時に砂粒は充分水にぬらされ たので、砂柱をシリンダー中へ浸す時、水とのなじみがよく、砂粒間の空気は程よく抜けるよう である。それでも、砂粒間の空間は複雑な形をしているので、完全に空気が抜けることはめった にない。空気を完全に抜く方法はつぎに述べるので、徐々にガラス管をシリンダー中に入れ、所 定の水位差んにしたあと、スタンドのハサミでしっかりガラス管を図一1のようにとめる。
iV)注水管をガラス管に入れないで、はずしておく。そしてガラス管の頭部に、図一3のよう に、ゴム栓をする。ガラス管のオバーフローバ
図一3 イフにつけているビニール管の端を□にくわえ、
静かに吸うとガラス管内の空気圧が下がるので、
シリンダー中の水が砂柱を通ってガラス管の中 へ流れこもうとする。適当に吸うとつめた砂が
もち上りばらぱらになる。急に強く吸うと、オ ノ
バーブローパイプからビニール管の方まで砂が 流れこみ、口の中へはいることもあるので、充
分注意してほしい。砂がぱらはらになってもち ビニ■ル管 上った時、とじこめられていた空気は解放され
て上の方へ逃げる。吸うのを止めると砂はもち ろん水中を落下して金網上にたまる。砂をこの ようにまき上らせるため、砂柱上面からオバー ブローパイプ取り付け位置までの長さとして20
㎝種とっておきたい。また、砂柱があまり長い と、吸いこみによってまき上らせることがむず かしいので、砂柱の長さは10〜ユ5㎝程が適当の ようである。一回の砂のまき上らせでは、閉じ こめられた空気を除去できないようであるから、
2ないし3回この吸い上げ操作をして空気を完 全に除いてほしい。
V)砂のまき上がりから金網の上へ自由落下する際、もし砂の中に粘土やシルトがまじってい ると、この粘土やシルトの沈降速度は小さいので、最後に砂柱上面に沈積して薄い層を作る。す ると、この薄い層では水が通りにくいので、薄層だけで透水係数の値が定まってしまうようはこ ともあり魯るので、これを防ぐために、ii)で述べたように、充分水洗いをしたわけである。し かし、実際には、いくらかの厚みでいつもこの薄層ができる。それで、直径4〜5㎜長さ40㎝程 一23一
ゴム栓
口で吸う
ノ
noo n8
…
気泡 ビニール管
まき上った砂
一
金網
の細い棒の先に、直径1㎝程のアルミ板をつけたスプン状のものを用意して、薄層をすべて取り
除く。
Vi)水中の落下で金網の上に沈積した砂柱では、その砂粒のつまり方はゆるく、自然状態での 砂粒のつまり方と相当ちがう。つまり方、すなわち、間隙体積の大小は、水の透水性に関係する
ことは明白であるから、同じ粒径の砂であっても、砂の充填度を揃えて透水係数を測定しなけれ ば意味がない。充填度を一定にするために、つぎのような操作をおこなう。ゴム栓をしたまま、
ビニール管を通して要領よく呼吸の振動を砂柱に与えると、この振動によって、砂柱は2〜3㎝
程収縮する。適当な振動数で砂に振動を与え砂層を締め固める方法はwater vibration工法と呼 ばれ、大規模な工事でも使用されている。ここでは呼吸を利用して振動を与え、砂柱を締め固め るわけである。砂柱が締った時、マジックインキを用いて、砂柱上面の位置をガラス管の外面に 細い線で印し、以後、砂柱のまき上げ操作をした後、いつもこの線の印まで呼吸振動でしめかた
めれば、常に同一充填度の砂柱をガラス管の中に作ることができる。
Vii)ゴム栓をとりはずし、注水管を入れて、ヘッドタンクから水を流し、ガラス管内水面の高 さ冷1を一定に保った時の定常流量Qを測定する。測定値の再現性をたしかめるため、3回ないし 4回。を測定し、それらの値の平均値を採用する。というのは、しばらく水を流していると砂柱に また気体がたまるからである。これはおそらく水道水中に存在する微粒の気体や溶存の気体が砂 粒の間にとらえられたためであろう。気体が捕捉されるメカニズムはよくわからないが、砂柱に 気体がたまることは事実である。ρがはっきりと減少を示した時は、気体が必らずたまっている。
ρの測定値がぱらつく原因はこの気体の貯留であるから、このような場合には、i )に述べた方 法で空気を抜き、w)に述べた方法で充填度を揃えて、0を再測定しなければはらはい。
以上、i)州ii)までの操作を確実に実行すれば、平均測定値の±5%位のばらつきで、再現 性のよい実験をすることができる。
3.考 察
i)Darcy則の導出
13〕式は、砂粒の間に存在する水の全体について、力の釣合いを考えることによって導くことが できる。水の密度をρ、重力加速度をgとすると、砂柱の上面にはたらく水圧はρg仏、砂柱の 下面にはたらく水圧はρ助。であり、砂柱断面中で水が通過できる断面積を8 とすると、差し 引き水を下へ押そうとする全圧力の差はρg(加1一仏)∫ となる。砂粒間の水が占める体積をγ とすると、これにはたらく重力はρ〃であり、結局、ρg(んr仏)、3 十ρgγが水をガラス管か らシリンダー中へ流そうとする力になる。水が砂粒間を流れると、両者間にマサツカがはたらく。
このマサツカ戸が駆動力ρξ(ゐr仏)8 十ρ8γと釣合った時、水は一定流速で流れるであろう。
マサツカは、砂柱が長くなれぱそれに比例して大きくはるであろう。また、砂柱断面積∫が大き くなれば、水が砂柱を通り抜ける道筋の本数が多くなり、この本数に比例してマサツカは大きく なるであろう。しかし、この砂柱中の水路は複雑に曲りくねっているに違いない。本数を定める のに、どうすれぱよいのであろうか。本数の問題だけではない。8 の大きさもどのように定めれ
一24一
ぱよいのであろうか。このような行きづまりをモデル化で解決しようとするいくつかの試みがあ り、簡単なモデルが毛細管モデルである。これは水路に関する量を取り扱う場合に、等価な毛細 管の集合として置きかえるモデルで、その置きかえ方はつぎのとおりである。
砂柱に、直径φ、d。、4、・一・…dnの毛細管がそれぞれM1,M呈、拙、・・…・;M 本存在し、
管の長さはすべて砂柱の長さ4であると考える。すると、毛細管中の全体積は
2一物w! と表わせるが、これが前述の砂粒間の水の体積γに相当する。ところで、この体
n π=14
積γは次のようにして実測することができる。ピクノメーターを用いて砂の比重を求め、この比 重で砂柱の砂の重量を割れば、砂粒だけの全体積が得られるので、砂を充填させている空間の体 積∫!から今求めた砂粒だけの体積を引けばよい。γを84で割った比を間隙率(porosity)と 呼んでいる。間隙率が大きい時には、砂粒のつまり方がゆるいということであり、前に述べた充 填度の量的表現が間隙率であり、2. i)の実験操作は間隙率を一定にする操作である。間隙率 をβで表わすと、
mπ n π
γ一β〃一トペ〃! .∴β卜2刊wづ
亡14 一=14
第二式の右辺は、毛細管全体の断面積であり、丁度、砂柱断面で水が通過できる面積8 に対応 する。水と砂との間のマサツカ戸は、毛細管内の全表面積λに比例するであろう。簡単のため、
砂粒の径が単一で、したがって置きかえる毛細管の直径も単一往6であるとすれば、
π 4
∫ 一β∫一一〃, λ一πd〃一一8 4 (45)
4 6
毛細管中の水の速度が小さい場合には、Hagen−Poiseuilleの法則からわかるように、マサツカ は流速に比例する。この流速は、ω式でみられるように、砂で表わした。そのほか、水の粘性係 数ηにも比例することを考慮すると、マサツカ戸はつぎのように表わされる。
卜舳イ1古市一(芋)1・・1(∫:比例係数) (・〕
流量Qが一定の時には、力が釣合って
1・(い・)∫1・1・γ一・・1・(lr・呈)β・・1鮒一(芋)1∫・・
・仁i舌)㌣ 17〕