盤ぶくれ防止工法の開発
― 盤ぶくれ防止工法の概要と設計の考え方 ―
錢高組 正会員 ○深田 和志 森 正嗣 旭化成建材 前嶋 匡
大阪防水建設社 山下 坦良 三信建設工業 田中 良一
1.はじめに
近年、地下空間の重層的な利用が活発化しており、地下構造物の大深度化が進んでいる。地下空間の構築 方法としては、シールド工事が主流となるが、この工事で不可欠なものは大深度掘削を伴う立坑である。し かし、都市部では地下水汲み上げ規制により地下水位が回復しているため、立坑工事においては掘削底面の 安定確保が重要なポイントとなっている。掘削底面の安定には、「盤ぶくれ」、「ボイリング」、「ヒービ ング」があるが、大深度掘削では「盤ぶくれ」の安定確保が最も重要である。
盤ぶくれ対策としては、土留め壁を下部の難透水層まで根入れする方法、地下水を汲み上げ揚圧力を低下 させる方法、掘削底以深を地盤改良する方法がある。しかし、地盤条件によっては、土留め壁の根入れを長 くする方法は経済面・施工面から採用できないケースがあ
り、また地下水低下工法は地盤沈下などの周辺環境問題か ら適用困難となるケースが多い。その結果、底盤改良工法 が採用されることが多いが、他工法と比較してコスト高と なるため、経済的で確実な盤ぶくれ防止対策工の提案が望 まれている。
そこで盤ぶくれ防止対策として、図 1 に示すように、既 存の超高圧噴流注入(以後、ジェットグラウトと呼ぶ)と 引抜き抵抗を有するアンカー(以後、ハイブリッドパイル と呼ぶ)を組み合わせた新しい「盤ぶくれ防止工法」を考 案した。本報告は、盤ぶくれ防止工法の概要、その施工方 法および設計方法について述べたものである。
2.盤ぶくれ防止工法の概要
従来の地盤改良工法は、ジェットグラウトの重量、曲 げ・せん断抵抗で被圧地下水による揚圧力に抵抗させる 考えのため、改良厚さが数m以上と大きくなり対策費用 が高額となっていた。これに対して、今回提案する盤ぶ くれ防止工法は、ジェットグラウトとハイブリッドパイ ルを併用することにより、改良厚さを従来の半分以下に することができコスト低減を図ることが可能となる。
ハイブリッドパイルとは、図 2 に示すように、鋼管パ イプの上端部にスクリューを下端部に透水性袋体(ファ ブリック球根)を取り付けたものである。
立坑、盤ぶくれ、ジェットグラウト、引抜き杭、掘削底面
〒163-1011 新宿区西新宿 3-7-1 新宿パークタワー11F TEL 03-5323-3861 FAX 03-5323-3860
図 1 盤ぶくれ防止工法の概要
図 2 ハイブリッドパイルの概要
掘削床
支持地 盤
フ ァブリ ック球根 パ イ プ ス ク リ ュ ー
ハイブリットパイル
土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)
‑721‑
VI‑361
3. 施工手順の概要 ハイブリットパイルとジ ェットグラウトの施工手順 を図 3 に示す。ハイブリッ ドパイルは、ジェットグラ ウトの交点またはラップ位 置に設置し、スクリューの 周囲に未改良部分が生じな いように慎重に施工する。
4. 設計の考え方
設計に使用する荷重の考え方は、原則として「土木学会トンネル標準示方書(開 削工法編)・同解説」の盤ぶくれに準じ、ハイブリッドパイルの必要本数およびジ ェットグラウトの厚さは下記に示す項目について検討し求めるものとする。
(1) ハイブリッドパイルの必要本数(N)
N=不足荷重 /ハイブリッドパイル 1 本当たりの最小引抜き力
①不足荷重 =揚圧力 ― (地盤の重量 + せん断抵抗) 揚圧力 :難透水層の下面の水頭
地盤の重量:掘削底から難透水層の下面までの土の重量 せん断抵抗:土留め壁根入れ部の摩擦抵抗+土留め壁根入れ
先端から難透水層の下面までのせん断抵抗
②ハイブリッドパイルの最小引抜き力(下記の最小値とする)(図 4)
A) 鋼管パイプの引張耐力(
p
)p=A
s×f
sA
s:鋼管の断面積f
s:鋼材の引張応力B) スクリュー外周とジェットグラウトとの引抜き耐力1)、2)
砂質土
P
s= 0 . 1 ⋅ σ
b⋅ A c
粘性土P
c= 0 . 08 ⋅ σ
b⋅ Ac
Ac
:コーン破壊有効投影面積Ac =π × L × ( L + D )
D
:スクリュー径σ
b:ジェットグラウトの圧縮強度L
:スクリュー埋め込み長さ c) ファブリック球根の引抜き耐力(p
t)p
t=5NπdL+70NAsp
N
:ファブリック球根周辺の先端平均 N 値d
:ファブリック球根の直径L
:ファブリック球根の長さAsp
:ファブリック球根の支圧有効断面積 (2) ジェットグラウトの厚さジェットグラウトの厚さは、ハイブリッドパイルを支点とする単純梁としてジェットグラウトに発生する 曲げ・せん断力から算出する。なお、ジェットグラウト最小厚さは品質保証から 1.5m とする。
5. おわりに
今後、現場実験を行い本工法の技術確立を図る予定である。なお、本工法は
土留め掘削に伴うリバウン ドや液状化による埋設物の浮き上がり防止、既設構造物の基礎補強にも採用できるものである。
【参考文献】1)竹中、深田他、盤ぶくれ防止工法(ZAOS‑phm)の開発‑ジェットグラウトによる改良体とスクリューパイル の引抜き模型試験、地盤工学会年次講演概要集 37 回、2002、2) 前嶋、森他、盤ぶくれ防止工法(ZAOS‑phm)の開発‑ジェッ トグラウトによる改良体とスクリューパイルの引抜き試験、地盤工学会年次講演概要集 37 回、2002
図 3 施工手順の概要
図 4 ハイブリッドパイ ルの構造図
支持地盤
ファブリック
① 掘削 ②球 根拡 大 掘削 ③ パ イル の埋 設 ④フ ァ ブリ ック 球 根の 造成
(1) ハイ ブリ ッド パ イル の施 工 (2)ジ ェッ トグ ラ ウト (J G )の 施工
⑤ 三 重管 の設 置 ⑥ JG の造 成
ファブリック
パ イ プ
根固め材
掘削床位置 JG 造 成
シェル
スクリュー 球根
A B
C
地盤 支持地盤
フ ァブ リック 球根 ジェ ット グラ ウト 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)
‑722‑
VI‑361