博士論文審査報告書
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(2) 安 定 液 で 掘 削 地 盤 の 孔 壁 を 保 持 す る 場 所 打 ち 杭 工 法 は ,1 9 3 0 年 頃 に ヨ ー ロ ッパで開発され,日本においては既製杭の打設に伴う騒音・振動が建設公害 と し て 社 会 問 題 化 し た 1 9 6 0 年 代 か ら 徐 々 に 採 用 さ れ る よ う に な っ た .こ の 場 所打ち杭工法に用いられる地盤掘削安定液は,初期の頃はベントナイトを主 材とした懸濁液であったが,地中連続壁工法における研究・開発を背景に, 安 定 液 の 増 粘 性 や ろ 水 減 少 効 果 を 目 的 に C M C( C a r b o x y - M e t h y l C e l l u l o s e )が 1970 年 代 よ り 使 用 さ れ は じ め , 現 在 使 用 さ れ て い る 安 定 液 は CMC を 一 部 含 むベントナイト系安定液が広く採用され,土質等の条件により配合割合を変 化させて使用されている. 場所打ち杭工法の安定液は可能な限り繰り返し使用されるが,掘削土砂の 混入やコンクリート打設時のセメント成分の影響などによって徐々に性能が 低 下 す る .こ の 劣 化 し た 安 定 液 は 産 業 廃 棄 物 の「 汚 泥 」と し て 処 分 さ れ る が , 近年,最終処分場の不足,遠隔化などの問題が顕在化している.また,従来 のベントナイト系安定液は,実績は豊富である一方,孔壁にベントナイトが 付着して杭の最大周辺摩擦力や有効杭径が減少することや鉄筋にベントナイ トが付着して鉄筋の付着強度が低下するなどの品質上の課題があり,これら の課題の解決が望まれている. 本論文は,既往のベントナイト系に代わる新たな地盤掘削安定液として高 吸 水 性 ポ リ マ ー 材 (以 下 , ポ リ マ ー 材 )を 懸 濁 し た 安 定 液 を 考 案 し , そ の 基 本 的性状の調査と既往の場所打ち杭工法用掘削安定液との性能比較をもとに, 産業廃棄物の低減や杭の品質改善につながることを,実験的に調査したもの である.さらに,この安定液をアースドリル工法とリバース工法による場所 打ち杭工法の現場に適用し,その管理手法を考案するとともに産廃処分量の 低減及びコスト改善効果を実証している. 審 査 に あ た っ て は ,2 0 1 7 年 11 月 2 3 日 に 審 査 員 予 定 者 3 名 に よ る 予 備 審 査 会 を 実 施 し , 専 攻 内 縦 覧 に 付 し て よ い 旨 の 判 定 を 得 た . 11 月 2 3 日 か ら 1 5 日 間 の 建 設 工 学 専 攻 に お け る 縦 覧 の 後 ,1 2 月 7 日 の 専 攻 会 議 で 博 士 論 文 受 理 申 請 が 承 認 さ れ , 12 月 21 日 の 創 造 理 工 学 研 究 科 運 営 委 員 会 で 論 文 が 受 理 さ れ た .2 0 1 8 年 1 月 2 5 日 に 公 聴 会 を 開 催 す る と と も に ,4 科 目 の 学 識 確 認 を 実 施 した.研究倫理については受理前に申請者が研究倫理科目を受講するととと もに,論文の剽窃・盗用チェックを実施して問題のないことを確認した. 本論文は,序論から結論までの 7 章で構成されているが,以下に各章の概 要と審査結果を述べる. 第 1 章は序論であり,ポリマー材を利用した安定液の開発の目的と地盤掘 削用安定液として必要な機能を明らかにするとともに,本論文の構成と各章 の概要を要約している. 第 2 章では,既往の地盤掘削用安定液全般について整理を行い,孔壁安定 性や流動性に係る施工上の課題,場所打ち杭本体構造に与える影響などを明 らかにしている. 1.
(3) また,建設分野でのポリマー材の利用例を調査し,この材料を地盤掘削用 安定液に応用した場合における流動性・孔壁安定性・安定液の最終処分時の 減量化などの優位性が期待できる機能を明らかにしている. 第 3 章 で は , 高 吸 水 性 ポ リ マ ー 安 定 液 (以 下 , ポ リ マ ー 安 定 液 )を , 場 所 打 ち杭工法における孔壁の安定性と掘削,コンクリート置換性を成立させるた め に 必 要 な 粘 性 を 配 合 ・ 調 整 で き る こ と を 前 提 と し た 「 水 (溶 媒 )と 吸 水 膨 張 させたポリマー材が懸濁した溶液」と定義し,ポリマー材の材料特性とポリ マー安定液の基本性状を実験的に解明している. ポリマー安定液の基本性状を実験的に調査するために,ポリマー材の添加 率とポリマー安定液の粘性及び比重の関係,使用溶媒の電気伝導率と吸水倍 率との関係を実験的に明らかにしている.その結果,ポリマー材の吸水膨張 の程度にかかわらず,ポリマー安定液の性能を支配する粘度はポリマー材に 吸着された水分を除く余剰水率に依存することを示している. 第 4 章では,ポリマー安定液の場所打ち杭工法への適用性について,各種 室内実験を通じて検証した内容を要約し,ポリマー安定液実用化への具体的 な道筋が示されている. まず施工上の課題となる孔壁安定性については,遮水性能を発揮できる適 用地盤の粒径範囲がベントナイト系安定液よりも広く,かつ遮水性能を発揮 するまでに要する時間も短いことが判明し,優れた遮水性能を有することを 解明している.また,流動性については,ポリマー安定液のファンネル粘性 を調査し,余剰水率とファンネル粘性の関係式を求めている.一方,適用深 度 に つ い て は ,掘 削 深 度 5 0 m 程 度 に 相 当 す る 地 下 水 圧 下 に お け る ポ リ マ ー 安 定液と水道水のベーンせん断抵抗を比較し,加圧に伴いポリマー安定液のベ ーンせん断抵抗は微増するものの水道水と同程度であることを確認している. また,ポリマー安定液は,塩化カルシウムなどの二価の金属イオンを添加 して溶媒の電気伝導率を上昇させることでポリマー材に吸着されていた水が 分離する現象を利用して.廃液処分量の減量化が図ることができる.比重の 異 な る ポ リ マ ー 安 定 液 の 分 離 試 験 を 実 施 し ,安 定 液 の 比 重 が 1 . 0 5 以 下 で あ れ ば 分 離 度 70%以 上 が 確 保 で き る こ と を 確 認 し て い る . 次に,場所打ち杭本体への影響を明らかとするために,コンクリートの置 換性・杭本体の出来形に影響する泥膜厚さ・鉄筋とコンクリートとの付着性 能に関する実験をおこなっている.まず,杭本体を造成するコンクリートの 置換性については,水槽内に満たしたポリマー安定液にコンクリートを底部 から打設して置換性に問題がないことを確認している.杭本体の出来形に関 係 す る 泥 膜 厚 さ に つ い て は ,ポ リ マ ー 安 定 液 の 場 合 は 0 . 5 m m 程 度 で 十 分 薄 く , 泥膜によるマッドケーキの増大で杭径を縮小させる恐れがないことが示され ている.鉄筋とコンクリートとの付着性能への影響については,既往の安定 液 よ り 付 着 応 力 度 が 約 4~7% 向 上 す る 結 果 が 得 ら れ , 杭 本 体 の 品 質 向 上 が 期 待できる. 2.
(4) さらに,ポリマー安定液の環境特性についてもそれぞれ調査及び実験をお こ な い ,環 境 破 壊 に つ な が る こ と も な く ,か つ 施 工 性 を 阻 害 す る こ と も な く , 既往の安定液と比べ優れた特性を有した場所打ち杭工法の安定液として適用 できることを確認している. 第 5 章では,第 4 章までに得られた室内実験結果に基づいて,ポリマー安 定液を実際に現場で使用するための管理手法を検討している.管理項目及び 管理限界値については,既往の安定液で通常使用するものにポリマー材の吸 水特性に関係する使用溶媒の電気伝導率を加えた内容とし,現場管理手法と しては,現場使用水及び地下水の調査,安定液の試験練り・配合計画,現場 配 合 及 び 施 工 中 の 管 理 ,安 定 液 の 破 棄 と い う 手 順 で フ ロ ー 図 を 準 備 し て い る . 第 6 章では,第 5 章で考案したポリマー安定液の現場管理手法を実際の場 所 打 ち 杭 施 工 (ア ー ス ド リ ル 工 法 2 現 場 , リ バ ー ス 工 法 1 現 場 )に 適 用 し , そ の妥当性を検証している.施工中における深度方向でのポリマー安定液の比 重・ファンネル粘性・電気伝導率は深度ごとにばらつきもなく一定している ことを確認し,安定液として優れた性状を有しているとともに,第 5 章で示 した管理手法が現場管理手法として使用できることを実証している.また, ポ リ マ ー 安 定 液 と 既 往 の 安 定 液 と の 経 済 性 比 較 で は , 約 32%の 材 料 コ ス ト 低 減に加え,安定液及び掘削残土の産廃処分量の低減効果によるコスト低減に よ り ,ポ リ マ ー 安 定 液 は コ ス ト 改 善 効 果 が 期 待 で き る . 第 7 章は本論文の結論であり,本研究で得られた主要な結果を総括すると ともに,今後の課題が要約されている. 以上を要するに,本論文は,既往のベントナイト系に代わる新たな地盤掘 削安定液としてポリマー材を懸濁した安定液を考案し,その基本的性状の調 査と既往の場所打ち杭工法用掘削安定液との性能比較をもとに,産業廃棄物 の低減や杭の品質改善につながることを,実験的に調査したものである.さ らに,この安定液を場所打ち杭工法の現場に適用し,その管理手法を考案す るとともに産廃処分量の低減効果及びコスト改善効果を実証している.この 成 果 は ,土 質 基 礎 工 学 ,地 盤 工 学 上 の 貢 献 大 な る も の と 判 断 さ れ る 。よ っ て , 本 論 文 は 博 士 (工 学 )の 学 位 論 文 と し て 価 値 あ る も の と 認 め る 。 2018 年 2 月 審査員. 主査. 早稲田大学教授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 赤木寛一. 副査. 早稲田大学教授. 工 学 博 士 (早 稲 田 大 学 ). 小泉. 早稲田大学教授. 博 士 (工 学 )早 稲 田 大 学. 小峯秀雄. 3. 淳.
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