Title
化学気相蒸着法による炭素繊維強化炭素複合材料の改質に
関する研究( 本文(FULLTEXT) )
Author(s)
酒井, 昭仁
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第047号
Issue Date
1996-03-25
Type
博士論文
Version
publisher
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1768
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。化学気相蒸着法による炭素繊維強化炭素複合材料の
改質に関する研究
(lmprovement of C/C composites using chemical vapor deposition technique)
化学気相蒸着法による炭素繊維強化炭素複合材料の改質に関する研究
目次
第1章 序論 1. 1 炭素繊維強化炭素複合材科・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 1. 1.1炭素繊維強化炭素(C/C)複合材料概論
1. 1. 2 C/C複合材科の課題 1. 1. 3 C/C複合材料の課題改善策の検討 1. 2 CVDとCVI ・ 1. 2. 1 CVD概論 1. 2. 2 CVI概論 1. 2. 3 本研究で着目した方法-パルスーCVI/CVD 20 1. 3 本研究の目的 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・.・ ・ ・ ・ ・ 21 参考文献 第2章 S iCのパルスCVIによるC/C複合材料の強度向上研究 22 2. 1 序 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 25 2. 2 実験方法・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 26 2. 2. 1 パルスCVIの出発物質と反応 2. 2. 2 パルスCVI実験装置 2. 2. 3 CVIプリフォーム 2. 2. 4 強度特性の評価方法 26 26 29 322. 3 実験結果および考察・ ・ ・ ・ ・ ・ 2. 3. 1 パルスCVIの反応条件 2. 3. 2 強度特性 2. 4 結論・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 53 参考文献 第3章 パルスCVDによるC/C複合材科へのS iC被覆 54 3. 1 序 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ I ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 55 3. 2 実験方法・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 56 3. 2. 1 パルスCVD実験装置 3. 2. 2 C/C複合材料試料 3. 3 実験結果および考察・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 60 3. 3. 1 パルスCVDの最適反応温度 3. 3. 2 耐酸化性の評価結果 3. 3. 3 高温大気中での引張強さと弾性率の評価結果 3. 4 結論 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 72
参考文献
73 第4章 パルスCVIの反応容器形状・寸法の違いがS. iC充填に及ぼす影響
一美験結果とcFD解析 4. 1 序 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 744. 2 異なる実験装置でのパルスCVI実験結果の差異 4. 2. 1 実験方法 4. 2. 2 実験結果 4. 3 パルスCVI反応管内流れのCFD解析・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ -4. 3. 1 解析の目的 4. 3. 2 CFD解析の方法 4. 3. 3 CFD解析の結果 4. 4 結論 参考文献 第5章 結言 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 謝辞 80 80 81 82 86 86 87 88
第1章
序論
1. 1炭素繊維強化炭素複合材料
1. 1. 1炭素繊維強化炭素複合材料概論
炭素繊維強化炭素(c/c : carbon/Carbon)複合材料は,炭素繊維で強化され た炭素マトリックスの複合材科である。その概念を図1.1-1に示す。荷重を受け 持つ異方性の高強度炭素繊維と,マトリックスとして繊維を保持する等方性バ ルク炭素の複合化によって、一般の黒鉛材料よりも大幅に高い力学的特性を得ることができる。一例として、図1.1-2に各種高温材料の高温における引張比強
皮(引張強さを比重で割った倍)の比較【1】を示す。炭素材は2000℃を超えて
も強度低下がない唯一の材料であり、かつその比重は鉄鋼の1/4と非常に小さい。 このため炭素同士を複合化したc/c複合材料は、引張強さのほか、圧縮強さや 曲げ強さでも, 1400℃以上ではあらゆる材料の中で最も高い比強度を示す。さ らに複合化により繊維/マトリックス界面で破壊き裂が止められたり曲げられ たりするなど,靭性も改善される。筆者も試みたが、 c/c複合材科の板には木 材と同様に釘が打てる。これは通常の黒鉛ではできないことである。c/c複合材料はもともと軍事目的で開発がはじめられたため,その存在が一
般に知られるようになったのは米国がスペースシャトル耐熱材料への適用研究 を本格的に開始した1970年代初頭である【2】。スペースシャトルは大気圏再突 入時に激しい空力加熱を受けるが、C/C複合材科はその中でも最も高温(1400t
程度)になる機体の先端と翼の前縁で実用化された。図l.I-3に米国のスペース シャトルにおけるC/C複合材科適用部分の図解を引用して示す【3】。この用途に は、更に改良を進めたタイプが日本で計画中の宇宙往還機HOPEや将来の極 超音速機に向けて開発されている【4】。最近では高効率ガスタービンや原子炉の 隔壁材料への適用が研究されている他、高温でも摩擦係数が変化しない特性を生かして航空機やレースカーのブレーキパッドとして実用化されている【5,6]。 c/c複合材科の製造方法は2つに大別できる.最も一般的には、最初に樹脂 含浸による予備成形体を成形し,その後炭化成形する方法が用いられる。これ はレジンチャー法と呼ばれ,予備成形体用樹脂にはふつうフェノール樹脂が用 いられている。ただし、そのままでは樹脂分の炭化収縮によって低密度かつ低 強度であるので、必要な強さを得るためには更に樹脂等合皮と再焼成を繰り返
して赦密化する必要がある【7'】.もう一つの方法は,化学気相蒸着
(CVD:Chemical Vapor Deposition)によって,炭素繊維を編み上げただけの予
備成形体中に直接炭素を析出させるもので、 CVD法または熱分解炭素法と呼ば れている【8】。
炭素税#. (直径約10/Lm) 黒鉛構造は蛾#.方向に配向 黒鉛構造は一般にランダム
図1.1-1
C/C複合材料の概念
引張比強度(MPa)
500 1㈱ 1500 2(XX) 温度(℃)図1.ト2
各種高温材料の引張比強度比較
1. 1. 2
C/C複合材料の課題
c/c複合材料はその比類無い耐熱性から将来的にも期待される新素材であるが、課題として次の2つがあると考えられる。
(1)強度特性の向上(特に層間せん断強さ)
(2)耐酸化性コーティングの高性能化 ここではそれぞれについて現状をまとめ,これをふまえた改善策については次 節1.l.3で検討する。 a.強度特性の向上
C/C複合材料の強度特性は,もともとc/c複合材科が高温強度部材として発展 してきた経緯から,その研究の中で大きなウエイトを占めてきた。しかしなが ら以下に示すように改善の余地はまだ大きい。まず面内強さ(額の引張や圧縮)について示す。図1.ト4はc/c複合材料の引
張破壊挙動を繊維強化プラスチック(以下FRPと呼ぶ)と対比させて模式的に
示したものである【l】。一般のFRP、特に炭素繊維強化のもの(CFRP)では理論強度(繊維の引張強さの利用率がほぼ100%)が得られるという報告【9】がある
のに村して、 C/C複合材科では、最近の報告【10】から算定するに、最高でも繊 維の引張強さの利用率は67%程度である。これは圧縮や曲げにおいても同様と 考えられる。このように現状のC/C複合材科は強化繊維のもつ力学的特性を十 分生かしていない。 一方、層間せん断強さに代表される面外強さでは、その絶対値の小ささ故に面内強さより深刻である。層間せん断強さ(以下ILSSと呼ぶ)とは積層された
複合材料の層と層を互いにスライドさせるときのせん断強さである。 C/C複合 材料のILSSはFRPのそれに比べて著しく小さい。例えば米国の次世代スペース シャトル用に開発中の材料は、炭素繊維織布で2次元積層・強化されたもので あるが、そのILSSは4.6MPa【ll】であり、一般的なFRPの値(90-l10MPa) 【12】のわずか5%程度にとどまっている。この次世代スペースシャトル用材科の引張り強さは、繊維の引張強さの利用率が低いとは言え,既に346MPaに達し ており、比強度で比較する▲と航空機構造用のアルミ合金と同等の値を示す。し たがって低い層間せん断強さが構造設計の足蜘となり,十分高い面内強さを生 かした自由な設計ができない原因になっている【13】。
b.耐酸化性コーティングの高性能化
c/c複合材料は炭素の複合材料であるから、本質的に酸化には弱い。図1.1-5 にC/C複合材料の大気中での酸化重量減少【14]を示す。おおむね900K以上では 酸化によって激しい消耗をみせる。したがって,高温酸化雰囲気中で用いる際 には耐酸化コーティングが不可欠である。現在耐酸化コーティング材料として 最も知られ、かつ高性能を与えているのはsiCである。これは米国スペースシ ャトルのC/C複合材科【3】にも用いられている。その理由は、それ自身の耐熱・ 耐酸化性が良好でかつ炭素との親和性があるためと説明されており、 2000K級 の耐熱温度が期待できるとの報告がある【15,16】。 C/C複合材料へのSiCのコー ティング方法としては、最近ではより高い耐熱性を期待して、高純度かつ理論 密度に近い赦密膜が得られるCVD法が盛んに研究されている【17,22】。 CVD法 については後の1.2項に記述する。 しかしながら、 c/c複合材科の炭素繊維配向方向の熱膨張係数は極めて小さ く(≒o)、 siCを含む耐火セラミックスと大きく異なる【15]こと、およびcvDさ れたsiCコーティング自体がc/c複合材科とあまり密着性が良くない【23】ことな どから, CVD-SiCコーティングはこれまで熟応力によるはく離や密着性の悪さ が問題になってきた【17】。 C/C複合材科と耐火物コーティングの熱膨張率【15】を表1.1-1に示す。
このようなはく離の防止や密着性の改善方法として,これまでに、 Siをc/c 複合材料表面に拡散させ表面を低密度なsiCに転化し、応力緩和層とする方法(拡散転化法)
【17-19,21,22】と、コーティングの組成を連続的に変化(表面:sic,中間:sic-C混在,界面:c)させる方法(FGM法)
〔20】が研究されてき
た。ところが、拡散転化法ではc/c複合材料表面を転化させる際、その強度が 60%程度にまで低下する【21,22】と報告されている。また、 FGM法では組成を 変化させる段階で気孔の発生がさけられず、皮膜自体を低強度化すると報告 【24】されているなど、決め手に欠いているのが現状である。
表1.1-1
耐火物コーティングの熱膨張率
Materia一 Deposition Deposition Temperature (K) Coe用cientof 丁hermaーExpansion Process 300-2200K (10-6K-1) Sic CVD 1323 5.2 Tic CVD 1273 9.5 Al203 CVD 1323 10.3 AIN CVD 1523 6.1 Si3N4 CVD 1793 3.6 lr Sputtering 523 7.9 HfO2 EBCVD 1273 10.6a. 「投の複合材科の破壊挙動(冊) b. C/Cコンポジットの破壊挙動
図1.ト4
C/C複合材料の破壊
400 600 800 1.000 温 度 〔℃〕
1. 1. 3
C/C複合材料の課題改善策の検討
a.c/c複合材料の強度特性の改善策
先のl.I.2項a節に示したように, C/C複合材科の強度特性向上には更に細分 して以下の課題がある。すなわち、 (1)面内強さ(板の引張や圧縮)における小さい繊維強さの利用率 (2)絶村値自体がきわめて小さい層間せん断強さ である。ここでは,まず、これらの改善のポイントを洗い出した後、これをふ まえて改善策を検討する。 面内強さにおける小さい繊維強さの利用率は、そのマトリックス炭素の強さ が炭素繊維のそれに比べて非常に小さく,ほとんど伸びないうちに破壊するた め、この早期破壊が炭素繊維に伝播して,その後全体の破壊に至るためと説明 されている【8】。したがってその改良には低いマトリックス強度とそれにともな う小さな破断伸びを改善すべきであることがわかる。 一方,極めて低応力でのC/C複合材料の層間せん断破壊は、層間において最 も弱いと考えられるリンク、すなわち、 (1)層間マトリックスの破壊 (2)強化繊維とマトリックスの接着はく離 のいずれか、または両方によって引き起こされると考えられる。なぜなら、 c/c複合材料のマトリックスたる炭素は本質的に脆性材料であるし、加えて一 般に樹脂を合皮して焼成することによって形成されるマトリックス炭素中およびそれと繊維との界面には,焼成時の収縮に伴う多くのマイクロクラック等の
初期欠陥が存在するからである。したがって面外強さ(層間せん断強さ)の向
上にも、それ自体の強さの向上と強化繊維との密着性改善といったマトリック スの改質が必要になってくると考えられる。 以上の点から、面内強さ、層間せん断強さともにマトリックスの改質がその 向上のポイントになると考えられる。従来のC/C複合材料のマトリックスであるバルク状の単体炭素は,黒鉛質であれガラス状炭素であれ、もともと低強度 (級密なもので最高120MPa程度【25】) ・低靭性(o.3-1.OMPa・ml/2【26】)であ
り物性的に限界がある.そこで、図1.1-6のようなハイブリッド・マトリックス
を考えた。ハイブリッド・マトリックスとは、炭素ベースとセラミックスの微 細網目構造からなっている。これは、先のl.1.1節のレジンチャー法によるc/c鷹合材料の樹脂含浸炭化による赦密化を、後の1・2項に述べるパルスCVI法
によるセラミックス充填に置き換えることで実現可能と考える。ここで言うセ ラミックスとは,例えばsiCのように、 (1)炭素との化学的親和性がある,(2)高い耐熱性を有する(C/C複合材料の耐熱性を損なわないため)
,(3)バルク炭素にくらべ高い力学的特性を有する(曲げ強さ約800MPa【27】),
であることが重要で,耐酸化コーティング材料と共通する項目が多い。このよ
うな特性を有するセラミックスならば、炭素ベースに貫入した微細網目構造と して、(1)炭素ベースの補強材としてはたらく(強さと破断伸びの改善)
,(2)炭素ベースのクラックアレスタとしてはたらく(き裂伝播の抑制)
, (3)炭素繊維/炭素マトリックス界面の欠陥を埋めてこれらを接着する, ことが期待できる。なお、セラミックスは耐熱性において炭素に劣るが、実際 の使用、特に大気中においてはそれが問題にはなりにくいと考えられる。なぜ なら、 c/c複合材料のもう一つの重要な研究課題である耐酸化性の付与に関連 し,大気中の使用には耐酸化コーティングとしてセラミック皮膜を形成する必 要があり,どのみち最終的な耐熱性は皮膜のそれで決まるからである。例えば、siCの耐酸化コーティングは2000K級の耐熱温度が期待でき(1.1.2項b節参照),
マトリックスの複合化にもsiCを用いれば,同様な耐熱温度は確保可能であると考えられる。
寅孔内にC VIで
セラミックス充填
b.耐酸化性コーティング高性能化のための改善策
先のl.l.2項b節に述べた課題をふまえ、ここでは耐酸化コーティングの高性能化のための改善策として、基質であるC/C複合材料を傷めることなく必要な
耐酸化性を付与し、かつコーティング自身もc/c複合材料とともに受ける応力 に耐えるための方策を検討する。最も簡単に◆は,現状でC/C複合材料の耐酸化 コーティングとして最も優れているとされるCVD法によるSiCコーティングを、 応力緩和層無しに直接施工しても密着力が確保できればよい。c/c複合材料には,その製造方法(特に、一般的なレジンチャー法)の制約
から必ず気孔が残留すると考えられる。そこで、気孔内へのSiC析出が可能と
考えられるパルスーCVI/CVD法(1.2項参照)に着日し,
c/c複合材科の残留 気孔に析出させたsiCを表面コーティング膜まで連続させることによって,強 固なアンカー効果によるコーティング密着性の確保ができるのではないかと考 えた。すなわち応力緩和層に代わって,コーティング材料そのもののアンカーを、もともと存在する気孔部分に打ち込もうという考え方である。この場合、
c/c複合材料基質自体には何の変化もないからその強度特性が損なわれること はないと期待される。また,コーティング自体はc/c複合材料よりも高強度の赦密なsiC膜だから、密着性に問題がなければc/c複合材料とともに受ける応力
に十分耐えられるはずである。1. 2
CVDとCVl
1. 2. 1CVD概論
a.cvDの定義
cvDとは、 「基質上に原料ガスを流し、その表面上での化学反応によって固 相を得る方法」である【28】。図1.2-1に反応のモデル(TiC成膜の例)を示し, 以下にその素過程をまとめる【29】。 (l)行きの拡散:原料気体が境膜拡散層内を拡散し,基質表面に到達。 (2)吸着:拡散してきた原料が基質上へ吸着される過程。 (3)基質反応:基質上での吸着物質の表面反応。 (4)表面拡散:安定な析出サイトヘの表面拡散,核形成または核成長。 (5)脱離:基質表面からの副生成ガスの脱離。 (6)帰りの拡散:副生成ガスが気相バルクに向かって境膜拡散層内を拡散。 b.CVDの分類
cvDの反応はほとんどの場合吸熱反応であることから、その活性化エネルギ の与え方で分類されることが多い。最も一般的なのは、反応管外部あるいは加 熱された基質から熟エネルギを得る方法であり,熟cvDと呼ばれている。これ は最も歴史が古く,かつ普及しているため,単にCVDといえばこのタイプを指すことが多い。一方、最近になって半導体製造への応用を中心に、できるだけ
基質温度を下げたいという要求が高まってきたために,活性化エネルギの一部 または全部を高周波プラズマやレーザー、あるいは紫外線等の光で与えるタイ プのCVDが研究されている【30】。これらはそれぞれプラズマCVD、レーザー cvDおよび光cvDと呼ばれ熟cvDと区別されている。これらとは別に,原料に よる分類として重要なものにMOCVDがある。これは原料ガスとして反応活性 な有機金属(MO:MetalOrganics)を用いて反応温度をより低温化しようとす
るもので、近年盛んに研究されている。更に、基質および析出の形態による分類としてCVI (Chemical Vapor lnfiltration)がある。 CVIは多孔質体やファイバ ープリフォームに村してCVDを行い、その内部に析出物を充填するもので、主 に複合材料成形の方法として研究されている。 CVIの詳細については次の l.2.2項にまとめる。
c.種々のCVD反応
cvDをその反応のタイプで分類すると4つに大別できる【30】。これらをまと めると表1.2-1のようになる。それぞれの反応のタイプを、表中の番号にしたが って以下に説明する。(1)ハロゲン化物の水素還元反応で、多くの場合wやMoのような単体の析出
物が得られる。 (2)第三物質を添加した場合のハロゲン化物の水素還元反応で、非酸化物セラ ミックスが得られる。これは多くの場合ハロゲン化物還元で得られる単
体よりもその炭化物や窒化物の方が熱力学的にも,化学的にも安定である ことによる。 (3)熱分解反応で,この反応に用いられる原料は、 MOのように一般的に化学 的活性が高いために析出温度は低くできる。 表中のCrおよびGaAsの析 出反応はMOCVDの例である。 (4)基質成分と原料ガスの反応で,反応の継続には基質成分が既析出物内を固 体拡散して表面に出てくる必要があるので得られる固相は薄膜に限られる。表1.2-1種々のCVD反応
Reactio∩Type Example Deposition Temperature (K)KE]
Halidereactio∩ WF6+3H2-W+6HF 500-1000 MoCl5+5/2H2-Mo+5日Cl 800-1150 900-1300 TiCl4+2BCl3+5H2一丁iB2+10HCl (2) Halidea∩da∩other TiCl4+CH4一丁iC+4HCl 1150-1400 3SiCL4+4NH3-Si3N4+12HCL 1200-1700 readio∩ BCl3+NH3-BN+3HCl 1100-1650 (3) ThermalCr(C6H5CH(CH3)i)2ーCr'(decompo.s)
550-800 Ga(C2H5)3'AsH3+GaAs'(decompo.s) 520-680 1150-1700 decomposition CH3SiCl3-Sic+3HCI (4) withSubstrate reaction C(sub.)+SiCl4'2H2+SiC'4HCl 1600-1900 Mo(sub.)+2SiCl4+4日2 MoSi2+8HCl 1000-1150苧巌二号
(1)行きの拡散
(2)吸着
(3)基質反応
(4)表面拡散
辻
(6)帰りの拡散
図1.2-1
CVD反応のモデル
1. 2. 2
CVl概論
a.CVlの要点
CVIはセラミックスやカーボンマトリックスの複合材料を成形する方法とし て開発が進められてきた。 cvIによる複合材料の成形は、例えばセラミック粉 体と強化繊維の混合物を焼結して成形する方法に比べ、次のような利点がある。 (1)成形時に加圧が不要なので繊維の損傷がない。 (2)成形温度が低くできるので繊維の反応劣化が少ない(例: siCのCVIは 1400K程度から可能だが、粉体焼結は1700K程度は必要) 0 (3)高純度のマトリックスが得られる。(4)充填可能なマトリックスの種類が多い。
(5)ニアネットシェイプ成形が可能であり、二次加工が最小限ですむ。 一方、 cvIは,反応条件によっては析出の進行とともに表面の目詰まりがおこ り、これによって析出速度が急激に低下したり,あるいは,深部には析出充填 されにくいといった欠点がある。このため、数日から数週間の長時間を要し,しかもなお多くの未充填部分を残す【31】。
b.CVIの種類
cvIの種類は以下の5つが報告されている。いずれも表面の目詰まりを少なくしながら、均一析出(充填)することを目指したものである。
(1)等温等圧法 プリフォームの温度を析出下限近くとして反応速度を落とし、圧力を5kPa 程度の減圧として内部ヘガス拡散による浸透を促進することによって、等 温等圧条件で行う方法。この方法は装置が簡単で,大型複雑形状の処理に 適するが、 析出速度が小さいので長時間を要するという欠点がある【32-34】。 (2)温度勾配法 プリフォームの表裏面に温度差をつける方法。すなわちガス供給側を低温にして目詰まりを防ぎ、出口側を高温にしてそちらから順に析出させる方 法である。 (1)の等温等圧法より反応温度を上げられるので充填速度は向上 するが,温度勾配をつけるためにプリフォーム形状は限られる【35】。 (3)圧力勾配法 プリフォームの表裏面に圧力勾配をつける方法。この圧力差を利用して、 反応に伴って発生する副生成ガスを裏面に逃がし,表面からの原料ガス導 入を促す。したがって(2)と同様に充填速度は稼げるが,プリフォーム形状 は限られる【36]。 (4)温度圧力勾配法 上記(2)と(3)を組み合わせた方法。したがってより高速の充填が可能だが、 その報告は単純な円柱形試料に限られている【37-39】。 (5)圧力パルス法 図1.2_2に示すように,反応容器の出入口に設けられた弁を適宜開閉し、「反
応容器中の真空排気」
, 「原料ガスの導入」および「原料ガスの保持・反応」を順に繰り返すことにより、圧力パルスを与える方法。これによって、
・はじめ真空になっている微細気孔に原料ガスを強制導入する,
・反応後気孔中にたまった反応副生成ガスを強制排気する, ことができる。この方法は装置はやや複雑になるが、原料ガスの強制充填と反応副生成ガスの強制排気によって,高速かつ均一な充填ができるほか、
種々の形状のプリフォームにも相応が可能であるという特長がある【40】。sugiyamaらは、この方法によって各種のセラミックスを多孔質炭素や粉体
をプレスしたプリフォーム中に迅速かつ均一に充填することが可能である
と報告している【40-41】。吸気弁
排気弁
1-2秒で
1サイクル
1. 2. 3
本研究で着日した方法-パルスーCVl/CVD
a.パルスCVlとパルスCVDの定義と区分
先のl.2.2項に示した、多孔質内-のマトリックスの内部充填を目的とする
圧力パルス法を,本論文では以下パルスCVI法という。これに対して、基質表面に強力なアンカー効果を持つ表面膜形成を目的とする圧力パルス法を,パル
スCVD法として区別する。b.パルスCVlとパルスCVDに着目した理由
パルスCVI法とパルスCVD法は,先の1.1.3項a節に示したc/c複合材料の強 度特性向上におけるハイブリッド・マトリックス形成の手法として、また I.1.3項b節の耐酸化コーティング高性能化における密着性向上のための、表面気孔の充填によって強固なアンカー効果を有する皮膜形成の手法としても,最
も優れたものと考えられる。すなわち、パルスーCVI/CVD法には次のような多
くの長所がある。 (1)成形時に加圧不要なので繊維の損傷がない。 (2)成形温度が低くできるので繊維の反応劣化が少ない。 (3)高純度のマトリックスまたは皮膜が得られる。 さらに、パルスーCVI/CVD法だけが下記の■2つの要求を同時に満足させること ができる。 (イ)試料形状に自由度があることc/c複合材料はもともとニアネットシェイプで製造されることが多いので,
複雑な実際の部品形状に対応できる方法が必要である。 (ロ)内部または表面の気孔に,迅速かつ均一な充填ができること実用材料としてC/C複合材料を考えるとき,プロセス期間が短いことは重
要である。1. 3
本研究の目的
1.I-1.2項の検討をふまえ、下記を目的とする研究を実施した。 (I)C/C複合材料の高強度化をねらいに、パルスCVIを応用したc/c複合材料の ハイブリッド・マトリックスの形成とその層間せん断強さ評価を行う。 (第2章) (2)基質を傷めず、かつ十分な密着性を確保可能なc/c複合材料の高性能耐酸化 コーティングを得るため、パルスCVDを応用した強固なアンカーをもつ直接 cvDコーティング層を形成させ、その耐酸化性能およびコーティング付き材 料の引張強さおよび引張弾性率の評価を行う。(第3章)
また、上記に関連しパルスCVIの充填析出機構を明らかにする基礎研究の1つ
として,下記も追加して実施する。 (3)反応管内のガス流れをcFD(ComputationalFluid
Dynamics)解析し,実際 の析出充填状況との対比を行う。 (第4章)参考文献
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第2章
SiCのパルスCV一によるC/C複合材料の
強度向上研究
2. 1序
本章ではc/c複合材料の強度向上に有効と考えられるパルスCVI法による気 孔内へのSiC充填を行い、その効果を確認するために、下記を実施した結果に ついてまとめる。(1)パルスCVIによるSiC充填の基礎実験として、気孔特性の異なる2種類の多
孔質炭素に対し、耐熱性および炭素との親和性に優れるSiCのパルスCVI法 による充填実験を行い、充填の可否と最適条件について考察する。ついで、 気孔を有するC/C複合材料に村してSiCのパルスCVI法による充填実験を行う。(2)調製したsiC充填多孔質炭素試料の曲げ強度と,
siC充填c/c複合材科の
ILSSの測定実験を行い、ハイブリッド・マトリックスのこれら強度特性向 上への寄与を評価および考察する。2. 2
実験方法
2. 2. 1パルスCVlの出発物質と反応
本実験のパルスCVIによるSiC合成の出発物質には、以下に示す理由で、メ チルトリクロロシラン(CH3SiC13:純度98%、以下MTSと略す)を用いたo MTSは、 SiCのCVD合成原料としてしばしば用いられるものである。 (1)1分子中にSiとcをそれぞれ1原子含むため、ガス中のSiとcの元素比率 を自動的に1 : 1に調整できる。 (2)常温で液体であり、かつ比較的高い蒸気圧を有することから、原料ガス 調製が容易で濃度をコントロールしやすい。 式2.2-1にMTSからsiCを得る反応式を示す。一種の熱分解反応であり、分子 内のハロゲンが水素とともに脱離する。反応温度は1150-1700Kと報告されて いる【1】。 CH3SiC13(g)ー SiC(s) + 3HCl(g) (2.2-1) 2. 2. 2パルスCVt実験装置
図2.2-1にSiCのパルスCVI実験に用いた実験装置の概要を示す。 MTSは、室温以下の一定温度に調節された飽和器中で一定流量の高純度水素(99.9999%)
をバブリングすることによって、その中に気化・飽和させた。 MTSの濃度は、 飽和器重量変化すなわち蒸発絶対量の測定によって求めた。なお、飽和器温度 を室温以下としたのは、以降の配管内でMTSが再凝集するのを防ぐためである。 調整した原料ガスは一旦リザ-バーに蓄えた。リザ-バーは,次投の反応容器へ間欠的にガス供給(ガス流量が大幅に変動)しても、反応容器入口の供給圧
力変動がほとんど変化しないようにするためのもので、 10Jの内容積を持つ。こ れは、給排出ポートを含め約50mfの反応容器体積の200倍である。反応容器はムライト製の先閉じ管で、内径20mm長さ50mmの有効ゾーンを持つ。ここで有 効ゾーンとは、管状電気炉(外熱炉)にて加熱された反応容器内部の温度差が ±10Kとなる均熟領域のことである。反応容器内への原料ガス供給およびその 排気は以下の手順で行った。これらは市販のシーケンス制御用タイマを用いて 自動化した。 (1)容器内排気:吸気側電磁弁閉/排気側電磁弁開 133Pa以下まで排気。排気系は排気速度を上げるため粗引き用と本引き 用の2系統があり、それぞれの電磁弁は適当な時間をおいて作動させた。 (2)原料ガス充填:吸気側電磁弁開/排気側電磁弁閉 100kPaになるまで吸気。その後吸気側電磁弁を閉じた。 (3)反応操作:吸気側電磁弁閉/排気側電磁弁閉
一定時間100kPaに保持して反応(cH3SiC13-Sic+3HCl)させた。
(4)上記(I)-(3)の操作を繰り返した。排気用真空ポンプは租引き用が162f/min.、本引き用が765f/min.であり、反応
容器容積に村してかなり大型のものを用いた。これによって、上記(1)-(3)の 1サイクルの所要時間はわずか2-3秒とすることができた。MTS Saturator Furnan¢○
2. 2. 3
CVtプリフォーム
パルスCVI実験用の炭素材料プリフォームの特性を表2.2-1に示す。表中の試料Aおよび試料BはそれぞれczR-1(POCO社)およびGO5(東洋カーボン(秩))の
型番で市販されている多孔質黒鉛材から削り出した。一方,c/c複合材料は図
2.2-2のプロセスで筆者が製造した。出発素材には市販の高弾性pAN系炭素繊 維(東レ(秩)製M40)の1000本フィラメント/束の8枚綜子織り織布に、市販 のフェノール樹脂(大日本インキ(秩)製TD-2506)を含浸させたもの(以下,プリ プレグと略す)を用いた。このプリプレグを平板冶具上に12枚積層して厚さ約l.5mmとしたものを、高分子フイルムで真空パックし,オートクレーブ中で
423K ・ 2時間の加熱硬化を行った。硬化して得た板を所定寸法に機械加工した のち, Arガス中1273K・ 4時間で樹脂分を炭化し、 c/C複合材料とした.この c/c複合材料の炭素繊維体積含有率(vf)は65%であり、残り体積35%のうち21%は気孔であった。この気孔率は、上記多孔質黒鉛のそれと共に水銀ポロシメー
ター(島津製作所(秩)製ポアサイザ9320型)で測定したものである。それぞれ
の試料についての気孔率測定結果を図2.2-3に示す。表2.2-1パルスCVl実験に用いたプリフォームの特性一覧
Preforms Specimen Dimension(mm3)
Porosity(%)
AVerage Pore Diameter(Elm)
Fiber Volume Fraction(%)
Porous Carbon Plates(A)
10x25xO.7 10x25x2.0 29 0.1-0.5(B)
10x25x1.0 10x25x3.0 45 10-20 C′C Composite(C)
10x25x1.5 21 1一-10 65図2.2-2
プリフォーム用C/C複合材料の製造フロー
Eu 」_ l ⊂J) rvT) ≡ U ヽ-.′′ C) ∈ =I ■■■■ ⊂) > Q) > =二_ ●ノ 4] _+ =I ≡ ⊂〉 ■亡 0. 0. 2 8.1 1 10 100 1.000 Pore diameter
(FLm)
図2.2-3
パルスCVtプリフォームの気孔分布
2. 2. 4
強度特性の評価方法
図2.2-4にSiC充填した多孔質黒鉛の曲げ試験方法を示すo曲げ強さFbは、
Fb -3PL/2bd2 -・-(2・2-1) で示される。ここで, Pは破壊荷重, Lは支持点間距離, bは試料の板幅,およ びdは試料の板厚である。 図2.2-5にSiC充填したc/c複合材料のILSS試験方法を示す。図のような支持 点間距離の短い曲げ負荷によるILSSの試験はショートビームせん断法と呼ばれ、米国のASTM (American Society for Testing and Material)標準のD-2344に記
載されているものである。支点間距離の短い曲げ負荷によってILSSが測定でき
るのは、簡単には以下の理由による。剛性体の梁が曲げられると,材料には曲
げモーメントと梁と平行な方向のせん断力の2つが作用する。曲げモーメント は終局的には曲げ破壊を引き起こし、その大きさは支持点間距離に比例する。 一方せん断力は層間せん断破壊の要因であり,その大きさは支持点間距離によ らない。したがって曲げ試験の支持点間距離が十分小さいと、曲げ破壊より先 に層間せん断破壊が起こる。 ASTM D-2344では炭素繊維強化複合材科の場合, 支持点間距離/試料板厚の値として4を推奨している。この値はASTMの別の 規格であるD-790に記載の複合材料曲げ試験における値16-40に比べて大幅に 小さい。このようなショートビームせん断試験においてILSSは、 ILSS -3P/4bd (2.2-2) で求められる。以上の強度試験は万能試験機(INSTRON社製4505型)を用い、常温大気中で
実施した。負荷速度(上面負荷ピンの下降速度)は、曲げ試験およびILSS試験
において、ともにl.Omm/分とした。Loading ptn
6.4mm≠
FT
図2.2-4
パルスCVlした多孔質黒鉛の曲げ試故方法
2. 3
実験結果および考察
2. 3. 1パルスCVlの反応条件
多孔質プリフォームに対してSiCの充填を十分かつ迅速に得るためには、
Sic の析出速度を上げることよりも、むしろプリフォーム表面の目詰まりを最小限 にとどめることが重要やある.このために最適化すべきパルスCVIの条件因子としては,反応温度,各パルスサイクルごとの反応保持時間および原料(MTS)
ガス濃度等が考えられる。その中でも反応温度が最も大きな影響を与えると考 えられる。したがって、まず試料Aについて反応保持時間および原料濃度を, それぞれ1.5s/サイクルおよび4.5mol%8こ固定した上で、反応温度を変化させ る実験を行った.ここでは板厚o・7mmの試料について反応温度を1073Kから1373Kの間で変化(100Kおき)させ,
10000サイクルのパルスCVI実施後の増加重量の測定と,試料内部のSiC充填状況を観察したo反応温度に対する重量増
加率のグラフを図2.3-1.に示す。また断面の電子顕微鏡(SEM)写真とⅩ線マイク
ロアナライザ(EPMA)によるSi-Ka分析結果(図中の輝点がsi元素存在位置を
示す)を、反応温度別に図2.3-2から図2・3-5に示すoここで言う試料断面とは
試料を長手方向中央で切断後,研磨した面を言うoこれらデータにより試料A については以下のことが明らかになった。 (1)反応温度1173Kのとき、si成分の内部充填が観察され、かつ試料表面に赦
密膜は形成されていない。 (2)反応温度1073Kではsi成分の析出自体はほとんど見られないoこれは反応温度が低く、反応速度がきわめて遅いためと考えられるo
(3収応温度1273K以上では重量増加は多いが、その大部分は試料表面に形成さ
れた赦密膜によると考えられる。この級密膜が表面をふさいでいるため、これ以上操作を継続しても試料内部への充填は期待できないo
反応温度1173Kで得た試料の上記断面についてⅩ線回折を実施したところ、図 2.3-6のチャートを得た.このパターンはβ-siCのものと一致するとともに,遊 離siのピークは全く観察されなかった。したがって、 EPMAで検出されたsi成 分はすべてβ-SiCであることが同定できた。 以上の結果から、試料Aについて反応保持時間l.5s/サイクルおよび原料濃 度4.5mol%のとき、反応温度1173Kでほぼ望ましいSiC充填が得られることが わかった。当初はMTS濃度や反応時間についても同様に何点か変化させて実験 する予定であったが、反応温度に関する実験が終了した時点で既に充填形態と して望ましいものが得られたので、 MTS濃度および反応保持時間については大 幅に実験数を縮小した。 MTS濃度については、充填形態はそのままにし、充填 速度を向上させることを目的として、前記のほぼ倍である8.Omol%の場合につ
いてのみ反応温度1173Kで実験(5'000サイクル)を行い、反応時間の変化につ
いては実験そのものを割愛した。表2.3-1にMTS濃度8.Omol%の場合と、前記の 4.5mol%の場合の1サイクル当たりの重量増加量を示す。この結果から, MTS濃度を倍加しても充填速度にはほとんど差がないことがわかった。これは,反
応温度1173KでSiC膜の析出が原料ガスの拡散律速になっているため、すなわ ち、試料表面上に反応副生ガス(この場合はHCl)成分からなるガス境膜が形 成され,原料ガス成分がこの境膜層中を拡散する速度で析出速度が決定される 【1】ため,MTS濃度を上げてもトータルの充填速度が変わらなかったものと考え
られる。一般に,拡散律速である場合は析出速度の温度依存性が小さく,表面 での反応律速である場合には析出速度の温度依存性が大きい。本実験では、先 の図2.3-1に示したように、 MTS濃度4.5mol%のとき反応温度1173K以上で析出量の温度依存性が小さい(1173Kから1373Kへの200Kの温度上昇があっても析
出量増加は約2.3倍)という結果が得られている。このことは、 1173Kにおいて 拡散律速であるという上記考察と矛盾しない。 MTS濃度や反応保持時間に関する実験をかなり省いたので,その分前記の望 ましい充填状況が得られた条件(反応温度1173K,反応保持時間1.5s/サイクルおよび原料濃度4.5mol%)での詳細実験を追加し,更に詳しい充填挙動をみ ることにした。ここでは充填量と初期気孔容積に対する充填率のパルスサイク ル数に対する依存性と、試料板厚の影響に関する実験を実施した。 図2.2-7は試料Aの単位単純表面積(試料の外寸法から計算した表面積で,内
部気孔の体積を含めない)当たりのSiC充填重量増加を示す。
2種類の板厚 (o.7mmと2.Omm)の試料とも,その単位単純表面積当たりの重量増加に差は見 られない.先に述べたように、実験を行った1173Kでは原料ガスのガス境膜内 の拡散律速であると考えられる。この副生ガス(HCl)からなるガス境膜は、 気孔径が十分小さいことから、試料内部の気孔内にまわり込むことなく,試料 全体を包み込むように形成されると考えられる。したがって、試料に供給され て反応・析出する原料ガスの総量は、ガス境膜の表面積、すなわち、これとほぼ等しい試料の単純表面積に依存したものと考えられる。
図2・2-8はsiCによる初期気孔の充填率(vsiC/Vpore)を、圧力パルス回数に 村してプロットしたも のであるo VsiC/Vporeは, 2・3-1式で示されるoVs iCNpo,e MsiC/p sic-S.tsiC Ⅴ・vp ・ (2.3-1) ここで, MsiCはsiC充填に伴う試料の増加重量、 psiCはsiCの比重, sは試料 の単純表面積、 tsiCは断面観察によって求めた試料表面のSiC膜厚, Ⅴは試料体 積およびvpは初期の体積気孔率であるo板厚o・7mmのものでは16000サイクル の圧力パルスで約50%の、板厚2.Ommのものでは30000サイクルで約40%の気 孔がsiCで充填できることがわかる。これらの処理に要する時間はそれぞれお よそ13.3時間と25時間と短く,パルスCVIの迅速性を示したものと言える。さ らに,最も重要なことは双方のグラフが直線関係、すなわち充填量が単調増加 を見せる点である。これは、少なくとも気孔体積の半分程度を充填した時点で も,内部への原料ガス浸透を妨げる試料表面の皮膜形成と目詰まりがない(問 題にならない)ことを示している。このことは、図2.3-9と図2.3-10に示した板
厚o.7mm試料の16000パルスサイクル後と板厚2.Omm試料の30000パルスサイク
ル後の断面電子顕微鏡(SEM)写真とⅩ線マイクロアナライザ(EPMA)によるSi-Kα分析結果から直接確認できた。 試料Aに村し、 1173Kにおいて表面の皮膜形成なしにSiCの内部充填が可能 であった理由は以下の機構によるものと考えられる。 (l)パルス的七導入された冷たい原料ガスが試料表面に当たることによって、試 料表面の温度がsiCの析出限界以下に冷やされる【2】。図2.3-2に示したよう に1073KではsiCの析出がほとんど見られないことから、 1173Kという温度 はもともとsiCの析出下限に近い温度と考えられる。 (2)試料表面から内部へ原料ガスが浸透する過程で熱交換が行われて,原料ガス が予熱される。したがって、試料内部は中へ行くほど温度低下が起こらない ので、 SiCの析出が起こりやすい。 (3)試料表面の初期温度が1173Kより高く、試料表面が原料ガスで冷やされても siC析出下限以下にならない時には,表面近傍でのSiC析出(目詰まり)が 起こる.図2.3-4--5の1273K以上の時がこれに相当すると考えられる.もう一つの多孔質黒鉛プリフォームである試料Bは、上記に述べた試料Aに
比べ気孔径および体積気孔率が大きい。(表2.2-1参照)気孔径が大きいと表面
が目詰まりしにくく、また体積気孔率が大きければそれだけ多くの原料ガスが
内部に流入して表面近傍が冷えやすくなると考えられ、その分反応温度を上げ
て充填速度を向上できるのではないかと考えられた。そこで、試料Bのパルス
cvI実験温度は試料Aで良い結果が得られた1173Kと、これより高い1373Kの 2温度で実施しこれを比較した。使用した試料Bの板厚はl.Ommとし, MTS濃 度と反応保持時間は試料Aの場合と同様4.5mol%および1.5s/サイクルとしたo それぞれの温度条件について、 6000パルスサイクルのCVI後試料Bの断面電子顕微鏡(SEM)写真およびⅩ線マイクロアナライザ(EPMA)によるSi-Ka分析
結果(図中の輝点がSi元素存在位置を示す。 )を、それぞれ図2・3-11および図 2.3-12に示す.重量増加率は、 1173Kで6.7xlO-4mg/s、 1373Kでは5・9xlO-3mg/sであったoこの結果から、試料Bについては試料Aよりも高い温度で表 面の目詰まりがなく内部充填が可能であり、温度が高い分充填速度を大きくで きることが確認できた。この理由は、実験前に考えたように気孔径および気孔
率がともに大きい試料Bでは,表面を通過するガス量が試料Aより多いことと、
低密度であるが故にもともとの熱容量が小さく,原料ガスによって冷却されやすかったためと考えられる。以上の結果から、最適なcVI条件(反応温度)は
プリフォームの気孔特性によって異なることが明らかになった。 試料Bについては,より充填が進んだ場合の状況を観察するため, 3・Omm厚 のものについて20000パルスサイクルの実験を追加して実施した。このときの 温度とMTS濃度は良い方の結果が得られた1373Kおよび4.5mol%としたが,反 応保持時間は充填量を稼ぐ目的で若干長い2.Osとした。図2.3-13にこの試料の断面電子顕微鏡(SEM)写真およびⅩ線マイクロアナライザ(EPMA)によるSi-K
α分析結果(図中の輝点がsi元素存在位置を示す)を示す。この時点でも表面の目詰まりはなく、かつ板厚中心から赦密な充填がはじまっていることがわか
る。この結果は、原料ガスが浸透する際に表面を冷し、予熱されてから温度の高い内部で析出するというこれまでの考察と一致するものである。
最後に試料CのC/C複合材料プリフォームに村するパルスCVI実験を実施し た。この場合、試料Aと同じ条件,すなわち反応温度1173K,反応保持時間 1.5s/サイクルおよび原料濃度4.5mol%で実施したところ、ほぼ均一なsiCの 内部充填がみられた。この条件で50000パルスサイクルを実施後の試料C断面を図2.3-14に示す。試料Cの場合は表面に若干の皮膜生成が認められるが,目
詰まりを起こすまでには至っていないようである。図2.3-15は試料C断面につ いてのⅩ線回折パターンである。このパターンに出現したのはβ-SiCと炭素(プリフォームに由来と考えられる)のピークのみであり、
siCのCVDでしばしば 問題になる遊離siの析出は全く認められなかった。表2.3-1異なるMTS濃度でのSiC充填速度比較
( $30 +J i ヽー ⊂ '亮 u20 ■■■ .I .S?也) 妻 1000 1100 1200 1300 Temperatu「e(K)
1400図2.3-1パルスCVl温度と重量増加率の関係
試料A,
0.7mm厚,
10000サイクル
図Z.3-2
パルスCVlによるSiC充填後の試料A断面
1073K,
10000/てルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.EPMASトKαイメージ
図2,3-3
パルスCVlによるSiC充填後の試料A断面
I173K,
30000/てルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.EPMASi-Kαイメージ
国Z.3-4
パルスCVlによるSiC充填後の試料A断面
1273K,
10000/iルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.
EPMASi-Kαイメージ
図2.3-5
パルスCV=こよるSiC充填後の試料A断面
1373K,
10000パルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.EPMASトKαイメージ
500
20
30
40
50
60
70
80
CuKa20
(deg.)
図2.3-6
パルスCVlによるSiC充填後の
試料A断面の×繰回折パターン
(1173K,
10000パルスサイクル)
∼?0
≡ 盲 ≡ ヽー (q q) &O q) U く可 i :⊃ ∽ ト▼■ C)きo
■亮 u +J毒
q) ≧ 3 2 1 0 10000 20000 30000 Number of Pulse Cycles図2.3-7
パルスCVlによる試料Aの
単位単純表面積当たりの重量増加
(反応温度1 173K, MTS濃度4.5mol%)室
巴30 0 YI > iZ5;
20 > 0 10000 20000 30000 Number of Pulse Cycles図2.3-8
パルスCVIによる試料A
の初期気孔充填率
国2.319
JてルスCVIによるSiC充填後の試料A断面
0.7mmt,
1173K,
16000パルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.
EPMASi-Kαイメ-ジ
圃2.3-1
0
/1ルスCVlによるSiC充填後の試料A断面
2.Ommt,
l173K,
30000/てルスサイクル後
乱電子顕微鏡写真
b.EPMASトKαイメージ
図213-1 1パルスCVlによるSiC充填後の試料B断面
1173K,
6000パルスサイクル後
a・電子顕微鏡写真
b.
EPMASi-Kαイメージ
図2.3-1
2パルスCV‖こよる
SiC充填後の試料A断面
1373K,
6000パルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.EPMASi-Kαイメージ
国2.3-1
3
JiルスCVLによるSiC充填後の試料B断面
3.Ommt,
1.373K,
20000Jlルスサイクル後
a,電子顕微鏡写真-
b.
EPMASi-Kaイメージ
国2.3-1
4パルスCVlによるSiC充填後の試料C断面
1.5mmt, 1173K,
50000パルスサイクル後
a.電子顕微鏡写真
b.EPMASトKαイメージ
500
20
30
40
50
60
70
80
CuKa
20
(deg.)
図2.3-15
パルスCVlによるSiC充填後の
試料C断面の×繰回折パターン
(1173K,
50000パルスサイクル)
2. 3. 2
強度特性
a.siC充填多孔質黒鉛の曲げ強さ
siC充填多孔質黒鉛の曲げ強さの測定は、試料Aについて実施した。図2.3-16に,パルスサイクル数に村する試料AのSiC充填後の曲げ強さのプロットを 示す。この図からわかるように,板厚o.7mmの試料では16000サイクル後に 110MPaが,板厚2.Ommでは30000サイクル後に80MPaが得られている。これらは元の多孔質炭素の曲げ強さに対してそれぞれ約3倍と2倍の値である。以上
の結果から、多孔質炭素に対するSiCの充填は、その曲げ強さを著しく向上さ
せること,すなわち補強効果が確認された。 b.SiC充填C/C複合材料のILSS
50000サイクルのパルスCVIを行った試料CのC/C複合材料のILSS測定結果を 図2.3-17に示す。この図中には比較のためにパルスCVI処理前の試料と、一般的な樹脂合皮・炭化による炭素充填(赦密化)を3回線り返した試料のデータ
を追加した。図2.3-17に示したように、パルスCVIによってSiCを充填したc/c 複合材科(ハイブリッド・マトリックスC/C)のILSSは18MPaに達した。この 値はcvI前の試料のそれの3倍に達するばかりか,炭素による赦密化を3回線 り返した試料よりも高い値である。 SiCを充填したc/c複合材料のILSSが大幅 に向上した理由として,第一にSiCが試料内部に存在していた初期欠陥のうち の微小き裂、すなわち破壊の起点をある程度埋めたこと,第二にSiCの存在がき裂進展の方向を変え、破壊に対する大きな抵抗になったこと、が考えられる。
これらの2つのうち,前者は図2.3-14の断面観察結果から明らかである。 (断 面観察した試料とILSSを測定した試料は、反応管内に並べて同時に同一の処理 したものである。 )そこで、後者を検証するため,破壊試験後試料の断面観察 を実施した。図2.3-18は炭素によって赦密化された試料(A)とパルスCVIによってSiC充填された試料(B)の破壊後断面の光学顕微鏡写真である。図に添えられ
た矢印は,破壊によるき裂を示すものである。図2.3-18(A)の炭素によって赦密 化された試料では、破壊き裂は直線的であり,破壊位置は層間部分の強化繊維 /マトリックス界面であった。これは試料中のどの部分でも同じであった。こ れに対して、図2.3-18(B)のパルスCVIによってSiC充填された試料では, siCに 突き当たった破壊き裂が曲げられ、かつ枝分かれしているのがわかる。このよ うな状況は試料中のいくつかの部分で見られた。破壊き裂が曲げられ,枝分か れするにはより大きな破壊エネルギが必要だから、充填されたsiCは、破壊き
裂進展の抵抗(アレスタ)になっていると言える。
SiCの存在がなぜ破壊き裂 進展のアレスタになるかと言う理由は,簡単には表2.3-2に示すとおりsiCの機 械的特性がマトリックス炭素に比べ大幅に高いことによると考えられる。すな わち、破壊き裂はsiCに突き当たるともっと弱い方向,すなわち炭素マトリッ クス内部や層内の強化繊維/マトリックス界面へ曲がって行くのであろう。別 の見方をすると、 siCの剛性はマトリックス炭素のそれよりずいぶん大きいた め,応力がかかった 時点でSiC周辺のマトリックス炭素には応力集中が発生す る。したがって、巨視的な破壊き裂が進展してくる前にマトリックス炭素内に 微小破壊が発生し,やがてやってきたき裂がこの微小破壊の方向に曲がるとも 考えられる。なお,図2.3-18(A)に示したポイドは双方の試料に見られるもので ある。パルスCVIといえども大きなポイドを埋めることはできないが、そのこ と自体はILSSの向上を妨げるものではない。このようなポイドは初期欠陥では あるが,先端半径の極めて小さい初期のき裂とは違い有害ではなく、むしろき裂進展をとめる働きをすると考ネられる.なぜならき裂先端の応力集中は、そ
の先端に比べ極めて径の大きいポイドに到達した時点で、緩和されると考えら
れるからである。 以上の結果から,ハイブリッドマトリックスC/CのILSSが向上したのは、充 填されたsiCがc/C内部に存在する初期き裂を埋めるだけでなく、破壊き裂進展 の抵抗にもなるためと考えられる。さて,従来の炭素による敢密化は3回線り 返すのに約1カ月が必要であるのに村して、 50000パルスサイクルのパルスcvIを行うのに必要な時間は準備・取り出しを含めのべ約48時間であった。し たがってパルスCVIはきわめて高効率な方法であると言える。
表2.3-2
CVD-SiCとマトリックス類似カーボンの力学特性比較
Materia一s Properties CVD-Sic【Ref.s】
Matrix-like(glassy)
carbon【Ref.s】
Modulus(GPa)
465【3】
30【5】
Bending Strength(MPa)
800【4】
120【5】
Fracture Toughness(MPa.m1/2)
3.8【4】
0.3-1.0【6】
Ei-B
≡ ヽ_ノ1 .⊂昏
C) 」 +J Zi:P
?
a) EZ) 100 80 60 40 20 0 10000 20000 30000 Number of Pu一se Cycles図2.3-16
試料Aの曲げ強さのパルスサイクル依存性
(反応温度1
173K,
MTS濃度4.5mol%)
o 5 10 15 20 プリフォーム (未充填品) 炭素による撤密化試料 (樹脂含浸.炭化3回)喜‡H
′{ルスCV]による SiC充填試料 (50000サイクル) ....I...1l....A.H. 0 5 10 15 1LSS (MPa)図2.3-17
試料Cの]LSS比較
(反応温度I
173K,
MTS濃度4.5mol%)
=:ニコ
・-第n層 第n+lJf 第n.Ji 兼n■+1層国2.3-18
破壊後のILSS試料断面
A :炭素による捜密化3回の試料 B :パルスCV[ (1173K, 50000パルスサイクル)の試料 ー: Jf間せん斬破壊のき裂2. 4
結論
これまでに述べたように、本章ではc/C複合材料の高強度化のためのSiC充填 を行うため、種々の炭素プリフォームに対するパルスCVI実験を実施し,その強度(多孔質黒鉛の曲げ強さおよびc/c複合材料の層間せん断強さ)特性を評
価した。その結果,以下の結論が得られた。 (I)C/C複合材料を含む種々の炭素プリフォームに村し,それぞれの気孔特性に 応じた条件を用いることによって、 SiCの迅速な内部充填が可能である。(2)多孔質黒鉛材料の曲げ強さおよびc/c複合材科の層間せん断強さは、-siCの
充填によって向上できる。特に層間せん断強さの向上は著しい。 (3)C/C複合材料に対する補強では、従来法の炭素による級密化に比べ、パルス cvIによるSiC充填はきわめて高効率である。参考文献
【1]杉山幸三‥ 日本鉄鋼協会編第14回白石記念講座別刷集, (1987)19・
【2] K.Sugiyama and T.Ohzawa: J・ Mater・ Sci・, 2旦(1989)3756・
[3] J.W.Edington, D.J.Rowcliffe and J・L・Henshel1: Powder Met・ 工n亡.′ ユ(1975)82.
【4] K.Niihara, A.Suda and T.Hirai: proc・=nt・Symp・on Ceramic components for Engine, (1983)480・
【5] E.Fit∑er and W.Hutler:J・ Phys・ D・ App1・ Phys・,皇旦(1981) 347.
第3章
SiCのパルスCVDによるC/C複合材料の
耐酸化コーティング
3. 1序
本章では、基質強度を損なうことなく密着性を確保するのに有効と考えられ る、パルスCVD法によるC/C複合材料への直接siC耐酸化コーティングを行い, その効果を確認するために、下記の研究を実施した結果についてまとめる。 (1)パルスCVDによる直接siCコーティングの基礎実験として、反応温度を変化 させたときの成膜速度、成膜形態、膜質等について調べる。 (2)調製したsiCコーティングつきc/c複合材科の高温大気暴露による重量減少 の測定実験と,高温大気中での引張強さおよび引張弾性率の測定実験を行い、 耐酸化コーティングとしての性能を評価・一考察する。3. 2
実験方法
3. 2. 1パルスCVD実験装置
図3.2-1に本実験で用いたパルスCVD装置を示す。使用原料(MTS)やその 構成は第2章で示した装置とほぼ同様であるが,反応容器の形状は若干異なり、 装置としては別のもので、より大型になっている。すなわち反応管(耐熱合金 製)の有効寸法は内径60mm,高さ250mmで、大型の引張試験片サイズの試料 の処理が可能になっている。第2章と重複する部分もあるが,以下に簡単に装 置と実験方法の概略を説明する。 (1)原料のMTSを,飽和器内でのバブリングによって水素キャリアガス中に飽和させ,リザ-バ(ステンレス製:内容積10f)に蓄えた。
(2)リザ-バのガスを電磁弁を通して反応管に送り、管内圧力が100kPaになる まで充填した。このとき入口側電磁弁開、出口側電磁弁閉とした。 (3)電磁弁を全て閉じ,管内圧力100kPaのまま2-3秒間の反応させた。(4)反応操作後,出口側電磁弁を開いて反応管内を133Pa以下に真空ポンプ
(3台×1420J/min.)で減圧にした。
なお,減圧系は第2章の装置とは異なり1系統のみとしたが、大容量ポンプの
並列使用によって減圧に必要な時間を1秒以内に押さえることができた。MTS Saturator
3. 2. 2