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SiCのパルスCV一によるC/C複合材料の 強度向上研究

2. 1

本章ではc/c複合材料の強度向上に有効と考えられるパルスCVI法による気 孔内へのSiC充填を行い、その効果を確認するために、下記を実施した結果に

ついてまとめる。

(1)パルスCVIによるSiC充填の基礎実験として、気孔特性の異なる2種類の多 孔質炭素に対し、耐熱性および炭素との親和性に優れるSiCのパルスCVI法 による充填実験を行い、充填の可否と最適条件について考察する。ついで、

気孔を有するC/C複合材料に村してSiCのパルスCVI法による充填実験を行う。

(2)調製したsiC充填多孔質炭素試料の曲げ強度と, siC充填c/c複合材科の ILSSの測定実験を行い、ハイブリッド・マトリックスのこれら強度特性向

上への寄与を評価および考察する。

2. 2 実験方法

2. 2. 1 パルスCVlの出発物質と反応

本実験のパルスCVIによるSiC合成の出発物質には、以下に示す理由で、メ チルトリクロロシラン(CH3SiC13:純度98%、以下MTSと略す)を用いたo

MTSは、 SiCのCVD合成原料としてしばしば用いられるものである。

(1)1分子中にSiとcをそれぞれ1原子含むため、ガス中のSiとcの元素比率 を自動的に1 : 1に調整できる。

(2)常温で液体であり、かつ比較的高い蒸気圧を有することから、原料ガス 調製が容易で濃度をコントロールしやすい。

式2.2‑1にMTSからsiCを得る反応式を示す。一種の熱分解反応であり、分子 内のハロゲンが水素とともに脱離する。反応温度は1150‑1700Kと報告されて いる【1】。

CH3SiC13(g)ー SiC(s) + 3HCl(g) (2.2‑1)

2. 2. 2 パルスCVt実験装置

図2.2‑1にSiCのパルスCVI実験に用いた実験装置の概要を示す。 MTSは、室 温以下の一定温度に調節された飽和器中で一定流量の高純度水素(99.9999%)

をバブリングすることによって、その中に気化・飽和させた。 MTSの濃度は、

飽和器重量変化すなわち蒸発絶対量の測定によって求めた。なお、飽和器温度 を室温以下としたのは、以降の配管内でMTSが再凝集するのを防ぐためである。

調整した原料ガスは一旦リザ‑バーに蓄えた。リザ‑バーは,次投の反応容器

へ間欠的にガス供給(ガス流量が大幅に変動)しても、反応容器入口の供給圧

力変動がほとんど変化しないようにするためのもので、 10Jの内容積を持つ。こ れは、給排出ポートを含め約50mfの反応容器体積の200倍である。反応容器は

ムライト製の先閉じ管で、内径20mm長さ50mmの有効ゾーンを持つ。ここで有 効ゾーンとは、管状電気炉(外熱炉)にて加熱された反応容器内部の温度差が

±10Kとなる均熟領域のことである。反応容器内への原料ガス供給およびその 排気は以下の手順で行った。これらは市販のシーケンス制御用タイマを用いて

自動化した。

(1)容器内排気:吸気側電磁弁閉/排気側電磁弁開

133Pa以下まで排気。排気系は排気速度を上げるため粗引き用と本引き 用の2系統があり、それぞれの電磁弁は適当な時間をおいて作動させた。

(2)原料ガス充填:吸気側電磁弁開/排気側電磁弁閉 100kPaになるまで吸気。その後吸気側電磁弁を閉じた。

(3)反応操作:吸気側電磁弁閉/排気側電磁弁閉

一定時間100kPaに保持して反応(cH3SiC13‑Sic+3HCl)させた。

(4)上記(I)‑(3)の操作を繰り返した。

排気用真空ポンプは租引き用が162f/min.、本引き用が765f/min.であり、反応 容器容積に村してかなり大型のものを用いた。これによって、上記(1)‑(3)の

1サイクルの所要時間はわずか2‑3秒とすることができた。

MTS Saturator Furnan¢○

図2.2‑1パルスCVl実験装置の概要

2. 2. 3 CVtプリフォーム

パルスCVI実験用の炭素材料プリフォームの特性を表2.2‑1に示す。表中の試 料Aおよび試料BはそれぞれczR‑1(POCO社)およびGO5(東洋カーボン(秩))の 型番で市販されている多孔質黒鉛材から削り出した。一方,c/c複合材料は図 2.2‑2のプロセスで筆者が製造した。出発素材には市販の高弾性pAN系炭素繊 維(東レ(秩)製M40)の1000本フィラメント/束の8枚綜子織り織布に、市販 のフェノール樹脂(大日本インキ(秩)製TD‑2506)を含浸させたもの(以下,プリ プレグと略す)を用いた。このプリプレグを平板冶具上に12枚積層して厚さ約 l.5mmとしたものを、高分子フイルムで真空パックし,オートクレーブ中で

423K 2時間の加熱硬化を行った。硬化して得た板を所定寸法に機械加工した

のち, Arガス中1273K・ 4時間で樹脂分を炭化し、 c/C複合材料とした.この

c/c複合材料の炭素繊維体積含有率(vf)は65%であり、残り体積35%のうち21%

は気孔であった。この気孔率は、上記多孔質黒鉛のそれと共に水銀ポロシメー ター(島津製作所(秩)製ポアサイザ9320型)で測定したものである。それぞれ の試料についての気孔率測定結果を図2.2‑3に示す。

表2.2‑1パルスCVl実験に用いたプリフォームの特性一覧

Preforms Specimen

Dimension

(mm3)

Porosity

(%)

AVerage Pore Diameter

(Elm)

Fiber Volume Fraction

(%)

Porous Carbon Plates

(A) 10x25xO.7

10x25x2.0 29 0.1‑0.5 (B) 10x25x1.0

10x25x3.0 45 10‑20 C′C

Composite (C) 10x25x1.5 21 1一‑10 65

図2.2‑2 プリフォーム用C/C複合材料の製造フロー

Eu

」̲

l

⊂J) rvT)

U

ヽ‑.′′

C)

=I

■■■■

⊂)

>

Q)

>

=二̲

●ノ

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̲+

=I

⊂〉

■亡

0.

0.

2

8.1 1 10 100 1.000

Pore diameter (FLm)

図2.2‑3 パルスCVtプリフォームの気孔分布

2. 2. 4 強度特性の評価方法

図2.2‑4にSiC充填した多孔質黒鉛の曲げ試験方法を示すo曲げ強さFbは、

Fb 3PL/2bd2 ‑・‑ (2・2‑1)

で示される。ここで, Pは破壊荷重, Lは支持点間距離, bは試料の板幅,およ びdは試料の板厚である。

図2.2‑5にSiC充填したc/c複合材料のILSS試験方法を示す。図のような支持 点間距離の短い曲げ負荷によるILSSの試験はショートビームせん断法と呼ばれ、

米国のASTM (American Society for Testing and Material)標準のD‑2344に記 載されているものである。支点間距離の短い曲げ負荷によってILSSが測定でき

るのは、簡単には以下の理由による。剛性体の梁が曲げられると,材料には曲 げモーメントと梁と平行な方向のせん断力の2つが作用する。曲げモーメント は終局的には曲げ破壊を引き起こし、その大きさは支持点間距離に比例する。

一方せん断力は層間せん断破壊の要因であり,その大きさは支持点間距離によ らない。したがって曲げ試験の支持点間距離が十分小さいと、曲げ破壊より先

に層間せん断破壊が起こる。 ASTM D‑2344では炭素繊維強化複合材科の場合, 支持点間距離/試料板厚の値として4を推奨している。この値はASTMの別の

規格であるD‑790に記載の複合材料曲げ試験における値16‑40に比べて大幅に 小さい。このようなショートビームせん断試験においてILSSは、

ILSS 3P/4bd (2.2‑2) で求められる。

以上の強度試験は万能試験機(INSTRON社製4505型)を用い、常温大気中で 実施した。負荷速度(上面負荷ピンの下降速度)は、曲げ試験およびILSS試験

において、ともにl.Omm/分とした。

Loading ptn

6.4mm≠

FT

図2.2‑4 パルスCVlした多孔質黒鉛の曲げ試故方法

図2.2‑5 パルスCVlしたC/C複合材料のILSS試験方法

2. 3 実験結果および考察

2. 3. 1 パルスCVlの反応条件

多孔質プリフォームに対してSiCの充填を十分かつ迅速に得るためには、 Sic の析出速度を上げることよりも、むしろプリフォーム表面の目詰まりを最小限

にとどめることが重要やある.このために最適化すべきパルスCVIの条件因子 としては,反応温度,各パルスサイクルごとの反応保持時間および原料(MTS) ガス濃度等が考えられる。その中でも反応温度が最も大きな影響を与えると考 えられる。したがって、まず試料Aについて反応保持時間および原料濃度を, それぞれ1.5s/サイクルおよび4.5mol%8こ固定した上で、反応温度を変化させ

る実験を行った.ここでは板厚o・7mmの試料について反応温度を1073Kから

1373Kの間で変化(100Kおき)させ, 10000サイクルのパルスCVI実施後の増加 重量の測定と,試料内部のSiC充填状況を観察したo反応温度に対する重量増 加率のグラフを図2.3‑1.に示す。また断面の電子顕微鏡(SEM)写真とⅩ線マイク

ロアナライザ(EPMA)によるSi‑Ka分析結果(図中の輝点がsi元素存在位置を 示す)を、反応温度別に図2.3‑2から図2・3‑5に示すoここで言う試料断面とは 試料を長手方向中央で切断後,研磨した面を言うoこれらデータにより試料A

については以下のことが明らかになった。

(1)反応温度1173Kのとき、 si成分の内部充填が観察され、かつ試料表面に赦 密膜は形成されていない。

(2)反応温度1073Kではsi成分の析出自体はほとんど見られないoこれは反応温 度が低く、反応速度がきわめて遅いためと考えられるo

(3収応温度1273K以上では重量増加は多いが、その大部分は試料表面に形成さ れた赦密膜によると考えられる。この級密膜が表面をふさいでいるため、こ れ以上操作を継続しても試料内部への充填は期待できないo

反応温度1173Kで得た試料の上記断面についてⅩ線回折を実施したところ、図 2.3‑6のチャートを得た.このパターンはβ‑siCのものと一致するとともに,遊

離siのピークは全く観察されなかった。したがって、 EPMAで検出されたsi成 分はすべてβ‑SiCであることが同定できた。

以上の結果から、試料Aについて反応保持時間l.5s/サイクルおよび原料濃 度4.5mol%のとき、反応温度1173Kでほぼ望ましいSiC充填が得られることが わかった。当初はMTS濃度や反応時間についても同様に何点か変化させて実験 する予定であったが、反応温度に関する実験が終了した時点で既に充填形態と

して望ましいものが得られたので、 MTS濃度および反応保持時間については大 幅に実験数を縮小した。 MTS濃度については、充填形態はそのままにし、充填 速度を向上させることを目的として、前記のほぼ倍である8.Omol%の場合につ いてのみ反応温度1173Kで実験(5'000サイクル)を行い、反応時間の変化につ いては実験そのものを割愛した。表2.3‑1にMTS濃度8.Omol%の場合と、前記の

4.5mol%の場合の1サイクル当たりの重量増加量を示す。この結果から, MTS 濃度を倍加しても充填速度にはほとんど差がないことがわかった。これは,反

応温度1173KでSiC膜の析出が原料ガスの拡散律速になっているため、すなわ ち、試料表面上に反応副生ガス(この場合はHCl)成分からなるガス境膜が形 成され,原料ガス成分がこの境膜層中を拡散する速度で析出速度が決定される

【1】ため, MTS濃度を上げてもトータルの充填速度が変わらなかったものと考え

られる。一般に,拡散律速である場合は析出速度の温度依存性が小さく,表面 での反応律速である場合には析出速度の温度依存性が大きい。本実験では、先 の図2.3‑1に示したように、 MTS濃度4.5mol%のとき反応温度1173K以上で析出

量の温度依存性が小さい(1173Kから1373Kへの200Kの温度上昇があっても析

出量増加は約2.3倍)という結果が得られている。このことは、 1173Kにおいて 拡散律速であるという上記考察と矛盾しない。

MTS濃度や反応保持時間に関する実験をかなり省いたので,その分前記の望 ましい充填状況が得られた条件(反応温度1173K,反応保持時間1.5s/サイク

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