61 装置および診断技術の向上に伴い,乳管像や微細石灰 化像あるいは微小な腫瘤像を超音波画像上に捉えるこ とができるようになった.今回,非触知乳腺腫瘍40例 における超音波画像上の特徴を独自に分類し,これに 基づいた超音波画像を病理組織所見と対比,さらに超 音波検査の診断率を他の検査法と比較検討した, この結果,非触知乳腺腫瘍に対する超音波診断は他 の検査法と比較しても,病変の存在診断,質的診断と もに成績は極めて良好で腫瘤を触知しない症例に対し ては必須の検査法と考えられた, 31.腹部外科手術後のエネルギー消費量の測定一間 接熱量計の使用経験一 (豊岡第一病院 外科)米山 公造 ベットサイドにて測定可能な間接熱量計の開発に よってエネルギー消費量の測定は容易なものとなって
いる.当科においても平成元年3月よりSensor
Medics社製のenergy expenditure unit 2900を1台購 入し現在使用を開始している.今回は間接熱量計の紹 介をすると共に,胃癌,大腸癌待機手術患者の術前術 後にエネルギー消費量を測定し若干の知見を得たので ここに報告する. 方法:測定日は術前,術後1,3,7日目とし,測 定時刻は患者が比較的安静にできる夕方としてエネル ギー消費量の測定を行った.そして,その測定値とエ ネルギー投与量との間の関係を検討した.なお大多数 の測定患者には術前よりIVHが行われておりほぼ一 定の割合でエネルギーが投与されていると考えられ た. 結果:Harris−Benedictの理論式より求められる基 礎エネルギー消費量を基準として,エネルギー投与量, エネルギー消費量各々との比をとり,これらの値の相 関関係を調べてみた.その結果,術前と術後各々で1 次相関関係が95%以上の有意差を持って成立し,基礎 エネルギー消費量をエネルギー投与:量としたとき胃 癌,大腸癌で各々術前と術後の間に11.6%,3.6%のエ ネルギー消費量の増加があることが求めた1次回帰直 線より導かれた.この差のように疾患別に術後の必要 エネルギー量は異なるようであり,おそらく緊急疾患 においてはなおさらであろう.ここに間接熱量計によ るエネルギー消費量の測定は適切なエネルギー投与に 有用性が大きいのではないかと考えられる. 32.ヒト自己腫瘍特異的細胞障害性Tリンパ球の 誘導 (秩父市立病院 外科)冨松 裕明 最近まで免疫療法は非特異的免疫賦活療法と呼ばれ る,まだ作用機序が充分解明されていない方法が主体 であったが,免疫学や細胞工学などの急速な進歩によ り,種々の新しい免疫療法が開発され試みられている. 動物の悪性腫瘍を攻撃する免疫担当細胞は,NK細 胞,LAK細胞,マクロファージ,顯粒球などの抗原非 特異的なものと,細胞障害性Tリンパ球という腫瘍細 胞に特異的なものに大別されている.後者はマウスを 使用した実験で種々の方法で誘導されているが,ヒト の系での誘導を報告した文献はほとんどない. そこで現在我々はヒトの末梢血リンパ球から細胞障 害性Tリンパ球を誘導する最良の方法を定めるべく, 種々の実験系を組み立て検討している. 「33.乳癌における癌遺伝子(c・erb B・2)の増幅と癌 の悪性度との相関について (立川中央病院 外科)藤井 昭芳 癌遺伝子のうち。−erb B−2は,乳癌細胞内で,かなり の高いレベルに増幅しており,その程度が癌の悪性度 と予後に影響を与えているという報告がある.既知の 悪性度の指標である病期,リンパ節転移,脈管侵襲, hormon receptorと癌遺伝子の増幅の程度との相関に ついて検討した, 対象:昭和63年3月よりの当科での乳癌症例のうち 癌遺伝子を測定しえた20症例を対象とした.方法:1. 乳癌組織よりDNAの抽出,2. Southern blotting法, 3.Hibridization,結果:20例中5例(25%)に。−erb B−2の増幅が認められた.この5例は,病期,リンパ節 転移,脈管侵襲などで進行した症例が多く,estrogen receptorも陰性例が多かった. 今後症例を増やし,c−erb B−2の増幅の程度:と癌の悪 性度,予後との相関を調べ,癌遺伝子が悪性度の指標 となりうるか検討したい. 34.急性腹症に対する腹腔鏡の有用性について一腹 腔鏡の機器と手技の改良を含めて一 (木挽町医院)宮崎 舜賢 教室では1982年より1989年10月までに,急性腹症で 診断および手術適応決定が困難であった199例に腹腔 鏡を施行した. 腹腔鏡により診断の得られた症例は123例(61.8%) に止まり,診断能に限界があることは明らかであるが, 腹腔の炎症所見等から緊急手術適応の決定は,199例全 例とも可能であった.疾患別では,イレウス(絞掩の 有無,閉塞部位の確認),腹部外傷(進行性出血,消化 管穿孔の有無の確認),下腹部炎症性疾患(虫垂炎,婦 一375一62 人科疾患,局所性腸炎等)の鑑別診断などで特に有用 であった. 使用した腹膣鏡は,オリンパス製針状腹腔鏡と教室 で開発した外径2mmの超細径腹腔鏡が主であるが,腹 腔鏡施行時の重篤な合併症はなく,腹腔内の観察はい ずれの症例も数分で終了している.また,最近腹腔鏡 の先端にバルーンを装置することにより心腹をしない で腹腔内を観察する,より簡単な腹腔鏡の手技を試み ているので,併せて報告する. 35.興味ある経過を呈した潰瘍性大腸炎の1例 (市川中央病院 外科) 四條 隆幸・青木 淑恵・加藤 孝男・ 藤井 昭芳・木村 恒人 症例は腹痛,高熱,水様便,血便を主訴に入院した 28歳の男性である.入院時諸検査にて強度の炎症所見 を認めたため抗生剤投与されたが軽快せず,大腸ファ イバーにて粘膜の強度の炎症および出血を認め,潰瘍 性大腸炎が疑われたためにサレゾピリンおよびステロ イドを投与したところ主訴は消失し,粘膜も正常化し 緩解状態となったが肝攣曲部に狭窄を来し,徐々に狭 窄部が拡大したために結腸亜全摘術を施行した. 術後の経過は順調で,現在はサラゾピリン2gにて残 存結腸および直腸は再燃することなく緩解を維持して いる. 病理所見は肝轡曲部に全層性の炎症を認め繊維化が 著明であった. 36.活動/栄養指標としての遅延性皮膚反応一マル チテストCMIの経験一 (成田藤立病院 外科)水内 整 今回,7抗原でスタンプ式の遅延性皮膚反応測定 キットであるマルチテストCMIを得て,藤立病院外 科の健常者や外科患者を対象とし検討したので報告す る. 7つの抗原の硬結(判定は接種後48時間後)の直径 の総和をinduration score(IS)とし,陽性(2mm以 上の硬結で陽性)抗原数をantigen score(AS)とし て種々の項目との相関を見た.年齢,癌の有無,末梢 血リンパ痴夢(TLC)との有意な相関はなく,BMI(体 重/身長2),PS(パフォーマンスステイタス),血清Alb, ChE,小野寺指数(10*Alb+0.005*TLC),血中Hb 濃度との有意な正相関が見られた. つまり,比較的早期の癌患者のように元気で栄養状 態が良好な人は高い遅延性皮膚反応を示すといえる. 遅延性皮膚反応は簡便な細胞性免疫の指標であるが, マルチテスト℃MIは細胞性免疫指標だけでなく,よ い活動/栄養指標といえ,術後患者の生活の質のフォ ローアップに役立つ可能性がある.