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四点支持器を用いた腹臥位手術における圧力と褥瘡発生との関係

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Academic year: 2022

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(1)

原 著

四点支持器を用いた腹臥位手術における圧力と褥瘡発生との関係

熊谷あゆ美

・須 釜 淳 子

・大桑麻由美

・奥 田 鉄 人

垣 内 紀 子

・神野亜紀子

・中 谷 壽 男

Relationship between interface pressure and development of pressure ulcer in prone position surgery using hall frame

Ayumi Kumagai, MHS, RN;Junko Sugama, PhD, RN;Mayumi Okuwa, PhD, RN

Tetsuhito Okuda, PhD, MD;Noriko Kakiuti, RN;Akiko Kanno, RNand Toshio Nakatani, PhD, MD

1)Kanazawa Medical University Hospital

2)Department of Clinical Nursing, Institute of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University

3)Department of Orthopaedics Surgery, Kanazawa Medical University

Abstract

The incidence of pressure ulcers is high in prone position surgery. We hypothesized that the cause for this high incidence is as follows:(1)High pressure is placed on the bony areas of the body when the patientgs body is fixed on the Hall frame and the contact area between the body and the operating table is small.(2)The pressure increases for bottoming out to shear force with time on the bony areas of the body. In order to verify the above hypotheses, we examined adult patients who underwent prone position surgery. Specifically, we measured the real-time pressure placed on the contact area between the patientsgright ilium and the Hall frame and examined the presence of pressure ulcers.

The results of the experiment showed that 14 out of 18 patients developed blanching erythema and 4 developed Stage Ⅰ pressure ulcers. The development of Stage Ⅰ pressure ulcers was found to be related to maximum interface pressure.

Our study suggests that using the maximum interface pressure at the beginning of the prone position setting as an index for pressure reduction care may be effective in pressure ulcer prevention in prone position surgery.

Key words

:prone position surgery,pressure distribution measurement,Stage I pressure ulcer,hall frame

手術室では腹臥位手術の褥瘡発生率が高い。その原因として,患者は四点支持器の上に腹臥位固定されるため,四点 支持器と身体との接触面積が小さく骨突出部にかかる圧力が高いのではないか,また時間経過とともに身体がずれて底 づきすることにより,骨突出部にかかる圧力が高くなるのではないかと考えた。このつの仮説を検証する目的で,腹 臥位手術を受ける患者を対象に腹臥位固定中の四点支持器と右腸骨部皮膚との接触面の圧力を連続測定し,褥瘡の有無 別に比較した。その結果 18 名中 14 名に反応性充血,*名に Stage Ⅰの褥瘡が発生した。Stage Ⅰ発生者の最大体圧値は 反応性充血発生者とくらべて有意に高値であった(P=.035)。また,両者で腹臥位固定開始時と終了時の平均体圧値,最 大体圧値には差がなかった。腹臥位手術における褥瘡予防を図るための指標として腹臥位固定開始時の最大体圧値を用 いることにより,除圧ケアの介入が可能であることが示唆された。

キーワード:腹臥位手術,体圧分布測定,Stage Ⅰ褥瘡,四点支持器

金沢医科大学病院看護部 金沢大学医薬保健研究域保健学系臨床実践看護学講座 原稿受領日 2011 年*月 26 日

金沢医科大学整形外科 別刷請求先:須釜 淳子

金沢大学医薬保健研究域保健学系臨床実践看護学講座 〒920-0942 石川県金沢市小立野 5-11-80 E-mail:junkosgm@mhs.mp.kanazawa-u.ac.jp

(2)

近年,医療技術の進歩に伴い麻酔・手術の適応範囲 が拡大して長時間手術が増加し,手術中の褥瘡発生リ スクも高くなっている。実際に,本邦の急性期施設の 褥瘡発生率 1.2%1)と比較し,日帰り手術をのぞく手 術室の褥瘡発生率は 18.4%2)と,手術室の褥瘡発生率 が高い。また手術体位別の褥瘡発生率は,仰臥位 9.9%2),砕 石 位 9.1%2),側 臥 位 38.0%3),腹 臥 位 50.0%3)と,腹臥位の褥瘡発生率が他の手術体位と比 較して高い。褥瘡予防には原因である外力の持続時間 と大きさを減少させることが原則である。しかし,手 術を受ける患者に対しこれらつの原則を適応させる ことはむずかしい。持続時間の減少については,麻酔 による全身管理やスムーズな手術進行が最優先され,

長時間の同一体位を強いられることから,時間ごと の体位変換による除圧は困難である。大きさの減少に ついては,一般病棟の入院患者は 40 mmHg4)を指標 として褥瘡予防ケアを行うのに対し,手術室では手術 を受ける患者の体圧と褥瘡発生との関係が明確にされ ていないことから,体圧の指標がない。このため,手 術体位に応じた体圧分散用具の検討はされている が5−9),褥瘡発生率が依然として高い。そこで,褥瘡 予防には手術患者の体圧と褥瘡発生との関係を明確に する必要があると考え,なかでも手術体位別の褥瘡発 生率がほかの手術体位と比較して高い腹臥位に着目し た。

腹臥位手術の褥瘡発生率が高い原因としてつ考え た。つは接触面積が小さいことである。患者は腹臥 位手術では四点支持器(脊柱後方手術用フレーム)

(図ઃ)の上に腹臥位固定される。これは体幹の左右 の胸部と腸骨部の*ヵ所を支える台で,全身麻酔中の 呼吸管理を行ううえで胸郭の動きを妨げないような,

また腹部を圧迫しないような形状になっている。その ため仰臥位手術とは異なり,手術台と身体との接触面 積が小さく,骨突出部にかかる圧力が高いのではない かと考えた。つ目は,腹臥位固定中に時間経過とと もに身体がずれて底づきすることにより,骨突出部に かかる圧力が高くなるのではないかと考えた。先行研 究10)では腹臥位固定直後から 30 分ごと 120 分間,デ ジタル型体圧計を用いて腸骨部の接触圧を測定してい た。しかし,これは四点支持器と腸骨部皮膚との接触 する骨突出部点の圧力測定をしたもので,手術操作 によって圧力分布が変化する可能性も考慮すると,腸 骨部皮膚との接触面全体の圧力分布を測定することが 必要であると考える。また,腹臥位固定直後から 30 分ごと 120 分間圧力測定をしていた。しかし,腹臥位 手術で褥瘡発生リスクが高いとされるのは+時間以上

の手術3)であり,120 分以降の圧力の変化と褥瘡発生 との関係が不明であった。

以上のことから,手術台と身体との接触面積が小さ いことから,接触面の骨突出部にかかる圧力が高い

(仮説)。また,腹臥位固定中に時間経過とともに身 体がずれて底づきすることにより,骨突出部にかかる 圧力が高くなる(仮説)というつの仮説を検証 し,腹臥位手術における時間と圧力が及ぼす褥瘡発生 との関係を明らかにする必要があると考えた。

本研究の目的は,仮説に基づいて腹臥位手術におけ る時間と圧力が及ぼす褥瘡発生との関係を明らかにす ることである。

研究方法

ઃ.調査施設と対象者

調査施設は 932 床を有する特定機能病院の手術部で ある。手術部には手術室が 12 室あり,腹臥位手術が 行われるのは,室である。腹臥位手術で使用される四 点支持器は手術台の上に設置される。これは体幹の左 右の胸部と腸骨部の*ヵ所を支える金属フレームで,

*点の支持部分はポリマーゲルで覆われている。さら に,この支持部分の上に除圧目的で 17 × 20 cm のポ リウレタンフォーム,その上に汚染防止とスポンジの 固定目的でレーヨン素材とポリエチレン素材の重構 造からなるシーツで覆い使用している。

調査対象者は術前に対象者本人から直接研究参加の 同意が得られた 20 歳以上の入院患者で,全身麻酔下 で四点支持器を使用し,腹臥位手術を受ける患者とし た。除外基準は緊急手術の患者,術前から全身の皮膚 に皮膚障害を有する患者とした。

઄.データ収集期間

2008 年*月から同年 10 月であった。

અ.測定システム

接触面の圧力を連続して測定する目的で体圧分布測 定システム(BIG-MAT クォーター)を使用した。

図ઃ

今回腹臥位固定に使用した四点支持器

(3)

センサーシートとソフトウエアをインストールした パーソナルコンピュータを接続することにより,リア ルタイムに圧力分布測定ができる。センサーシートは 感圧部サイズが 220 × 240 mm,分解能が 5.0 mm で,感 度 範 囲 は キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン 後 60 − 600 mmHg ± 10%である。圧力の検出原理は特殊インク で皮膜形成された行と列 44 本× 48 本の 2112 のマト リックスからなる電極が一定間隔で配列され,加わる 力により行と列の交点が個別の力検出点となり,この 電気抵抗値がデジタル値に変換されて圧力分布が測定 できる。このセンサーシートは厚さ 0.1 mm のフイル ム状のシートで,患者に身体的侵襲はなく,また感圧 部は四点支持器の支持台の曲面にフィットし,支持台 の接触面の圧力を測定するには最適な大きさであるこ とから選択した。この測定機器の精度はすでに検証さ れている11)

આ.測定手順

)基礎情報

対象者の属性は年齢・性別・BMI・疾患名・手術部 位・術前血清アルブミン値・術前血中ヘモグロビン値 をカルテより収集した。

麻酔・手術要因は麻酔時間・手術時間・総出血量・

総輸液量・最低体温・最低脈拍・最低収縮期血圧・最 低拡張期血圧・最低経皮的酸素飽和度を麻酔記録・手 術記録より収集した。

)皮膚の観察

測定部位は麻酔・手術の進行に支障がないように 部位とし,麻酔・手術器材と体圧分布測定システムの 配置の関係から,腹臥位解除後に皮膚変化の状態を観 察するためのスペースが十分得られる右腸骨部とし た。

腹臥位解除後の皮膚変化の状態は,発赤なしは腹臥 位解除後に皮膚変化がない場合とした。発赤が生じた 場合は透明板で発赤部分を圧迫し,消退がない場合を 褥瘡,それ以外を反応性充血として褥瘡と区別し,褥 瘡が発生した場合は,NPUAP(米国褥瘡諮問委員会 National Pressure Ulcer Advisory Panel)の深達度分

類を用いて分類した12)。皮膚変化の状態は治癒するま で観察し,最終の深達度を分類した。

)体圧分布の測定方法

体圧分布測定システムは,手術前にセンサーシート を四点支持器の右腸骨部が接触する支持台のポリウレ タンフォームの上に設置し,レーヨン素材とポリエチ レン素材からなるシーツで覆い固定した。その後,シ ステムを稼働させてキャリブレーションを行った。全 身麻酔開始後の腹臥位固定時,良肢位保持がされてい ること,右上前腸骨棘部がセンサーシート上のほぼ中 央に位置していることを確認し,その後腹臥位解除直 前までの腹臥位固定中の右腸骨部の接触面にかかる圧 力を分ごとに連続測定した。

ઇ.分析

皮膚変化部の体圧分布をみるためスケールとして,

体圧分布測定システムのセンサーシートの感圧部と同 じ大きさに作成した長方形のアルミニューム製のフ レーム(以下フレーム)を使用した。腹臥位解除後に 右上前腸骨棘部にフレームの中心をあわせて,皮膚変 化部をデジタルカメラで撮影した(図઄)。フレーム をもとに写真と体圧分布図を同じ大きさに画像処理 し,分ごとの皮膚変化部の体圧分布図を抽出し,平 均体圧値,最大体圧値を求めた。

平均体圧値は皮膚変化部の体圧分布図内のセルの荷 重合計値を荷重のかかっているセンサセル数で除した 値とした。最大体圧値は皮膚変化部の体圧分布図内の セルのなかで最も高い圧力およびその周囲-セルの圧 力の平均値とした。

皮膚変化部の面積はデジタルカメラで撮影した皮膚 変化部を,画像解析ソフト(Scion Image)を用いて 計測した。

仮説の「手術台と身体との接触面積が小さいこと から,接触面の骨突出部にかかる圧力が高い」の検証 には,皮膚変化部の面積,腹臥位固定中の分ごとに 抽出された平均体圧値,最大体圧値の平均値を算出 し,褥瘡の有無別に比較した。

仮説の「腹臥位固定中に時間経過とともに身体が ずれて底づきすることにより,骨突出部にかかる圧力 が高くなる」の検証には,平均体圧値,最大体圧値の 経時的変化を褥瘡の有無別にグラフに描いた。つぎに 腹臥位固定開始時と終了時の平均体圧値,最大体圧値 を比較し,褥瘡の有無別に比較した。また分ごとに 抽出された平均体圧値,最大体圧値の変動係数を算出 し,褥瘡の有無別に比較した。

記述統計は分類変数を人数(%)で,連続変数を中 央 値( 最 小 値 − 最 大 値 )で 示 し た。推 定 統 計 は,

Fisher の正確確率検定または Mann-Whitney U 検定 を用いた。有意水準は+%とした。統計解析は統計解

図઄

皮膚変化部の圧力の抽出

(4)

析ソフト SPSS for Windows Ver.17.0 を使用した。

ઈ.倫理的保証

本研究は,金沢医科大学臨床研究倫理審査委員会の 承認を得て実施した。対象者に事前に研究の概要を口 頭と文書で説明したうえで協力を求め,対象者本人よ り同意の署名を得た。調査は麻酔,手術の進行を妨げ ないようにすみやかに実施し,また対象者に身体的侵 襲がないように配慮し実施した。褥瘡が発生した場合 は病棟看護師に報告した。

ઃ.対象者の概要

研究協力依頼を 24 名に行い 20 名から同意を得た。

測定システムの問題で測定の継続が困難となった名 を除外し,18 名を分析した。

すべての対象者において皮膚変化を認め,14 名

(77.8%)に反応性充血(以下反応性充血群),*名

(22.2%)に Stage Ⅰの褥瘡(以下 Stage Ⅰ群)が発 生した。発生した褥瘡は悪化することなく,術後日 目までにすべて治癒した。

઄.対象者の属性と麻酔・手術要因

年齢は反応性充血群が 70.5(33 − 81)歳,Stage

Ⅰ群が 62.0(43 − 78)歳であった。性別は反応性充 血群が男性-名・女性+名,Stage Ⅰ群が男性名・

女性名であった。BMI は反応性充血群が 24.4,

Stage Ⅰ群が 21.8 であった。疾患では反応性充血群 は腰椎すべり症・腰部脊柱管狭窄症がいずれも+名,

Stage Ⅰ群が腰椎すべり症名と最も多かった。手術 部位では反応性充血群は腰椎が 13 名と最も多く,

Stage Ⅰ 群 は す べ て 腰 椎 で あ っ た。年 齢,性 別,

BMI,疾患,手術部位,血清アルブミン値,血中ヘモ グロビン値は両群で有意差はなかった(表ઃ)。

麻酔時間・手術時間・総出血量・総輸液量・最低体 温・最低脈拍・最低収縮期血圧・最低拡張期血圧・最 低経皮的酸素飽和度は両群で有意差はなかった(表

઄)。

カテコールアミンなどの昇圧剤を使用した対象者は いなかった。

અ.面積と圧力

皮 膚 変 化 部 の 面 積 は 反 応 性 充 血 群 が 15.3 cm2, Stage Ⅰ群が 24.5 cm2で,両群で有意差はなかった

(表અ)。

平均体圧値は反応性充血群が 60.5 mmHg,Stage

Ⅰ群が 70.5 mmHg で,両群で有意差はなかった。一 方,最 大 体 圧 値 は 反 応 性 充 血 群 が 104.9 mmHg,

Stage Ⅰ群が 225.1 mmHg であり,Stage Ⅰ群は反応 性充血群にくらべて最大体圧値が有意に高値であった

(P=.035)(表અ)。

આ.時間と圧力

腹臥位固定中の平均体圧値の経時的変化において,

反応性充血群は開始時 63.0 mmHg であり,その後一 定に推移し,終了時は 59.0 mmHg であった。Stage

Ⅰ群は開始時 73.0 mmHg であり,その後時間まで に 15.0 mmHg 上昇し,その後時間で下降し開始時 の値に近づいた。その後も同様に上昇と下降を繰り返 し,終了時は 69.5 mmHg であった(図 3a)。

腹臥位固定中の最大体圧値の経時的変化において,

反応性充血群は開始時 90.6 mmHg であり,その後一 定に推移し,終了時は 83.8 mmHg であった。Stage

Ⅰ群は開始時 239.8 mmHg であり,その後時間ま でに 47.2 mmHg 上昇し,その後時間で下降し開始 時の値に近づいた。その後も同様に上昇と下降を繰り 返し,終了時は 233.5 mmHg であった(図 3b)。腹 臥位固定開始時と終了時の平均体圧値および最大体圧 値は両群で有意差はなかった(表આ)。また,平均体 圧値および最大体圧値の変動係数は両群で有意差はな かった(表ઇ)。

今回初めて腹臥位手術患者を対象に腹臥位固定開始 から終了まで分ごとに連続して,四点支持器と皮膚 の接触面全体の体圧分布測定を行い,仮説に基づいて 時間と圧力が及ぼす褥瘡発生との関係を検討した。

仮説の「手術台と身体との接触面積が小さいこと から,接触面の骨突出部にかかる圧力が高い」に対し て,四点支持器の接触面全体の圧力測定をし,接触面 の骨突出部にかかる圧力を検討した。その結果,腹臥 位手術における Stage Ⅰの発生は平均体圧値ではな く最大体圧値と関係していた。このことは,接触面全 体ではなくそのなかの点に負荷される圧力が高いこ とを意味する。そのため,四点支持器と身体との接触 面積が小さいことから,十分に圧分散がされずに骨突 出部である右上前腸骨棘部に加わる圧力が高くなった と考えられ,仮説が支持された。

仮説の「腹臥位固定中に時間経過とともに身体が ずれて底づきすることにより,骨突出部にかかる圧力 が高くなる」に対して,腹臥位固定開始から終了まで の腹臥位固定中に連続して圧力測定をし,接触面にか かる圧力の経時的変化を検討した。その結果,腹臥位 手術における反応性充血の発生も Stage Ⅰの発生も 腹臥位固定開始時と終了時の平均体圧値や最大体圧 値,これらの変動係数において有意な差はなかった。

このことから,Stage Ⅰの発生は腹臥位固定中に時間 経過とともに平均体圧値や最大体圧値が徐々に高くな るという仮説は否定された。

以上から,腹臥位手術における褥瘡予防を図るため

(5)

の圧力の指標として腹臥位固定開始時の最大体圧値を 用いることが望ましいと考える。

今回の検討では先行研究10)で明らかにすることがで きなかった,接触面全体の圧力や腹臥位固定開始から 最大,時間までの圧力の変化と褥瘡発生との関係を明 らかにすることができた。このことは,腹臥位手術で 褥瘡発生リスクが高いとされる+時間以上の手術患者 の圧力分布が明らかとなり,腹臥位手術において褥瘡

予防を図るうえで意義があることと考える。

内的妥当性を保障するため,皮膚変化の判定や測定 機器の操作手順が同一となるように,すべて人の研 究者で行い,また調査開始前に十分にプレテストを行 い,測定誤差を最小限とした。外的妥当性として,腹 臥位手術で褥瘡発生リスクが高いとされる+時間以上 の手術の対象者が 18 名中,名と少なかった。しかし,

この,名は両群それぞれ名ずつで,最大体圧値の中 年齢(歳)

p Stage Ⅰ群(n=4)

反応性充血群(n=14)

表ઃ

対象者の属性

1(25)

9(64)

男 性別

.645 62.0(43-78)

70.5(33-81)

.382 21.8(18.8-32.2)

24.4(19.7-36.8)

BMI

3(75)

5(36)

.275

.235 3(75)

5(36)

腰椎すべり症 疾患名

3(21)

腰椎椎間板ヘルニア

0(0)

5(36)

腰部脊柱管狭窄症

手術部位

1(25)

1(7)

その他

0(0)

0(0)

1(7)

胸腰椎

1.000 4(100)

13(93)

腰椎

.192 12.9(11.1-13.2)

13.9(11.3-15.8)

血中ヘモグロビン値(g/dl)

.721 4.3(2.7-4.6)

4.4(3.7-4.8)

血清アルブミン値(g/dl)

注:年齢,BMI,血清アルブミン値,血中ヘモグロビン値は中央値(範囲)

性別,疾患名,手術部位は人数(%)

麻酔時間(分)

p Stage Ⅰ群(n=4)

反応性充血群(n=14)

表઄

麻酔・手術要因

180(125-380)

90(0-540)

総出血量(ml)

.277 255(145-323)

168(40-355)

手術時間(分)

.327 350(215-420)

271(100-470)

.505 36.15(35.0-36.5)

36.4(35.0-36.8)

最低体温(℃)

.277 1725(800-2840)

1300(500-2400)

総輸液量(ml)

.233

.192 77(62-90)

88(72-112)

最低収縮期血圧(mmHg)

.574 54(40-70)

58(42-80)

最低脈拍(回/分)

99(97-99)

最低経皮的酸素飽和度(%)

.233 49(42-62)

58(42-62)

最低拡張期血圧(mmHg)

注:総出血量,総輸液量,最低体温,最低脈拍,最低収縮期血圧,最低拡張期血圧,最 低経皮酸素分圧は中央値(範囲)

.233 99(99-99)

p Stage Ⅰ群(n=4)

反応性充血(n=14)

表અ

面積と圧力

70.5(61.0-97.0)

60.5(36.0-86.0)

平均体圧値(mmHg)

.327 24.5(13.8-27.2)

15.3(5.7-56.3)

皮膚変化部の面積(cm2

.035*

225.1(93.3-377.1)

104.9(49.1-182.0)

最大体圧値(mmHg)

.233

注:数値は中央値(範囲) *p < .05

(6)

央値(範囲)は反応性充血群 63(49-125)mmHg,

Stage Ⅰ群 344(136-358)mmHg と Stage Ⅰ群が高 値であり,対象者 18 名の結果と同様であったことか ら,今回の結果は妥当であると考える。しかし,今回 の調査では特定機能病院施設の調査であり,脳神経

外科の腹臥位手術の対象者が含まれなかったため,対 象者に偏りがあり,すべての腹臥位手術患者への適応 はむずかしい。また臨床研究において,研究に参加し ているという認識によって生じる従属変数への影響と してホーソン効果がある。今回,手術室スタッフは研

Stage Ⅰ群(n=4)

反応性充血(n=14)

表આ

時間と圧力

83.8

(48.4-160.8)

90.6

(50.9-164.2)

最大体圧値

1.000 69.5

(50.0-103.0)

73.0

(48.0-97.0)

0.649 59.0

(35.0-91.0)

63.0

(36.0-78.0)

平均体圧値

p 腹臥位固定終了 腹臥位固定開始

p 腹臥位固定終了 腹臥位固定開始

注:数値は中央値(範囲)

1.000 233.5

(69.8-414.9)

239.8

(70.4-371.0)

0.510

平均体圧値の変動係数(%)

p Stage Ⅰ群(n=4)

反応性充血(n=14)

表ઇ

時間と圧力

.878 16(13-20)

17(10-26)

最大体圧値の変動係数(%)

.574 11(7-15)

9(6-19)

注:数値は中央値(範囲)

㪇 㪉㪇 㪋㪇 㪍㪇 㪏㪇 㪈㪇㪇 㪈㪉㪇 㪈㪋㪇

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(a)

図અ

時間と圧力

(a)平均体圧値の経時的変化

(b)最大体圧値の経時的変化

1 分:反応性充血群 n=14 Stage Ⅰ群 n=4 31-61 分:反応性充血群 n=13 Stage Ⅰ群 n=4 91 分:反応性充血群 n=11 Stage Ⅰ群 n=4 121-151 分:反応性充血群 n=10 Stage Ⅰ群 n=4 181 分:反応性充血群 n=7 Stage Ⅰ群 n=4 211 分:反応性充血群 n=7 Stage Ⅰ群 n=3 241 分:反応性充血群 n=6 Stage Ⅰ群 n=3 271 分:反応性充血群 n=5 Stage Ⅰ群 n=2 301 分:反応性充血群 n=4 Stage Ⅰ群 n=2 331 分:反応性充血群 n=4 Stage Ⅰ群 n=1 361 分:反応性充血群 n=1 Stage Ⅰ群 n=1

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(b)

(7)

究期間中も褥瘡予防のためのケアを変わりなく実施し ていたが,研究者は手術室スタッフの一員であり,調 査への影響がなかったとはいい切れないと考える。

今後の課題として,今回発生した褥瘡はすべて Stage Ⅰであり,かつすべて悪化することなく術後 日目までに治癒した。このため,皮膚変化なし,およ び深部にまで及ぶ発赤(DTI)12),Stage Ⅱ以上の褥瘡 発生と圧力との関係を明らかにすることはできなかっ た。今後は対象者を増やし,継続して調査すること で,時間と圧力が及ぼす褥瘡発生との関係をより明ら かにしていきたいと考える。

全身麻酔下で四点支持器を使用し,腹臥位手術を受 けた 20 歳以上の入院患者 18 名を対象に仮説に基づい て時間と圧力が及ぼす褥瘡発生との関係を検討した。

そ の 結 果,褥 瘡 を 認 め た 対 象 者 は 18 名 中*名

(22.2%)で,すべて Stage Ⅰであった。また,Stage

Ⅰの発生は最大体圧値と関係していたこと,腹臥位固 定開始時と終了時の平均体圧値や最大体圧値には有意 な差がなかったことが明らかとなった。このことか ら,腹臥位手術における褥瘡予防を図るための圧力の 指標として腹臥位固定開始時の最大体圧値を用いるこ とにより,除圧ケアの介入が可能であることが示唆さ れた。

利益相反

なし

本調査の研究全般に対し創傷看護学の観点からご指導 いただきました東京大学大学院医学系研究科老年看護学/

創傷看護学分野 真田弘美教授に厚く御礼申し上げます。

また,調査を承諾し,協力してくださいました患者様に 心より感謝申し上げます。

1)真田弘美:褥瘡ハイリスク患者への専門的看護技術 提供に関する実態調査に関する研究 厚生労働科学研

究費補助金 厚生労働科学特別研究事業 平成 17 年度 総括研究報告書, 2006.

2)矢野千春, 藤澤めぐみ, 荒巻智子:手術室における褥 瘡 形 成 要 因 の 実 態 調 査. 大 分 病 医 誌, 33:131-141, 2004.

3)甲斐澤政美, 百瀬美希, 百瀬素子, ほか:腹臥位および 側臥位手術における術中皮膚損傷の発生要因と予防 法の検討. 褥瘡会誌, 2(3):304-309, 2000.

4)須釜淳子, 真田弘美, 中野直美, ほか:褥瘡ケアにおけ るマルチパッド型簡易体圧測定器の信頼性と妥当性 の検討. 褥瘡会誌, 2(3):310-315, 2000.

5)Schultz A, Bien M, Dumond K, et al:Etiology and incidence of pressure ulcers in surgical patients.

AORN JOURNAL, 70(3):434-449, 1999.

6)岩永直子, 石田弥寿, 山口則子:脊椎後方手術におけ る脊椎四点フレーム使用時の褥瘡予防. 日看会論集:

成人看Ⅰ, 101:291-293, 2006.

7)佐藤直美, 林 知子, 西原三枝子, ほか:新型マット導 入後の皮膚損傷発生の変化. 日手術医会誌, 27(1):

24-26, 2006.

8)Sewchuk D, Padula C, Osborne E:Prevention and early detection of pressure ulcers:In patients undergoing cardiac surgery. AORN JOURNAL 84

(1):75-96, 2006.

9)Keller BP, van Overbeeke J, van der Werken C:

Interface pressure measurement during surgery:A comparison of four operating table surfaces. J Wound Care, 15(1):5-9, 2006.

10)諸星好子, 今井理恵, 稲葉季子, ほか:全身麻酔下で手 術を受ける患者における体位別接触圧の経時的変化.

群馬保健紀, 22:17-21, 2001.

11)Drewniak EI, Crisco JJ, Spenciner DB, et al:Accura- cy of circular contact area measurements with thin-film pressure sensors. J Biomech, 40:2569-2572, 2007.

12)Black J, Baharestani MM, Cuddigan J, et al:National Pressure Ulcer Advisory Panel:National Pressure Ulcer Advisory Panel gs updated pressure ulcer staging system. Adv Skin Wound Care, 20( 5 ):

269-274, 2007.

参照

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