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医原性クッシング症候群の治療経過に顕在化した皮膚上皮向性T細胞性リンパ腫に対して外科的切除を選択した犬の1例

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Academic year: 2021

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全文

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医原性クッシング症候群の治療経過に顕在化した

皮膚上皮向性 T 細胞性リンパ腫に対して

外科的切除を選択した犬の 1 例

Cutaneous epitheliotropic T-cell lymphoma in a dog observed

during treatment for iatrogenic Cushing disease

which was removed by surgical resection

吉政 甫

1)

*  池 順子

2)

  作野幸孝

1)

  吉田恭治

2)

1)奈良動物医療センター,2)吉田動物病院

Hajime Yoshimasa1)*, Junko Ike2), Yukitaka Sakuno1), Kyoji Yoshida2) 1)Nara Animal Medical Center, 2)Yoshida Animal Hospital

Received January 29, 2020 and accepted September 9, 2020

要 約:7 歳齢,未去勢雄の雑種犬。他院より難治性の皮膚炎として当院を紹介受診。紹介される 1 年ほど前より包皮周囲の皮膚炎の治療を受けていた。医原性クッシング及びステロイド皮膚症と 診断,経口のプレドニゾロンを漸減し,ステロイド含有の外用薬の塗布を中止したところ,5 ヶ月 程でほぼ略治したが,その約1 ヶ月後に包皮の先端にマス様病変が認められ,病変部位の組織生検 より皮膚上皮向性T 細胞性リンパ腫と診断した。外科切除を実施後およそ 10 ヶ月間,完全寛解の 状態を維持している。 キーワード:医原性クッシング症候群,外科切除,皮膚上皮向性T 細胞性リンパ腫

Abstract: A 7-years-old, mix breed, male dog was referred to our hospital with intractable dermatitis. About

one year earlier, this dog had been referred to a veterinarian who had been treating it for dermatitis around the prepuce. Initially, we diagnosed with iatrogenic Cushing disease with steroid dermatopathy and modified the treatment. After tapering oral prednisolone and discontinuing the topical steroid, the dog recovered in 5 months. After a further 1 month, a nodular lesion was observed around the preputial orifice. A biopsy was performed and, a histopathological diagnosis of epitheliotropic T-cell lymphoma was made. Complete remission has been sustained for approximately 10 months following resection.

Key words: epitheliotropic T-cell lymphoma, iatrogenic Cushing disease, surgical resection

(Jpn J Vet Dermatol 2021, 27 (1): 21–26)

症例報告

* 連絡先:吉政 甫(奈良動物医療センター) 〒 631-0021 奈良県奈良市鶴舞東町 2-6 TEL 0742-48-4111 FAX 0742-48-4112 E-mail: h.yoshimasa@yoshida-vets.com

* Correspondence to: Hajime Yoshimasa (Nara Animal medical center) 2-6 Tsurumaihigashi-Machi, Nara-Shi, Nara 631-0021, Japan

緒 言

犬の皮膚型リンパ腫は,犬の全皮膚腫瘍の 1%(上 皮向性、非上皮向性含めて)を占めると報告され る稀な腫瘍5)で,皮膚や粘膜皮膚境界部および粘 膜に剥奪性紅皮症,掻痒,紅斑,落屑,糜爛 / 潰瘍, 色素脱失,痂疲形成,多発性または孤立性の局面

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や結節など多様な症状を示す4)。一般的に犬の皮 膚上皮向性リンパ腫(以下 CEL)は根治が困難な 悪性腫瘍であるため,その治療は根治的治療では なく緩和的治療が主となるが7),孤立性病変の場合, 早期に外科切除を施すことで再発を認めない症例 の報告もある2, 3)。148 症例の犬の CEL の臨床転帰 と予後を比較検討した回顧的研究では,CEL にお いて良好な予後に関連する因子として,皮膚病変 型の症例よりも粘膜 / 粘膜皮膚境界部病変型の症 例の方がより良好な予後をとること(皮膚病変型 の生存期間中央値は 130 日(n=80),粘膜 / 粘膜皮 膚境界部型の生存期間中央値は 491 日(n=68))が 示されており,また多発性病変を有する症例より も孤立性病変を有する症例の方がより良好な予後 をとることが示されていた(皮膚病変型で多発性 の症例の生存期間中央値は 104 日(n=72)であり, 孤立性の症例では 231 日(n=8)であった。また, 粘膜 / 粘膜皮膚型境界部型で多発性の症例の生存 期間中央値は 241 日(n=16)であり,孤立性の症 例では 849 日(n=52)であった)。その報告による と 148 症例中 60 症例が孤立性病変の症例であり, そのうち 40 症例で外科切除を実施した。また,60 症例中 41 症例(皮膚病変型 4,粘膜 / 粘膜皮膚境 界部病変型 37 症例)が新たな病変への進行が見ら れなかったと報告されている2)。今回,我々は包 皮先端の粘膜皮膚境界部に限局して発生した CEL に対して,外科治療単独で良好な経過を示した症 例を経験した。外科切除による治療で良好な結果 をたどった報告は,本邦では非上皮性皮膚型リン パ腫の症例で近藤ら(2019 年)の報告があるが6) CEL に関する報告は見受けられなかったのでここ に報告する。

症例報告

症例は 7 歳齢,未去勢雄の雑種犬(シーズー× マルチーズ),体重 5.15 kg。他院より難治性の皮 膚炎として当院を紹介受診された。紹介される 1 年ほど前より,包皮周囲の皮膚炎の治療が行われ, 抗生剤や副腎皮質ステロイドの内服,副腎皮質ス テロイド含有の外用薬を塗布されており,症状の 改善と悪化を繰り返していた。初診時,頸部背側, 体幹部背側全域,下腹部を中心とした皮膚に境界 不明瞭な脱毛と紅斑,痂疲を伴う丘疹または局面 を認め,包皮先端付近の皮膚には痂疲を伴う糜爛 または潰瘍を認めた。皮膚の菲薄化は顕著なもの は認められなかった(Fig. 1a,b)。元気食欲は良 好であったが,多飲多尿の症状が認められた。鑑 別診断として,表在性の膿皮症,ニキビダニ症, ステロイド投与による石灰沈着症およびステロイ ド皮膚症,腹部の糜爛・潰瘍病変からは,多形紅 斑などの免疫介在性疾患,皮膚型リンパ腫の可能 性も考えられた。テープストリップ検査にて,背 部病変部では,角質細胞は不全角化細胞が散見さ れ,球菌の貪食像も散見された。腹部糜爛部位は, 多数の変性好中球の浸潤が見られ,球菌の貪食像, 赤血球が集簇している箇所も散見された。毛検査, 皮膚掻爬検査でニキビダニや疥癬虫は検出されな かった。細菌培養検査では,Escherichia.Coli とコ アグラーゼ陰性 Staphylococcus.sp. が検出された。 血液生化学検査で,ALT 313U/L(参考基準値 10-125U/L),ALP>1500U/L(参考基準値 23-212U/L) と高値を示した。ACTH 刺激試験で血清コルチゾー ル濃度は負荷前が <0.5 μg/dL,負荷 1 時間後が 4.1 μg/dL を示した(IDEXX スナップショット Dx)。 腹部レントゲン検査では肝臓腫大と軽度の前立腺 肥大,腹部超音波検査では軽度の胆泥症と胆石, 軽度の前立腺肥大の所見が認められた。また,左 副腎の最大横径は 3.9 mm,右副腎の最大横径は 3.9 mm であった。臨床症状や病歴,ACTH 刺激試験 より医原性クッシング症候群による皮膚石灰沈着 症,ステロイド皮膚症と診断し,プレドニゾロン(プ レドニゾロン錠 5 mg「ミタ」,キョーリンリメディ オ,金沢)の経口投与量を漸減し,副腎皮質ステ ロイド含有の外用薬(ビクタス S MT クリーム, DS ファーマアニマルヘルス,大阪)の塗布の中止 を指示した。初診時,プレドニゾロンの内服を 1 mg/kg SID で投与していたものを 0.5 mg/kg SID へ 減量した。さらに 2 週間ごとに 0.25 mg/kg SID,0.25 mg/kg EOD,0.25 mg/kg E3D,0.25 mg/kgE4D,投 与なしと漸減し,第 80 病日頃にはステロイドの経 口投与はない状態となった。また,細胞診におけ る球菌の感染所見と,細菌培養感受性試験の結果 よりセファレキシン(セファクリア錠 300,共立 製薬,東京)の内服と潰瘍部にゲンタマイシン硫 酸塩(ゲンタシン軟膏 0.1%,高田製薬,埼玉)の 塗布を行った。 第 30 病日には陰茎周囲の糜爛部は縮小傾向で あったが,背部の石灰沈着部位の状態は悪化した ため,病理組織学的検査を実施した。病理検査結 果では著しい石灰沈着を伴う深層性皮膚炎と診断 された。外部寄生虫,皮膚糸状菌,細菌などの感 染は確認できなかった。改めて医原性クッシング 症候群に起因する石灰沈着症と診断し,治療を継 続した。以降,副腎皮質ステロイドの漸減ととも に皮膚症状の改善が認められ,コルチゾール値も

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Fig. 1. (a, b) At first presentation, alopecia, papules, and

crust formation in the dorsal neck and trunk, as well as, erosion, ulceration, and crust formation are also observed around the prepuce. (c) After 5 months, skin lesions are relieved after tapering the oral steroid. Mild sores and calcification are scattered around the prepuce. (d) A firm nodule-like lesion is observed around the preputial orifice. (e) On postoperative day 12.

正常に回復した(第 100 病日の ACTH 刺激試験 負荷前 3.8 μg/dL 負荷 1 時間後 22.6 μg/dL)。第 152 病日には,腹部のわずかな糜爛と包皮周囲の皮下 に石灰沈着が散在する程度にまで改善した(Fig.1c) が,第 191 病日の再診時に包皮先端の皮膚に硬化, マス様病変が確認された(Fig. 1d)。FNA にて大 型円形 ~ 類円形核,核仁明瞭,細胞質に乏しいリ ンパ芽球様の細胞が多数確認された。診断のため に病変部位のパンチ生検を行った。パンチ生検は, 腫瘤部と肉眼的に見て腫瘤部と正常部の境界領域 の 2 か所を採材した。加えて CT 検査も同時に実 施した。病理組織学的検査所見では,真皮に円形 細胞の密なシート状増殖が認められ,腫瘍細胞は 細胞境界明瞭であり,少量の好酸性細胞質を有し, 核は赤血球径の約 3 倍で類円形であり,粗雑なク ロマチンと明瞭な核小体を有していた。腫瘍細胞 は大型で低分化な形態を示しており,異型度は中 等度から重度,有糸分裂像は高倍率 10 視野に 6 個 認められた(Fig. 2a,b)。免疫組織化学的検査で は腫瘍細胞は抗 CD3 抗体に陽性,抗 CD20 抗体に

(4)

陰性を示し,軽度の毛包上皮への浸潤を示してい ることより,皮膚上皮向性 T 細胞性リンパ腫と診 断された(Fig. 2c)。CT 検査所見では,全身の皮 下に石灰化が認められ,特に陰茎根元の背側は石 灰化が重度であった。包皮内にも軽度の石灰化が 見られ,先端の方は浮腫が見られた。鼠径リンパ 節が腫大(右 8 mm,左 7.3 mm)していた。同時 に行った鼠径リンパ節の細胞診検査では,腫瘍細 胞と思われる細胞は確認できなかった。治療方針 として,ロムスチンや L- アスパラギナーゼやその

Fig. 2. (a, b) Many round cells proliferate in a

sheet-like pattern in the dermis. Tumor cells are large and poorly differentiated. The cellular atypia is moderate to severe. There are 6 mitotic figures in 10 consecutive high-power fields. (c) Immunohistochemical staining. The tumor cells stain positive for CD3 and negative for CD20.

他,多剤併用プロトコールを用いた抗がん剤治療, ビタミン A 誘導体やプレドニゾロンの内服,イン ターフェロン γ の注射による治療,孤立性病変で あったため病変部の外科切除や放射線療法などを 提示した。化学療法に対する治療反応は全奏効率 としては高いものが期待されたが,完全寛解まで 至った症例が少ないこと,多発性病変を持つ症例 に対しては中央生存期間の有意な延長が期待でき るものの,孤立性病変を有する症例の場合はそれ らを期待できない可能性があること2),また,上 記の通り粘膜 / 粘膜皮膚病変型で孤立性病変を有 する多くの症例が外科手術を受けており,新たな 病変への進行が認められなかったこと2)より外科 手術による切除も選択肢となることを説明した。 また,放射線療法は CEL の局所的な治療または緩 和に使用され,放射線療法で単独治療した孤立性 の粘膜病変を持つ 2 症例では,700 日以上の長い コントロールが可能であったことから2),放射線 療法による治療も期待が持てることをオーナーに 説明したところ,通院のコンプライアンスや経済 的な点から外科切除による治療を希望された。包 皮先端病変部を側方マージンとして 6 ∼ 7 mm 確 保し,腫瘤を含めて環状に切除した(Fig. 1e)。切 除した腫瘤の病理組織学的検査でも皮膚上皮向性 T 細胞性リンパ腫と診断された。腫瘍組織の切除 縁への浸潤は認められなかったが,低頻度ながら 脈管内に腫瘍細胞塊が認められた。症例は比較的 若齢であったため,術後に包皮の機能的な問題が 起きない程度に外科切除を行い,術後に化学療法 を併用することを推奨したが,オーナーが経済的 な事由や術後一般状態が良好であったため,化学 療法の副作用により逆に体調を崩す可能性を危惧 され希望されなかった。2019 年 3 月の外科切除後 から現在までおよそ 300 病日,再発は認められて いない。

考 察

本例は医原性クッシング症候群及びステロイド 皮膚症の治療経過の中で,包皮先端に限局して皮 膚型リンパ腫が発生し,外科的な切除により良好 な経過を得られた。獣医学領域における一般的な CEL の治療法としてはロムスチン,VELCAP-EL プロトコール,その他の多剤併用療法,クロラム ブシル,メルファランなどを用いた化学療法,プ レドニゾロン,レチノイド製剤,リノール酸(サ フラワーオイル)の投与,また,病変が局所の場 合は外科療法,放射線療法2)が有用である。

(5)

148 症例の犬の上皮向性リンパ腫の臨床転帰と 予後を比較検討した報告では,皮膚型の病変を持 つ症例と粘膜 / 粘膜皮膚境界部型の病変を持つ症 例とを比較して,治療法やそれらに対する反応, 予後についてまとめられていた。その報告の中で は今回の症例と同じように粘膜 / 粘膜皮膚境界部 型の病変を持つ症例が 68 症例報告されており,そ のうち 32 症例が化学療法の治療をうけていた。 CCNU で治療された 3 症例は 3 症例とも部分寛解 の反応がみられ,生存期間はそれぞれ 100 日,707 日,1 症例は 140 日で経過の追跡が打ち切られた。 VELCAP-EL プロトコールで治療された 11 症例は 7 症例が完全寛解,3 症例は部分寛解,1 症例は 変化なし,悪化は 1 症例もなかった。全奏功率は 90.9% で,中央生存期間は 281 日(32-1440 日,2 症例は経過追跡なし)であった。その他の多剤併 用療法で治療された 2 症例は,1 症例は完全寛解, 1 症例は悪化した。完全寛解の 1 症例は 376 日の 生存期間であり,悪化した 1 症例は 281 日の生存 期間であった。プレドニゾロン単独で治療した 11 症例は,2 症例は完全寛解,3 症例は部分寛解,3 症例は変化なし,6 症例は悪化した。全奏効率は 45.4% であり,中央生存期間は 309 日(30-641 日, 4 症例は経過追跡なし)であった2) さらに,レチノイド製剤(イソトレチノインま たはエトレチネート)で治療した 14 症例の皮膚型 リンパ腫(5 症例が上皮向性)の報告では 42% の 奏効率を示し,中央生存期間は 11 ヵ月であった。 リノレン酸(サフラワーオイル)で治療した CEL の症例で,2 年以上の継続期間中 8 症例中 6 症例 で臨床像の改善が見られた。しかし,完全寛解か 部分寛解かは明記されていなかった8)。148 症例の 犬の上皮向性リンパ腫の臨床転帰と予後を比較検 討した報告では,レチノイド製剤とリノレン酸そ れぞれ,または両方の治療を受けた症例での反応 率や反応持続期間を究明することはできなかった が,レチノイド製剤の治療を受けた多発性で皮膚 病変型の症例の中央生存期間が有意に延長し,そ れは化学療法を受けたかどうかとは無関係であっ たと言及されていた2) 放射線療法は CEL の局所コントロールあるい は緩和治療を目的として使用される。14 症例の口 腔粘膜皮膚境界部のリンパ腫の遡及的研究では, 67% の全奏効率で 770 日の中央生存期間であっ た1)。148 症例の犬の上皮向性リンパ腫の臨床転帰 と予後を比較検討した報告では,12 症例の犬が放 射線療法を受けたが,生存期間への影響は明らか に出来なかった。放射線療法で単独治療した 2 症 例,孤立性粘膜病変の症例は 700 日以上の長いコ ントロールが可能であった2) 外科的な切除は 68 症例中 39 症例で行われた。 34 症例が孤立性病変であり,そのうち 12 症例で 完全切除を達成出来ており,12 症例は不完全切除, 10 症例は記載が見られなかった。5 症例は多発性 病変,うち 3 症例はすべての病変の完全切除を達 成出来ており,うち 2 症例は記載が見られなかっ た。術後、39 症例のうち 7 症例がレチノイド製剤 による治療を受け,20 症例はその他の化学療法を 受けた2) 本例は比較的若齢での発症であったため,根治 を目標として外科的な切除と切除後に化学療法の 実施を検討した。結果的にはオーナーの意向によ り化学療法の併用は行わず,外科治療単独での治 療となったが,外科切除後およそ 300 日間,再燃 は認められていない。 148 症例の犬の上皮向性リンパ腫の臨床転帰と 予後を比較検討した報告では,外科手術は孤立性 病変の症例で 2 年以上の再燃が見られなかった症 例も見られ,その他の治療の代替となる選択肢で あると報告されている。50% の孤立性の皮膚型病 変の症例,71.2% の孤立性の粘膜 / 粘膜皮膚境界部 型病変の症例でそれぞれ追跡した 691 日,501 日 の平均追跡期間で新しい病変への進行が認められ なかった。この事は局所的な外科切除は有用であ ることを示唆している。孤立性病変の皮膚型病変 の 1 症例と孤立性の粘膜 / 粘膜皮膚境界部型病変 の 1 症例で,最初の診断から 5 年以上後に新たな 病変が確認されたとの記載もあり,本例でも引き 続き長期的なモニタリングが必要であると考えら れた。 本例が CEL を発症した要因に関して考察すると, 医原性クッシング症候群の治療経過の中で自然発 生性に発症した可能性も考えられたが,人での報 告では機能性の副腎腫瘍の治療経過で潜在してい た非ホジキンリンパ腫の進行が認められたとする 報告があり9),本例も当初皮膚炎の治療でステロ イドを使用しており,潜在化していた皮膚型リン パ腫が医原性クッシング症候群の治療の過程の中 で,ステロイドの投与を漸減していったことによ り症状が顕在化して発症に至った可能性も考えら れた。

利益相反

開示すべき利益相反はない。

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引用文献

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Fig. 1.  (a, b) At first presentation, alopecia, papules, and  crust formation in the dorsal neck and trunk, as  well as, erosion, ulceration, and crust formation  are also observed around the prepuce

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