山梨医大誌,2(2),59∼68,1987
原 著
骨軟部悪性腫瘍に対する選択的制癌剤
使用に関する実験的,臨床的研究
英秀功
藤野松
二河赤
芸北
山原
茂
巌美
. . 室博幸 教
禅
宏 麻
形
島山輕
大
福益 科
● 奪 医貴樹也螺
面談:我々は骨軟部悪性腫瘍に対する化学治療成績の向上をめざして,制癌剤感受性試験の実験 的,臨床的研究をおこなっている。まずハムスター骨肉腫およびメチルコラントレンによりBALB/ CマウスおよびC3H/Heマウスに発生させた肉腫を用いて基礎実験を行い,その結果をもとに制 癌剤感受性試験の:方法を開発した。臨床応用では,手術時に得られた腫瘍細胞を用いてこの制癌剤 感受性試験を行ない,より特異的に作用する制癌剤の種類と至適濃度を決定した。現在骨軟部悪性 腫瘍12例に対し制癌剤感受性試験を行ない,これらの臨床経過より制癌剤の効果を判定,判定中の 3例を除いた10例中8例(80.0%)に有効性が得られた。現時点で,我々の制癌剤感受性試験は制 癌剤の多剤併用療法のプロトコールから,あらかじめ無効であると判定された薬剤をはずすことが でき,副作用の発現を低下せしめ,治療効果を改善させ,かつ全身状態の悪化を防ぐのに有効と思 われる。 キーワード 制癌剤感受性試験,骨肉腫,骨軟部悪性腫瘍はじめに
最近,骨軟部悪性腫瘍に対する治療成績の向 上が一般的に認められ,その理由の一つに化学 療法の進歩があげられる。しかしどの薬剤をど のようなプロトロールで投与するかについての 見解は一致していない。また個々の症例は腫瘍 の性質および悪性度が異なっており,画一的な 制癌剤投与では確実な効果が期待できず,時に は,むしろ効果のない制癌剤で二三の全身状態 を悪化させ反省させられることも多い。そこで 我々は,悪、翻重瘍に対して,より特異的に作用 する制癌剤の決定と至適濃度の決定のため基礎 実験を行い,その結果をもとにした制癌剤感受 性試験の方法を開発,実際の臨床例に応用し, 有効であったので報告する。 *山梨県中巨摩郡玉穂町下河菓1110 受付:1987年2月13日 材料および方法 ハムスター骨肉腫およびメチルコラントレンによりBALB/CマウスおよびC3H/Heマウ
スに発生させた肉腫を用いた基礎実験1)鋤から 制癌剤感受性試験の条件を設定した。この方法 を土台として,ヒト骨軟部悪性腫瘍13例に対し 制癌剤感受性試験を行い,決定された制癌剤を 臨床例に投与,臨床経過を検討して制癌剤の効 果を判定した。 1.制癌剤感受性試験の条件決定のための 基礎実験 我々の教室で継代培養しているハムスター骨 肉腫およびメチルコラントレンによりBALB/ CマウスおよびC3H/Heマウスに発生させた 肉腫をin vivOの実験に用いた。さらに,これ らの腫瘍細胞を組織培養系に移してin vitroの 基礎実験をおこなった11)13)。ついで両者にシス表1制癌剤感受性試.験使用薬剤リスト 薬 剤 名 制癌剤感受性試験 剤投与量 植物アルカロイド製剤 ピンクりスチン 0.02μ9/m1 (オンコビン) 0.1μ9/m} 抗癌性抗生物質 アドリアシン iAI)R) uレオマイシン i継lii L5μ墓/m1 15.0μg/ml マイトマイうンC 1・.4。9/mli 4.oμ9/ml⋮ … 一へ吊㍑..} 罫一…一… アルキル化剤 @ car1)oquonを @ (エスキノン) ii,認課⋮ i Cycloi)h。SPhal笹ide i活性エンドキサン) mimusti朕・ 1・1麟lii 2μ9/m1 (ニドラン) 20μg/mi ダカルバジン 】 3μ9/mi 30μ9/ml 代謝拮抗剤 r フルオロウラシル i5FU) i 5μ9/ml 堰@soμ9/ml︼ メソトレキセート 50μ9/ml (MTX) 500μ9/ml その他 シスプラチン 1 2μ募/m} (CDDI))(ランダ) i 5μ墓/mlヨ 摘出した腫瘍 ↓ 生理的食塩水(含ポリミキシンB) で洗浄
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ロ ノ ぜノ メ ヂロ 畢 判定(抑制率の計算) 使用薬剤の決定 各制癌斉総髭後 の細胞数 壌抑制率茸 ×100 (%) コントロールの細胞数 図1 制癌剤感受性試験の方法 司遊離細胞の調裏冬 ユ×10〔1個/ml !制癌剤と反応 反応時問 濃度依存性薬剤:21i寺問反応 時間依存性薬剤:全培養期間反応 制癌剤濃度 通常使用量および その2∼10倍 噸4∼6FI問培養(5%CO 2,37℃♪ DM170 μ9/9 ゆ 。0 2 /CDDP濃度
気
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隅i飢清中 σ…o腫瘍中季\ド十一鳳飯
蚤 2 4 6 8 12図2CDDP濃度の経時的変化
プラテン(CDDP)およびアドリアシン(ADR) を投与し,その増殖抑制のパターンの比較より, in vivOとin vitfOの結果が最も一致する条件 をもとめた。以上の結果より制癌剤感受性試験トガト葡時間
に用いる薬剤濃度,培養日数を決定した。 in vivOでは,臨床的な通常量から換算した 濃度をハムスター背部皮下に投与,腫瘍の発育 速度をその縦横の幅の平均値から測定し,in61 表門制癌剤感受性試験を施行した症例 No, 年齢 牲 病 名 感受性試験で有効 ニ判定さ’れた薬剤 制 癌 剤 の 効 果 @(臨 床 経 過) 制癌剤の L効性 1 7才 男 右上腕横紋筋肉腫 エンドキサン 生検後6ヵ月で死亡 進行練 5FU 2 12才 男 右脛骨骨肉腫 ADR 匿大腿り噺後6・月で.髄榊云移巣1槻, 己 効崇 lARDの動注で転移巣の縮小をみとめた. 3 36才 女 左上腕悪性線維 邑ピンクリスチン 肺転移巣の摘出術後11ヵ月で肝転移出現, へ 効斎
性組織球腫 iADR簾TX iMTX大最療法で肝転移巣の縮小をみとめた. i 一
4 38才 男 宕大腿脂肪肉腫 ピンクリスチン 右大腿厭発巣の再発に対して摘出術後, 制癌剤「隔 を投:与し1年6ヵ月聞(iisease free. 5 150才 男 右胸壁悪性中皮 マイトマイシンC5FU 生検後制癌剤を手蹟与し原発巣の縮小, り冬痛の軽 「「…一酬「「…㍑「一ドへへ榔闇榔一「碍. @有効米 i 腫 M学XCDDP 1減をみとめた・
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6 75才 女 i 左讐部悪性リン p腫 エンドキサンiTX 左讐部曜日巣の摘出術後,制癌剤を投与し1年Sヵ月問disease free.讐銑
134才 1女 左大腿骨悪性線 ロ三郷球腫 ピンクリスチンADR Gンドキサン 腫瘍摘出術後入工1闘病管置換 サ在化学療法中にてdisease free. ;一 一rrP−PPP 一.7 8 i65才 女1左大腿骨軟骨肉 ピンクリスチンAl)1∼ 腫瘍摘出術後人工骨頭置換 進行崇 i i腫 マイトマイシンCエンドキサン 術後3ヵ月化学療法「}1に再発巣,肺転移出現ll;f [ i i︸ 5…7UCI)DP 後7功刃で死亡. _一一岸「 「 一ρ一耐…聴姦「
左頸部餉醸肉腫 iMal三9.紐emεm・ ビンクリスチン }イトマイシンC 腫瘍部分摘出術後,放射線治療,温熱療法およ ム化学療法中にて残イf腫瘍の増大なし. …一}脾…一「一 イゴ効 ⋮ glOpericytoma) エスキノンエンドキサン 一τゴτ=7 {0 ・65才i男 多発性骨髄腫 エンドキサンCDDP DE鎖骨原発巣摘出後がM2プロトコールに準 イ∫効燃 i ダカルバジン Gスキノン じた多剤併用療法を1年8ヵ月行なう ュ,制癌剤感受性試験を行ない薬遡を変更した も効果な i⋮ M2プロトコールにてり冬痛,全身状態の改簿, 髜№フ増大は拍1鞘されている。 i⋮ 一 「一一 rr 一 11 i68才︸1 男i 右骨盤内腫瘍 bhordoma 言iピンクリスチン⋮ 1右骨盤内腫瘍部分蜜1惹出術後,化学療法, =Q_
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: 判定申i 玉2 69才 男 悪性線維性組織 マイトマイシンC5閥 肺転移巣の摘出後,化学療法中. 覧i…1」定「い 球腫 エンドキサンMTX … 13 65才 女 多発牲骨髄腫 A蓋)Rブレオマイシン bカ検後,M2プロトコールに準じた多剤併用 噛μ淀中 ダカルバジン 療法中. エンドキサンビンクリスチン 太字は実際に使摺した薬斉ljを示す. * 小山・斎藤班の周型サ翻寮法直接効果判定基準による. ** 山崎らによる多発性骨髄腫に対する治療効果料定基準による. vitroの結果と比較した。また,メチルコラン トレンにより背部に肉腫を発生させた:BALB/ CマウスおよびC3H/Heマウスの腹腔にシス プラチン(CDDP)を投与し,血清中および腫 瘍内濃度を測定した。測定は原子吸光分析法に よりシスプラチンの中に含まれるPt(白金)を マーカーとして行い,μg/gを単位として定量 測定した。この結果を,制癌剤感受性試験にお いて培養細胞と反応させる制癌剤の濃度決定の 基準とした。 in vltroでは培養系に移した細胞を一定細胞 数に調整したあと,各種類ごとにin v圭VOの結 果より決定した濃度の制癌剤を一定時間反応さ せた。その後炭酸ガス培養雨中で2∼8日培養 し,抗腫瘍効果すなわち感受性の判定は増殖抑 制率でおこない,ぬvivOと比較し最:もin vivO とin vitroの結果の一致する時間を決定した。 増殖抑制率は顕微鏡下で細胞数を計測し,こ れを対照群と比較して百分率を計算した。 2.臨床応用 方法:生検あるいは手術時に得られた腫瘍組 織より細胞を遊離,これを培養系にうつした。 その後約1週間で腫瘍細胞の増殖が安定化して から,細胞濃度を1×108個/ln1に調整したもの を各濃度の制癌剤(表1)と一定時間(濃度依 存性薬剤では2時間,時間依存性薬剤では全培 養時間)反応させた。その後培養プレート中で 4∼6日間培養をおこない,細胞数を算定し, これをロントロール群の細胞数で除して増殖抑 制率をもとめた(図1)。この抑制率より感受性 のある制癌剤を決定し,臨床例の投与薬剤を選 択する指標とした。表3 制癌剤感受性試験の結果 制癌剤 濃 度 搾制率(%) ピンクリスチン 0.02μ9/ml n.1μ9/ml 27±8 Q3±9 アドリアシン @(ADR) 2μ9/m1 Tμ9/ml 11±14 S2±23 Cyc10phOSphamide @(エンドキサン) 2μ9/m1 Tμ9/m1 34士14 T4±:59 フルオロウラシル @ (5Fu) 5μ9/m1 T0μ9/ml 238土7玉 X6士26 メソトレキセート @ (MTx) 50μ9/m1 T00μ9/m1 84±:29 U1±12 シスプラチン @(C[)DP) 2μ9/m1 Tμg/ml 80±44 P53±33 〔症例2〕 12才 男 ;右}雛骨骨肉ll盤 太字は有効とされた薬剤(ADR)を示す. 表4 制癌剤感受性試験の結果 制癌剤 濃 度 抑制率(%〉 、ヒンクリスチン 0.02μg/ml n.1μ9/ml 0 Q8±33 アドリアシン @ (ADR) 2μ9/黙1 Tμ9/ml 14±:28
@0
Cyclophosphamide @(エンドキサン) 2μ9/m1 Q0μ9/ml 228±168 Q28±93 フルオロウラシル @ (5FU) 5μ9/m1 T0μ9/ml 28±33 S2±54 メソトレキセート @ (MTX) 50μ9/m1 T00μg/ml 14±28@0
シスプラチン @(CDDP) 2μ9/m1 Tμ9/鵬1 28±33 Q8±:57 〔症例3〕 36才 女 左回悪性線維性組織球腫 太字は有効とされた薬剤(ピンクリスチン,ADR, MTx)を示す. 結 果 1.基礎実験 hvivOでの腫瘍内の制癌剤の濃度は,シス プラチン(CDDP)血中最大濃度の1/3から 1/10であった(図2)。これより感受性試験の 制癌剤の投与濃度を臨床投与量およびその1/10 とした。またハムスター骨肉腫の増殖抑制のパ ターンがin vivoとin vitroとで最も一致す る時間は4∼6日後であり,制癌剤の反応時間 は2時間であったため,これらの値を臨床応用 に用いた。 2.臨床応用 臨床例において現在!3例の骨軟部悪性腫瘍に 制癌剤感受性試験を応用し,決定された制癌剤 を用いたプロトコールを作製し制癌剤投与を行 った。4週間以上の経過観察により10例中8例 表5 制癌剤感受性試験の結果 制癌剤 濃 度 抑制率(%) ピンクリスチン 0.02μg/m藍 Oほμ9/ml 51±64 P7±44 アドリアシン @(ADR) 2μ9/m1 Tμ9/n}1 51±:93 T圭±64 ブレオマイシン 1.5μ9/擶1 ハ5μ9/獄1 66±95 R3±57 マイトマイシンC 0.4μ9/m1 S μ9/ml 51±64 P7±44 エスキノン 2μ9/m1 Q0μ9/ml 33±57@0
Cyclophosphamide iエンドキサン) 2μ9/蓋ni Tμ9/膿1 60±95 P7±44 ニドラン 2μ9/m1 Q0μ9/ml 84±93 R3士57 フルオロウラシル @ (5FU) 5μ9/m1 T0μ9/田1 1ユ7±ユ04 U0±95 メソトレキセート @ (MTX) 50μ9/m1 T00μ9/ml 66±116 T1±64 シスプラチン @(CDDP) 2μ9/m1 Tμ9/ml 60±95 T7±82 〔症例9〕49才女左頚部伯L管肉腫(Mallgnant Heman癌1・pericyt・ma) 太字は宥効とされた薬剤(ピンクリスチン,マイトマイ シンC,エスキノン,エンドキサン)を示す. (80.0%)を制癌効果有効と認め, 在化学療法施行中である(表2)。 症 例 また3例は現 症例2:12歳男の右下腿に発生した骨肉腫例 である。右下肢切断後,右所部に移転巣が出 現した。制癌剤感受性試験の結果アドリアシン (ADR)が有効と判定した(表3)。 ARDを動 注後1ケ月で腫瘍の発育は抑制され縮小してい る(図3)。 症例3:34歳の女性の左肘部に原発した悪性 線維性組織球腫(MFH)の肝転移例である。 制癌剤感受性試験の結果メソトレキセート (MTX)が有効と判定し(表4), MTX 100 mg/ kgの大量:療法を中心とした多剤併用療法を行 い,CT像で腫瘍の縮小が認められた(図4)。 症例9:49歳の女性の左頸部に原発した血管 肉腫(malig照nt hemangiopericytoma)で,3 回の手術にもかかわらず腫瘍の全摘は不可能で あり,手術後も腫瘍の増大がみられている。制 癌剤感受性試験の結果ピンクリスチン,マイト マイシンC,エスキノン,エンドキサンが有効63 ADR動注前 ADR動注後1カ月 図3 右上腕骨転懸巣X線像 〔症例2〕 12歳 男 右脛骨骨肉腫 ADRを中心とした多剤併用療法で右上腕骨転移巣の縮小がみられた。 表6 小山・斎藤班の固型癌化学療法直接効果判定基準 奏効度の表現 判 定 方 法 著効 測定可能病変,評価可能病変および腫瘍による二次的病変すべて消失し, Complete Response 新病変の出現がない状態が4週間以上持続したもの. (CR) 有効 二方向測定可能病変の縮小率が50%以上,あるいは一方向測定可能病変 Partial Response では30%以上の縮小率を示すとともに、評価可能病変および腫瘍による (PR) 二次的病変が増悪せず,かつ新病変の出現しない状態が少なくとも4週 問以上持続した場合. 不変 二方向測定可能病変の縮小率が5Q%未満,一方向測定可能病変において No Change は縮小率が30%未満であるか,またはそれぞれ25%以内の増大にとどま (NC) り,腫瘍による二次的病変が増悪せず,かつ新しい病変が出現しない状 態が少なくとも4週間以上持続した場合. 進行 測定可能病変の積または径の和が25%以上の増大,または他病変の増 Progressive 悪,新病変の出現がある場合、 Disease(PD) と判定し(表5),この4剤による多剤併用療法 と放射線治療を行ないCT像で腫瘍の増大阻止 が認められた(図5)。この症例は,小山・斎藤 班の固形癌化学療法直接効果判定基準(表6)7) では不変と判定されるが,術後腫瘍の増大をく りかえし化学療法後腫瘍の増大阻止が認められ た経過から,制癌剤は有効であったと考えられ る。 症例10:68歳の男性の右鎖骨に原発した多発 性骨髄腫で原発巣摘出後プレドニン,ビンクリ
」醐
○騰羅豊:
MTX大量療法前 MTX大量療法後1カ、月 忌4 肝転移巣CT像 〔症例3〕36歳 女左上腕悪性線維性組織球腫 TX大量療法を中心とした多剤併用療法で肝転移巣の縮小がみられた。 頸部腫瘍 頸部腫瘍 縦隔部腫瘍 (腫瘍部分切除直後) 縦隔部腫瘍 (化学療法開始後3ヵ月) 図5 頸部および縦隔内残存腫瘍表7 制癌剤感受性試験の結果 制癌剤 濃 度 抑制率(%) ピンクリスチン 0.02μ9/ml n.1μ9/ml 116±64 P02±44 アドリアシン @(ADR> 2μ9/m1 Tμ9/m1 87±93 R4±Φ4 ブレオマイシン 1.5μ9/mI ハ5μ9/ml 84±95 P33±57 マイトマイシンC 0.4μ9/m1 S μ9/ml 77±64 W2±44 エスキノン 2μ9/m1 Q0μ9/ml 24±37 P7±44 CyclOPhos幽mide iエンドキサン) 2μ9/m1 Tμ’9/揃1 29±38 P3±32 ニドラン 2μ9/m1 Q0μ9/ml 61±43 Q1士57 ダカルバジン 3μ9/m1 R0μ9/ml 21±47 Q0±38 フルオロウラシル @ (5FU) 5μ9/ln1 T0μ9/mI 11±14 R7±35 メソトレキセート @ (MTX) 50μ9/m1 T00μ9/ml 120±61 t2±64 シスプラチン @(CDDP) 2μ9/m1 Tμ9/ml 21±45 P7±28 〔症例ユ0〕 65才 男 多発性骨髄腫 太字は有効とされた薬剤(エスキノン,エンドキサン, ダカルバジン,シスプラチン)を示す. スチン,メルファランによるVMCP療法をつ づけたが,左鎖骨,大腿骨,上腕骨に多発病巣 が出現した。そのためプレドニン,ピンクリス チン,メルファラン,ダカルバジン,エンドキ サンを用いたM2プロトコール4)による多剤併 用療法を行なったが,病巣の拡大,坐骨病的骨 折,全身状態の悪化,疹痛の増悪がみられた。そ こで,嶢骨骨折部より腫瘍を一部切除し制癌剤 感受性試験を施行した。その結果,シスプラチ ン有効,ピンクリスチン無効と判定し(表7)。 プレドニン,メルファラン,ダカルバジン,エ ンドキサン,シスプラチンを用いたM2プロト コールに準じた多剤併用療法(第1週はメルフ ァラン8mg経口,ダカルバジン200 mg静注 の連日投与,第2週頃1日にエンドキサン400 mg静注,第3週第1日にシスプラチン150 mg 静注,さらにプレドニンは第1週に40mg連日 静注投与,第2週に20狙g,第3週から第5週ま で10mg連日投与し5週を1クールとして反復 する)に変更して治療を行ない,現在病巣の拡大 の停止,全身状態,笹笛の改善がみられている。 65 考 按 1. 基礎実験について in vivoでの腫瘍内の制癌剤の濃度はBA:LB/ Cマウスをもちいたシスプラチンの定量により 検討した。シスプラチンの中に含まれるPt(白 金)をマーカーとした原子吸光分析法による経 時的測定より,シスプラチンの腫瘍内の濃度は 血中最大濃度の1/3から1/10であった(図2)。 VOH Ho鉦9)は,腫瘍内の制癌剤濃度が血中最大 濃度の1/10と述べている。我々の制癌剤感受 性試験においては,臨床投与量1/10の以外に 臨床投与量をも用い,高濃度の制癌剤の効果に ついても試験を行なえるよう配慮した。現在の ところシスプラチンの腫瘍内の濃度である1/10 を,他の制癌剤に対しても用いている。今後基 礎実験を重ね,各制癌剤ごとの腫瘍内の濃度の 測定を行い,制癌剤感受性試験における,より 適切な制癌剤の濃度をもとめる予定である。 2.臨床応用について 現在のところ制癌剤感受性試験については種 々の方法が試みられている。近藤6)はその作用 機序からこれらを以下の5項目に分類してい る。 (1)細胞培養または器官培養により細胞障害 を形態的にみる方法。 (2)細胞代謝阻止を測定する方法。 (3)放射性前駆物質を測定する方法 (4)腫瘍細胞からのクローン産生細胞を算定 する方法。 (5)in vivoの方法,ないしnude mouseを 用いる方法。 我々の方法は(4)に属しており,Salmonおよ びHamburger2>3)によって開発されたhuman tumor stem celi assayの手法を参考にしてい る。現在のところ各方法とも一長一短があり, 確立したものとはなっていない。我々の方法は 操作が比較的簡単で,短期間で結果を得られる 半面,初代培養が難しい欠点がある。 富田8)は望ましい制癌剤感受性試験の必要条 件として,以下のごとき項目を挙げている。
表8多発性骨髄踵に対する治療効果判定基準 (ば1崎らに.よる) 改善変 峵jll 1 点数 H 点数 田 点数 1.骨髄 1)骨髄腫細胞(形質細胞)10% 20 治療前値の2/3以 10 改善なきもの 0 所見 以下に減少 下に減少 2.末梢 1)骨髄腫細胞(形質細胞)消失 5 同上 0 i組液 あるいは著減 所見 2)赤1飢球数350万以上に増加 10 250万以上に増加 5 249万以下,ある 0 いは治療前職より 減少せるもの 3.蛋白 1)総蛋白量,A/Gが正常値 /0 正常値ではないが, 5 改善なきもの 0 所見 内になったもの 改善のみられたも の 2)異常蛋白が1/2以下に減少 10 治療前値の2/3以 5 同上 0 下に減少 4.赤沈 1)1時問値が20田m以下に改善 10 50田m以下に改善 5 同上 0 所見 5.その 1)脾腫の消失,BJ.蛋白体の 5 同上 0 他の 陰性化,残余窒素の減少等, 所見 その他の所見の著明な改善 をみたもの 1)運動障害,麻痺の消失 20 やや改善 10 同上 0 2)疹痛の消失 10 やや改善 5 同上 0 80点以上 :著効(完全寛解) 50点∼79点:有効(不完全寛解) 49点以下 :無効 (1)生体での臨床効果を正確に予言するこ と。 (2)簡便かつ迅速なテスト方法であること。 (3)客観性,普遍性の高い判定法であること。 (4>種々,多数の薬剤を同時に検索できるこ と。 (5)少ない臨床材料で行え,成功率が高いこ と。 我々の方法では,(1)について制癌剤感受性試 験を行った10例中8例に(80.0%)臨床効果が 認められ,感受性のある制癌剤の種類を推察す ることが可能であった。しかしながら,生体内 では代謝により薬剤は種々の違った形に変化し て腫瘍に作用するため,in vitroの結果がその まま生体内反応をしめすとは言えない欠点があ る。(2)については腫瘍切除後2週間で結果が得 られ,また腫瘍の増殖能の高い症例では,2日 後より制癌剤感受性試験が可能であり,約1週 間で結果を得ることが可能で,実用的な方法と 考えている。(3)については症例が少ないもの の,80.0%に臨床効果が認められ,特に症例 10では制癌剤感受性試1験にて薬剤の変更を行な い症状の改善をみており,客観性のある方法と 考えている。(4)については現在11種の制癌剤を 一回の感受性試験に用いており,追加も容易で ある。(5)については現在13例の骨軟部腫瘍の制 癌剤感受性試験に成功しているが,1例の胃癌 の症状に対し初代培養が感染のためできず,確 実に初代培養を行なえることが今後の課題であ る。しかし,この方法により,骨軟部悪性腫瘍 に対して治療計画をたてる際,制癌剤感受性試 験で無効とされた薬剤を除外することができ, 治療上よけいな副作用の発現を予防するのに有 効と考えられた。 3. 効果判定法について 制癌剤感受性試験の臨床における効果判定法 については,従来Kamofsky5)の判定基準が用 いられてきた。最近本邦で共通の臨床効果判定 基準がつくられ用いられつつある。我々は,国 際比較のしゃすい判定基準といわれる小山・
斎藤班の固形癌化学療法直接効果判定基準(表 6)7)を用い,手術により完全摘出が不能であ った症例や,転移巣をもつ症例に対して,X線 検査,CTスキャンおよび臨床所見をもとにし て判定した。症例8については判定基準では不 変であるが,臨床経過より有効とした。術中完 全摘出できた症例に対しては,再発がみられぬ ものを有効とした。しかし,放射線療法を併用 している例に対して,放射線療法の効果は考慮 にいれなかった。多発性骨髄腫については,山 崎らの判定基準(表8)10)を用い,症例10は判 定基準で50点となり有効とした。この症例は制 癌剤感受性試験により制癌剤の投与法を変更 し,症状の改善を得ており,制癌剤感受性試験 の当初の目的である無効と判定された薬剤をは ずし,制癌剤を適切に投与することができた症 例と考えている。 4.今後の展望 我々の制癌剤感受性試験における各制癌剤の 投与法,投与:量および判定法については,今後 も基礎実験を積み重ねて改良を続け,より正確 で迅速な方法を追及するつもりである。臨床応 用においては,制癌剤感受性試験結果をふまえ ての治療計画の立て方,および効果判定基準に ついて,今後臨床症例を重ね改良していく考え である。 ま と め 1)臨床において,13例の骨軟部悪性腫瘍患 者に制癌剤感受性試験を応用した結果,10例中 8例(80.0%)に制癌剤を適切に投与すること ができ,3例が現在治療中である。これらの事 実より,我々の制癌剤感受性試験は,有用であ ると判断した。 67 2) 我々の制癌剤感受性試験は,現時点では 制癌剤の多剤併用療法のプロトコールから,あ らかじめ無効であると判定された薬剤をはずす ことができ,副作用の発現を少なくして,全身 状態の悪化を防ぐのに役立つものである。 ︶ 1 ︶ 2 ︶ 3 ︶ 4 ︶ 5 ︶ 7 ︶ 7 > 8 ﹂♪ 9 10) ll) 12) 13) 文 献 福島 博ほか:制癌剤の肉腫内濃度に関する基 礎的研究(第1報),1三i整会誌,58,605,1985. Hamburger, A. and Salmon, S・E・:Pyimary bioassay of human myeloma stems,」・αin・ Invesし,6B,846−854, ig77. Hamburger, A, and Salmon, S・E:Pri凱Lry bioassay of human myeloma stems, Science, 197,46一一463,1977. 岩田吉史:多発性骨髄踵における多剤併用療法 (Modi飴d M−2 Protocol>治療成績,臨床血液, 25 1380−1387 1984,. り シ Kamofsky, D. A.:Clinic誠evalua之ioll of anti− cancer drugs, Gam MonogrRph,2,223−234, 1967. 近藤達平:制癌剤感受性の決定,第1版,東京, 金原出版,レ9,1985. 小山義之・斎藤達雄:がん化学療法の臨床効果 判定基準,厚生省がん研究助成金による研究班 報告,1983、 富田勝朗:骨肉腫における制癌剤感受性テスト その意義,問題点と展望,臨床整形外科,20, 1305一玉311 1985. ラ Voll Hloff, D. D., e£aL:Associatioll botweα} huma1}tumor co玉ony−forming ass議y rcsults and response of an individual patienピs tumor chemotherapy, Am. J. Me(し70, lo27矧032, 1981. 山崎健之ほか:多発性骨髄腫の治療,臨床血液, 10(3>, 404−413, 1969. 横山 巌ほか:制癌剤投与による実験的骨肉腫 の組織化学的研究,日整会誌,59,640嶋42, 1985 横山 巌ほか:制癌剤投与による骨軟部腫瘍の 組織化学的変化,整形外科基礎科学,12,549, 553 茎985。 フ 横山 巌ほか:制癌剤感受性試験の基礎と応 用,山梨医学,14,29−35,1986.
Basic and Clinical Study on the Selec{ive Use of Anti-Cancer Agents
£or Malignant Bone and Soft Tissue Tumors
Hideki Sato, Hiroshi Fukushima, Yuwao Yokoyama, Hideki Kohno, Hiroyuki Masuyama, Shigemi Kitahara and Noriya Akamatu DcPartment of OrthoPedics, Yama7?ashi Medical College
An expei'imental study was carrie(l out to establish a test for anti-cancer agents employing hamster osteosarcoma and round cell sarcoma in(luced by methylcholantl}rene in BALB/C ancl C3KIHe mice. Based on the experimental analysis, our test system with short term cell culture was applied to le cases of malignant tumors including bone and soft tissue tumors to determine specific agents ancl their appropriate(l doses. In 8 of t/he 10 patieHts, the chemotherapy using the selected agents was considere(l to be efYective, as evaluated by the changes in the clinical course. Our method was useful for excluding the non-sensitive agents from the chemotherapy
schedule, and thus, rediicing the resulting toxic effects to i}oTn)al tissue.