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IRUCAA@TDC : 片側性唇顎口蓋裂患者の動的矯正治療終了後の咬合状態についいて : 二段階口蓋形成術および顎裂部骨移植を施行した症例

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(1)Title. 片側性唇顎口蓋裂患者の動的矯正治療終了後の咬合状態 についいて : 二段階口蓋形成術および顎裂部骨移植を施 行した症例. Author(s). 柿本, 朱; 坂本, 輝雄; 末石, 研二; 堀江, 由規子; 須 賀, 賢一郎; 中野, 洋子; 内山, 健志. Journal URL. 歯科学報, 109(4): 388-394 http://hdl.handle.net/10130/1064. Right. Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/.

(2) 388. 臨床報告. 片側性唇顎口蓋裂患者の動的矯正治療終了後の咬合状態について ―二段階口蓋形成術および顎裂部骨移植を施行した症例― 柿本. 朱1). 坂本輝雄1) 須賀賢一郎3). 末石研二1) 中野洋子3). 堀江由規子2) 内山健志3). 抄録:二段階口蓋形成法を施行し,顎裂部骨移植を. ある1)。また,患側の上顎側切歯の欠損を伴うこと. 行った側切歯の歯牙欠損を伴う片側性唇顎口蓋裂児. が多く,その治療法としては,従来欠損部の補綴処. の矯正治療終了時に,どのような咬合が得られてい. 置が行われてきた。しかし,最近では成長期,特に. るかを調査することを目的とした。二段階口蓋形成. 犬歯萌出前に顎裂部骨移植を行うことが多く2),顎. 法を施行した片側唇顎口蓋裂患者21例(男性11名,. 裂部への歯牙移動を行い欠損部を閉鎖し,補綴によ. 女性10名) を対象とし,動的治療終了時の口腔内写. らず咬合を形成する治療法が積極的に行われるよう. 真により咬合状態の観察を行うとともに,側面セ. になった3)4)5)。また,二段階口蓋形成術は前方歯槽部. ファロを用い顎顔面形態の分析を行った。結果は二. におよぶ手術侵襲が顎発育の著しい時期に回避され. 段階口蓋形成術と顎裂部骨移植を行ったほとんどの. るので,顎発育の抑制が少なく,良好な上顎骨の発. 症例では良好な上顎骨の発育がみられた。矯正治療. 育と口蓋形態が得られると考えられている6)∼10)。こ. 終了時の咬合状態では,顎裂部の閉鎖を行い,補綴. れは,歯列,咬合の形成という点からも有利と考え. によらず咬合を確立した症例は21症例中9症例で. られる。そこで今回,二段階口蓋形成術を施行し,. あった。二段階口蓋形成術は前方歯槽部におよぶ手. 顎裂部骨移植を行った側切歯の歯牙欠損を伴う片側. 術侵襲が顎発育の著しい時期に回避されるので手術. 性唇顎口蓋裂児の矯正治療終了時の咬合状態につい. による顎発育抑制が少ない。さらに,その後適切な. て調査,検討を行った。. 時期に行われる顎裂部骨移植の施行により優れた咬. 方 法. 合状態が得られるものと考えられる。 1.対. 緒 言. 象. 1982年から1993年に出生し,東京歯科大学千葉病. 片側性唇顎口蓋裂を有する患者では,顎裂部の存. 院口腔外科にて二段階口蓋形成術を施行した唇顎口. 在,および初回形成手術,特に口蓋形成術後の瘢痕. 蓋裂患者102名のうち,当科にて矯正治療が終了し. 形成による上顎の側方,前方への劣成長による前歯. た患側の上顎側切歯の欠損を伴う片側性唇顎口蓋裂. 部および臼歯部の反対咬合などの特有の咬合異常が. 患者21例(男性11例,女性10例) を対象とした。矯正 科初診時の年齢平均は7歳11ヶ月,(6歳5ヶ月∼. キーワード:片側性唇顎口蓋裂,二段階口蓋形成術,顎 裂部骨移植 1) 東京歯科大学歯科矯正学講座 2) 東京歯科大学口腔健康臨床科学講座歯科矯正学分野 3) 東京歯科大学口腔外科学講座 (2009年5月11日受付) (2009年6月15日受理) 別刷請求先:〒261‐8502 千葉県千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学歯科矯正学講座 柿本 朱. 11歳11ヶ月) ,動的治療終了時の年齢平均は15歳3 ヶ月(12歳8ヶ月∼21歳11ヶ月) であった。なお,本 調査における診療情報の使用については調査対象者 に,本研究の目的,意義等を説明し同意を得た。ま た,調査により得られたデータは,匿名化し厳重な 管理を行った。. ― 44 ―.

(3) 歯科学報. パターンA 図1. Vol.109,No.4(2009). 389. パターンB 矯正治療終了時の咬合状態の分類. パターンC. 2.咬合状態の観察. 結 果. 動的治療終了時の口腔内写真を用いて,咬合状態 を3つのパターンに分類した(図1) 。. 1.対象者. パターンA:下顎非抜歯で破裂側の大臼歯関係が. 対象者を閉鎖排列群,非閉鎖排列群に分類し顎裂. Ⅱ級,非破裂側はⅠ級仕上げで側切歯欠損部は犬. 部骨移植施行時の年齢を比較したところ,閉鎖排列. 歯の移動により閉鎖したもの. 群の骨移植施行時年齢は平均9歳11ヶ月(8歳11ヶ. パターンB:上顎1本,下顎2本抜歯を行いⅠ級. 月∼12歳6ヶ月) で,非閉鎖排列群では骨移植の施. 仕上げで側切歯欠損部は犬歯の移動により閉鎖し. 行時年齢は平均12歳5ヶ月(8歳6ヶ月∼16歳7ヶ. たもの. 月) であった。有意差は認められなかったが,非閉. パターンC:Ⅰ級仕上げで側切歯欠損部は閉鎖し. 鎖排列群の方が,骨移植の時期が遅い傾向が見られ. ていないもの. た(表1,図3) 。. パターンA,Bを閉鎖排列群,パターンCを非閉 鎖排列群とした。 3.側面セファログラム分析 骨格系に関して Facial angle,Convexity,Mandibular plane,Y-axis,SNA,SNB,Gonial angle の7項 目,歯 系 に 関 し て Interincisal,L1 to Mandibular,U1 to FH plane,L1 to FH plane の4項 目について計測を行った(図2) 。 パターンA,Bを閉鎖排列群,パターンCを非閉 鎖排列群として側面セファログラムを用い両者の顎 顔面形態の分析値の比較検討を行った。統計分析法 として Mann-whitney s U test を用いた。 図2 ― 45 ―. 側面セファログラムの計測値.

(4) 柿本, 他:片側性唇顎口蓋裂患者の咬合形成. 390 表1. 側面頭部X線規格写真分析値と顎裂部骨移植時年齢. male Mean Facial angle. 骨格系. 歯系. Female Mean. 86. 1. 85. 9. 歯系. A-2. 80. 8. 77. 3. A-3. A-4. A-5. A-6. A-7. B-1. 81. 83. 2. 83. 9. 84. 4. 81. 7. 76. B-2 87. 5. Convexity. 6. 4. 5. 5. −1. −1. 4. 9. 5. 3. 4. 7. 7. 8. 6. 5. 12. 7. 5. Mandibular plane. 24. 8. 26. 4. 41. 6. 43. 4. 34. 30. 34. 4. 31. 3. 29. 3. 43. 4. 22. Y-axis. 64. 0. 64. 3. 67. 3. 70. 3. 67. 64. 3. 69. 2. 63. 6. 63. 9. 71. 1. 61. SNA. 83. 4. 83. 2. 74. 2. 71. 2. 75. 71. 6. 79. 3. 78. 2. 78. 6. 77. 3. 79. SNB. 80. 0. 80. 4. 73. 8. 70. 9. 70. 5. 68. 4. 76. 4. 73. 9. 74. 9. 71. 4. 78. ANB. 3. 4. 2. 8. 0. 4. 0. 3. 4. 5. 3. 2. 2. 9. 4. 3. 3. 7. 5. 9. 1. Gonial angle. 117. 5. 120. 2. 135. 142. 1. 133. 128. 128. 1. 130. 1. 128. 6. 132. 125. Interincisal. 131. 6. 121. 9. 114. 7. 142. 6. 133. 124. 122. 1. 127. 3. 141. 9. 136. 7. 131. 5. L1 to mandibular. 97. 1. 99. 2. 87. 1. 70. 5. 90. 93. 7. 89. 7. 88. 5. 88. 83. 4. 98. U1 to FH plane. 110. 8. 115. 2. 116. 6. 103. 4. 104. 113. 113. 7. 112. 8. 110. 6. 97. 4. 108. 5. L1 to FH plane. 61. 6. 58. 0. 骨移植時年齢. 骨格系. A-1. C-3. 40. 66. 56. 56. 56. 60. 62. 5. 54. 60. 11y7m. 9y5m. 9y11m. 9y3m. 12y6m. 9y9m. 10y6m. 10y2m. 8y11m. C-4. C-5. C-6. C-7. C-8. C-9. C-10. C-11. C-12. C-1. C-2. Facial angle. 87. 7. 79. 3. 84. 8. 85. 5. 84. 5. 87. 9. 85. 7. 82. 1. 87. 4. 83. 80. 5. 77. 8. Convexity. −2. 8. 1. 7. 6. −9. 5. −3. 1. −3. 3. 0. 8. −0. 2. −2. 4. 1. 1. 11. 4. Mandibular plane. 30. 6. 35. 8. 28. 8. 30. 9. 33. 3. 27. 9. −5. 40. 5. 30. 1. 30. 36. 2. 31. 8. Y-axis. 61. 3. 68. 6. 65. 4. 63. 4. 63. 63. 2. 63. 3. 68. 7. 60. 1. 67. 68. 4. 71. 2. SNA. 74. 2. 75. 3. 82. 3. 75. 5. 76. 2. 79. 3. 82. 9. 75. 7. 75. 4. 77. 69. 9. 74. 6. SNB. 74. 7. 74. 2. 78. 9. 78. 8. 76. 3. 80. 6. 80. 7. 75. 74. 6. 74. 68. 5. 69. 2. ANB. −0. 5. 1. 1. 3. 4. −3. 3. −0. 1. −1. 3. 2. 2. 0. 7. 0. 6. 3. 1. 4. 5. 4. Gonial angle. 135. 9. 123. 6. 135. 8. 128. 9. 123. 124. 8. 131. 5. 135. 5. 133. 122. 135. 6. 115. 6. Interincisal. 130. 3. 150. 2. 124. 1. 124. 1. 145. 125. 5. 131. 6. 117. 9. 142. 3. 124. 138. 3. 127. 3. L1 to mandibular. 80. 3. 75. 1. 96. 3. 81. 9. 75. 7. 92. 9. 85. 8. 83. 9. 81. 1. 100. 83. 2. 97. 8. U1 to FH plane. 118. 8. 98. 9. 111. 1. 123. 2. 106. 113. 7. 112. 8. 117. 7. 106. 6. 106. 102. 2. 103. 1. L1 to FH plane. 69. 69. 59. 65. 72. 59. 65. 56. 68. 50. 60. 94. 6. 骨移植時年齢. 11y2m. 16y7m. 12y6m. 10y9m. 13y9m. 12y2m. 11y3m. 8y6m. 10y10m. 11y2m. 14y6m. 12y3m. A:pattern A,B:pattern B,C:pattern C. 2症例(10%) ,パターンCは12症例(57%) で,閉鎖. 2.咬合状態の観察 動的治療終了時の咬合状態のパターンの割合につ. 排列群は9症例と全体の43%を占めた(図4) 。. いては,パターンAは7症例(33%) ,パターンBは. 図3. 閉鎖排列群(pattern A, B)と非閉鎖排列群(pattern C) の骨移植時年齢の比較. 図4 ― 46 ―. 矯正治療終了時の咬合状態の割合.

(5) 歯科学報. Vol.109,No.4(2009). 391. 3.側面セファログラム分析 二段階口蓋形成術と顎裂部骨移植を行った症例 で,特に側切歯欠損部は犬歯の移動により閉鎖され たパターンA,Bでは男女とも ANB はプラスの値 を示し,良好な上顎骨の発育がみられ,バランスの とれた顎顔面形態が得られていた。歯牙系の分析に おいてもほぼ正常値に近い値を示した。側切歯欠損 部の補綴処置が行われたパターンCでは12例中4例 がマイナスの ANB 値を示し,それらの症例では上 顎前歯の唇側傾斜が見られた(表1) 。 上下顎の前後的位置関係を示す ANB ではパター ンA,Bでは平均2. 1° ±1. 9,パターンCでは平均 0. 7° ±1. 8で有意差が認められた(p<0. 05) (図5) 。 Convexity ではパターンA,Bでは平均5. 4° ±4. 5, パターンCでは平均−0. 6° ±4. 2で有意差が認めら れた(p<0. 05) 。その他の骨格系の項目 Facial angle,Mandibular plane,Y-axis,Gonial ange では有 意差は認められなかった。また,パターンA,Bで は ANB の 値 が+1S. D.以 上 が11%(9症 例 中1症. 図5. 例) ,±1S. D.内が55% (9症例中5症例) ,−1S. D.. 閉鎖排列群(pattern A, B)と非閉鎖排列群(pattern C) の ANB および Convexity の比較. から−2S. D.が33%(9症例中3症例) であった。パ ターンCでは±1S. D.内が42%(12例中5例) ,−1. ter と Pruzansky12)により,早期に軟口蓋を閉鎖し. S. D.から−2S. D.が33%(12例 中4例) ,−2S. D.以. 鼻咽頭閉鎖機能を獲得するとともに,前方歯槽部に. 下が25%(12例中3例) であった。側切歯欠損部は犬. およぶ手術侵襲が顎発育の著しい時期に回避される. 歯の移動により閉鎖したパターンA,B群と補綴に. ので,上顎骨の発育抑制が少ないとの考えから提唱. より閉鎖したパターンCでは ANB と Convexity の. されている。その後,言語と顎発育について様々な. 値に有意差がみられたことにより,閉鎖排列群は非. 検討がなされて13)プッシュバック法による一段階法. 閉鎖排列群に比べ正常な上下顎骨の発育がみられる. に比べて上顎骨の発育抑制が少なく,良好な咬合関. 傾向があるということがわかった。. 係,正常な上下顎の位置関係を得ることができると. 歯軸に関しては L1 to Mandibular ではパターン. されている6)7)。また,長期の縦断的な研究でもこの. A,Bが平均87. 7° ±7. 2,パターンCが平均85. 1°. ことが示されており8),今回の調査でも二段階口蓋. ±7. 7,L1 to FH plane ではパターンA,Bが平均. 形成術を施行した21症例中 ANB の値がマイナス. 56. 7° ±6. 9,パ タ ー ンCで は 平 均62. 9° ±6. 4,U1. だった4症例を除いて,バランスのとれた顎顔面の. to FH ではパターンA,Bが平均108. 9° ±5. 8,パ. 成長がみられた。また,閉鎖排列群と非閉鎖排列群. ターンCが平均110. 6° ±7. 1を示し,有意差は認め. の間で ANB と Convexity の値に有 意 差 が み ら れ. られなかった(図6) 。. た。上顎骨の発育が正常であると上顎の前方,側方 拡大を行う必要がなくなり,上顎側切歯欠損部のス. 考 察. ペースに犬歯を移動し閉鎖することが可能となった. 口唇裂・口蓋裂患者では一般的に上顎骨の発育抑. と思われる。 また,歯牙移動により顎裂部のスペースの閉鎖を. 制がみられ,その大きな原因として口蓋形成術およ 1). びそれによる瘢痕が挙げられる 。一方,二段階口 11). 蓋 形 成 術 は1950年 代 に Schweckendiek ,Slaugh-. 行うことは,顎裂部骨移植後の歯槽骨レベルの維持 において有利と考えられる。顎裂部への移植骨のリ. ― 47 ―.

(6) 柿本, 他:片側性唇顎口蓋裂患者の咬合形成. 392. 図6. 閉鎖排列群(pattern A, B)と非閉鎖排列(pattern C)の歯軸の比較. モデリング(移植骨梁の吸収と骨梁表面での骨添加). かかわらずスペースが閉鎖されずに非閉鎖排列に. は,その骨に対して持続的に加わる生理的な刺激が. なった5症例全てが11歳以降に顎裂部骨移植が行わ. あるときに起こるとされている14)。Bergland ら15)に. れていた(表1) 。それらの症例では,犬歯萌出時期. よれば,骨移植後の成功には小さいmechanical stress. 以降に顎裂部骨移植が行われたことにより十分な骨. と機能のある環境が必要で,歯槽骨を形成維持する. 架橋の形成が得られず,側切歯欠損部に犬歯を移動. 機能的要素は歯牙の接触と関連し,もし,顎裂部の. することができなかったものと考えられる。. 両側の歯牙が大きく離れているならば,移植骨は歯. 患側の上顎側切歯の欠損の治療法として,従来,. 槽レベルを維持できないと考えられている。した. 部分床義歯や固定性架橋義歯などの欠損部の補綴処. がって,移植骨に対する生理的な刺激がない状況,. 置が行われてきた。しかし,顎裂に隣接して萌出し. すなわち骨移植後に長期間にわたり歯牙の萌出や矯. ている歯の支持骨は非常に乏しく,特に顎裂側にお. 正的な移動などの処置がなされない場合には骨の生. いてはごく薄い一層の歯槽骨しか存在しない例がほ. 理的吸収が徐々に進行するものと思われる。しか. とんどで,中切歯は生理的動揺が大きいと言われて. し,その一方,骨移植時期が18歳以上の成人症例が. いる18)。つまり,顎裂に隣在する歯の咬合負担能力. 全体の1/3を占める施設もある16)。また,犬歯が完. はかなり低いと考えるべきである。したがって固定. 全に萌出する前に骨移植を行ったほうが歯槽骨の高. 性架橋義歯の設計では,支台歯の設計は,顎裂を挟. 15). の予後が良好であるとの報告 や,11歳未満の患者. んで2歯ずつを含めることが望ましく,隣在歯の切. に顎裂部骨移植を行うことにより,顎裂部の歯槽頂. 削や過重負担は避けられず,歯牙および歯周組織の. 17). の高さの予後が良好であるという報告 がある。今. 長期的予後を考える上で問題となる。また部分床義. 回の調査において,上下顎の発育が正常であるにも. 歯は,同じ欠損幅であっても健常人と比較して大型. ― 48 ―.

(7) 歯科学報. Vol.109,No.4(2009). で複雑になる19)。それに対し,矯正治療による空隙 閉鎖を行った場合,固定性架橋義歯に比べ歯周組織 が健康に保たれ,犬歯誘導等の咬合様式は歯周組織 の健康状態に関連がないという報告がある20)。ま た,補綴物の寿命を調査した研究によると,装着15 年後に機能していた固定性架橋義歯は65%程度で あったと示されている21)。歯牙の移植やインプラン トによる咬合形成は顎裂部骨移植の意義を拡大した が,適応について一 致 し た 見 解 は な く22)23),Chapasco24)は,インプラントに関しては成人症例に行 うのが望ましいとしており,Thilander ら25)は,成 長期にある患者に骨移植後インプラントを埋入する のは骨癒着を起こしたり,顎顔面の成長に伴いイン プラントが沈下するなどの上部構造装着時の審美的 問題から成長のピークが終わるまで遅らせるべきで あるとしている。また,成長を待ってインプラント を埋入する際には骨移植後の経時的な歯槽頂から頬 側の骨吸収が著明で26),再度の骨移植やインプラン ト植立のためのディストラクション(骨延長術) が必 要になるという問題点も考えられる。 以上のことより,患側の上顎切歯の欠損を伴う片 側性唇顎口蓋裂を有する患者の咬合形成において, 顎裂部の側切歯欠損部への犬歯の移動によるスペー スの閉鎖を行う事が最も望ましいと考えられる。顎 発育への影響が少ない二段階口蓋形成術の施行とそ の後行われる適切な時期の骨移植を行った結果,良 好な上顎骨の発育と歯槽弓が得られ,側切歯欠損部 を犬歯により閉鎖することが可能になり,補綴によ らず理想的な咬合関係を確立する事ができると考え られる。 文. 献. 1)林 勲,作田 守:矯正歯科における診断.宮崎 正編 集.口蓋裂─その基礎と臨床─.231∼258.医師薬出版, 東京,1982. 2)飯野光喜,幸地省子,森川秀広,他:永久歯咬合形成か らみた顎裂に対する骨移植の手術時期に関する検討.日口 蓋誌,19:22∼31,1994. 3)Bergland, O., Semb, G., Abyholm, F. E. : Elimination of the residual alveolar cleft by secondary bone grafting and subsequent orthodontic treatment. Cleft Palate J., 23:175∼205,1986. 4)幸地省子:顎裂部への新鮮自家腸骨海面骨細片移植─口 唇裂口蓋裂の永久歯 咬 合 形 成─.形 成 外 科,44:349∼ 358,2001. 5)泉 健次,小林正治,本間克彦,他:顎裂骨移植後の咬 合形成に関する臨床検討.日口蓋誌,27:58∼66,2002.. 393. 6)小野和宏,飯田明彦,今井信行,他:二段階口蓋手術法 を施行した片側性唇顎口蓋裂患児の永久歯列弓形態─一段 階法施行例および健常児との比較─.日口蓋誌,25:36∼ 44,2000. 7)小野和宏,越知佳奈子,森田修一,他:唇顎口蓋裂と唇 顎裂を有した一卵性双生児の顎発育に関する縦断的観察─ 二段階口蓋形成手術 法 の 影 響─.日 口 蓋 誌,27:339∼ 349,2002. 8)新井 透,石井一裕,森田修一,他:Hotz 床併用二段 階口蓋形成手術法が顎顔面成長発育に及ぼす影響につい て.日口蓋誌,27:307∼324,2002. 9)本橋佳子,内山健志:二段階口蓋形成術を施行した片側 口唇顎口蓋裂児における口蓋の成長発育に関する計測学的 研究,歯科学報,100,993∼1013,2000. 10)吉岡弘道:Zurich システムによる治療を行った唇顎口 蓋裂児の上顎歯槽弓および口蓋の成長発育に関する研究. 16:1∼30,1991. 11)Schweckendiek, H. : Zur Frage der Fr hund Sp toperation der angeborenen Lippen-Kiefer-Gaumenspalten. Z Laryng Rhinol Otol, 30:51∼56,1951. 12)Slaughter, W. B. and Pruzansky, S. : Therationale for velar closure as a primary procedure in the repair of cleft palatedefects. Plast Reconstr Surg, 13:341∼357, 1954. 13)Witzel, M. A., Salyer, K. E., Ross, R. B. : Delayed hard palate closure : The philosophy revisited. Cleft Palete J, 21:263∼269,1984. 14)高橋栄明:骨移植の病態生理,須田立雄,小澤英浩,高 橋栄明編集:骨の科学.223∼227,医歯薬出版,東京, 1985. 15)Bergland, O., Semb G. and Abyholm, F. E. : Elimination of the residual alveolar cleft by secondary bone grafting and subsequent orthodontic treatment. Cleft Palate J., 23:175∼205,1986. 16)濱田良樹,飯野光菖,近藤壽朗,他:二次的顎裂部骨移 植に関する臨床統計的観察.日口蓋誌,27:307∼324, 2002. 17)幸地省子,松井桂子,飯野光喜,他:顎裂への新鮮自家 腸骨海綿骨細片移植─垂直的な骨架橋の評価.日口外誌, 39:972∼983,1993. 18)大山喬史:口蓋裂患者における補綴とその経過観察⑵. 歯界展望,65⑵:381∼388,1985. 19)鈴木るり:片側性唇顎口蓋裂患者の補綴処置に関する研 究─連結範囲が咬合負担能力に及ぼす影響について─.口 病誌,56:121∼140,1989. 20)Nordquist G & McNeil W : Orthodontic vs. restrativw treatment of the congenitally absent lateral incisor-Long term peropdontal and pcclusal evaluation, J Periodontol, 46:139∼143,1975. 21)Glantz PO, Nilner K, Jeddersen MD : Quality of fixed prosthodontics after 15 years, Acta Odontol Scand, 51: 247∼252,1993. 22)飯野明彦,小野和宏,今井信行,他:歯の移植,歯科イ ンプラントを応用した顎裂部の咬合再建.日口蓋誌,26: 44∼54,2001. 23)Takahashi, T., Fukuda, M., Yamaguchi, T., et al : Use of endosseous implants for dental reconstruction of patients with grafted alveolar clefts. J. Oral Maxillofac. Surg., 55: 576∼583,1997. 24)Chapasco, M. : Discussion. in Use of endosseous implants for dental reconstrusion of patients with grafted alveolar clefts, J. Oral maxillofac. Surg., 55:584,1997.. ― 49 ―.

(8) 394. 柿本, 他:片側性唇顎口蓋裂患者の咬合形成. 25)Thilander : Osseointegrated implant in adolescent, An alternative in replacing missing teeth?. Europ J Orthod, 16:84∼95,1994. 26)Takahashi, T., Fukuda, M., Yamaguchi, T., et al : Place-. ment of endosseous implant into bone-grafted alveolar clefts : Assesment of bone bridge after autogenous particulate cancellous bone and marrow graft. Int. J. Oral Maxillofac. Implants, 14:86∼93,1999.. Dental occlusion after orthodontic treatment in unilateral cleft lip and palate patient ― Results of two-stage palatoplasty and alveolar bone graft ―. Aya KAKIMOTO1),Teruo SAKAMOTO1),Kenji SUEISHI1),Yukiko HORIE2) Kenichirou SUGA3),Youko NAKANO3),Kenji UCHIYAMA3) 1). Department of Orthodontics, Tokyo Dental Collage. 2). Devision of Orthodontics, Department of Clinical Oral Hearth Science, Tokyo Dental. Collage 3). Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Tokyo Dental Collage. Key words : Unilateral cleft lip and palate, Two-stage platoplasty, Bone-grafted alveolar clefts. A survey was performed to determine the occlusion on completion of orthodontic treatment in children with unilateral cleft lip and palate and missing lateral incisors who underwent two-stage palatoplasty and alveolar bone graft. Twenty-one patients (11 men and 10 women) with unilateral cleft lip and palate who underwent twostage palatoplasty were included. Occlusion was observed in intraoral photographs taken on completion of active treatment and maxillofacial morphology was analyzed by the conventional method using lateral cephalometry. The maxillary bone was well developed in patients who underwent both two-stage palatoplasty and alveolar bone graft. Examination of occlusion on completion of orthodontic treatment showed closure of the alveolar cleft and establishment of occlusion without use of a dental prosthesis in 9 out of 21 patients. In two-stage palatoplasty,invasive surgery is avoided in the anterior alveolar region during the period of rapid maxillary growth so that growth is not inhibited. In addition,excellent occlusion can be achieved by alveolar bone graft at the appropriate time after palatoplasty. (The Shikwa Gakuho,109:388∼394,2009). ― 50 ―.

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参照

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