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杉本利彦

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Academic year: 2022

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(1)静岡大学 博士論文. プロナーゼおよびSDS耐性の ホスフアターゼ活性因子の単離と性状の解析. 鐸周大軍圏雷. 1999年12月 大学院理工学研究科 環境科学専攻. 杉本利彦.

(2) 目次 1.要旨 2.略語 3.序 3・1・カエル卵成熟過程におけるリン酸化/脱リン酸反応 3・2・高分子量多機能性プロテアーゼ複合体(プロテアソーム)の リン酸化 3.3.研究目的. 4.材料と方法. 10. 4.1.実験動物. 10. 4.2.試薬類. 10. 4.3.培養液の組成. 11. 4.4.緩衝液の組成. 11. 4.5.ホスフアターゼ活性の測定法. 11. 4.6.ペプチダーゼ活性の測定法. 11. 4.7.卵母細胞の単離と/〃レ〃roでの培養. 11. 4・8・卵母細胞からの可溶性画分(サイトソル)の調製. 11. 4.9.卵巣からのプロナーゼ消化物の調製. 12. 4・10・DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィー. 13.

(3) 4・11・QAE一トヨパールカラムクロマトグラフィー. 13. 4・12・ゲルカラムクロマトグラフィー. 14. 4・13・グリセロール密度勾配超遠心分離. 14. 4・14・高速液体クロマトグラフィー. 14. 4・15・SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE). 15. 4・16・活性因子のホスフアターゼ活性に及ぼす各種試剤等の効果16 a)タンパク質ならびに核酸分解酵素による処理 b)各種化学試剤による処理 C)有機溶媒による処理. 4.17.アミノ酸分析 4.18.タンパク質の定量. 5.結果. 18. 5・1・アフリカツメガエル卵巣卵からのメガロホスフアターゼの 単離と性状の解析. 18. 5・1・1・メガロホスフアターゼの単離. 18. 5・1・2・メガロホスフアターゼの性状の解析. 20. 1)タンパク質ならびに核酸分解酵素処理の効果. 20. 2)変性剤(エタノールおよび尿素)の効果. 21. 3)各種試剤の効果. 21. 4)温度の効果. 22. 5・2・アフリカツメガエル卵巣卵プロテアーゼ消化物からの ホスフアターゼ活性因子の単離と性状の解析. ii. 23.

(4) 5・2.1.ホスフアターゼ活性因子の単離. 23. 5・2・2・ホスフアターゼ活性因子の性状の解析. 25. a)分子サイズ. 25. b)組成分析. 26. 1)紫外部吸収スペクトル. 26. 2)アミノ酸分析. 27. 3)脂質の分析. 28. 4)糖質の分析. 28. C)活性に及ぼす効果. 28. 1)SDS処理. 28. 2)タンパク質ならびに核酸分解酵素処理. 29. 3)pHの効果. 30. 4)試剤処理の効果. 31. 5)酸化剤処理. 32. 6)有機溶媒処理. 32. 7)Triton X−114の効果. 33. 5・3・ホスフアターゼ活性因子の生理的機能の探索. 34. 5.3.1.カエル卵成熟過程における関与. 34. 5.3.2.器官/組織特異性. 34. 5・3・3・20Sおよび26Sプロテアソームのペプチダーゼ活性に及ぼす効果. 35. 6.考察. 37. 6.1.メガロホスフアターゼの単離 6・2・ホスフアターゼ活性因子タイプ1およびタイプ2の単離 6・3・ホスフアターゼ活性因子(タイプ1およびタイプ2)の性状 iii.

(5) 6・4・メガロホスフアターゼと活性因子(タイプ1およびタイプ2) の活性本体の比較. 43. 6.5.アルカリ性ホスフアターゼとの比較. 45. 6.6.生理的機能の探索. 46. 6.7.総括. 48. 7.参考文献. 50. 8.謝辞. 62. lV.

(6) 1.要旨 リン酸化/脱リン酸の可逆的反応は細胞内の機能調節において根幹をなしている。 なかでも、細胞周期包期からM期への移行過程に対応するカエル卵成熟過程におい ては、Cdc2/サイクリンB一複合体としての卵成熟促進因子(MPF)そのものがリン酸 化/脱リン酸反応に依存して活性化されるとともに、高分子量多機能性プロテアーゼ 複合体 (プロテアソーム)の働きにより分解を受けることも知られている。しかし、キナー ゼの働きによるリン酸化反応は解析が非常に進んでいるものの、ホスフアターゼの 働きによる脱リン酸反応に関する生化学的な知見は必ずしも多くない。 我々は、既にアフリカツメガエル卵巣卵サイトソルに極めて巨大な分子複合体で あるホスフアターゼ(分子質量が少なくとも20・000kDaと概算され、巨大分子であ ることからメガロホスフアターゼと命名)を見出し、その性状の一部を明らかにして いた0本研究において、この知見を確証するとともに、メガロホスフアターゼの更 なる生化学的性状についてホスフアターゼ活性を指標として解析した結果、多くの 点で極めて異質なことが分かった0主な点は次の通りである。(1)タンパク質分解 酵素を作用させても活性は消失しなかった0しかし、核酸分解酵素を作用させると 活性の低下が見られた0(2)タンパク質の変性作用を持っている陰イオン性界面活 性剤(SDS)を5%濃度で処理しても活性は消失しなかった。(3)活性の至適pHは中性 で非リソソーム由来であり、いわゆるアルカリ性ホスフアターゼとは異なっていた。 しかし、研究をさらに掘り下げるためには、メガロホスフアターゼ分子が巨大であ ることなど異質なだけに直接研究の対象とすることは解析上多くの困難を伴った。 このことで、本研究の途次に、上記(1)に記したようにメガロホスフアターゼ活性は タンパク質分解酵素に耐性であることを見出していたので、卵巣そのものをタンパ ク質分解酵素のなかでも特異性の広いプロナーゼで処理し得られた消化物を対象と. 1.

(7) して解析した。その結果、プロナーゼ処理したもののホスフアターゼ活性は十分残 存していることが確認できたので、生じた活性因子を単離レ性状の一部を明らかに した。 プロナーゼ消化物からDEAE−セルロース、QAE−トヨ/トル、セフアロースCL− 6Bまたは−2Bと一連のカラムクロマトグラフィーおよびグリセロール密度勾配遠心 分離法を組み合わせることによってホスフアターゼ活性因子として2つのタイプ(タ イプ1とタイプ2)を単離した。各タイプの未変性条件下でのゲルカラムクロマトグ ラフィーでの挙動から、それぞれの分子質量を140kDaと20,000kDaと概算した。 分子サイズから、タイプ1はプロナーゼ処理した結果を反映していると考えられた が、タイプ2はプロナーゼ処理したにもかかわらずメガロホスフアターゼ同様いま なお巨大であった。なお、タイプ2はタイプ1と違って脂質や糖質も含み著しく巨 大分子となっておりミセル様構造を形成している可能性も示唆された。 両タイプを解析して明らかにした主な性状は次の通りである。 (1)活性染色法によるSDS−PAGEで求めた活性因子本体の分子サイズは、タイプ1 が140kDa、タイプ2が130kDaであった。なお、対応するバンドはタンパク質を染 色する色素やタンパク質のほかに核酸をも染色する銀でも染色されなかった。しか し、いずれのタイプもアミノ酸分析をした結果、アミノ酸が検出されたことからタ ンパク質を含むことには違いない。なお、アミノ酸としてシステインが検出されて いないが、あるとしてもSH基の修飾試薬NEMの処理で活性は阻害しなかったので、 システイン残基は活性に関与していないことが示唆された。(2)いずれもタンパク 質分解酵素で処理しても活性に影響を与えなかった。しかし、核酸分解酵素で処理 すると活性は低下した。活性本体にタンパク質よりもポリヌクレオチド様因子の関 与が示唆された。(3)タンパク質を変性させる各種の有機溶媒で処理してもいずれ も活性は消失しなかったが、フェノール処理だけは活性が低下した。(4)二価陽イ オンのキレート剤EDTAの処理で活性が阻害されたことから、活性に二価陽イオンの 関与が示唆された。(5)活性の至適PHは中性で、既知のアルカリ性ホスフアターゼ. 2.

(8) とは異なっていた。(6)アフリカツメガエルの卵巣以外の器官/組織(心臓、精巣は か)にも広く検出されたので、類似したホスフアターゼは普遍的に存在することが分 かった。(7)両タイプともプロテアソームのうち26S型のペプチダーゼ活性を著し く低下させた。 以上、本研究を通して、アフリカツメガエル卵巣卵をプロナーゼ処理したことで 単離したホスフアターゼ活性因子はSDSに耐性であるなど、生化学的に極めて異質 な性状を多数持っていることが明らかになったが、未だ化学的実体を特定できてい ない。本ホスフアターゼ活性因子にポリヌクレオチドを含む可能性もあるなど酵素 機能を持つ既知のRNA(リボザイム)に類似した酵素の発見に次ぐものともなり得る だけに、化学的実体の解明は急務な課題である。また、本研究で得られた知見は、 研究の最終的な目標であるカエル卵成熟機構の解明に新しい道を開くものと期待さ れる。引き続き、両タイプの実体そしてメガロホスフアターゼそのものの実体を明 らかにするとともに、カエル卵成熟の制御機構との関わりでの生理的な機能の探索 が重要な課題である。. 3.

(9) 2.略語 AMC‥7−amino4−methy.coumarine. ALP‥alkaJinephosphatase. AmS:ammOniumsuJfate ATP:adenosinetriphosphate bis:N・N■−methyJene−bis−aCry.amide. BSA:bovineserumalbumin CAMP:CyCJicAMP CBBG:CoomassiebrHiantblueG−250 CBBR‥CoomassiebriHjantblueR−250. DDW:distjHed anddeionizedwater DEAE‥diethyJaminoethyJ. EDTA‥ethyJenediamine−N,N,N・,N・−tetraaCeticacid. EtBr:ethidium bromide GV:germinaJvesicJe GVBD:germinaJvesiclebreakdown HEPES‥2−[4−(2−Hydroxyethy.)−1−PiperazynyJ]ethanesulfonicacid. ト1:inhibitoト1 J−2:inhjbitor−2. LLVY‥SuCCinyJ−L−Jeucy.−L−.euCyJ−L−Va.y.−L−tyrOSine−. 4−methyJcoumaryl−7−amide 2−ME‥2−merCaPtOethanoI. MES:2−mOrPhoJjnoethanesulfonicacid MJS‥maturationinducingsubstance. 4.

(10) MPF:M−Phase(maturation)promotingfactor 4−MU:4−methyJumbeHiferone 4−MUP‥4−methyIumbe..ifery.phosphate. NEM‥N−ethyJmaIeimide. PAGE‥POJyacryJamidege,e.ectrophoresis. PIk:POJoJike kinase PP:PrOteinphosphatase PPl:tyPe−1proteinphosphatase PP2A:tyPe−2proteinphosphatasecJassA PP2B:tyPe−2proteinphosphatasecJassB PP2C‥tyPe−2proteinphosphataseclassC. PTP:PrOteintyrosjnephosphatase QAE:quaternaryaminoethyl rPm:reVOJutionsperminute SDS:SOdiumdodecy.suJfate Tricine:Tris(hydroxymethy.)methyIglycine Tris:Trjs(hydroxymethyl)aminomethane.

(11) 3.序 3・1・カエル卵成熟過程におけるリン酸化/脱リン酸反応 可逆的リン酸化/脱リン酸反応は、生体内での種々の機能調節反応において極めて 重要であることは疑いない【1・4−6・8・9,11・15−23・26−32,34,35,37−40,42,44,4 7・50・51・53・54・56・57・59−66】0ここで、リン酸化反応に関与する酵素群は、基質 にリン酸基を付加するキナーゼ、およびリン酸化された基質からリン酸基を脱離す るホスフアターゼの2つに大別される0生体内における基質としてはタンパク質、 核酸、糖、脂質が知られている【5・11・17・40・53・63,65】。なかでもタンパク質を基 質とするホスフアターゼ(プロテインホスフアターゼ)に着目すると、リン酸化セリ ンおよびスレオニンを標的とするセリン′スレオニンホスフアターゼ、リン酸化チロ シンを標的とするチロシンホスフアターゼに分類される【4,63,65】(表1)。ここで、 セリン/スレオニンホスフアターゼ(PP)はこの酵素に対する阻害物質の感受性およ びイオンの要求性を基準にした場合、PPl、PP2A、PP2B、PP2Cおよびその他の ホスフアターゼと5群に分類される0チロシンホスフアターゼ(PTP)は細胞内の局在 性に従い細胞膜結合型と細胞質型の2つに分類される。なお、Cdc25などデュアル スペシフィックホスフアターゼはチロシンホスフアターゼの一種として分類される が、セリン/スレオニンホスフアターゼ活性も併せて保有している。 本研究の最終的な目標は「カエル卵成熟の制御機構の解明」にあるが、カエル卵 成熟の過程は細胞周期上毎期からM期への移行過程に対応し(図1および2)、卵成熟 誘起物質(MIS:maturationinducingsubstance)であるプロゲステロンが卵母細 胞表面に存在するリセプターに結合することから始まる【24,35】(図1)。引き続き、 細胞内CAMPレベルが低下したあと、一連の反応が進行しプロテインキナーゼ群 (CAK、Weel、miklなど)の働きによってM期促進因子(MPF)の構成サブユニット であるプロテインキナーゼそのもののCdc2キナーゼの分子上14番目のチロシン残 6.

(12) 基、15と161番目のスレオニン残基がリン酸化されるが、14番目のチロシン残基お よび15番目のスレオニン残基がCdc25の働きで脱リン醸されることにより、プロテ インキナーゼ活性を保有しているMPFが活性化される【24,31,35,651(図2)。ここ で、Cdc25そのものがPIxlをはじめとするPO.0一一ike−kinase(Plk)群のセリン/ス レオニンキナーゼによって促進的にリン酸化され、他方、セリン/スレオニンホス フアターゼの一種プロテインホスフアターゼ(PP2A)によって抑制的に脱リン酸され る【30・31・6510このようにキナ一骨ホスフアターゼに注目しただけでも重要な反 応が多数見られる。 一方、アルカリ性ホスフアターゼ【15,19,21・27・29・34,42,47,54,62,64,661は 至適PHをアルカリ性街域に持ち、生物学の研究にマーカー酵素として用いられてき た0例えば、アフリカツメガエルの充分に成長した卵母細胞の微絨毛における発現 【341やマウス発生過程における発現様式の変化【54,621、始原生殖細胞における発 現マーカー的役割【27,291や、抗体を標識する際に用いる免疫染色法など極めて多 くの点で有用である0しかし、生理的な役割については不明である。 現在、ホスフアターゼをカエル卵成熟制御機構の解析との関わりで考えたとき、 プロテインホスフアターゼのはかにホスフアチジルイノシトールホスフアターゼ 【53】などホスフアターゼの生化学的および生理学的な機能を解析することの重要性 が著しく増大している0しかし、今日までホスフアターゼを対象とした生化学的な 研究はキナーゼほど必ずしも解析が充分行われていない。. 3・2・高分子量多機能性プロテアーゼ複合体 (プロテアソーム)のリン酸化 カエル卵成熟過程において、MPF活性の低下が見られるが、このことはCdc2キ ナーゼとサイクリンBの複合体であるMPFのうちサイクリンBがユビキチン化され、 それが高分子量多機能性プロテアーゼ複合体(プロテアソーム)によって分解される. 7.

(13) ことによっている。また、サイクリンBのユビキチン化される過程においてもサイク ロソームのサブユニットがリン酸化された状態に依存している【12,25,44,46,55, 58,611。ニホンヒキガエルの系で、プロテアソーム自身は当初リン酸化されやすい が、卵成熟が進行するにともないリン酸化を受けにくくなる【391。このようにカエ ル卵成熟の制御機構を解明するためには、プロテアソームの活性変動も考慮に入れ た研究の方向が必要である。本研究では、外山らとの共同研究において、プロテア ソームのうち26S型を構成するサブユニットそのもの(分子質量125kDa)がリン酸化 されるとともに26Sプロテアソームそのものの活性が変動することを明らかにして いる。今回、プロテアーゼおよびSDSに耐性のホスフアターゼ活性因子そのものが、 26Sプロテアソーム活性を著しく阻害することを見出した。. 3.3.研究目的 本研究の最終的な目的は、「カエル卵成熟の制御機構を解明すること」にある。 この実験系は、細胞周期の制御機構を解明するうえでの細胞生物学的モデルである ことにとどまらず、発生生物学的・分子生物学的・生化学的視点からも非常に重要 な研究対象である。この目的のためには、生体機能調節において極めて重要な可逆 的リン酸化反応、つまりリン酸化/脱リン酸に関わる酵素としてのキナーゼとホス フアターゼに注目して解析する必要がある。 ホスフアターゼそのものは酵素である以上、タンパク質に一般的な性状として不 安定で失活しやすい。このために、ホスフアターゼに限らず単離精製にあたっては、 活性が低下ないしは失活しないように温度、PH、イオン強度などに注意を払った実 験計画を立てて研究を進めた。 アフリカツメガエル卵巣卵をそのまま超遠心分離して得た上清画分を酵素源とし、 てゲル漉過で分離した。蛍光基質4−methylumbeHiferyJphosphate(4−MUP)の 加水分解活性を指標にして測定したところ、素通り画分に極めて巨大な分子サイズ のホスフアターゼ活性成分(メガロホスフアターゼ)が回収され、その性状の一部を 8.

(14) 明らかにした【561。見出したホスフアターゼは、極めて巨大な分子量を有する点で 従来まで知られているホスフアターゼ【1,4−6,8,9,11,15−23,26−32,34,35,37− 40,42,44,47,50,51,53,54,56,57,59−66】とは次のような点で全く異なっていた。 1)高濃度のイオン性界面活性剤(SDS)で処理しても活性が低下しない。 2)タンパク質分解酵素に対しても活性は低下しない。 など、従来の酵素と比べたとき生化学的に極めて特異な性状を持っていた。これら の知見を踏まえて、SDS存在下での特異的なホスフアターゼの触媒活性の測定法、 卵巣そのもののタンパク質分解酵素処理を採用した単離法、SDS−PAGE後のゲル上 に活性を持ったバンドの検出法を確立し、本酵素の活性因子の性状の一部を明らか にした。本論文では、アフリカツメガエル卵巣卵をそのまま超遠心分離して得た上 浦画分を酵素源として単離した酵素(メガロホスフアターゼ)と卵巣をプロテアーゼ で処理したあと単離したタイプ1とタイプ2に関する研究をそれぞれ分けてまとめ た。. 9.

(15) 4.材料と方法 4.1.実験動物 アフリカツメガエル(鵜〃叩〟5/ae再5)は、城北生物教材株式会社(静岡市)あるい はカトーSカガク株式会社(東京都)から随時購入した。ニホンヒキガエル(β〟わ ノa卯〃/C〟S)は大内一夫氏(埼玉県三郷市)より購入した。. 4.2.試薬類 実験に用いた試薬はそれぞれカッコ日内の会社より購入し、断りのある場合以外 は特級品を用いた。 2−プロパノール,アセトニトリル,オカダ酸,バナジン酸,硫酸アンモニウム,N− ethyJmaleimide(NEM)[和光純薬工業1,Tris(hydroxymethyl)aminomethane (Trjs),SDS,TritonX−100【ナカライテスク】,4−methylumbeHiferyl Phosphate(4−MUP),4−methylumbeHiferone(4−MU),aCryJamjde,bis, ZnSO4,CBBG,CBBR,ブリジー35,tryPSin,lysyrendopeptidase,thermoJysin, PrOteinaseK,DNaseI,RNaseAlSigma],NucleasePl【ヤマサ1,. Chymotrypsinl長瀬産業】,MES,HEPES,Tricinel同仁化学研究所】,TritonX− 114lAldrich],コラゲナーゼS−1【新田ゼラチン】,プロナーゼEl科研化学株式会社 ],DEAE−セルロース(DE52),CM−セルロース(CM52),P−セルロース(Pll) lWhatmann],QAE−トヨパール,TSK−ゲルフェニルー5PW【東ソー】,セフアロース CL−2BおよびCL−6B,フェニルセフアロースCL−6BlPharmaciaBjotech],2D銀 染色試薬Ⅱおよび脂質染色用ズダンプラック染色試薬「第一」【第一化学薬品】. 10.

(16) 4.3.培養液の組成 用いた培養液の組成は次の通りである。 培養液A:116・36mMNaCr/1・34mMKCr/6・78mMCa(NO3)2/1.66mMMgSO4/ 8・42mMTris−HCJ(PH7.4) 培養液B‥85mMNaCl/1・5mMKCr/0・5mMCaCJ2/0.6mMMgCl2/ 5・OmMTris−HCJ(PH7.6). 4.4.緩衝液の組成 用いた緩衝液の組成は次の通りである。 MT緩衝液:10mM2−ME/50mMTris−HCl(PH7.6) MHT緩衝液:50mM MES/50mM HEPES/50mMTricine (各PHはNaOHを滴下して調整した). 4・5・ホスフアターゼ活性の測定法 ホスフアターゼ活性はFernleyとWaJkerの方法【15]の使用緩衝液(ammediol)お よびpH(9・72)を以下のように改変して測定した。90〟lの基質溶液(11〝M4− MUP/5・6mM2−ME/56mMTris−HCJ,PH7.0)に10LLlの試料を加え37℃で反応さ せた01時間後、反応液中に100LLlの10%SDSと2mJの100mMTris−HCJ(PH 8・0)を加えて反応を停止させた。基質4−MUPが水解され生成した4−MUの蛍光強度 を蛍光分光光度計(日立,F−3000)により励起波長365nm、蛍光波長454nmで測 定しホスフアターゼ活性値とした。. 4.6.ペプチダーゼ活性の測定法 10LLJの試料に90LLlの基質溶液(11LLM LLVY,110mMTris−HCl,PH7.4)を. 11.

(17) 加え37℃で保温した010分後、100LL.の10%SDSと2mlの100mMTris−HCl (PH9・0)を加えて反応を停止させた0基質が水解され生成したAMCの蛍光強度を蛍 光分光光度計により励起波長360nm、蛍光波長460nmで測定しペプチダーゼ活性 値とした。. 4・7・卵母細胞の単離と血両roでの培養 アフリカツメガエル雌成体を断頭し、充分に放血した後摘出した卵巣を培養液A で十分洗浄した0通常、卵巣(パック容積として25mりをリングピンセットで断片化 したあと、蓋付きポリエチレン製スピッツ(50mト容量)内に移し培養液Aを加えて 50mlとした0そのあとコラゲナーゼS−125mgを加えて0・05%溶液とし、蓋をし て室温で振塗した0約2時間後、遊離した相当数の卵母細胞を得た時点で、一定量 の培養液Aで数回洗ってコラゲナーゼとともに卵径の小さい卵母細胞群を除去した。. 4・8・卵母細胞からの可溶性画分(サイトソル)の調製 単離した卵母細胞20両(パック容積)をローター50・3丁場遠沈管(5m惰量)内に集 めて、4℃下、5,000rpmで10分間遠心分離(Beckman,L8−70Mもしくは Optima−L)し余分な外液を除去したo引き続き、4℃下で、105,000xgで60分間 超遠心分離(ローター50・3Ti)を行って、最上層に浮遊している脂質層と、沈法との 間にある黄色気味の透明な液層を分取した0液層をパスツールピペットでエッペン ドルフチューブ(1・5m惰量)内に移したあと、4℃下、10,000rpmで10分間の遠 心分離(TOⅥYMに−150)を再度行い、脂質層と沈漆との間の可溶性画分を回収した。 可溶性画分(サイトソル)は、そのまま実験に用いるか、分注したあと−85℃で凍結 保存し用時解凍して用いた。. 12.

(18) 4・9・卵巣からのプロナーゼ処理消化物の調製 アフリカツメガエル雌成体から摘出した卵巣を、培養液Aで十分洗浄したあとリ ングピンセットで断片化し、MT緩衝液に置き換えて繰り返し洗浄した。その後、卵 巣断片(パック容積)あたり3倍容のMT緩衝液を加えテフロンペッスル付きPotter− EJvehjem型ホモジナイザー(井内盛栄堂,50ml容量)を用いて4℃下でホモジナイ ズした。ホモジネートにプロナーゼE(最終濃度5mg/mJ)を直接加え、室温で振塗 し処理した。16時間後、4℃下、105,000xgで60分間超遠心分離(Beckman,L8− 70MもしくはOptima−L;ローター70Ti)し、上清画分を回収しプロナーゼ処理消 化物とした。. 4・10・DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィー プロナーゼ処理消化物をMT緩衝液に対し充分に透析したあと、DEAE−セルロース カラム(2cm2X5cm=10mf)に加え、同じ緩衝液100mlで非吸着画分を除いた。吸 着画分は、順次0・07M,0・20M,そして0・50MのNaClを含むそれぞれ50mlのMT緩 衝液で溶出した。全ての操作は4℃下で行い、流速は40mI/cm2・hrで1管当たり 5mlで分画した。. 4・11・QAE−トヨパールカラムクロマトグラフィー DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーによって回収した酵素活性画分は、 MT緩衝液に対し充分に透析した後、QAE−トヨパールカラム(2cm2X5cm=10mJ)に 加え100両の同じ緩衝液で非吸着画分を除いた。吸着画分は、順次0.10M,0.30M, そして0・50MのNaC憧含むそれぞれ50mJのMT緩衝液で溶出した。全ての操作は 4℃下で行い、流速は40mJ/cm2・hrで1管当たり5mlで分画した。. 13.

(19) 4・12・ゲルカラムクロマトグラフィー QAE−トヨパールカラムクロマトグラフィーによって回収した酵素活性画分は、そ のまま凍結乾燥(装置:Taitec・VD−80型)LDDWで溶解して2m.とした。試料は、 0・3MNaCIを含むMT緩衝液で平衡化したセフアロースCL−2B(0.78cm2X64 cm=50mJ)もしくはセフアロースCL−6B(1・0cm2X50cm=50m.)カラムに加え、. 同じ緩衝液で溶離した0全ての操作は4℃下で行い、流速10m./cm2・hrで1管当 たり1mlで分画した。. 4・13・グリセロール密度勾配超遠心分離 ゲルカラムクロマトグラフィーによって回収した酵素活性画分3m−を、予めグラ ジエントマスター(東和科学社・106−200B型)を用いてニトロセルロース製遠沈管 (12mト容量)内に作製したグー」セロール密度勾配層(5−35%)の最上部に積層し、4 ℃下、27・000rpmで18時間超遠心分離(Beckman,Optima−L;ローター SW41Ti)した0遠心分離後はautomatic.iquidchargerA.C−2L(東陽科学社)を 用いて上部から500〟ずつ分画・分取した。. 4・14・高速液体クロマトグラフィー 部分精製した酵素試料は等量の2M硫酸アンモニウムと混合したあと、シリンジ フィルター(Advantec,直径0・35〟m)で濾過し、1M硫酸アンモニウム/50mM HEPES−NaOH(PH7・6)で平衡化したTSKゲルフェニルー5PWRPカラム(0.14 cm2X7cm=1mJ)に加えた0同じ緩衝液から硫酸アンモニウムのない50mM HEPES−NaOH(PH7・6)まで計5m.での硫酸アンモニウム濃度を直線的に低下させ る勾配法で展開した0次に50mMHEPES−NaOH(PH7・6)から50%2−プロパノール を含む50mMHEPES−NaOH(PH7・6)まで計12・5m腔の直線的濃度勾配法で溶出し た0全ての操作は室温下で行い、流速は0・5m仙nで1管当たり0・5m■で分画した。 14.

(20) 4・15・SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS−PAGE) 精製試料の純度は、試料に2−MEとSDSをそれぞれ1%になるように加えて5分間煮 沸・溶解し、SDS存在下のゲル電気泳動をLaemm.iの方法【33]に従い、2連式ミニ スラブゲル(9cmx9cm)電気泳動装置(アト,AE−6450)を用いて検定した。 アクリルアミド溶液(30%アクリルアミド・0・8%bis)から、濃縮ゲルはアクリル アミド濃度3・9%、分離ゲルはアクリルアミド濃度6%を作製した0泳動は定電流(ゲ ル1枚当たり濃縮ゲル内は12mA・分離ゲル内は18mA)下で行った。泳動後のゲル は0・1%Coomassiebr日日antb.ueR−250(CBBR)−40%メタノールー10%酢酸溶 液で染色、20%メタノールー10%酢酸溶液で脱染色(色素染色法)か、2D銀染色試薬 Ⅱ「第一」による銀染色(銀染色法)した。 他方、試料をSDS−PAGEした後のゲル上にホスフアターゼ活性をもったバンドを 検出する場合(活性染色法)は、試料を上記のように加熱溶解せずにそのまま泳動し た0泳動後のゲルはDDWで一度すすいだあと、ポリエチレン製ラップ上に移してゲ ル1枚当たり2mJの基質溶液(1mM4−MUP・5・6mM2−ME,56mMTris−HCJ,PH 7・0)を積層し、37℃で静置した01時間後、暗所下トランスイルミネ一夕ー(フナコ シ・TM−20)で蛍光の有無を検出し、ポラロイドカメラ(ポラロイド社)で撮影保存し. 活性染色法を行ったあとのゲルから酵素活性因子の回収にあたって、該当するバ ンドを片刃カミソリ(洗浄済み)で切り出し細片化後、蓋付きガラス製三角フラスコ (50mト容量)内に移した0ここに10倍容のアセトニトリルを加え室温で振塗した。 16時間後抽出液を分取しアセトニトリルを減圧下に留去し、残留溶液をアミノ酸分 析用の試料等に供した。. 15.

(21) 4・16・活性因子のホスフアターゼ活性に及ぼす 各種試剤等の効果 a)タンパク質ならびに核酸分解酵素による処理 30〟lの試料に10〟Jの100mMTris−HC.(PH8・0)と10〟一のタンパク質ないし. は核酸分解酵素溶液(100mMTris−HC.・PH8・0,に溶解)を加え、室温で処理した。 16時間後必要な分析に供した。 b)各種化学試剤による処理 25〟lの試料に25〟困ヒ学試剤を加え、室温で処理した01時間後、必要な分析 に供した。. (i)水溶性の有機溶媒による処理‥25〟■の試料に有機溶媒を等量加え、室温で処理 した01時間後、必要な分析に供した。 (ii)2相性の有機溶媒による処理‥25〟−の試料に水と混和しない有機溶媒を等量加 え、室温で処理した01時間後、5・000rpmで5分間遠心分離rOMY,MC−150)した 後、水屑および有機層の二層を分画しそれぞれを回収して必要な分析に供した。. 4・17・アミノ酸分析 試料を4℃下DDWに対し充分透析を行った後、硬質ガラス製試験管(18mmx180 mm)内に移し、最終濃度6Nになるように濃HC.($U光純薬工業・アミノ酸分析用)を 一定量加えた0次に減圧下に封管し、110℃で加水分解を行った048時間後開封し た試料は凍結乾燥し、100〟■の0・02NHC■を加えて、シリンジフィルター (Advantec・直径0・35州こ通したあとのろ液の一部を、自動アミノ酸分析装置( 日立、L8500A)でアミノ酸を分析した0なお、標準アミノ酸として生体試料用アミ ノ酸(和光純薬工業)を用いた。. 16.

(22) 4・18・タンパク質の定量 タンパク質量はCoomassiebrjHiantbJueG−250を用いて、595nmでの吸光 度を測定するBradfordの方法(CBB法)【31で測定するほかに280nmでの吸光度から 換算した0いずれもウシ血清アルブミン(Elmg仙=0・66)を標準タンパク質とし、分 光光度計(日立・∪−3210)を用いて測定した。. 17.

(23) 5.結果 5・1■アフリカツメガエル卵巣卵からのメガロホスフア ターゼの単離と性状の解析. 5・1・1・メガロホスフアターゼの単離 アフリカツメガエル卵巣卵サイトソルを酵素源としてセフアロースCL2Bゲルカ ラムクロマトグラフィーでの素通り画分に回収したホスフアターゼ(メガロホスフア ターゼと命名した)の単離法は、既報の方法に従った【5610本研究において単離法 を再検討した結果、当初溶離液にメガロホスフアターゼの安定化剤としてトレハ ロース【43】を添加していたが、代わりに巨大分子複合体であることから活性が消失 することなく狭雑成分を解離・除去する目的で0・3MVaC権力ロえる方法を採用した。 卵巣卵サイトソルを同じゲルカラムクロマトグラフィーで分画した結果、顕著なホ スフアターゼ活性はやはり素通り画分(Vo)に回収した(図3)。このことから、メガロ ホスフアターゼはイオン強度を上げた条件であっても巨大分子として挙動すること. ゲルカラムクロマトグラフィーで回収したメガロホスフアターゼ活性画分は白濁 を呈していたが、同じクロマトグラフィーを繰り返しても白濁は除去できなかった 【5610白濁はベジクル様−ミセル様構造に由来している可能性が示唆された。メガ ロホスフアターゼの化学的実体を明らかにするうえで清澄化する条件を見出すため に、メガロホスフアターゼ源に非イオン性界面活性剤であるブリジー35および TritonX−100、陰イオン性界面活性剤としてSDSを加えて4−MUP水解活性に及ぼ す効果を調べた(表2)。 活性は対照と比べるとブリジー35は16%ほど低下したものの、TritonX−100は 18.

(24) むしろ26%上昇した0意外だったことに、タンパク質の変性効果が非常に高いSDS を高濃度(1%)作用させても活性は消失することなく、むしろ24%ほど上昇した。以 上、メガロホスフアターゼをTritonX−100やSDSで処理しても活性は消失するこ となく、白濁した溶液が清澄溶液として回収されることが分かった。 検討した界面活性剤のうちSDSを取り上げて、4−MUP水解活性に及ぼす効果を調 べた0卵巣卵サイトソルのゲルカラムクロマトグラフィーで後半の画分に回収した ホスフアターゼ(低分子型ホスフアターゼと命名)(図3A−No・40以降)とメガロホス フアターゼを対象とし比較した(図4)0低分子型ホスフアターゼの活性はSDS濃度 0・1%で全く消失したが、メガロホスフアターゼの活性はSDS濃度0.1%で消失しな かったのみならず、1%に上げても80%残存し、20%ほど低下したに過ぎなかった。 このことから、低分子型ホスフアターゼの失活は、いわゆる通常の酵素タンパク質 に普遍的に見られる性状であるが、メガロホスフアターゼに関してはSDSに対する 異常なまでの安定性は通常の酵素とは非常に異なっていた。このことを確証するた めに新たに調製したサイトソルを粗酵素源としてセフアロースCL−2Bカラムで分画 し、各画分の4−MUP水解活性をそのまま測定したほかに、0・5%SDSを添加して測定 し比較した(図5)o SDSなしの活性は、いわゆるメガロホスフアターゼと低分子型ホ スフアターゼとに見られ、図3での結果と類似していた。しかしSDSを添加すると、 低分子型ホスフアターゼに由来する活性は全く消失したのに対し、メガロホスフア ターゼに由来する活性は消失せずに残存していた0つまり、低分子型ホスフアター ゼの活性は0・5%SDSで容易に失活するのに対し、メガロホスフアターゼの活性は 0・5%SDSに対して消失することなく回収した0以上、0・5%SDS存在下で4−MUP水 解活性を測定することにより、メガロホスフアターゼを特異的に検出することが可 能となった。 メガロホスフアターゼがSDSに対し極めて安定であることが確認できたので、図5 で分画した各画分を加熱処理しないでSDS−PAGE後活性染色法を行った(図6)。メ ガロホスフアターゼおよび低分子型ホスフアターゼを含むいずれの画分にも色素で 19.

(25) 染色されたバンドが多数検出され、タンパク質成分が混在していた。他方、活性染 色法での結果から、メガロホスフアターゼの回収された嶺域のみに蛍光活性が検出 され、図5でSDS存在下に求めたホスフアターゼ活性を含む画分に対応していた。加 熱処理した標準タンパク質を同時に泳動したときの移動度から換算して求めた概算 分子質量は約130kDaであった(図6B)0なお、低分子型ホスフアターゼが溶出され た画分には蛍光活性は全く検出されなかった0以上、ゲル上での活性染色像は溶液 で蛍光活性を測定した結果を反映していたので、活性染色法はメガロホスフアター ゼを検出するうえで有用な分析法の1つとして確立した。. 5・1・2・メガロホスフアターゼの性状の解析 1)タンパク質ならびに核酸分解酵素処理の効果 メガロホスフアターゼの化学的実体を明らかにする手がかりを得るために、各種 タンパク質および核酸分解酵素で処理したメガロホスフアターゼの4−MUP水解活性 に及ぼす効果について検討した(表3)。 メガロホスフアターゼ活性は、塩基性アミノ酸のカルポキシル基側を特異的に切 断するトリプシン【7】処理では92%、グルタミン酸残基のカルポキシル基側を切断 するV8プロテアーゼ【141処理では72%、タンパク質分解酵素のなかでも基質特異 性の広いプロナーゼ(プロナーゼE)【71処理では81%と、いずれも8−28%ほど活性は 低下したものの著しく消失しなかった0他方、核酸分解酵素としてDNAを非特異的 に切断するDNaseJl7]を作用させた場合の活性は22%、RNAのピリミジン残基の隣 接を切断するRNaseAl7]を作用させた場合には43%に低下した。 以上、メガロホスフアターゼをタンパク質分解酵素で処理しても活性にはほとん ど影響を与えなかった0しかし、核酸分解酵素で処理した場合には、活性が低下し たので、活性に核酸の関与が示唆され非常に興味を与えた。. 20.

(26) 2)変性剤(エタノールおよび尿素)の効果 メガロホスフアターゼはSDSに耐性なうえタンパク質分解酵素に対しても抵抗性 を持つことが分かったが、別の変性剤として有機溶媒であるエタノールや尿素のメ ガロホスフアターゼ由来の4−MUP水解活性に及ぼす効果について検討した(図7)。 エタノールに関しては、濃度を10%まで上げても活性は全く変化しなかった。さ らに上げて50%にしても活性が20%はど低下したもののエタノールに対して著しく 安定なことが分かった。他方、尿素を作用させたときには、1M濃度で活性が85%に まで低下した。濃度をさらに4Mまで上げると、活性が全く消失することが分かった。 以上の結果より、メガロホスフアターゼは新たにエタノールを作用させても変性さ れにくく安定な構造を保持しているとはいえ、尿素に対して不安定で失活すること が分かった。. 3)各種試剤の効果 メガロホスフアターゼ活性に及ぼす効果をさらに亜鉛イオン、2価陽イオンのキ レート剤であるEDTAl41】、タンパク質中のチオール基の修飾剤であるN−エチルマ レイミド(NEM)【41】、ならびにホスフアターゼの一般的阻害剤としてバナジン酸 【231を用いて調べた(表4)。ここではこれら試剤の効果を、プロナーゼで処理したメ ガロホスフアターゼの活性も指標として調べ対比した。メガロホスフアターゼの活 性はそれぞれ亜鉛イオンで13%、EDTA処理により56%、NEMでは73%、バナジン 酸では96%阻害した。ここで、メガロホスフアターゼをプロナーゼで処理しても活 性は消失しないが、亜鉛イオンを加えても9%とほとんど影響ないが、EDTA処理で は31%、バナジン酸では73%と阻害が見られた。また、NEMで処理しても活性の著 しい低下は見られなかった(表4)。 以上、いずれを酵素源にしても活性がバナジン酸によって阻害したのでホスフア ターゼ様活性を有していることには違いなかった。NEM処理での結果から、メガロ. 21.

(27) ホスフアターゼの活性中心にSH基(システイン残基)の関与が示唆されたものの、プ ロナーゼ処理して得た因子内にはSH基は活性に関与していないことが分かった。 EDTAに対する反応性は多少違いが見られた。メガロホスフアターゼそのものが保有 している活性は、プロナーゼ処理したあとに残存しているホスフアターゼ活性を示 す分子形状や、構成成分の違いを反映した結果によっていることが示唆された。. 4)温度の効果 メガロホスフアターゼの活性を指標にして安定性を温度との関係で調べた。20℃ を基準にしたとき50℃まで徐々に上昇して2倍になった。しかし、55℃に上げると むしろ20℃での値よりも低下し、60℃では活性が完全に消失した(図8)。このよう にメガロホスフアターゼの温度による活性化は通常の酵素より緩やかであったが、 このことは内在性の阻害因子が温度依存的に遊離して、活性を阻害した結果である とも考えられる。ここで、60℃での処理により低下した活性が温度を元に戻したと き回復するか否かについて検討した(表5)。静置した30分後には13%しか回復しな かったが、24時間後には89%とほぼ完全に回復した。この結果から、消失した活性 は温度を上げても不可逆的に変性したのでなく可逆的に構造が回復することが示唆 された。. 22.

(28) 5・2・アフリカツメガエル卵巣卵プロテアーゼ消化物か らのホスフアターゼ活性因子の単離と性状の解析 我々が、アフリカツメガエル卵巣卵サイトソルに見出したメガロホスフアターゼ の生化学的に特異な性状を明らかにすることが本研究の目的である。しかし、述べ てきたように本酵素が巨大分子複合体でミセル様構造を保持している可能性などの ために精製純度を特定するなど適切な単離法等が兄い出せなかった。加えて、単離・ 回収できる量がわずかであることも、研究を進めていくうえで支障をきたすと考え た。 前項に記したように、本研究でメガロホスフアターゼがSDSのみならずタンパク 質分解酵素に対して抵抗性があるということが明らかになったので、この知見に依 拠してホスフアターゼ活性を持った因子を探索する方向から研究を進めた。具体的 には、アフリカツメガエル卵巣そのものの均質液に、タンパク質分解酵素のうち幅 広い基質特異性を持っているプロナーゼEを直接加えて処理した後に生じたホスフア ターゼ活性因子を単離し、性状を明らかにした。. 5・2■1・ホスフアターゼ活性因子の単離 アフリカツメガエル卵巣の均質液をプロナーゼEで処理し透析後に回収した画分を 粗ホスフアターゼ活性因子として、4−MUP水解活性に及ぼすSDS濃度の効果を検討 した(図9)。対照の試料として、プロナーゼ未処理の卵巣均質液を超遠心分離して得 た上清を酵素源としたとき、はじめの活性を100%とLSDSを添加していくと、活 性はSDS濃度0・125%で60%、0.25%で50%、0.5%で45%ほどまでに低下した。し かし、濃度をそれ以上5%まで上げていっても活性は低下せず一定であった。それに 対し、プロナーゼ消化物を酵素源とした場合、SDSがなくても活性が見られた。い ま、SDSを加えたとき、0・25%でほぼ100%、0.5%でほぼ85%、あと5%まで上げて も変化することはなかった。これらのことから、卵巣の均質液を直接プロナーゼ処 23.

(29) 理してもSDSに耐性な活性は予期していたように残存することが確認できた。なお、 プロナーゼで処理したことによりはじめ混在していた、SDSで変性を受けやすい低 分子型ホスフアターゼは分解されたことが活性のプロフィルから明らかである。以 上の結果、卵巣均質液をプロナーゼで処理しても残存しているホスフアターゼ活性 は、メガロホスフアターゼそのものがタンパク質分解酵素に対して安定であること に対応していた。これら基礎的な知見が得られたので、卵巣卵プロナーゼ消化物を 粗画分としてホスフアターゼ活性因子を単離、その性状を解析した(図10および11)。 粗画分をプロナーゼで消化した成分等をイオン強度の低いMT緩衝液に対して透析 して除いたあとの画分を、DEAE−セルロースカラムに加えると活性因子が吸着され た0吸着画分は、0・07Mおよび0・20MNaC憧含む緩衝液を加えて回収した。各画分 を別々にプールしてタイプ1とタイプ2の単離を進めた。つまり、DEAE−セルロー スカラムクロマトグラフィーで0・07MNaClを含む緩衝液で溶出した活性画分をピー ク1としてプールし、QAE−トヨ/トルおよびセフアロースCL−6Bのカラムクロマト グラフィーを行って単離し「タイプ1」標品とした。なお、純度が不十分な場合に はグリセロール密度勾配超遠心分離法を組み合わせた。 他方、DEAE−セルロースカラムクロマトグラフィーで0.20MNaCIを含む緩衝液 で溶出した活性画分をピーク2としてプールして、QAE−トヨ/トルおよびセフア ロースCL2Bのカラムクロマトグラフィーを行って単離し、「タイプ2」標品とし た。 一連のカラムクロマトグラフィーによる各段階におけるタイプ1およびタイプ2 に相応するホスフアターゼ活性画分の単離した結果についてまとめた(表6)。ここ では、各試料を波長280nmでの吸光度を求めてタンパク質量を定量し試みに換算し た0タイプ1は723倍に精製され回収率は36%であったのに対し、タイプ2の精製 度は39倍と低かったが、回収率は47%であった。なお、単離各段階における試料を 活性染色法のためのSDS−PAGEを行った際に、銀染色法で純度を検定した(図12)。 以上の結果、最終的にタイプ1そしてタイプ2いずれも活性染色法によって特定の 24.

(30) 位置にのみ活性が検出されたことからそれぞれを確認できた。ここで、非常に不思 議なことに活性染色を行ったゲルを銀染色した場合に活性の検出されたバンドその ものが銀で染色されないことが分かった。なお、活性のバンド以外にも銀で染色さ れたバンドは見られなかった0ここで得られた知見も、ホスフアターゼ活性因子の 更なる異質的な性状を反映していることが分かった。 なお、タイプ1とタイプ2それぞれを単離するにあたって、タイプ2の単離は比 較的容易であるが、タイプ1の単離については更なる検討を必要とした。具体的に は、フェニルー5PWカラムに供するHPLC法の導入を検討した(図13)。つまり、タイ プ1は展開液として後で留去が可能と言うこともあって、2−プロ/リールを採用し 濃度として20−30%の領域に活性が回収された0この画分の純度をSDS−PAGEで検 定した結果(データ未掲載)、精製の進んだことが確認でき大変有用な方法として確 立したが、今回はタイプ1の単離にあたっては採用しなかった。 他方、タイプ1およびタイプ2の分析においてSDS−PAGEによる活性染色法の有 用性については既に述べたが、ここでは純度の高い精製晶を分析用として回収する 目的のために本法の有用性を検討した0具体的には、泳動後のゲルから活性因子に 相当するバンドを効率的に回収することを検討した(表7)。活性画分を活性染色法に よる条件でSDS−PAGEを行った後、ゲル上に活性を確認したバンドに対応するゲル を切り出し100%アセトニトリルを加えて抽出液を回収した。 検討した結果、タイプ1およびタイプ2についてそれぞれ活性は84%および97% といった高収率でゲルから回収された0本法は極めて高い純度の試料を必要とする 際には有用な方法である。. 5・2・2・ホスフアターゼ活性因子の性状の解析 a)分子サイズ 25.

(31) タイプ1とタイプ2のゲルカラムクロマトグラフィーを未変性条件下で実施した 場合、それぞれの挙動から(図10Cおよび11C)判定して分子質量はそれぞれ140kDa と20・000kDaと概算した。ここで、生じたタイプ1は分子サイズから判断してプロ ナーゼの消化を受けた結果であると考えられるが、タイプ2はプロナーゼで処理し たにもかかわらずいまなお、巨大分子のサイズであった。なお、タイプ1およびタ イプ2、それぞれの活性染色法(図12)によって求めた分子質量は、SDSで加熱処理 した各標準タンパク質の移動度を基準にして換算した場合、タイプ1が140kDa、 タイプ2が130kDaと概算した0いずれもSDSを加え温和な条件でのSDS−PAGEの 結果は、活性因子の活性本体に対応するものと示唆された。 以上の結果、タイプ1そのものが140kDaの活性本体でかつ単量体であると仮定 した場合、タイプ2は類似した130kDaの活性本体に多数の因子が会合し巨大分子 複合体としてミセル様構造体が存在しプロナーゼの処理に抵抗性を示したというこ とが示唆された0ここでタイプ2の性状は、メガロホスフアターゼのゲルカラムク ロマトグラフィー上での挙動および活性染色法により求めた活性本体の分子質量を 比べたとき、両者は類似していることが示唆された(図10C,11Cおよび12)。 なお、タイプ1およびタイプ2、それぞれをグリセロール密度勾配遠心分離をし た結果、いずれも比較的低密度の領域(沈降係数として7Sあたり)に回収されたこと から活性本体として挙動した結果であることが分かった(図10Dおよび11D)。 以上、タイプ2の分子サイズに関する性状については、条件に非常に左右される ことが分かった。. b)組成分析 1)紫外部吸収スペクトル タイプ1およびタイプ2のそれぞれの紫外部吸収を測定した(データ未掲載)。各 タイプいずれもタンパク質中芳香族アミノ酸が含まれる場合に特徴的な280nmにお. 26.

(32) ける吸収極大【411および、核酸塩基に由来する260nmにおける吸収極大【411が見 られなかった0なお、紫外部領域より220nmまで測定可能な波長までの吸収スペク トルは、吸光度が徐々に増大した。. 2)アミノ酸分析 タイプ1およびタイプ2それぞれのSDS−PAGE後の活性染色法を行ったあと、通 常タンパク質の染色・検出法である色素法(CBBR)および、タンパク質に加えて核酸 のよりよい感度の染色・検出法である銀染色法によっても活性の見られたバンドは 染色されなかった(図12)0このことは用いた試料濃度の検出感度にもよるとはいえ、 タンパク質を含んでいるとは考えにくい結果であったので、このことの解決のため に一つにはアミノ酸分析を行った(表8)0タイプ1およびタイプ2を塩酸で加水分解 した結果、次に記すように間違いなくアミノ酸が相当量検出された。 タイプ1の組成はハイドロキシリシン31%とグリシン23%と2種類のアミノ酸で 50%を越え、3番目のアラニンを加えると70%近くになった。はかにアスパラギン 酸/アスパラギン9%、スレオニン6%、残りはロイシン、リシン、ヒスチジン、イ ソロイシン、アルギニンの順で検出された。他方、タイプ2の組成は、ハイドロキ シリシン65%、グリシン12%で両者だけで72%となった。3番目のアスパラギン酸/ アスパラギンとアラニンはほぼ同じだが、残りはリシン、ロイシン、スレオニン、 イソロイシンの順であった。いずれも上記以外のアミノ酸は用いた条件下では検出 されなかった。 タイプ1およびタイプ2のアミノ酸組成を比べたとき、非常に類似していること が分かった0なかでも興味深いこととして、いずれのタイプにもハイドロキシリシ ン量は極めて顕著であった。また、システイン、チロシン、フェニルアラニンと いったアミノ酸は検出されなかった。以上、タイプ1およびタイプ2いずれもタン パク質様成分が含まれていることが明らかになったが、特異な配列を持ったタンパ ク質であることが示唆された0なお、ハイドロキシリシンと同定したのは、生体試 27.

(33) 料用の標準アミノ酸の溶出位置から算定したものなので、ハイドロキシリシンであ ると最終的に同定するには更なる解析が必要である。. 3)脂質の分析 タイプ1およびタイプ2に脂質成分が含まれているか否かをゲル電気泳動法で調 べた(図14)0試料をリボプロテイン分離用ゲル電気泳動に供した後、脂質用染色色 素であるズダンプラック【36】で染色した。その結果、ゲル上タイプ1はいずれもバ ンドが染色されなかった〇一万、タイプ2に関してはゲル上ほとんど泳動されない 位置のバンドに染色された0このことからタイプ2は一定量の脂質成分を含んでい ることが分かった。. 4)糖質の分析 タイプ1およびタイプ2に糖質成分が含まれているか否かを簡便な方法で調べた。 検出法として広く知られているフェノール硫酸漑13】を採用した(データ未掲載)が、 タイプ1は反応が陰性であったのに対し、巨大分子のタイプ2は茶褐色に呈色した。 この結果、巨大分子のタイプ2に糖質が含まれていることは明らかでタイプ1とは 違っていた。 以上の結果から、タイプ1には、糖質および脂質とも含まれている可能性が低い のに対し、プロナーゼで処理してもなお巨大分子複合体であるタイプ2には糖質お よび脂質成分が含まれ、両者に違いのあることが分かった。. C)活性に及ぼす効果 1)SDS処理 単離されたタイプ1およびタイプ2の4−MUP水解活性に及ぼすSDSの効果につい. 28.

(34) て各種濃度下で検討した(図15)。タイプ1にSDS濃度を0.5%まで加えていったとき 活性が80%に低下したが、1%に上げると活性は90%まで回復し、最大5%に上げた ときにはもとの値にまで戻った。他方、タイプ2の活性はSDS濃度を0.125および 0.25%に上げると115%に上がったが、0.5%SDS濃度にすると最初の値である 100%になり、5%SDSまで上げてもその活性値は変動しなかった。両タイプの活性 に及ぼすSDSのプロフィルに多少の違いは見られたもののいずれのタイプもメガロ ホスフアターゼの場合同様(図4参照)SDSに安定であることが確認できた。. 2)タンパク質ならびに核酸分解酵素処理 タイプ1およびタイプ2それぞれを各種タンパク質および核酸分解酵素で処理し たあと、0.5%SDS存在下に4−MUP水解活性を測定した(表9)。別途、同一の試料の 結果を検定するために活性染色法を行った(図16)。タンパク質分解酵素として、メ ガロホスフアターゼを処理する際に用いた(表3)プロナーゼEおよびトリプシンのほ かに、芳香族アミノ酸残基のカルポキシル基側を切断するキモトリプシン【7】、疎水 性アミノ酸残基のアミノ基側を切断するサーモライシン【71、リシン残基のカルポキ シル基側を極めて特異的に切断するリシルエンドペプチダーゼ【71、SDSのような変 性剤存在下でも活性の残存しているプロティナーゼK【7】を用いた。タイプ1はトリ プシンには極めて安定であったはか、プロナーゼ巨、リシルエンドペプチダーゼ、キ モトリプシンおよびサーモライシンに対しても10%ほど活性が低下するのみであっ た。しかし、プロティナーゼKの処理では16%ほど低下した。タイプ2の場合、プ ロナーゼ巨では10%の低下、トリプシンおよびプロティナーゼKでは、活性が低下よ りもむしろ増大する傾向が見られた。なお、キモトリプシンによる処理で活性が 26%はど低下した。メガロホスフアターゼの場合同様、タイプ1およびタイプ2、 いずれもタンパク質分解酵素による処理によって活性は顕著に低下しなかったが、 このことは活性染色法によって確認した。他方、メガロホスフアターゼの際にも用 いた核酸分解酵素としてDNasel、RNaseAのほかに、今回新たに核酸を非特異的 29.

(35) に切断するヌクレアーゼPlの効果を加えて検討した。 タイプ1の活性は、ヌクレアーゼPlでは44%、DNaselでは52%ほど低下したが、 RNas虫で処理すると79%はど著しく低下した。これら活性が低下していることは、 活性染色法により染色されるバンドの強度が低下していることから確証された(図 16)。タイプ2の活性は、これら各種分解酵素で同様に処理したが、タイプ1の場 合同様活性が低下した。このことは活性染色法によっても確証した(データ未掲載)。 以上の結果から、タイプ1およびタイプ2いずれもホスフアターゼ活性を維持す るには核酸成分(RNAおよび/ないしはDNA)が主として関与していることは明らかで あった。このことは先に記したメガロホスフアターゼの場合に得られた性状に類似 し、極めて興味深い知見であった。. 3)pHの効果 タイプ1およびタイプ2のホスフアターゼ活性に及ぼすPHの効果を調べた(図17)。 タイプ1の活性は、PH5.0−5.5まで全く見られないが、PH6.0−6.5から8.0まで徐々 に増大した。しかし、PH8・5を越えると徐々に低下し、PH9.5ではPH6.0−6.5での値 とほぼ同じであった。他方、タイプ2の活性は、PH5.0−6.0までほとんど見られな いが、PH6・5からPH8・0まで徐々に増大した。PH8.5では多少下がり気味で、PH9.5 ではPH7・0の値とほぼ同じであった。以上、いずれのタイプも活性を示す至適PHは 8・0で中性付近であった。なお、この値はメガロホスフアターゼ活性の至適PHとほ ぼ同じであった【56】。一方、アルカリ性ホスフアターゼは小腸上皮などに主に発現 していて、活性の至適pHは9.5−10.5とアルカリ性領域にあり、界面活性剤やタンパ ク質分解酵素に対しても比較的安定である 【15,19,21,27,29,34,42,47,54,62,64,66】。本研究で単離したタイプ1およびタ イプ2、それに加えてメガロホスフアターゼの至適PHをアルカリ性ホスフアターゼ のものと比べたとき、非常に異なっているので別の酵素であることが分かった。. 30.

(36) 4)試剤処理の効果 タイプ1およびタイプ2の4−MUP水解活性に及ぼすキレート剤である EDTAl65]、タンパク質中のチオール基の修飾剤であるN−エチルマレイミド(NEM) 【631、ならびにホスフアターゼの阻害剤として広く知られているバナジン酸【63】に 加えて、プロテインホスフアターゼ(PPl/PP2A)の特異的阻害剤としてのオカダ酸 【231の効果を検討した(表10)。 1および10mM濃度のEDTAで処理するとタイプ1とタイプ2いずれも活性は低下 したが、その程度はタイプ1の方が顕著であった。いずれにしろ両タイプとも活性 発現に2価陽イオンの関与していることが示唆された。また、NEMで処理した場合、 タイプ1は10mM濃度に上げても活性が低下せず、タイプ2も1mM濃度ではあるが タイプ1と同様、活性の低下が見られなかった。これらのことからタンパク質様の SH基が活性に関与していないことが示唆された。このことでは、いずれのタイプも アミノ酸分析の結果、システイン残基が検出されなかったことと対応していた。ま た、通常のセリン/スレオニンホスフアターゼ(PP)を阻害する濃度のオカダ酸で処 理した場合、タイプ2の活性は21%ほど低下したに過ぎなかった。なお、バナジン 酸を加えた場合、濃度に依存して活性が著しく低下したので、ホスフアターゼ様活 性を保有していることが分かった。 アルカリ性ホスフアターゼの阻害剤として知られているフェニルアラニン、チロ シンおよびレバミゾール【19,42】がタイプ1およびタイプ2の4−MUP水解活性に及 ぼす効果についても検討した(表10)。チロシンの場合、タイプ1の活性には全く影 響を与えないが、タイプ2の活性が1mM濃度で13%ほど増大した。しかし、基本的 には、いずれの活性にもほとんど影響を与えなかった。フェニルアラニンの場合、 濃度が1mMでも10mMでもタイプ1の活性にはほとんど影響を与えないが、タイプ 2の活性は13−23%ほど増大した。また、レバミゾールの場合、50mMという高め の濃度だけではあるが、タイプ1およびタイプ2それぞれの活性が41−56%阻害し た。以上、レバミゾールの効果に関しては、アルカリ性ホスフアターゼに対する阻 31.

(37) 害効果と類似していた。. 5)酸化剤処理 タイプ1の性状についてのみであるがホスフアターゼ活性に及ぼす酸化剤として の過酸化水素の濃度効果について検討した(図18)。その結果、活性は濃度0.1%で約 60%に低下し、1%に上げると完全に消失した。さらに10%まであげたが活性は消失 したままだった。従って、タイプ1を酸化状態におくことは失活させることが分 かった。. 6)有機溶媒処理 タイプ1およびタイプ2の4−MUP水解活性に対するメタノール、エタノール、 2−プロパノールおよびアセトニトリルといった、水に混和しやすい有機溶媒の効果 についてまず検討した(表11および12)。 その結果、タイプ2の活性は検討した有機溶媒のいずれに対してもほとんど影響 を与えなかった。これに対し、タイプ1の活性はいずれの有機溶媒を用いても10% 濃度にした場合、1・2から1.5倍と上がり、50%濃度にすると1.8から2.8倍までさら に増大した。 他方、水と混和しないで2層となる有機溶媒としてクロロホルム、酢酸エチルお よびフェノールの効果についても検討した(表12)。クロロホルムや酢酸エチルを添 加した場合、いずれのタイプの活性も88−96%は水屑に回収され活性は消失しな かった。ここで有機層にはほとんど活性は見られなかった。しかし、タンパク質の 変性剤として核酸の抽出時に用いられるフェノール【7,49】を加えたあと、水屑およ び有機層それぞれの活性を求めたが、タイプ1の活性は16%ほど水屑に見られたも のの非常に低下した。タイプ2の活性にいたっては全く消失した。. 32.

(38) 7)TritonX−114の効果 TritonX−114に水を加えると温度30℃以下では水と混和するが、30℃以上に上 げると混和せずに白濁する働きがあるので、この性質を利用して膜タンパク質の分 離によく使用されている【2】0タイプ1とタイプ2の性状には違いが見られるので、 条件によっては水と混和せずに二相を形成する界面活性剤であるTritonX−114【21 の分配の効果とあわせて活性に及ぼす効果を調べた(表13)。 その結果、タイプ1とタイプ2にTritonX−114を加えたあと2相を形成するの で分配した活性値を比較した0タイプ1の活性は水屑に75%、Triton層に25%回収 されたことから水溶性であることが分かった0これに対しタイプ2の活性は水層に 27%Triton層に73%と逆に親油性、つまり疎水性を反映していることが分かった。 つまり、両者の性状に違いのあることが分かった0なお、タイプ1およびタイプ2 の代わりに粗酵素源として卵巣卵抽出物を、プロナーゼ未処理だが同じように TritonX−114を加えた場合、活性が水屑に60%、Triton層に40%と分配された。 両タイプがそれぞれ分画された結果であると判断した0なお、SDSのない場合に求 めた活性は、水層に79%と回収され19%はど増大したがこの値は低分子量型ホス フアターゼに由来した結果であると示唆された。. 33.

(39) 5・3・ホスフアターゼ活性因子の生理的機能の探索 5・3・1・カエル卵成熟過程における関与 アフリカツメガエルの未成熟な卵母細胞に見出したメガロホスフアターゼは、排 卵したあとの成熟卵にはゲルカラムクロマトグラフィーで素通り画分に活性が見ら れなかった(図19)0このことから、当初見られた活性が卵成熟の過程で消失した結 果を反映し、卵成熟の制御に大きく関与していることが示唆された。更なる生理的 役割を明らかにする手がかりを得るために、プロゲステロンもしくは亜鉛イオン 【67・681によって誘起される卵成熟過程で、メガロホスフアターゼ活性がどのように 変動するかを解析した(図20)。 その結果、プロゲステロンが卵母細胞に働くと7時間後に卵成熟率が70%と卵成 熟が進行した0この際、メガロホスフアターゼ活性は、はじめ有意な活性が見られ たが、卵成熟が誘起され2時間後には70%、4時間後には50%と低下した。他方、プ ロゲステロンの代わりに亜鉛イオンを卵母細胞に作用させた場合、7時間後には卵成 熟率が70%となった0この過程で求めたメガロホスフアターゼ活性はGVBDが起こ る前に一度低下したが、GVBDの完了した6時間後には再び増大し、プロゲステロン の作用による場合と違いが見られた。 以上、メガロホスフアターゼ活性はプロゲステロンおよび亜鉛イオン【67,681に よって誘導される卵成熟過程において変動する傾向がいずれの場合にも見られ、両 者に違いが見られた。このことから、カエル卵成熟過程においてメガロホスフア ターゼが活性制御を受けていることが示唆された。. 5.3.2.器官/組織特異性 アフリカツメガエル卵巣卵のプロナーゼ消化物にSDSにも耐性なホスフアターゼ 活性を持った因子(タイプ1およびタイプ2)が活性染色法で容易に検出されたので、 卵巣以外の器官ないしは組織に類似した活性因子が存在するか否かを検索すること 34.

(40) は、活性因子の機能を明らかにしていく上で必要なことである。 アフリカツメガエル雌および雄成体から単離した各種器官ないしは組織を、プロ ナーゼで処理し遠心分離して得た上浦画分をプロナーゼ消化物とし、0.5%SDS存在 下および非存在下での4−MUP水解活性を測定した(表14)。なお、それぞれの試料を 活性染色法でも分析した(図21)。SDS存在下における活性値に着目して各種器官・ 組織での値を卵巣での値と比べたとき、卵巣よりも心臓は3倍ほど高かった。肝臓や 小腸からのものは卵巣での値に似ていた。皮膚、精巣、肺および筋肉においても活 性は充分あることが分かった0なお、採取した血液からは有意な活性量が得られな かった0他方、SDSが存在しない場合に求めた活性値とSDSがある場合での値との 比率を算出した。卵巣の95・5%に対して精巣および心臓では100%以上であった。 卵巣の場合より皮膚、肺、筋肉、肝臓は低いといってもそれ相応のメガロホスフア ターゼの存在が確認できた0小腸に関してはSDSがなくても有意な活性が見られた。 なお、これらの各試料を活性染色法により活性のバンドも分析した(図21)。卵巣 ですでに明らかとなったタイプ1およびタイプ2を対照として、それぞれの器官/組 織に見られるタイプの様式を特定した。卵巣のタイプ1およびタイプ2に相当する バンドは肝臓、皮膚、心臓および筋肉といった器官/組織のいずれにも検出された。 しかし、精巣、小腸および肺ではタイプ2のみでタイプ1は検出されなかった。 以上の結果より、卵巣から単離されたプロナーゼとSDSの両方の処理に耐性であ るホスフアターゼ活性因子は、卵巣でのタイプ1およびタイプ2の分布の違いはと もかく精巣、心臓、肝臓など検討した器官/組織に幅広く分布していることが分かっ た。本研究は生理的機能を考えるうえで極めて有益な知見であった。. 5・3・3・20Sおよび26Sプロテアソームのペプチダーゼ 活性に及ぼす効果 当研究室では、本研究を開始する以前からカエル卵成熟の制御機構の解明にあ 35.

(41) たって、高分子量多機能性プロテアーゼ複合体(プロテアソーム)の機能や構造に関 する研究を別途続けている。本研究においてはヒキガエル卵巣からプロテアソーム の生理的状態を反映した26Sプロテアソームを精製し、その生化学的な性状の一部 を明らかにした(図22)。20Sプロテアソームをコアにして多数のサブユニットから 構成されている26Sプロテアソームに注目したとき、カエル卵成熟過程において構 成する一成分のリン酸化能に違いが見られている【39,611。このような知見を得て いたので、プロテアソーム活性の制御をリン酸化/脱リン酸という視点から検討する ことは有意な情報が得られることが示唆された。別途に単離した20Sないしは26S プロテアソームと、ホスフアターゼ活性因子であるタイプ1とタイプ2が、ホス フアターゼ活性とプロテアソーム活性(ここではキモトリプシン様活性に注目した) の相互にどのような制御をしているかを検討した。 20Sないしは26Sプロテアソームをタイプ1ないしはタイプ2と18時間保温した 場合、20Sプロテアソームの活性はタイプ1では16%、タイプ2では27%といずれ も上昇させた。他方、26Sプロテアソームの活性は、タイプ1そしてタイプ2いず れによっても85%と著しく阻害した(表15)。 なお、別途それぞれ4−MUP水解活性を調べたが、0.5%SDSがあってもなくてもそ れぞれの値には違いがないうえ、いずれも有意な活性の変化は見られなかった(表 16)。つまり、いずれのプロテアソームもホスフアターゼ活性を制御することはな かった。. 36.

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