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光架橋法による平滑筋ヘビーメロミオシンの

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 竹 谷 浩 介

学 位 論 文 題 名

光架橋法による平滑筋ヘビーメロミオシンの      制御機構の解析

学位論文内容の要旨

  平滑 筋の収 縮を担 うミオ シンはATPの加水 分解と 共役し てアクチ ンフィ ラメントを滑らせ るモ ーター タンパ ク質であ る。平滑筋ミオシンは骨格筋や心筋ミオシンと同じn型ミオシンに 分 類 され、 二つの 球状頭 部と一 本の長 い尾部 を持つ 双葉様の 構造を してい る。頭 部には ア クチ ン結合 部位とATP加水分 解(ATPase活 性)部 位があ り、一 つの頭 部だけでアクチンフイ ラメントを滑らせる(モーター活性)ことができる。尾部はコイルドコイル構造を形成し、双頭構 造を安定化するとともに、ほかのミオシン分子と相互作用し、ミオシンフィラメントを形成する。

  平滑 筋 ミ オ シン のATPase活性 や モ ー ター 活 性 は 頭部 の 付け根に 結合し ている 制御軽 鎖 (RLC)のり ン酸化 により 調節さ れてい る。す なわち 、RLCのSer19がりン酸 化されるとATPase 活性が上昇し、アクチンフィラメントを滑らせることができるようになり(ON状態)、逆にRLCが 脱リン酸化されるとATPase活性が著しく抑えられアクチンフィラメントを滑らせることができな くなる(OFF状態)。

  この りン酸 化によ るON‑ OFFのスイッチが分子レベルでどのように行われるかという問題を 明ら かにす るため 、これま でに多 くの研 究がな されてきた。現在では次のような分子機序が 幅 広 く受 け 入 れ られ て い る 。脱 リン 酸化状 態でのOFF状態の 形成に は双頭構 造が必 要であ り 、 頭部問 に阻害 相互作 用が働 いてい る。RLCのSer19がり ン酸化さ れると ニつの 頭部の 配 向や 運動性 が変化 し、阻害 相互作 用から 解放さ れ活性化される。さらに、様々な変異体ミオ シン を用い た研究 などから 制御に 関わる 機能領 域が明らかにされてきている。しかし、頭部 問 の 阻害相 互作用 が具体 的にど のよう な構造 で起こ っている のか、 またニ つの頭 部の協 同 的な働きについての理解は十分になされていない。

  この ような 阻害相 互作用 におけ るニつの 頭部の 協同的な働きを考える上で、リン酸化状態 の 中 聞段 階 に あ る片 方 の 頭 部のRLCのみ がりン 酸化さ れてい る単リ ン酸化ミ オシン は重要 な情 報を与 えてく れると期 待され る。こ れまで 報告された活性についての研究では、相反す る結果が得られており、単リン酸化状態の性質についてはさらなる議論が必要とされている。

そ こ で、本 研究で はこの 単リン 酸化状 態の構 造上の 性質を明 らかに するこ とを目 指した 。   本研 究では 光架橋 試薬(ベンゾフェノン)標識したRLCを持つ単リン酸化ヘビーメロミオシ ン(1P‑HMM)を調 製し、 その架 橋反応 性から 単リン酸化状態の頭部の構造を調べた。脱リン 酸 化 状態 (0P・HMM) で はRLCと 重 鎖 (N末 端側68‐kDa領 域 ) の 架橋 、 お よ びRLC同士 の     −13―

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架橋 が 検 出 され た 。 こ れに 対 し て 、両 頭 部 が りン 酸 化 さ れた 状 態(2P‑HMM)ではRLCと重 鎖の 架 橋 が 見ら れ な く なっ た 。 こ の結 果 はRLCのり ン酸 化によ ってRLCば 項部重 鎖の相 対 的な配置 が変化 してい ること を示し ている 。1P‑HMMでは 、脱リ ン酸化RLCをベンゾフェノン 標 識 し た 場 合 、OP‑HMMと同 じ よ う にRLCと 重 鎖 、 およ びRLC同 士の 架 橋 が 見ら れ た の に 対し て 、 リ ン酸 化RLCを べン ゾ フ ェ ノン 標 識 し た場 合、2P‑HMMと同じ ようにRLCと重鎖 の 架橋 が 見 ら れな く な っ た。 こ れ ら の結 果 は1P‑HMMの ニつの 頭部は それぞ れ異な る架橋 反 応性を示し、異なる配向をとっていることを示唆している。従って、単リン酸化状態では脱リン 酸化状態ともりン酸化状態とも異なる構造上の性質を持っていることが明らかとなり、活性化 状態もほかのりン酸化状態とは異なる可能性が示唆された。このことを基に平滑筋ミオシンの 非対称な活性制御機構モデルを提示した。

  本研究 によル ミオシ ンのり ン酸化 に依存 した活 性制御 に重要な ニつの 頭部の 構造変 化に ついて の新た な知見 が得ら れ、特 に単リ ン酸化状 態の構 造に関 する情 報を初 めて示 すこと ができた。

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学位論文審査の要旨 主 査   教授   矢澤道生 副査    教授    坂口和靖 副査   教授   菊池九二三 副査    教授    田村    守 副査    教授    鈴木孝紀

学 位 論 文 題 名

光架橋法による平滑筋ヘビーメロミオシンの      制御機構の解析

  ミオシンは、ATPの加水分解と共役してアクチンフィラメントを滑らせ筋肉の収縮を引き 起こすモータータンパク質である。ミオシン分子は、二つの球状頭部と一本の長い尾部を持 つ双 葉様の構 造をし ており、 頭部にはアクチン結合部位とATP加水分解(ATPase活性)部 位があり、アクチンフィラメントを滑らせる(モーター活性)ことができる。尾部は、双頭 構造を安定化するとともに、他のミオシン分子と相互作用してミオシンフィラメントを形成 する。

  平滑筋の収縮は、ミオシン頭部の付け根に結合している制御軽鎖(RLC)のりン酸化によ り、ATPase活性やモーター活性を調節することで制御されている。すなわち、RLCのSer19 がりン酸化されるとATPase活性が上昇し、アクチンフィラメントを滑らせることができるよ うに なり(ON状態) 、逆にRLCが脱リン酸化されるとATPase活性が著しく抑えられ、アク チンフィラメン卜を滑らせることができなくなる(OFF状態)。このりン酸化によるON/OFF のスイッチは、分子レベルで次のように考えられている。脱リン酸化状態では双頭構造の頭 部間 に阻害相互作用が働いてOFF状態を形成するが、RLCのSer19がりン酸化されるとニつ の頭部の配向や運動性が変化して阻害相互作用から解放され、活性化されるというもので ある。しかし、頭部間の阻害相互作用の構造的基盤や、二っの頭部の協同的な働きにっいて の理 解は十分ではない。これらの問題点を考えるとき、片方の頭部のRLCのみがりン酸化 されている単リン酸化ミオシンは、リン酸化による活性化の中間体として重要な情報を与 えてくれると期待される。本研究は、この単リン酸化ミオシンの構造的特性の解析からりン 酸 化 に 依 存 し た 収 縮 制 御 機 構 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 に し て 進 め ら れ た 。   学位論文は三章からなる。第一章では、平滑筋収縮制御機構に関する歴史と現状を整理 し、未解決の問題点を提示した。これに基づき、ミオシンのりン酸化による平滑筋収縮の制 御機構を解明するうえでの単リン酸化ミオシンの構造に関する研究の有用性を明らかにし、

光架橋法を用いた研究法を立案・企画した。

  第二章では、第一章の考察に基づいて進められた単リン酸化ミオシンの創製とその構造・

機能 研究の成 果がま とめられ ている。遺伝子工学的に作製したRLC、およびりン酸化RLC のCys108を光架橋試薬(ベンゾフェノン)で特異的に標識し、これをフィラメメント形成能 を持 たなぃ双頭フラグメントHMM(ヘビーメロミオシン)に50%交換導入後、クロマトグ

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ラフ イー により脱リン 酸化RLCが架橋標識された単 リン酸化HMM、およびりン酸 化RLCが 架橋標識された単リン酸化HMMを単離する方法を確立した。っいで、これらの架橋反応性 から単リン酸化状態の頭部の構造を調べた。脱リン酸化R,LCをベンゾフiノン標識した単リ ン 酸 化HMMで は、 非リ ン酸 化HMMと 同じ よ うにRLCと重 鎖N末 端側68‑kDa領 域、 およ び R,LC同士の架橋が見られることを見いだした。これに対して、リン酸化R,LCをべンゾフェノ ン標 識し た単 リン 酸化HMMで は、 リン 酸化HMMの 場合 と同 じよ うにRLCと重鎖の架橋が 見られなくなった。っまり、単リン酸化HMMのニっの頭部はそれぞれ異なる架橋反応性を 示し、非対称な異なる配向をとっていることを発見した。従って、単リン酸化状態は脱リン 酸化状態ともりン酸化状態とも異なる構造上の性質を持つことが明らかになり、独自の活性 化状態にある可能性を明らかにした。

  第三章では、第二章で得た実験結果を基に、新規な平滑筋ミオシンの活性制御機構モデル を提唱した。非リン酸化状態でのRLCと重鎖の架橋反応性は、非対称な頭部聞の阻害相互 作用を反映するものと考え、これは非対称であるが故に単リン酸化では部分的にしか解除 されず、二つの頭部がりン酸化されて初めて完全に解除されるという活性化機構は、第ー章 で述べられたこれまでの研究結果を満足するものである。

  本論文で述べられたこれらの結果は、頭部間の阻害相互作用がりン酸化により解除される 機構の構造的基盤をタン/くク質化学的実験により明らかにしたものであり、X線結晶解析で は得られなかった新たな知見として今後の平滑筋収縮機構解明の研究に貢献するところが大 きく、審査員一同は、申請者が、北海道大学博士(理学)の学位を得るに十分な資格を有す ると認めた。

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参照

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