九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
沖縄県のナマコ資源の増養殖に関する研究
南, 洋一
https://doi.org/10.15017/1441317
出版情報:九州大学, 2013, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:全文ファイル公表済
氏 名 : 南 洋 一
論文題名 :沖縄県のナマコ資源の増養殖に関する研究
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
食用水産資源としてのナマコ類は、近年の中華圏における消費の急増とそれに伴う大規模な輸入 の増大により、世界的な規模での天然資源の減耗が懸念されている。極東地方に局在するマナマコ
( A p o s t i c h o p u s j a p o n i c u s
)は、世界自然保護連合の2013
年版レッドリストに絶滅危倶種(EX)
として記載されるに至ったが、日本国周辺海域では様々な資源保護施策により天然資源量が維持さ れていると評価されている。一方、沖縄周辺海域を含む世界中の熱帯圏に生息する熱帯性食用ナマ コ類に関しては、マナマコの様な資源保護施策を実施するに足る十分な生物学的知見に乏しく、そ れに基づく効果的な増養殖技術も確立されていない。本研究は、沖縄を始め熱帯圏に広く分布する 熱帯性食用ナマコの代表種であるハネジナマコ (H o l o t h u r i as c a b r a
)とイシナマコ (H o l o t h u r i a n o b i l 1
》)を対象として、その産卵生態を明らかにすると共に、種苗放流用の稚ナマコの陸上養殖技 術を確立することを目的とした。まず、沖縄県内で採捕したハネジナマコ及びイシナマコから飼育海水昇温法により受精卵を得て、
人工飼育下での幼生の発達過程を解析した。浮遊幼生期から着底幼生期へと飼育環境を移行する指 標となるドリオラリア幼生の 50%出現までの期間は、ハネジナマコでは約
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日、イシナマコでは 約 48日であることを明らかにした。さらに、着底後幼生の長期飼育実験を行い種苗放流用稚ナマ コの生産を試み、ハネジナマコでは 3ヶ月、イシナマコでは 6ヶ月の飼育で種苗放流が可能とされ る体長2cm
に育てることに成功した。また、飼育条件の検討を行い、摂餌効率の向上には水槽底へ の砂床が必須であること、広く使用されているナマコ餌料への付着珪藻 (Naviculasp
). の添加が 極めて効果的であることを見いだした。次に、周年に渡ってハネジナマコの卵巣発達を観察し、産卵期と産卵可能な成熟個体サイズを解 析した。生殖腺体重指数の変化を解析すると共に、卵巣組織像観察により卵母細胞の発達を
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段階 に類型化し卵成熟可能な卵母細胞の出現時期を解析し、産卵可能期が 5月から 10月であり、最盛 期は 8月から 9月であることを明らかにした。また、産卵可能な成熟個体の最小サイズが600g
で あることを明らかにした。これらの結果は、漁業規則制定の基礎データとなった。さらに、ハネジナマコにおいて、マナマコの産卵誘発に用いられる産卵誘発ホルモン技術の開発 の可能性を検討した。周口神経を含む口器組織に産卵誘発活性を見いだし、その抽出法、精製法を 確立した。同活性成分の構造解明には至らなかったが、マナマコ産卵誘発ホルモンとは異なる成分 であることと構造解明に必要な精製規模を推定した。
以上、本研究は、ハネジナマコ及びイシナマコの幼生期間を明らかにすると共に、放流可能サイ ズの稚ナマコの産生に成功した。さらに、ハネジナマコの産卵期と成熟サイズを明らかにし、沖縄 県における初のナマコ漁業規則の制定に貢献した。また、ハネジナマコの産卵誘発活性の存在とそ の有効性を明らかにし、新たな産卵誘発技術の確立の可能性を示した。これらの成果は、水産無脊 椎動物学および水産増殖学の発展に寄与する価値ある業績である。よって、本論文は博士(農学)
の学位に値すると認める。